脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

蹴春到来 ‐ゼロックススーパーカップ‐

2010年02月28日 | 脚で語るガンバ大阪
 Jリーグの新たなシーズンの訪れを告げる最大のプレシーズンマッチ・ゼロックススーパーカップがJリーグ王者の鹿島と天皇杯王者であるG大阪の両者によって国立競技場で行われた。1-1のままPK戦に突入した試合は5-3で鹿島が勝利。G大阪は残念ながらシーズン最初のタイトルを手中にできず、宿敵の前に悔しさを噛みしめる結果となった。

 
 両チーム指揮官を先頭に入場。
 今季もJリーグがゼロックスから始まりの合図を告げる。

 
 日本を背負う盟主同士、名手同士の戦い。
 小笠原と遠藤が激しく中盤でマッチアップ。

 
 試合は20分に鹿島がマルキーニョスのPKで先制する。

 
 西野監督の期待を背負う平井は先発出場。
 しかしながら、決定的な仕事ができず、宇佐美と途中交代。

 
 マルキーニョスは今季もリーグを席巻する存在になりそう。
 相変わらず貪欲にそのテクニックでゴールを狙い続ける。

 
 明神に代わってキャプテンマークを巻いたルーカス。
 イジョンスの厳しいマークを受けながらもチャンスを作る。

 
 岩政がゴールを狙う。
 鹿島はセットプレーから再三G大阪ゴールを脅かした。

 
 水曜の水原戦に続き出場の菅沼。
 この日は先発で出番を射止め、試合度胸を強烈にアピール。

 
 前半終了間際のロスタイム、加地のシュートが決まり同点に。
 珍しい加地の左足の見事な得点に会場は沸いた。

 
 先日の東アジア選手権韓国戦では悔しい思いをした岩政。
 W杯本大会メンバーに残るためにも重要なシーズンとなる。

 
 最終ラインで危なげないプレーを見せた高木。
 昨季サテライトで何度もコンビを組んだ菅沼との相性は良好。

 
 豪快なボレーを試みるなど積極性が見えたチョジェジン。
 今季はレギュラーポジションを確保したい。

 
 現在のG大阪で最もキレている男・二川。
 この日も再三好パスを披露。強烈なミドルを狙う場面も。

 昨季から何度もリーグを沸かせたG大阪と鹿島の一戦。互いに譲らぬ見応えのある試合になった。そういう意味でもPK戦での試合終了は残念だったが、負傷者を多く抱えながらも今季への可能性を提示してくれたG大阪と依然変わらぬ強さと連携を見せた鹿島の姿に国立に詰めかけた観客だけでなく、日本のサッカーファンがそのシーズンの到来を感じたはずだ。

次世代のスター候補激突

2010年02月27日 | 脚で語る高校サッカー
 ゼロックススーパーカップに先駆け国立競技場にて行われたU-18Jリーグ選抜と日本高校選抜の試合。両者譲らず1-1のまま試合を終えたが、次世代の日本サッカーを担う若き選手がピッチに躍動。その技術の高さを見せつけた。

