脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

久保がいなくても宮吉がいる -京都vs湘南-

2011年11月02日 | 脚で語るJリーグ
 先週の29日(土)に西京極ではJ2第33節が行われ、13位の京都が8位の湘南と対戦。つい3日前の水曜にも震災による延期分で対戦していたこの両者。膠着する試合は宮吉の1点によって決着がついた。これで京都は4連勝。対する湘南は京都に1週間で0-1の2連敗。11位に順位を落としてしまい、10位へと浮上した京都に抜かれる形となった。

 

 前回、水戸戦を観に来て以来となったこの試合。あの後、京都は連敗を喫したもののそれを2でストップ。上位陣の徳島に0-2で敗れたのは痛かったが、続く札幌、大分に連勝すると、水曜日にはアウェイ・平塚で湘南に1-0と勝利。しかもその1点は皮肉にもかつて京都に在籍した田原のオウンゴール。勢いを取り戻した京都はU-18代表招集で久保を欠くものの、湘南を2タテすべくここ4試合で3得点と絶好調の宮吉を軸に据えて守備陣は4バックになっていた。前回観戦した水戸戦に比べると、駒井や伊藤がベンチに下げられており、新たな選手たちが名を連ねている見慣れない布陣。福村、酒井が左右のサイドバックを務め、内野と秋本で中央を形成。中盤は中村充とチョン・ウヨンのボランチコンビに中山、工藤がサイドハーフを務めた。宮吉とコンビを組むドゥトラは前節に続き2試合連続の先発となった。
 対する湘南はミッドウィークの雪辱をと1人もメンバーは変更なし。個人的にも約1年ぶりの湘南を見るのは楽しみであったことで、同席させてもらった湘南サポーターの方から解説を聞きながら試合に見入った。今季から磐田でプレーしていた大井が最終ラインに入り、前線は田原をサポートするように坂本がコンビを組む。注目は昨季特別指定選手ながら11試合に出場したボランチ・永木と昨季の関東学生2部リーグで得点王に輝いた高山。この2人の精力的なプレーで京都へのリベンジを狙った。

 
 かつて京都でもプレーした田原。
 湘南では3シーズン目。昨季は4得点とJ1で苦しんだ。

 
 大阪桐蔭高出身の福村が京都は先発。
 本職の左サイドで2年目とは思えない落ち着いたプレー。

 京都は序盤から丁寧に繋ぎながら湘南の守備をこじ開けようとする。対する湘南も体躯的に前線の起点となり得る田原にボールを集めてチャンスを作りたい。しかし、京都の守備陣がこれを許さない。湘南の守備陣も同じく京都のゴール前の攻撃を弾き返した。

 
 びわこ大から苦心の練習生を経て入団した内野。
 すっかり大木監督の信頼を掴んだ様子。

 
 湘南のGKは今季から加入の西部。
 まだJ2では十分すぎる能力の選手。

 後半に入ってもスコアレスの展開は続く。徐々に両者長いボールを多用するサッカーへ。京都は中村充に代えて加藤を投入。湘南も田原をあきらめ、ルーカスを投入する。運動量の消耗が見られてきた終盤に双方のチャンスが増えてきた。宮吉の至近距離からのシュートが豪快にバーを叩き西京極を沸かせる。82分には岩尾からのパスに抜け出した湘南・ルーカスが大きなチャンスを迎えるが、ここは京都GK水谷がファインセーブで切り抜けた。

 
 湘南のアジエルは相変わらずキープが上手い。
 なかなかボールを取られないが決定機には絡めず。

 
 京都は宮吉がこのビッグチャンスを決められない。
 しかし、裏を取る動きは「13」の継承者に相応しいのかも。

 1点を争う試合は86分に動く。工藤のパスを受けた宮吉が湘南の守備陣を突破し、左足で正確にシュートを決める。完璧なシュートコースで決まった得点は京都の勝利を確定させるに相応しい1発だった。その後最後まで京都が守り切り、順位逆転に重要な試合を制した。

 
 
 
 
 
 
 華麗な1発を見せた宮吉の決勝点。
 今季は序盤戦は不調に喘いでいたが、ここに来て爆発中。

 当初は、駒井や伊藤らの台頭もあって、ヤングパワー著しい京都だったが、そのヤングパワーを発揮しているのは彼ら下部組織出身の選手だけではない。この日先発出場した福村や内野も十分京都の主軸として相応しいプレーを見せていた。何よりもパスセンスに長けた工藤の復帰という大きなプラス要素もあって、選手層の厚みと繋ぎという点でサッカーの幅が増した印象だ。これで久保が帰還して仕事をし続ければ、残り5試合は相当来季へ向けた前進が見せられるのではないだろうか。
 対する湘南は、1点に泣いた。少し後半に入って運動量がダウンした印象が強かったが、それでもルーカスの投入はその1点を先に奪える大きな分水嶺だった。京都GK水谷の気迫もあってかあと一歩及ばなかったようだ。京都の2連戦以前、湘南は3試合で10得点1失点という好内容だっただけに、これは悔しい2連敗となった。

初めてのゴール共演 -京都vs水戸-

2011年10月03日 | 脚で語るJリーグ
 J2の第30節、14位・京都がホーム西京極にて18位・水戸を迎え撃った一戦。ここまで7月10日の栃木戦よりホームでは負け知らずだった京都だったが、水戸の吉原、鈴木の2トップの得点によって0-2と完敗。京都は3試合ぶりの敗戦。対する水戸は10試合ぶりの勝利となった。

 

 13:00というキックオフ時間が示すように、暑さが影を潜めてようやく秋を感じさせる10月に突入。絶好の好天になった西京極だったが、ここで対峙する両者の順位は共に14位と18位という芳しくない状況。しかしながら、個人的には長期の負傷から復帰した元G大阪の吉原、そして今季より加入した元日本代表FWの鈴木隆という豪華絢爛な2トップがJ2で見られるとは思えなかった。水戸の試合を生観戦するのは3年ぶり。前回も同じくここ西京極だった。
 ホームの京都は前節、千葉を1-0と振り切った。明らかにこの順位にいるのはおかしいという陣容とサッカー。西京極に足を運ぶ度にその勝負強さを見せてくれるチームだが、アウェイでの戦績が振るわず、好調さを窺わせる中にも27節のFC東京戦では1-6と大敗するなど、決して一筋縄でいかないようだ。しかしその大敗後の草津戦より新布陣の3-5-2が機能し出したようで、宮吉と久保の2トップも好調の様子。この日は秋本の負傷の影響で最終ラインに入っていた安藤が出場停止だったが、内野、森下、酒井という3バックにチョン・ウヨンをアンカーに置いて伊藤、内藤、中山、駒井が並ぶ中盤。前線では宮吉と久保が組んだ。
 対する水戸は5連敗を含む9戦勝ちなしという厳しい状況。しかしそのほとんど敗戦が1点差という試合で、上昇のきっかけは掴めそうな予感。現にこの2試合は岡山、大分に引き分けており、内容はそこまで悪くなさそうだ。練習場が先日の台風の被害でメインの練習場であるホーリーピッチが水没し、那珂総合公園やツインフィールドを転々としながらトレーニングを続けているようで、苦しい戦績に輪をかけて逆境は続く。この日は鈴木隆が先発出場で吉原とコンビを組む。ここまでこの2人が先発で並ぶのはあまり無かったようなので、これには驚いた。ゲームキャプテンは一昨年まで関西大にいた西岡が務めている。

 前半から互いに見せ場を作る試合となった。14分には京都の最終ラインの隙間を縫うように吉原が中央へ入り込み、小澤からのパスをシュートまで持ち込む。ここは京都・GK水谷が防ぐが、吉原のスピードは十分目立っていた。対して京都も30分にチョン・ウヨンが強烈かつ正確なミドルシュート。水戸・GK本間がナイスセーブに遭うものの、直後のCKから京都はDF内野がポスト直撃の惜しいヘディングシュート。35分にはドリブルで中央へ入った伊藤から久保へのスルーパスから久保がシュートを放つが、ここもわずかにバーの上へとシュートが浮いた。水戸は43分にカウンターからの攻撃。ロメロフランクのドリブルからパスを受けた鈴木隆がシュート。わずかに左に逸れるが、水戸の吉原と鈴木隆のコンビは十分輝きを放っていた。

