脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

葵の御紋ここに輝けり -EC3回戦 G大阪vs水戸-

2011年11月17日 | 脚で語るガンバ大阪
 今季の天皇杯は3回戦が平日に行われ、その大半でJ1勢とJ2勢のマッチアップが見られた。万博ではJ2・水戸が昨年、一昨年の王者・G大阪に挑戦。J1で優勝争いを繰り広げるG大阪を延長の末に水戸が3-2で下した。G大阪はよもやの敗戦、例年J2勢に苦戦する3回戦でまさかの結果となった。

 

 かなり寒い気温となった万博。平日の天皇杯ということもあってか、観客は3,000人に満たない。スタンドを多くは空席だったが、双方のゴール裏はサポーターがボルテージを上げていく。G大阪は、佳境のJ1で首位・柏と3位・名古屋とのデッドヒートが熾烈を極めてきた。水戸はJ2で16位という順位ながら、実は直近10試合ではわずか2敗しかしていない。かなりリーグ後半戦になって調子をあげてきたものの、この日の相手はG大阪。大方の人たちが順当なG大阪の勝利を予想しただろう。自分も10月に京都戦(2-0で水戸が吉原と鈴木隆の得点で勝利)で水戸の好調ぶりを目にしたとはいえ、その一人だったのは間違いない。

 G大阪は、日本代表で遠藤がいない。DF陣は中央を中澤と若手の内田が組み、左右に藤春、加地。中盤に二川、佐々木と中央に武井と橋本が顔を揃えた。2トップはキム・スンヨンと平井だ。
 対する水戸は、先日のFC東京戦で主軸のロメロ・フランクが出場停止。鈴木と小池が前線でコンビを組み、右SBとしても出場機会の多い西岡がFC東京戦同様中盤の底に入った。小澤、村田といったあたりの中盤の選手が積極的に飛び出してくるのが印象的だったが、この日はG大阪相手に守勢に回るものだろうと予想した。

 試合は序盤からG大阪が攻めあぐねて低調ぶりを露見した。なかなかシュートの機会がないばかりか、水戸の鈴木隆を中心とする前線のチェイシングにかなり手を焼いた印象だ。16分に佐々木が強引にミドルを狙い、少しリズムを引き寄せるかと思ったが、19分には水戸・小澤がG大阪・中澤のミスを突いてシュートまで持ち込む。どうも守勢に回るのは水戸の役目ではなかったようだ。

 
 水戸・鈴木隆のプレッシャーに思わず加地が苦戦。

 
 前半から仕掛ける水戸。
 小澤がエリアまで持ち込んで守備陣を翻弄。

 28分には水戸・小澤が再びゴール前でシュート。これはわずかにバーを越えたが、その直後の29分には、右サイドのアーリークロスに島田がダイビングヘッドで飛び込む。シュートはミートしなかったが、決定的な場面が続き、G大阪にとっては冷や汗ものだった。35分にも水戸は左CKに加藤がヘッドで合わせる。これもわずかにゴール右に逸れてしまったが、この水戸の勢いは本物だった。

 
 右SBとボランチをこなす西岡。
 展開力のある彼は地元、関西大出身。

 
 
 鈴木隆の駆け引きの巧さは衰えず。
 中澤がセルフジャッジで足を止めたところを突破。

 しかしながら、G大阪は高い技術をゴールに直結する。40分に佐々木がロングパスを左に振ると、駆け上がったキム・スンヨンにピタリ。そのままキム・スンヨンが左45度からシュートを決めてG大阪が先制に成功する。さすがJ1の強豪と呼ぶに相応しい決定力。これでG大阪が一層攻勢を引き寄せるかと思えた。

 
 キム・スンヨンがこの先制シュート。

 
 G大阪で好調な動きを見せていたのは佐々木。
 先制点のロングパスはお見事。

 ところが後半に入ると、依然水戸が元気を取り戻す。前半からの勢いは途切れることがなかった。50分、G大阪・内田の処理ミスを奪った水戸・小澤がそのまま持ち込んでシュートを決め、同点に追いついた。これには失点自体は「いつものこと」と万博のスタンドから多くのサポーターがかこつける余裕があったのかもしれない。しかし、それは違った。

 
 
 水戸の同点の場面。
 小澤がミスを突いて持ち込み、落ち着いて決めた。

 65分、佐々木がドリブルから正確なミドルシュートを決めてG大阪が再び突き放す。佐々木は前半から1人気を吐いたプレーでG大阪を牽引していた。しかし、この得点で一気に勝負をつけられるほど水戸は甘くなかった。この直後にG大阪は二川と平井を下げ、明神と川西の投入。もちろん川西の投入は追加点を奪えという指揮官のメッセージではあったが、この佐々木の得点の直前に水戸・村田のシュートを藤ヶ谷がセーブしている間一髪の場面があり、得点が奪われながらも水戸の推進力は衰えてはいなかった。

 
 藤ヶ谷のこの場面でのファインセーブが報われず。

 
 橋本はまだコンディションが今一つに思える内容。

 70分に水戸は、小池がエリア右手の角度のないところからシュートを放つ。これはゴールを肉薄するに終わったが、続く75分、島田が右サイドからドリブルで切り込んでシュート。これで得たCKに鈴木隆が頭で合わせて再び試合を振り出しに戻した。

