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脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

最終戦、至極のマッチアップ -SAGAWA SHIGAvs長野-

2011年12月10日 | 脚で語るJFL
 今季のJFLも残すところ最終節のみとなった。最終節とはいえ厳密に言うと震災で延期となっていた前期第1節。佐川守山陸上競技場では前節の讃岐戦で2年ぶりの優勝を決めたSAGAWA SHIGA FCが2位につけるAC長野パルセイロと対戦。ハイレベルな攻防戦は、後半SAGAWA SHIGAがセットプレーから2点を奪うと、長野の反撃を1点に押さえて逃げ切った。長野もJFL昇格1年目ながら準優勝という結果で2011年シーズンを締め括った。

 

 

 
 SAGAWAは試合後に岡村の引退が発表された。
 GK村山は岡村の「6」のユニフォームを着て写真撮影に。

 
 長野は昇格1年目とは思えない善戦ぶり。
 勝てばSAGAWAとの勝点差1でシーズンを終えることになる。

 SAGAWA SHIGAは中村が出場停止で、御給、森田が控えスタート。今季のSAGAWAを見るのは初めてだったが、昨季までの良く知るSAGAWAとは少し陣容が変わっていた。しかしながら、天皇杯・G大阪戦でも度々Twitter上では話題に上がっていた若手の奈良輪をはじめ櫛引、清原、鳥養といった若手が先発出場。もちろん主将の山根をはじめ最終ラインを束ねる冨山、旗手、大杉、そして攻撃の核である大沢などは健在。中盤には出場停止の中村に代わってびわこ大から加入2年目の小池が先発に名を連ねていた。
 対する長野も今季から加入の谷口や寺田、向、藤井などの選手と、これまでチームを牽引してきた既存選手ががっちり融合しているようで、JFL昇格1年目ながら19勝6分7敗という驚異的な戦績。特に失点数25というのはリーグ屈指の数字で、守備出身の薩川監督の指導の賜物か。とにかく十分JFLで戦えることを証明している。思えば、1年前の地域決勝大会、1次ラウンドをワイルドカードで勝ち上がってきたというのが信じられない。前線の宇野沢、藤田のコンビはその時から変わらず。元々強いチームだということは自明だったが、それをJFLの舞台で見られるのは純粋に楽しみだった。しかも相手は王者・SAGAWA SHIGA。どんな戦いを見せてくれるのか。

 試合は序盤から激しい攻防戦。最終ラインからしっかり組み立てる長野に対して、サイドを効果的に使いながら緩急つけた攻撃で長野を揺さぶるSAGAWA SHIGA。9分には左サイドバックの藤井が威勢よくドリブルで進撃。最後は攻め上がった野澤が鋭いシュートを放つ。どちらも守備の堅いチーム、1点を争う勝負が予想されたが、序盤は長野がシュートを積極的に狙っていった。

 
 東京Vから移籍加入の向がドリブル突破。
 長野は中盤のスペースをドリブル多用で攻めていく。

 
 SAGAWA SHIGAのライトサイダー奈良輪。
 攻守に好プレーを披露。

 
 長野に今季から加入した谷口はかつて滋賀県リーグでプレー。
 先発のCBとしてチームを牽引していた。

 長野の攻勢にも怯まず、自分たちのサッカーにしっかりシフトするSAGAWA SHIGA。中村が出場停止だった面で攻撃の手数はかかっていたのだろうが、それでも大沢のドリブルや山根のパスによるチャンスメイクで次第に長野を凌駕。30分にはCKから櫛引が惜しいヘディングシュートを放つと、43分には山根が際どいシュートをお見舞いする。これはゴール左にわずかに外れたが、前半は0-0で両者後半へ折り返すこととなった。45分間があっという間の好ゲームだった。

 
 相変わらず宇野沢が存在感のある選手。
 本人ももう一度Jの舞台でやりたいはず。

 
 その宇野沢と組む藤田。
 昨季の地域決勝でもこのコンビは際立っていた。

 
 ベテラン山根はSAGAWA10年目。
 佐川東京時代からの古参選手だ。

 後半に入るといきなり試合が動く。開始1分経たぬうちにCKからこの日先発出場の小池がヘッドで合わせてゴールネットを揺らした。長野は完全に後半の出鼻を挫かれた。先手を打とうしていた長野は追いかける展開に。58分には藤田に代えて平石を投入して反撃に出る。64分にはこの平石が左から鋭いシュートを決めたが、判定はオフサイド。長野は1点が近いようで遠い。

 
 
 先制点の場面。セットプレーからSAGAWA SHIGAが先手。

 
 野澤は左ではなくて中央でプレー。
 昨季の地域決勝でも特に印象に残っていた選手。

 
 先制点を決めたSAGAWA SHIGAの小池。
 地元のびわこ大から加入して2年目の選手。

 72分には大沢を下げて宇佐美を投入し、逃げ切りの態勢を見せるSAGAWA SHIGAだったが、その直後にCKから今度は清原が合わせて追加点。長野を突き放す。崩せなくてもセットプレーで確実に奪えるSAGAWA SHIGAの強さを実感。

 
 清原が追加点。歓喜の先には引退を決めた岡村の姿が。

 
 大橋の献身的な守備は長野に欠かせない。

 
 大島も柏から長野へ移籍して3シーズン目。
 今では谷口とコンビを組む。

 76分に長野もFKから野澤が頭で決めて1点を返す。まだ時間は十分と言わんばかりに攻勢に出る長野。守るSAGAWA SHIGA。同点の機会も十分にあった長野だったが最後までSAGAWA SHIGAの守備を割ることはできず、2-1でタイムアップとなった。

 
 終了間際には御給(左)が途中出場。
 彼が途中出場というところに時の流れを感じる。

 
 長野の猛攻。
 宇野沢のシュートは体を張って止められる。

 JFLの1位と2位の対決に相応しいハイレベルな応酬だった。スコアも含めて勝敗を分けたのは僅差なものだった。メンバーが変わっても一定のクオリティを維持するSAGAWA SHIGAの層と質も驚きだが、そこに互角以上の戦いを見せている長野も素晴らしい。松本山雅と町田がJ2参入となるであろう来季は共に優勝候補に挙げられるだろう。スタジアム問題がクリアすれば長野もJ参入のチャンスは見えてくる。また、アマチュア企業クラブとしての矜持を「優勝」という形で改めて見せてくれたSAGAWA SHIGAも今後上位2チーム(2012年シーズンからのJ2とJFLの入替戦実施が濃厚。もし、その場合J2下位2チームとJFL上位2チームがその対象になるが、JFL2位チームはJ2・21位との入替戦を戦わなければならないことが予想される。クラブライセンスとの兼ね合いもあり、JFLからJ2への参入は一層至難となる見込み)となるJ参入枠の前に強固な「門番」として立ちはだかるだろう。
 とにかくSAGAWA SHIGA FC、2年ぶりの優勝おめでとうございます。

 
 佐川大阪時代から数えると6シーズン。優勝は3回。
 S級ライセンスを持つ中口監督。
 果たして近い将来Jで指揮を執る日は来るのだろうか。

 
 
 23勝1分9敗。総得点60、総失点34での優勝。
 JFL2年ぶり3度目の優勝を果たしたSAGAWA SHIGA FC。
 間違いなくアマ最強チームだ。
 

赤と緑、熾烈な攻防戦 -金沢vs松本山雅-

2011年11月23日 | 脚で語るJFL
 JFLは震災による延期分の前期第6節が行われ、金沢西部緑地公園陸上競技場では、ホーム・金沢と松本山雅が対戦。来季のJ2参入を目指す松本山雅が執念の先行逃げ切りで2-1で勝利。5位をキープした。対する金沢は13日の同カードで0-2と敗戦して以来の3連敗。

 

