脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

YANAGI FIELDプレオープン!

2008年05月31日 | 脚で語る奈良のサッカー
 遂にYANAGI FIELDが本日5月31日の10時にプレオープンした。記念すべきこの日のこの場所に集まったのは奈良クラブの選手一同、そしていかにも浮足立った子供たち50人ほど。来場者のクルマで会場の駐車場は一杯になっていた。

 曇り空の下、プレオープンセレモニーがささやかながら行われる。天気は良く持っていた。それまでの雨が嘘のように止み、それはまるでこの記念すべき門出を空の上から祝うように、天気がこの場の空気を読んでくれたかのようだった。

 

 奥様のあつこさんの進行の下、柳本オーナーの挨拶が始まり、ささやかな始球式が行われる。こんなことを言うとオーナーには失礼かもしれないが、子供たちにとってはセレモニーは上の空だったのかもしれない。ボールを放さず、笑顔の止まない子供たちはセレモニーが終わると、蜘蛛の子を散らしたように一目散に緑の人工芝が映えるピッチに駆け出した。その光景は、これまでこの奈良の地で見たことのない風景だったかもしれない。夢のピッチの最初の一日。大人も子供も皆、この気持ち良いピッチの上でボールを蹴ることを心から楽しんだ。

 

 4面あるフットサルのピッチは瞬く間に子供たちのはしゃぐ姿とその笑い声に占領された。ふかふかのピッチでスライディングを真似て滑り込んでいる者、ゴロンと寝ころんでいる者、ボールを奪い合う者、いろんな姿が見られる。そして、いつしか自然とゲームが始まっている。この日の来場者にセレモニーでその活動内容をアピールできた奈良クラブの選手たちも到る所で子供と戯れる。中にはサッカーボールに初めて触れる子供もいたかもしれない。しかし、間違いなくここにいた誰もが“サッカー”に夢中になっていた。
 奥のトレーニングピッチにはキックターゲット用のゴールマウスが作られている。ここに固まって早速記録を競い合う子供たちもいた。

 

 そして、選手も混じっての真剣な試合が始まる(もちろん筆者も参加)。皆、奈良クラブの選手たちのテクニックに見入りながらも、我先にとボールに走り寄る。これからこの光景が日常化することを考えれば何と素晴らしいことか。笑い声のこぼれるピッチにいる誰もが充実感を覚えていた。
 ピッチの外では、子供たちの様子を見守る親御さんたちに奈良クラブを改めてPR。いろいろな方とお話をさせて頂くことができた。以前からこのブログを見て頂いている方、以前からクラブの存在をご存じの方、各々に頼もしいエールの言葉を頂戴する。クラブも言い訳のできない環境が出来たと言って良い。一層頑張っていかなければという思いに駆られたのは言うまでもない。

 

 皆いつまでボールを蹴っていたのだろうか。おそらく日の暮れるまで子供たちの笑い声はこだましていたのだろう。正午を過ぎた時間に、後ろ髪を引かれる想いで京都へと向かったのだった。とにかく“サッカー不毛の地”奈良に大きな一歩が記された。このYANAGI FIELDからこれから幾つの夢が羽ばたいていくのだろうか。楽しみでしょうがない。

 

 東幸一選手と参加者の子供も揃ってニンマリ笑顔

YANAGI FIELD OF DREAMS

2008年05月30日 | 脚で語る奈良のサッカー
 
 今日は、遂にプレオープンを明日に控えたYANAGI FIELDに潜入。既にすぐにでもフットサルのできるその状態は、何よりもまず一面に敷かれた人工芝のクオリティに目を奪われる。一言で素晴らしいとしか言いようのないその光景は、まるでここが奈良でないような錯覚に囚われる。何よりもまず驚いたのがこちら。

 奈良クラブ仕様の自動販売機!これは凄い。これが県内の至る所で見られれば。もちろん、YANAGI FEILDのモチーフカラーが奈良クラブのカラーと直結している訳だ。



 人工芝は、上質のハイブリッドターフを使用。そこに白ゴムチップが撒かれている。弾力はもちろん、質感も含めて、ここまで天然芝に近い人工芝のピッチを見たのは初めてかもしれない。Jヴィレッジなど最高の施設にしか使われていない逸品だ。フットサルコート4面と奥にトレーニングピッチを構えるその豪華絢爛ぶりはもちろん奈良県内の施設では屈指のレベル。奈良クラブの練習拠点としても申し分ないピッチだ。県リーグレベルではない。



 このピッチで子供たちや老若男女問わず皆がボールを蹴られる日が明日に控えている。こんなに素晴らしいことはない。ピッチは縦にすれば、少年用のフルコートを敷くことも可能。至る所にそれ用にポイントが記してある。
 そして、子供たちが、もしくはギャラリーの皆さんが控えるベンチには、しっかりと紫外線をカットする屋根が取り付けられている。夏場には、子供たちの様子を見守るお母様方にちょうど良いかもしれない。ホスピタリティにも事欠かないのがYANAGI FIELDだ。

 

 基本的には隣接するバンビテニスクラブと事務所となる建物を共有するが、オフィスはピッチに近い所にある。その建物のエントランスには多くのオープン記念の花が寄せられていた。まるで“笑っていいとも”状態。しかし、YANAGI FIELDの注目度の高さが窺える。もちろん、我々奈良クラブのサポーター一同からもオープン記念の花をお送りさせて頂いた。

 

 ようやく落ち着いた事務所で、柳本オーナーご夫妻、そして、奈良クラブの顔でもあり、ここYANAGI FIELDスクールディレクターに就任した矢部選手にいろいろ話を伺う。「しんどい」とただ一言つぶやく柳本オーナーの言葉に、オープンに向けて奔走したここまでの多忙なラスト1ヶ月が凝縮されていた。ただただ、このピッチが完成したことの充実感がその場を覆い、これからここを拠点に幾つもの夢が羽ばたいていくと考えると実に感慨深い。このオープンに際して、エールを送ってくれた歴戦の勇士たちの貴重なユニフォームがそこにはあった。何よりもそういった大きな経験を積んだ元日本代表の選手だった人間がこういった尽力を図ってくれたことは本当に嬉しいこと。本当にここは奈良の宝となるべき場所だ。