 
 水戸のディフェンスリーダー尾本。
 空中戦での存在感もあった。

 
 武井はボールを回そうと奮闘。遠藤の代役は酷か。

 83分、G大阪・内田がハイボールをかぶってしまうミスで、ボールは水戸・小池に。小池が藤ヶ谷と1対1になるがシュートはポスト直撃という危ない場面が。10度を下回るかなりの寒さに包まれた万博では多くの観客がこの展開に震え上がっていただろう。89分には藤春がオーバーラップから完璧な折り返しを中央へ放り込んだが、キム・スンヨンがこれを合わせられず90分のフルタイムを迎える。

 
 藤春は随所に持ち味を見せた。
 89分のクロスは惜しかった。

 試合は延長戦へ。しかし、100分に小池のシュートが決まって勝ち越したのは水戸。113分にG大阪は佐々木がエリア中央で絶好のシュートチャンスを噴かしてしまう。115分には佐々木のシュートから得たCKを明神がわずかに決められない。118分には川西が加地からのボールを頭で落として、フリーだった武井がシュートを放つがこれもわずかにゴール左に外れるなど、ここぞという場面で決められないG大阪。なんとこのまま試合はタイムアップ。見事4回戦に駒を進めたのは水戸という結果になった。

 
 
 118分の武井の決定的なシュート。
 これを決められなければ敗戦も致し方なし。

 G大阪の天皇杯3回戦敗戦は、天皇杯でJ1勢が2009年から2回戦より登場するようになったこともあり、この10年では初めてのこと。だが、この10年間で幾度となくこの天皇杯の序盤で苦戦は強いられてきたことも記憶に新しい。2005年には当時J2だった横浜FCに3-3からPK戦の末7-6で勝利を収め、2006年にはJ2・湘南に2-1とかろうじて勝利。2007年にはこれまた当時J2だった山形を相手に2-2からPK5-3というギリギリの試合で勝利している。初優勝を果たした2008年のシーズンも初戦の甲府(当時J2)に2-1、そして昨季の栃木戦も終了間際に勝ち越し点を奪って3-2という薄氷の勝利だった。ここまでJ2勢に苦戦を強いられている過去のデータは興味深い。ともあれ、これでG大阪の天皇杯は終戦。残り3戦のJ1に絞られた。勝負の行方ではまだクラブワールドカップへの出場権も残されている。この敗戦がいかに影響するかは未知だが。

 
 残りの負けられないリーグ戦に影響するか否か注目。

 対する水戸は「ジャイアントキリング」と呼ぶには失礼なほどの対等、それ以上の内容での勝利。J2・16位とはいえ、最近の好調ぶりが発揮されたようだ。特に印象に残ったのは前線の鈴木隆の献身的な守備。G大阪DFにも筆紙にスライディングを仕掛けてまでのボールの奪いっぷりは、G大阪の平井の淡白なプレーとはなんとも対照的。これに加えて、村田、小澤、小池らアタッカー陣が気を吐くプレーを見せていた。天皇杯、次の相手はFC東京。この万博でしかと見せつけた胸に輝く葵の御紋がもうひと輝きできるか非常に興味深い。万博にこだまする水戸サポーターの凱歌は試合が終わってもしばらく止むことはなかった。

 
 
 J2で面白いチームの1つとして間違いない水戸。
 負傷中の吉原も笑顔で古巣との試合を楽しめたはずだ。

三冠の夢潰える... -G大阪vs浦和-

2011年10月10日 | 脚で語るガンバ大阪
 Jリーグヤマザキナビスコカップは水曜に行われた準々決勝に続き、9日に準決勝2試合が行われ、埼玉スタジアムではG大阪と浦和が対戦。浦和が2-1でこの試合に競り勝ち決勝戦への切符を掴んだ。決勝戦は10月29日に名古屋に勝利した鹿島を相手に行われる。

 

 先週のリーグ戦で顔を合わせたばかりの2チーム。しかしながら、両者陣容は異なっており、G大阪に至っては遠藤、イ・グノを代表招集で欠く他、加地、明神を故障離脱で欠くという状況。それでも地力を発揮して水曜の磐田戦は逆転勝利してこの準決勝に駒を進めた。この日は、磐田戦で見事な逆転勝利へのアプローチを描いたアフォンソを先発で起用。中盤にも磐田戦に続いて佐々木を起用し、その穴を埋めようとした。
 対する浦和は、先週のG大阪の対戦時と違って、代表招集で原口を欠きながらも、エスクデロが前線で先発。加えて梅崎、鈴木、濱田が先発に名を揃えた。

 
 久々に足を運んだ埼玉スタジアム。
 しかしながら、ホームゴール裏以外は空席が目立った。

 試合が始まると、序盤から浦和のペース。エスクデロがキレのあるドリブルで自陣からボールを運びリズムを作る。開始6分に強烈なシュートを放つと、G大阪はこれをGK藤ヶ谷がかろうじてセーブ。立ち上がりからリーグの不調を吹き飛ばすほどの浦和の執念が伝わる攻勢だった。

 
 キレキレだった浦和・エスクデロ。
 2日の万博での試合では出番すらなかったのだが…

 
 中澤がデスポトビッチと競り合う。
 この雰囲気に一番燃える男は彼だったが…

 17分には浦和は梅崎がG大阪ゴールを強烈なシュートで強襲。これはバーの上だったが、エスクデロだけでなく先週は先発でなかったこの梅崎も真価を発揮するプレーぶりで浦和を牽引。21分には藤ヶ谷がエスクデロのシュートを弾いたところをこの梅崎が決めて浦和が先制に成功する。
 対するG大阪は驚くほど見せ場が作れない。よく水曜は磐田に勝てたなという沈黙ぶりで浦和の前にほとんどシュートまでという場面を作れない。挙句には38分に梅崎のシュートをエスクデロが触る形で追加点を決められる。前半だけでまさかの2失点。それどころかリーグ最多得点のチームがまさかのシュート0本で終わってしまう。そこで戦う2チームの姿は7日前のそれとは全く対照的な出来となっていた。

