脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

戦いの始まりを翌週に控えて

2008年11月30日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグ昇格を懸けた府県リーグ決勝大会の初戦を1週間後に控え、橿原公苑陸上競技場で関西リーグDiv1のFC京都BAMB1993を迎え、本番前最後の練習試合を行った。

 

 結果は2-2で終えた。開始3分に石田がミドルシュートを決めると、82分にはCKからのボールを秋本が押し込んだ。2つも上のカテゴリー相手に内容のある試合ができた。特に攻撃面は、連携が噛み合った際の形はある程度見えた。

 あとは守備陣の連携面か。格上との勝負ながら、終了間際にやられてしまった。その失点さえ無ければしっかりクロージングできた試合。総合的に見れば調子は上向きと言うべきだろう。

 

 府県決勝大会の初戦は7日(日)ビッグレイクで行われる。相手はSFC TOP。現段階で何も情報は無いが、今季圧倒的な力を誇示した滋賀FCを輩出した滋賀県勢の実力は侮れない。初戦から注意が必要だろう。

 遠く離れた石垣島では、激闘の末、FC町田ゼルビアとV・ファーレン長崎がJFL昇格を確定させた。遅れること1週間、関西では彼らが戦ってきた地域リーグの舞台、関西リーグに昇格を果たすべく、奈良クラブの熱い熱い1ヶ月が始まろうとしている。

 
 奈良クラブ、初年度の集大成を見せるときが来た


第43回関西府県リーグ決勝大会
Dグループ
グループリーグ第1戦

12月7日(日)

奈良クラブ VS SFC TOP (滋賀県)

14:00キックオフ @野洲川歴史公園サッカー場ビッグレイクCコート


ホーム万博では負けられない ~33節 VS浦和~

2008年11月29日 | 脚で語るガンバ大阪
 ホーム万博での今季最終戦、33節の浦和戦はG大阪が1-0で辛勝。ACLも含めた今季、浦和との対戦成績において、結局一度も黒星を喫することがなかった。

 

 現状の順位こそ満足いかない順位だ。どうあがいても、このリーグの残り試合は“消化試合”とも言ってのけることができる。しかし、負けるわけにはいかなかった。浦和はわずかであったが優勝の可能性を残していた。エンゲルス監督の解任が発表されるなど、不協和音が聞こえる中で、彼らも尻に火が付いた状態。今季どれだけ相性が良いといってもこの戦いに余裕を感じることはあり得ない。

 前半から両チーム探り合いの時間帯が続く。開始7分、遠藤の左サイドからのパスを佐々木が合わせてシュート。高い位置でプレーする闘莉王を中心に浦和のDFラインは堅く、なかなかエリア内で良い形が作れない。遠藤の展開力と、佐々木のスペースを上手く使ったスピードある攻撃に期待を懸ける展開となった。
 浦和の球際の強さは凄まじい。細貝を中心に中盤でのボールの奪い合いは熾烈を極めた。高くラインを設定するG大阪は、相手にボールを奪われた際、右サイドのエスクデロ、左サイドの田中のドリブルに苦しめられる。エリア付近まで切り込まれる局面が多々あったが、守備陣は集中してコースを切り続けた。

 21分、素早いカウンターから、佐々木がドリブル。右サイドをオーバーラップした加地にボールを渡すと、右足で放った精巧なクロスはルーカスの頭を捉えた。強烈なへディングシュートだったが、惜しくもポストを直撃。その跳ね返りを遠藤がダイレクトシュートで狙うものの、これもポストに当たるという決定逸。22分にはルーカスが左サイドから、39分には安田理が左から切れ込んでミドルシュートを放っていくなど、G大阪に流れは傾きつつあった。
 しかし、29分にはポンテの左CKから闘莉王のヘッドがゴールを強襲。バウンドが強くバーに当たり、何とか凌ぐ。36分にはエスクデロのシュートがわずかに左に外れるなど、一瞬の決定機が試合の明暗を分けることは必至の試合だった。

 

 ターニングポイントは65分だったろう。前半終了間際に、山崎が不用意なハンドで2枚目の警告を食らい退場処分になってから、10人で防戦を強いられるG大阪。シュート数11対4と圧倒的にリードしながらも得点を奪えなかった前半のツケがのしかかっていた。ここで浦和もエジミウソンを不用意なファウルで退場処分に。この効果は大きく、前線の起点となるポスト役を失ったことで、G大阪の守備への負担は減った。
 84分に中盤で鈴木のボールをルーカスが奪うと、遠藤が右サイドの加地に展開。そのまま走り込んだ遠藤へ加地がクロスを合わせると、滅多に見せないヘディングシュートで遠藤がゴールを奪った。結局これが決勝点となったG大阪が、力強く勝利を手繰り寄せ、今季の万博ラストゲームを締め括った。

 決勝点を奪った遠藤の働きは申し分ないが、とにかくこの日光ったのは加地のクロス。そのほとんどが決定機に直結する素晴らしい精度だった。シビアな試合展開の中で、互いのストロングポイントがせめぎ合ったが、わずかな差でG大阪が相手の隙を突いた。

 だが、まだ満足するべきではない。リーグの順位を考えると、こういう試合をリーグ中盤戦にできなかったのは悔やまれる。今は、今季も激戦を繰り広げた宿敵に対して、少しでも世界への挑戦に向けた決意表明ができたかなという程度である。まだまだシーズンは終わらない。これからが正念場だ。

 
 まだまだ世界への挑戦、天皇杯奪取へ向け、これからが本番だ

決して寂寥ではない

2008年11月28日 | 脚で語るガンバ大阪
 とうとう今季もホーム万博での最終戦を迎える時期になった。28日号のエルゴラッソでは“寂寥のナショナルダービー”と称されていたが、そんなことはない。
 精一杯戦った今季、ホーム最終戦をここ数年最もライバル関係にある浦和と戦うことは誇り高いことだ。少なくとも僕はそう思う。