 
 京都の見せ場を作るためには駒井の存在は不可欠。

 
 久保は再三シュートを狙う。
 この3試合で3得点と絶好調だったが…

 
 前半から屈強な当たりの強さを見せていたロメロフランク。
 ドリブルで持ち込む場面も多く見られ、印象に残った。

 どちらも得点にあと一歩という前半を折り返して、後半に入ると水戸は先手を打ってくる。村田に代えて鶴野を投入して右サイドバックへ。そして右サイドバックを務めていた西岡がボランチへとポジションチェンジ。すると、後半開始早々の48分にロメロフランクから小池に繋ぎ、小池から再びロメロフランクに返すと、ロメロフランクがこれを強烈なシュート。これは京都・GK水谷のセーブでサイドラインに逃れたが、直後のスローインから水戸はボールを即座に入れると、京都の守備陣が整う前にロメロフランクから攻め上がった鶴野へ。鶴野の折り返したボールはファーでフリーになっていた吉原が頭で合わせるには十分すぎるボールだった。これを吉原がヘッドで決めて今季初得点。水戸が先制に成功する。

 
 
 待ちに待った吉原の今季初得点。
 喜びはゴール裏のサポーターと共に分かち合う。

 54分には、最終ラインから大きく蹴られたボールが前線の鈴木隆の下へ。鈴木隆は相手DFを背負いながら全速力で駆け込みシュートするもGK水谷の阻止に遭う。まるで2002年W杯ベルギー戦(@埼玉)の時の彼の得点時のデジャヴを思わせるその光景にアウェイ側は沸き立った。ここは得点に至らなかった水戸だが、この直後にGK本間のフィードをサイドライン際で拾った小池が一気にドリブルで突進。京都・DF内野を一気に抜き去ると、そのまま中央へ折り返して難なく鈴木隆が流し込んだ。見事な流れからの展開のみならず、シュートの直前で鈴木隆は相手DFと見事な駆け引き。全く相手を寄せ付けずフリーになっていた。

 
 
 
 まるでベルギー戦の彷彿とさせる場面。ここは決まらず。

 
 
 
 
 
 
 しかし、三度目の正直と言わんばかりにこの得点。
 鈴木隆行、今季3得点目で水戸が追加点。

 後半の序盤で一気に2得点を叩き出した水戸。前半からカウンターの度に前線で躍動する吉原、そしてあらゆる所に顔を出してボールをもらう鈴木隆の動きは際立っていた。決定機こそ京都に分があったが、0-0で折り返せたのは水戸にとっては大きかっただろう。京都の守備陣の手薄な場面を良く突いた。柱谷監督の先手を打つ采配も得点に繋がった。
 その後も2点のビハインドを追う京都がアタックをし続けるが、水戸の守護神・本間の好セーブも光り最後まで得点ならず。2-0と水戸が完封で乗り切り、開幕戦に続く京都戦の勝利となった。

 
 90分間集中した本間の好守も光った。

 
 ゲームキャプテンの西岡は後半からボランチへ。
 ミスが少なく、すっかりチームの主軸。

 
 ゲーム中も激しく指示を送る水戸・柱谷監督。
 何とかこの勝利を上昇のきっかけにしたいところ。

 今季初となる吉原と鈴木隆の先発からのゴール共演。2人が共に前半からピッチに立つと思っていなかったので、揃ってゴールまで見せてくれるとは感無量。こんなことはなかなか生観戦では成し得ないだろうという値打ちのある試合だった。まだまだ十分Jでは力を発揮できる2人と、ロメロフランクや再三見せ場を作った小池など実力のある選手がいるのは確かで、この京都戦だけ見れば、水戸は中位への巻き返しは可能だと思う。震災や台風の影響など逆境に耐えながら戦っているのはサポーターも同じく。チームを引っ張るベテランFWの2人に牽引も含めて、水戸の残り試合は少し気にしておきたい。
 対する京都は、ホームで約3ヶ月ぶりとなる敗戦。ここで勝点3ポイントが積み上げられれば、順位は上がったであろうだけに残念。試合後にはスタンドから厳しい声も飛んでいたが、次節、次々節とホームで徳島、札幌と上位陣を迎えるこれからが正念場。いつも後半に投入されるダンを筆頭に久保、宮吉ら以外のFW陣の奮起が求められる。

 
 
 鈴木隆行、吉原宏太の存在は水戸には大きい。

 
 かなり険しい表情が印象的だった京都・大木監督。
 上位陣との連戦が続く次節から踏ん張りどころ。

西京極3連勝、じわじわ進撃 -京都vs千葉-

2011年08月28日 | 脚で語るJリーグ
 J2は第26節、15位の京都が4位の千葉をホーム・西京極に迎えての一戦。試合は京都がオウンゴールで先行すると、後半一時は千葉に同点に追いつかれるものの、期待のエース・宮吉の今季リーグ初得点で勝ち越し。2-1と勝利した。これで京都はホームで3連勝。対する千葉は3戦連続で勝ち星に見放された。

 

 ここまで7/31の鳥取戦、8/14の北九州戦と西京極で今季の京都を見てきた。すると2連勝でホームではすこぶる調子が良い。現にその鳥取戦から4試合で2勝1分1敗。前節こそアウェイで札幌に1点差で敗れたが、どうも個人的な印象だとヤングパワーで押せ押せの京都はまだ順位を上げられるはず。しかしながら、今節の相手はJ2優勝候補の千葉。延期の影響で京都と千葉の対戦は今季初。どちらもJ1復帰を目指すチームの対戦。注目される一戦となった。
 京都は、布陣として前回観戦した北九州戦とほぼ変わりなし。A契約条件をクリアし、5年契約が濃厚と言われる久保を筆頭に、宮吉、伊藤が3トップを組み、中山がトップ下の位置、左右に安藤、駒井、そしてチョン・ウヨンがアンカーとして森下、秋本、酒井という3バックの前の鎮座する。そして、開幕前に大怪我を負っていた工藤が古巣との一戦で初のベンチ入りとなった。
 対する千葉は、ここ2戦無得点で未勝利と、J1昇格へ向けて踏ん張りたいところ。既に3試合もオーロイと深井を負傷で欠いており、この試合ももちろんメンバー外と苦しい状況。坂本、青木良というお馴染みの両サイドバックに、センターではマーク・ミリガンと竹内がコンビを組み、ボランチにはファンゲッセル、佐藤、米倉がトップ下の位置に入り、村井、太田がウイングとして左右に配置。トップは青木孝が入った。

 
 8月最後の土曜日。
 アウェイ席には多くの千葉サポーターが。

 ゲリラ豪雨の襲来を上手くかわした西京極。雨がパラつく中で試合はスタートする。序盤から千葉が果敢なプレスで京都からボールを奪おうとする。8分にチョン・ウヨンが千葉のゴール前で際どいFKを見せてこの試合のファーストシュートとなる。京都は駒井、伊藤の右サイドのコンビで仕掛けたいところだが、千葉のプレスの網はここを警戒しており、なかなかその形が作れない。久保に至ってはなかなかシュートのために前を向かせてもらえなかった。
 ところが千葉も我慢の時間帯が長く続いた。ボールを奪ってもなかなかシュートチャンスを作れない。19分に佐藤から絶好のスルーパスが出されたが、これを米倉が決められない。千葉のチャンスはこれがほぼ初めてだったが、この大きな決定機を千葉は決められなかった。

 
 京都は安藤が若い中盤を中山と引っ張る。

 
 佐藤は古巣のサポーターから強烈なブーイングを受ける。
 19分には米倉に絶好のスルーパス。

 
 眼光鋭くゴールを狙う久保。
 期待はかかるが、11試合連続無得点と沈黙中。

 27分には、千葉が太田のサイドチェンジを右サイドで受けた竹内がエリア内でシュート。これを至近距離で京都・GK水谷が身を挺してセーブする。徐々にサイド攻撃が効いてくる千葉に対して、攻撃で低調の京都は守護神を筆頭に守備で魅せた。32分にもファンゲッセルの落としを受けた米倉のシュートを水谷がきっちりセーブして京都は先取点を許さない。
 するとその直後、34分にチョン・ウヨンの左CKから千葉のファンゲッセルが頭に当ててしまいオウンゴール。京都がラッキーな形で先制点を奪う。このCKの場面、どう考えても競り合いすら許されないほどの身長差で京都・DF秋本はマークされていたが、秋本のヘッドに見えて、その高さが仇となったのは千葉・ファンゲッセルの方だった。

 
 
 まさかまさかの千葉、オウンゴール。
 高さが裏目に出たか。

 
 激しくボールを奪い合う京都・中山と千葉・佐藤。
 一昨年まで同じ京都でプレーした仲。

 
 37分、伊藤のドリブルでチャンスを作る京都。

 1-0と京都リードで折り返した後半、千葉が立ち上がりから猛攻を仕掛ける。よっぽどドワイト監督から叱咤があったのか、京都は劣勢に縛られる展開。59分には太田に代わって投入された元京都の林に更に前線で苦しめられる。すると、62分には千葉がスローインからボールを受けた佐藤が一気に左サイドを駆け上がった村井へ絶妙なロングパス。村井はこれを左足でトラップして京都のDF酒井をかわすと、そのまま右足でシュート。これが決まって千葉の同点弾となった。