 
 マルシオ・リシャルデスは周囲を活かすプレー。
 相変わらず技巧派だ。

 
 この数試合、出色のパフォーマンスを見せていた二川。
 無念の途中交代…これには疑問。

 
 今季初の先発出場となったアフォンソだが、見せ場を作れず。

 0-2で後半へ折り返したG大阪は、後半の頭から高木に代えて大塚を投入。武井をボランチから右サイドバックへ移動させ、中盤をダイヤモンド型にしてリトライ。そのトップ下の位置に入った大塚が積極的にボールに絡んでリズムを引き寄せようとする。後半開始直後には中澤のヘッドが惜しくもゴール右隅へという場面が。しかし、点差は2点。1発勝負のこの試合をひっくり返すためには3点が必要。これが大きくのしかかる。57分にはエスクデロのシュートがG大阪ゴールを襲う。62分にもマルシオ・リシャルデスの折り返しに梅崎があわやゴールというシュートもポストに当たるという場面。後半も未だ浦和のペースで試合は進んだ。

 
 中澤がシュートを決められず、この悔しがり様。

 
 後半から出場した大塚。
 ボールキープの面で力を発揮。得点も。

 
 佐々木の裏を狙う飛び出しもほとんどハマらず…

 この展開に指揮官も焦りを隠せなかったのか、70分に二川に代えて平井を投入する不可思議な采配を執ると、80分にはアフォンソに代えて川西を投入。ラフィーニャ、川西、平井の3トップへ。敗色濃厚となったアディショナルタイムにラフィーニャのキープからボールを受けた大塚がシュートを決めるが時すでに遅し。1-2で浦和の前に12試合ぶりに敗戦を喫することになった。

 
 ラフィーニャもなかなかシュートまで持ち込めない。

 
 
 平井、川西を入れるFW投入策も勝利には繋がらなかった。

 
 試合終了。G大阪の三冠の夢は潰えた…

 リーグ戦で驚愕の得点力を発揮するG大阪もさすがに主力4人を抜いての連勝は厳しかった。それ以上に浦和のこの試合にかける執念を随所に感じた試合で、特にエスクデロや梅崎など先週の万博の試合で控えに甘んじていた選手の奮起が凄まじかった。G大阪も交代策に決定打がなかったのは痛い。強いて言えば、大塚が堂々たるプレーで得点まで生み出したのは収穫だろう。
 決勝は、浦和と鹿島という対戦カードになった。しかしながら、浦和のホームゲームとしての埼玉スタジアムに3年ぶりに足を運んだが、入場者数が23,879人というのは本当に寂しいものがあった。2階席はほとんどが空席。かつてはこのカードに6万近い入場者が入っていたことを考えると、今季の浦和のリーグ戦績は観客動員に大きく影響していることを実感する光景だった。例年に比べ、少し早く決勝が行われるナビスコカップ。降格回避へこの大会の優勝で弾みをつけたい浦和にとっては大きな勝利だっただろう。

4年ぶりのカップウィナーへ、まずは1勝 -NC QF G大阪vs磐田-

2011年10月05日 | 脚で語るガンバ大阪
 ACL出場組が揃って準々決勝を戦ったナビスコ杯。万博では磐田を迎えてG大阪が挑戦。試合は佐々木、ラフィーニャの得点などでG大阪が快勝。9日(日)に行われる準決勝に駒を進めた。今日の結果、準決勝では浦和と対戦することが決まった。

 

 雨の中の試合となったナビスコ杯準々決勝。この試合には日本代表、韓国代表とそれぞれの招集で遠藤、イ・グノが欠場。前線には平井が久々の先発出場となった。骨折で戦線離脱の加地の代役には高木が右サイドバックを務め、また、驚いたことに試合前のアップ中に明神が負傷して急遽橋本が先発に名を連ねるという異常事態。「飛車角抜き」とはまさにこのことで、暗雲立ち込める試合前となった。
 対する磐田は、代表招集の駒野以外はほぼ現状のベストメンバーという布陣。いつの間にか負傷していた金園もベンチに控えてきた。

 
 加地の代役を務めたのは高木。
 やはり推進力という点では厳しいか。

 
 磐田は昨季のカップ王者。
 今季も万博ではG大阪相手にドロー。

 試合は、昨季のカップウィナー・磐田の前に「飛車角抜き」のG大阪が前半から苦戦する。遠藤、明神の不在が響き、中盤でボールをしっかり捌ける、溜めが効く選手がいない。復帰2戦目の橋本もまだ本調子という訳にはいかず、突然の先発出場になかなか浮き足立っていた印象だ。すると、隙を突かれたG大阪は、7分にCKからの展開から小林のクロスを那須にヘッドであっさりと決められてしまった。