 思えばここ数年、浦和戦はG大阪にとって、シーズンのハイライトだった。今季は5月に埼スタで初勝利を挙げてから、ACLでも負けなかった。06年の優勝決定戦ともいえるJ1最終節、そのシーズンの天皇杯決勝、勝たなければならぬ時に浦和の壁は容赦なく立ちはだかっていた。その浦和相手に少しリードしたかなという直近の対戦成績ではあるが、まだ彼らを上回れないポイントがある。

 それは12月に開幕するクラブワールドカップ。昨年浦和は、ACLで優勝を争ったセパハンに勝利し、ACミランにチャレンジする切符を掴んだ。横浜国際総合競技場に67,005人の観衆を飲み込んだその試合は、結果的に1-0でACミランが勝利。スコア以上に内容においてミランが圧倒した試合だったが、これまでの欧州王者と違って、かなり早く日本入りして、この大会に本気で臨んだミランに対する浦和の善戦にはかなりシビれたのを覚えている。アジアの代表として、日本の代表として、実に相応しい試合を見せてくれた浦和が羨ましくてたまらなかったものだ。

 今季は、そのクラブワールドカップにG大阪が挑戦するわけだ。初戦の準々決勝(14日@豊田)では、アデレードと再び戦うことになりそうだが、それに勝てばマンチェスター・Uへの挑戦権を得ることができる。恐るべき相手だ。日頃、欧州サッカーを常にチェックしている自分にとっても、未だにイメージしにくい夢の対戦カードである。どれだけG大阪が戦えるか。今から非常に楽しみだが、そういう意味では、昨年浦和がミランに善戦した内容に同等、もしくはそれ以上のものを見せられるかどうかを意識したい。選手たちにとっても千載一遇のチャンスだけに、気合いが入らないわけがない。

 つまり、クラブワールドカップで昨年の浦和にいかに迫れるか。アジアの代表として、日本の代表として、恥じぬ戦いをするためにも、明日の浦和戦は、G大阪の決意表明を戦いで示す良い機会だ。この構図が存在する限り、今季の33節にこの対戦カードである意味合いは、G大阪にとって大きい。

 確かに順位争いや優勝のスペクタクルからすれば、寂寥かもしれないが、決して消化試合ではない。いつでも浦和との対戦は楽しみだし、G大阪の強さを見せてからクラブワールドカップに臨みたい。

見せた、天皇杯への執念 ~天皇杯5回戦 VS磐田~

2008年11月27日 | 脚で語るガンバ大阪
 ディフェンディングチャンピオンとして来季のACL出場を懸けた天皇杯の5回戦。磐田を3-1で下し、難なくベスト8進出を果たしたG大阪。正念場の勝負所できっちり次に繋げられる戦いができた。

 

 磐田がJ1残留争いを考慮し、サブメンバー主体の布陣で臨んできたのに対し、AFCアワード出席の遠藤、怪我で戦列を離れている二川以外、ベストメンバーで臨んだG大阪。しかし、今季限りでの引退を表明している名波が開始1分、中盤のパスワークから鮮やかに右サイドの山本にふわりと浮かせたパスを送ると、その山本が放り込んだクロスにファーサイドへ走り込んだ西が合わせ、開始早々先制点を決められる。安田理が中盤のチェックに行ったところを、倉田のカバーリングが遅れたが、そこを名波に突かれた。

 
 開始1分も経たぬうちに西に先制点を献上する

 立ち上がりからハイペースでボールを動かしてくる磐田に対し、G大阪はリズムを掴めず、なかなかシュートまで持ち込めない。ここで個人技で局面を打開したのは佐々木だった。
 15分に、藤ヶ谷のフィードを受けると、そのままドリブルで左サイドを疾走。相手エリア手前で一度中に切れ込むと、そのまま鮮やかなロングシュート。弧を描いたボールはGK松井の頭上を越えながら、ゆっくり落ちてゴールに吸い込まれた。同点にしたところで徐々にG大阪にペースが生まれ始める。前半こそ磐田の素早いプレスに苦しんだが、G大阪に生み出された本来のリズムは、磐田の運動量を削いでいくには十分だった。

 
 川崎戦では無念の交代を強いられた藤ヶ谷もこの日は1失点に抑えた

 
 惜しまれつつ今季限りで引退する名波 そのパス精度はまだまだ高い

 後半に入ると、集中力に差が出始める。54分に相手のパスミスを高い位置で奪ったルーカスから、中央の播戸、右サイドの佐々木と繋ぎ、最後は加地がミドルシュート。これを磐田DFが体に当ててクリアすると、これで得たCKから、一度は中央でクリアされるも佐々木が再度中央へクロス。これに山口が合わせて逆転に成功した。

 
 川崎戦での4失点から3日・・・ 中澤を中心に守備陣は集中

 
 先制点を決めた西も66分に萬代と交代

 73分には、磐田MF成岡がエリア手前中央から中山に絶妙なパスを通し、これをフリーで受けた中山にあわや同点ゴールかというシュートを打たれたが、ボールはポストに当たって急死に一生を得る。ツキすら味方にしたG大阪は、試合を決定づける3点目を後半途中から入った山崎が74分に決める。これも中盤でボールを拾った佐々木の浮かせたフィードに、相手DFラインの裏に飛び出した山崎が合わせたもの。4回戦の甲府戦に続き、佐々木の獅子奮迅の活躍は、G大阪のベスト8進出における大きなポイントになった。