 
 
 
 
 後半から積極的に仕掛けていた千葉・FW村井。
 62分に佐藤からのアシストを見事に同点ゴールに。

 まだまだ京都もここから。64分には千葉陣内の左サイドからチョン・ウヨンのFKに走り込んだ秋本がヘッド。わずかにゴールには及ばないものの、すぐにセットプレーでこのように決定機を作れた京都が諦めずにチャンスを作ろうとする。73分には千葉の一瞬の隙を突いた。京都陣内でチョン・ウヨンが青木孝を倒してしまい、千葉のFKで始まったが、これが軽率だったか、すぐさま京都がマイボールにして速攻。センターサークル付近で伊藤がボールを受けると、上手く反転して前方へロングパス。すると、オフサイドギリギリで宮吉が飛び出す。この絶妙な飛び出しから宮吉が選択したのは長距離からのループシュート。千葉・GK岡本が飛び出しているのも見て、宮吉は足を攣りながらも30mはあるとかというロングループシュートでネットを揺らした。

 
 値千金の勝ち越し弾を決めた宮吉。
 得点を決めた後は足を攣ったのかご覧の通り。

 
 守備では固く、攻撃ではチャンスを作った秋本。

 
 今日はなかなか攻撃機会がなかった駒井。
 我慢して守備で貢献。

 勝ち越しても守りには入らない京都。宮吉、久保に代えて、内藤、ドゥトラを投入。ロングボール主体に切り替えて千葉から逃げ切りを図る。千葉も最後まで攻め抜くが、京都の集中した守備の前に同点弾ならず。試合は京都がこのまま逃げ切った。

 
 林を途中から投入するが、千葉は及ばず。
 オーロイ、深井の離脱が大きそう。

 
 かつてG大阪でプレーしていた青木良。
 千葉も4年目ですっかり中心選手に。

 京都は先制点こそ前半唯一のCKから相手のオウンゴールというラッキーな形だったが、まさに後半の千葉の猛攻を凌いでの守り勝ち。少ないチャンスで宮吉が決められたのは大きかった。これで7勝目となり、10位台突破も見えてきた。J2は中位の各チーム勝点が団子状態の混戦。まだまだ京都の順位はこれから上がってきそう。
 対する千葉は、オーロイ、深井と個人的に見たい前線の選手が出ておらず、攻撃面で詰めが甘かったか。直近の戦績を見ても芳しくなく、長丁場のJ2で明らかに我慢の時期が続いている。勝点1ポイント、2ポイント差で追うFC東京、徳島、栃木は明日試合を残している。その差を開かれると厳しいだろうし、背後には札幌、北九州の足音も確実に近付いている。

魅惑のカルテット -京都vs北九州‐

2011年08月16日 | 脚で語るJリーグ
 J2は第24節を迎え、京都・西京極ではホームの16位・京都が今季好調の5位・北九州を迎えて対戦。3連勝と波に乗る北九州を京都が伊藤の得点で1-0を破り、今季6勝目を挙げ、14位へと順位を上げた。

 

 18時キックオフということもあり、まだまだ暑い京都。しかし、昼間に奈良でデイゲームの天皇杯県予選を終え、直行した形ではあったが、13分ほど遅れてスタジアムに駆け込むと、先制点が決まったまさにその瞬間であった。その先制点は京都の若手注目株・伊藤。前回の鳥取戦を観戦した際に、この伊藤を含めた宮吉、駒井、久保のU-18出身組が面白いことは十分実感しただけに、やはりこの試合でも注目は彼らカルテットの存在だった。

 直近5試合で1敗しかしていないものの、前節の東京V戦を含め勝ち切れない試合も見られる京都。しかし、この試合では3連勝中の北九州を相手に積極的に攻め込んだ。京都は前節からドゥトラをベンチスタートにし、宮吉と久保、伊藤のトリオで3トップを形成。この3人がスピードを活かして勢いある攻撃を披露。特に久保は高校3年生とは思えない思い切りの良さで守備の固い北九州を再三破る。13分の先制点も久保のミドルシュートを北九州GK佐藤が弾いたところに伊藤が詰めるという形だった。

 
 2種登録ながら久保の存在感は圧巻。
 今季ここまで5得点でチーム得点王。

 
 京都は宮吉が先発出場。
 意外なことに彼は今季まだゴールがない。

 
 右サイドはおまかせ、スピードある駒井。

 この順位が嘘かと思わせてくれるような京都の攻勢に、北九州は苦戦。点差はわずか1点差だが、前節ポカスタで見たような速攻で脅威を感じさせるものの、ゴールを割れない。それよりも京都の若手選手に守備陣が振り切られる場面が多く、特に京都の伊藤、久保をマッチアップに回す両サイドはかなり苦戦を強いられていたように思う。これに起因して前半からエリア近くからの京都のFKのチャンスが多かった。22分にはエリア右サイドからのチョン・ウヨンのFKにファーで宮吉が合わせるが、惜しくもゴールラインを割るかというギリギリのところで北九州DFのクリアに遭う。直後には宮吉のクロスを安藤がヘッドでゴールを肉薄するなど、チャンスメイクは試合を先行する京都の方に分があった。33分には、再びチョン・ウヨンのFKが相手DFのクリアミスも誘ってバーを叩く。39分には宮吉と久保のワンツーから突破した後、北九州守備陣が狭いところでクリアミスしたボールを拾って伊藤が抜け出し、GKをかわしてゴールを狙うも、シュートはポストに嫌われるなど、京都は幾度となく追加点のチャンスを作り続けた。対して北九州はほとんどシュートを打てないまま前半を折り返すこととなった。

 
 正確なプレスキッカー、京都のチョン・ウヨン。

 
 前節の徳島戦でも光っていた北九州のDF宮本。
 この日は全体的に守備陣が鈍重だった。

 後半に入って、北九州もレオナルドを開始から投入。安田、木村を介して攻勢に転じるが、GK水谷を中心に集中した守備を見せる京都を崩せない。下手にボールを奪われると、駒井、伊藤のスピードある攻撃で反撃を食らう。京都の運動量が落ちてきたところを攻め込んだが、最後の最後までゴールを陥れることはできなかった。

 
 先制点を含めて、何度もチャンスを作った伊藤。
 今Jで、最注目すべき若手かもしれない。

 
 北九州は後半開始からレオナルドを投入。
 何度もサイドの深い位置へ攻め込んだが、1点が遠い。

 
 水谷の再三のセーブで後半逃げ切った京都。

 前回観戦した鳥取戦も1-0で勝利している京都。冒頭にも書いたように、たった2試合しか観ていないが、この2試合だけでも14位という順位が嘘のよう。もう駒井、伊藤、宮吉、久保の4人を見るだけでも価値を見出せる攻撃面での面白さがある。この試合、一体何度伊藤にゴールのチャンスがあったことか。負け試合を見れば印象は変わるのかもしれないが、ここまで元気の良い下部組織上がりの選手たちは他にいない気がする。今季はスタートダッシュに失敗した京都だったが、伊藤や久保が活躍してから明らかに結果がついてくるようになった。開幕前の改革はじわじわ結果を導いているのではないだろうか。
 対する北九州は、1点が最後まで遠く、4連勝のチャンスを逃してしまった。直近10試合で6勝を挙げているものの相手をゼロに抑えて1点差、2点差で逃げ切る試合が多いだけに、ビハインドを負った際にいかに試合をひっくり返せるかが課題なのかもしれない。守備陣が再三サイドを取られていたのが気になったが、今季先制されてからの逆転勝利が富山戦しかないことを考えれば、守備陣が踏ん張れずに失点を喫した際にもう少し計算できる得点力が欲しいかもしれない。

 
 北九州の俊足エース・池元。
 ここまで6得点、今後に期待。

 
 京都は今後楽しみなチーム。
 残り18試合でどこまで勝ち星を積み上げられるか。

カンスタ、熱狂 -岡山vs熊本-

2011年08月07日 | 脚で語るJリーグ
 震災の影響で延期されていたJ2第3節は、5日5試合が行われ、岡山・kankoスタジアムでは15位・岡山が8位・熊本と対戦。試合は後半に岡山が怒涛の4得点で4-0と快勝した。

 2007年の地域リーグ決勝大会で岡山のJFL昇格を見届けて以来、毎年kankoスタジアムには足を運んでいる。何しろ「ファジフーズ」と題されたスタジアムグルメは、バリエーションも豊富で美味しいものが多く、その雰囲気はJFL時代からJリーグさながらといった雰囲気だった。J参入後も岡山の認知度は順調に向上しているようで、この2シーズンは1万人を時に超えるほどの観客動員を記録している。グルメだけでなくスタジアムも良い雰囲気だ。この日は、岡山市内で花火大会があったらしく、キックオフ前に岡山サポーターさんから話を聞くと、やはり少ないらしい。それでも5,455人が会場に訪れていたのはなかなかのものである。