 
 急遽先発出場を果たした橋本。
 序盤こそ苦戦していた様子も、結果的には無難にフル出場。

 
 イ・グノの代役として先発を果たした平井。
 しかし、59分にアフォンソと交代。

 3日前の浦和戦を思い起こせば、攻撃は著しい迫力不足。いつもならばラフィーニャを追い越してイ・グノがフォローに来る場面がよく見られるが、この試合ではラフィーニャもかなりボールを受けるまでに苦労していたようで、ボールを持ってもなかなか出しどころがない。武井がミドルを狙うなどするが、シュート自体が思うように打てない。それどころか先制されてから如実に磐田に押し込まれ、山崎を中心にサイドをえぐられる。攻撃面での停滞感が守備面に負担をきたす前半だった。それでも38分に、好調の二川が強烈なミドルシュートをエリア手前左手から打っていく。徐々にエリア手前でミドルシュートを狙えるようになっていたG大阪は、43分に佐々木が狙い澄ましたシュートをゴール左隅に決めてなんとか前半のうちに同点に追いついた。

 
 磐田の先制点を決めたのは那須。
 今季はG大阪相手に2得点。

 
 二川はこの試合でも輝きを放つ。
 ミドルはもちろんのこと、後半アフォンソへ見せたパスは圧巻。

 
 下平はFKを蹴りにいくなど積極性が目立った。

 それでも時折ベンチを見ると、指揮官は納得いかない様子で、被っているキャップを叩きつけたりする仕草も。なんとか前半のうちに試合を振り出しに戻したとはいえ、この攻撃面での停滞感を危惧したのか、59分に平井を諦めてアフォンソを投入する。すると、この采配が見事に当たった。
 アフォンソが入ってから前線で出しどころに困っていたラフィーニャが水を得た魚の如く調子を上げる。共にブラジルコンビで息の合ったプレーで磐田陣内を崩しにかかると、67分にはそのアフォンソからの見事なスルーパスが通って、ラフィーニャが逆転弾となるシュートを決めた。

 
 閉塞感を打ち破ったジョーカーはアフォンソ。
 常に飛び出しとラフィーニャを意識して勝利に貢献。

 
 67分に逆転ゴールを決めたラフィーニャがアフォンソとダンス。
 このコンビ、残り試合の切り札となるだろう。

 
 磐田のGK川口はベテランの風格。落ち着いている。

 明らかに磐田の運動量とマークの甘さが目立ってきた後半。76分には相手のオウンゴールもあって3点目を奪う理想の展開。前半の戦いとは打って変わっていつもG大阪の攻撃力が息を吹き返していた。磐田も金園を投入するなどシフトチェンジを試みたが失敗に終わる。

 
 76分、オウンゴールの場面で仲間に祝福される中澤。
 しかし、「俺じゃない!」と叫んでいたとか(笑)。

 
 中澤の熱さはチームに伝播する。頼もしい男。

 
 G大阪は佐々木(左)の活躍が目立った。

 結果、終わってみれば3-1の勝利でG大阪が準決勝進出決定。終盤には今季出場機会が無かった星原をピッチに送り込む余裕すら見せた。遠藤、イ・グノ、加地、明神までもが不在ながら、前半の軌道修正できたことは大きな収穫ではないだろうか。是非ともシーズンの残り試合でアフォンソ‐ラフィーニャのユニットをここぞという時に使って欲しいと思わせてくれる流れの引き寄せ方だった。この日は平日、雨という条件も重なり、入場者は4,112名と少なかったのは残念だが、これで週末は先日の再戦、敵地・埼玉スタジアムでの浦和戦という準決勝カードが決定。アウェイ席だけでこれぐらいの人数が駆けつけ、決勝進出へ向けた大きな声援を見せてくれるような熱戦を期待する。

 
 4年ぶりのカップウィナーへあと2戦。
 浦和とのセミファイナルは盛り上がりそう。

J20年の矜持 -G大阪vs浦和-

2011年10月04日 | 脚で語るガンバ大阪
 首位を走るG大阪にそれを勝点1ポイント差で追う2位・名古屋と3位・柏、そして4位・横浜FMあたりまでの4強が優勝争いを繰り広げるJ1。第28節を迎えていよいよ佳境、万博ではG大阪の20周年記念試合を兼ねて14位・浦和との試合が行われ、1-0でG大阪が勝利した。これでG大阪は浦和戦公式戦11試合無敗(8勝3分)。加えて1993年のJリーグ開幕戦の初勝利から足掛け19年目にして300勝を達成。150勝の際も含めてそのいずれも浦和戦。記録の面でもその相性の良さを窺わせる20周年記念試合となった。

 

 試合前には20周年記念のイベントとしてG大阪歴代ベストイレブンの投票結果が発表されていた。西京極から阪急とモノレールを乗り継いで約50分ほどで駆けつけると、既にシジクレイのインタビューが行われており、結果の発表中。結果的に、GK藤ヶ谷 DF加地、シジクレイ、宮本、山口 MF橋本、明神、遠藤、二川 FWアラウージョ、エムボマという内容だった。やはり2005年のリーグ優勝時のメンバーが人気、実績ともに圧倒的な支持率。それを考えると、低迷期のG大阪を支えた稲本(現川崎)のアーセナル移籍がもう10年前の話だということにも気付く。リーグ優勝以来、新規のファンが増えたなという印象で、メインスタンドは特にその印象が著しい(アラウージョのビデオレターの際に反応が薄かったのは寂しかったが…)。しかしながら、当日のマッチデイプログラムには礒貝や本並、木場、實好に永島という懐かしい顔ぶれも登場していた。20年という歴史の重みをしみじみと感じる(ちなみにG大阪の全身である松下電器サッカー部は奈良県リーグからのスタート)。続いて、キックオフ前にはヘリコプターによる試合球の投下など非常に手の込んだ企画でスタジアムは盛り上がる。もっとも、スタジアムDJの仙石氏のカウントダウンとヘリコプターの呼吸が一切合わず、何度もヘリコプターが行っては帰って来てという流れには笑ってしまったが、何よりそのアクシデントに間髪入れず「やり直せ」コールの大合唱を始める浦和サポーターの秀逸なブーイングも含めて、2000年代のJリーグを牽引してきた両者がこういう形で対戦できるのは感慨深い。思えば、1993年5月16日のJリーグ開幕戦もこの対戦カード。個人的にJリーグを初観戦したのも1993年ニコスシリーズ第3節の浦和戦だった。という訳で非常にこの試合は楽しみでもあった。