 
 闘志では誰にも負けぬ フル出場こそ叶わぬも中山は持ち味出す

 
 ゴールこそないが、高い位置でルーカスの存在は効いていた

 
 低調なFWと対照的に天皇杯では2試合連続ゴールの山口

 リーグでは低調なものの、天皇杯できっちり結果を残すところにG大阪の執念は見えた。準々決勝は1ヶ月後に名古屋と対戦。その前に残りのリーグ、そして“世界への挑戦”クラブワールドカップの戦いで、更なる成長と刺激を得て、天皇杯優勝への良いフィードバックにできれば、結果オーライだ。まだまだG大阪のシーズンは終わらない。

重要な天皇杯5回戦を迎える

2008年11月26日 | 脚で語るガンバ大阪
 2008年のAFC年間アワードにて、AFC年間最優秀チームにG大阪、そしてAFC年間最優秀監督に西野朗監督が選出された。AFC年間最優秀プレイヤーの期待が懸かった遠藤は残念ながら優秀選手に選出されるに留まったが、その他にもAFCダイヤモンド・オブ・アジア賞に長沼健(故人)、AFC年間最優秀フェアプレー協会に日本サッカー協会が、AFC年間最優秀代表チームに日本代表が選ばれるなど、アジア王座に輝いたG大阪を中心に、日本の受賞が光る今年のアワードとなった様子だ。

 さて、喜んでいる場合でもない。いや、気持ちの切り替えは急務だ。つい先日、今季リーグ3位以内の望みを繋ぐべき川崎戦で0-4の大敗を喫したG大阪。日付の変わった今日26日に磐田と天皇杯5回戦を戦う。
 リーグ3位以内の可能性が無くなったG大阪にとって、来季のACL出場権を得るためにも天皇杯は制しておきたい。それは現在、確固たるコンセンサスとして、アジア王座戴冠後の低調なG大阪を奮い立たせるモチベーションになっているはずだ。

 しかしながら、“燃え尽き症候群”とでも形容すべきか。ACLを終えてからのG大阪はすっかり腰砕け状態。司令塔の遠藤は、日本代表との兼ね合いで多忙を極め、カタール戦では負傷するなどコンディションも良くない。未だゴールの遠い播戸は川崎戦の後でも罵声の対象になったようで、挙げ句の果てには、守護神藤ヶ谷が試合途中に下げられるなど、まるで今季のリーグ戦中盤に勝てなかった時期を彷彿とさせるカオスが見られる。この状態で天皇杯制覇に向けて、気持ちを建て直すのは容易ではない。ディフェンディングチャンピオンとして、来季もアジア、世界に挑戦するならば、この磐田戦はまず負けられない。重要な一戦になるのは百も承知だ。

 対峙する磐田は、オフト監督がJ1残留に黄信号の灯るチーム事情を考慮して、先発メンバーの大幅な入れ替えを示唆している。千葉と大分が例のベストメンバー問題で犬飼会長の逆鱗に触れたのは記憶に新しいところ。早速犬飼会長からは、「丸投げ社長」発言なる不快感が飛び出しているが、今後の進展が注目されそうだ。

 論争巻き起こるベストメンバー問題。磐田の柳下コーチは、G大阪戦の先発メンバーに関して、「相当気合が入っている。(主力と)紅白戦をやれば、間違いなくこっち(天皇杯メンバー)が勝つ」とコメントしている。この考え方は正しいと思うのだが。チームがベストだと考えた布陣、厳しい日程の合間で、勝つべき試合のプライオリティを付けるのはクラブの判断。もちろん、限られた選手層のやりくりの中で、何もチームは最初から負けることは考えていないはずだ。

 アジアチャンピオンとしての意地とプライド、ベストメンバー問題で揺れ動く双方の戦い。これほどの意味合いを持つ天皇杯5回戦になろうとは。良い形でリーグの残り試合とクラブワールドカップに繋げるためにも、きっちり勝っておきたいものだ。

鳥取戦記 ~地域リーグ決勝大会1次ラウンド後記~

2008年11月25日 | 脚で語る地域リーグ
 おそらくこれほど濃密に勝敗のコントラストが描かれる3日間はない。何しろその1試合1試合に背負うべきものが大きすぎる。激戦の向こうにはJリーグ昇格のために避けては通れないJFLの舞台。厳しい審査をクリアしなければいけないが、シーズンを通しての戦績が問われるJリーグへの道と違って、短期決戦でJFL昇格か否かの決着をつける全国地域リーグ決勝大会は、予想を覆す展開をもたらしてくれる。Jリーグ入りを標榜する地域クラブの1年間の軌跡は、ほんの一瞬で木っ端みじんに砕け散ることがあるのだ。今季もまた、この大会は、容赦なくサッカーの残酷な一面を実感させてくれた。

 

 4会場、3日間に及ぶ1次ラウンドの戦いの結果、28日から石垣島で行われる決勝ラウンド進出チームは次の通り。

・ホンダロック
・V・ファーレン長崎
・レノファ山口
・FC町田ゼルビア

 昨季、決勝ラウンドを熊谷に観戦しに行った際には、バンディオンセ神戸(現:加古川)だけが涙を呑んだ。これまで関西リーグの戦績で一度も上を譲ったことのないMi-O びわこKusatsu(現:MIOびわこ草津)に先を越されたのだ。昨季この大会でJFL昇格を掴んだ1チームの岡山などは、既にJリーグ入りの切符すら掴もうとしている。未だ地域リーグに取り残された彼らとの差は歴然だ。

 今回は、1次ラウンドの観戦をチョイスした。決勝ラウンドでJFL昇格が決まるのは、今季のJFLから何チームがJリーグ昇格を果たすかによる。昨季と同じく今季も3チームの昇格が濃厚とされる中、個人的には、4チーム(×4グループ)中1位のみが決勝ラウンドへの進出を許されるという1次ラウンドのレギュレーションは、決勝ラウンド以上の熾烈さを有していると考えたからだ。年々、将来のJリーグ入りを目指すクラブが増える中で、このせめぎ合いは実にスリルに満ち溢れている。