 ぼちぼち日が暮れてきたところで、水銀灯照明を点灯させるの第1回の点灯式を迎えた。なんとサポーターを代表して筆者がその記念すべき最初のスイッチを入れさせてもらうことに。徐々に明かりが灯っていくと、そこにはナイター照明に映える最高の人工芝ピッチが新たに輝きを放ったのであった。



 照明の照らされた下で、感動に浸る柳本オーナー(by ガンバジャージが懐かしい)。

 明日午前10時にプレオープンセレモニーを迎えるYANAGI FIELD。是非とも多くの方々に詰めかけてもらいたい。そして、この最高のピッチでボールを蹴って欲しいものだ。スクールの会員も随時募集中。詳細は下記オフィシャルサイトまで

 

 さあ、奈良の夢広場の幕が開ける。ここから少しでも多くのサッカーを愛する子供たちが飛び立ってほしいものだ。もちろん、その子供たちがその夢を奈良のクラブで大成させるためにも我々奈良クラブも共に頑張らねばならない。これだけ素晴らし環境ができたのだから。
 YANAGI FEILD OF DREAMS・・・今ここにその最初の1ページを刻もうとしている。

我那覇問題から増島記事問題

2008年05月29日 | 脚で語るJリーグ
 
 何とも低調で、無難に日本代表がその場しのぎのタイトルを獲るべく催行されたキリンカップも終わり、ライブドアスポーツ上の杉山茂樹氏のコラムが、「ド」の付くほど強烈に岡田監督体制の退屈なサッカーを批判していた。
 と思えば、今度は我那覇問題で、スポーツライターの増島みどりさんが“THE STADIUM”上にになんとも希少なJリーグの光景を引き合いに出して、“アンチドーピング”に対する原則の見直しを訴えている。それにしても、増島さん、どういうつもりなのか。以下文章は“THE STADIUM”より抜粋する。

 「翻ってJリーグを見ると、恐ろしい光景は頻繁に目撃できる。選手がゴールを奪って興奮のあまりサポーター席に駆け寄る。そこでサポーターは「ご苦労さん、ありがとう」という親愛を込めてドリンクを手渡し、これを選手がおいしいそうに、連帯の証として飲む。オリンピックでメダルを狙う選手たちが見れば、仰天して倒れてしまうような光景はJリーグの日常である。
もし、試合後の検査で禁止薬物が選手の尿から検出された場合、サポーターの善意に疑いがかかるかもしれないことを、選手もサポーターも全く考えていないという能天気な光景だ。

「ミックスゾーン」で取材している記者が、選手に親切心のために飲み物を渡しているのを目撃することもあるし、「これ大好きな何々ですよね」と言って、お菓子を差し入れする記者も見たことがある。もし選手の尿から何かが出れば、一部の国では記者が容疑の一部として拘束されることもある。これらは、規定に禁止行為と書かれてはいない。しかし、広く「ドーピング行為」にあたるということを、今回の問題で考えてもいいと思う。」(THE STADIUMより抜粋)

 ミックスゾーンの件はまだ分かるが、それにしてもいつからJリーグで、ゴール後にサポーターよって手渡されたドリンクを選手皆で“連帯の証”として飲む光景が見られるようになったのだろうか。
 増島さんは、今回の我那覇の点滴を“ドーピング規定に違反する行為”と見なしたJリーグ寄りの立場に傾倒しているが、今回の寄稿の趣旨は、サンケイスポーツが我那覇問題の第一報道を我那覇本人が記者に対する発言で拾ったことによる、極めて偶発性の高い“報道によって取り上げられることとなった選手の認識の甘さ”を指摘することと、“アンチドーピングの原則”のはずだ。そこにこれだけ希少性の高いJリーグの場面を引き合いに出して論じるのは、あまりに危うい誤解を招きかねない。現にネット上では、「捏造記事」とも書き干されているが、筆者自身も年間100試合近い公式戦を現場観戦するにあたって、こういった場面には出くわしていないから、記事からかなりの違和感を感じる訳だ。

 “能天気な光景”とまで書いておられる増島さんだが、いくらこれほど、記事の内容を訴えるための修飾引用だからと言っても、Jリーグ文化へのリスペクトに欠ける気がしてならない。Jリーグに、サッカーに関心の無い人たちがこの記事を読んで、感じてしまうことへの影響はあまりに大きいはずだが。そういう意味では、今回の増島さんの記事の方がよっぽど“能天気”と言えるのではないだろうか。

 個人的には、今回の我那覇問題は、全クラブのチームドクターから連名でドーピング規定違反の医療行為には当たらないと質問状を出した時点で、全くリーグ側とクラブ側の共通認識ができていないことを晒すお粗末な展開だったと思うし、それに結論が出るまで静観を決め込んでいたが、さすがにこの増島さんの記事には一人のJリーグファンとして、糾弾せざるを得ない気持ちに駆られた。
 確かに規定をきっちり決めて、それを共有し、違反が無いように努めるということが健全であり、理想だ。そういう意味で、今回の我那覇は少し引いた貧乏クジの程度が過ぎてしまったようで、大変可哀想ではあるのだが、世界基準のドーピング規定すらJリーグというプロスポーツ興行の場において、これだけの混乱を招くのだから、日本はまだまだスポーツ後進国ということ。世界のメインストリームから乗り遅れているのかもしれない。

 少し度が過ぎた今回の記事、しかし注目を寄せて名前を売るという意味では抜群のオーバーアイデアではある。

PUMAの魅力は永遠に・・・

2008年05月27日 | 脚で語るサッカーギア
 
 遂にこんな味のあるモデルがPUMAから出るとは。その名も“キング XL I FG エウゼビオ 1968”ということで、かつてのポルトガル代表のエースであるエウゼビオの復刻最新モデルだ。PUMAキングの40周年記念モデルということで発売されるのだが、近年のフットギアにおけるハイテク志向に少し食傷気味であった筆者にとっては、目の覚めるようなデザインだ。