 
 20周年記念ベストイレブン。
 エムボマのランクインは時代を感じる。

 
 シジクレイが試合前にインタビューに応える。
 試合キックオフ時にはキックインも。

 
 
 ヒヤヒヤしたヘリからの試合球投下。
 確かにスタジアムDJとの呼吸を合わせるだけでも大変(笑)

 肝心の試合の方は、前回対戦時には1-1の引き分けだったこともあって、両者ライバル意識も相まって激しい試合になったことは確かだ。G大阪はこの試合に合わせて下平が左サイドバックに復帰。そしてセンターバックにはこれまでの高木ではなく中澤が戻ってくるなど、前節・甲府戦の敗戦を意識したメンバーチェンジでほぼ現状のベストメンバーといえる内容。何よりも昨季からの負傷で長らく戦列を離れていた橋本のベンチ入りがトピックスだった。
 対する浦和は、なんとここまで直近8試合で1勝3分5敗という厳しい戦績。今季は序盤に3連敗を喫した後で14試合でわずか1敗と負けてはいなかったが、9試合の引き分けとほとんど勝利には至っていない。ここに来てまた直近6試合では未勝利と不調に喘いでおり、柱谷GMの解任などチームは揺れている真っ只中といえるだろう。何より試合前の時点で降格圏内の16位・甲府との勝点差がわずか2ポイントという状況だった。3試合連続無得点という状況を打開すべく、この試合ではエスクデロではなく途中加入のデスポトビッチが先発に名を連ねた。

 
 下平、中澤がカムバック。
 優勝争い真っ只中で連敗は許されない。

 これまでの系譜からしても、1点を争う試合になるだろうと予感したが、予想以上にこれまでの浦和戦と比べても力の差が歴然という内容。圧倒できるリードこそ作れなかったが、前半のうちに先制できたのはG大阪にとって大きかった。28分に驚愕のロングパスが遠藤から出され、これに走り込んだイ・グノが流し込んで先制点を奪う。

 
 
 
 圧巻の遠藤のパスからフィニッシュはイ・グノ。
 相変わらず決定力の高さを見せてくれる。

 
 山口と組んだのは中澤。
 やはり信頼感と安定感では高木にリード。

 前半からG大阪が浦和を圧倒。得点こそ1点に留まったものの、浦和にチャンスをほとんど作らせず後半へ。すると、浦和は野田に代えて山田暢を投入。64分には梅崎を小島に代えて投入してくるなど浦和も成せる術を使って攻勢に転じようとする。しかし、後半も依然変わらずG大阪のペースは変わらない。その攻勢にラフィーニャが再三チャンスをフイにする場面が相次ぎ、溜め息が漏れる。彼さえフィニッシュでミスが無ければもっと大差がついていたゲームだった。結果、1-0でG大阪が勝利をもぎ取る。これで浦和戦は11戦無敗ということになった(8勝3分)。

 
 浦和は、司令塔・柏木がドリブルで切り開こうとする。

 
 原口も自由に持たせれば怖い選手。
 しかし、その自由を与えられなかった。

 
 試合ごとに成長が感じられる武井。
 バックアップメンバーを返上する今季の活躍。

 
 
 ああ...ラフィーニャらしくないシュート場面のミスが相次ぐ。

 この試合、先制点の場面で度肝抜かれるロングパスを通した遠藤もさることながら、二川の存在感が凄まじかった。ボールを簡単に取られないキープ力、パスコースを瞬時に見出す視野の広さ、また、そこにパスを出せる技術と随所で二川らしさを披露。アディショナルタイムにベンチに下がるまで約90分間その存在感を見せつけてくれた。
 また、アディショナルタイム直前には負傷で長らく戦列を離れていた橋本が今季初出場。万感の拍手でピッチに送られる。入っていきなり左からの折り返しをダイレクトシュートという場面があったが、これはミートせず。優勝を狙うG大阪にとって心強い頭脳派が戻ってきた。

 
 二川は今季も衰え知らず。
 30歳を迎えた今季、さらに円熟味を増すプレー。

 
 大きな拍手と声援で迎えられた橋本。
 20周年記念試合ということで采配も粋だ。

 ところが残り6試合というところでこの試合で足を痛めた加地が骨折と診断される事態に。この試合でようやく下平が左サイドバックに戻ってきたにも関わらず、再びサイドバックの人材不足に泣くことに。これは何気に痛い。果たして代役は誰が務めるだろうか...と考えを巡らせるところにG大阪の悩ましい一面がある。次節は3位につけG大阪を4ポイント差で追いかける名古屋とアウェイで対戦。ここに競り勝ち、柏とのデッドヒートを制することができるか。6年ぶりの優勝は確実に意識できるところまで迫っている。

 
 
 ラフィーニャが途中加入にも関わらず、この2人で20得点。
 この2人の決定力にかかっている。
 
 