 今大会、鳥取で行われた1次ラウンドには、本命のFC町田ゼルビア(Dグループ)、そしてNECトーキンの出場辞退によってチャンスを掴んだ松本山雅FCがいた。町田こそ同居する他チームに比べて、実力的に優位であったが、松本山雅は、この大会の常連である東海リーグ1位の静岡FC、東北リーグ1位のグルージャ盛岡、中国リーグ1位のレノファ山口といった強豪と相まみえることになった。では、今回の鳥取での3日間で個人的に思うポイントを備忘録として列挙しておく。

・レノファ山口の強烈なインパクト

 

 今回の組み合わせでも全くのノーマークであったレノファ山口のサッカーは、観客を震撼させるものがあった。人もボールも良く動き、攻守において非常にチームワークがとれていた。圧倒的な得点力やポゼッション力こそないものの、試合を先行されても決して焦らない落ち着きすら有していた。右サイドのMF福原が積極的に攻撃に絡み、共に1得点ずつマークした中央の戸高、大野というMF2人がハードワークを厭わず攻守のキーマンとなる。守備から攻撃への切り替え時に多用されるダイレクトプレーには舌を巻いた。
 また、後半途中から決まって投入されるジョーカー兒玉が、小柄ながらテクニックとスピードに溢れており、運動量の落ちた相手に対して効果的だった。
 それほどハイキャリアな選手も有しておらず、ここまで質の高いサッカーができるのはなぜか。強烈なインパクトを残した彼らの決勝ラウンドでの戦いぶりは注目だ。

・質の高い企業チーム矢崎バレンテ

 

 町田とDグループに同居した東海リーグ2位の矢崎バレンテ。昨季の全社において準優勝を果たしたことでその名を轟かせたが、東海リーグでは、本命である静岡FCの陰に隠れがちであった。しかし、今大会で見る限り、サッカーどころ静岡の名に恥じない高品質なチームだった。
 1次ラウンド3試合で6得点を挙げたFW井口がチームの核。ドリブルで積極的に仕掛け、ミドルレンジからのシュート精度とその威力も備えたストライカーは、町田も含めた他チームの脅威になった。3-5-2のトップ下で攻撃のタクトを振るったMF渡邉に加え、途中から出てきて相手守備陣を掻き回すMF荻田の存在が光った。3バックの軸である大森、松尾といったDF陣も身体能力が高く、町田との最終戦はPK戦までもつれ込んだが、個人的には納得の結果だった。

・意外に苦戦した町田

 

 矢崎とのPK戦を制し、石垣島での決勝ラウンド進出を決めた関東リーグ1位のFC町田ゼルビアだったが、今季の公式戦ではわずか2敗しかしておらず、先行イメージから個人的にはもっとできると思っていた。
 初戦こそ、佐川急便中国相手に7得点という猛攻を見せたが、続くノルブリッツ北海道戦は相手の堅い守備に前半ほとんどチャンスを作れず。MF酒井の技ありロングシュートで何とか1-0と辛勝したが、高いボールポゼッションの反面、攻撃の手数に物足りなさを感じた。最終戦の矢崎戦は、相手に先行される苦しい展開で、88分に何とか同点に追い付いた。勝負強さは持ち合わせているが、これが決勝ラウンドになるとどうか。もしかしたら町田は苦戦を強いられるのではとも思ってしまう。
 しかし、かつてV川崎、京都、G大阪、草津などで活躍したMF山口のプレーを久々に見られたのは良かった。矢崎戦の同点弾を呼び込んだ左サイドからのクロスは見事。その他、コーチ兼任のFW竹中やJリーグ経験選手としてチームを引っ張った主将酒井などは、昨季の熊谷で、スタンドから悔しそうに決勝ラウンドの戦いぶりを観ていたことを記憶している。それもあってか、今回、彼らがリベンジを果たした喜びはスタンドにもひしひしと伝わってきた。
 これらベテランと若手の融合するチームをまとめた戸塚監督には“JFL昇格請負人”として、町田をJFLまで引っ張っていってもらわなければならない。PK戦を制した直後のチームとサポーターの涙が本当に印象的だった。

・松本山雅FC、半歩前進

 

 

 やはり、今回の1次ラウンド最大のハイライトは、松本山雅の敗退だろう。連日、とりぎんバードスタジアムをホームさながらの雰囲気にした大勢のサポーター。メインスタンドまで完全に松本山雅カラーだった。
 北信越リーグの今季の戦績を見ても明らかなように、松本山雅の問題は得点力だった。軸になるFWは柿本しかおらず、毎試合コンビが変わった。Jでの経験も豊富な柿本は相手チームの徹底マークに遭い、得点機を思うようにものにできなかった。ここに松本山雅が勝ちきれなかった要因があるように思える。
 しかし、連日の劇的な勝利にサポーターとチームは勢いづいていた。本職のCBからボランチに上がって起用された三本菅が2日連続で決勝ゴールを挙げるなど、このままの勢いで決勝ラウンド進出を決めてしまうかとも思えた。
 ところが最終戦でもたらされた残酷な結末。試合後、帰路をご一緒させて頂いたサポーターの方からは「昨季から半歩前進した」とポジティブな声を聞いたが、それでも悔しい敗戦だった。AグループでライバルのACパルセイロ長野が敗退したのがせめてもの救いか。とにかく北信越リーグの活況ぶりとレベルの高さは、この大会の勝負には直結しないということだ。不条理ながら、彼らの敗戦は最大のドラマで、サッカーが秘める不確定要素の怖さを再確認させてくれた。