 まず、個人的には赤の配色がツボなのだが、その昔、96年か97年シーズンぐらいにブッフバルトが浦和でプレーしていた時に履いていたキングの赤を思い出させる。少しソールがadidasのアディピュアを彷彿(というよりエアレジェンドなどのNIKEシリーズのFGソールに近いか)とさせるが、アッパーからサイドにかけて“キング”の持ち味である伝統的なデザインが、最新の技術と融合して何ともいえない魅力的な雰囲気を醸し出している。23,100円というプライスも固定式としては“キング”の名に相応しい。やはりPUMAはサッカーギアマニアの期待を裏切らずここ一番でやってくれるなという印象だ。

 しかし、近頃はサッカースパイクも新商品のサイクルが速くて、もう2008年春モデルが特価(セール)品となっている。特にNIKEなどは定番の手法になっているが、配色の違うモデルを新商品として、時期を分けてラインアップしているというのが主な理由だ。昔に比べて遙かに種類が多くなったというのも言うまでもないことだが。
 ただ、熾烈な商品競争の中で、伝統的モデルをじっくり熟成しているのがPUMA。さすがにパラメヒコのゴールド(駒野モデル)には驚いたが、デルムンドシリーズなどはコンセプトをキープしながら、上手くこれまでのユーザーを裏切らない絶妙なモデルチェンジを行っている。ラインアップでも各メーカー中おそらく最も選択肢が広い。ノーマルのインジェクションソールかGCiソールか、それだけでも選択肢は広がってくる。ハイテク好きには堪らないVシリーズだって存在する(個人的にはプーマ V1.08が秀逸だと思う)。従来のユーザーから新規のユーザーまで大切に考えているNIKEやadidasとは一線を画した点が際立っていると思うのだ。

 そう考えると、最近これまでのPUMAユーザーだった選手がいきなりNIKEやadidasに鞍替えしてしまうケースが目立つような気がする。ドイツに渡った際の高原などが象徴的だった。松井大輔は現在PUMA愛用者だが、逆にNIKEからの鞍替え派だ。G大阪の安田理などは開幕戦だけこれまで通りPUMAを着用して、次の試合ではNIKEのマーキュリアルヴェイパーを履いていて驚いた(鞍替えの理由は彼のブログで明記されている)。三浦知や中山雅史のように“生涯PUMA”を貫く選手が最近の若手選手であまりいないのが気になってしまうのだ。清水や磐田といった静岡のクラブに所属する選手は割とそういった選手は見受けられるのだが、世界を見渡しても広告塔になり得る選手の存在はNIKEやadidasに比べると圧倒的に少ない。ユニフォームサプライヤーであるイタリア代表チームでもブッフォンぐらいだろうか。

 そんなこんなで、デザインの目新しさと広告塔の存在が近年のフットギアの進歩の主流となっているが、その中で実用性と伝統にこだわり続けるPUMAのスタンスがとても魅力的に映って止まない。それもNIKEとadidasが熾烈なユーザー獲得に向けたマーケティング合戦を繰り広げるからこそ際立つことであって、何もこの2大メーカーを非難することではない。人それぞれの好みがあるだろうが、やはりこういったスタンスを保ち続けるPUMAを愛する人々は世界に多く存在するであろう。そう考えているからだろうか、やはりパラメヒコや0255をいったモデルをついついフットギアコーナーでいつも手にとってしまうのである。

 今回のキングエウゼビオの発売に際して、改めてPUMAの魅力を再確認したのであった。ちなみに筆者はPUMAの回し者でも何でもないのだが。

ネクストレベルへ行け ~NIKE史上屈指の秀逸CM~

2008年05月26日 | 脚で語るサッカーギア
 
 毎回、その工夫の凝らされた内容にに驚いてしまうNIKEのCM。カントナがMCを務めた「Joga TV」シリーズから現在受け継がれているのが、「TAKE IT TO THE NEXT LEVEL」のCM。日本では“ネクストレベルへ行け。”というキャッチコピーで、すっかり到る所でお馴染みとなっているだろう。その今回のTVCMがNIKE史上屈指の面白さに富んでいる。

 錚々たる欧州のNIKE契約選手が出演しているのだが、主役はあくまで“自分”。まず視点が、自分があたかも劇中の主役になっているような感覚にさせてくれるのだ。90分バージョンでは、マイナーカテゴリーで自分がFKを決め、たまたま現場に居合わせたアーセナルのベンゲル監督に熱視線を送られるところから始まる。次の瞬間にはロッカールームでユニフォームを渡され、あれよあれよという間にプレミアデビューを果たすのだ。ピッチサイドでギャラスとハイタッチして交代出場した瞬間から、自分にはマンUの容赦ない洗礼が。ルーニーとC・ロナウドに突破を許し、ゴール後軽く挑発されピッチを拳で叩く。その後トレーニングに没頭し、次のシーンではセスクの折り返しに自分がゴールを奪い(どうやら背番号は45番らしい)、一躍ヒーローに。一流選手の仲間入りを果たし、寄り添ってくる美女を片手にサインに対応する自分。そして次はCLの舞台だろうか、インテルのマテラッツィとピッチで競り合っている。ここでもイブラヒモビッチにゴールを決められ、試合後のシャワーでは自分の歯がポロリと抜け落ちる。プレッシャーとトレーニングで吐くシーンも出てくるCMは最後のシーンで、ついにオランダVSポルトガルの国際試合(どうやらオランダ人らしい)の舞台へ。自ら得たFKをチームメイトのファンニステルローイやスナイデルの見守る中、自ら決めるという展開だ。何ともファンタジーに満ちた屈指の出来で、我々をその高いレベルの世界へ誘ってくれる。おそらく世界中の子供が、そしてサッカーファンがこのCMの虜になっているだろう。

