脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

五色の激闘回顧録<3>-地域決勝 北海道vs相模原-

2011年11月26日 | 脚で語る地域リーグ
 前日の風雨が嘘のように過ぎ去って晴れ渡った3日目のアスパ五色。前日に奈良クラブは0-1で相模原に惜敗。これで唯一無傷で連勝となったのは相模原。それを1敗で福島Uと奈良が、そして北海道が連敗という流れになった。この3日目の2試合で順位が確定する。第1試合の北海道と相模原の対戦は、前半こそ相模原が1点に止まったが、後半3点を加点して4-0で勝利。Bグループ唯一の3連勝で決勝ラウンド進出を決めた。
 ワイルドカード(2位の上位1チーム)での決勝ラウンドに一抹の望みを懸けた第2試合は、2-0で奈良クラブが福島Uに勝利。結果的にワイルドカードには届かなかったが、グループ2位で1次ラウンド全日程を終了した。

 

 前日の奈良クラブ戦に耐え抜いた相模原は、この試合でも先発メンバーは村野に代えて富井が中盤に名を連ねたのみ。試合が始まると、連戦の疲れからか体は重いように感じたが、昨年のことを考えると、この試合を絶対に落とすわけにはいかない。サッカーは90分間最後まで何が起こるか分からないことを身を持って体験したチームでもある相模原は、前半から北海道を相手にしっかり攻勢に出てゴールを狙い続けた。
 対する北海道も前日とは少しメンバーは入れ替わったものの、最後の最後まで諦めずに1勝を追いかけたい。前日の雨中の福島U戦後半の猛攻が発揮できれば、というところだったが、両チームどちらに何が起こるか分からない劣悪なピッチコンディションがこの日はすっかり回復しており、その中で勝負しなければいけなくなった。

 11分に先制したのは相模原だった。坂井が相手陣内で森谷からボールを受けると、北海道ゴールに向かって豪快なシュート。これがバーに当たりながらもゴールに沈んだ。疲れは見えていても踏ん張りどころだという意識は相模原にある。地力で勝る相模原が早い時間帯から先手を取った。
 北海道も支配率では圧倒されていたが、前半の終盤に伊古田が左サイドからキレの良いドリブルで突破を試み、CKを得るなどチャンスを作る。相模原の追加点を許さず後半へ折り返した。

 
 2日目から相模原のゴールマウスを守った山本。
 かつて磐田や愛媛で活躍したGKだ。

 
 キャプテンマークを巻いてチームを引っ張る北海道・DF倉谷。
 ほとんどの選手が地元・北海道出身だ。

 後半も相変わらず相模原がボールを回す。もちろん1点差で安心していることはない。常に追加点を狙っていた。FWの齋藤が左からのなんでもないクロスにイージーなシュートミスを見せるなど、かなり連戦の疲労が見えていたが、それでも最低限の仕事をこなすのが今大会屈指のエース。60分には古賀が相手からボールを奪って突破し、最後のパスをその齋藤が難なく決めて相模原が2点目を奪った。
 北海道は、75分に3年連続で北海道リーグのMVPと得点王に輝いたFW岡戸を投入して1点を狙いに行くが、それでも劣勢を盛り返すことはできない。

 その直後の77分には佐野のパスを古賀がフリーで詰めて勝負を決める3点目。そして89分には途中出場の吉岡が決めて4-0とした。3連勝と無傷でグループリーグ突破の相模原。今季は堅実に決勝ラウンド進出となった。

 
 北海道・伊古田がドリブルで突破を試みる。
 しかし、残念ながらチームは3連敗。

 
 攻守に効いていた相模原・DF奥山。
 流経大出身で横浜FMユース上がりの選手。

 3日間を通して際立った相模原の勝負強さ。2日目の奈良クラブ戦の劣勢を最後まで乗り切ったところがハイライトとなろうが、決めるところでしっかり決める得点力はやはり今大会でも頭一つ抜けている気がする。特に佐野が加わった中盤を攻略するのは並大抵ではない。よほどパスワークに自信のあるチームで、自分からアクションサッカーを実践するチームでないと、いざ受け身で相手の出方を窺うとズルズル引き込まれていく印象だ。とにかく前半をスコアレスで折り返すことを最低限のタスクにしないといけないだろう。このBグループでも相模原はその全ての試合で前半の5分から20分までの間に先制点を奪っている。先手必勝を地で行くチームであり、またその個々の能力も高い。

 
 彼らをいなせるチームは決勝ラウンドで現れるのか。
 
 非常に充実した3日間。結果的に彼らにあと一歩と迫れた奈良クラブの戦い方に全国でも戦えるという確固たる自信と勝算が得られたのは個人的に嬉しかった。ただ、同時に見えたあと一歩のその差。決めるべきところで強かにゴールを奪うというサッカーを相模原は泥臭く実践していたことも事実。決勝ラウンドでも彼らを中心に戦いが繰り広げられるのはほぼ間違いないだろう。来季この大会で再び彼らと戦う機会が与えられても、それはそれで格好のリベンジの場になるだろうが、ひとまずは決勝ラウンドでの健闘を祈りたい。
 決勝ラウンドは、S.C.相模原、Shizuoka.藤枝MYFC、HOYO AC ELAN 大分、Y.S.C.C.4チームによって12月2日から3日間、長居第2陸上競技場で行われる。JFL自動昇格は2チームだ。

五色の激闘回顧録<2>-地域決勝 北海道vs福島U-

2011年11月25日 | 脚で語る地域リーグ
 アスパ五色での1次ラウンド2日目。1日目ではノルブリッツ北海道(以下=北海道)に1-0で勝利した奈良クラブ、そして福島ユナイテッド(以下=福島U)に勝利したS.C.相模原(以下=相模原)が勝点3ポイントで並ぶ展開。この2日目に直接対決となる。そして第1試合では1日目で勝てなかった北海道と福島Uが火花を散らした。

 

 この2日目は嵐のような天候になった。前日の夜から降り続ける雨と横殴りの風。前日からかなり怪しい天候だったが、案の定最悪の天候となった。1試合目は特に雨風が強く、酷なコンディション。アスパ五色のピッチはあちこちで水しぶきが上がる。特に両サイドのサイドライン際は大変な状況だった。
 北海道は、前日の奈良クラブ戦からDF北、MF赤坂が外れ、DF黒谷、MF相木が先発。北は前日の試合での負傷かベンチ入りもしていなかった。対する福島UはなんとGKに内藤を諦め、フィールドプレーヤーであるDF時崎悠が先発に名を連ねる。よほど前日のプレーがきつかったと見える。しかしながらベンチにはもう1人のGK根本が入っており、GKは2人とも連れてきていたようだ。DFはかなりそのメンバーを代えてきた。青柳と柳原を下げ、キム・キスと吉渓を先発に起用する。このピッチの状況をどちらが上手く攻略できるかという点で、選手個々の経験からしても各カテゴリーでの経験豊富な福島Uが実力的にも有利かと予想できた。

