脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

ここで連敗・・・初心に帰るべし! ~9節 VS大宮~

2008年04月30日 | 脚で語るガンバ大阪
 
 神戸戦から中2日で迎えたホームでの大宮戦。11分にセットプレーからルーカスのゴールで先制するも、前半のうちに大宮FW吉原に古巣への一発を見舞われ同点。68分に中澤の初ゴールで魂を見せてくれるも、そのまま2-1から追加点を奪えず、挙句の果てには終了6分前に2点を叩き込まれ見事に逆転勝利を献上。かつて優勝を経験する前によく見られた展開に万博からは容赦ないブーイングが舞った。

 「ここ2年は最初に抜け出して、終盤に失速した。1年は長いし、引きずるのはよくない」とこの日戦列に復帰した播戸が言っていたように、確かにここ2年はリーグの序盤から安定した戦いぶりを見せて、秋あたりに失速するお決まりのパターンであったが、確かにその逆、つまりは昨季の鹿島のような状況をイメージすれば簡単なことだ・・・
 なんて理屈では間単に言えるが、さすがにゴール裏のサポーターの落ち込みは激しい。「打ち合いでは負けない」、「超攻撃」なんてキーワードが過去の話。この4試合で勝利は無しと、近年の序盤戦にはなかった体たらくさに勝ち慣れたサポーターも歯ぎしりが止まない。とうとうG大阪の超攻撃サッカーに歪みが見えてきたのだろうか。

 昨季の大宮戦も引いてくる相手に苦戦を強いられた。確か開幕戦とアウェイは駒場で中断前の6/30に対戦。2005年は2戦2敗だった。相手が大宮だからというのは理由にならないが、そんな因縁めいたことも考えたくなる今日の試合運び。勝てる試合で、勝てる試合運びができなかった。
 まずは、采配において完全に後手後手を踏んだ感は否めない。この日は加地のスタメン復帰に合わせて、橋本が本来の中盤に入った。2トップはバレーとルーカス。序盤戦でコンビネーションに苦慮して、諦めざるを得なかったコンビの配置だ。このメンバーで2-1とまでできたのは良かった。しかし、その後大宮の樋口監督は68分ペドロジュニオール、72分藤本、82分に森田と明らかに追撃姿勢に打って出た。「点を取れ、逆転しろ」という強烈なメッセージが窺える。
 しかし、G大阪は82分まで動かなかった。バレーの1発に期待したのか、この日は明らかに決定機を逸し、及第点を与えるべきではない動きながら、彼に代わって播戸を入れるのを躊躇した。播戸が入ったのは87分。2-2にされてからだった。本来ならば、この日相手CBにしっかり対応されていたバレーを早い段階で諦め、もしくは中盤の二川なりと代えて播戸を早い時間で投入して追加点を狙うべきだったし、バレーと播戸の組み合わせがベストという指揮官の頭にはあったはずではないだろうか。もしくは、2-1とした段階から水本なりDFの選手を入れて守備陣を厚くして逃げ切りを図るなり、それなりの対応があったはずなのだが。“反逆のカリスマ”西野監督もここまで自らの策に溺れると“ただの人”だ。

 それから、やはり頭を抱えるべきは著しい決定力の落ち込み方だ。バレーに筆頭されるように確実な決定機が決まらない。今日もルーカスが斜め45度からのシュートをふかしたシーンは思わずアラウージョの姿が出てきたほどだ。彼なら間違いなく決めている。
 要は、“ここぞという時に決めてくれる”プレイヤーがいない。昨季のバレーの爆発は目に見張るものがあったが、その影でマグノアウベスもしっかり取るべきところで取れていた。そのバレーがどうもイマイチなのだから、こうも点が決まらないのは必然的である。今日、前線は外国人頼みが多いJリーグだが、その“箍(たが)”が外れれば、こういうことになるのだろう。

 今日の2得点もセットプレーから。前節神戸戦の得点もセットプレーから。まったくここ数年G大阪の代名詞とも言うべき“パスサッカー”で崩して得点しているシーンが見られないのも大きなポイントだろう。それを目当てで駆けつけているファンの前で、そのシーンを見せることなく不甲斐ない逆転負けとあってはブーイングも致し方ないところだ。

 とにかく“初心に帰るべし”。シンプルに攻撃を進め、しっかりリトリートの意識下で守れば、戦力的には申し分ない戦いができるはずなのだが。それはここまでチームの熟成を楽しみに指揮してきた西野監督が一番分かっていいることだと思いたい。疲れか、はたまたG大阪スタイルの終焉到来か。まだその答えを出すには早すぎる。とことんネガティヴな膿を出して、まだ長いリーグを戦っていこう。

 昔みたいな“攻められ倒してカウンター”みたいなG大阪はまだ見たくないぞ。

チームの好不調は采配の余裕にあり ~磐田VS京都~

2008年04月29日 | 脚で語るJリーグ

 磐田まで足を運んでの観戦も考えたが、結局は自宅でのスカパー観戦となった磐田VS京都。かつて日本代表のチームメイトとして、共に86年W杯メキシコ大会を目指した磐田の内山監督と京都の加藤監督。“策士”とも言える両監督が対峙した一戦は2-0で磐田が勝利を収めた。双方局面でシステムを変えては勝利を手繰り寄せようという意欲がピッチに現われていた試合だった。

 試合の立ち上がり、わずか3分に左サイドからMF上田のFKをDF田中が頭で合わせて先制する。磐田は90分を通してこの上田がキーマンとなった。左MFの村井と連携し、逆サイドの駒野と共に高い位置から仕掛ける。鈴木、田中、加賀の3バックが安定しているからこそなのだが、磐田はこの上田とトップ下の西、そして相手バイタルエリアでボールを確実に拾えるジウシーニョを中心に攻撃を展開した。36分には京都陣内でボールを持つとトップ下の西が右サイドを疾走するのを見逃さず、彼に合わせる抜群のフィード。西は見事に落ち着いてゴールを射抜いた。2節でG大阪も苦杯を喫している磐田、理想的な展開で試合の主導権を握る。
 京都はその上田に崩されている右サイドに関して、39分に平島を下げ徳重を投入し、3トップへ。加藤監督は前半のうちにフォーメーションを変える決断をする。