Road To JFL ~地域リーグ決勝大会 鳥取最終日~

2008年11月24日 | 脚で語る地域リーグ
 劇的な結末が訪れた。激戦の末に勝者は共にPK戦によって決められた。サッカーの残酷さを実感した鳥取の熱い3日目、雨の中行われた1次ラウンド最終日をCグループ、Dグループ共に写真中心にお届け。

第32回全国地域リーグ決勝大会1次ラウンド
Cグループ3日目
第1試合11:00キックオフ
@とりぎんバードスタジアム

△レノファ山口(3勝) 1-1(PK5-3) 松本山雅FC(2勝1敗)▲
得点
44分 柏原(山口)
49分 阿部(松本山雅)

 
 
<レノファ山口メンバー>
GK1澤野
DF18多久島、4吉田、13藤井、19佐久間
MF26福原、14大野、39戸高、11高杉(71分=42光田)
FW8柏原(56分=29兒玉)、9安田(84分=10石上)

 

<松本山雅FCメンバー>
GK30原
DF5斎藤、28矢畑、22坂本、19阿部
MF6今井(63分=15高沢)、13三本菅、7川田、8小澤(71分=14竹内)
FW25大西、10柿本

この試合に勝利した方が石垣島での決勝ラウンド進出を決める。
 
 
 前半から高い位置でプレスをかける松本山雅が優勢に試合を進める

 
 負けたくない、負けられない ぶつかり合う両者のプライド

 
 集中した守備を見せた松本山雅のCBコンビ 矢畑と坂本

 
 1点を先制された松本山雅だったが、49分に阿部が同点ゴール

 
 追加点を奪って試合を決めたい両チーム 中盤の攻防

 
 松本山雅が成長著しいMF小澤が先発で奮闘

 
 厳しいマークに遭い続けるFW柿本 チームを救う1発が欲しい

 
 レノファ山口も粘り強い守備で勝利への執念を見せる

 
 緊張感溢れる試合も90分を戦い終え・・・

 
 すべてを懸けたPK戦へ突入 松本山雅、今季最大のヤマ場!

 
 今大会最大のサプライズをもたらしたレノファ山口 勝利は目前!

 
 松本山雅の4人目、阿部がまさかのキックミス

 
 山口は5人全員がきっちり決めて勝利! 決勝ラウンドへ!

 
 ダークホース、レノファ山口 予想外の快進撃

 
 3日間声援を送り続けたサポーターと共に石垣島へ!

 
 華やかな勝者の陰に敗者あり 本命松本山雅まさかの敗退

 
 光と闇を一気に味わった阿部 この涙が今後の糧になるはず!

第32回全国地域リーグ決勝大会1次ラウンド
Dグループ3日目
第2試合13:15キックオフ
@コカコーラウエストスポーツパーク

△FC町田ゼルビア(3勝) 1-1(PK5-4) 矢崎バレンテ(2勝1敗)▲
得点
53分 井口(矢崎)
88分 蒲原(町田)

<FC町田ゼルビアメンバー>
GK41渡辺
DF19森川(78分=4雑賀)、14中川、27山崎、2津田
MF11酒井(76分=10山口)、15柳崎、8石堂、16蒲原
FW26勝又、31山腰

<矢崎バレンテメンバー>
GK21宮城
DF3大森、4松尾、6杉本
MF26木戸(75分=5中村)、25秋本、13田中、24荻野、8渡邊
FW22櫻井(67分=7荻田)、9井口

共に連勝チーム同士でぶつかった両者。勝利チームが石垣島への切符を掴む。

 
 ややペースを握りながらも決め手に欠く町田ゼルビア

 
 0-0で迎えた53分、矢崎FW井口が左サイドから強烈なシュートを決める

 
 1点のビハインドを負った町田はベテランMF山口を投入しチャンスを作る

 
 88分、その山口の左からのクロスに蒲原が頭で合わせ同点ゴール!

 
 そしてこちらも1-1でPK戦へ突入

 
 町田GK渡辺が矢崎2人目のキックをファインセーブ

 
 ところが町田は3人目の蒲原がミスキック

 
 矢崎7人目大森のキックはバーに当たり・・・

 
 町田は7人目の津田が決めてPK戦6-5で勝利!

 
 昨年の刈谷での1次ラウンド敗退の借りを返す勝利で決勝ラウンド進出

 
 降りしきる雨に大粒の涙が混じる 町田ベンチも歓喜

 
 雨の中ずぶ濡れになりながら声援を送ったサポーターと石垣島へ!

<最終日その他の試合結果>
Cグループ
●静岡FC(3敗) 0-6 グルージャ盛岡(1勝2敗)○
Dグループ
●佐川急便中国(3敗) 1-2 ノルブリッツ北海道(1勝2敗)○

Road To JFL ~地域リーグ決勝大会 鳥取の2日目~

2008年11月23日 | 脚で語る地域リーグ
 2日目を迎えたJFL登龍門の戦い。今日は写真で鳥取の全試合をお届け。

第32回全国地域リーグ決勝大会1次ラウンド
第1試合11:00 第2試合13:15キックオフ
Dグループ
@コカコーラウエストスポーツパーク

●佐川急便中国(2敗) 2-6 矢崎バレンテ(2勝)○
得点
29分 本田(佐川中国)
49分 堂面(佐川中国)
52分 大森(矢崎)
55分 井口(矢崎)
62分 井口(矢崎)
67分 井口(矢崎)
87分 荻田(矢崎)
89分 荻田(矢崎)

<佐川急便中国メンバー>
GK21後藤
DF17村、23吉原、6森山
MF11高宗、5大前(74分=19藤井)、10本田、15伊藤(67分=2深川)、16中島
FW27姜、18堂面

 

<矢崎バレンテメンバー>
GK宮城
DF3大森、4松尾、5中村
MF26木戸(75分=11千葉)、23鈴木(6分=13田中)、25秋本、24荻野、8渡邉
FW9井口、22櫻井

 
 29分、佐川急便中国のMF本田がFKを直接決めて先制

 
 後半開始直後には堂面が本田のクロスにダイビングヘッドを決める

 
 佐川急便中国が2点を先行する試合だったが・・・

 
 その直後、矢崎の攻撃力が爆発! 52分にCKから大森がヘッドで

 
 自らのドリブル突破から得たPKを井口が決めて同点!

