脚
晩秋から冬にかけての寒さが顕著になってきた11月最後のこの日。その寒さを象徴するどんよりとした雲が覆う熊谷スポーツ文化公園陸上競技場でJFL昇格に向けた熱い戦いが幕を開けた。
ラグビーの地で知られるこの熊谷の地には立派なラグビー場を中心にドーム施設と陸上競技場が備わった大きな運動公園がある。ウィークデーの金曜日にも関わらず、ここで記憶に残る戦いを見届けに各地からサポーターも有志が集まっていた。
<第1試合> △ファジアーノ岡山VSニューウェーブ北九州▲ 1-1(PK5-3)
<ファジアーノ岡山>
GK1堤
DF15重光、4伊藤、16野本、18池松
MF28小野、38三原、22臼井(78分=11弦巻)、10川原
FW7朝比奈(58分=39ジェフェルソン)、9喜山
<ニューウェーブ北九州>
GK1水原
DF4ドグラス、15永野、18小野、20吉野(86分=19古賀)
MF5桑原、2タチコ、8日高、10森本(74分=27楠)
FW9藤吉(86分=11宮川)、26中島
11時よりキックオフされた初日の第1試合。開始前から両チームをサポートするサポーターグループがメインスタンドの両端に分かれて大きな声でチャントを絶えることなく発し続ける。ここ熊谷は身に染みる寒さを除いて、社会人サッカーレベルを超越した最高に熱い空間へとなっていた。
前半からお互い腹の探りあいが始まる。スロースターターだ。それもそのはず、今日から3日間毎日激戦が続くのである。ターンオーバー制を敷くことができれば話は別だが、これは社会人リーグ、連日の激戦を考えてのペース配分は重要である。だからといって全ての試合が負けられない重要な一戦。その中で緩急をつけて攻守にバランス良いサッカーを岡山は早速披露した。
どちらもオーソドックスな4-4-2を敷く中で、前半から目立ったのは岡山の左サイド池松だ。常にサイド攻撃は彼の突破から始まった。アウトサイドの10番川原との連携も良く、徐々に北九州の守備網はこの岡山の左サイドの対応にスタミナを奪われる。しかしながらドグラス、タチコという外国人選手2人を最終ラインと守備的な位置に置く北九州は岡山の決定的なチャンスを効率良く摘んでいく。特に百戦練磨のベテラン桑原(元広島、新潟)とにコンビを組むタチコの上背は空中戦で威力を発揮、随所に見せるインターセプトからチャンスも再三作った。
中国リーグを怒涛の強さで駆け抜けた岡山には焦りは無かった。前半スコアは動かなかったが、きっちりパスを繋いで中盤で確実に繋げるサッカーはポゼッション率を自然と上げる。予選ラウンドから気を吐くエース朝比奈、喜山の両フィニッシャーにどうボールを繋げるかがポイントであった。
41分、試合は動く。両チーム共にペースを上げていく最中で北九州のタチコがまさかのファウルで2枚目の警告を受け退場処分を食らってしまう。前半終了間際で、そのまま岡山がエンジン全開とはいかなかったが、中盤で攻守にいいプレーを見せていたタチコの退場は少なからずこのゲームの流れを変えた。
後半、北九州は藤吉を右アウトサイドに下げ、森本と中島を前線に張らせる布陣に変更する。岡山は案の定ペースを上げて点を取りに来た。GK水原を中心に守備陣がよく踏ん張る。この攻勢をさらに勢いづけたのは後半途中から投入された岡山のFWジェフェルソンだったというのは言うまでもない。予選ラウンドで爆発した朝比奈はこの日不発。ジェフェルソンが満を持しての投入となったが、この投入は岡山に多くの決定機をもたらす。
後半多くのCKからジェフェルソンがあわやというシーンが度々見られるも、時にバーに嫌われ、ゴールは遠い。桑原が最終ラインまで下がり、ジェフェルソンをマークするも疲れの見える北九州の守備陣は、84分にその集中力を切らしてしまう。PA前からのアーリークロスをジェフェルソンが頭で決め、待望の先制点を岡山が先取する。残りはあと5分。一人少ない北九州はこれで万事休すかと思われた。
しかし、集中力を欠いたのは岡山も同じ。大事なこの終了間際にPA内で痛恨のファウル。北九州はこれで得たPKを小野(元G大阪、横浜FC)が決め起死回生の同点劇を演じたのである。