沈黙、混沌の幕開け -G大阪vs甲府-

2011年09月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1の首位を走るG大阪は、ホーム万博で第27節を甲府と対戦。前回対戦では3-4で競り負けた相手だったが、この日はホームで今季初となる無失点で0-2と敗戦。今季4敗目は12試合ぶりの敗戦で、優勝争いを続ける中で非常に痛い1敗となった。対する甲府は前節の福岡戦に続き今季初の連勝。

 

 4連勝で迎えた前節・横浜FM戦をドローで終え、リーグ優勝へ粘りの戦いが続くG大阪。2位につける柏とは勝点差が1ポイント。おそらく今季のJ1優勝はその2チームと3位・横浜FM、そして4位の名古屋に絞られるはず。直接対決を残すのは名古屋だけということで、勝点が切迫している他チームの勝敗に大いに左右される展開。前回対戦時に撃ち合いで敗れた相手でありながら、甲府の現在の順位は16位と降格圏内だけに、ここは負けられないところだ。G大阪は、前節先発だった武井に代えてキム・スンヨンが先発に名を連ねる。左SBにはルーキーの藤春が4試合連続の先発。対する甲府はこのタイミングでダニエルが出場停止から帰還。市川がベンチへ入り、先発には吉田が名を連ねる。佐久間監督に代わってから片桐がハーフナーの後ろにトップ下として配置するようになったようだ。パウリーニョも含めてテクニックのある選手は多い。

 
 
 2万人近くが入った万博。
 この試合展開は一体どれほどの人が予想できただろうか。

 それでもG大阪は、途中加入したラフィーニャとシーズン開幕から活躍するイ・グノのコンビがここまで19得点挙げており、失点数は多いものの負ける気がしないのも本音。相手が16位ともあって、撃ち合いは予想できてもこの展開は予想できなかっただろう。前半終了時点でメインスタンドには席を立つ人が見られたほど。それほどこの試合のG大阪の攻撃は「非日常」的な退屈なものとなってしまった。
 両チームミスが少ないわけではなかったが、G大阪はゴール前へボールを進めるものの落ち着かない。カウンター時にシフトアップするG大阪の攻撃に対して、井澤、山本のボランチコンビ、そして吉田、内山の両サイドバックがしっかり寄せてくる甲府。中央には屈強なダニエルが186㎝を誇る長身でハイボールを跳ね返す。G大阪のくさびに対して3人も4人も詰め寄るこの素早いプレスの意識は徐々にG大阪にこれまでなかった焦りをもたらす。

 
 甲府の守備の厚さを崩せず。
 ラフィーニャも得意の形を作れない。

 
 甲府の守備の要として立ちはだかったダニエル。
 幾度となくチャンスボールを潰し続けた。

 甲府は、30分に片桐のライナー性のクロスボールをハーフナーが合わせ損じたところを柏がシュート。これはG大阪が藤ヶ谷のセーブで切り抜けるが非常に危なかった。元来、守備がスペシャルなチームではない。守備だけでいえば、26試合で42失点という数字はミドルクラス以下。これまで圧倒的なその得点力でここをごまかしてきたチームにとって得点が奪えなければ必然的にこういう場面が巡ってくるのは当然だ。34分には二川が渾身のドリブル突破から折り返し、キム・スンヨンが合わせるが、ギリギリのところで甲府のDFに体を入れられた。

 0-0で迎えた後半、分水嶺となったのは61分の交代の場面だった。G大阪は藤春、キム・スンヨンに代えて佐々木、武井を投入。なんと最終ラインを加地、山口、高木の3バックにシフト。すると、その1分後に中盤からバランスの崩れたG大阪のあたふたぶりを尻目に甲府・パウリーニョがドリブルで突進。エリア前から得意の左足でミドルシュートを決めた。相手DFの板挟みになったラフィーニャがボールを奪われた後に見事なまでのダイレクトパスの連続から一気にパウリーニョに繋がれる。甲府の集中力が発揮された瞬間だった。

 
 パウリーニョと対峙する山口。
 しかし、先制点の場面は完全にパウリーニョの勝利。

 
 
 ほとんどの場面で相手DFの素早い寄せに孤立を強いられる。
 ラフィーニャはG大阪加入後最も苦しんだのでは…

 1点を追いかける展開になったG大阪。ラフィーニャには良い形でボールが入らず、彼がシュートまで持ち込む場面も作れない。イ・グノが突破してもダニエルを中心に甲府の最終ラインが身を挺してこれを止めにかかった。後半のG大阪は前半からたった3本しかシュートを上積みできず。自ら3バックにしてしまった直後の混乱から奪われた1点の重みに苦しむばかりか、試合終了間際には、前がかりになったところをカウンターで簡単に裏に出され、安易な守備を見せた明神をかわしたハーフナーにダメ押しの2点目を決められて試合を終えることになった。

 
 
 
 