 以前、当ブログのエントリーでも、NIKE VS adidasという構図について触れることがあったが、近年TVCMにおいてはNIKEの勝ちといった印象だ。一般の概念を覆すような一流選手のテクニックを焦点にし、あたかも我々の日常の中でそれを見せてくれるといった内容のものが多い。98年W杯時にセンセーショナルを巻き起こしたブラジル代表の“空港でサッカーに興じてしまう”あの作品がこの流れの源流になっているのだろう。そして個人的にはNIKEのCMが“フリースタイルサッカー”の火を着けたのは間違いないかなとも思う。
 あの作品では警備員を再三からかいながら、時には外に出てまで、ボールを繋いでいくセレソンの美技にウットリしてしまうのだが(途中搭乗客役でカントナがカメオ出演)、最後の最後にロナウドが搭乗口にシュートを打ち込むというところで、ポールに当ててしまい、傍観者の子供たちと共に頭を抱えてしまうロナウドの姿が実に茶目っけに溢れていた。ファンタジーの世界から一気に“現実”に引き戻されるあの一瞬が何とも心地良いではないか。個人的にはいつもそこがツボだと思っている。

 近年、映画俳優顔負けの存在感を見せる進行役のカントナ(シークレットトーナメントの作品が最初か)を中心に時には映画のような演出で魅せてくれる作品が多いが、今回の“TAKE IT TO THE NEXT LEVEL”も、我々がどこか憧れているファンタジーの世界にドップリと引き込んでくれる傍ら、言わば“努力が己を大成させる全て”というメッセージをこれ以上ない形で見せてくれている。そして“向こうの世界とこちらの世界の垣根”をNIKEのCMは取っ払ってくれる。このイメージ戦略は功を奏する以上に、CM以上の価値をそこに感じずにはいられない。“映画”つまり、ショートムービーに近いその作品の数々は宣伝を超えた効果が存在するのだ。

 マーキュリアルヴェイパーのCMで、C・ロナウドがブガッティのヴェイロン(1001馬力を誇る世界一のスーパーカー)と競争するという作品が少し前にあったばかりだが、いつでもその“遊び心”に富んだ発想を見せてくれるNIKEのCMに我々ファンは、映画の最新作を心待ちにしているのような思いを募らせる。これら全てのエッセンスを押さえているNIKEのCMはやはり秀逸とした言いようがないわけだ。

<個人的に選ぶNIKE FOOTBALL CM BEST 5>
① マテラッツィのトレーニング
おそらくイタリアを中心に放送されていた作品。サッカーボールを胸トラップするだけでなく、ボウリングの球から、アメフト選手、クラッシュレース用の4×4を次々と胸で受け止めていく。最後は、クレーンに吊るされた鉄球なのだが・・・さすがにこれは・・・

② マーキュリアルヴェイパー C・ロナウドVSヴェイロン
度肝を抜かれた発想と、スーパーカーに勝ってしまうC・ロナウドに圧巻。クルマ好きの筆者のスーパーカー概念を覆す作品。

③ ブラジル代表 “空港でのサッカー”
98年W杯時の作品で、ロマーリオやデニウソンなど懐かしいメンバーが出演。延々と続くボール回しに関わらず最後に決められないロナウドのラストシーンは秀逸。ロビーニョとロナウジーニョ、アドリアーノらが出演する控え室のCMも後に作られた。

④ システムVSフィーゴ&アンリ&中田
“退屈なサッカーをしよう”というシステムのに支配された子供たちを3人にの選手が救うNIKE史上最もSF映画に近い作品。世界で認知された中田全盛の頃。

⑤ ロナウジーニョin日本の高校生
よく放映されていただけに御存じの方もおられるだろう。これは面白かった。日本限定。って当り前か。

 ここで書ける以上に、そしてサッカー以外でも秀逸なCMはたくさんあるので、是非NIKEにはこのCM集をDVD化してもらいたいのだが・・・

チームのムード上昇中! 県1部リーグ第3節 VS MIKASA

2008年05月25日 | 脚で語る奈良クラブ

奈良県社会人1部リーグ 第3節
○奈良クラブ 6-0 MIKASA2003●
得点:矢部×2、東×2、松野智、澤畑

9:20キックオフ @奈良産業大学信貴山グラウンド

<メンバー>
GK17津山 6.5 終始安定したセーブを見せる。
DF 3上西 6.0 杉田の退場以降、攻撃を自重せざるを得ない状況も守備で貢献。
DF 5杉田 5.5 少し厳しい判定で前半に退場も、プレー自体は安定。
DF 4秋本 6.0 この日はCBに入りそつなくプレー
DF20上林 6.5 サイドのリスクコンダクターに。危なげない出来で安定をもたらす。
MF24 東 7.0 体がキレてきた。落ち着いたプレーで朱勲の2ゴール。
MF21西村 6.5 まさに黒子役で守備に貢献。DF陣の負担を減らす。
(後半途中=DF 2中川 6.0 落ち着いてプレー、集中した守備を見せる。)
MF26矢部 7.5 この日圧倒的な存在感。東と2人で中盤を完全に支配。
(後半途中=MF18染井 6.0 急遽の出番も無難な出来。)
MF13金城 7.0 持ち味を十分に発揮。サイドで攻撃を牽引する堂々としたプレーでセンス見せつける。
FW11松野智 7.0 この日の影の主役。杉田の退場後、状況に応じて3つのポジションをそつなくこなし、チームの勢いを象徴する華麗なゴールも。
FW10松野正 6.5 後半の負傷交代が心配だが、得点機にはきっちり絡んで引き出しの多さを見せてくれた。
(後半途中=FW15澤畑 7.0 運動量豊富に前線からチェイシング。1得点ときっちり仕事を残す。)