 
 注目を集めた柴崎(青森山田)と高木善(東京V)。
 両選手共に見せ場を作り、柴崎は1アシストの活躍。

 
 小柄ながら中盤のダイナモとしてJ選抜を牽引する大森(G大阪)。
 来季のトップ昇格に期待。

 
 その大森と共に先発出場を果たした原口(G大阪)。
 度々ライン際のドリブル突破で会場を沸かせる。

 
 劣勢の中、そのキャプテンシーでチームを鼓舞する碓井(山梨学院)。
 プレスキックからも見せ場を作ろうとした。

 
 ファインセーブを連発した櫛引(青森山田)。
 185cmの長身でそのスケールの高さを感じさせる。

 
 高校選手権ではチームの躍進に貢献。
 この日も高校選抜の守備の要となった須藤(矢板中央)。

 
 この世代屈指のストライカー赤崎(佐賀東)。
 再三の惜しい決定機をものにできず無得点に終わる。

 
 個性の固まりJ選抜を主将として牽引するのは夛田(C大阪)。
 上背はないものの、気迫あるプレーで高校選抜の攻撃を阻む。

 
 原口との大阪コンビで2トップを形成した杉本(C大阪)。
 187cmの長身で再三攻撃の起点に。印象に残った。

 
 関西大第一の主将としてチームをベスト4に導いた小谷。
 後半途中から出場し、最終ラインをまとめた。

 両チームとも連携面でそれほど成熟が見られないながらも、攻守に見せ場を作った80分間(40分ハーフ)。まだ観客がまばらなスタンドを沸かし、この試合だけを目当てに国立に駆けつけたファンも多数いたようだ。試合中から鹿島サポーターの熱烈な声援を受けていた柴崎をはじめ、来季Jリーグの大舞台で活躍する選手たちはこの中からどれだけ生まれるだろうか。

【AOQLO企画】2009年MVP

2010年02月20日 | 脚で語るガンバ大阪
 AOQLO PEOPLEのオフ企画は本日が締切ということで、遅まきながらこの企画最後のMVPをエントリー。

 2009年シーズンのG大阪のMVPを挙げるとするならば、遠藤、ルーカス、明神の3選手に焦点が絞られるだろう。おそらくこの企画でもこの3選手は絶大な支持を集めているはずだ。こちらではその中からやはり遠藤保仁をMVPに推したい。

 

 この数シーズンの中でも特にキャリア全盛期を感じさせるプレーを遠藤は09年シーズンに見せてくれたと思う。個人成績ではリーグ優勝した05年シーズン以来2度目となるシーズン二桁得点(10得点)を記録。7年連続のJリーグベストイレブンに選出されるどころか、遂には一昨年届かなかったAFC選出アジア最優秀選手にも選ばれるという充実したシーズンとなった。既知の通り、元旦に行われた天皇杯決勝では、2得点1アシストの大活躍でG大阪の大会連覇に貢献。その試合での彼の活躍ぶりは、W杯予選やクラブでの熾烈なスケジュールの中で、日本を代表する「クラッキ」であることを見事なまでに総括するプレーであったといえよう。今やこれほどまでに指揮官が信頼するゲームメイカーは希有なのかもしれない。「G大阪に遠藤在り」を改めて強く印象付ける試合、そして昨シーズンだったと思う。

 

 今年は南アフリカW杯を控える重要なシーズン。前回大会では唯一出場機会に恵まれない本大会メンバーだったこともあり、彼のW杯に懸ける思いは人一倍強いはずだ。海外チャレンジを望んでいるという報道も一部であり、日本代表にも欠かせないプレイヤーとしてキャリア全盛期の遠藤の動向にも注目が集まるはず。昨季のようなプレーを引き続き見せて欲しいところだ。

 ただ、今回のMVPにはもう一人最後まで迷った選手がいた。それは松代直樹だ。何とか彼を並列でMVPに推したい。

 

 おそらく、昨季の名古屋戦2試合における彼のミスが敗戦の直接的な原因となったことを考えると、多くの異論があるかもしれない。しかしながら、そういった理屈抜きで彼に思いを馳せた個人的な感情移入があった。奈良県出身の選手として97年にG大阪入団以来、13年間に及ぶ現役生活をG大阪1本で貫いた。昨季を最後に現役引退したが、かつて都築(現浦和)と並んでG大阪のゴールマウスを守るMade in NARAの2人の守護神の存在は、決して魅力的な強豪チームとはお世辞にも形容できなかった当時のG大阪において、個人的には大きかったと回顧できる。楢崎や都築と違って「高校時代からGKを始めた」という彼はその上牧高→天理大というキャリアからもノンエリートともいえる選手だった。その松代がリーグ優勝、ナビスコ優勝、ACL優勝、天皇杯優勝という全てのタイトルに居合わせられたことがこの上なく感慨深いのだ。昨季はリーグ優勝を果たした05年シーズン以来、10試合以上(13試合出場)でその信頼感の高さを窺わせた。最後までG大阪を引っ張り続けた「努力の選手」にささやかな賛辞を今改めて送りたいと思う。個人的にはまさに陰のMVPだと誇っている。