 
 岡山のサポーター席には「Forever 松田直樹」という横断幕が。

 岡山は、ここまで5勝5分8敗の15位。今季からかつて広島で活躍したFWチアゴが加わり、明らかに得点力はアップした。3連敗の後に直近5試合では2勝2分1敗と悪くない数字。今季は北九州に2連勝、栃木、徳島にも負けておらず、上位陣には相性が良いようだ。6位・札幌から19位・富山までがわずか勝点11ポイント差という混戦状態の中位陣だけあって、1勝するだけで大きく順位は変動する可能性もある。この日の先発にはGK真子をはじめ、DFに近藤、植田、ストヤノフの3バックに、竹田、千明のボランチと両翼に澤口、小林、そしてトップ下の位置に石原、臼井、1トップにチアゴという陣容でホーム5試合ぶりの勝利を狙う。
 一方の熊本は、6勝8分4敗の8位という状況だが、なんとこの5試合で3分2敗と勝利に恵まれていない。特に7/24の22節・FC東京戦では0-5と大敗。その翌週も湘南に0-1と敗れ連敗中。なんとかここで復活の1勝を挙げておきたいところ。この日は前節の湘南戦から先発5人を入れ替える荒療治。G大阪から期限付き移籍加入直後の菅沼センターバックに抜擢し、チョ・ソンジンとコンビを組ませ、サイドバックには右に市村、左に原田。そして中盤はエジミウソンの1ボランチにトップ下を武富が務め、サイドに根占、片山、前線は長身の長沢、宇留野というコンビで試合に臨んだ。

 
 試合前にここでも松田直樹のための黙祷が捧げられる。

 試合は、前半から両者互いの出だしを窺う慎重な姿勢。熊本は高さのあるエース・長沢をターゲットにしっかりエジミウソンを軸にしたポゼッションを展開。あまり全力で来ない岡山のプレスの甘さを突いてボールを回した。岡山は決してエリア内までは持ち込ませないものの、序盤からなかなか熊本陣内の深い位置まで攻め込めない。臼井、小林、澤口のドリブルでカウンターから好機を見出す。
 17分に、岡山の守備からのこぼれ球を拾った熊本・根占が強烈なシュート。ここは岡山・GK真子がセーブするが、そのこぼれ球に長沢が反応していたところを岡山・DF植田が上手くクリアした。この場面が前半の最も大きな決定機だった。ただ、このピンチで目が覚めたのか次第に岡山がパスを繋げるようになってくる。熊本にはしっかりチアゴをマークされており、ここへのチャンスボールをいかに入れられるか、またはチアゴに頼らずいかにチャンスを作るかが岡山のタスクであった。22分には左から小林のクロスをチアゴがヘッドで熊本ゴールを脅かす。41分には澤口の右からのアーリークロスにチアゴがダイビングヘッドでゴールを狙うものの、前半は互いに譲らず0-0で折り返す。

 
 岡山陣内へ攻め込む熊本・宇留野と守る岡山・ストヤノフ。

 
 マッチアップする熊本・片山を潰しにかかる岡山・澤口。

 
 熊本のFW長沢はここまで6得点。4試合ぶりにゴールを狙いたい。

 両チームが膠着状態をいかに脱するか、注目の後半戦だったが、試合は1分もせぬ時間帯に動いた。キックオフ直後に熊本陣内まで深く攻め込んだ岡山は、熊本・菅沼のクリアボールを岡山・MF竹田がエリア前からダイレクトでシュートを決める。熊本・GK南は一歩も動けず。この豪快なシュートが岡山をホームで久々の勝利に導く起爆剤となる。

 
 後半開始直後、竹田が決めて試合が動く。
 千葉とジェフリザーブズを行き来した苦労人。

 
 熊本のDF菅沼とルーキーの岡山・MF石原が競り合う。

 
 熊本のエジミウソンの存在感はさすが。

 熊本は、後半開始からFWファビオを投入。49分には左からのクロスにヘッドで合わせて岡山ゴールを狙うが、惜しくも決められず。前半と同じくポゼッションで組み立てたい熊本だったが、徐々に良い形で岡山がボールを奪える時間が増えてきた。それでも1点を追いかける熊本が試合のペースを握る岡山としては我慢の時間帯は続く。
 69分に岡山は臼井に代えて久木田を投入。シーズン前に東京大学出身のJリーガーとして話題になった選手だ。今季新加入でここまで2得点と結果も残している。すると、この影山監督の采配がすばり的中した。石原の浮き球の折り返しをチアゴがエリア内で胸で落とすと、久木田はファーストタッチでこれをバイシクル気味にダイレクトでボレーシュート。これは実に見事にゴール右隅に決まる。百戦錬磨のGK南も届かないギリギリの絶妙なコースだった。

 
 
 
 このチアゴの落としを久木田が見事に決める。
 kankoスタジアム熱狂。

 勢いに乗った岡山は、72分に石原が熊本エリア内まで強引な突破を仕掛けるが、熊本に合流したばかりの菅沼がこれを必死のクリア。しかし、この直後のストヤノフによる左からのCKをチアゴがヘッドで決めて3点目を奪った。

 
 
 
 
 ストヤノフ⇒チアゴのホットラインが炸裂。
 岡山の猛攻が止まらない。

 15位に甘んじているとは思えない岡山の得点力。時間を経過すればするほど、前半のおとなしさに比べてその勢いを増しているようだった。77分には自陣で相手のミスを突いて、ストヤノフが30mほどドリブルで攻め上がるなどこの日の岡山はホームスタジアムを盛り上げる。しかし、まだ岡山の「劇場」はこれで終わりではなかった。
 後半終了間際のアディショナルタイム。ここにきて岡山は熊本陣内で冴えあるパスワークで相手を翻弄。ボールを奪われない。そして何本もパスを回した最後は小林からストヤノフにボールが渡る。するとストヤノフはそのままするするっとエリア前までドリブルで持ち込むと左足を一閃。豪快なシュートはゴール左上に決まって岡山がダメ押しの4点目を挙げた。

 
 
 ストヤノフが魅せた最後のシュート。
 J3年目、ファジアーノ岡山にこの男の存在は大きい。

 試合は思わぬ大差がついての決着。岡山がJ参入以来初となる4得点での快勝だった。しばらくホームで勝てていなかっただけに、この試合はチームの歴史に残る大きいものになるだろう。来季のJ2で昇格レースを演じられるチーム作りへ向けて着々と上昇傾向にある岡山。次節は前回0-4と大敗を喫した東京V戦、この試合でも真価が問われそうだ。
 対する熊本は、最後まで攻撃面で噛み合わず、敗戦を喫したが、この試合でも5人が入れ替わるという苦心中。来週は大分との九州勢対決で負けられない試合になると思うが、昨季の熊本からすればまだまだこんなものではないはず。南、エジミウソンら経験者を揃えるだけに、この正念場をいかに乗り越えるか期待したい。途中加入後すぐに先発に抜擢された菅沼も少しミスが散見されたが、元来フィジカルに長けた基本技術の高い選手。メンバー定着に一戦一戦が勝負だ。

 
 ホーム・カンスタは最後まで熱狂ムード。
 なんとも素晴らしい光景だった。

もはや「金星」ではなく -徳島vs北九州-

2011年08月06日 | 脚で語るJリーグ
 震災の影響で延期となっていたJ2の第3節が今週末に行われる(17日に行われる札幌-千葉を除く)。金曜日に先行して行われたポカリスエットスタジアムでの首位・徳島と5位・北九州の試合は、白熱した攻防戦の末に、1点を守り切った北九州が1-0と勝利。勝点を33ポイントに伸ばした。徳島は勝点を稼ぐことができず、土日の試合の行方によっては首位陥落の可能性も出てきた。

 

 台風が近づいている影響もあってか、雨が降ったり止んだりと不安定な天気だった徳島の鳴門。ここで対峙するのは、どちらも直近5試合では1敗しかしていない最近好調の2チームだ。首位の徳島は、6月19日のFC東京戦(@味スタ0-1)で負けて以来黒星知らず。対する北九州もJ参入1年目の昨季はなんと年間1勝しかできなかったチームがここまでで既に9勝。7月は岡山に喫した黒星のみの1敗と非常に好調で、なんと先週30日の試合ではFC東京を相手にホームで1-0と完封勝利を果たしている。
 この日は、徳島が警告累積からDFエリゼウが復帰してベテランの三木とコンビを組み、左右のサイドバックには西嶋、島村、そして中盤でもセンターに斉藤とマーカス、右MFに衛藤という今季から新加入のメンバー。左に柿谷、前線では昨季16得点の津田と3年目の佐藤がコンビを組む。GKには昨季終盤から出場しているオ・スンフン。まだこれに加えて、ベンチには倉貫、島田ら百戦錬磨の選手たちが。そういえば今季の徳島には、榎本や杉本なども加入しており、選手層はすこぶる厚いイメージ。
 北九州は、今季三浦泰年監督を迎えて積極補強を敢行。この日の先発もGK佐藤、DFでセンターを組む宮本、福井、そして中盤の安田、森村、木村と6人が新加入選手。G大阪から加入の安田がトップ下を務めるひし形の中盤構成で、左右のサイドバックに冨士、関、そして1ボランチに桑原。FWは4試合連続得点と絶好調の池元と昨季はDFで一貫して起用されていた長野がコンビを組む。