 前日から降り続いた雨が人工芝のピッチに多少の水溜りをつくり、未だ小雨の止まぬ奈良産大信貴山グラウンドで朝早くにキックオフされた第3節。前節負傷したFW嶋が間に合わず、前線に不安を残すメンバーとなったが、この日はMF矢部と東の元サガン鳥栖コンビが存分にその力を見せつけてくれた。少しスリッピーなグラウンドに戸惑いを見せた立ち上がりであったが、次第に攻撃の歯車が噛みあい、矢部の先制ゴールを皮きりに、続いて東が今季2得点目となる追加点。松野正のパスから、中央にDFを背負いながらも松野智がフワリと浮かしてDFの背後にスルーパス。これを東が叩き込んだ。
 その後も守備では、杉田が際どい判定で前半途中に退場処分を食らうも、その後にCBへと下がった松野智をはじめ、上西、上林を中心に相手の攻撃を寄せ付けない。1人少ない状況にも関わらず、中盤で矢部と東が織り成すコンビネーションとサイドから果敢に仕掛ける金城の活躍で攻め立てる。完全に中盤を軸にポゼッションでも圧倒した。

 後半開始直後に左サイドからの展開を矢部がこの日2点目となるゴールで更に勢いづいた奈良クラブは、その後も東の得点で4-0とする。相手の足が止まり出した後半中盤には松野智が中央を突破して華麗なループシュートを沈め5点目。松野正の思いがけない負傷で出番のやってきた澤畑も前線からの果敢なチェイシングを見せ、6点目を奪うなどしっかり仕事をやってのけた。ゴールには守護神津山が雨の中ながら安定したキャッチングを見せ、セットプレーから反撃を狙うMIKASAの攻撃を完封で抑え、6-0という圧勝劇でリーグ戦無傷の3連勝を果たした。

 やはり、この日は矢部次郎の活躍が光った。前節出場停止の欝憤とここ最近のメンタル面の充実を垣間見せるかのような輝きぶり。短調織り交ぜたパスと、元Jリーガーコンビ東との阿吽の呼吸で中盤を制圧した。後半途中で負傷交代した点が心配だが、精神面でもチームには欠かせない軸だけに6月の連戦もフル回転してもらいたい。東も当初課題だったコンディション不足が回復。この2人で4ゴールという素晴らしい存在感を見せつけてくれた。
 
 そして特筆すべきは左サイドで躍動したルーキー金城の堂々としたプレーぶりと松野智のユーティリティぶりだろう。金城はサイドから果敢に仕掛けるドリブル突破、スペースへの飛び出しとフィニッシュに必ず顔を出すキーマンぶり。テクニックも申し分なく、確実にこれからの連戦で必要となってくる選手の一人だ。あとは得点のみと、ここまで今日求めてしまうのは酷なほど良く動いてくれたと思う。
 松野智は改めてその器用さを見せてくれた。チームの2点目を導いた背面への浮き球パスはこの日の最大のハイライトで、杉田の退場後は一旦最終ラインに入り、時としてCBで問題なくプレーできる特徴を如何なく発揮。チームの5点目となる彼の得点は飛び出しを早まった相手GKをあざ笑うかのような華麗なループで、シュートのセンスも見せてくれた。最早この2人がチームに欠かせないプレイヤーとなっていることを感じさせてくれる収穫の多い試合でもあった。

 ただ、相手がそれほど強くなかったのも事実。いつまで経とうが、脳裏には4月に敗北を喫した奈良県選手権大会1回戦を刻みつけておくべきだ。2週間後から始まる全国クラブ選手権奈良大会、そして並行して進む県リーグと油断はしてはいけない。また、油断できるほど強くないことを肝に銘じておくべきでもある。
 松野正と矢部が軽度の肉離れの様子で、6/8のクラブ選手権初戦は慎重にならざるを得ないだろう。ただ、FW嶋も意欲満々で帰還する予定だけに、日替わりで活躍する選手が求められる。また、選手層がお世辞にも厚いとは言えないだけに、連戦の疲労をリカバリーしていくことも求められるだろう。とにかく、最も大事な時期が訪れようとしているのだ。

 雨中にも関わらず、「サッカーダイジェストを読みました」、または「HPを見ました」ということで新たに足を運んで下さった方々ありがとうございました。
 前半はメインスポンサーに付いてくださった“㈱DF3”代表取締役社長柳本さんご夫妻も観戦に訪れておられ、今後YANAGI FEILDを拠点にますますベースアップが図られる奈良クラブに改めて期待したい。

 また、来週31日には10:00よりYANAGI FEILDプレオープンセレモニーということで、奈良クラブの選手が参加予定。一般の方も早速トップレベルの人工芝でプレー可能なので是非参加してみてはいかがでしょうか。
http://futsalpoint.net/shisetsu/df3/yanagifield/
(直リンクではございません。コピーしてお使いください。)

 奈良クラブ次戦は、全国クラブ選手権奈良県大会1回戦ということで、奈良大都祁グラウンドにて13時から畝傍クラブと対戦予定。

湖人魂(ことだま)熱く燃ゆ JFL前期13節 MIOびわこ草津VS三菱水島FC

2008年05月24日 | 脚で語るJFL
 
 今日は、午前中にプレオープンを間近に控えるYANAGI FIELDへ草刈りのお手伝いに。柳本さんとあつこさんご夫妻も来られていて、なんと人工芝が一面に敷かれたところ。その光景に素晴らしい施設が完成することを改めて実感。あとはゴムチップを表面に撒けばほぼ完成。選手と共に近況を話しながら雑草で荒れ放題の周囲をしばし草刈りに励む。そう、明日は待ちに待った久々の県リーグ。6月からは、クラブ選手権も始まるためにほぼ毎週のように試合は続く。前節FC TAKADA戦で負傷したFW嶋の足の状態も順調に回復している模様で、筋断裂に近い状態だったものの、約1ヶ月のインターバルに助けられる形となった。
 そして、なんと話で聞いたところによると、元日本代表の前園聖真氏をはじめ、往年の代表選手たちが奈良クラブのTシャツを持っていて、その存在を知っていてくれているという。さすがチームの中心にして顔の矢部選手の交友関係。いつの間にか日本サッカーの中枢に営業ができている・・・
 あとはこのYANAGI FIELDの環境を存分に活かして結果を求めていくのみだ。