 
 
 福島からも多くのサポーターが駆けつけた。
 逆境を乗り越えて戦った今季、様々な想いが交錯しているはず。

 試合はキックオフからわずか58秒で福島Uが先制する。相手DFのクリアボールを拾った福島U・キム・キスが放り込んだところをヘッドで決めた。大会2点目の小林。侮れないストライカーの仕事ぶりで試合は幕を開けたが、この先制点を機に一気に福島Uが風上に立った前半で勝負を決める。10分にはキム・コンチョンのCKからキム・グァンミンが頭で合わせて2点目を奪う。

 
 
 キックオフからあっという間に小林が決めて福島U先制。
 この水しぶきからも分かる通りピッチコンディションは最悪。

 
 
 キム・グァンミンが頭で決めて追加点を福島Uが奪う。

 水たまりに苦しむ両者だったが、ロングボールとゴール前でのハイボールを活かすという点で福島Uに分があった。18分には右サイド、キム・キスからのボールを受けたキム・コンチョンがしっかりコントロールしてシュートを決める。福島Uの得点力が爆発する。
 対する北海道だったが、風下に立ったこともあり、大苦戦。福島UのGKが本職でないにも関わらず、相手エリア内までなかなか攻め込めない。前半は2本しかシュートが打てなかった。それどころか、45分には福島U・清水にエリア手前から豪快なミドルシュートを叩き込まれて0-4で前半を折り返すこととなった。

 
 前半は苦戦を強いられた北海道。
 ほとんど良い形で前線にボールが入らなかった。

 後半に入って風上、風下が両者交代したが、雨こそ小降りになってきたものの、依然その風は勢いを失わない。しかし、なんとか北海道は伊古田のシュートで1点を返す。58分に相手のボールを奪ってからの展開。福島Uのミスをいかに拾っていくかが勝負だった。ここから試合は膠着状態に。さすがに前半飛ばした福島Uが守り、北海道が盛り返すという展開になった。北海道は後半開始から入ったMF浅井が気を吐くプレーでチームを引っ張った。
 しかし、地力で勝る福島Uが79分に清水のこの日2点目となるシュートでダメ押しの5点目を決める。北海道は85分に三浦が決めてもう一矢報いるが既に遅し。終了間際に2度目の警告で吉澤を失ってしまい福島Uの前に力尽きた。

 
 DF三瓶を中心に守備陣は奮闘するも福島Uを止められない。

 
 2連敗でいち早く1次ラウンド敗退が決まってしまった北海道。
 前半で4失点は重すぎた…

 かなり天候に難はあったが、それでも両者の地力の差が出た試合だった。それ以上に奈良クラブが前日1-0でようやく振り切った相手に、前半だけで4得点を固め撃つ福島Uの強さ。それをこれでもかと感じさせられた試合だった。相模原戦を前にして、その勝敗を問わず、間違いなく3戦目も非常に厳しい戦いを強いられる…その予感が雨と風で冷える体を引き締めてくれたのは間違いない。選手たちはどうだっただろう。刺激に直結したのだろうか。この激しい雨中での福島Uのゴールラッシュは間違いなく前日の相模原戦の敗戦をメンタル面でリセットしたはず。もはや試合終了の時点でGK時崎というウィークポイントはすっかり霞んでおり、その得点力が強烈なインパクトに。しかし、この後の第2試合で想像以上の好ゲームを奈良クラブが繰り広げてくれるとは彼らも思っていなかっただろう。0-1と喫した失点はPKだけ。そして後半に見せたシュート数11本-1本という猛攻撃。惜しくもポストに3度ほど嫌われる場面はあったが、互角以上の試合展開はできた。それは10月の0-6で惨敗したテストマッチの情景を払拭してくれるには十分なものであり、福島Uが1戦目に見せた得点力のインパクトを凌駕するものだったと信じてやまない。あの後半45分の奈良クラブの相模原戦の姿勢は確実に翌日の福島U戦にそのまま持ち越されたといえる。

 既に悪天候のことなど忘れてしまう悲喜こもごもな2日目であった。本当にそれぞれのチームがこれ以上ない熱さを発揮した2日目であった。

五色の激闘回顧録<1>-地域決勝 福島Uvs相模原-

2011年11月24日 | 脚で語る地域リーグ
 18日から20日まで行われた第35回全国地域リーグ決勝大会1次ラウンド。淡路島のアスパ五色では奈良クラブを含めた福島ユナイテッド、S.C.相模原、ノルブリッツ北海道の4チームが激突。既に奈良クラブの戦いぶりに関してはさらりと振り返ったところだが、何回かに分けて、その他のチームの戦いぶりを振り返りたい。

 1日目のノルブリッツ北海道-奈良クラブに続いて行われた第2試合では、東北王者の福島ユナイテッドFC(以下=福島U)とJFA優遇枠でJリーグ準加盟の強豪・S.C.相模原がマッチアップ。試合は2-1で相模原が先行逃げ切りに成功した。

 

 昨季、ひたちなかで見た1次ラウンドでも相模原に関しては3試合全て観戦した。10月の奈良クラブとのテストマッチ、そして全社準決勝の愛媛FCしまなみ戦と今季に関しては彼らの強さがこれでもかと伝わってくる試合ばかり見ているわけだ。対して福島Uは昨季の全社1回戦で三洋洲本に6-0と圧勝した試合しか直接には見ていない。個人的には今季の情報があまりなく、内藤と根本という2人のGKが負傷していることぐらいしか聞いていなかった。基本的には昨季見た福島Uがベースなのだろうと思っていた。今季は震災の影響もあり、東北リーグは5月から開幕したものの、福島県内で活動していたのはこの福島Uぐらいで、また県内での試合開催ができないシーズンを過ごしてこの場に来ているとのこと。実力的にはこの大会に出場して当然のチームだが、正直なところ今季の東北リーグ王者とはいえ、盤石の状況でリーグが行われていない分、その実力は計り難いというのが正直なところ。そういう意味ではこの初戦・相模原戦は絶好の判断材料になっていた。怖いのは彼らの逆境に対する強さがこの大会で発揮されればという点で、北海道も相模原も最も警戒していたであろう。
 相模原は、この大会に合わせて左のスペシャリスト・古賀が戦列復帰。工藤とCBを組むのは八田ではなく奥山。そして水野ではなく右MFにはルーキーの村野が入っていた。GKは山本ではなく、バックアップ要員の佐藤が先発だった。
 対する福島Uも、昨季の全社で巧いなと思わせたキム・コンチョンが中盤に司令塔として健在。そして前線で小林と久野という2人の強力なJ経験者が組む布陣。GKは内藤がケガを押して出場。しかし、その右足にはがっちりとサポーターが装備され痛々しさが伝わってきた。