 アディショナルタイムのハーフナーの得点。
 日本代表クラスにあまりにイージーな守備で対応してしまった。

 痛い1敗。前節の横浜FM戦の引き分けも帳消し以上に思える取りこぼし。ここまで閉塞感の漂い続けた攻撃はG大阪らしくなく、元来持ち合わせていた守備面での脆弱性を改めて見せるだけとなってしまった。なんとかチームを動かそうとした61分の交代と布陣変更だったが、全体的に勝負を焦っていたと感じる。とはいえ、甲府の守備の高い集中力とタスク実行力の賜物。彼らは決して無理をせず、ほとんど数的不利の場面を作らせなかった。G大阪にとっても今季初の完封負けということだったが、甲府にとっても15節・鹿島戦以来の完封勝利ということで、残留に向けた強い意志を確かに感じる勝負に徹した試合運びだった。
 甲府に敗れて以来、2ヶ月ぶりの敗戦も甲府の前に。次節は20周年を飾るイベントを兼ねたホームでの浦和戦。残りのリーグ戦は7試合。明日、2位の柏が勝利すれば逆転で首位に浮上する。このG大阪を1差で追いかける名古屋、そして3差で追う横浜FM。今季も最後までJ1の優勝争いは混沌となりそうだ。

 
 どうも遠藤に元気がない様子だった。
 やはり、G大阪の浮沈は彼次第か…

監督も跳んだ、首位決戦を制す -G大阪vs柏-

2011年08月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1第23節は前節から中3日、万博では土曜に川崎を6-3で下して首位に立ったG大阪が同勝点で並ぶ2位・柏を迎えて対戦。後半に大塚、平井の得点で2-0と勝利した。これで柏には勝点3ポイント差をつけ、名古屋、横浜FMも勝点差1ポイント離して単独首位となった。

 

 
 ゴール裏主力団体「太陽工務店」が解散となった柏サポーター。
 しかしながら、平日の万博には多くのサポーターが詰めかけた。

 G大阪は、前節ベンチスタートだった明神が2試合ぶりの先発出場。警告累積で出場停止の加地に代わって右サイドバックを武井が務める。個人的に注目だったのは、初めて見ることになるラフィーニャ。G大阪加入後6試合で7得点。草津からの完全移籍も決まった新エースとイ・グノの強烈な2トップだ。アウェイで甲府に負けて以来、8試合で5勝3分と絶好調。失点数も41と首位とは思えぬ豪快なものだが、それ以上にアドリアーノという主砲が抜けながらもラフィーニャを補完して、総得点55得点とリーグでも突出した数字を誇っている。まるでリーグ優勝を果たした2005年シーズンを彷彿とさせる夏場の強さは今日も続くのか。8月4度あった万博での試合もこれが最後。万博はそのG大阪の豪快なサッカーを平日ながら12,635人もの観客が見守った。
 対する柏は、前々節の磐田戦に1-6と衝撃的な大敗。前節こそ3-2と福岡を振り切ったが、どうも負ける時の大量失点が目立っている様子。それでも得点力は主砲のレアンドロ・ドミンゲス(ここまで10得点)を筆頭にリーグ3位を誇るだけに、この試合はノーガードの派手な撃ち合いになるかと思えた(前回対戦時は4-2でG大阪の勝利)。

 試合は立ち上がりから、両チームチャンスを作った。G大阪は山口がミスを連発。まずは、2分に山口のクリアミスを相手に拾われると、茨田が右サイドを走り込んだ酒井に回され、レアンドロ・ドミンゲスめがけてのグラウンダー気味の折り返しを食らう。GK藤ヶ谷が処理するが、ニアをカバーしていた山口がこれもクリアミスしてスルーしてしまったところは非常に気になった。6分には遠藤がFKをバーに当ててG大阪が惜しいチャンスを逃す。点の取り合いになるかと思われた試合は、この後膠着した前半戦となった。20分には柏・橋本のシュートを藤ヶ谷がナイスセーブ。23分にはG大阪が左サイドのゴールライン際からラフィーニャが相手DFに倒されながらも粘って折り返す。イ・グノのシュートはGK正面だったが、この場面で倒れながらも鋭い折り返しを見せたラフィーニャの体の強さは素晴らしかった。30分にはG大阪にビッグチャンス。武井の右からの折り返しをキム・スンヨンがフリーでボールを受けたが左足でのシュートは力なく得点にならない。39分にはレアンドロ・ドミンゲスが橋本のパスにミドルシュートを放つ。両チーム決定機を作るも、あと一歩でゴールがこじ開けられない前半だった。

 
 ジョルジュ・ワグネルを阻む武井。

 
 立ち上がりの山口のミスの多さはG大阪にとって一抹の不安。

 
 
 30分、キム・スンヨンの決定機。
 武井の折り返しをミートできず…

 
 アン・ヨンハッと競り合うイ・グノ。
 イ・グノは前半でベンチに下がることに。

 後半開始と共にG大阪はイ・グノを下げて平井を投入。立ち上がりに柏がレアンドロ・ドミンゲスのシュートで勢いに乗ると、何度も左サイドを起点にG大阪陣内へ攻め込む。ここでリズムを変えるべく、G大阪は53分にキム・スンヨンに代えて大塚をピッチへ。正直なところ、後半に入って明らかに精彩を欠くキム・スンヨンのプレーにベンチの西野監督もおかんむりのリアクション。これは早々に交代があるなと思っていれば、代役は大塚でかなり期待感の持てるカードの切り方だった。51分に攻め上がった下平が左サイドから強烈なシュートで柏ゴールを強襲すると、このクリアボールを拾った遠藤が折り返して、最後は二川の右からのクロスに山口が飛び込んでヘディングシュートを放つ。明らかに大塚の投入で左から下平とリズムを作れるようになってきた後半、ゴールへのイメージはかなり見えてくるものの、なかなか待望の先制点とまではいかない。58分には遠藤のスルーパスに抜け出した平井がGKとの1対1を決められず、スタンドからは大きなため息が漏れる。