 さて、午後からは湖南市民グラウンドへ移動。JFL前期第13節MIOびわこ草津と三菱水島FCの試合をチェックしに。前節、首位の横河武蔵野をアウェイながら1-0とロスタイムのゴールで勝利を収め、調子が上向いてきたびわこ。現在JFLで5位という昇格1年目とは思えない健闘ぶりを見せている。対する三菱水島FCは現在16位と苦しい位置にはいるが、前節FC刈谷との対戦は3-3のドローだっただけに、何とかここ勝利を収めて下位争いから抜け出したいところだ。同じ岡山の1年生ファジアーノが好調なだけに、アウェイ2連戦を連勝してホーム笠岡に帰りたい。岡山の先輩として意地の見せどころだ。

<MIOびわこ草津メンバー>
GK1田中
DF20金、17浦島、15石澤、2桝田
MF10木島(81分=26三戸)、23若林、24田中(後半=8内林)、7壽(73分=14山本)
FW13安部、11幸山

<三菱水島FCメンバー>
GK1永冨
DF5三宅、2萩生田、3坂口、23松岡(44分=19木村)
MF10曽根(81分=27田平)、34田丸、4山下、7川口
FW9中川、18森前(63分=14松永)

 試合は先々週の試合と同じくまた雨に祟られたが、今日はピッチコンディションはまだマシだった。ハーフライン付近の水溜りは影を潜め、幾分か選手たちもプレーはしやすそうである。前半からペースを握るびわこと三菱の実力の差は明らかだった。中盤のプレーメイカー木島を中心に10分に1度は決定機を迎えるびわこの前に三菱は守備に時間を割かれる。ポゼッションを握ったびわこのキーマンはMF若林と前述の司令塔木島の2人であった。
 前半31分、中盤でボールを奪ったびわこは一気に前線へ。FW幸山の巧みなスルーに木島が左サイドに走り込み反応する。ここで三菱はDF萩生田がたまらずファウルを犯し、PKを与えてしまう。これをびわこは木島が落ち着いてゴール右隅に沈め先制した。ホームでは未だ無敗ながら、得点は少ないびわこ。そのゴールに雨にも関わらず駆けつけた392人の観衆が沸く。ここからびわこはさらに攻撃のペースを上げ、対して三菱は守備一辺倒の厳しい時間を過ごすことになる。37分に三菱が数少ないチャンスを掴むが、右サイドを突破したFW森前のシュートチャンスはびわこのDFが体を張って阻止した。

 後半の立ち上がり8分、びわこのDF桝田が中央に出した不用意なパスを三菱FW中川がかっさらい、そのままGKと1対1という局面を迎えたが、ゴールライン上でびわこDF浦島がかろうじてクリア。ツキをも手繰り寄せたびわこはその後高いライン設定で集中力溢れる守備を見せる。相手の中盤のミスを狙い、冷静にMF若林がボールを捌いていくびわこ。58分には、木島からのパスを桝田が機を見た絶妙のオーバーラップ。FW安部へのドンピシャのクロスを上げるが、その安部のシュートがバーに弾かれ追加点を奪えない。決定力だけ修正したいびわこだった。
 一方、63分に長身FW森前に代えて同じく190cmのFW松永を投入した三菱。個人的にもこの選手は見たかった。かつて広島や福岡など各クラブを転々としたチームで数少ないJリーグ経験者である。そんな松永の投入により、彼が前線でターゲットマンとなることでボールが落ち着くはずだったが、周囲の運動量がそれをカバーできなかった。
 73分、びわこMF木島が中盤からそのままドリブル突破。DFにコースを切られながらも、ワンフェイントを入れたかと思いきやゴール右隅上段に鮮やかなシュートを沈める。木島のテクニックに溢れた追加点である程度勝負は着いた。
 その後の三菱の反撃を抑えたびわこが結局2-0で勝利を収め、ホーム無敗を6試合連続とした。

 前節、首位横河に勝利したことも含め、間違いなく彼らには勢いがある。この日岡山がソニー仙台に負けたこともあり、勝ち点差は3に縮まった。次節は同じく勝ち点27(5/24時点)のHonda FC。そして鳥取、富山とびわこを追走するチームとの対戦が続く。この日運営に携わっていたのは八幡商業高校の女子サッカー部の生徒たち、びわこの下部組織の子供たちと共に声出して応援する彼女たちの光景に、MIOびわこ草津が名実ともに成長していることが窺えた。

 話は変わって、G大阪のACLノックアウトラウンド初戦の相手がシリアのアル・カルマに決まった。
 シリアか・・・
 最も遠いこところがきたもんだ・・・

タイムラグのある雑感 ~ACL第6節 VS全南~

2008年05月23日 | 脚で語るガンバ大阪
 
 少しエントリーができなかった間に、いろんなことが起こっている。ACLの最終節、ノックアウトラウンド出場チームの決定、五輪代表はトゥーロン国際大会にて連勝、そして、雨のモスクワでは欧州王者に赤い悪魔が鎮座した。どうしてもLIVEで観れなかっただけに悔やまれる欧州CL決勝だが、あれだけの激戦を繰り広げた両チームである。どちらが優勝してもおかしくなかったが、やはり今季の勢いがPK戦にも影響した。