 後半開始から、京都は森岡を下げ、中谷を投入。シジクレイを最終ラインに下げた3バックにして、渡邉を右に、そして中谷を左に配置した。磐田の攻撃に対して、もっとラインを高く保ち、攻撃面での効果を促すものだったが、これが功を奏して後半は京都のサッカーが活性化した。本来右利きの渡邉は右サイドでも攻撃の起点になり、磐田は疲れの見えた左サイドの村井を犬塚に交代させることになる。
 その6分後には、まだ早い時間ではあったが、磐田は萬代に代えて中山を投入。2-0ですんなり逃げ切れないことを感じた内山監督は、さらなる追加点を奪うべく中山に強烈なメッセージを込めた。
 69分には京都がこの日高い磐田のライン設定に持ち味の飛び出しができず、苦しんでいた林に代えて高さのある西野を投入。この西野を軸にゴール前での展開を作りたい京都だったが、その10分後に磐田はジウシーニョを下げ、名波を入れて中盤を強化して中山の1トップに。守りきって逃げ切る姿勢を見せる。京都は後半の攻勢で磐田を上回るシュートを放ちながらも、最後まで崩せず2-0で磐田が逃げ切った。

 双方のシステム変更での駆け引きが見どころであったこの試合。前節浦和戦と違って後半に試合のリズムを握った京都がチャンスを生かせなかったのが悔やまれる。前半から磐田の高いDFラインに再三オフサイドを取られていたが、田原を欠くこの試合は、西野をスタメン起用して、ポストプレイヤーとして起用した方が良かったかもしれない。立ち上がりの失点でどうも歯車が狂ってしまったのが前半の京都からは良く窺えた。早い時間帯に平島を諦めた加藤監督、攻撃への比重を高めるために徳重を投入し、後半から中谷を使って3-4-3とする。中山の投入でさらに前がかりになった磐田に対してチャンスを作り出した京都だったが、終了間際の柳沢もシュートを打ちあげてしまい、決定力不足を露呈することになった。これで3試合連続で無得点。内容は決して悪くないだけに前後半通して試合のリズムを握りたいところ。パウリーニョ、田原を欠く点もあってか、前線の駒不足、迫力不足は否めない。今日の加藤監督はそれを意識して早く動いたものの、結果的には立ち上がりの失点が響いたと言えよう。滑り出しの良かったチームもこれで借金1。今季初の負け越しとなっている。好調だった京都はどこへやら、少し暗雲が立ち込めてきた。
 対して、怯むことなく積極的に勝利を目指すサッカーを続けた磐田内山監督。これで4勝1分4敗の5割に持ち直した。余裕を持って采配を振るったその背景には、ここ3試合で2勝1分という好調さが見えてとれた。

相手にハマった2つの守備の綻び ~8節 VS神戸~

2008年04月28日 | 脚で語るガンバ大阪

 今季2度目の不参戦となったホムスタでのJ1第8節G大阪VS神戸。神戸のエース大久保が2得点と奮起し、ここまでACLも含めた約1ヶ月の無敗ロードに終止符を打たれ、1-2と完敗を喫した。
 
 守備陣の緩みとウィークポイントを巧みに突かれた試合だった。まずは緩みを突かれたポイントして1失点目。「上げる人フリー、ヘディングする人フリーですよね・・・」と39分の大久保の1点目のリプレイ時にこの日解説で入った水沼貴史氏が言った一言がそれを象徴する。大久保の頭にドンピシャのクロスを上げた古賀も、そしてヘッドで合わせゴールネットを揺らした大久保も何のプレッシャーもなくプレーできている。クロスを入れた古賀への橋本の甘い寄せと、ゴール前で最も警戒すべき相手のエースにマークが付ききれていない。結果的にポジショニングが被っていた山口と中澤が声をかけてケアすべきだったが、スルスルとファーサイドからニアに入ったボッティに釣られる形となった。結果的に大久保と競り合うことを要求されるポジションにいた倉田にこの局面を託すのは無理があった。ストライカーとしての大久保のポジショニングと決定力を考えると、ここは完全に甘過ぎた。

 57分の2失点目も最後は大久保の嗅覚を改めて感じる形にはなったが、今のG大阪の守備ラインのウィークポイントを突かれた。松代のゴールキックを競り合った後のルーズボールをフリーでボッティに拾われ、背後から遅れてきた遠藤のプレスに躊躇することなく前線の大久保にピッタリのフィードを送っている。既に大久保がボッティがボールを持った瞬間にトップギアに入っているので、神戸としてはイメージ通りの流れだっただろう。逆に言えばG大阪守備陣はその相手のイメージを読めていなかった。24分に松代のセーブで難を逃れた局面もそうだったが、メルボルン戦でも効果を発揮したかなり高めのライン設定が仇となり、そこをトップギアの大久保に巧く狙われた。最後は中澤と山口のCB2枚に囲まれながらも、ボールの軌道に合わせた最適な体の入れ方で中澤をモノともせず、逆に体勢をとっていた山口も対応できないまま、巧みに交わしてシュートを決めた。一気に攻勢に入るべく、全体的にラインを上げたところでやられたということで、ここは中盤のケアで何とか防ぐことはできたかもしれない。ゴールキックをを折り返す際に右サイドでルーカスと倉田と明神が偏った位置にポジションを取っていたことで、中央と左サイドが完全に手薄になってしまっていた。ボッティほどの選手ならばイメージ通りにプレーはできる。