 1万人動員デーと称され、金沢だけなく松本からも多くのサポーターが詰めかけた今節の金沢。G大阪のリーグ戦で金沢西部は何度か来たことがあるが、金沢のホームゲームとしては初めて。前述の動員デーのための催しがいろいろ行われており、試合前から競技場前のフードコートエリアは盛況だった。

 
 試合前のフードコートは行列ができるほど盛況。
 なめこ汁は金沢U15の保護者による手製で美味かった。

 
 メインスタンドも中央部から人がぎっしり。
 対戦相手が松本ということもあって、この日はJ2レベルの動員。

 
 もはや説明不要の松本山雅サポーター。
 4位以内を目指すべく多くのサポーターが集結。

 
 負けじと金沢のゴール裏も熱い。
 赤いビニール袋を使ってのコレオでゴール裏を赤く染める。

 松本山雅は5月の太陽が丘での佐川印刷戦以来、金沢は昨季のSAGAWA戦以来の観戦となる。金沢は、春野の1次ラウンドから見ていただけあって、やはり2009年の地域決勝のイメージが強く、未だにその時の選手たちが記憶に色濃く残っているのだが、それもあってかこの日はその中でもキャプテンマークを巻く諸江、山道、古部といった選手たちが非常に懐かしく思えた。金沢は、チーム得点王の平林がベンチスタート。曽我部もこの日はファンサービス要員として会場外のブースにいるなど、前回から2人ほど先発にテコ入れがあった様子だった。
 対する松本山雅は、こちらもソニー仙台戦から先発メンバーを多少変更していた。鐡戸、弦巻、渡辺が外れ、多々良、飯尾、北村が先発に。先日の天皇杯3回戦ではJ1・新潟を破って天皇杯で例年並みに乗る定番のチームになってきたが、本命はこのJFLでの4位以内という戦績。5位につける彼らとしては、13日の同カードで2-0と勝利できた金沢にアウェイとはいえ、2タテは必至という覚悟だっただろう。勝点が切迫しているJFL上位陣。1ポイントでも差がつけば4位以内は厳しくなる。松本山雅はまさに勝負どころの時期だ。

 試合は立ち上がりから金沢が攻勢に出る。いきなり3本のCKを連取すると、DF諸江が際どいシュートでゴールを肉薄。金沢がホームで執念を序盤から見せる。

 
 
 
 いきなり金沢がビッグチャンス。
 松本にとっては慌ただしい立ち上がりとなった。

 金沢の序盤の猛攻をしのぎ切ると、松本もカウンターからリズムを作り出す。25分には金沢・マイケルのパスミスからFW塩沢がシュートまで持ち込むもゴールならず。双方ミスがゴールに直結するほどFW陣の能力は高い。29分には久保の横パスを受けた山道エリア左手から惜しいシュートを放つ。松本も32分に左サイドを抜け出した玉林がシュートするが、これを金沢・GK大橋がセーブで切り抜ける。

 
 マッチアップする金沢・マイケルと松本・塩沢。
 塩沢は何度かチャンスがあったが得点を決められず。

 
 金沢・Gk大橋は随所で好セーブを見せる。
 しかし、後半に無念の負傷退場。

 35分にはエリア手前から松本・大橋がシュート。わずかに枠を捉えられない。37分には今度は金沢がCKを諸江が鋭いヘッドで合わせてゴールを強襲するなど一進一退の攻防。依然金沢が松本陣内まで攻め込む場面が多かったが、得点には至らず0-0で前半を折り返す。

 
 松本は大橋が緩急をつけた動きでリズムを作る。

 
 37分、この諸江のヘッドは金沢にとって決めておきたかった場面。

 後半に入ると、松本が攻撃に勢いを見せる。50分に塩沢がフリーでクロスをヘッド。これはGK大橋が飛び出しており、ゴールかと思われたが、金沢・斉藤が間一髪のところでクリア。続く53分にも再び塩沢がダイビングヘッドでゴールを狙うも、わずかにゴール右に外れる。そして56分に松本は消えていることが多かった船山に代えて木島良を投入。すると、その直後に弟である木島徹が先制ゴールを決めた。

 
 
 この塩沢のヘッドはギリギリ金沢・斉藤がクリア。

 
 先制点は松本。決めたのは木島徹。
 得点ランキングトップタイとなる19得点目。絶好調だ。

 エース・木島徹の先制点で勢いに乗った松本は、67分にも途中出場の兄・木島良が左サイドから強烈なシュート。これは金沢・GK大橋がファインセーブに阻まれたが、74分にはドリブルから左足を一閃。強烈なシュート再びで追加点を奪った。

 
 
 金沢はドラゴンこと久保がパッとしなかった。
 72分に井上と交代。残念そうな表情。

 
 松本、守っては横浜FCから今季加入したベテラン飯尾が奮闘。

 
 その飯尾とコンビを組む飯田も体躯を活かしてしっかりブロック。

 松本が2点目を決めた後に金沢はここまで気を吐いていたGK大橋が接触プレーで交代するアクシデント。ところがここから火が着いたのか金沢の猛攻が始まる。84分にはエリア手前から古部のシュートが味方選手に当たってコースが変わりゴールイン。金沢が1点を返す。既に諦めムードだった金沢西部のメインスタンドホーム側もホームゴール裏と呼応するように盛り上がり始める。序盤同様にCKを連取して同点ゴールを狙い続ける金沢と必死の守りを見せる松本のスリリングな展開。85分には松本・須藤が2枚目の警告で退場に。その直後のFKを金沢・マイケルが頭で合わせるが惜しくもゴールならず。89分には山道がCKを頭で合わせるがギリギリ決まらない。5分と設定されたアディショナルタイムには金沢のシュートが松本・木島良のゴールライン上ギリギリでクリアに遭うなど最後までツキがなかった金沢。結局最後まで同点弾が奪えず、2-1で松本に軍配が上がった。

 
 金沢の山道はフィニッシュに良く絡んでいたのだが…

 
 松本・DF多々良が自陣で必死のクリア。

 
 松本は須藤が終了5分前に退場に追い込まれる苦しい展開。

 
 石舘がドリブルで切り込む。CKのキッカーとしても存在感を発揮。

 攻める金沢、守る松本という構図で、フィニッシュの決定力に差が出た結果となったこの試合。やはりその点で木島兄弟を揃える松本が強かな部分はあったと思うが、金沢はあと一歩という場面でツキに見放された感も大きい。ゲームの作り方にはそれほど差がなかったかもしれないが、ミスは松本の方が少なく、特に守備陣でこれが分かれたといえる。守備をまずは整え、前半をしのいだ松本が先行逃げ切り。しかし追いつこうとする金沢の猛攻も含めて非常に見応えのある面白い試合だった。
 他会場の結果を踏まえると、順当に勝利を収めた上位陣に変化なし。まだ松本は5位という位置で、4位・長崎と勝点差1ポイントという接戦が続く。各チームの残り試合は3試合。しかし、松本に関してはこの上位陣の中で唯一1試合多く消化済みだ。つまり松本にとっては残り2試合。しかも相手は今季JFLで戦績をアップさせた強豪・ホンダロックだ。果たして松本の命運はいかに。
 対して金沢はJ準加盟に及ばず(2012年2月の準加盟審査にチャレンジとのこと)、今季も上位進出は厳しい。しかし、明らかにホームゲームの雰囲気は作れており、地元の人たちの認知度も高い(帰りに近江町市場に寄ったが、食事処の店員もツエーゲン金沢のことを知っていた)。1万人を目指したこの試合の動員は残念ながら8,786人に留まったが、特に子供たちの姿が多かったのは印象的で、めった汁やU15の保護者の皆さんが作るなめこ汁などフードコートのメニューもハートフルだ。運営面では頑張っている金沢。2013年にはJ2にいてもおかしくないチームであることは間違いない。地域決勝大会の直後というタイミングだったこともあって、様々な点で刺激を受けた金沢での試合だった。

 
 負けられない松本。
 果たしてその結末はいかに…!?