 
 何とか初戦に出場した福島U・GK内藤。
 しかし、試合中はゴールキックも蹴れず…

 この両者の対戦は、風と小雨がぱらつく中で行われたが、前半開始早々の8分に金澤のロングキックが相手GKの目測ミスも相まって一気にゴールへ。これがポストに跳ね返ったところをエース・齋藤が押し込んだ。幸先よく相模原が先制する。しかし、個人的にはこの後も福島Uが黙っていないとは思っていた。
 ところが、追加点は相模原。22分にCKから森谷を経由してボールを受けた奥山がヘッドで追加点を決める。一気に試合を先行できた相模原。同時に足元でのミスが少なく、緩急をつけた攻撃に隙のなさを感じる。

 
 福島U戦の先制点を奪ったのはやはりマーティンこと齋藤。
 ここぞという時の決定力は抜群だ。

 
 右の快足・金澤の存在も相模原のストロングポイント。
 無尽蔵のスタミナで積極的に攻撃参加する。

 福島Uも黙ってはいない。中盤で相模原のミスを着実に自分たちのボールにする機会が増えてきた。問題はいかにフィニッシュまで持ち込むかというところだったが、37分にキム・グァンミンが相手ボールをインターセプトして小林に送る。小林はエリア右45どの角度から見事なシュートを決めてゴールを射抜いた。相模原・GK佐藤がわずかにボールに触ったが、そのシュートの勢いは止められなかった。福島Uが1点差に詰め寄る。

 
 強烈なシュートで1点をもぎ取った福島U・小林。
 このフィニッシャーの存在は恐ろしいなと感じさせた。

 
 GKは1戦目、佐藤が先発した相模原。
 しかし、並のチームでは彼までたどり着くのが大変。

 福島Uが1点を返したとはいえ、やはり前半45分だけでも相模原の基礎体力、技術の高さを感じさせるには十分だった。昨季の地域決勝1次ラウンドであと一歩のところでの敗退、そして今季の東京23FCとの全社決勝敗戦。結果を出さねばというところでことごとく涙を呑んできたチームでもある相模原。これ以上同じような経験をせんとばかりに意気込み溢れる出だしだった。

 
 齋藤とコンビを組む森谷も相変わらず怖い存在。

 
 坂井が昨季以上に前線に顔を出すようになった印象。
 佐野の加入がもたらした相乗効果か。

 後半に入っても、相模原の慎重な試合運びは健在。追加点を無理に狙わず、しっかりと中盤からブロックをかけようとする。福島Uもさすがに後半巻き返し。1点差のビハインドを甘んじるチームではない。62分にMF片原がミドルシュートで惜しい場面を作るなど、その攻防は見逃せない展開だった。
 しかし、後半の福島Uの反撃を押さえ切った相模原が前半のスコアのまま逃げ切り、2-1で勝利。順調な船出の勝点3ポイント獲得となった。

 
 守備面で立ちはだかる工藤という壁。
 長身を活かして攻撃でも絡むことが多い。

 
 今季の相模原は佐野の加入にとって安定感アップ。
 J2・北九州からのレンタル加入。まさに反則級。

 非常にレベルの高い試合で、北海道-奈良を見ていたはずのギャラリーも固唾を飲んだのは間違いない。やはりこのグループは相模原を中心に回っていくと感じさせてくれた初日となった。無論、10月のテストマッチで0-6と敗戦を喫した奈良クラブとしては、その残影を払拭する試合ぶりを見せなければならない。非常に腹を据えるには十分な試合だったと回顧できる。
 相模原に関しては、佐野の加入が本当に効いているなと実感した。昨季の点を取ってから余裕が垣間見える危うい試合運びが全く感じられず、佐野が中盤でボールを散らして守備面でも献身的、良いブレーキングを施している印象だ。さすがJリーグ準加盟、10月のテストマッチの際にも思ったが、全方位で隙を見せない仕上がりになっているなと実感した。
 対する福島Uもこの試合を見る限り、非常に侮れない技術の高いチームだった。特に10番を背負うキム・コンチョンはその冷静なプレーと視野の広さで改めて印象深い。また全体的に180cm台の選手たちばかりで、平均身長が明らかに最下位の奈良クラブとの体躯的差も目に付いた。問題は負傷を押してピッチに立つGKの不安定さだが、正直なところ、守備陣が体を張っており、相模原相手でも1点差の敗戦ということを考えれば、それほど福島Uにとってはマイナス要素でもないなと感じた。
 この1日目、第2試合を見る限りは改めて「死のグループ」といえる組み合わせに放り込まれたなと頭を掻くしかなかった。第1試合で勝点3ポイントを取っておいて本当に良かったと思う。

赤と緑、熾烈な攻防戦 -金沢vs松本山雅-

2011年11月23日 | 脚で語るJFL
 JFLは震災による延期分の前期第6節が行われ、金沢西部緑地公園陸上競技場では、ホーム・金沢と松本山雅が対戦。来季のJ2参入を目指す松本山雅が執念の先行逃げ切りで2-1で勝利。5位をキープした。対する金沢は13日の同カードで0-2と敗戦して以来の3連敗。

 

 1万人動員デーと称され、金沢だけなく松本からも多くのサポーターが詰めかけた今節の金沢。G大阪のリーグ戦で金沢西部は何度か来たことがあるが、金沢のホームゲームとしては初めて。前述の動員デーのための催しがいろいろ行われており、試合前から競技場前のフードコートエリアは盛況だった。

 
 試合前のフードコートは行列ができるほど盛況。
 なめこ汁は金沢U15の保護者による手製で美味かった。

 
 メインスタンドも中央部から人がぎっしり。
 対戦相手が松本ということもあって、この日はJ2レベルの動員。

 
 もはや説明不要の松本山雅サポーター。
 4位以内を目指すべく多くのサポーターが集結。

 
 負けじと金沢のゴール裏も熱い。
 赤いビニール袋を使ってのコレオでゴール裏を赤く染める。

 松本山雅は5月の太陽が丘での佐川印刷戦以来、金沢は昨季のSAGAWA戦以来の観戦となる。金沢は、春野の1次ラウンドから見ていただけあって、やはり2009年の地域決勝のイメージが強く、未だにその時の選手たちが記憶に色濃く残っているのだが、それもあってかこの日はその中でもキャプテンマークを巻く諸江、山道、古部といった選手たちが非常に懐かしく思えた。金沢は、チーム得点王の平林がベンチスタート。曽我部もこの日はファンサービス要員として会場外のブースにいるなど、前回から2人ほど先発にテコ入れがあった様子だった。
 対する松本山雅は、こちらもソニー仙台戦から先発メンバーを多少変更していた。鐡戸、弦巻、渡辺が外れ、多々良、飯尾、北村が先発に。先日の天皇杯3回戦ではJ1・新潟を破って天皇杯で例年並みに乗る定番のチームになってきたが、本命はこのJFLでの4位以内という戦績。5位につける彼らとしては、13日の同カードで2-0と勝利できた金沢にアウェイとはいえ、2タテは必至という覚悟だっただろう。勝点が切迫しているJFL上位陣。1ポイントでも差がつけば4位以内は厳しくなる。松本山雅はまさに勝負どころの時期だ。