 ACLを含めた連戦によるコンディションの差を差し引いても、修正は可能だった点の取られ方だけに、攻撃陣がこの2失点を帳消しにできなかったのは響いた。この日もバレーが8本のシュートを放ち息巻いたが、バーに嫌われたシュートもあり、確率の話になると正直厳しい。対照的に相棒の山崎は0本と生かされていない。G大阪のチャンスはほとんどが安田理と橋本によるサイド攻撃が起点だっただけに、ここで山崎が生きる手段も欲しいところだ。
 
 内容的に見れば、神戸に前述した守備の綻びを確実に決められただけ。あとはこちらが“決めるのみ”ではある。ゴール前でツキに見放されたと言えばそれまでだが、この高い位置で張るラインの脆さを、対戦相手の特性によって軌道修正を図れる柔軟性があれば良かった。まだ8試合が終わっただけ。実戦で熟成を試みていけば良いだろうが、9試合で9失点の守備とわずか9得点という現時点での成果は真摯に受け止めなければならない。

奈良県リーグ2連勝! ~奈良クラブVSFC TAKADA 2001~

2008年04月27日 | 脚で語る奈良クラブ
 
 奈良県社会人1部リーグ 第2節
○奈良クラブ 7-0 FC TAKADA2001●
得点:松野正×2、杉田、金城、上西、秋本、東

@宇陀市榛原総合グラウンド

<メンバー>
GK31松石雄二 6.5
ほとんど活躍の機会がなかったものの、1本スーパーセーブ。

DF 3上西康聖 7.0
後半は中盤で鋭いチェックを欠かさなかった。攻撃参加も健在で1ゴール。

DF 8吉岡裕樹 6.0
久々に参戦ながら最終ラインをしっかり統率。危なげなかった。

DF 4秋本佳則 6.5
守備面でも終始安定したプレー。終了間際には6点目を決める。

DF20上林俊介 6.5
フィジカルで抜群の強さを披露。終始格の違いを見せ続ける。

MF 5杉田雄一 6.5
ボランチに入って攻守の要に。チームに勢いをもたらす3点目の功績は大きい。

MF21西村真吾 6.5
攻撃の起点にもなっていた。守備では黒子役に徹して体を張り続ける。
(DF 2中川駿 6.5)
途中出場ながら落ち着いたプレーでクローザーとしての役割果たす。

MF11松野智史 7.0
攻撃面で貢献。今日はそのテクニックを随所に見せてくれた。

MF24東幸一 6.5
運動量が懸念されたがフル出場で勝利に貢献。ゴール前での落ち着きは流石。

FW 9嶋将平 6.0
これからという前半途中に無念の負傷交代。どうやら肉離れか。
(MF13金城勇規 7.0)
完全復調。メッシを彷彿とさせるテクニックで魅せてくれた。1ゴールも奪う。

FW10松野正義 7.5
前線での抜群の存在感と決定力は流石。2点目は狙いすました芸術弾。

<SUB>
GK 1津山耕介
MF14藤本憲一郎

 先々週の奈良県選手権大会(天皇杯県予選)社会人部門初戦で、まさかの敗退を喫した奈良クラブ。大事な県リーグ2戦目。その切り替えがどこまで試合内容に影響されるかが注目された一戦となった。その試合で退場処分のMF矢部が今日は出場停止。しかし、今日はDFの駒も十分にいることがせめてもの救い。もう一度チームが気持ちを切り替えてこの試合に臨まなければいけない。
 対するFC TAKADA 2001は昨季はリーグ9位でフィニッシュするも、都南クラブ時代の昨季の対戦時は2-2の引き分けで勝利を奪えていない。先々週のAtletico同様激しいプレッシャーをかけてくることが予感された。

 前半、立ち上がりからどちらも激しく運動量をフルに生かす。良い入り方ができた奈良クラブ。フィニッシュをシュートで終わることが比較的できたことで、チームはノッてくる。早くもエース松野正のシュートが決まり先制点をうばうことに成功する。前半途中でその松野正とコンビを組むFW嶋がエリア内で倒れこむ。ファウルかと思いきや、本人曰く「加速する際にブチッと音がした」という残念な負傷(おそらく肉離れだろう)で途中交代。代わってルーキーの金城が入る。

 前半1-0で折り返した後半、硬さが取れたのか、相手の運動量の落ち込みにも助けられて、ボールがさらに回るようになる。松野正が狙いすましたループ気味のシュートで追加点を奪うと、中盤でプレーした杉田もゴール前に顔を出して3点目を叩き込む。これでさらに加速した奈良クラブは、松野智と金城が攻撃面で大きな起点となり、足の止まった相手を圧倒。右サイドで時にメッシを思わせるテクニックを見せる金城が華麗に2人を抜いたかと思えば、4点目となるゴールを奪う。続いて、中盤で果敢なプレッシングを欠かさなかった上西が得意の攻撃参加からダフりながらもシュートを決め5-0。終了間際には秋本、東が加点し、終わってみれば7-0の圧勝で開幕2連勝を果たした。

 相手の運動量が減ったのは確かだが、こちらも運動量はガクンと落ちたのは確か。しかし、今日はそこで一人一人が奮起して良く仕掛けたと言える。気持ちの面で「あと1点」という熱さが十分見られた試合であった。
 なかなか試合ごとに集まるメンバーが違い、固定した布陣で戦えない苦しい台所事情はある。戦術的な熟成も現時点では時期尚早かもしれない。しかし、個々の力と気持ちの面で相手を幾分も上回ったこの試合の意味合いは大きい。次の試合まで約1か月ほどあるが、気持ちを切らさず、さらにストイックに勝利を追い求めて欲しい。我々はチャレンジャーなのだから。

 5月下旬には元日本代表の柳本啓成氏が経営するフットサルコート「YANAGI FIELD」がプレオープンする。ナイター設備完備、人工芝はJヴィレッジでも使用されている最高級タイプだ。ここを拠点にトレーニングを図ることができそうで、その環境面も踏まえてさらなる選手たちに集まってもらいたいものである。奈良クラブの更なる進化はまだまだこれから。それと並行して享受できる環境面が与える真価も見逃せないところだ。

 次戦MIKASA 2003戦は奈良産大グラウンドで5/25(日)9:20キックオフ!