 
 3連敗となったが、金沢のホームゲームの雰囲気は印象的。
 確実に金沢の街に根付いていると実感。

長崎、リーグ屈指の得点力 -MIOびわこ草津vsV・ファーレン長崎-

2011年11月14日 | 脚で語るJFL
 今季の全日程もあとわずかに迫ってきたのはJや地域リーグだけでなく、JFLも同じく。ほとんどのチームが残り試合を5~6試合とし、注目はJ参入に関わる4位以内の争いや降格、入替戦のかかった下位争い。後期第15節、14位・MIOびわこ草津と5位・V・ファーレン長崎は東近江の布引グリーンスタジアムで行われ、長崎が6-0でびわこを下してリーグ2位タイに総得点を伸ばし、順位を4位に上げた。

 

 久々のJFL観戦は東近江への1年ぶりの来訪。1年前にJ昇格を決めた鳥取とびわこの試合(5-0でびわこが勝利)を観に来たが、ちょうど布引グリーンスタジアムはその試合がこけら落としで、今季はすっかりびわこがリーグ戦の多くをここでこなしている様子。名神高速・竜王ICからスタジアムまでの牧歌的な風景はまた何とも言えずノスタルジックで個人的には好きだ。到着早々、美味しそうな香りを漂わせる近江牛カルビ丼を買ってスタジアムに入る。

 ここまでホーム・びわこは直近3試合で明らかに調子が上向き。10/22の後期第12節では8試合ぶりの勝利を2位につける長野からもぎ取って3戦無敗。対する長崎はその後期第12節で高崎に1-2と敗戦を喫するものの、9月からまだ2敗しかしておらず5位につける絶好調。好調同士の対戦となった。

 この試合、スタジアムの西側から強い風が吹きつけ、天気も晴れていたと思いきや、すぐに厚い雲がその頭上を覆うなどコンディションはまちまち。特に前半は風上に立ったびわこがチャンスを作るには分があると思われた。ところが、開始5分で長崎に先制点のチャンスが。エリア内に突進した長崎・FW水永をびわこGK・永冨が倒してしまいPKの判定。これを長崎は有光が決めて早々に先制に成功する。35分には、左サイドから駆け上がった持留のクロスがファーに流れたところを岡村が合わせて2点目を奪う。対するびわこも風上を活かし、ロングボールで長崎エリア目がけての攻勢に出るが、あと一歩ゴールに及ばない。特に前線で園田が駆け回ってチャンスを作ろうとするが、長崎の守備陣に阻まれた。

 
 5分に長崎が有光の先制点となるPKで先行。

 
 びわこは園田が気迫のこもったプレーを見せる。
 かつての所属先から愛のある野次も飛んでいた。

 
 
 長崎はこの岡村のシュートで追加点。

 2-0で折り返した長崎は後半も攻撃の手を緩めない。57分には有光の右CKを水永が頭で合わせて3点目となるゴール。53分に主砲・木下を投入。58分にも半田を下げて伊藤をピッチに送り、形勢を逆転すべくびわこもベンチワークに積極性を増す。しかしながら、次に得点を奪ったのも長崎。守勢に回っていたのも束の間、風上を活かした速攻カウンターで最後はエリア前で山城をパスを受けた神崎がシュートを決めて4点目を追加する。

 
 
 
 
 水永、ドンピシャのヘッド炸裂。長崎が3点目。

 
 びわこは司令塔・半田が攻撃の組み立てに苦戦する。

 
 劣勢のびわこ、ベテラン・秦がチームを牽引するが…

 
 小柄ながらそのスピードとテクニックは注目。
 カウンターから得点を導いた長崎の山城。

 4点目を奪った直後に長崎はFW中山を投入。かつてG大阪でプレーしたこの選手を実に久しぶりに見ることとなった。その中山、早速79分に左サイドから強烈なシュートを狙っていくが、わずかにゴール右へ逸れていく。決定機を外したものの活躍の予感は十分。すると、83分には中山がエリア内で倒されて得たPKを自身で蹴るチャンスが到来。残念ながらこれはびわこGK永冨に阻まれたが、89分には右サイドから神崎が放り込んだクロスを相手DFがクリアしたところに中山がフリーで走り込んでシュートを決める。長崎は5-0とリードを広げながらも、90+2分には持留が左サイドから攻め上がって強烈なシュートを叩き込み6-0として試合を終えた。

 
 自分で掴んだPKのチャンスだったが…

 
 長崎・FW中山、まさかのPKミス。

 
 
 しかし、負けじと89分に中山が長崎の5点目をゲット。

 
 左サイドで躍動していた持留もダメ押しの6点目を決める。
 元G大阪ユースで攻撃的サイドバック。

 終わってみれば、長崎が圧巻の得点力で大差をつけた。これで長崎は総得点が52得点と首位・SAGAWAの53点に肉薄。FW有光は得点ランキングを独走する19得点目を決めた。それどころか、この試合では6得点全てが異なる選手によるものという結果に。まさにJFL屈指の得点力。好調のびわこ相手に完封で終わっているところも特筆すべき安定感といえる。
 対するびわこは、ホームで連勝していただけにショックが大きな試合になったかもしれない。特に後半はほとんどチャンスを作れず、中山を倒して畑が、そして終盤には負傷で細貝も欠いてしまい、9人になってしまう展開を強いられた。ただ、布引のスタンドは観衆も616人とそこそこの賑わいを見せており、やはり継続的にホームで試合ができることでつくられる雰囲気は地域リーグのそれとは違うものだなということも実感できた。5月以来のJFL観戦。非常に新鮮で刺激を受けた。

 
 まだJ2ぐらいでは通用しそうな長崎・FW有光。
 19得点で得点ランクトップ。

 
 昨季は高崎の主将としてJFL入替戦を戦っていた岩間。
 長崎へ移籍し、今ではすっかり中心選手に。

ありがとう、松田直樹。

2011年08月04日 | 脚で語るJFL
 早すぎる。
 まさか松田直樹が。
 まさかこんなにも早くサッカーを奪われることになろうとは。
 なんて残酷なのか。
 まだまだサッカーがやりたかったはず。
 本当に安らかに。ご冥福をお祈りします。

 2011年5月3日
 京都府立山城総合運動公園太陽が丘陸上競技場
 JFL前期第9節佐川印刷vs松本山雅FCより。

 これが最後に見た松田直樹の姿。

 忘れない。
 ありがとう。松田直樹。
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 松田直樹
 (1977年3月14日生‐2011年8月4日没)
 1995-2010 横浜F・マリノス
 2011 松本山雅FC
 Jリーグ通算400試合出場18得点
 JFL15試合出場1得点
 国際Aマッチ40試合出場1得点

分厚い3,000人の壁

2011年07月16日 | 脚で語るJFL
 ここのところなかなか観戦機会に恵まれず、GWに太陽が丘で行われた佐川印刷-松本山雅しか観戦できていないJFL。今季から讃岐と長野を加えての18チームで、震災の影響で前期日程は不参加だったソニー仙台が復帰し、後期日程へと突入している。順位表を見るとこれがまた例年以上に凄まじい戦いの模様だ。

 Jリーグ参入を目指す準加盟チーム、そしてその準加盟を目指すチーム、また、それらとは一線を画す企業クラブなどのアマチュアチームに大別できるアマチュア最高峰の全国リーグ。現在、Jリーグ準加盟の承認を得ているのは町田ゼルビア、松本山雅FC、V・ファーレン長崎、カマタマーレ讃岐の4チーム(厳密にはJFL以外に関東2部リーグのSC相模原もある)。そして準加盟申請をして継続審議となっているのがツエーゲン金沢とFC琉球の2チームだ。