 試合は立ち上がりから金沢が攻勢に出る。いきなり3本のCKを連取すると、DF諸江が際どいシュートでゴールを肉薄。金沢がホームで執念を序盤から見せる。

 
 
 
 いきなり金沢がビッグチャンス。
 松本にとっては慌ただしい立ち上がりとなった。

 金沢の序盤の猛攻をしのぎ切ると、松本もカウンターからリズムを作り出す。25分には金沢・マイケルのパスミスからFW塩沢がシュートまで持ち込むもゴールならず。双方ミスがゴールに直結するほどFW陣の能力は高い。29分には久保の横パスを受けた山道エリア左手から惜しいシュートを放つ。松本も32分に左サイドを抜け出した玉林がシュートするが、これを金沢・GK大橋がセーブで切り抜ける。

 
 マッチアップする金沢・マイケルと松本・塩沢。
 塩沢は何度かチャンスがあったが得点を決められず。

 
 金沢・Gk大橋は随所で好セーブを見せる。
 しかし、後半に無念の負傷退場。

 35分にはエリア手前から松本・大橋がシュート。わずかに枠を捉えられない。37分には今度は金沢がCKを諸江が鋭いヘッドで合わせてゴールを強襲するなど一進一退の攻防。依然金沢が松本陣内まで攻め込む場面が多かったが、得点には至らず0-0で前半を折り返す。

 
 松本は大橋が緩急をつけた動きでリズムを作る。

 
 37分、この諸江のヘッドは金沢にとって決めておきたかった場面。

 後半に入ると、松本が攻撃に勢いを見せる。50分に塩沢がフリーでクロスをヘッド。これはGK大橋が飛び出しており、ゴールかと思われたが、金沢・斉藤が間一髪のところでクリア。続く53分にも再び塩沢がダイビングヘッドでゴールを狙うも、わずかにゴール右に外れる。そして56分に松本は消えていることが多かった船山に代えて木島良を投入。すると、その直後に弟である木島徹が先制ゴールを決めた。

 
 
 この塩沢のヘッドはギリギリ金沢・斉藤がクリア。

 
 先制点は松本。決めたのは木島徹。
 得点ランキングトップタイとなる19得点目。絶好調だ。

 エース・木島徹の先制点で勢いに乗った松本は、67分にも途中出場の兄・木島良が左サイドから強烈なシュート。これは金沢・GK大橋がファインセーブに阻まれたが、74分にはドリブルから左足を一閃。強烈なシュート再びで追加点を奪った。

 
 
 金沢はドラゴンこと久保がパッとしなかった。
 72分に井上と交代。残念そうな表情。

 
 松本、守っては横浜FCから今季加入したベテラン飯尾が奮闘。

 
 その飯尾とコンビを組む飯田も体躯を活かしてしっかりブロック。

 松本が2点目を決めた後に金沢はここまで気を吐いていたGK大橋が接触プレーで交代するアクシデント。ところがここから火が着いたのか金沢の猛攻が始まる。84分にはエリア手前から古部のシュートが味方選手に当たってコースが変わりゴールイン。金沢が1点を返す。既に諦めムードだった金沢西部のメインスタンドホーム側もホームゴール裏と呼応するように盛り上がり始める。序盤同様にCKを連取して同点ゴールを狙い続ける金沢と必死の守りを見せる松本のスリリングな展開。85分には松本・須藤が2枚目の警告で退場に。その直後のFKを金沢・マイケルが頭で合わせるが惜しくもゴールならず。89分には山道がCKを頭で合わせるがギリギリ決まらない。5分と設定されたアディショナルタイムには金沢のシュートが松本・木島良のゴールライン上ギリギリでクリアに遭うなど最後までツキがなかった金沢。結局最後まで同点弾が奪えず、2-1で松本に軍配が上がった。

 
 金沢の山道はフィニッシュに良く絡んでいたのだが…

 
 松本・DF多々良が自陣で必死のクリア。

 
 松本は須藤が終了5分前に退場に追い込まれる苦しい展開。

 
 石舘がドリブルで切り込む。CKのキッカーとしても存在感を発揮。

 攻める金沢、守る松本という構図で、フィニッシュの決定力に差が出た結果となったこの試合。やはりその点で木島兄弟を揃える松本が強かな部分はあったと思うが、金沢はあと一歩という場面でツキに見放された感も大きい。ゲームの作り方にはそれほど差がなかったかもしれないが、ミスは松本の方が少なく、特に守備陣でこれが分かれたといえる。守備をまずは整え、前半をしのいだ松本が先行逃げ切り。しかし追いつこうとする金沢の猛攻も含めて非常に見応えのある面白い試合だった。
 他会場の結果を踏まえると、順当に勝利を収めた上位陣に変化なし。まだ松本は5位という位置で、4位・長崎と勝点差1ポイントという接戦が続く。各チームの残り試合は3試合。しかし、松本に関してはこの上位陣の中で唯一1試合多く消化済みだ。つまり松本にとっては残り2試合。しかも相手は今季JFLで戦績をアップさせた強豪・ホンダロックだ。果たして松本の命運はいかに。
 対して金沢はJ準加盟に及ばず(2012年2月の準加盟審査にチャレンジとのこと)、今季も上位進出は厳しい。しかし、明らかにホームゲームの雰囲気は作れており、地元の人たちの認知度も高い(帰りに近江町市場に寄ったが、食事処の店員もツエーゲン金沢のことを知っていた)。1万人を目指したこの試合の動員は残念ながら8,786人に留まったが、特に子供たちの姿が多かったのは印象的で、めった汁やU15の保護者の皆さんが作るなめこ汁などフードコートのメニューもハートフルだ。運営面では頑張っている金沢。2013年にはJ2にいてもおかしくないチームであることは間違いない。地域決勝大会の直後というタイミングだったこともあって、様々な点で刺激を受けた金沢での試合だった。

 
 負けられない松本。
 果たしてその結末はいかに…!?