スタンフォードブリッジでは負けない!81戦無敗!

2008年04月27日 | 脚で語る欧州・海外
 
 プレミアシップ優勝をかけた大一番、36週のチェルシーVSマンチェスター・Uは現地時間12:45にキックオフされ、激闘の末、首位マンUを3ポイント差で追う2位チェルシーが2-1とホームスタンフォードブリッジで沈めた。
 これで勝ち点は共に81。得失点差で16点のアドバンテージを誇るマンUの優位は変わらない。残り2試合どちらが力尽きるか。優勝争いはますます見逃せなくなってきた。共にCLとの“ダブル”の可能性を残すトップ2のハイレベルな試合は今季のプレミアの隆盛ぶりをこれ以上ない形で見せてくれた。

 まさに“フットボール”の魅力がギッシリ詰まった濃厚な90分間。ここまでホームのスタンフォードブリッジで80戦無敗を誇るチェルシーは、この日母親の逝去で欠場となったランパードを欠くものの、イレブンの結束は立ち上がりから圧倒的に試合のペースを握ったその勢いに現われていた。開始早々にドログバの突破からエッシェンがシュートを放つ。火曜日に行われたCL準決勝リバプール戦の出来を覆すポゼッションサッカーは、まるでスタンフォードブリッジに棲む“勝利の女神”が降臨したかのようだった。
 安定感抜群のテリー、カルバーリョのCBコンビ(彼らが組んだ時の勝率は80%!ここまでわずか2敗)に加え、ミケルを中盤の底に据えてバラック、エッシェンが並び、両サイドにはA.コールとフェレイラ。両ウイングにはJ.コールとカルーが入った。得点源はもちろんエースドログバ。昨季までの輝きは無くコンディションの不調が心配だが、それでも大一番での期待ができるCFだ。
 対するマンUがCLを見据えて、エブラ、C.ロナウド、テベスを温存してきたことで、予想以上にプレッシャー無く中盤でボールが回せることになる。攻撃面での長所を生かしたミケルの采配がハマり、全体的に高い位置でボールが動き、ドログバと両ウイングがゴールに近い位置に顔を出す。マンUは7分過ぎにヴィディッチがドログバとの接触で顔を打ち、早々にハーグリーブスと交代。右SBに入り、ブラウンが中央へ。カル―が再三ハーグリーブスとの迫力あるマッチアップを繰り広げたように、これがさらにチェルシーの流れの良さを助長させた。

 チェルシーは、最終ラインのテリーが繰り出すロングフィードでターゲットのドログバを狙い、そのポストプレーからエッシェンやバラックが呼応する。右サイドのフェレイラ、J.コール、そして左サイドのA.コールとカルーのコンビと多彩な攻撃パターンでマンUを苦しめる。ランパードの不在で、プレスキッカーには困ったが、それでも前線でフォローなく孤立するルーニーと個人技の高いナニをケアするだけで済んだ。20分にはJ.コールが中央突破からシュートを放つも惜しくもポストに弾かれる。31分には右サイドエッシェンから再びJ.コールが角度のないところから狙う。ポジショニングで優位に立つマンUDF陣をあざ笑うかのようにシュートを放つチェルシーに先制点がもたらされるのは時間の問題であった。 
 そして、前半ロスタイム、右サイドで3人に囲まれながらのボールキープからドログバが中央へ巧みなクロス。機を見てゴール前に駆け上がりフリーだったバラックの頭にピタリと合い、得意のヘッドでチェルシーが先制点を奪う。近い位置取りでドログバのフォローにエッシェン、サイドにJ.コールが張っていたため、それに5人が引きつけられ、バラックは完全に中央でフリーの状態だった。歓喜に湧くイレブンによって掲げられる“R.I.P. PAT LAMPARD”と書かれたユニフォーム。理想的な時間に奪えた先制点はランパードの母親を追悼する一撃となった。

 後半に入って、すんなりと優勝を決めてしまいたいマンUが反撃に出る。ここで勝てばほぼ優勝は確実となるだけに少ないチャンスを生かしたい。55分、チェルシーのリスタート。カルバーリョが集中を切らしていたところに背後からギグスがプレッシャーをかける。焦ったカルバーリョは中央に不用意なパス。これがルーニーに渡った。ここまで不完全燃焼だったルーニーは脇腹を痛めているとは思えない動きで一気にトップギアに。一気にシュートを決めて1-1の同点に持ち込んだ。思わぬ“アシスト”を敵からもらったルーニー。能力の高いタレントが集まるビッグマッチでの些細なミスがいかに“命取り”になるかを肝に銘じなければいけない光景だった。
 その後、集中力を取り戻したマンUはルーニーに代わりC.ロナウドを投入。チェルシーもアネルカを投入してエッシェンを右SBにして2トップに。一進一退のハイレベルな攻防はギアチェンジを図ってきたマンUがボールポゼッションを上げ、さらに白熱する。チェルシーは前半ほどエリア内でのチャンスが減っていたが、FKのキッカーを巡りバラックとドログバが口論を繰り広げるほどで、勝つための執念がこれ以上ないくらい見えていた。それは運をも手繰り寄せる気迫だったに違いない。
 38分にバラックの突破からパスを受けたドログバが潰されたところに反応したエッシェンのクロスがキャリックの手に当たりPKの判定。このまたとないビッグチャンスをバラックが冷静に決める。今季の序盤ケガに苦しみ、それこそオールドトラフォードでのマッチアップ時にはチームにほとんど合流できていなかった将軍が大一番で大事な仕事を成し遂げた。
 まだドラマは起きた。ロスタイムに入る前にC.ロナウドのシュートをA.コールが抜群のポジショニングでクリア。そして、チェルシーは勝ち越し弾の前にシェフチェンコを投入し、さらにその後マケレレを入れバランスを保っていたが、ロスタイムに入った直後にフレッチャーのヘッドをシェフチェンコが驚異のクリアでピンチを救う。追加点を奪う意図で入った不惑のエースがこんな仕事を大舞台でやってのけるのは皮肉な話だ。