 今季のJFLは7/16(土)時点で後期第3節を消化中(震災の影響でスタートは前期第7節から)。7/15時点で首位に立っているのは、SAGAWA SHIGA FC。そしてそれを追うのは昇格1年目の讃岐という展開。SAGAWA SHIGAはこの4季で2度の王者に輝くアマチュアきっての名門企業チームだけあってこの戦績は納得。また、讃岐も持ち前の堅守を発揮しているようでリーグ3位タイの12失点と、昨季無失点で全社優勝を果たした実力はJFLでも十分通用しているようだ。この2位・讃岐を勝ち点差1で追うのが松本山雅、金沢、琉球の3チーム、そしてその集団を勝ち点差1で追いかける長野、長崎、ホンダロック、Honda、そこからまた勝ち点差1に町田が控えるという「超」混戦状態だ。1試合ごとに急転直下の順位変動が味わえるという点では当事者としたら堪らないものがあるだろう。全く優勝、J参入争いなど予想が付かない状況だ。

 準加盟チームは目に見える結果として、JFL4位以内と平均観客動員数3,000人という具体的な数字をJ参入条件として求められる。これが多いか少ないかという議論は別にして、しかし、この3,000人という数字は現在のアマチュアリーグでは本当に厳しい数字だ。
 今日、Twitterを覗いていると、JFLは町田と金沢が野津田(町田のホーム)で試合をしており、その話題が昼間のTLを席巻していた。しかし、観客数を見ると3,000人に遥かに満たない2,000人台の数字で、3,000人強は入っているイメージだったので、これは少し意外だった。準加盟の承認を得たクラブながらも、その数字がいかに難しい数字かが伝わってくる。
 これらの数字を随時順位表と共にまとめてくれているここJ.netを見てみると、7/15までの平均観客動員のトップは松本山雅の6,876人。これは最早J2レベルの数字で、あのアルウィンの雰囲気をご存知の方なら容易に想像がつくだろう。2位は4,300人ほどの差がついて町田の2,551人。3位がAC長野パルセイロの2,307人という数字。昇格1年目の長野にしては十分健闘している数字だろう。準加盟クラブに限定すれば、長崎が1,317人、金沢が1,495人、讃岐が1,897人といずれも2,000人台に乗らず苦しい戦いを強いられている。これを準加盟以外に目を移せば、関西で将来のJ入りを目指して活動するMIOびわこ草津が582人という数字だ。同じSAGAWA SHIGAが1,550人を集めていることを考えれば少しこの差にも衝撃は感じずにはいられない。決して観客動員が全てではないが、やはり平均3,000人動員というのは至極大きな壁だということを感じざるを得ない。

 大事なのは永続的な活動である。しかし、企業を母体に持たないクラブチームにとっては、有料入場者収入は貴重な資金源でもあり、おざなりにはできない。JFLへ上がることで有料試合が基本となり、観客は基本的に入場料を払うことになる。無料試合が主戦場である現在、奈良クラブがJFLへ昇格したとなると、お金を払って観に来てくれる人は一体どれぐらいいるだろうか。

進化の3年目、忍耐の2年目 -佐川印刷 VS 松本山雅-

2011年05月04日 | 脚で語るJFL
 JFLは東日本大震災の影響で開幕が約1か月遅れ、4月23日より開幕。残念ながらソニー仙台は震災の影響を鑑みて前期日程は参加が見送られている。順延分が後期日程終了後に回されたため、前期第7節から始まった日程はこの週で前期第9節。太陽が丘陸上競技場ではここまで1勝1分と順調な発進を果たした佐川印刷が松本山雅を迎えて対戦。拮抗した試合は1-1の引き分けに終わった。

 

 開幕戦であった前期第7節こそ金沢にスコアレスドローだった佐川印刷だったが、続く8節では秋田に3-2と勝利。中森監督の体制になってから徐々に若返りを図っているチームは、それ以前からの5年間で毎年確実に順位を上げている(06年15位→07年12位→08年11位→09年9位→10年6位)。今季もJ2富山から姜、桜井を獲得。着実にJFL経験者や大卒ルーキーで補強。更なるステップアップを目指している様子。昨季の松本山雅との戦績は1勝1敗と五分と苦手意識は全くない。松本山雅サポーターにホーム・太陽が丘を埋め尽くされたが、これがプリントダイナマイトに火をつけるはず。先発には富山から移籍加入した姜、桜井が2人とも顔を揃え、大卒ルーキーの佐伯と日野も先発に名を連ねた。

 

 アウェイで太陽が丘に乗り込むのは、昨季の佐川印刷戦(アウェイ)以来となる松本山雅。もちろん、今季の目玉補強は横浜FMから獲得したDF松田直樹であり、ユニフォームも一新。更なるサポーターの後押しでJ参入を今季こそ決めたいところ。しかし、開幕戦の秋田戦(@アルウィン)では僅差で敗戦。信州ダービーとなった前節は、今季よりJFL昇格を果たした長野を相手に2-1と競り勝っている。チームと大勢のサポーターが一丸となって連勝を狙いに京都へ来たのは確かだろう。今季はライバル・町田から木島良を獲得したことで、木島徹との木島兄弟の2トップが完成。松田だけでなく豊富な経験値を持つ選手を先発に据えてブラッシュアップしている。

 
 

 試合は両者とも前半から好守の切り替えが早い展開。佐川印刷は、右サイドの佐伯、平井を起点に松本山雅陣内に攻め込む。それに対して、松田、飯田の両CBと須藤というセンターラインでボールを奪い、木島良のスピードあるドリブルでカウンターを狙う松本山雅という構図。押し込まれているようで、それが自分たちのリズムともいえるリアクション型のサッカーは松本山雅の真骨頂。いかに佐川印刷の攻撃をいなすかが注目ポイントだった。

 
 新たな松本山雅の象徴となれるか、松田直樹。

 
 佐川印刷は素早く縦にボールを運び組み立てる。

 先制点は16分、松本山雅だった。佐川印刷のFKをキャッチしたGK白井が一気にフィードすると、これを木島良が一気に持ち込み折り返す。これを木島徹が受けてシュートを決めた。開始6でGKにセーブされたものの鋭いシュートを放っていた木島徹。まずは理想的な時間帯に先制することに成功した。

 
 

 ところが、佐川印刷はあっさり同点に追いつく。20分に桜井からのパスを受けた平井が松本山雅守備陣の間を抜けて、最後はGKと交錯しながらもループ気味にゴールへ沈める。あまりにも松本山雅のリードは持たなかった。

 
 

 25分、佐川印刷は佐伯の右からの折り返しを桜井がシュートもここは松本山雅・DF多々良のブロックに阻まれる。36分には松本山雅が鐡戸の強烈なシュートを放つが、ここもGK大石が立ちはだかった。44分には左からのクロスに攻め上がった松田が惜しいシュート。すると、前半終了間際には佐川印刷・大槻が狙い澄ましたシュートがバーを弾くなど両チームあと一歩でお互いを突き放す1点が遠い。

 
 
 鐡戸のシュートを佐川印刷・大石がナイスセーブ。

 

 

 後半を迎えるにあたって、松本山雅は既に警告を受けていた木島徹を下げ、FW塩沢を投入。これはあまりに意外な采配だった。確かに試合後の吉澤監督のコメントにもあったように疲労の色は見えていたが、兄である木島良との連携も良く、局面を打ち破れるとは思っていた。それ以上に塩沢に期待をかけたということだったのだろう。後半の立ち上がりこそ木島良の突破とシュートから決定機を作ったが、徐々に佐川印刷がペースを建て直す。

 
 今季町田から加入した木島良は突破力抜群だったが…

 64分に佐川印刷は姜に代わって高向、松本山雅は北村に代えて木村と、明らかに両チーム追加点を意識した交代を仕掛ける。69分には佐川印刷がCKから桜井が惜しいヘディングシュート。72分にも桜井がヘディングシュートで松本山雅ゴールを強襲したが、ここはGK白井がなんとかセーブしてしのぎ切る。