 
 62分には再び井口が決めて、歓喜をもたらす

 
 5分後にも井口!昨日の2得点に続き、ハットトリックの活躍

 
 途中出場の荻田も2得点 足の止まった相手に対して本領発揮

 
 後半6点を奪って逆転勝利 町田の1強とは言わせない!
 
○FC町田ゼルビア(2勝) 1-0 ノルブリッツ北海道(2敗)●
得点
37分 酒井(町田)

 

<FC町田ゼルビアメンバー>
GK41渡辺
DF19森川、14中川、27山、4雑賀
MF11酒井、15伊藤、8石堂、16蒲原
FW26勝又、31山腰(85分=17柏木)

<ノルブリッツ北海道メンバー>
GK1小田
DF22倉谷、5行方、2長谷川、3三上
MF8矢野(62分=30松田)、25桂田、15伊藤(74分=16圓明)、7赤坂、11多賀(HT=9岡戸)
FW14日向寺

 
 J経験者のMF酒井を軸に悲願を目指すFC町田ゼルビア

 
 北海道のタイトな守備に前半から攻めあぐねてしまう

 
 なかなかエリア内でチャンスを掴めない町田だったが・・・

 
 右足を一閃!酒井のロングシュートが37分に決まり先制

 
 昨季はFC Mi-OびわこKusatsu(現MIOびわこ草津)をJFLに導いた戸塚監督

 
 後半、運動量の落ちた相手に対して攻撃を試みる北海道

 
 町田のMF蒲原 攻撃を組み立てる

 
 守備は堅固 不運な形の失点を取り返したかった北海道

 
 1-0で迎えたロスタイム ライン際の攻防

 
 辛勝で2勝目の町田 昨年の刈谷の悔しさをサポーターと共に晴らす

 
 ノルブリッツ北海道は大健闘 明日なんとか1勝を掴みたい

Cグループ
@とりぎんバードスタジアム
(レポート&写真:Roy)

○レノファ山口(2勝) 2-1 グルージャ盛岡(2敗)●
得点
16分 加藤(盛岡)
40分 大野(山口)
48分 安田(山口)

<レノファ山口メンバー>
GK1澤野
DF18多久島、4吉田、13藤井、19佐久間
MF26福原、14大野、39戸高、11高杉(66分=29兒玉)
FW9安田、8柏原

<グルージャ盛岡メンバー>
GK21和田
DF25伊藤、3金澤、4石井、19小野寺
MF8松田、2下屋敷、15東山、14金子(65分=白澤)
FW13加藤(75分=18菅原)、9佐々木

 
 東北と北陸の雄がぶつかる!

 
 盛岡FW加藤が16分に先制点となるゴール

 
 盛岡は勝負を決める追加点を欲しかったのだが・・・

 
 40分に山口はMF大野が同点弾!

 
 後半開始直後には安田が決めて山口は逆転に成功

 
 昨日と変わらぬ組織的なサッカー レノファ山口、強いぞ

 
 連敗の盛岡 遠方から足を運んだサポーターに報いたいところ
 
●静岡FC(2敗) 1-2 松本山雅FC(2勝)○
得点
61分 今井(松本山雅)
62分 OG(静岡)
88分 三本菅(松本山雅)

<静岡FCメンバー>
GK21梅島
DF23片岡、18滑、15長尾、3祖父江
MF13イブライマ、7藤田、8池田(HT=14河村)、10納谷
FW11下司、17清野

<松本山雅FCメンバー>
GK30原
DF2金澤、28矢畑、22坂本、19阿部
MF6今井(87分=15高沢)、13三本菅、7川田、25大西(89分=23鈴木)
FW14竹内(HT=8小澤)、10柿本

 
 この2日間、とりぎんバードスタジアムはアルウィン状態

 
 拮抗した試合 昨日の逆転劇の疲れが出たか松本山雅

 
 0-0で迎えた61分、松本山雅MF今井が抜け出し先制ゴールを決める

 
 追いつかれた松本山雅、終了間際の88分に・・・

 
 連日の決勝弾!決めたのはまたしても三本菅!

 
 皆、石垣島へ行く準備は万端 明日の山口戦は負けられない

 さて、遂に3日間の1次ラウンドも明日が最終日。1位のチームは石垣島への切符を掴み、JFL昇格まであとわずかだ。田園地帯広がるのどかな鳥取の地に、これ以上ない熱気が渦巻いている。

 
 
 連日、自転車でスタジアムへ出動 マシンは松本山雅カラーw
 (広い鳥取市内、スタジアムまでのサイクリングは最高)

Road To JFL ~地域リーグ決勝大会 鳥取の1日目~

2008年11月22日 | 脚で語る地域リーグ
 遂に幕を開けたJFL昇格を争う死闘。全国地域リーグ決勝大会、1次ラウンドの鳥取2会場(Cグループ、Dグループ)の様子をお届け。
(両会場の間に実家を持つ奈良クラブサポーターのRoyの協力により、2名体制で鳥取会場全試合を追う。)

第32回全国地域リーグ決勝大会1次ラウンド
第1試合11:00 第2試合13:15キックオフ
Cグループ
@とりぎんバードスタジアム

○レノファ山口 2‐1 静岡FC●
得点
15分 戸高(山口)
61分 兒玉(山口)
89分 河村(静岡)