 
 3連敗となったが、金沢のホームゲームの雰囲気は印象的。
 確実に金沢の街に根付いていると実感。

2011年地域決勝、奈良クラブの冒険が終わる。

2011年11月22日 | 脚で語る奈良クラブ
 今季の全国地域リーグ決勝大会1次ラウンドが終了。3グループからShizuoka.藤枝MYFC、S.C.相模原、HOYO AC ELAN 大分がそれぞれグループ首位で、そして2位チームの最上位(ワイルドカード)としてY.S.C.C.が12月2日から長居第2陸上競技場で行われる決勝ラウンドへ進出を決めた。

 Bグループで、2日目にS.C.相模原と対戦した奈良クラブは0-1で惜敗。続く3日目には東北リーグ王者の福島ユナイテッドFCに2-0と勝利。2勝1敗で2位につけたが、勝点で及ばず、ワイルドカードを掴むことはできなかった。2勝しても決勝ラウンドが遠い4/12という狭き門。奈良クラブの初めての地域決勝大会での冒険は終わった(現地での戦いぶりはこちらを参照のこと)。

 非常に感慨深いものがある。思えば、3年前に土のグラウンドで、ろうそくの灯りを頼りに練習を始めた草サッカーチームに等しきチームだった。1年での関西リーグ昇格、そしてまた1年でのDiv1昇格。Div1で2年目ながら優勝。関西王者としてこのJFL入学試験の切符を掴んだ。今季の関西リーグでの強さは圧倒的だったが、全社関西予選を予選で落とし、天皇杯もホームでの1回戦で苦杯を喫した。10月の関東遠征で、同じく地域決勝大会に出場するJリーグ準加盟・S.C.相模原に0-6と完膚なきまでに叩きのめされた。この時の光景は相模原戦当日まで脳裏を過って仕方なかった。地域決勝大会1次ラウンド2日目、雨の中での接戦は19分にPKで1点を献上したものの、その後は完全に奈良クラブペース。相手を圧倒するシュートの嵐で試合の主導権を握った。しかしながら最後まで追いつくことはできず、1点の壁に泣いた。この1点の遠さも地域決勝大会の厳しさだと実感する悔しい試合だった。
 3日目の福島U戦に他力本願の要素もありながら全てを懸けた。初めて対戦する相手だったが、序盤から攻勢に出る。前半をスコアレスで凌ぐと、後半に入って牧、橋垣戸の得点で一気にリードを掴む。大量得点差での勝利が他力本願以前の最低条件だったが、健闘虚しく勝利しながらも決勝ラウンド進出はならなかった。しかしながら、初の地域決勝大会で2勝1敗。十分に誇れる戦績ではないか。素晴らしい試合ぶりだった3日間。本当に奈良クラブの強さを全国レベルで発揮してくれた来年以降に繋がる3日間でサポーターとしては「感謝」の言葉、労いの言葉しかまずは出てこない。

 十分全国の舞台で戦えることを証明した3日連続の3試合。もちろん、今後の課題もはっきりした。2戦目の相模原戦で1点に泣いた決定力の充実。まずはここに尽きる。
 この大会では、奈良クラブ得意のパスサッカーが前面にアピールできた。前半こそ相変わらずのスロースタートぶり(特に北海道戦)だったが、それでもリーグ戦で蓄積したコンビネーションがフルに活かされたはずだ。ここに負傷で離脱の辻村隆がいれば本望だったが、中盤の構成力はグループ屈指だったはず。組み合わせによっては決勝ラウンド進出も叶ったと信じている。しかしながら、牧と檜山の先発コンビに、後半、嶋や大塚を投入するも、欲しいところで得点がなかなか奪えなかった。元来、「どこからでも点が取れる」というのがこのチームのストロングポイントではあったが、関西リーグと地域決勝大会で最も「差」として実感した部分だといえる。
 また、懸念された選手層の部分では、負傷や警告累積の影響を受けなければ、十分通用すると感じた。欲を言えば、もっと層が厚いに越したことがないだろうが、1年目の吉田監督が選手を見極めるにはちょうど良い少数精鋭だったのではと感じている。GK日野以外、地域リーグクラスに収まらない選手がお世辞にもいるとは言い難い。もちろん、戦力の上乗せは来季この大会を勝つためには重要なところ。まだKSLカップ3位決定戦を12月に残しているが、この点でも楽しみなシーズンオフになりそうだ。

 しっかりKSLカップ3位決定戦で勝利して、今季を締め括りたい。この3日間が選手に相当な自信をもたらしているはずだ。もっとチームは強くなる。

全国への船出 -地域決勝vsノルブリッツ北海道-

2011年11月18日 | 脚で語る奈良クラブ
 第35回全国地域リーグ決勝大会が全国3会場で開幕。淡路島のアスパ五色では、ノルブリッツ北海道、福島ユナイテッドFC、S.C.相模原、奈良クラブの4チームが一同に会する「死のグループ」とも形容される組み合わせ。初戦をノルブリッツ北海道と対戦した奈良クラブは、85分の檜山の得点で勝利。初出場の地域決勝大会で初戦にて勝点3ポイントを獲得した。

 関西リーグの試合会場となることが多い故、見慣れたはずの景色ながら、何とも言えない独特の緊張感が漂うアスパ五色。関西リーグ王者として、奈良クラブは初めてJFLへの入学試験に挑戦することになった。
 初戦の相手は北海道リーグの王者・ノルブリッツ北海道。札大GPと凌ぎを削る強豪クラブで、北海道電力サッカー部の頃から数えれば、幾度となくこのカテゴリーの全国大会を経験している。無論、胸を借りるつもりという意味では、今季も全社出場を取り逃した奈良としてはこの大会では本当に新米だ。それは前半の戦いぶりで露わになる。

 試合は一進一退の序盤戦から徐々に北海道に決定機が訪れるようになってきた。それもこれも奈良の守備陣のミスからという場面が多かった。必要以上に最終ラインで手数をかけてしまう場面が多く、ボールの処理にもたつき、ヒヤッという場面が見られる。しかし、そこを今季のリーグ戦から幾度となくカバーしてくれてきたのはGK日野という男だ。本当に頼りになる。前半、この日野の活躍で3本の北海道の決定機をシャットアウト。徐々に建て直してきたところで後半へ折り返す。

 後半から黒田に代えて矢部を中盤に投入。セントラルMFとして先発だった李を右サイドへスライド。これがリーグ戦同様のリズムを生み出した。前半にはなかった決定機の数々を次第に作り出して、試合の主導権を完全に握った。パスが繋がる。連動したいつものサッカーがそこにはあった。そして、85分に待望の先取点を生み出す。三本菅からのパスを受けた李が前方に絶妙なループパス。これを檜山がDFの裏に抜け出してダイレクトでループ気味にゴールへ流し込む。ここまでの85分間、耐えに耐え抜いたサッカーが結実した。これが決勝点となり、まずは初日の試合を1-0で制した。

 第2試合は、相模原が福島U相手に2-1で勝利(観戦記は後ほど記載)。これで明日、共に先勝した同士での直接対決という構図になった。史上最大の強敵。ここを乗り切れば更に光明は見えてくる。奈良県リーグから足掛け3年半、ここまでのチームの蓄積を全て懸けて挑むしかない。全国への船出はまだ始まったばかり。目の前に迫る大きな波が乗り越えなければならない。

葵の御紋ここに輝けり -EC3回戦 G大阪vs水戸-

2011年11月17日 | 脚で語るガンバ大阪
 今季の天皇杯は3回戦が平日に行われ、その大半でJ1勢とJ2勢のマッチアップが見られた。万博ではJ2・水戸が昨年、一昨年の王者・G大阪に挑戦。J1で優勝争いを繰り広げるG大阪を延長の末に水戸が3-2で下した。G大阪はよもやの敗戦、例年J2勢に苦戦する3回戦でまさかの結果となった。