 
 今後、ストライカーとして印刷を牽引しそうなFW桜井。

 76分には、攻撃の核となっていた松本山雅・木島良が2枚目の警告で退場処分に。4分前に警告をもらったばかりなのにも関わらず、軽率な行為だった。再三サイドライン際をドリブルで崩していただけに、1-1という局面で彼を欠いたことは松本山雅にとっても痛かったに違いない。完全に終盤の流れは佐川印刷にあった。

 
 木島良が退場処分。これで15分を10人で戦う羽目に。

 試合終了直前には佐川印刷が怒濤の猛攻撃。90分に平井が“外す方が難しいのでは?”という惜しいシュートを外してしまう。ここからアディショナルタイム、佐川印刷は合計3度の決定機を決められず。スリリングな攻防に観客席は沸きに沸いたが、消耗戦ともいえる激しい試合は1-1のまま幕を閉じた。

 
 
 平井のシュート、これは決めておきたかった…

 
 最後のチャンス、しかし桜井のヘッドは無情にもバーの上へ。

 試合内容としては佐川印刷に軍配が上がる試合だった。終了直前の決定機がどれか1本でも決まっていれば完全に勝てた試合。相変わらずの縦に速いサッカーで、一気にゴールを目指す姿勢は今季も魅力に溢れており、各チームが苦戦を強いられそうだ。特に前線に起用されている富山から加入の桜井は長身で前線の起点になりそう。また、右サイドバックの佐伯も機を見たフィードとクロスで好機を作っていた。中森体制の3年目、更に飛躍のシーズンになる予感を十分感じさせてくれたのではないだろうか。

 
 ドリブルで持ち味を見せた2年目のFW中島。

 一方、1勝1分1敗とスタートダッシュに失敗した松本山雅。前節、ホーム・アルウィンで宿敵・長野に競り勝ち、勢いに乗れるかと思ったが、この試合では勝点をようやく拾えたというようなドロー劇。元来、相手に持ち込まれてこそチームとしての持ち味を発揮できると思うのだが、木島良の退場後は防戦一方でそれどころではなくなってしまった。その中で目を見張る活躍だったのはGKの白井裕人。再三佐川印刷の決定機をそのファインセーブで切り抜け、勝点1ポイントを死守したといえる活躍。また、キックのフィードも良く、この試合だけを見れば、松田よりもこの白井が松本山雅にとって今季最大の補強になったのではと思わせる大活躍だった。ただ、キーマンとなる選手で警告を受けている選手が多く、今後メンバーが崩れる可能性もある。週末の長崎戦に木島良が出場できないのは痛いところだ。

 
 孤軍奮闘のGK白井。トライアウトの末加入したという。

 
 判定に戸惑いを隠せない松田。
 確かにJとJFLでは同じようにはいかない。

 サポーターの数と熱気、素晴らしいホームスタジアム。あとは結果を残していくのみ。町田が開幕ダッシュに成功している中、2年目のジンクスとも言うべきか、序盤の戦いでは松本山雅は少し忍耐を強いられている。

 

五色の死闘、JFLの壁は高し -三洋洲本 VS 高崎-

2010年12月12日 | 脚で語るJFL
 全国地域リーグ決勝大会が終わり、3位になった関西リーグ王者の三洋電機洲本が、いよいよJFLの入替戦に挑戦。淡路島は南あわじ市のアスパ五色にてJFL17位のアルテ高崎を迎えて第1戦を戦った。地元の大声援を受けて、JFLへあと一歩の三洋洲本が奮闘したが、試合は0-3で高崎の勝利に終わり、非常に苦しい状況で19日の第2戦(@浜川)を迎えることとなった。

 
 この2試合に勝てばJFLへ昇格できる三洋洲本。
 とにかくホームでは勝利して敵地へ挑みたい。

 
 はるばる淡路島まで乗り込んだアルテ高崎。
 JFL残留のためにここは負けられない。

 サッカー専用スタジアムながら、非常にアクセスの困難で名高いアスパ五色。関西ではよく関西リーグや近隣クラブの合宿などで知られているが、この日は地元の皆さんが三洋洲本の応援に駆けつけ、なんとも異様な盛況ぶりであった。アスパ五色にこれだけ人が集まる機会はそうないだろう。もちろん、高崎も数人のサポーターがバックスタンド側に横断幕でチームカラーを演出し、選手を後押しする。高崎も今季JFL17位とはいえ、かつてはこの入替戦(2003年・対FC京都BAMB1993)を制して2004年のJFLへ昇格を果たしたチーム。この入替戦の重要性と難しさは分かっていることだろう。その雰囲気は盛況ながらもどこか緊張感がみなぎっていた。

 地域決勝からほぼ不動の布陣を敷く三洋洲本。市原での3連戦を終えてまだ1週間が経っていない。JFLの全日程を11月中に終えた高崎の方がこの戦いに向けての余裕はあっただろう。ただ、ここまでの移動の行程を含め、高崎に疲労がどれほどあるのかが気になっていた。試合開始から序盤は三洋洲本が試合のリズムを掴む。地元の応援を背にボールを回していった。

 
 最後尾でチームを支えるGK浅野。
 今季の総決算をまずは地元で見せたいところ。

 
 森川がボールを持ち込む。
 積極的に高崎陣内へ攻め込む三洋洲本。

 13分、稲垣が右からシュートを放って三洋洲本が先に試合を動かしていく。22分には友定が果敢にミドルシュートを放っていくが、まだゴールを狙える決定的な場面は作れない。高崎も前線の松尾、山藤といった選手たちがスピードを活かしてスペースを狙っていく。これをCBの太田を中心に粘り強く守っていく三洋洲本。この試合では特に守備的MFの村上がコンディションに冴えを見せ、自陣エリア付近でも相手からボールを奪う守備を見せていた。あとはエースの梅川やスピードのある廣瀬といったFW陣にいかにボールが良い形で入るか。三洋洲本は彼らFW陣が高崎DFのマークに苦しんでいた。

 
 攻撃時の展開に、守備にと奔走する村上。
 彼自身の動きは非常に良かったのだが・・・

 
 高崎は高い位置で川里の動きが目立つ。
 次第にペースは彼らのサッカーへ。

 
 高崎・吉田をマークする三洋洲本・友定。

 例え2試合あろうと、勝負のかかった試合。高崎は落ち着いていた。最終ラインからしっかりパスを繋ぎ、主将の岩間を中心に自分たちのペースで攻撃を組み立てる。徐々にCKからチャンスを得られるようになってくる。先制点はまさにその流れの中から生まれた。
 38分、神谷の左CKから一旦流れたボールを拾った松尾がDFを背負いながら、シュートと見せかけて小島へパス。ここに走り込んだ川里がシュートを決めて高崎が先制点を奪うことに成功する。

 
 
 
 
 高崎・川里の先制点の場面。
 1点を争う試合かと思われただけにこの1点は大きかった。

 前半、最低でもスコアレスで折り返したかった三洋洲本だが、少し先制点を献上して守備陣が集中を欠いた。44分にはボールを持った高崎・岩間がスルスルを上がっていき、狙い澄ましたシュート。決して威力は無かったが、確実にゴールへ収まった。高崎が追加点を奪って前半を2点リードで折り返す展開となった。

 
 
 プレッシャーを跳ね除ける2点目を岩間が決める。
 高崎にとって理想の展開で前半を終了。

 
 太田を中心に安定していたかに見えた三洋洲本の守備。
 前半、痛恨の2失点。

 しかし、前半2点のリードはまだどうなるか分からない。三洋洲本が地域決勝で収めた2試合の90分勝利はどれも逆転勝利。しかも、藤枝での1次ラウンドでは0-2から5-2と転じる大逆転劇を見せている。三洋洲本へ声援を送る観衆は皆諦めていなかっただろう。後半開始から廣瀬に代えて沈を投入し、流れを変えようとする。