 

<レノファ山口メンバー>
GK1澤野
DF18多久島、4吉田、38渡辺、13藤井
MF26福原、14大野、39戸高、11高杉(81分=10石上)
FW安田(58分=29兒玉)、8柏原

 

<静岡FCメンバー>
GK21梅島
DF23片岡、18滑、3祖父江、2李
MF13イブライマ、10納谷(79分=15長尾)、7藤田、8池田
FW11下司(65分=14河村)、17清野

 とりぎんバードスタジアム第1試合のレノファ山口と静岡FCの試合は、終始組織的な攻守のコンビネーションを披露した山口が勝利を手繰り寄せた。静岡は、個人技では山口を上回るものの、再三の決定機をモノにできず、1点を返すに止まった。

 

 衝撃的だった。山口の攻撃は、ダイレクトプレーを多用し、人もボールも良く動くサッカーを実践。守備でも集中力を良く保った。15分に教科書通りのポストプレーでDFを背負いながらも高杉が落としたボールに走り込んだ戸高がシュート。これが先制点となる。

 
 レノファ山口MF戸高が先制点を奪う

 1-0で折り返した後半、61分には途中出場の兒玉が投入直後にハーフライン付近でボールを奪い、そのままドリブルで仕掛けると、エリア外から思い切りよく放ったシュートがゴールに吸い込まれ、2-0とリードを広げた。

 
 途中出場の兒玉(左から2人目)が2点目を決め、歓喜爆発

 静岡は、司令塔の納谷を中心に、サイド攻撃を織り交ぜながら、エース清野にボールを集めたが、その清野が再三の決定機を決められず、終了間際に1点を返すのみだった。

 
 静岡FCの清野 彼が決めていれば展開は変わっていただろう

 
 まさかの初戦黒星に静岡FC三浦泰年TAの表情も曇る

●グルージャ盛岡 2-3 松本山雅FC○
得点
5分 加藤(盛岡)
46分 川田(松本山雅)
54分 下屋敷(盛岡)
75分 柿本(松本山雅)
80分 三本菅(松本山雅)

 

<グルージャ盛岡メンバー>
GK21和田
DF25伊藤、3金澤、4石井、19小野寺
MF7上山(44分=6石川)、2下屋敷、8松田、14金子(67分=15東山)
FW13加藤、18菅原

 

<松本山雅FCメンバー>
GK30原
DF2金澤、28矢畑、22坂本、19阿部
MF14竹内(89分=23鈴木)、13三本菅、7川田、25大西(84分=5斎藤)
FW10柿本、11吉田賢(59分=8小澤)

 初日から一進一退の大激戦となったこの試合。劇的な逆転勝利でJFL昇格への執念を見せた松本山雅が、幸先よいスタートを切った。

 

 5分に盛岡の加藤が先制点を奪い、早々とリードを奪われた松本山雅だったが、0-1で折り返した後半開始直後、川田が約30mのロングシュートを決めて同点に追いつく。54分に盛岡は、右CKを主将の下屋敷が合わせて再び突き放す。終始試合の主導権を握っていた松本山雅は、追いつくべく攻撃の手を緩めない。75分に相手ボールを奪って、攻撃に繋ぐと、三本菅から右の小澤に展開、フリーで走り込んだ小澤のクロスを柿本がダイビングヘッドで同点ゴールを奪うと、その5分後には、猛攻からゴール前の混戦で川田のシュートのこぼれ球を三本菅が押し込み逆転に成功した。

 
 46分、川田が放ったロングシュートは・・・

 
 見事に決まって松本山雅が1-1に追いつく!!

 
 盛岡MF下屋敷が勝ち越し弾を決める 白熱のシーソーゲーム!

 
 1-2と苦境のチームを救ったのはエース柿本のダイビングヘッド

 
 そして80分に三本菅が逆転弾を決めて、松本サポーターも沸騰!

 NECトーキンの出場辞退で掴んだこのチャンス。チームもサポーターも本気でモノにするべく戦った。JFL昇格へ向けて、ボルテージを高める最高の逆転勝ちだったといえるだろう。


第32回全国地域リーグ決勝大会1次ラウンド
第1試合11:00キックオフ 第2試合13:15キックオフ
Dグループ
@コカコーラウエストスポーツパーク
(レポート&写真:Roy)

●佐川急便中国 0-7 FC町田ゼルビア○
得点
4分 勝又(町田)
12分 石堂(町田)
16分 蒲原(町田)
49分 山腰(町田)
55分 森川(町田)
68分 蒲原(町田)
89分 山腰(町田)

<佐川急便中国メンバー>
GK1佃
DF17村崎、22稲田、23吉原、15伊藤(57分=6森山)
MF7田岡(72分=2深川)、5大前、16中島、10本田
FW11高宗(72分=19藤井)、27羹

<FC町田ゼルビアメンバー>
GK41渡辺
DF19森川、14中川、27山崎、2津田
MF11酒井(56分=10山口)、15柳崎、8石堂、16蒲原(70分=梁)
FW31山腰、26勝又(52分=17柏木)

 

 開始16分で早々と3点を先取した町田が終わってみれば7得点の圧勝劇を演じ、勝ち抜けに大きな1勝をを得た。

 関東リーグのチャンピオンチームが堂々とした戦いぶりを見せた。左サイドの蒲原とセンターハーフの石堂を起点に次々と加点。レベルの違うパスワークで佐川急便中国にチャンスを与えなかった。

 
 JFL昇格に万全のスタート サポーターの念願叶うか

○矢崎バレンテ 2-0 ノルブリッツ北海道●
得点
59分 井口(矢崎)
85分 井口(矢崎)