 

 かなり寒い気温となった万博。平日の天皇杯ということもあってか、観客は3,000人に満たない。スタンドを多くは空席だったが、双方のゴール裏はサポーターがボルテージを上げていく。G大阪は、佳境のJ1で首位・柏と3位・名古屋とのデッドヒートが熾烈を極めてきた。水戸はJ2で16位という順位ながら、実は直近10試合ではわずか2敗しかしていない。かなりリーグ後半戦になって調子をあげてきたものの、この日の相手はG大阪。大方の人たちが順当なG大阪の勝利を予想しただろう。自分も10月に京都戦(2-0で水戸が吉原と鈴木隆の得点で勝利)で水戸の好調ぶりを目にしたとはいえ、その一人だったのは間違いない。

 G大阪は、日本代表で遠藤がいない。DF陣は中央を中澤と若手の内田が組み、左右に藤春、加地。中盤に二川、佐々木と中央に武井と橋本が顔を揃えた。2トップはキム・スンヨンと平井だ。
 対する水戸は、先日のFC東京戦で主軸のロメロ・フランクが出場停止。鈴木と小池が前線でコンビを組み、右SBとしても出場機会の多い西岡がFC東京戦同様中盤の底に入った。小澤、村田といったあたりの中盤の選手が積極的に飛び出してくるのが印象的だったが、この日はG大阪相手に守勢に回るものだろうと予想した。

 試合は序盤からG大阪が攻めあぐねて低調ぶりを露見した。なかなかシュートの機会がないばかりか、水戸の鈴木隆を中心とする前線のチェイシングにかなり手を焼いた印象だ。16分に佐々木が強引にミドルを狙い、少しリズムを引き寄せるかと思ったが、19分には水戸・小澤がG大阪・中澤のミスを突いてシュートまで持ち込む。どうも守勢に回るのは水戸の役目ではなかったようだ。

 
 水戸・鈴木隆のプレッシャーに思わず加地が苦戦。

 
 前半から仕掛ける水戸。
 小澤がエリアまで持ち込んで守備陣を翻弄。

 28分には水戸・小澤が再びゴール前でシュート。これはわずかにバーを越えたが、その直後の29分には、右サイドのアーリークロスに島田がダイビングヘッドで飛び込む。シュートはミートしなかったが、決定的な場面が続き、G大阪にとっては冷や汗ものだった。35分にも水戸は左CKに加藤がヘッドで合わせる。これもわずかにゴール右に逸れてしまったが、この水戸の勢いは本物だった。

 
 右SBとボランチをこなす西岡。
 展開力のある彼は地元、関西大出身。

 
 
 鈴木隆の駆け引きの巧さは衰えず。
 中澤がセルフジャッジで足を止めたところを突破。

 しかしながら、G大阪は高い技術をゴールに直結する。40分に佐々木がロングパスを左に振ると、駆け上がったキム・スンヨンにピタリ。そのままキム・スンヨンが左45度からシュートを決めてG大阪が先制に成功する。さすがJ1の強豪と呼ぶに相応しい決定力。これでG大阪が一層攻勢を引き寄せるかと思えた。

 
 キム・スンヨンがこの先制シュート。

 
 G大阪で好調な動きを見せていたのは佐々木。
 先制点のロングパスはお見事。

 ところが後半に入ると、依然水戸が元気を取り戻す。前半からの勢いは途切れることがなかった。50分、G大阪・内田の処理ミスを奪った水戸・小澤がそのまま持ち込んでシュートを決め、同点に追いついた。これには失点自体は「いつものこと」と万博のスタンドから多くのサポーターがかこつける余裕があったのかもしれない。しかし、それは違った。

 
 
 水戸の同点の場面。
 小澤がミスを突いて持ち込み、落ち着いて決めた。

 65分、佐々木がドリブルから正確なミドルシュートを決めてG大阪が再び突き放す。佐々木は前半から1人気を吐いたプレーでG大阪を牽引していた。しかし、この得点で一気に勝負をつけられるほど水戸は甘くなかった。この直後にG大阪は二川と平井を下げ、明神と川西の投入。もちろん川西の投入は追加点を奪えという指揮官のメッセージではあったが、この佐々木の得点の直前に水戸・村田のシュートを藤ヶ谷がセーブしている間一髪の場面があり、得点が奪われながらも水戸の推進力は衰えてはいなかった。

 
 藤ヶ谷のこの場面でのファインセーブが報われず。

 
 橋本はまだコンディションが今一つに思える内容。

 70分に水戸は、小池がエリア右手の角度のないところからシュートを放つ。これはゴールを肉薄するに終わったが、続く75分、島田が右サイドからドリブルで切り込んでシュート。これで得たCKに鈴木隆が頭で合わせて再び試合を振り出しに戻した。

 
 水戸のディフェンスリーダー尾本。
 空中戦での存在感もあった。

 
 武井はボールを回そうと奮闘。遠藤の代役は酷か。

 83分、G大阪・内田がハイボールをかぶってしまうミスで、ボールは水戸・小池に。小池が藤ヶ谷と1対1になるがシュートはポスト直撃という危ない場面が。10度を下回るかなりの寒さに包まれた万博では多くの観客がこの展開に震え上がっていただろう。89分には藤春がオーバーラップから完璧な折り返しを中央へ放り込んだが、キム・スンヨンがこれを合わせられず90分のフルタイムを迎える。

 
 藤春は随所に持ち味を見せた。
 89分のクロスは惜しかった。

 試合は延長戦へ。しかし、100分に小池のシュートが決まって勝ち越したのは水戸。113分にG大阪は佐々木がエリア中央で絶好のシュートチャンスを噴かしてしまう。115分には佐々木のシュートから得たCKを明神がわずかに決められない。118分には川西が加地からのボールを頭で落として、フリーだった武井がシュートを放つがこれもわずかにゴール左に外れるなど、ここぞという場面で決められないG大阪。なんとこのまま試合はタイムアップ。見事4回戦に駒を進めたのは水戸という結果になった。

 
 
 118分の武井の決定的なシュート。
 これを決められなければ敗戦も致し方なし。

 G大阪の天皇杯3回戦敗戦は、天皇杯でJ1勢が2009年から2回戦より登場するようになったこともあり、この10年では初めてのこと。だが、この10年間で幾度となくこの天皇杯の序盤で苦戦は強いられてきたことも記憶に新しい。2005年には当時J2だった横浜FCに3-3からPK戦の末7-6で勝利を収め、2006年にはJ2・湘南に2-1とかろうじて勝利。2007年にはこれまた当時J2だった山形を相手に2-2からPK5-3というギリギリの試合で勝利している。初優勝を果たした2008年のシーズンも初戦の甲府(当時J2)に2-1、そして昨季の栃木戦も終了間際に勝ち越し点を奪って3-2という薄氷の勝利だった。ここまでJ2勢に苦戦を強いられている過去のデータは興味深い。ともあれ、これでG大阪の天皇杯は終戦。残り3戦のJ1に絞られた。勝負の行方ではまだクラブワールドカップへの出場権も残されている。この敗戦がいかに影響するかは未知だが。