西野ガンバ9年目の冒険へ

2010年02月19日 | 脚で語るガンバ大阪
 新シーズン開幕を控え、Jでは各クラブが仕上げの最終段階に突入しているだろう。G大阪も来週のミッドウィークにACL水原戦、週末にはいよいよゼロックススーパーカップが近づいており、数少ない時間で最終仕上げに励まなければならない。リーグタイトルを渇望する西野監督もJ最長9年目に突入。そんな直前の段階に相応しく、今季から関西育成リーグに参戦する関西学生選抜チームとの練習試合が万博ガンバグラウンドで行われた。

 変則的に行われた試合は45分、30分、45分の計3本。最初の2本をG大阪は主力組で臨み、3本目にバックアップ主体のメンバーという形式。対する関西学生選抜もG大阪ユース出身の田中裕(関西大1年)を中心に、田中雄、金園(ともに関西大3年)など主力組が中心だった模様。試合開始から積極的に試合の主導権を握った関西学生選抜、今一つピリッとしないG大阪に牙を剥き、主力組との1本目を勝利した(結果は1-2、0-0、1-0)。彼らが関西のJクラブと育成リーグを戦うのは非常に楽しみだと思わせてくれた。なお、試合球にはACL直前ということもあって、大会使用のNIKE製ボールが使われている。

 
 1本目にルーカスとFWでコンビを組んだ平井。
 先取点となる得点を決めてアピール。今季は勝負の年。

 
 おそらく現在のG大阪では最も体のキレている二川。
 視野の広さと柔らかいボールタッチで時折学生たちを翻弄。

 
 シュートにクロスに積極性の目立った下平。監督の信頼は厚い。
 今季もスタートからライバル・安田理に一歩リードの様子。

 
 山口の不在で中澤と最終ラインでコンビを組んだ高木。
 しかし、失点の要因となる突破を許しアピールならず。

 
 橋本も時折攻撃面で効果的に絡むも、相手のチェックに苦しむ。
 しかしながら、コンディションは悪くなさそう。

 
 今季より副主将を担うルーカス。
 決定機を決められないなど「らしくない」場面も。

 
 東アジア選手権を戦い終えたばかりの遠藤。
 1本目のみ出場でコンディションを整えた。

 
 チョジェジンとドドは終始別メニュー。
 ランニングに徹しながら戦況を見守る。

 
 2本目はFW、3本目では左MFで出場の宇佐美。
 もう遠慮は要らない。爆発すべきシーズン。

 
 3本目にて左サイドを宇佐美と共に崩し続けた安田晃。
 3本目のメンバーでは最も印象に残った活躍。

 
 2本目から出場した河田に続き、内田も3本目から出場。
 菅沼とともに完封に貢献。ボディバランスに長けた印象。

 
 ゼ・カルロスは報道通り精彩を欠くプレーに終始。
 PKを外し、運動量に難がありフォアチェックの起点になれず。
 ため息と失笑を現場にもたらしてしまった・・・
 果たして彼の本領が発揮される日は来るのだろうか。

 ACLグループリーグ開幕まであと1週間を切った。クローズアップされたのはチームとしてのG大阪の物足りなさだった。昨季のチームから決定的なイノベーションは見られない。おそらくこの日のギャラリーの皆さんも不安要素を抱いただろう。これが杞憂に終わるのか。西野ガンバ、9年目の冒険がまもなく始まろうとしている。

お手並み拝見

2010年02月16日 | 脚で語るJFL
 今日16日に行われたJリーグ理事会にて、今季からJFLに昇格する松本山雅FCと神奈川県リーグ1部に所属するSC相模原の準加盟申請が承認された。

 Jリーグ以下のカテゴリーにアンテナを張っているファンには既知の通り、松本山雅に関しては今回の準加盟承認は申し分ない結果だろう。昨年12月に行われた地域リーグ決勝大会決勝ラウンドは地元アルウィンで行われ、4部のカテゴリーにも関わらず3日目には1万人を超える観衆がスタジアムに詰めかけた。あの地元の盛り上がりそのままに1年でのJリーグ参入を決めてしまうのではとも思ってしまうぐらいだ。とにかく松本山雅にとっては、Jリーグを目指すための万全の体制が仕上がったというわけだ。