<矢崎バレンテメンバー>
GK21宮城
DF6杉本、4松尾、3大森
MF26木戸、23鈴木(79分=13田中)、25秋本、24荻野、8渡邉
FW9井口、22櫻井(66分=10遠藤)

<ノルブリッツ北海道メンバー>
GK1小田
DF22倉谷、5行方、2長谷川、3三上
MF11多賀、16圓明(84分=13相木)、23吉野、7赤坂
FW9岡戸(72分=30松田)、14日向寺

  

 東海リーグの雄、矢崎が後半2得点を奪い快勝。守備的な北海道の前に攻めあぐねたが、井口の2得点で勝負を決めた。
 北海道は、巻き返そうとしたが力及ばず。力の差を見せつけられた。

 
 町田の1強とは言わせない 東海の雄、矢崎が決勝進出を狙う

 1戦目から勝者と敗者のコントラストは容赦なく浮き彫りにされる。JFL昇格に向けたこの戦いでは、敗戦は命取りだ。過酷な戦いはまだ始まったばかりだ。

明日の鳥取ラウンド、試合予定は・・・
@とりぎんバードスタジアム
11:00 レノファ山口 VS グルージャ盛岡
13:15 静岡FC VS 松本山雅FC

@コカコーラウエストスポーツパーク
11:00 佐川急便中国 VS 矢崎バレンテ
13:15 FC町田ゼルビア VS ノルブリッツ北海道

ユース昇格組が奏でるスペクタクル

2008年11月21日 | 脚で語るガンバ大阪
 アジアチャンピオンの座に輝き、中3日で迎えた天皇杯の緒戦で、J2甲府を相手に苦戦しながらも5回戦進出を果たしたG大阪。来季のACL出場権が現段階で全く保証されていないことが過酷だが、ここらで、新世代の布陣にスイッチしていくタイミングではなかろうかという気もしなくはない。

 かねてから鳴らされているこの警鐘にG大阪は、二の足を踏まざるを得ない。何せここ数年サポーターを心酔させたスペクタクルなサッカーと、それによってもたらされたタイトルは、現状のメンバーの貢献度抜きには語れないからだ。しかし、対照的に将来が不安視されるのは、特にクオリティの高さが際立つ中盤を筆頭に、若手選手との実力差が顕著である点。若手主体にスイッチしていく際に伴う多大なそのリスクは常に存在するが、チームがある程度結果を残していることで、盲目的になっている。あえてそれを見つめて、ぶつかっていかなければ、将来的にG大阪のサッカーから“スペクタクル”が潰えてしまうことにもなりかねない。

 その点を考えると、ユースからの昇格組は正念場だといえるだろう。現在のG大阪の屋台骨となっている中盤の橋本、二川以降、突出した下部組織からのヒット作は安田理ぐらいか。今季はその安田理の不在時に下平が健闘したが、G大阪がクラブ力を付けてきた今、移籍による加入選手の台頭にユースからの昇格組は完全に押されているのが実情だ。
 特に安田理と同期である“G6”と称された87年組は、その安田理以外、伸び悩んでいる。横谷と伊藤は現在J2愛媛FCにレンタル移籍中だが、チームに残っている平井、岡本、植田は出場機会を失っている。今季は、平井がナビスコ杯準々決勝1stlegで値千金の決勝弾を決める活躍を見せるも、それ以降は、リーグ戦中盤、勝ち星に見放された時期に出場機会を掴んだ岡本同様、登録外になることが多い。植田に至っては未だに公式戦出場機会が与えられず、今季は厳しいオフを過ごすかもしれない。

 彼らがトップに昇格した時期は、橋本、二川がチームのレギュラーとなり得た時期とは事情が違う。橋本、二川がトップチームで戦力となり出した99年当時は、下位ながらも次世代を模索した時代だった。それより以前からチームの確固たる基盤となっていた宮本(現ザルツブルグ)、97年に高校生ながら頭角を現した稲本(現フランクフルト)、新井場(現鹿島)を台頭に、ユース出身者がイニシアチヴを握らなければ、凋落の一途を辿らざるを得なかった大きな転換期だった。チームの核となるべき強靱なメンタルを有する選手など資金的にも獲得できず、やってくる外国人選手は政権交代と共に、あっさりお払い箱になってしまうような時期だった。しかし、その中でこそ、彼らヤングエイジたちは、現在のG大阪の基盤ともなるべきサッカースタイルの構築に大きく寄与したのである。

 その意味では、この大きな転換期をJ2に転落することなく堪え忍んだ早野前監督の功績を称えることも一つだが、主体性を伴ったユース昇格組の奮起がチームの全てだったとも形容できる。強豪チームに生まれ変わろうと喘ぐG大阪の中で、彼らがもたらした功績は大きい。
 その時代と比べようもないほど、G大阪を取り巻く状況は変わった。今や世界に挑戦できる権利さえ得たのだ。しかし、そこで時折感じてしまう将来への不安は払拭できていない。いや、むしろ日増しに増幅させられているかのようだ。最早、Jリーグ屈指の下部組織でさえ、現在のレギュラーメンバーを脅かす人材創出は至難の技なのか。

 その答えは、宇佐美貴史が握っているのだろう。わずか16歳にして、来季からのトップ昇格を決めたG大阪の“至宝”だ。おそらく、彼は現在のG大阪が有するスペクタクルを次世代のものへと導いてくれるだろう。
 資金力にモノを言わせて、他チームから有力選手を獲得してくる手法が決して間違っているとも思わないが、本当に大切なのは、自らの組織内で育成した選手がそのチームの看板になっていくことだ。将来、海外も含めて、偉大なサッカー選手として、大いに羽ばたいていくのもアリだろう。
 ユース昇格組が主体性を持って戦っていけるか否か、ピッチの中だけでなく、この物語においても、G大阪にはスペクタクルが詰まっている。