 結局この死闘を制したチェルシーがポイントでマンUと並んだ。得失点差という絶対的なアドバンテージがあるにも関わらず、CLの準決勝をこなしてからとなるラスト2戦はお互いの我慢比べ。どちらも負けることはできない。マンUはウエストハム、ウィガン。チェルシーはニューキャッスルとボルトンという組み合わせ。81戦無敗と記録を伸ばしたチェルシー。このスタンフォードブリッジの“勝利の女神”は水曜日のCLリバプール戦でも引き続き微笑んでくれるだろうか。プレミアシップ最終週ボルトン戦とあと2回微笑めば、“ダブル”の可能性もグッと近づくはずだ。

確実に流れを掴む力 ~京都VS浦和~

2008年04月26日 | 脚で語るJリーグ
 
 これまで2度京都戦のチケットを買っておきながら、所用で観にいくことができなかった今季。個人的に昨年の入れ替え戦以来となる西京極での京都VS浦和の試合を観戦。

 前節の新潟戦で3人の退場者を出してしまった京都。非常に良い滑り出しを見せた今季、充実したシーズンを過ごすためにも、主力を3名欠きながら浦和を迎えるホーム西京極での戦いは踏ん張りどころ。前回のナビスコ杯での対戦は西京極で3-3、そしてアウェイでは1-1と全く互角の対戦成績。
 対する浦和は試行錯誤が続くものの、昨季のアジア王者らしくチームは回り始めた。エース高原が未だ無得点ながら、この日は永井とエジミウソンとの3トップを敷いてきた。古巣と今季3度目のマッチアップ。エンゲルス監督の采配にも注目できる一戦となった。

 試合は前半の立ち上がりから京都が高いDFラインとコンパクトな中盤を軸に良くボールを回す。改めて存在感を感じたのはMF佐藤。果敢にプレスを繰り返し、ボール奪取に長けた動きで、京都の攻守のコネクティングプレイヤーとして君臨。最前線に張る柳沢、左右に動きボディコンタクトでボールホルダーとなれる田原、そして少し低い位置でボールを受ける徳重という3トップに効率的にボールが収まる京都のフレキシブルな攻撃は、この試合の展開が京都寄りになることを十分予感させてくれた。序盤のチャンスはその京都に傾いて訪れる。右サイドの平島が緩慢な浦和MF平川からインターセプト。そのままサイドを駆け上がり、中央でフリーの佐藤がシュートを放つ。左サイドでも、渡邊が得意のコントロールショットでチャンスボールを放り込む。浦和は守備一辺倒の時間を強いられ、最初のシュートまで26分もの時間を耐えることになった。

 浦和は、そんな京都の攻撃を文字通り“耐える”ことで自らのペースにシフトチェンジする機会を窺っていたとすれば、前半はかなり力をセーブして、次第に状況を好転させるチャンスを模索できたのだろう。堤、堀之内、阿部の3バックは集中力を維持。京都の攻撃を耐え凌いだ。後半その力を発揮した高原は前半においてはほとんど前を向いてボールを受けることができなかった。エジミウソンは単独突破に固執してフォローを生かせず、時折ドリブルで自身の持ち味を見せた永井しか存在感は示していなかった。ボランチ”闘莉王も前半はミスが多く足を引っ張ったが、そんな浦和の不甲斐なさは後半に牙を剥く序章に過ぎなかったのかもしれない。

 後半、流れは簡単に変わってしまう。54分にサイドライン際の競り合いで、転倒させられた際に京都FW田原が報復の1発を相手の足に見舞う。厳しいながらも文句無しの一発退場。これで京都の集中力は前半の戦いぶりが嘘のように消沈した。その直後の57分、永井のパスに反応した高原がゴール前へ。京都DFのチェックの甘さもあって、一度はGK平井が反応するものの、GKを抜いて落ち着いてゴールに沈めた。今季移籍してきたスターFWの待望の一発に湧きかえるアウェイゴール裏。たくさん駆けつけたサポーターに深々と頭を下げる高原の姿はここまで無得点と苦しんでいた心境を物語っていた。
 チームが揃って“エースに初得点を”と意気込んでいたとすれば、ここから完全に浦和に火がついた。その3分後には、その“熱さ”を最も体現する闘莉王がCKからドンピシャでヘディングを合わせ加点。5分後にはまたしても闘莉王がCKをヘッドで合わせた。田原の退場から10分ほど経ったところで、スコアは0-3。完全に京都は守備面での集中力を欠いていた。

 10分後の75分にもCKから高原がこの日2得点目となるシュートをニアサイドから難なく決め0-4。全くプレッシャーのないセットプレー時の守備で確実に見えた“シジクレイ不在の影”。ここまで効果的にセットプレーで点を取られれば、柳沢が抜群のポジショニングで前線で奮闘するも、京都に成す術は無かった。
 浦和は堤をはじめ、3人が中心となり、試合を落ち着いてクロージング。闘莉王に代えてこの日遠征メンバーに帯同させていたユースの山田直を投入する余裕さえ見せる。結局前半の流れが嘘のような0-4という圧倒的大差で試合は終了した。

 京都の夕暮れに高らかにこだまする浦和サポーターの凱歌。高さを欠いた京都守備陣の攻略法と1人の退場で一変したその流れが、例え守備的でも浦和が一枚上手のサッカーをしていることを見せつけるには十分だった。確実に流れの傾きを逃さない浦和、それをチームとしてウィークポイントのカバーに努めることができなかった京都。今季3戦目にして、そのチームの質と底力に明暗がくっきりと分かれた試合であった。