 対して、準加盟承認チームとしては、史上最低カテゴリーでの加盟を果たしたSC相模原。以前もこのブログで書いたように、運営面では政令指定都市化を控える相模原市の全面バックアップも取り付けているようで、2階級特進のチャンスをこの準加盟によって見出したといっても良いだろう。つまり、JFA推薦枠を使った全国地域リーグ決勝大会進出が今季の戦績いかんで認められるだろうということである。その推薦枠の認可自体が「チーム力が群を抜いて強力であると認められること」といういささか曖昧な準拠枠であるために、この点は議論の余地を大きく残す(個人的にもこの枠は不要だと思う)が、とにかく県リーグカテゴリーでJリーグ準加盟を果たすということが驚きとしか言い表せない。これは純然たるクラブ側の何らかの努力の賜物なのだろう。

 ただ、あとはチーム自体が群を抜いて強力だといえるような戦績を残さなくてはいけない。昨年、一昨年の全国クラブチーム選手権大会を制覇しているとはいえ、アマチュアカテゴリー屈指の過酷さである全国地域リーグ決勝大会を戦い抜くレベルに達するかどうかは未知数だろう。それには10月に山口で行われる全国社会人選手権大会が一つの指標となるはずだ。選手たちはある程度のプレッシャーを背負わなければならない。また、3年前のMIOびわこ草津、昨季の松本山雅と金沢がそうであったように、例年ならば全社枠も地域決勝への進出が確保されるため、これは地域リーグで戦績が残せなかったチームへの敗者復活の権利となり得る。JFLへの貴重な切符ともなり得る権利だ。今回のSC相模原は、おそらく最低でもこの全社枠を勝ち取れる戦績を残さなくてはならないだろう。そうでなければ、おそらくこの「全社枠」というものの意味性がJFA推薦枠並みに曖昧にされてしまいそうである。そういう意味でも今季は様々な視点から彼らに注目が集まるだろう。全国の地域リーグファンから、いかにも「お手並み拝見」という声が聞こえてきそうだ。

悔しさ伝わらぬ終戦

2010年02月14日 | 脚で語る日本代表
 東アジア選手権が閉幕した。日本代表の戦績は女子が大会連覇となる優勝、男子が今日の韓国戦に完敗し1勝1分1敗で3位に終わった。

 久々の日韓戦はこれまでの中国戦や香港戦と違い、歴史的意味合いの強さも手伝ってか、何かしらの期待感に包まれていた。韓国が前の試合で中国に完敗するというサプライズも少なからず日本にとっては明るい話題に繋がっていたことは否めない。2010年低調な滑り出しだった日本代表の挽回のチャンスをこの韓国戦に見出したかった。しかしながら、いざ戦いの幕が切られると1-3という完敗に終わってしまう。言い表せない虚無感がテレビを通して伝わってきた。現地まで観戦に行かれた皆さんの悔しさもそのまま伝わってくるかのようだった。そう、ただただ一言「悔しい」結果になった。

 韓国は日本を良く研究していたのではと思う。遠藤の先制点となったPKの場面こそ相手の闘莉王に対するファウルに起因される場面だったが、リスクを覚悟でハードマークを敢行していた感はあった。対して攻撃面では縦への突破に脅威を感じさせた。1-1とされたまではまだ望みを捨てなかったものの、逆転された後に闘莉王の退場によって勝負は決したのかもしれない。最後尾に回った稲本が良くボールに触って状況を打開しようとしていたのが印象的だったが、やはり途中出場の岩政が安定感を欠いていたように、ああいった場合の最終ラインの構成にも問題点を晒すことになったのではないだろうか。

 Twitterを手にとりながら試合を観ていると、全国の現地・テレビを問わず観戦者の声がリアルタイムにタイムライン上に反映されてくる。当然ながら、この試合はポジティブな声が聞かれることはほとんど無かった。監督、選手を追及する声など様々である。個人的には日本代表チームから「悔しさ」がそこまで伝わって来なかったという気がしてならない。特に岡田監督の淡々としたインタビューは、「悔しさ」が言葉にも現れず、気持ちとしても伝わってこない残念な光景だった。万策尽きたという疲弊感はそこにはなかった。それは選手たちからも同様。力の限り戦い抜いたという印象が伝わってこなかった。