 
 残りの負けられないリーグ戦に影響するか否か注目。

 対する水戸は「ジャイアントキリング」と呼ぶには失礼なほどの対等、それ以上の内容での勝利。J2・16位とはいえ、最近の好調ぶりが発揮されたようだ。特に印象に残ったのは前線の鈴木隆の献身的な守備。G大阪DFにも筆紙にスライディングを仕掛けてまでのボールの奪いっぷりは、G大阪の平井の淡白なプレーとはなんとも対照的。これに加えて、村田、小澤、小池らアタッカー陣が気を吐くプレーを見せていた。天皇杯、次の相手はFC東京。この万博でしかと見せつけた胸に輝く葵の御紋がもうひと輝きできるか非常に興味深い。万博にこだまする水戸サポーターの凱歌は試合が終わってもしばらく止むことはなかった。

 
 
 J2で面白いチームの1つとして間違いない水戸。
 負傷中の吉原も笑顔で古巣との試合を楽しめたはずだ。

長崎、リーグ屈指の得点力 -MIOびわこ草津vsV・ファーレン長崎-

2011年11月14日 | 脚で語るJFL
 今季の全日程もあとわずかに迫ってきたのはJや地域リーグだけでなく、JFLも同じく。ほとんどのチームが残り試合を5~6試合とし、注目はJ参入に関わる4位以内の争いや降格、入替戦のかかった下位争い。後期第15節、14位・MIOびわこ草津と5位・V・ファーレン長崎は東近江の布引グリーンスタジアムで行われ、長崎が6-0でびわこを下してリーグ2位タイに総得点を伸ばし、順位を4位に上げた。

 

 久々のJFL観戦は東近江への1年ぶりの来訪。1年前にJ昇格を決めた鳥取とびわこの試合(5-0でびわこが勝利)を観に来たが、ちょうど布引グリーンスタジアムはその試合がこけら落としで、今季はすっかりびわこがリーグ戦の多くをここでこなしている様子。名神高速・竜王ICからスタジアムまでの牧歌的な風景はまた何とも言えずノスタルジックで個人的には好きだ。到着早々、美味しそうな香りを漂わせる近江牛カルビ丼を買ってスタジアムに入る。

 ここまでホーム・びわこは直近3試合で明らかに調子が上向き。10/22の後期第12節では8試合ぶりの勝利を2位につける長野からもぎ取って3戦無敗。対する長崎はその後期第12節で高崎に1-2と敗戦を喫するものの、9月からまだ2敗しかしておらず5位につける絶好調。好調同士の対戦となった。

 この試合、スタジアムの西側から強い風が吹きつけ、天気も晴れていたと思いきや、すぐに厚い雲がその頭上を覆うなどコンディションはまちまち。特に前半は風上に立ったびわこがチャンスを作るには分があると思われた。ところが、開始5分で長崎に先制点のチャンスが。エリア内に突進した長崎・FW水永をびわこGK・永冨が倒してしまいPKの判定。これを長崎は有光が決めて早々に先制に成功する。35分には、左サイドから駆け上がった持留のクロスがファーに流れたところを岡村が合わせて2点目を奪う。対するびわこも風上を活かし、ロングボールで長崎エリア目がけての攻勢に出るが、あと一歩ゴールに及ばない。特に前線で園田が駆け回ってチャンスを作ろうとするが、長崎の守備陣に阻まれた。

 
 5分に長崎が有光の先制点となるPKで先行。

 
 びわこは園田が気迫のこもったプレーを見せる。
 かつての所属先から愛のある野次も飛んでいた。

 
 
 長崎はこの岡村のシュートで追加点。

 2-0で折り返した長崎は後半も攻撃の手を緩めない。57分には有光の右CKを水永が頭で合わせて3点目となるゴール。53分に主砲・木下を投入。58分にも半田を下げて伊藤をピッチに送り、形勢を逆転すべくびわこもベンチワークに積極性を増す。しかしながら、次に得点を奪ったのも長崎。守勢に回っていたのも束の間、風上を活かした速攻カウンターで最後はエリア前で山城をパスを受けた神崎がシュートを決めて4点目を追加する。

 
 
 
 
 水永、ドンピシャのヘッド炸裂。長崎が3点目。

 
 びわこは司令塔・半田が攻撃の組み立てに苦戦する。

 
 劣勢のびわこ、ベテラン・秦がチームを牽引するが…

 
 小柄ながらそのスピードとテクニックは注目。
 カウンターから得点を導いた長崎の山城。

 4点目を奪った直後に長崎はFW中山を投入。かつてG大阪でプレーしたこの選手を実に久しぶりに見ることとなった。その中山、早速79分に左サイドから強烈なシュートを狙っていくが、わずかにゴール右へ逸れていく。決定機を外したものの活躍の予感は十分。すると、83分には中山がエリア内で倒されて得たPKを自身で蹴るチャンスが到来。残念ながらこれはびわこGK永冨に阻まれたが、89分には右サイドから神崎が放り込んだクロスを相手DFがクリアしたところに中山がフリーで走り込んでシュートを決める。長崎は5-0とリードを広げながらも、90+2分には持留が左サイドから攻め上がって強烈なシュートを叩き込み6-0として試合を終えた。

 
 自分で掴んだPKのチャンスだったが…

 
 長崎・FW中山、まさかのPKミス。

 
 
 しかし、負けじと89分に中山が長崎の5点目をゲット。

 
 左サイドで躍動していた持留もダメ押しの6点目を決める。
 元G大阪ユースで攻撃的サイドバック。

 終わってみれば、長崎が圧巻の得点力で大差をつけた。これで長崎は総得点が52得点と首位・SAGAWAの53点に肉薄。FW有光は得点ランキングを独走する19得点目を決めた。それどころか、この試合では6得点全てが異なる選手によるものという結果に。まさにJFL屈指の得点力。好調のびわこ相手に完封で終わっているところも特筆すべき安定感といえる。
 対するびわこは、ホームで連勝していただけにショックが大きな試合になったかもしれない。特に後半はほとんどチャンスを作れず、中山を倒して畑が、そして終盤には負傷で細貝も欠いてしまい、9人になってしまう展開を強いられた。ただ、布引のスタンドは観衆も616人とそこそこの賑わいを見せており、やはり継続的にホームで試合ができることでつくられる雰囲気は地域リーグのそれとは違うものだなということも実感できた。5月以来のJFL観戦。非常に新鮮で刺激を受けた。