“日本代表”逮捕が提起する問題

2008年04月25日 | 脚で語るJリーグ
 
 少し時間差が空いたものの、録画でゆっくり観戦したCL準決勝バルサVSマンUのレビューを書こうとPCを開いたところ、思わぬ事件が・・・

 柏に所属する日本代表候補のJリーガーが、2001年に神戸市内で女性のマンションに忍び込み、下着や携帯電話を盗んでいたことが発覚し、窃盗容疑で逮捕状がとられたよう様子。本人は「知らない」と犯行を否定しているが、時効まで5カ月のところで兵庫県警が現場の遺留物をDNA鑑定したところで発覚した。実は彼には前歴があった。2年前に川崎市内の女性マンションに住居侵入容疑で逮捕されたことがある。今回の事件で、前述の鑑定結果が、その際のDNA鑑定結果と一致したという。当該選手にとっては日本代表に初選出された直後、まさに日本サッカー界にとって、何とも至極残念という他ならない事件となってしまったようだ。

 2年前にも当該選手が起こした女性マンションへの不法な住居侵入は、泥酔であった誤りであることから、事件性はそこまで問われずに起訴猶予処分とされていた。しかしながら、当時所属していた柏レイソルを契約解除され、ヴァンフォーレ甲府に練習生として加入、2ヶ月後に何とか本契約を結ぶに至った。起訴猶予処分となったことも含め、選手自身の泥酔したことによる“過ち”は情状酌量の余地があった。無所属となった空白の2ヶ月間はボランティア活動に邁進し、その行動がチーム関係者に認められた。だが、どうだろう。今回は言い訳が効かない。DNA鑑定、そして“盗まれたものがあること”などの決定的な証拠があっての逮捕状だと考えると、明らかに意図的な犯行と考えるのが妥当だろう。まだ当該選手の処分等が決まっていない段階だが、これで選手生命は絶たれたに等しいかもしれない。

 しかし、非常に残念極まりないのは、プロのサッカー選手であるだけでなく、“日本代表”という大きな肩書きが付いてしまっていたこと。世論的に見れば、“犯罪者”を日本代表に選出していたという訴追を日本サッカーは免れないことになる。今年W杯最終予選、そして北京五輪を控えるだけでなく、Jリーグも今季は観客動員が好調なだけに、そこへの影響は全くゼロではないだろう。本来子供たちの模範となり、“夢”となるべきプロサッカー選手の大罪に日本サッカーは何を学ぶべきだろうか。

 「一人で飛行機のチケットすら買えない」
 以前、専門誌の記事でこんな記述があった。代理人を務める方のインタビュー記事で、高校卒業後すぐにプロ契約を果たした選手が、いかに社会的常識を欠いているかを語った印象的な言葉だった。本当にそういった選手は多くではないと思うが、ごくたまに見られるらしい。単純に考えれば、サッカーで大成するためには幼い頃から、多くの時間をかけての努力と才能が必要であり、少年時代から所属クラブで始まる熾烈な競争を勝ち抜いた者がプロになる道理は当然である。しかし、そこでサッカーの上達に必要な時間と、社会人としての常識人格形成に必要な時間との歪みが生じてしまっているのではないだろうか。単純にサッカープレイヤーとしては一流であっても、常識社会人としては非常に未熟な人間に育ってしまっているということだ。

 これはなかなか単純な論理では片付かないことだろう。“これだけ多くのプロサッカー選手がいれば1人ぐらいそんなヤツもいるだろう”と簡単に片付けるべきか?
 幼少期から教育機関での義務教育が施される日本で、こんなケースはごく希でしかないはずだ。仮に四六時中サッカーばかりやっていたとしても、先輩、後輩、先生、生徒、監督、選手といった構造において人間関係の序列はほぼ確実に社会的常識を植え付けるはずだ。家庭環境によっぽど綻びがあったり、突発的な原因があっての人格形成の障害が無ければ考えにくい。サッカーではプロになれるほどの力を持ちながら、常識人としての行動が欠如しているとなると、どこかで片方のパワーバランスが崩れたに違いない。
 特に当該選手の場合は、1度目ではない。結果的に過去の事件が明るみに出た訳だが、それを隠してこの7年間過ごしていたとなると、2年前の事件の信憑性はおろか、完全に学習能力と自身の欲望に対する自制心に欠けているということ。特に当該選手は昨年も試合中に主審に唾を吐き、退場を食らい、その後運営部品を損壊させるなどの常軌を逸脱した行為で、7試合の出場停止とクラブからの罰金処分を受けている。これは2000年以降のJリーグにおける出場停止処分としては最も重い。ただ、1人の人間としては、ピッチとピッチ外で「悪童」ぶりを発揮したとしても、プレーで結果を残していれば愛される選手もあって良いだろうが、さすがに法を犯したとなればまた話は変わってくる。こういった日頃の行いがそれを裏付けると言われてもしょうがない。これまでサポートしてきた関係者を裏切るには十分すぎると言えよう。

 情報が早い段階で、まだ確かなことは言及できないが、逮捕状が出ているとなると、責任追及は免れない。これまで彼を雇用してきた全てのクラブに責任があるだろう。7年目の真実は日本サッカー界における選手教育はおろか、日本の教育機関が綻んでいる残念な可能性を露呈してしまった。たった1人のこういう愚かな行為が“事件”となり、“サッカー選手は低俗”などという不本意なレッテルを張られる要因となる。当該選手の猛省当然のこと、日本サッカー界と我々ファン全体がもう一度関心を示し、再発防止に取り組まなければならない。一般人とは違う話題性を含むこういった行動が、サッカーというスポーツだけでなく、それを取り巻く文化の失墜に繋がるのは簡単なこと。
 “日本代表”が逮捕されたことの問題提起は我々が思う以上に大きい。