この大会のレギュレーションでは90分で決着が付かなければ即PK戦となる。岡山の堤、北九州の水原と両GKがファインセーブを1本ずつ見せながらも結果4-3で岡山に軍配が上がった。
敗北した北九州は勝ち点1を獲得、勝利の岡山は勝ち点2。初戦から劇的な試合となったが、1人少ないチームには負けられない岡山が意地の1勝をもぎ取った。
<第2試合> △バンディオンセ神戸 VS FC Mi-Oびわこkusatsu▲ 1-1(PK5-3)
<バンディオンセ神戸>
GK21近藤
DF2烏谷、4川口、5神崎、24八柄
MF3山道、8川崎、13森岡(76分=14石田)、25下松
FW11川淵(85分=7秋田)、17松田
<FC Mi-Oびわこkusatsu>
GK1田中
DF17浦島、3木場(71分=27桝田)、15石澤、6根岸
MF10金、23若林、7壽、30大江
FW8内林(56分=24ユン)、26安部(HT=25波夛野)
初日からマッチアップすることとなった関西の両雄。前半からB神戸が飛ばした。ダイレクトプレーを随所に見せ、繋いで崩すサッカーを体現するB神戸は右サイドの山道、左サイドの森岡を起点に前半からびわこを圧倒した。このペースではびわこは一体何点取られるのかと不安になるほど差の出た中盤の展開力と鋭いプレスだったが、サッカーとは不思議なものでそれがスコアに反映されるとは限らないのだ。前半から眠っていたびわこは関西リーグMVPの神埼(元川崎)を中心とした素早いフォアチェックに苦しむ。ほとんどシュートを撃てずして前半45分を終えてしまう。B神戸はDF石澤の退場もあり、前半のうちに10人になったびわこから先取点を取っておくべきだったが、フィニッシュの精度を大きく欠いた。
後半、内林と安部の2トップを下げ、不甲斐ない前線にテコ入れを施したびわこだが、B神戸は立ち上がり53分にオフサイドギリギリで裏に抜け出した松田がそのまま勝負に持ち込み、ゴールネットを揺らす。いい時間帯でB神戸は先制点奪取に成功した。びわこもこの後、徐々にパスが繋がるようになる。おそらくB神戸の足が止まるのを今か今かと待っていたであろう。積極的に攻め立てるB神戸に比べて後半も無難なプレーに終始するびわこはリスクを回避し続けた。B神戸は高い安定したラインコントロールでびわこの攻撃の芽を摘み取るも徐々にサイドから疲れが見え始めた。下松と川崎に大きく負担がかかり始め、バイタルエリアに空いたスペースをびわこに支配されるようになっていく。金と若林、壽あたりで見せる連携はびわこの攻撃のバロメーター。正直びわこのつまらなかったサッカーは一瞬の隙を突いた1発でスコアをイーブンに戻す。若林が中盤からPA内に放り込んだアーリークロスに途中出場の波夛野がヘッドで合わせ、64分にびわこが同点に追いついた。
その後も疲れを見せ始めたB神戸を突きにかかかるびわこだが、選手交代を効果的に使うB神戸の前に地力の差は見えていた。
一瞬の隙を突かれたB神戸と何とか追いついたびわこの両雄は1戦目と同じくPK戦にその運命を委ねることになる。神はポゼッションを圧倒的に見せつけたB神戸に微笑むこととなる。1人目の金が痛恨の失敗を喫したのに対してB神戸は全員がきっちり成功。どちらが勝つかは明白だったといわんばかりの内容ながら薄氷の勝利にベンチが湧いた。
1日目の総括として、正直、岡山とB神戸のサッカーはワンランク上を走っている。しかし、これは短期集中決戦、疲労の積み重なるここからが本当の勝負どころである。今日共に勝ち点2を得た岡山とB神戸とて明日は直接対決、お互いの潰し合いである。悲しくもこの日負けたチームに限って退場者が出ている。もちろん次戦は出場停止だが、一晩で訪れる次戦に修正の時間はほとんど残されていない。気を抜いたチームが涙を流す。そう誰もが分かっていながら、サッカーの神はどちらに微笑むかは分からない。2日の日にここで笑うチームはどこになるのか、全てのチームが勝ち点を奪った今日の結果だけでは実は分からないのが本音だと言いたい。
熊谷にいながら明日の選択肢は3つ・・・
①広島で行われるG大阪の最終節
②群馬・敷島で決まるであろう京都の命運
③熊谷で2日目を引き続きウォッチ
ううむ、どれも捨て難い選択肢で今夜は眠れそうにない。