 
 まだJ2ぐらいでは通用しそうな長崎・FW有光。
 19得点で得点ランクトップ。

 
 昨季は高崎の主将としてJFL入替戦を戦っていた岩間。
 長崎へ移籍し、今ではすっかり中心選手に。

獲得至難のカップタイトル

2011年11月13日 | 脚で語る奈良クラブ
 奈良クラブが戦うKSLカップは12日、準決勝2試合が行われ、アミティエSCと対峙した奈良クラブは1-2と敗戦。準決勝2試合目はアイン食品が阪南大クラブを1-0で下して決勝進出を決めた。この結果、12月23日に行われる3位決定戦は奈良クラブと阪南大クラブというカードに、そしてその後に行われる決勝戦はアミティエとアイン食品の対戦カードとなった。

 前半から歯痒い内容だった。23分にセットプレーから先制点を奪われる。全員が必死にボールを追いかけ、カウンターを展開するアミティエ。対照的に少し球際で積極性が出ない奈良クラブ。0-1という形で前半を終えることになった。思い起こされるのは日岡山で行われたリーグ戦の第2節だ。あの試合でも前半に先行され、0-1で後半に折り返した。しかし、後半は相手をいなすパスワークを見せてあっという間に逆転。その後同点にされたがそれでも追加点を決めて振り切った。今回もそんな展開も脳裏には過った。後半にしっかり修正することでリーグ戦でも結果を出してきただけに、リードされていても盛り返せる気はしていた。
 後半、PKで追いつくものの、終了間際に決勝点を奪われた。結果的には準決勝で敗戦。3位決定戦に回ることになった。1点差、しかも終了間際の決勝点献上ということもあって悔しさもひとしお。試合後にチームの公式Twitterにもその旨がツイートされたように、来週の金曜から始まる地域リーグ決勝大会を前に、どうしても選手たちがコンタクトを控え目にして負傷やカードを回避せざるを得なかったのは確かにあったのかもしれない。もちろん、チームが全力でこの試合に臨んだことを信じているが、チームからすれば難しい試合になったのは間違いない。確かにチームの最大の目標はリーグ優勝を成し遂げたことで、現実的なものとしてJFL昇格となった。しかし、どちらも重要なタイトル、大会であることも考え方としては正しい。要はここを二兎追うことが実情としてかなり葛藤を抱えるものだということが分かった。KSLカップは地域決勝大会を目前に控えたチームには、勝ち上がれば直前まで真剣勝負の公式戦ができるメリットはあるものの、果たして地域決勝大会を直前に控えた諸々のリスクと共存できるか、非常に悩ましい。そこには相当の選手層やメンタルが必要とされるだろう。

 それらを考えれば、確かに過去のKSLカップも優勝チームはリーグ戦のそれとは違っているケースが多い(2009年のラランジャ京都(リーグ2位での地域決勝大会出場、カップ優勝)というケースがあるが、このシーズンはリーグ順延の影響で実質的には1回戦からトーナメント式だった)。これまで同じような境遇に立たされたチームも同じ葛藤に悩まされていたのか。他地域を見ていると、関東リーグではKSL市原カップ(関西リーグと同じくKSLという略称が一般的である)がほぼ同時期に行われているが、今季は地域決勝大会出場チームであるS.C.相模原は予選リーグで早々に敗退。リーグ王者で同じく地域決勝大会出場予定のY.S.C.C.も決勝で惜しくもクラブ・ドラゴンズに敗れたという。やはり同じような葛藤がそこにはあったのだろう。やはりこの時期のカップタイトルはその制覇が至難と見える。なかなか地域タイトル完全制覇という偉業は難しいものだ。

 しかし、この敗戦である種の引き締め作用があったのは事実だろう。金曜日から始まる地域決勝大会。チーム未踏の負けられない独特の緊張感に打ち勝たねばならない3連戦1次ラウンドがスタートする。この敗戦がカンフル剤になることを信じてやまない。

KSLカップ、ベスト4進出

2011年11月05日 | 脚で語る奈良クラブ
 KSLカップは、予選リーグ最終節から中1日で準々決勝を迎え、J-GREEN堺では奈良クラブとバンディオンセ加古川のリーグ1位、2位の直接対決が実現。試合はPK2本を決めた奈良クラブが2-1で勝利して、準決勝進出を果たした。

 今季は、共に11月より開幕する全国地域リーグ決勝大会に出場する2チーム。おそらくKSLカップのハイライトをなり得る対戦カードとなったこの試合。前半から奈良がペースを握りながらも、拮抗した試合展開となった。奈良は、2日前に出場したメンバーでは唯一李をベンチに置き、蜂須賀と黒田がサイドハーフで先発。GKは3試合ぶりに日野が先発出場で、前線では檜山と辻村剛が2日前に続けてコンビを組んだ。
 前半から押せ押せの展開だったが、特に両サイドを使った攻撃が功を奏し、右サイドからの流れからゴール前で矢部と辻村剛がワンツーで突破を試みると、これに相手DFがたまらずファウルを犯してしまい、PKのチャンス。これを辻村剛が決めて先制に成功する。前半を0-0で折り返せればという展開だっただけにこの1点は大きかった。

 後半に入って雨が強くなってきたが、試合のペースは変わらず。そして加古川にシュートを打たせないという守備の安定感も手伝って、特に攻撃面でのラッシュは冴えた。CKからのこぼれ球をフリーで受けた矢部のシュートがバーを直撃するなどチャンスはあったが、相手を崩してからのシュートが決まらない。しかし、何度も相手エリア内まで仕掛ける形が増えたことで、CKを再三得たことが追加点のチャンスを呼び込んだ。73分、CKの際に競り合いの中で相手DFがファウル。再びPKをゲットすると、これを辻村剛が落ち着いて決めて2-0に。攻勢は依然衰えず、この追加点で勝算は立ったものの、試合終了前のアディショナルタイムにカウンターから容易なシュートを許して1点差に追い上げられる。これは明らかに不要な失点だったが、加古川の追い上げはこの場面だけ。結局2-1で勝利を掴んだ。

 物足りなかったのは崩してからの流れによる得点がなかったことといえるが、内容は良かった。守備面でも数的不利な場面をほとんど作らせなかった。このKSLカップでは試合ごとに内容が良くなっている。そういう意味では流れからの得点は是が非でも欲しかったのは正直なところだ。個人的には黒田が改めて器用な選手だと思った。この試合では左MFとして先発したが、記憶ではこのポジションは彼にとっては初めて。しかしながら無難にこなしたことで、少し中盤における選手起用は読めなくなってきた気もする。とにかく、李と牧という主軸2枚を抜いた形で地域決勝に出場する加古川に勝利したのは大きい。

 さて、カップまで残り2つ。準決勝を終えて一旦地域決勝へ突入するが、この流れを切らずに地域決勝の直前である来週まで真剣勝負の試合ができることは本当にありがたい。