 個人的には、21日のACL全南戦で、日頃はバックアップやサテライトで奮闘している若手選手がイキイキとプレーしていたのが印象的だった。
 平井は先週のTMでも決めていた得意のFKも狙っていた。特にスペースを有効的なドリブルでG大阪に攻撃のリズムを導いていたが、再三のチャンスにことごとくシュート逸を繰り返してしまい“ツキ”にだけは見放されていた。
 福元も中澤と最終ラインでコンビを組み、ビルドアップの起点に。守備面ではまだ課題もあったが、及第点は付けられるだろう。中国の主審ということをちゃんと分かってのことか、試合中シャツを終始出したままのふてぶてしさも見せてくれていた。
 GKはこういう時こそ正直木村が見たかったが、まもなく藤ヶ谷が戻ってくるだけに松代も定位置を譲っていられない。やはりこのポジションの難しさを改めて感じさせてくれた。
 そして、個人的にも嬉しかったのは岡本の出場だ。後半途中からの投入になったが、サテライトではコンスタントに結果を出しているだけに、この試合で使われなかったら正直西野監督の感性を疑うところであった。わずか7分間強の出場時間だったが、足元の技術を含め、試合の流れに自然と入っていけた。まだ公式戦でのトップ出場はゼロだっただけに、これを糧に常時ベンチ入りを狙いたいところだ。

 しかし、結局は主力の存在感が際立ったのも正直なところ。まだまだトップとサテライトとの実力差は大きい。この日も山崎がオーバーラップした加地にうまくボールを預け、そこからのクロスを二川が決めた。その二川が終了間際に相手にPKを献上したのも皮肉な展開ではあったが。
 全南戦の若手メンバーを6月の仁川の東北アジア4カ国クラブ大会で積極的に起用してもらいたいものだ。彼らの融合が無ければG大阪の未来は無い。今季のスロースタートを通り越した不振極まりない序盤戦がそれを物語っている。

 例の一件があって、やはり少しいつもと違う感じのゴール裏だったが、チームもサポーターも前進していかなければならない。それは未来を見据えた極めてポジティヴなものだ。共存共栄は己のクラブだけでなく他クラブとも然り。中断期間を経て、さらにチーム、サポーター共に団結した力を見せていきたいところだ。

 あと、ザスパ草津、初の連勝おめでとう。
 そう、同じJリーグでもこんなところには我々とは違う歓喜の輪が今日も広がっているのだ。

加地亮、日の丸を脱ぐ・・・

2008年05月20日 | 脚で語る日本代表
 
 先ほど、G大阪DF加地亮の日本代表引退がクラブを通して正式に発表された。

 「すでに今年3月、自分自身はケガをしている時期でしたが、日本代表召集時に代表引退を決意したことを日本代表・岡田監督に伝えています。メンタル的にもクラブと代表を両方、それぞれに強い気持ちで戦えなくなったこと、そしてその為にどちらかに支障をきたすことにならないよう、クラブに専念していきたいという結論に至りました。これからもガンバ大阪のタイトル獲得の為に、強い気持ちでサッカーをしていきたいと思います。」(G大阪HPより抜粋)

 と本人の弁。とにかくまずは2003年より刻まれた国際Aマッチ64試合出場2得点という数字を称え、日本サッカーに貢献した不屈のライトサイダーの労をねぎらいたい。日本代表として本当におつかれさま。

 加地が日本代表での地位を確固たるものにしたのは、やはりジーコ監督時代の2004年、中国は重慶で行われたアジアカップだろう。同年2月に始まったドイツW杯の1次予選、4月の東欧遠征と徐々に調子を上向けてきた日本代表にとって右のアウトサイドが定位置を獲得した加地はまさにチームのダイナモだった。3-5-2スタイルを貫いたトルシエ監督時代を除けば、堀池、柳本、名良橋に続く専門性の高い、攻撃力に溢れたサイドバックであり、その運動量は群を抜いていた印象がある。だが、ドイツW杯のピッチを踏んだ男も黄金世代の79年組(加地は早生まれで80年生まれだが)。代表歴は遅咲きと言えた。

 1999年、ナイジェリアで行われたワールドユース(当時)。世界大会準優勝という日本サッカー史上破格の快挙を成し遂げたチームの中で、まだ当時所属先のC大阪でレギュラーを勝ち取れていなかった。元来MFの彼にとってはトルシエの敷く3-5-2スタイルでは中盤は激戦区。小野、小笠原、遠藤、本山、稲本と屈強なライバルたちがひしめく中で加地が出場機会を掴めたのはわずか3試合だった(フィールドプレーヤーでは氏家英行(当時大宮)に次ぐ少ない数字で、同じく3試合出場に稲本(当時G大阪)、高田保(当時平塚)がいる)。
 そのナイジェリアワールドユースでの日の丸デビューは、99年4月8日のグループステージ第2戦アメリカ戦。リードを充分に奪った74分に小野に代わってピッチに立った。続く第3戦イングランド戦にも遠藤に代わって70分から途中出場。どちらかといえば“クローザー”の色合いが強い起用だった。やはり勝負のかかったノックアウトラウンドからは出場機会が減り、準決勝ウルグアイ戦の後半45分間だけピッチに立っている。試合は前半から日本がリードしていた。

 順風満帆な日の丸デビューではなかった加地。“黄金世代”のJでの台頭にも遅れをとっていた感は否めなかったが、その経験が2004年以降の“日本代表加地亮”の原動力になっているのは間違いないだろう。大器晩成とまではいかないが、ジーコという指揮官が彼と日の丸を引き合わせ、世界を戦うピッチへとその努力を昇華させた。それに呼応するかのように加地はピッチで躍動し続けた。
 やはり、加地が日本サッカーにおける理想的な攻撃的サイドバック像の印象を植え付けた感は否めない。彼に憧れて、右サイドバックをやろうという子供たちもたくさんいただろう。決して妥協を許さないストイックなプレー姿勢は多くサッカーファンの目に焼き付いているはずだ。

 まだサッカー選手のキャリアを終える訳ではない。寂しさはそこまでない。しかし、黄金時代の象徴ともいえる彼の勇姿が代表のピッチで見られないことを考えれば、一つの時代の切り替わりが迫ろうとしているのかなと思わせてくれる。メンタル面が理由とのことだが、岡田監督との起用法(左SBで起用されるなど)を巡って軋轢が少なからずもあるのだとは個人的にも昨今考えた時もあった。ただ、ここでは余計な詮索は最早必要ない。一人の偉大な選手が自らの判断で日の丸を脱ぐ。そのことだけを尊重して、日本の一人のサッカーファンとして感謝したい。

 日本代表、加地亮、ありがとう。

 そしてこれからG大阪への専念、誠によろしく!