晩秋から冬にかけての寒さが顕著になってきた11月最後のこの日。その寒さを象徴するどんよりとした雲が覆う熊谷スポーツ文化公園陸上競技場でJFL昇格に向けた熱い戦いが幕を開けた。
ラグビーの地で知られるこの熊谷の地には立派なラグビー場を中心にドーム施設と陸上競技場が備わった大きな運動公園がある。ウィークデーの金曜日にも関わらず、ここで記憶に残る戦いを見届けに各地からサポーターも有志が集まっていた。
<第1試合> △ファジアーノ岡山VSニューウェーブ北九州▲ 1-1(PK5-3)
<ファジアーノ岡山>
GK1堤
DF15重光、4伊藤、16野本、18池松
MF28小野、38三原、22臼井(78分=11弦巻)、10川原
FW7朝比奈(58分=39ジェフェルソン)、9喜山
<ニューウェーブ北九州>
GK1水原
DF4ドグラス、15永野、18小野、20吉野(86分=19古賀)
MF5桑原、2タチコ、8日高、10森本(74分=27楠)
FW9藤吉(86分=11宮川)、26中島
11時よりキックオフされた初日の第1試合。開始前から両チームをサポートするサポーターグループがメインスタンドの両端に分かれて大きな声でチャントを絶えることなく発し続ける。ここ熊谷は身に染みる寒さを除いて、社会人サッカーレベルを超越した最高に熱い空間へとなっていた。
前半からお互い腹の探りあいが始まる。スロースターターだ。それもそのはず、今日から3日間毎日激戦が続くのである。ターンオーバー制を敷くことができれば話は別だが、これは社会人リーグ、連日の激戦を考えてのペース配分は重要である。だからといって全ての試合が負けられない重要な一戦。その中で緩急をつけて攻守にバランス良いサッカーを岡山は早速披露した。
どちらもオーソドックスな4-4-2を敷く中で、前半から目立ったのは岡山の左サイド池松だ。常にサイド攻撃は彼の突破から始まった。アウトサイドの10番川原との連携も良く、徐々に北九州の守備網はこの岡山の左サイドの対応にスタミナを奪われる。しかしながらドグラス、タチコという外国人選手2人を最終ラインと守備的な位置に置く北九州は岡山の決定的なチャンスを効率良く摘んでいく。特に百戦練磨のベテラン桑原(元広島、新潟)とにコンビを組むタチコの上背は空中戦で威力を発揮、随所に見せるインターセプトからチャンスも再三作った。
中国リーグを怒涛の強さで駆け抜けた岡山には焦りは無かった。前半スコアは動かなかったが、きっちりパスを繋いで中盤で確実に繋げるサッカーはポゼッション率を自然と上げる。予選ラウンドから気を吐くエース朝比奈、喜山の両フィニッシャーにどうボールを繋げるかがポイントであった。
41分、試合は動く。両チーム共にペースを上げていく最中で北九州のタチコがまさかのファウルで2枚目の警告を受け退場処分を食らってしまう。前半終了間際で、そのまま岡山がエンジン全開とはいかなかったが、中盤で攻守にいいプレーを見せていたタチコの退場は少なからずこのゲームの流れを変えた。
後半、北九州は藤吉を右アウトサイドに下げ、森本と中島を前線に張らせる布陣に変更する。岡山は案の定ペースを上げて点を取りに来た。GK水原を中心に守備陣がよく踏ん張る。この攻勢をさらに勢いづけたのは後半途中から投入された岡山のFWジェフェルソンだったというのは言うまでもない。予選ラウンドで爆発した朝比奈はこの日不発。ジェフェルソンが満を持しての投入となったが、この投入は岡山に多くの決定機をもたらす。
後半多くのCKからジェフェルソンがあわやというシーンが度々見られるも、時にバーに嫌われ、ゴールは遠い。桑原が最終ラインまで下がり、ジェフェルソンをマークするも疲れの見える北九州の守備陣は、84分にその集中力を切らしてしまう。PA前からのアーリークロスをジェフェルソンが頭で決め、待望の先制点を岡山が先取する。残りはあと5分。一人少ない北九州はこれで万事休すかと思われた。
しかし、集中力を欠いたのは岡山も同じ。大事なこの終了間際にPA内で痛恨のファウル。北九州はこれで得たPKを小野(元G大阪、横浜FC)が決め起死回生の同点劇を演じたのである。