 52分、高崎が大きなチャンスを迎える。CKからの展開、松尾のボレーシュートがわずかにGK浅野のセーブに遭う。しかし、この際に相手DFと交錯したプレーがファウルを取られ、2枚目の警告でまさかの退場処分。少し厳しい判定ながら、ツキは三洋洲本に傾いたかに見えた。

 
 村上とのセントラルコンビでリズムを作りたい成瀬。
 なかなか高崎の守備網を突破できない。

 60分には右CKからDF森田が豪快なジャンピングボレーを狙うなど、まずは1点を返すべく相手ゴールに迫りたい三洋洲本。ところが、完全に梅川が相手守備陣のマークに苦しみ、それを周囲の選手でもフォローしきれない。62分にMF井上をピッチへ送り込んでポゼッションを高めようとするが、相手ボールになると、良い形でボールを奪える場面が次第に減っていった。

 
 60分、森田がボレーで高崎ゴールに迫るも無得点。

 
 試合は後半高崎のペース。
 少し動きが硬かったか三洋洲本。

 高崎は64分、左サイドでボールを持った吉田が1人で持ち込んでチームの3点目となるシュートを決める。ほぼ、1戦目の勝負を決定づける3点目。アスパ五色にため息が漏れる。

 
 
 GKの飛び出しにも焦らず、3点目を決めた高崎・吉田。

 82分には、カウンターから途中交代の益子のパスを受けた吉田が再びゴールを狙うと、このシュートがクロスバーを直撃。あわや4点目を奪われるという場面を作られ、ほぼ運動量を失っていた三洋洲本相手に高崎が完勝して第1試合を終えることとなった。

 
 梅川は常時相手DFに囲まれる場面が多かった。
 第2戦、この厳しいマークをいかにかいくぐれるか。

 
 
 高崎の落ち着いた守備の前に沈黙してしまった三洋洲本。
 GKの岩舘を含め、JFL勢が一枚上手か・・・

 
 完勝してホーム・浜川への第2戦に繋げたアルテ高崎。
 遠距離移動の疲れをものともしない試合ぶり。

 
 680人の観衆が集まったとされるアスパ五色。
 勝てなかったが、三洋洲本への声援は大きなものだった。

 やはり、JFLの壁は高いのか。そう思わせてくれるスコアと内容で終わった試合だった。高崎はプレッシャーを跳ね除け、強かった。三洋洲本はもっとやれたと思うのだが、JFL公式サイトにある稲葉監督のコメントのように、どこか見えない緊張があったのだろう。厳しいマークも相まって、前線のパフォーマンス不足が顕著だった。第2戦に向けてしっかり切り替えて臨んで欲しい。日頃の関西リーグでは滅多に見られないが、アスパ五色をこれほどの雰囲気にした多くのサポーターの声援が彼らを叱咤、鼓舞した。たくさんの子供たちも駆けつけていた。関西から、淡路島から、全国リーグで戦うチーム誕生まで、この3点差をひっくり返す奇跡を来週末、関西の地より期待している。
 

金沢、初年度の航海を9位でフィニッシュ -SAGAWA VS 金沢-

2010年11月28日 | 脚で語るJFL
 JFLは遂に最終節の後期第17節を迎えて、今季の全日程を終了。佐川守山陸上競技場では、今季JFL初参戦となった9位・ツエーゲン金沢が2位・SAGAWA SHIGA FCに挑み、試合を先行されながらも2-2で引き分けて最初のJFLを一桁順位の9位で終えた。また、SAGAWA SHIGAは鳥取の優勝に次ぐ2位で全日程をフィニッシュ。チームから27得点で御給が自身2度目の得点王を獲得することとなった。この結果、18位の流通経済大FCが関東リーグへ降格、そして17位のアルテ高崎が地域決勝決勝ラウンド3位のチームとの入替戦に回ることが確実となった。

 

 昨年の高知・春野での1次ラウンド、そしてアルウィンでの決勝ラウンド、その末の津幡、刈谷での入替戦を戦い抜けてJFLの舞台へと昇格した金沢。あれから1年が経とうとしている現在、春野、そしてアルウィンと6試合を見届けた者としては、未だに今季の金沢をお目にかかる機会が無かったことが個人的に今年の心残りだった。数少ない関西でのアウェイ戦を補足したと思いきや、既にシーズン最終戦。加えて、一番のお目当てでもあった元日本代表FW久保は出場停止と残念だったが、そこには立派にJFLで戦っている金沢の選手たちとサポーターの姿があった。
 ここまで5連勝と絶好調の金沢。この試合で勝利すれば、他会場の結果によっては大きく順位のステップアップも狙えるところ。前期のSAGAWAとの試合は開幕早々に2-2という内容ということだけに、ここは何としてでも6連勝で終わりたい。チームを応援しようと遠く金沢から守山に駆けつけたサポーターの皆さんがメインスタンドの半分を大挙して手拍子と声を送る。明らかにチームの認知度と人気が高まっていることを示しているように思えた。

 試合は、前半からSAGAWAが先制点を果敢に狙いに来る。どこからでもチャンスメイクできる層の厚いタレント陣は金沢にとって脅威。特に奈良輪と濱田が組む右サイドと旗手と大沢が組む左サイド、どちらからでも繰り出されるサイド突破に金沢は前半劣勢を強いられた。そして12分には左サイドの大沢の豪快なサイドチェンジを右サイドで受けた奈良輪がそのままエリア右手から強烈なシュートを叩き込んでSAGAWAが先制点を奪い取る。

 
 SAGAWAは12分にこの大沢のサイドチェンジから…

 
 
 攻め上がっていた奈良輪がズドンと先制シュートをお見舞い。
 DFでルーキーながら今季3得点目。

 先制したSAGAWAの攻勢は緩まない。16分には旗手のFKから中村が絶妙のヘディングシュート。しかしわずかに決まらない。金沢はまずはこのSAAGWAの攻撃をしっかりブロックして、MF曽我部を中心に相手のDFラインの裏が手薄になるのを狙っていた。25分に、その曽我部が絶妙のスルーパスを出すと、古部が走り込んでシュートを決める。劣勢の中でもしっかり自分たちのチャンスをモノにする力を感じさせた場面だった。

 
 
 
 
 
 
 前がかりになったSAGAWAの最終ラインを曽我部と古部が狙っていた。
 渾身の同点弾で金沢、反撃開始。

 しかし、その金沢が昇りつめたJFLの厳しい戦いで、この4シーズン中2度も王者に輝いているSAGAWAはやはり一枚上手だった。全く失点のダメージを感じさせず、引き続き金沢ゴールを脅かす。27分には御給のヘッドをゴールラインギリギリで金沢の斉藤雄がクリアするなど、何とか金沢も集中した守りを披露し続ける。30分、SAGAWAは得点ランキングで一歩リードする御給が右サイドからの奈良輪のクロスに頭で合わせて追加点を奪ったのだった。

 
 やはり、この男「御給匠」を止めないと勝利は無い。
 金沢は諸江が密着マーク。

 
 しかしながら、いとも簡単に御給が頭で決める。
 今季の得点王を決定づける27得点目。

 41分に曽我部の直接FKがわずかにゴールのバーに当たって同点のチャンスを逸した金沢。1点のビハインドを背負って折り返した後半、林に代えてベテランの木村を投入。盛り返しにかかる。すると、徐々に試合は金沢ペースへ。山道と山根の守備的MFコンビがボールをハーフライン付近で奪えるようになってきた金沢は長谷部のドリブルを起点にシュートの機会が増えていく。58分には長谷部のクロス斎藤陽が頭で合わせてシュートするもSAGAWAのGK森田がかろうじてセーブ。その5分後には左サイドから攻め上がった長谷部が持ち込んでシュートを狙うものの、わずかにゴールポストに当たって決まらない。あとわずかで試合を振り出しに戻せるほどに金沢は好守が噛み合って、SAGAWAを凌ぎつつあった。