 
 初来訪、鳴門・大塚スポーツパーク。
 グルメも豊富で雰囲気は良い。

 
 首位に躍り出た徳島。悲願のJ1昇格へ後半戦が始まる。

 
 前日に亡くなった松田直樹に向けて試合前には黙祷が。

 上位同士の攻防戦とあって試合は終始見応えのあるものになった。立ち上がりから徳島がボールを回して果敢に北九州陣内に攻め込む。特にセンターの斉藤とマーカスの今季加入コンビが起点になっている。ここに1列前で攻撃的に前へ仕掛けていける柿谷と衛藤。それを追いかけるようにバイタルエリアに西嶋、島村というかつては攻撃的ポジションだった両サイドバックが絡んでいく。
 しかしながら、今季の北九州もひと味もふた味も違う。5分には相手ボールを奪ってから池元がスピードあるドリブルで徳島陣内へ持ち込むと、最後は長野が勢いあるシュートで徳島ゴールを牽制。徳島が攻めあぐねたところでこのスピードを活かしたカウンターを仕掛ける狙いが北九州にはあっただろう。

 
 今季から中盤を担う徳島・MFマーカス。

 
 仙台から途中加入のMF斉藤はまさかのモヒカンスタイルに。

 
 北九州は池元がここまで6得点と絶好調。速い。

 徳島、北九州もあまりロングボールを使わず、繋いで攻める形が目立った。徳島が中盤のタレント力で北九州のそれを上回るが、なかなか北九州を崩せない。北九州は宮本、福井のコンビが非常に良かった。集中して徳島の攻撃をブロックする。繋ぎの面では1つ前にベテラン・桑原がいる。2006年のニューウェーブ時代の九州リーグから北九州を支えるチームのバンディエラは攻守両面で今だにこのチームのキーマンであった。20分過ぎに北九州が連続でCKを得るチャンスがあった。前半だけで7本のCKを得るが徳島の高さの前にこれを打ち崩せない。ただ、安田、森村とアタッカー陣が積極的にエリア内に攻め入る形が作れており、得点の匂いは感じる。
 徳島も27分にハーフライン付近でボールを受けたFW佐藤が一気に相手DFを背負いながらもスピードで突破。シュートは惜しくもゴール右に逸すという場面があった。平均的に高身長を誇る陣容だけにセットプレーなども活かしたいところだったが、前半は得点を奪えず。特に前半終了間際に島村が右から抜け出して折り返し、津田がシュートに持ち込もうという場面は決めておきたかった。北九州の渾身のカバーリング凄まじい守備が効いており、両チームスコアレスで前半を折り返す。

 
 攻め込む北九州・MF森村と徳島・DF島村のマッチアップ。

 
 
 G大阪では出場機会に恵まれなかった安田。
 北九州ではトップ下として輝きを放つ。ドリブル突破も。

 
 主将を務める柿谷と西嶋の徳島左サイドコンビ。
 2人とも今季はここまで2得点。

 後半に入って、北九州が繋いでチャンスを作る。前がかりになった北九州の隙をついて徳島もカウンターを仕掛けるが、52分に津田が惜しいシュートを決められず。1人で勝負に持ち込んだが、少し距離が遠かった。北九州が攻勢を見せるものの、徳島は三木、エリゼウが決定機の芽を摘んでおり、前線はそれに応えたい。
 しかし、前半以上に調子の良さを感じさせる北九州が先制する。GK佐藤からのロングボールを受けた池元が左サイドライン際からフリーで走り込んだ安田へ。これを安田が遠めながらもシュート。平凡なシュートだったが、これが徳島のDFに当たって若干コースが変わり、ゴール右隅に決まった。

 
 徳島の衛藤はプレスキッカーとしても活躍。
 北九州の桑原は衰え知らずのハードワーク。

 
 
 安田のラッキーな得点で北九州が先制。

 徳島は66分に衛藤に代えて徳重、佐藤に代えてドウグラスを同時投入。ギアを上げる。72分には柿谷のスローインからドウグラスが頭で落としたところを徳重がヘッド。完璧なタイミングだったが、これを北九州GK佐藤のセーブに阻まれる。この直後のCKはエリゼウのヘッドはゴールならず。そして79分には徳重のクロスを島村が頭で合わせるがミートしない。81分には相手のパスミスを拾ったマーカスが強烈なシュートをペナルティアーク付近から放つが、シュートはバーを直撃。85分にはエリゼウのアーリークロスにドウグラスがヘディングシュートを放つもGK佐藤の横っ飛びに阻まれた。チャンスは作れど最後の最後まで1点が遠い徳島。スタジアムのメインスタンドでは応援の手拍子がこのラスト10分の猛攻に対して絶頂を迎える。
 北九州は、相手の運動量がきついこの時間帯にレオナルドを投入。この狡猾な起用法が効く。カウンター時にはまだ池元もスタミナにそれほど衰えがなく、かつこのレオナルドがスペースを狙って徳島の選手の運動量を更に削ぎ落とす。87分にはレオナルドがDF2人を背負いながら1人でシュートへ持ち込むなど厄介な存在としてアピールした。

 
 高さが売りの徳島FWドウグラス。惜しくもゴールならず。

 
 津田は何度もゴールを脅かすが、オフサイドに苦しむ。

 
 徳島の猛攻、北九州の鉄壁。熱いラスト10分。

 
 北九州のレオナルド。途中起用が非常に効く。

 試合は、先制点を死守した北九州に軍配が上がった。本当に昨季ダントツの最下位だったチームとは思えない戦いぶり。ひたすら繋ぐことを前提に皆がサボることなしに勝利へひた走った。タレント力で劣るところはカバーリングの意識で乗り越えた。何とも屈強なチームだなと感じる新生・北九州。なんと先週のFC東京戦ではCKを15本も与えながらの完封勝利だったようである。まさにそのデジャヴともいえる集中した終了間際の守備。これは「金星」ではなく、実力での勝利だといえよう。これで勝点は33ポイント。依然上位陣の中ではまだ上がいる状況であるが、この北九州の好調ぶりは後半戦のJ2の見どころになるだろう。
 一方、ホームで首位固めのための1勝をという徳島だったが、本当に1点の遠い遠い試合だった。厳密に言えば枠内シュートは少なかったので、決定力ということになるのだろうが、リーグ2位の総得点を考えれば、これだけチャンスを作っていたならば勝っておきたい試合だった。昨季16得点の津田はまだ今季ここまで5得点。コンビを組む佐藤の成長著しいとはいえ、タレント陣の充実度を見れば、やはり優勝は十分争えるはず。FC東京、千葉、栃木、北九州と並み居るJ2の強豪に競り負けられないポイント争いがここから熾烈になってくる。
 とにかく今季初見の2チームながら、見応えのある上位争いに相応しい試合だった。

 
 
 見応えたっぷりの試合を見せてくれた両チーム。
 これは今後のJ2が気になってしかたがない。

 
 北九州を率いる三浦監督。
 まぁとにかく身振り手振りが派手で熱い熱い。

ヤング京都、光明あり -京都vs鳥取-

2011年08月03日 | 脚で語るJリーグ
 シーズン38試合を戦わなければならないJ2は、第23節を迎えていよいよ中盤戦(延期分未だ未消化の試合あり)だ。7月31日には西京極でホームの18位・京都が今季J参入を果たした14位・鳥取と対戦。後半、セットプレーから秋本が挙げた1点を守り切り、京都が勝利を収めた。

 