遂にグループリーグ突破に王手! ~ACL VSメルボルンビクトリー~

2008年04月24日 | 脚で語るガンバ大阪

 ACLグループリーグ第4節のメルボルンビクトリー戦。ここで勝利すれば、グループリーグ突破に大きく弾みがつく。雨の万博にはその勝利を導くべく、ここまで結果を残せずに喘いでいた男が奮起した。

 DFラインが非常に高いラインを保ち、中盤とのスペースをコンパクトにしたことで、メルボルンのエースFWオールソップに放り込まれるロングボールをシャットアウトしたG大阪。中盤では完全にポゼッションで優位に立ち、スムーズな立ち上がりから試合をコントロールすることができた。前半31分にバレーが頭でゴール前に落としたボールに遠藤が走り込む。ニアサイドに走り込む山崎をしっかり捉えた優しいパスにあとは流し込むだけの先制点。パンパシ以来、公式戦では初得点の山崎。播戸のケガで回ってきたチャンスになかなか応えることができず、“あとは決めるだけ”という殻をついに破った。理想的な時間に奪った先制点はその後の試合の展開をほぼ決定づけたと言っても良いだろう。
 前節のアウェイの戦いでは、セットプレーから効果的に得点を挙げたが、その反面見えた3失点の影。しかし、この日はメルボルンに決定的なチャンスを与えることはなかった。41分のオールソップの強烈なシュートもバーに嫌われる。ツキもなく、それ以前に前回の対戦と比べると、コンディションの悪さを明らかに感じさせる。そんな彼らの影に見えたのは、経験せねば分からないあの長距離の移動の過酷さだ。これが彼らの動きを鈍くさせていたのは否めないだろう。

 1-0で折り返した後半に入って、メルボルンも選手を代えて少し鋭さを増した。後半立ち上がり、初めて彼らがスルーパスを裏に通してきた局面は決定的だったが、1対1を迎えたケンプのシュートは、鹿島戦で負った痛みを克服してこの日ゴールを守った守護神松代の前に力無くひれ伏す。後半12分には遠藤のFKからゴール前に入ったボールをDFに囲まれながら山崎が上手く合わせ難なく2点目を奪う。効果的に得点を重ねるG大阪のサッカーは、前半に引き続き守備面でも上手く機能。オールソップに仕事をさせないDFラインは再三のオフサイドトラップを仕掛けていく。もはやメルボルンの攻撃陣から怖さは無くなった。
 
 「センターでターゲットになるタイプではないが、どうしても逃げてしまうプレーが多くて、流動的といえば流動的だが、連動性という意味では少しコンビネーション的には合わない時間帯が多いかなと思った。バレーにもそこを修正するようには言ってるのだが、少し遅れるとバレーの特徴が出ない。播戸とかルーカスとかタメが作れる選手がパートナーにいたほうがバレーは活きるかもしれない。いい時間は決して多くなかったかもしれない」
 試合後、西野監督が語ったように、山崎は2得点と結果を残したものの、バレーとの連動性はそこまで良くなかったのは頷ける点である。やはり強引にシュートに持ち込もうとするバレーの姿は散見されたが、効果的にバレーを生かす動きは少し物足りなかったところ。播戸が近日中のは復帰濃厚なだけに、今日2得点と結果を残した山崎も含めてFWの陣容は混沌としてきたと言える。決定機を全て決めればハットトリックも達成できた主役は、G大阪が取り戻すべき決定力に明るい道を開けたのかもしれない。

 「皆、素晴らしい選手だった。すごいバランスのとれたいいチームだと思う。2人の強いDF、二人の強いサイドバック、特に安田選手が良かった。MFはキープ力が高く、特に、10番(二川)そして17番(明神)と7番(遠藤)も素晴らしかった。ストライカーの質も高い、ルーカス、バレー、山崎の3人はとても良かった」
と完敗を認めざるを得なかったメルボルンビクトリーのアーニー・メリック監督。打ち合いでも負けない、攻守における組織力でも負けないG大阪。そんな2つの強さをこの2週間で見たメルボルンにとっては、「アジアの壁」を改めて実感するACLとなっただろう。この彼らの敗退決定で、オーストラリアサッカーが学ぶべきところは大きい。このメルボルン戦の2戦を通して、今後互いに日豪間でも、クラブレベルでこういった切磋琢磨ができるのも素晴らしいことだと個人的には感じることができた。

 G大阪はこれで次節チョンブリ戦(7日バンコク)で、引き分け以上ならグループリーグ勝ち抜けが決まる。2年前の雪辱を晴らす時が来た。連戦は続く。問題点もないわけではない。しかし、間違いなくメンタル面での充実ぶりは加速するばかりだ。今季、内面的に成熟を遂げようとしている西野ガンバはまだまだ止まらない。

アンフィールドの奇跡 ~UEFA CL 準決勝1st leg~

2008年04月23日 | 脚で語る欧州・海外

 ビッグマッチではミスが大きな命取りとなる。そんな極めて簡単なセオリーをまざまざと実感することになった準決勝第1戦リバプールVSチェルシーは、1-1のドローで試合を終えることとなった。
 “アンフィールドの奇跡”とも表現すべきか、終了間際のロスタイムにチェルシーにとっては思いがけない形でアウェイゴールがもたらされることとなった。カルーが中央に送ったクロスをDFリーセがまさかのクリアミス。第1戦の勝利をほぼ手中に入れたかとリバプールサポーターの誰もが思ったロスタイムにアンフィールドは凍りついたのだった。