 
 攻守の起点になっていた金沢・MF長谷部。
 効果的なドリブルで相手もファウルで止めざるを得なかった。
  
 
 山道が中盤でしっかりと守備タスクを実践。
 ロングボール以外では最終ラインを楽にさせたのでは。

 
 攻撃時には得意のロングスローも見せる込山。
 昨季通しての諸江とのコンビは健在。

 サポーターの絶えることのない応援チャントを背に果敢に攻め続けた金沢。遂に流れを掴んで同点に持ち込む。80分に曽我部の右CKから斎藤陽が頭で合わせてゴールネットを揺らした。

 
 
 
 
 これが5連勝中の金沢の粘り強さか。
 思いを乗せたシュートはゴールへ。斎藤陽、歓喜の咆哮。

 一気に金沢へムードは傾いた。6連勝でJFL初年度を終えればそれは及第点以上。あと1点が奪えそうな流れだった。82分にGK大橋がSAGAWA中村のシュートをファインセーブで防いで最後尾からもチームを鼓舞。ラスト10分はスリリングな展開となった。
 85分には曽我部のFKからゴール前の混戦を込山が押し込んだと思いきや、ノーゴールの判定。最後まで走り切った両チーム、結局試合は2-2の引き分けに終わった。

 
 GK大橋もファインセーブを披露。
 金沢の追い上げに拍車をかけたが…

 
 2アシストの金沢・MF曽我部。
 チャンスはいつも彼から作り出されており、印象的だった。

 正直、このJFLへ上がるまでの金沢の道のりは苦しいものだった。初年度のJFL34試合を戦い終えた金沢にとっては、いささか遥か昔の話に思えるが、北信越リーグで結果が出せずに全社(準優勝)枠経由での地域決勝出場。春野での三洋洲本とのPK戦までもつれた激闘。そしてアルウィンでのPK戦・2試合勝利でなんとか掴んだ入替戦への切符。個人的には苦戦するだろうと思っていたが、予想外の健闘ぶりで、この試合でも堂々たる戦いぶりを披露。確実に昨季の苦戦の連続が今のチームの糧になっていることを実感した。初年度ながら一桁順位でのフィニッシュは大きな成果だろう。
 対して、SAGWAも今季は3試合を観戦したが、本当に毎年実力のある新卒選手を補強するなと感心させられる。特にこの試合躍動していた奈良輪、そして昨季の関西リーグDiv2で得点王に輝いた濱田など定位置を確保している若手の活躍は印象的。そして御給の帰還。不思議と外に出ると活躍できず、SAGAWAでは「キング」のように活躍できる彼の存在が際立っていた。優勝ならずとも、町田に競り勝って2位という順位は、序盤の13試合無敗ということを考えれば至極当然かもしれない。

 
 1年ぶりに見たツエーゲン金沢。
 順調にサポーターも増えている様子で、今後も注目。
 

布引でのパーフェクトゲーム -びわこVS鳥取-

2010年11月08日 | 脚で語るJFL
 JFLもシーズンがいよいよ大詰め。後期第14節を迎えて、今季の優勝と来季からのJ参入をほぼ手中に収めたガイナーレ鳥取が東近江・布引グリーンスタジアムでホームのMIOびわこ草津と対戦。しかし、新競技場のこけら落としを派手に祝ったびわこが5-0で圧勝。鳥取に付け入る隙を与えず完勝した。びわこは3連勝で3試合連続4点以上の荒稼ぎ。対して鳥取は優勝を決めてから2連敗となってしまった。ちなみに今節でJFLは12年目にして通算入場者数300万人を達成している。

 
 試合前に東近江市長のキックインが行われる。
 キャパこそ多くはないが非常に観戦しやすい競技場。

 滋賀県東近江市に10月16日に竣工したばかりの「布引グリーンスタジアム」。収用人員こそ多くはないが、そのこけら落としの試合(東近江ではJFLは初開催)ともあって、スタジアムには多くの観客が訪れていた(公式発表で1,441人)。1,860名を収用可能というメインスタンドはほぼ満杯。イベントが幾つか企画されていたこともあってか、子供たちの姿が目立つ光景。ここに王者・鳥取を迎えてホームゲームを行うびわこの運営面での努力が随所に見られる試合前だった。

 ただ、試合に関しては14位のびわこ、そして今季のJFL優勝を決め、来季のJ参入が見えている鳥取とでは実力の差が見えており、新競技場のこけら落としとしては興行面でも最高の相手だが、びわこがどれだけやれるのかが個人的には気になっていた。ところが、その思いは見事に杞憂に終わる。

 
 試合はMF安里を起点にびわこが試合を支配。
 試合を観る度に注目してしまうプレイヤー。

 前半から試合を圧倒したのはびわこだった。みるみるうちにシュートを量産、鳥取にペースを譲らない。12分にはびわこFW阪本の強烈なシュートを鳥取GK小針がかろうじてセーブ。21分、22分にも立て続けに決定機を作ったびわこ。MF安里がボールを散らすと、サイドから尾上、山田らが攻め上がり、中央からは伊藤、阪本といった選手たちがチャンスに絡んでいく。何よりも突出していたのはほとんど自陣に持ち込ませない高い位置でのプレスが効果的だったことだ。

 
 なかなかボールを運べない鳥取。
 それどころか自陣でピンチを迎える場面が何度も。

 36分に右サイドから山田が鳥取DF水本を振り切って中央へ折り返すと、逆サイドから攻め上がっていた尾上が決めてびわこが先制に成功。ここまでに何度も決定機を逸していたびわこはむしろ「ようやく」ともいえる得点。すると、彼らの“ゴールへの飢え”に火がついたのか、45分には尾上の左からのクロスを阪本が頭で決めて追加点を奪ったのだった。来季にはJリーグの舞台に羽ばたこうとする優勝チームを相手に理想的な展開。2-0でびわこはリードして前半を折り返した。
 対する鳥取は疲労が蓄積していたのか、ひたすらGK小針の健闘が目立った前半。つまりはほとんど自陣で防戦一方、時折MF美尾のドリブルで攻撃態勢のシフトできていたぐらいだ。今季初めて観る鳥取だったが、昨季の守山で観た息をもつかせぬ元気な鳥取はどこへやら。リーグ優勝とJ参入が見えたことによって燃え尽きたのかと思わせる前半45分だった。

 
 先制点を決めた尾上は2試合連続得点。
 ゴールラッシュのきっかけをつくる。

 
 37歳になっても依然そのプレーは衰えない。
 服部が停滞感漂うチームを鼓舞する。

 後半に入ると、鳥取はMF吉野に代えてMF小井手を投入。中盤からテコ入れを試みる。すると、前半に比べるとリズムも引き寄せられるようになったが、そこにはびわこの屈強な守備陣が立ちはだかった。びわこは特に安里とコンビを組んで中盤の底でプレーする浦島と最終ラインの主将・谷口が出色の出来だった。浦島は何度もインターセプトを連発し、谷口はその浦島と近い位置でハイプレスを怠らず、最終ラインの絶妙な調整で鳥取をオフサイドにかけていく。彼らのおかげで鳥取はFW梅田は全くといっていいほど仕事ができなかった。