 今季、4度目のJ2降格を機に、大木監督と祖母井GMをチームに迎えてチーム一新を図る京都。大幅に主力選手がリファインされ、京都の試合が今季初観戦となるこの試合でも未見の選手が数多くいた。その京都は、GK水谷をはじめ、森下、秋本、酒井の3バックに、アンカーでチョン・ウヨンを置き、トップ下に内藤、左右に安藤、駒井。そして3トップを伊藤、ドゥトラ、中山で組んでいる。この3試合は1勝1分1敗と悪くないだけにある程度このメンバーも固定されている模様。右ウイングの伊藤が出場停止から復帰し、3ポイントをしっかり取って鳥取にポイントに並びたいところ。ベンチにも今季二種登録で活躍する久保をはじめ宮吉、加藤、内野という若手が控え、ディエゴやアライールといった主力外国人選手も今季はまだ活躍できていない。まだ十分中位から上位浮上へのチャンスは残っているだけにここからが勝負か。
 対する鳥取もJ参入以降、序盤戦は好調だったが、中盤戦にかけて黒星が増えてきた。4試合勝ち星に見放された状況から前々節の草津戦では5-0と爆発。前節は徳島に完封負けを喫するなど、健闘はしているものの波はある状態。この試合は草津戦でハットトリックの活躍を果たした美尾が前節に続き欠場し、ジョン、加藤、戸川、奥山の4バックに服部、実信のセントラルMF2人に、小井手、鶴見が左右の両翼、そして前線ではハメドと阿部が2トップを組んだ。

 

 
 ホームとアウェイのサポーター席が入れ替わった西京極。
 なかなか雰囲気が変わっていた。

 前回の対戦時は2-1で鳥取に軍配が上がったこのカード。試合は京都がサイド攻撃を有効に使い鳥取ゴールを脅かす展開に。特に印象に残ったのは、京都の伊藤、駒井のU-18からの昇格コンビとチョン・ウヨンという初見の選手。伊藤はスピードを活かして右サイドを席巻。何度もゴール前にチャンスボールを放り込んだり、ドリブルで切り込んだ。特に12分のドゥトラへのクロスはサイドライン際を鳥取の奥山をぶち抜いてのプレー。最後は惜しくもドゥトラがシュートを外したが、ファーストタッチで自分の形勢を作ってしまう彼のプレーは前半最も大きな決定機に繋がった。駒井はかなり中央に寄ってプレーすることが多かったが、リスタートの速さやセットプレーのこぼれ球など反応が速い。加えてポジショニングが良く、18分には秋本のヘッドのこぼれ球に最も早く反応して相手の守備を置き去りにする場面があった。後述するが後半にも真骨頂というドリブルシュートの場面がみられるなど、伊藤と駒井のドリブルでの仕掛けは京都にとっての大きな武器。そして、それを1列後方で支えるチョンはCKのキッカーとしてチームのチャンスに貢献すると同時に、バイタルエリアまでの潰し役として存在感を発揮していた。

 
 京都・ドゥトラvs鳥取・ジョンのマッチアップ。

 
 京都は今季からこれまで以上に安藤が司令塔として君臨。

 
 安藤と並んで京都の攻撃を組み立てるのは中山。

 前半は0-0で折り返す形になったが、徐々にペースを掌握する京都を相手に鳥取は守備面で集中していた。10番を背負う実信も最終ライン付近まで下がって守備に加わる。なかなか高い位置での守備が効いていなかったこともあり、押し上げられていない時間が多かったが、前半5本に及ぶ京都のCKを許しながらもGK小針を中心に良く守っていた。しかし、攻撃面で阿部やハメドがなかなか良い形でボールを触れず、ハメドがかなりボールを欲してポジションを下げてしまう場面が見受けられた。それだけに32分、ハメドの速いスルーパスが小井手に渡り、クロスを入れて京都の守備を崩したところは得点に結びつけたかったところ。阿部のヘッド、そのこぼれ球に反応した鶴見のシュートが相手にかろうじてブロックされたのは痛かった。

 
 長年、風貌変わらぬ元ユース代表、鳥取の守護神・小針。

 
 小井手は32分に京都の守備をクロスで崩したが…

 
 今だに現役の服部。美尾に代わってプレスキッカーも務めた。

 後半、開始から京都はドゥトラに代えて、ここまでリーグ5得点を挙げている17歳の久保を投入。ドリブルで序盤からチャンスを作った。京都は前半から武器になったCK獲得の数でチャンスを作った。60分にチョンの左CKから安藤が合わせてゴールを肉薄すると、その直後の右CKから今度はチョンのキックにDF秋本が右足で合わせて先制点をもぎ取った。京都はこのCKが8本目。鳥取の守備をなかなか崩せないでいた京都にとってこのCKの数は幸いした。

 
 
 このチョンのボールが落ちてきたところに秋本が合わせる。

 
 秋本は甲府から今季加入。得点力が高い。

 
 京都の最終ラインを担うルーキーの酒井。

 64分には中盤で相手からボールを奪った京都・駒井がドリブルから惜しいシュートを放つ。本当に彼と伊藤の昇格コンビは、昨季まで注目されていた同級生・宮吉の存在が薄くなるほどの強烈なインパクトだ。対して鳥取も65分に梅田、73分には岡野と高さ・スピードを活かした選手を次々と投入するが、京都の守備を崩せない。69分には小井手の絶妙のパスを受けたジョンがわずかにシュートミス。73分には鶴見の左からのシュートが枠を捉えるが、わずかに京都・GK水谷のセーブに阻まれた。
 結局、試合は1-0でホームの京都が辛勝。これで京都は鳥取に勝点19ポイントで並んだ。鳥取は悔しい連敗となった。

 
 
 鳥取、最大の決定機。
 73分、鶴見のシュートはかろうじて水谷のセーブに遭う。

 
 岡野の韋駄天ぶりは健在。
 何度かサイドをぶっちぎった。

 
 鳥取・ハメドが京都・チョンの厳しいマークに苦しむ。

 順位こそ下位争いながら、J2はまだまだこれからが勝負どころ。数試合の勝点の積み重ねで順位は激変する。そういう意味では、伊藤、駒井、久保、宮吉と攻撃的なポイントに17~18歳の将来有望な選手を揃えてじっくり育成している点は興味深いし、今後が非常に楽しみ。また彼らが下部組織出身ということでチームへの忠誠心や愛着も今後彼らの大きな起爆剤になりそう。久々にプレーを見たハウバート・ダンや大卒ルーキーの内藤、酒井といった面子が今後の中心選手になっていく光景が想像できた。
 対する鳥取もJ1年目ながら、昨季までのJFLからそれほどメンバーを変えずに健闘しているといえる。チーム総得点こそ物足りないものの、守備面では総失点数が19下位グループでは突出して奮闘している。かつてG大阪に在籍したドドあたりの活躍(個人的に是非見たい)で得点力を伸ばせば、上位進出も狙えるかもしれない。

神戸、ボトム争い脱出へ -神戸vs甲府-

2011年07月31日 | 脚で語るJリーグ
 J1第19節、神戸と甲府の試合を観戦に久々にホームズスタジアム神戸へ。15位・神戸と16位・甲府の熾烈な順位争いを懸けた戦いは、前半から快調にリードを奪っていった神戸が甲府の反撃を2点に抑えて4-2で勝利。この結果、明日の残り日程を残して暫定ながら神戸は15位から12位まで順位を上げた。甲府は降格圏内の16位のまま浮上できなかった。

 

 両チームここまで18試合を終えて、順位は前述の通り芳しくない。しかし、今季ここまでリーグ戦は中位から下位にかけて混戦模様。7月27日現在で、10位・大宮から16位・甲府まで勝点差5ポイントの中で7チームがひしめく状況だ。勝てば両者にとって大きく浮上のきっかけとなる試合。前回対戦時(4/23)は、1-1の引き分けに終わっている。ホーム・神戸のサポーターは気合いの入った応援で試合前から盛り上げた。
 神戸は、5月28日のアウェイ柏戦から7月13日のアウェイG大阪戦まで9戦未勝利という状況で、前回のホームゲーム・C大阪戦を4-1と勝利して復調の兆しを見せ始めていた。前節のアウェイ横浜FM戦、そして同カードの連戦となった水曜のナビスコ杯横浜FM戦に共に敗れたものの、今節もその2試合と不変のスタメン。特に相馬こそ負傷でベンチ入りはならなかったようだが、ベンチには今季ここまで5得点の大久保を置いており、どのタイミングで彼が起用されるのかも含めて注目だった。
 対する甲府は、7月16日のG大阪戦に4-3と勝利して、前節はアウェイ浦和戦にて完封負け(0-2)。水曜にはナビスコ杯でバックアップ組中心で清水と対戦したが0-2で敗戦。しかしながら今季はここまで主砲のハーフナー・マイクが9得点でJ1得点ランキングトップとチームの順位とは裏腹に気を吐いており、この試合では大卒2年目のMF柏が6試合ぶりの先発起用。ベンチには加入したばかりのキム・ジンギュの姿があった。総得点では神戸より多いだけに撃ち合いになれば強さは発揮できるかと思えた。ちなみに甲府はGK萩、DF内山の元神戸組が先発に名を連ねた。