 南アフリカW杯の本番はもう4ヶ月後に迫っている。監督解任などの処置は期待していないし、必ずしもそれが正解だとは思わない。ただ、もっとファイトして欲しい。最後まで諦めず戦う姿勢を見せて欲しい。必死になってフィールドを走り回って欲しい。悔しさをどこにぶつけて良いものか、非常に苦しい後味の残った2010年最初の大会となってしまった。

疲弊する奈良とのジレンマ

2010年02月13日 | 脚で語る奈良クラブ
 13日に奈良クラブによる親子サッカー教室とトークショーが財団法人奈良市生涯学習財団の企画によって、中部公民館にて行われた。会場には幼稚園から小学校低学年を対象に親子でサッカーボールに触れ合いたいという親子が集合。インドア環境ながら場内からは楽しそうな歓声が終始飛び交った。

 トークショーでは、奈良クラブの現状と今後の目標などが話題として挙がり、改めて地域リーグからJリーグまでの道程が説明された。何よりも「拠点グラウンドがありません」という矢部の言葉は集まったオーディエンスの脳裏に鋭く突き刺さったに違いない。

 おそらく奈良クラブは、現状でJリーグを目指すとクラブ側から公言する日本国内の地域リーグクラブ勢としては、最も厳しい環境下に晒されているクラブの一つではないだろうか。固定された練習グラウンドが無く、市内の柏木公園を中心に行われる週に2回の数少ない練習は土のグラウンドゆえに天候に左右される(雨天時はほぼ中止)。もし練習ができたとしてもグラウンドにゴールは無く、19時から開始される練習はグラウンドの事情で21時に照明が消される。仕事を持つ選手が大半のクラブにとっては、彼らが合流しての練習は至難だ。そのため、わずかな練習試合の機会は非常に貴重な場となっている。もちろん、コンスタントに公式戦を開催できる本拠地といえるスタジアムの類もない。なかなか行政面でも奈良クラブに救いの手が差し伸べられる余裕が無いのが現在の奈良県の現状だ。

 県民に配布される「県民だより奈良」という広報誌がある。その2月号には、“県土の生命線”と称した特集で、奈良県による今後の幹線道路拡大の重点戦略が紹介されている。道路整備の遅れに起因すると考えられる県内の厳しいデータが一際目を引く。
 県内の企業立地が少なく、法人税収(法人事業税と法人住民税)は約2万2千円と全国45位の数字。全国平均である約5万1千円の半分に満たない。また、雇用と消費の県外流出が止まらず、県内就業率は70.7%と全国最下位。県内消費率も83.2%で全国45位と振るわない。おまけに世界遺産に恵まれた古都であるというのに、奈良県への観光客数は年間で約3,500万人。この20年で約600万人もの落ち込みを見せており、年間宿泊者数は約117万人でこれもまた全国最下位である。県の見解としては、これらの要素として全国43位という高規格幹線道路供用率の低さを問題視し、京奈和自動車道の開通に向けた取り組みをはじめ、県内経済を発展すべく対策を考えている。

 これらの数字を概観すると明らかなように、今までこのブログでも再三指摘してきた「奈良府民」と称される京都・大阪のベッドタウン都市としての役割はより如実に現れている。行政もなかなかスポーツ振興に本腰を入れられないことに納得する部分もある。奈良に新天地を求める選手への就職の斡旋もできないほどの状況。その県の経済状況とは裏腹に1年1年着実にステップを踏む奈良クラブの躍進は、それを支援する者への葛藤やジレンマとして今後もより多くの試練を与えていくだろう。今日のトークショーの中で、「もっと厳しい状況をいくつも体験した。大きなスポンサーも付いていないのは逆にチャンスだと前向きに考えたい。」と持論を展開した浜岡の言葉が若干の鎮痛剤のようにも思えた。

 ほんの小さなカルチャーハウスのスペースで、一生懸命に子供たちとボールに触れ合う奈良クラブの選手たち。今後はしばらくこういった土着的な活動が重要になるだろう。併せて結果を求めていかなくてはいけない難しさを今から選手たちは感じているはずだ。何年かかっても結果さえ出せれば周囲は徐々に変わっていくに違いない。最近はその言葉が皆の合言葉になろうとしている。