 
 小井手を投入して後半から建て直そうとする鳥取。
 しかし、なかなかプラン通りにはいかない。

 
 鳥取FW梅田にびわこの浦島と谷口がプレス。
 この2人の活躍は本当に目立っていた。

 
 先制点をアシストしたびわこDF山田。
 機を見た飛び出しは鳥取にとって脅威になっていた。

 「なんかバラバラ…」「今年一番悪いんじゃないの、これ」といったような呟きが客席の鳥取サポーターからこぼれてくる。噛み合わない攻撃の歯車は更なる劣勢を強いられる展開で鳥取を襲う。62分に右サイドからの折り返しを伊藤がシュート。これは再三の好セーブを見せるGK小針の反応で防がれるが、この場面はこの後のゴールラッシュのフラグでもあった。74分、77分とびわこはMF伊藤が立て続けに2得点を決めて4-0と突き放す。前半から伊藤の動きは目立っていたが、後半に入るとエリア前で鳥取DFはほとんど彼を捕えられていなかった。87分には左CKからDF石澤が豪快に頭で決めてダメ押しの5点目。82分から鳥取はFW岡野を投入して一矢を報いようとしたが、時すでに遅し。びわこが5-0と大勝で試合を終えることとなった。

 
 鳥取のGK小針は終始大忙しの90分。
 何度かファインセーブはあったもののこの結果では…

 
 チームの3点目を決めたMF伊藤がアランとこのパフォーマンス。
 目の覚めるような2発で会場を盛り上げる。

 
 数々のチームを渡り歩いたDF喜多。
 時折ロングフィードを見せるものの、ほぼ守備に奔走。

 
 鳥取は岡野を投入するがカンフル剤にはならず。
 まさかここで岡野を見られるとは。感慨深い。

 2年前のJFL参戦初年度から、これまで何度もMIOびわこ草津の試合を観て来たが、未だに負けたところを見ていない。それどころかかなり内容的には良い試合ばかり。この布引の試合はこれまでの観戦試合で最もパーフェクトな試合だった。つまり、この試合を終えて現在13位という順位も全然自分の中では納得がいかない。とにかく新競技場のこけら落としに相応しい完全試合に詰めかけた観客も大いに沸いており、その証拠に試合後の選手サイン会には子供たちの長蛇の列。なんとも素敵な光景を見せてもらった。

 
 
 対して、サポーターの落胆ぶりが目立った鳥取の力無き大敗ぶりは少し心配。優勝を果たして力が抜けたこともあるかもしれないが、少しJ参入後も苦戦を強いられそうな気がする。確かに今季は他を寄せ付けない強さで優勝を決めたが、4点以上取っている試合はわずか2試合。1点差という試合を何とか制してきたという感が数字だけを見ていると読めてしまう。そういう意味では、びわこにJ参入を前にして強烈な餞別を頂いた形となった。

 

 

ガンズ、門番を撃破 -SAGAWA VS 松本山雅-

2010年10月05日 | 脚で語るJFL
 後期第11節を迎えたJFLは、来季のJ参入を目指すチームの戦いが佳境を迎えようとしている。首位を走る鳥取はこの日の高崎戦を1-0で勝利し、4位以内という条件を達成。同じ頃、佐川守山では6位・松本山雅がホームで無類の強さを誇る2位・SAGAWA SHIGAに挑戦。白熱の試合は松本山雅が見事な逆転劇で2-1と勝利。4位以内へ向けてラストスパートが始まった。

 

 前期の飯田での対戦では引き分けに終わったこの対戦カード。後期に入ってからの9試合で8試合負け知らずの松本山雅は4位以内へ浮上のために残り8試合はほぼ落とせない状態。たとえ相手が昨季の王者であろうと「勝利」しかチームにもサポーターにも見えていなかった。
 対するSAGAWAは、後期に入ってから長崎、鳥取に敗戦するなど、20試合で1敗しかしていなかった安定感に陰りが見え始めている。復帰後も順調に得点を叩き出す御給を軸に門番としての意地をしっかり見せたいところだ。
 この日は、これまでの守山ではあまりにも見かけないほどの盛況なスタンド。2,801人の入場者数を記録した。

 試合は前半から松本山雅が果敢に攻め込むものの、ボールを繋ぐ際にミスが少なく、スピードに長けたSAGAWAの前に苦戦の展開。前半は徐々にSAGAWAがペースを持ち直すと、36分に松本山雅が前がかりになったところをカウンター発動。最終ラインからMF濱田がボールを受けてドリブルすると、中村へパス。中村が相手DFを背負いながらも中央へ折り返すと、FW御給が待ってましたかと言わんばかりにシュートを突きつけた。

 
 FW小林にボールを集めて一気にゴールを陥れたい松本山雅。
 しかし、相手の守備の前にゴールが遠い前半。

 
 ルネス在籍時の昨季は関西リーグDiv2で得点王(22得点)。
 この試合でも先制点を演出した濱田。

 
 
 SAGAWAに御給あり。
 中村との息もピッタリの先制点。

 
 鐵戸と大西のコンビで左サイドを活性化。
 松本山雅は徐々に反撃の狼煙。

 スピードあるSAGAWAの攻撃の前に、ハイボールに強いGK石川を中心に松本山雅は失点を最小に食い止める。体を張った守備の前に大勢松本から駆けつけたサポーターの声援が選手を後押しする。1-0とSAGAWAが貫禄を見せつけて前半を折り返すと、後半もこの試合状況は大きく変わることはないのかなと思えた。

 ところが試合を終えての結果を見ると、驚くことにSAGAWAは後半1本もシュートを打てずに終わったのだった。それほど松本山雅の巻き返しは素晴らしかった。まずは後半開始5分に前半お手本のように食らったカウンターでしっぺ返しを披露。サイドバックの玉林がドリブルで一気に前線の小林に繋ぐと、小林がクロスをゴール前に放り込む。そこに弦巻がヘディングで合わせて松本山雅が同点に追いついた。これで追い風を得る松本山雅は幾度となく相手ゴールに迫る。前半はDF求衛を中心に数的不利な状況を作らなかったSAGAWAの守備陣が、運動量の落ちない鐵戸や大西らに翻弄されていく。

 
 50分、この玉林のドリブルから・・・

 
 小林に当てて、折り返しを弦巻がヘッドで決めて同点。
 松本山雅が一気に劣勢を盛り返す。

 
 前半から松本山雅の守備陣を攪乱したSAGAWA MF中村。
 後半は一段と増す相手のチェックに苦戦。

 
 山根とのコンビで中盤を統率するMF岡村。
 前半は再三シュートを狙うなどの積極性も見せた。

 サポーターの大声援もあって押せ押せ状態の松本山雅は、ラインを上げられないSAGAWAを尻目にパスを回す。80分に大西が右サイドからクロスを上げると、相手に捕まえられていなかった石田がヘッド。ワンバウンドしたボールはGK森田の頭上を越えてゴールに吸い込まれた。同時に守山のスタンドで巻き起こる歓声。この試合の流れからもまるでVゴールを決めて試合を決したかのような雰囲気をもたらした。

 
 東京Vから期限付き加入のDF飯田。
 多々良とのコンビ、落ち着いたプレーで勝利に貢献。

 
 
 80分に決勝点を決めたFW石田。
 SAGAWAはこの石田を捕まえきれず。

 
 鼻骨を骨折している須藤も気合いの途中出場。
 機を見たインターセプトでチームを牽引。

 強豪SAGAWAに華麗なる逆転勝利。しかも後半はシュートも含めての完封という内容に勢いを感じさせてくれた松本山雅。サポーターによると、ここまでのクラブの歴史の中でも非常に良い試合だったということ。確実に4位以内という目標へその歩みを確かに進めた彼らの前には、今後も強敵が立ちはだかる。武蔵野、Honda、印刷、町田とその顔ぶれは簡単に勝たせてくれなさそうだ。しかし、勝ち続けるしかない雷鳥のラストスパート。果たして1年でJの頂に辿り着けるのだろうか。

 
 着実に上位が見えてきた松本山雅。
 しかし、正念場はまだまだこれから。