 甲府を率いる三浦監督に神戸ゴール裏から辛辣なブーイングが浴びせられて幕を開けたこの試合。立ち上がりから試合のペースを引っ張ったのは神戸だった。9分にはボッティの落としを受けた吉田がエリア手前からミドルシュートを放つ。11分には田中のヒールパスを受けた石櫃がエリア内で滑り込みながらダイレクトシュート。これが決まって神戸が早い時間から先制に成功する。

 
 神戸は石櫃の豪快なシュートで先制。

 
 甲府の左サイドバック内山は古巣との対戦となった。

 24分には、左サイドからパクのアーリークロスを吉田がエリア内中央でバックヘッド気味に頭で合わせて追加点となるシュートを決めた。これはお見事だった。

 
 吉田はナビスコ杯横浜FM戦に続き2戦連発。
 意外にもこのヘッドがリーグ戦今季初ゴールだったようだ。

 
 奈良育英高から神戸に加入し12年目。
 まさに神戸のバンディエラ・北本は健在。

 この後も終始神戸が甲府相手に押し気味で試合を進める。甲府もハーフナーとパウリーニョの強力な2トップにボールを集めたいところだったが、どうもセントラルMFの伊東、石原あたりが精彩を欠いた。阿部が2列目から積極的に裏を狙うものの、神戸の守備陣の前にゴールは遠かった。

 
 甲府はかつてFC東京や湘南でプレーした阿部が前半から奮闘。

 
 パウリーニョは個人で打開しようと奮闘するが前半は無得点。

 後半、甲府は2枚の選手を入れ替えてくる。前半ピリッとしなかった伊東を下げてキム・ジンギュを投入。また、阿部に代えてダヴィを入れ、パウリーニョを1列下げて臨んだ。しかし、その甲府の思惑と違って神戸の3点目は早かった。パクのパスを受けた田中がシュートを打ち損じると、これを甲府DFダニエルがしっかりクリアできず、走り込んできた吉田がこの日2点目となるシュートを決める。試合は3-0。完全に勝負は決まったかに見えた。

 
 吉田の2点目で3-0とした神戸。
 ホムスタの盛り上がりは頂点に。

 
 甲府は市川が何度かサイドからチャンスを作る。

 しかし、甲府は焦らない。52分に中央でボールを受けたパウリーニョがペナルティアーク付近から左足でシュートを決めて1点を返す。また58分には山本のFKからキムが頭で合わせて2点目を奪った(角度的に最初はゴールラインを割ったのか見えなかったが…)。2枚交代が功を奏したか、押せ押せムードになってくる甲府であった。

 
 
 パウリーニョのこのシュートで1点を返す。
 キムの追加点もあり、あっという間に1点差へ。

 
 新加入の甲府DFキム・ジンギュ。
 かつて1年間磐田でプレー。最近まで大連実徳にいた。

 しかしながら、甲府の押せ押せムードは長くは続かなかった。ここまでの展開で2-2の同点になっていたならまだ展開は分からなかったが、3点のリードを有していた神戸は落ち着いて、甲府の守備の綻びを突いてくる。82分にはボッティが悠々とドリブルで甲府陣内までボールを運ぶと、甲府DFダニエルの甘いアプローチをかわして相手DF2人を十分引きつけてスルーパス。これにエリア内でフリーだった田中がダイレクトでシュートをゴール右隅に決めた。

 
 このボッティの落ち着いた突破から…

 
 
 
 田中が冷静に流し込んでダメ押しの4点目を神戸がゲット。
 1点目のアシストに続き、大活躍の田中。

 この後も甲府の反撃をシャットアウトした神戸が4-2で逃げ切った。程良い撃ち合いでなかなかの盛り上がりを見せたが、少し甲府のムラっ気のようなものが気になった試合でもあった。神戸が強いのか、甲府が弱いのかという議論になれば一概に言えない難しい互いの現在位置だが、それでも甲府は守備面で緊張感に欠けており、失点場面でもミスが目立っていた。また、ダヴィが後半開始から投入されたが、やけに苛立ち気味で肝心のパウリーニョの連携も微妙。それでも後半に5分間で2点を奪ったのだからまずまずなのかもしれないが、まだハーフナーの高さとパウリーニョの個人技頼りな面が多く、3点ビハインドをひっくり返せるほど攻撃を持続できない印象だった。それでも前半はセンターバックで、そしてキムが入った後半は1列前でボランチを務めていた山本は中距離のFKも蹴ることができ、実際にチームの2点目をアシストしたことを考えると、器用な選手だなと印象に残った。

 
 印象に残った甲府の山本。FKも蹴ることができる主将。

 
 ダヴィはまだウエイトオーバー!?
 まだまだ本領発揮はこれからか。

 
 ダニエルは時折攻め上がりを見せるが、守備面ではミスも。

 それ以上に前半から飛ばした神戸がやはりインパクト大。2得点の吉田は昨季の残留を決めた浦和戦の記憶が強すぎるのか、まさか今季初得点だとは思わなかった。77年早生まれ(76年組)のいぶし銀は、小中学校時代は奈良県で過ごしたことも。何よりも彼とパク、そしてやや年は離れるが河本という地元・滝川二高OBがここまで神戸の屋台骨となっていることは何よりも大事だろう。また、田中の存在感も光っており、先制点の石櫃含め、生え抜きや古参の選手たちがしっかり勝利に貢献していた試合だった。点が入れば大爆発、取れなければ無得点沈黙という対照的な試合が見られる神戸。明らかに“旬の選手”という点では甲府に軍配が上がりそうな顔ぶれが揃う試合で、上昇のきっかけを掴む良い試合だったのではないだろうか。

 
 
 吉田、パクの滝二コンビの存在は神戸には大きい。

 
 少しながら、宮本のプレーも久々に見ることができた。

 
 今季から試合後、勝利を神戸讃歌で分かち合う選手たち。

ピンパォン、名刺代わりの2発 -セレッソ VS アレマ-

2011年03月03日 | 脚で語るJリーグ
 AFCチャンピオンズリーグは各グループリーグが開幕。1日に行われた日本勢の2試合は、万博でメルボルンに快勝したグループEのガンバと対照的に、グループFの名古屋はアウェイで杭州緑城に零封負け。そして2日にはセレッソと鹿島がグループリーグ初戦に挑戦。大阪・長居ではアレマ・インドネシア相手にセレッソが2-1で勝利。初めてのACLで好調な滑り出しを見せた。

 

 試合前には相当天候が落ち込み、雨が勢い良く降ってはいたが、観客が徐々に集まったキックオフ直前には天気が回復。しかしながら、相当冷え込んでいた大阪の寒さはゴール裏に多数詰め掛けたインドネシアのアレマサポーターには少々酷だったかもしれない。それもあったか試合前から沸き返り、応援チャントを唄い続けるアレマサポーター。どうやら彼らのような熱狂的なアレマ・インドネシアのサポーターを「アレマニア」と現地では呼ぶらしい。キックオフを迎える頃には昨日の万博を彷彿とさせる多くの観客でスタンドは埋まっていた。

 
 多くのアレマサポーターがゴール裏に陣取った。
 試合が進むにつれて徐々に増えていった不思議。
 
 セレッソは、昨季大分で活躍したキム・ボギョンがレンタルから復帰。ガンバからレンタルで加わった倉田、既存の乾と共に中盤を構成。ボランチにマルチネスと新加入の中後がコンビを組んだ。前線には1トップで新外国人選手のピンパォンが名を連ねる。
 一方のアレマも昨季のインドネシア・スーパーリーグで14得点と大活躍したスロバキア人FWロマン・ロメロを中心に、前線でコンビを組むアラムシャーと中盤のリドゥアンがシンガポール代表、MFブストミ、DFベニー、ズルキフリの3人がインドネシア代表というメンバー構成。パスサッカーと堅守が持ち味という。

 試合は前半から徐々にセレッソがペースを握る。倉田、キム・ボギョンが積極的に前線へ顔を出しながら連携を確認。まずは守ってカウンターを狙うアレマのハーフライン付近でのプレスも弱いこともあって、マルチネスが中盤の底から左右に、そしてドリブルで持ち込むなど、かなりアレマ陣内でゲームは進んだ。
 なかなか相手の守備的な戦いに崩しのスペースが見出せなかったセレッソだったが、14分、アレマの中盤での緩慢なパスワークにキム・ボギョンが猛然とプレスすると、後方から走り込んだ丸橋がインターセプトしてダイレクトで倉田へ。倉田、キム・ボギョンと繋いで左サイドの乾が持ち込んで中央へ折り返すと、ピンパォンがファーサイドからヘッドで先制点を決める。まさに速攻、スイッチが入ったセレッソのカウンターが結実した。