 立ち上がりはどちらも慎重だった。さすがに準決勝という雰囲気が立ち込めるアンフィールド。レッズファンで真っ赤に染まった「コップスタンド」は心なしかいつもより「You'll never walk alone」が響き渡っているように感じる。
 チェルシーはドログバ、ランパード、バラックと主力タレントが並んだが、唯一不可解だったのは左ウイングにマルダを起用したことだ。彼の欠場の間、ここまで比較的良い動きをを見せていたカルーを先発起用すれば、流れはある程度手繰り寄せることはできたのかもしれない。マルダは結局90分間ほとんど何もできなかった。それだけチェルシーサイドに理由を見つけるのが容易であったほど、硬い序盤から試合のイニシアチヴは終始ホームのリバプールが握り続けたのである。

 守備では一日の長があるチェルシーはこの日もカルバーリョとテリーが絶妙なディフェンスでリバプールの攻撃を尽くシャットアウトした。F.トーレスが決定機をモノにできず、裏を取る瞬時の動きには舌を巻くばかりだが、前半はそこまで脅威とはならなかった。しかし、緊迫した試合はひょんなミスから大きく動く。43分にハーフウェイライン付近のリスタート時にランパードが集中を欠き、一気にボールはゴール前へ。戻ったランパードの稚拙なチェックにも助けられ、マスチェラーノがシュートを試みるが、これがフワリと浮いたところにカイトが上手く反応してボレーシュートを沈める。最後にケアに回ったマケレレも不可解な飛び込みでカイトに対してはプレッシャーにならず。幾つかの不用意なミスが重なり、痛恨の先制点をリバプールに献上することとなった。
 序盤こそは幾分かのペースを握ったチェルシーも、マスチェラーノとシャビ・アロンソの絶妙な長短を織り交ぜた正確なロングパスの前にリズムを掴めず、後半も一方的に先制点を追い風にしたリバプールが試合を支配した。

 チェルシーは前線のドログバが孤立無援。彼のコンディションもそこまで良好とは言えず、決定機をほとんど作れなかった。それもそのはず、この日はJ.コールとマルダの両翼もほとんど機能せず、連動した攻撃スタイルは90分通してほぼ皆無だった。GKチェフの再三の攻守が無ければ、かなり早い時間帯で息の根を止められていたことだろう。
 それだけ苦しい試合内容であっても、チェルシーは運をも味方につけ、第1戦をドローに持ち込むことができた。第2戦は、彼らにとっての不沈のホーム、スタンフォードブリッジ。負けなければ良いわけだ。逆に言えば、彼らが不敗神話を築く“ブルーズの住処”でリバプールは絶対勝利が条件となり、これまでにはないプレッシャーが彼らを襲う。因縁うごめくCLでの過去2戦を覆す展開で、改めてアウェイゴールルールの醍醐味を感じる試合となった。

 しかし、チェルシーも試合内容は手放しで褒められたものではない。週末にはプレミアシップ首位マンUとの直接対決を控えている。“ダブル”の可能性という灯を消さないためにも彼らには一刻も早いリフレッシュと、再び鋭い集中力が求められるのである。まさに今こそ“勝負どころ”だ。

 

ORIENT DISTRESS ~ACL VSメルボルンビクトリー戦レビュー~

2008年04月23日 | 脚で語るガンバ大阪

“It played Gamba Osaka for the first time, indeed clapped eyes on the Japanese club for the first time.
The visitors were not so much inscrutable as unconsidered until they took shape and form on the pitch.
No one gets up in the night for Gamba Osaka.
Victory had done its homework.
It Knew the idea of Gamba.
It was a big club, with a turnover three times its own.
Its Knew Gamba was in season and had no salary cap restrictions, luxuries Melbourne cannot have itself.
But that is necessarily how it must be; we have joined their league, not they ours.
Victory knew taht this was Gamba's third match in seven days, also incorporating a 12-hour flight.
Theoretically, the match might come down to a question of what would take the greatest toll: Victory's lack of match conditioning or Gamba's surfeit of it.”

 前回のメルボルンでの試合後、翌日のTHE AGE紙にてGreg Baum氏は上記のように総括していた。

 つまりは、メルボルンからすればG大阪は取るに足らない相手だと思っていた(つまりはかなりナメられていたということ)が、これまで日本のクラブと試合をすることがなかったため、自分たちとG大阪のシーズンにおけるサラリーキャップ規制に大きな差があったということ(あさ氏が自身のブログ「逃避日記」にて別からその記事を抽出しておられた)を、前回の試合を通して初めて痛感したということだろう。それがモチベーションの差、もしくは選手層の差に繋がったとも言わんばかりの弁解をしている。確かに試合の入場料にまで言及しているようだが、オージーフットボールと比べるとACLの入場料というのはかなり安かったと言える。しかし、彼らがACLを戦う以上はその現実を受け止めなければならない。
 
 では、それで今回、余裕たっぷりにも関わらず、前日入りという無茶な策で大阪入りを果たしたのだろうか。航空機で約14時間もかけて日本まで来たのは良いが、おそらく宿泊の予算もそこまで無いのだろう。だとすればそれなりのコンディションの悪さは予想できる。時差がほとんど無いのがせめてもの救いだろうか。迎え撃つG大阪もハードな日程だけに安心はできないのだが。

 G大阪も明日は守護神に一抹の不安を拭えない。松代がケガを無理して出るにしろ、木村がトップの公式戦初出場にしろ、とにかくはCB陣がフォローを迫られるため、自陣はタフな応酬になるだろう。また、二川に豪快なミドルが出れば2トップがイマイチだけに非常に助かるのだが。
 とにかくホーム万博でのゲーム。敗北はあり得ない。メルボルンで勝てた相手だ。心して迎え撃てば大丈夫だろう。

では、最後にメルボルン諸君へ・・・

Welcome to Osaka.
You came well to here.
But I am very disappointed.
Because you will return to Melbourne without winning.
Do you seem to have arrived at Osaka yesterday?
Even if you do not practice it, is it all right?
You do not need to worry.
Our goal keeper was hurt.
It will be a big chance for you.
We are inferior to your stadium, but please enjoy expo'70 Stadium to the full by all means.
Because this becomes it for you last.
Good-bye, Melbourne.
I pray for luck.