この大会のレギュレーションでは90分で決着が付かなければ即PK戦となる。岡山の堤、北九州の水原と両GKがファインセーブを1本ずつ見せながらも結果4-3で岡山に軍配が上がった。
敗北した北九州は勝ち点1を獲得、勝利の岡山は勝ち点2。初戦から劇的な試合となったが、1人少ないチームには負けられない岡山が意地の1勝をもぎ取った。
<第2試合> △バンディオンセ神戸 VS FC Mi-Oびわこkusatsu▲ 1-1(PK5-3)
<バンディオンセ神戸>
GK21近藤
DF2烏谷、4川口、5神崎、24八柄
MF3山道、8川崎、13森岡(76分=14石田)、25下松
FW11川淵(85分=7秋田)、17松田
<FC Mi-Oびわこkusatsu>
GK1田中
DF17浦島、3木場(71分=27桝田)、15石澤、6根岸
MF10金、23若林、7壽、30大江
FW8内林(56分=24ユン)、26安部(HT=25波夛野)
初日からマッチアップすることとなった関西の両雄。前半からB神戸が飛ばした。ダイレクトプレーを随所に見せ、繋いで崩すサッカーを体現するB神戸は右サイドの山道、左サイドの森岡を起点に前半からびわこを圧倒した。このペースではびわこは一体何点取られるのかと不安になるほど差の出た中盤の展開力と鋭いプレスだったが、サッカーとは不思議なものでそれがスコアに反映されるとは限らないのだ。前半から眠っていたびわこは関西リーグMVPの神埼(元川崎)を中心とした素早いフォアチェックに苦しむ。ほとんどシュートを撃てずして前半45分を終えてしまう。B神戸はDF石澤の退場もあり、前半のうちに10人になったびわこから先取点を取っておくべきだったが、フィニッシュの精度を大きく欠いた。
後半、内林と安部の2トップを下げ、不甲斐ない前線にテコ入れを施したびわこだが、B神戸は立ち上がり53分にオフサイドギリギリで裏に抜け出した松田がそのまま勝負に持ち込み、ゴールネットを揺らす。いい時間帯でB神戸は先制点奪取に成功した。びわこもこの後、徐々にパスが繋がるようになる。おそらくB神戸の足が止まるのを今か今かと待っていたであろう。積極的に攻め立てるB神戸に比べて後半も無難なプレーに終始するびわこはリスクを回避し続けた。B神戸は高い安定したラインコントロールでびわこの攻撃の芽を摘み取るも徐々にサイドから疲れが見え始めた。下松と川崎に大きく負担がかかり始め、バイタルエリアに空いたスペースをびわこに支配されるようになっていく。金と若林、壽あたりで見せる連携はびわこの攻撃のバロメーター。正直びわこのつまらなかったサッカーは一瞬の隙を突いた1発でスコアをイーブンに戻す。若林が中盤からPA内に放り込んだアーリークロスに途中出場の波夛野がヘッドで合わせ、64分にびわこが同点に追いついた。
その後も疲れを見せ始めたB神戸を突きにかかかるびわこだが、選手交代を効果的に使うB神戸の前に地力の差は見えていた。
一瞬の隙を突かれたB神戸と何とか追いついたびわこの両雄は1戦目と同じくPK戦にその運命を委ねることになる。神はポゼッションを圧倒的に見せつけたB神戸に微笑むこととなる。1人目の金が痛恨の失敗を喫したのに対してB神戸は全員がきっちり成功。どちらが勝つかは明白だったといわんばかりの内容ながら薄氷の勝利にベンチが湧いた。
1日目の総括として、正直、岡山とB神戸のサッカーはワンランク上を走っている。しかし、これは短期集中決戦、疲労の積み重なるここからが本当の勝負どころである。今日共に勝ち点2を得た岡山とB神戸とて明日は直接対決、お互いの潰し合いである。悲しくもこの日負けたチームに限って退場者が出ている。もちろん次戦は出場停止だが、一晩で訪れる次戦に修正の時間はほとんど残されていない。気を抜いたチームが涙を流す。そう誰もが分かっていながら、サッカーの神はどちらに微笑むかは分からない。2日の日にここで笑うチームはどこになるのか、全てのチームが勝ち点を奪った今日の結果だけでは実は分からないのが本音だと言いたい。
熊谷にいながら明日の選択肢は3つ・・・
①広島で行われるG大阪の最終節
②群馬・敷島で決まるであろう京都の命運
③熊谷で2日目を引き続きウォッチ
ううむ、どれも捨て難い選択肢で今夜は眠れそうにない。