 
 先制点は新加入のピンパォン。
 フットサルからサッカーに転向してまだ4年という異色の経歴。

 
 高橋は右サイドバックの位置に。
 元来ウイングバックも、4-5-1になってからはこの位置が主戦場。

 追加点を狙いにいくセレッソだったが、先制されてアレマも前への意識が強くなった。しかしながら茂庭を中心とするセレッソの堅守を崩すことはできない。25分には倉田の右からのクロスに乾があと一歩で得点という場面を作るが得点ならず。一方のアレマは30分にズルキフリのロングパスに走り込んだアミルディがシュートを放つ。これがアレマの1本目のシュートとなった。

 帰国中の香川(ドルトムント)が登場して沸き返ったハーフタイムの長居。1-0でセレッソリードのまま後半を迎える。後半開始直後の47分にはセレッソのパスミスからアレマが猛然とカウンター。左サイドに寄っていたロマンが豪快にミドルシュートを放つと、これをかろうじてセレッソGKキム・ジンヒョンが手で触ってゴールを回避する。しかし、その直後のアレマのCKからのプレーでセレッソDF上本がハンドをとられてPKを与えてしまうと、ここまでチャンスを作れていない千載一遇のチャンスを得たアレマはこのPKをアラムシャーが決めて同点に追いついた。

 
 上本のハンドの判定に抗議するセレッソの選手たち。
 この判定は少し酷だった・・・

 
 このPKのチャンスを絶対逃せないアレマ。
 アラムシャーが決めて試合を振り出しに戻す。

 同点に追いついてからアレマもロングボールを多用してセレッソの前がかりになったところを狙うが、ここは堅守のセレッソが得点を許してくれない。58分には倉田が右サイドからシュート。68分にはキム・ボギョンのシュートのこぼれ球を倉田が押し込もうとするが、アレマ守備陣の決死の守備の前に阻まれる。もう試合はベタ引き・アレマと押せ押せセレッソの構図。70分にはエリア手前からのキム・ボギョンのシュートがクロスバーを直撃すると、72分にもエリア内でフリーでボールを受けた倉田がシュートも相手GKに阻まれる。あと一歩で追加点が奪えないセレッソ。この辺りからアレマGKクルニアワンがうまく痛がって時間を使っていく場面が見られ、苛立ちが募る。75分には右からのクロスを受けたキム・ボギョンのシュートも相手DFがブロックしてゴールに鍵をかけた。

 
 何度もチャンスに絡んだ倉田。
 千葉でのプレーを経てブラッシュアップされた印象。

 
 小柄ながら俊敏さが印象的だったMFブストミ。
 インドネシア代表もセレッソの前になかなかチャンスは作れず。

 なかなかベタ引きのアレマを攻略できないセレッソだったが、その直後にブストミと丸橋の交錯でFKを獲得すると、これを中後が蹴ってピンパォンの得点をアシスト。DF2枚をエリア前方でマルチネスが引き付けたこともあって、ピンパォンが待望の追加点を決めてセレッソがアレマを突き放した。

 
 
 ピンパォンがこの日2得点目のゴールを決める。
 中後のセットプレーが手詰まり感を打開した。

 85分にセルフジャッジでオフサイドと思ったセレッソ守備陣の裏を突いてアラムシャーがセレッソゴールを脅かしたが、これは茂庭がかろうじてクリアするなどピンチを招いたものの、このまま2-1で試合を締めたセレッソ。新加入選手が結果を出し、初めてのACL初戦を白星スタート。次節初めてのアウェイ・山東戦に挑む。

 
 後方で茂庭が存在感。チームを引っ張る。
 85分の危ない場面も落ち着いてクリア。

メドウでは負けない -岐阜VS徳島-

2010年10月06日 | 脚で語るJリーグ
 佐川守山でのJFL観戦後、一気に名神道で岐阜へと向かった。目当ては初めての来訪となる長良川球技メドウ。J2は第29節を迎えており、ホームの岐阜が徳島を相手に雨中の接戦を2-1と逆転勝利。長良川陸上競技場の国体へ向けた改修のためにキャパシティでは非常に制限のある球技メドウでのホームゲームを強いられている岐阜だが、7月以降連敗をしないその粘り強い戦いぶりで9位まで浮上することとなった。

 雨中の試合は、J2で得点王争いを演じる津田の得点でアウェイの徳島が試合を先行する展開。今季ここまでの26試合で42得点を量産している徳島は、その津田(元名古屋)をはじめコンビを組む平繁(元広島)、中盤に濱田、柿谷(共に元C大阪)、倉貫(元京都)、島田(元草津など)と見事なまでに経験者を揃えた布陣で、積極的に岐阜ゴールへと向かう。
 一方、ホームの岐阜は先発メンバーに目立った経験者はいないものの、ここまで8得点と絶好調の押谷を軸に果敢にカウンターで徳島のゴールを狙った。

 
 徳島の先制点は津田による得点。
 名古屋からのレンタル加入ながら得点王を争う。

 
 徳島の司令塔はJ2でのプレー経験豊富な島田。
 しかし、負傷のためか31分で早くもピッチを後にする。

 試合をリードする徳島だったが、前半のうちに島田が徳重に交代するアクシデントが。同じタイミングで岐阜も菅を下げて永芳を投入。これを機に試合が更に動き出す。43分に岐阜は中盤でボールを繋いだ後にMF西川が狙い澄ましたミドルシュートを見舞うと、これがゴールポストに弾かれる。跳ね返ったボールが徳島GK日野に当たってゴールへと転がるがわずかにラインを割らない。そこに詰めていた田中がもつれ合いながらもこぼれ球を競り合うものの、最後は走り込んだ岐阜MF嶋田が決めて岐阜が同点に追いついた。

 
 岐阜は43分に西川が遠い位置からこのシュート。

 
 これがポストに弾かれるとGK日野に当たって逆サイドへ。

 
 岐阜DF田中が詰めるものの、わずかに決められず・・・

 
 背後から詰め寄ったMF嶋田がごっつぁん的にゲット。
 岐阜が待望の同点弾。前半のうちに試合を振り出しに。

 1-1で折り返した試合は後半に入って更に激しい攻防戦に突入。雨も穏やかになり、鳴り物が禁止されているメドウも両チームのサポーターによる応援が白熱する。平繁、柿谷らの鋭いドリブルをベテランDF秋田を中心とした粘り強い守備でしのぐ岐阜は、徐々に好調のエース押谷が決定機を迎えられるようになり、惜しいシュートチャンスを連発。後半に入って2度ほど決定機をフイにしていたが、76分にカウンターから右サイドでボールを受けた西川からパスを受けると、エリア右手から直接シュート。これが決まって理想的な時間帯に逆転に成功した。

 
 島田が離脱した徳島の中盤を担った濱田。
 強力な前線をサポートするが1点が遠い。

 
 岐阜は前半途中から入った永芳が献身的な守備を披露。
 陰ながらチームの勢いをアシスト。

 
 最後尾では36歳・ベテラン秋田が徳島FWをシャットアウト。
 本当に年齢を感じさせない気迫に満ちたプレー。

 
 徳島のゴールを守るのはかつてG大阪、岐阜にも在籍した日野。
 後半、渾身のファインセーブでチームを助けたが・・・

 
 76分、押谷の逆転弾が決まって歓喜の岐阜イレブン。
 ここはピッチの近いメドウ。目と鼻の先で共に喜ぶサポーター。

 喉から手が出るほど欲しかった2点目を相手より先に奪った岐阜。GWに行われた鳴門での対戦では0-4と大敗を喫して今季2度目の3連敗の引き金となった。それを考えれば今対戦は岐阜のハードワークの勝利。徳島は先制しながら追加点がわずかに及ばなかった。

 
 再三のドリブル突破も実らなかった柿谷。
 そのスピードは際立っていたが・・・

 
 逆転後に染矢を投入してハードワークを切らさない岐阜。
 出身は奈良産大、天皇杯奈良県代表も経験している。

 この逆転勝利で岐阜は長良川球技メドウで8試合負け知らず。5月9日に柏に負けて以来ホームでは負けていないことになる。キャパが限られるメドウでは集客面で苦戦必至だが、それにも関わらずサポーターの応援はチームを後押ししている。これで岐阜は9位に浮上。8月以降の10試合で5勝2分3敗と前半戦で何度も連敗を重ねていたチームが建て直っているのは明らかだ。11月のホーム3連戦も会場は長良川球技メドウに決定し、上位陣との対戦も残している。最終節まで岐阜の戦いぶりが気になるところだ。
 また、この日利用したのが「長良川球技メドウを満員にしようキャンペーン」という企画。既にチケットを持っている人が別の人を紹介すると無料で入場できるというもの。少しでも集客を増やそうとする運営面での企画だが、なかなか嬉しい企画だった。

 

 

 
 鳴り物は使えず、スタンドも小さい現状ながら、
 Jクラブが我が街にあるという幸せなメドウの試合後の光景。
 ここでは負けられないと皆の思いが一つに。