オープン前に堺NTCを堪能する絶好の機会

2010年02月11日 | 脚で語る地域リーグ
 今季はサテライトリーグの廃止によって、関西では、関西教育リーグと称した若手育成のための実戦の場が、既存J4クラブと関西学生選抜2チームによって設けられる予定だ。おそらくその会場としても大活躍するであろう堺ナショナルトレーニングセンター(堺NTC)のオープンが今春に迫ってきている。

 2006年の構想発表以来、堺市の臨海部である遊休地に2008年夏より工事が着工され、2010年4月に開設が予定されている。天然芝ピッチ5面(うち1面は照明設備と観客席を実装)、人工芝ピッチ9面、人工芝フットサルピッチ8面、その他にも400mトラックやクラブハウスなどを備えた申し分ない施設となっている。おそらく、関西教育リーグを含めた大阪府協会、関西協会、JFA主催の各種公式戦が今後積極的に開催されていくことだろう。

 そんな堺NTCのプレオープンイベントとして、関西リーグの8チームによるプレシーズンマッチが来る3月21日(日)に企画されている。これは、既に京都紫光クラブのオフィシャルホームページ上で明らかにされているもので、その京都紫光クラブをはじめ、Div2から三菱重工神戸、テクノネット大阪、昇格を決めたばかりの関学クラブ、Div1からアイン食品、バンディオンセ加古川、奈良クラブ、ルネス学園甲賀と合計8チームがエントリーされている模様。これらのチームが2会場に分かれて計4試合を行うようだ。関西協会や関西社会人連盟による各チーム開幕を1ヶ月弱に控えたタイミングでの交流試合という絶好の機会の提供、かつ最新の施設を堪能できるという粋な計らいではないだろうか。

日時及び各組み合わせは以下の通り
(現地における会場等は未定)

3月21日(日)
12:00キックオフ
アイン食品VS三菱重工神戸
バンディオンセ加古川VS京都紫光クラブ

14:00キックオフ
関学クラブVS奈良クラブ
テクノネット大阪VSルネス学園甲賀

奈良クラブVer.2010へのステップ

2010年02月07日 | 脚で語る奈良クラブ
 チームからリリースされていた新加入選手も合流し、2010年度の戦いに向けブラッシュアップ真っ最中の奈良クラブ。この日は大阪産業大と練習試合を行った。

 試合は45分×3本(2-0、2-0、1-0)という内容だったが、大きかったのは終始失点を許さず完封で乗り切ったこと。特に最若手の岡元、アルテ高崎より新加入の浜岡という守備陣の健闘が目に付いた。また、この日に町田ゼルビアから加入の決まった李成浩(リ・ソンホ)もプレー。FC京都から移籍の牧もPKながら奈良クラブ初得点を飾るなど新加入選手がその活躍を確かに見せてくれた。

 
 昨季、新潟戦に出場するなど経験を積んだ岡元。
 今季は定位置確保に燃えている。

 
 AC長野パルセイロより加入の大塚は冷静に先制点を決めた。
 機を見たドリブル突破は大きな武器。飛び出しも鋭い。

 
 畑中との両翼は今季も健在。
 金城は自身で獲得したPKを蹴るなど積極性を披露。

 
 牧は移籍後初得点をPKで決める。
 右MFも務めるなど、能力の高い彼を今後どう活用するのか。

 
 激しいコーチングでチームを叱咤する浜岡。
 JFLでの豊富な経験値を引っ提げて堂々のTMデビュー。
 1対1にも高さにも強さを見せた。

 
 この日加入が決まった李成浩はボランチとして出場。
 JFLの町田から加入する中盤のプレイヤー。
 浜岡に並ぶJFL経験者の加入は大きい。

 先週のルネス学園甲賀とのTMは2-2に終わったものの、この日は依然スタミナと走力に長けた大学生を相手にカウンターを食らうなど危ない場面はあったが、守備陣が集中力を維持。結果的に零封で乗り切る。また、最後尾からしっかりボールを繋ぐ意識も見えた。負傷組の梶村、和阪を除けば、全体的にコンディションも良く、少しでも実戦形式でコンビネーションを構築したいところだ。4月の開幕に向けて奈良クラブの2010年バージョンが静かにそのベールを脱ぎ始めている。