ホムスタのエンターテイナー大久保 ~J1第13節 神戸VS新潟~

2008年05月19日 | 脚で語るJリーグ

 滋賀は比良から一気に西へ。堅田より新快速で三宮まで。次の目的地は今季初めてとなる神戸はホムスタだ。この日は神戸と新潟という対戦カード。順位も神戸が11位、新潟が12位となかなか調子の上がらない2チームだが、その勝ち点差はわずかに1。リーグ中断前に双方ともに差をつけておきたいところだったが、残念ながら試合は1-1と痛み分け。一進一退のスリリングな試合が楽しめた試合だったが、そんな中で両チーム何人かのプレイヤーに注目してみることにした。

 まずはこの日キレていた神戸の大久保。前節名古屋戦で古傷を痛めヒヤリとさせたが、何も問題は無い。やはりこの男にはゴールの匂いが漂っている。昨季にも増してフィジカルコンタクトの強さが目立つ印象だ。中盤まで下がってボールをもらうこともしばしばだが、攻守の切り替え時に彼は上手くサイドにボールを散らすことができるのが特徴的だ。DF2人に囲まれてもいとも簡単に抜いていくその巧さはまだ発展途上だろう。しばしばレフェリーに悪態を突く相変わらずの一面も彼のパーソナリティとして一役買っている。とにかく大久保がボールを持てばホムスタは歓声に包まれるのだ。
 開始早々の6分にに神戸の名手ボッティからのチャンスボールにヘディングで合わせるが惜しくもゴール右に逸れる。しかし彼の力強さが出たのは前半31分だった。中央で神戸MF古賀のボールをカットした新潟MFマルシオ・リシャルデスの背後から巧く体を入れそのままゴールにねじ込む。一瞬の隙を逃さない野獣のような嗅覚と体の強さを調和させた大久保らしい先制ゴールだった。これで闘莉王に次ぐ日本人得点ランキング2位に躍り出た。キャプテンマークを巻く神戸のエースは90分通してチームを鼓舞する強いゲキと、程良いエゴ剥き出しにして戦う。また彼と絶妙なコンビを形成するのが相棒のレアンドロだ。

 相手の激しいチェックに苦しみ、再三ファウルまがいの際どい判定にイライラしていたレアンドロだったが、この日も6本ととにかくシュートレンジが見えればシュートを打ちまくる。大久保と違い、完全無欠のフィニッシャータイプだけにとにかくドリブル突破も含め勝負が好きなストライカーだ。この日も松田監督の指示で大久保と巧みにポジションチェンジを繰り返す。いささかツキに見放された感はあったが、チャンスがあればスペースに必ず飛び出す男はこの日神戸ゴール裏のチャントを半ば独占していた。

 神戸は北本が久々にケガ(左脛骨骨挫傷)から復帰していたが、この日は良くも悪くも北本が神戸の守備陣を左右した。小林とコンビを組んだ北本は前半から高いラインコントロールを見せる。1対1ではほとんど負けないフィジカルの強さも光り、久々の出場を感じさせない。しかし、そんな北本のチェイシングが41分にエアポケットを生んでしまう。中盤までボールを追いこみに行った北本の穴を狙われて新潟FWアレッサンドロに抜け出された。痛恨の1ゴールを与えてしまう。彼がラインから欠けたことでマーキングのバランスが崩れた。良いプレーをしていただけに残念なシーンではあったし、彼が最終ラインに入っていればオフサイドを誘発できた可能性もあっただろう。

 そして、攻守に抜群の存在感を誇示しているのが金南一。今季神戸は本当に良いレジスタを獲得したものだ。何しろ全く焦ることのないその落ち着いたプレーは的確で、ミスが決定的に少ない。本来日本人選手が前屈みでヘディングで対処してしまうよな局面でもしっかり胸トラップして次に繋げる。危険察知能力にも優れ、攻撃でも“捌き役”に徹する金が今季の神戸の屋台骨だということは言うまでもないだろう。

 対する新潟は神戸に終始押し込まれる形になったが、攻撃はこの選手が全権を握っていた。そう、マルシオ・リシャルデスだ。彼の不在時に開幕から6戦未勝利だったが、ここにきて5戦3勝1分1敗という好調さである。その要因として彼の存在がいかに大きいかということを裏付けた。新潟は、寺川、千葉のボランチからアレッサンドロをターゲットとしてロングボールを供給していたが、少しそこでイライラする彼の姿があった。実際彼を経由すると緩急付いたパスとドリブルで新潟にリズムが出てくる。神戸左サイドの古賀、内山とのマッチアップはかなり見物であった。奪取されれば全速力で食いかかる彼の守備意識にも驚かされた。

 そしてこの日、新潟がもう少し早く投入しておきたかったのが田中亜土夢。わずか6分間の出場だったが、存分にそのテクニックとセンスを見せつけた。彼が後半途中から入っていれば新潟にも決定的なチャンスは生まれていただろう。ボールタッチの少ない田中の何か起こさせるようなプレーは遙々新潟から駆け付けた多くのサポーターを盛り上げた。

 1-1と引き分けたことで、昨季から神戸は天敵の新潟に勝てていない。おまけにこれで5試合勝ち星に見放されたことになる神戸。さすがに試合終了後には少しばかりのブーイングが聞かれたが、北本の復帰、大久保の好調とチームのムードは悪くない。それを察したチーム愛に溢れたゴール裏サポーターはしっかり拍手を送っているのがメインスタンドからもはっきり聞こえたのであった。

 今季の神戸、駒は揃っている。後は大久保の更なる爆発か。