 
 58分、このチャンスを平井が決められない。

 
 大塚は最初ミスこそあったが、ミドルシュートでチャンスメイク。

 61分には、下平のフィードに走り込んだラフィーニャがゴールを陥れたが、ここは微妙だったがオフサイドの判定。しかし、徐々にライン裏に効果的なパスが出てくるようになるG大阪。63分には、ショートコーナーからボールを受けた大塚がゴールを狙い澄ましたミドルシュートで牽制。大塚は完全にこれで試合のリズムに入り込み、直後には自身を中心としたダイレクトパスの連続で平井のチャンスを作るなど明らかにプレーの精度が研磨された。69分には、この大塚の右からのクロスを平井がボレーで狙うも枠にはいかない。まるで西野監督のため息がこちらまで聞こえてきそうな展開。試合は、G大阪にしては珍しく0-0という展開も…と頭が過ったが、81分に高木がエリア左で相手DFのクリアボールを拾うと、これをエリア手前で受けた大塚がシュート。なんと柏DFの頭に当たったボールはそのままゴールに吸い込まれた。

 
 
 オウンゴールとも取れるラッキーな先制点は大塚の得点に。
 誰よりも喜びを体で表したのが西野監督だった。

 思いがけない形で先制点を奪ったG大阪は、この直前にアフォンソを投入していた。この大塚の得点が生まれた直後に彼が魅せてくれる。82分、カウンターでドリブル突進するアフォンソに柏・DF近藤が一度は体で競り勝ちボールを奪うも、ゴールライン際でそのボールを強引に奪ったアフォンソは、そのままフリーの平井に折り返す。さすがにこれはシュートを打つだけ。Gkに弾かれながらもボールはゴールへ。一局集中、G大阪が途中出場トリオの活躍で一気に2点のリードを獲得した。

 
 
 
 
 一度はボールを取られたアフォンソがライン際で粘った。
 お見事アフォンソ、ごっつぁん平井。

 結局この2点を守り切ってG大阪が首位決戦を制した。結果的に見事なまでの監督采配。途中出場の大塚、アフォンソは運動量の落ち込む柏を蹂躙する予想以上の活躍を見せた。特にこの2人は今季ほとんどプレーを見たことがなかっただけに、衝撃度もそれ相応。改めてG大阪の選手層の厚さとその質を見せつけた試合になった。しかも今季2度目の完封試合という貴重なおまけ付きだ。また、この日が初見だったラフィーニャに関しても、得点こそなかったが迫力十分。特に中盤まで下がって守備に勤しんだり、最後の最後まで諦めないプレー姿勢がフォアザチームを感じさせる。体幹が強いのか対人面で予想以上にフィジカルが強く、かつこれだけ得点が取れるのだから、下手すれば史上最速で恒例の中東行きを果たすのではないだろうか(冗談として)。それほどまでに良い選手だった。
 柏は、前半こそ首位に立っていた強さを見せたが、カードを仕掛けてくるのが遅かったかもしれない。それでも隙あればシュートを狙うジョルジュ・ワグネル、シュートセンスと速さを見せるレアンドロ・ドミンゲスと実力のある外国人選手が揃っているだけに、失点が増えてきているのが懸念事項かもしれない。久々に見たパク・ドンヒョクとラフィーニャのマッチアップは迫力があった。

 
 古巣相手に見事な采配、西野監督。

 
 中継で見るよりも迫力十分、ラフィーニャ。
 今からあといくつ得点を量産するのか。

 失点は最下位レベルながら、その失点さえも許さず、その強さを見せたG大阪。得意の夏場所は終わりを告げるが、どこまで無敗試合を続けられるか。

異様な戦績 -G大阪vs磐田-

2011年07月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1の延期分第6節、G大阪はホーム・万博に磐田を迎えて対戦。前節アウェイで甲府に3-4と撃ち合いに敗れて6試合無敗だったところに水を差された格好となったG大阪だが、何よりもクローズアップされるのはその「失点力」。ホームで初の完封勝利といきたかったところだが、2度のリードを守れず、2-2で引き分けに終わり、これで今季の失点試合は「16」となった。

 

 7試合ぶりの敗戦となった甲府戦、2点を先行しながらの4失点。改めてG大阪の「失点の多さ」を感じさせた。その数は31失点とリーグワースト2位タイ。ここまで失点が多くても相手を撃ち合いの末に振り切るのがG大阪だが、アドリアーノに加えて宇佐美もいよいよバイエルン移籍のため退団。ただでさえ攻撃力は大幅にダウンを強いられるここからの戦い。体調不良と言われながらも2列目で先発を務めた遠藤を軸に、前線は平井とイ・グノがコンビを組む。
 対する磐田は、ここまで2人揃って14得点という前田(8得点)、ルーキー金園(6得点)というリーグ屈指の2トップを揃え、直近5試合で1敗しかしていない好調さが目立つ。G大阪との勝点差は3ポイント。もちろんしっかり勝ってその差を詰めるのは狙いだろう。

 
 少し気になるバックスタンドの空席。

 先制点は7分、G大阪が遠藤のCKから山口がファーで体で押し込む。幸先の良い序盤。しかし、1点のリードでは全く安心できないのがG大阪のゲーム。案の定、磐田に攻め込まれる時には相手DFラインを攪乱する金園の動きにうまく釣られ、山田のドリブルを中心に深い位置ボールを運ばれる。ここまで6得点と大卒ルーキーにしては及第点以上の活躍を見せている金園は、前田に遠慮することなく積極的にゴールを狙っていた。

 
 
 
 
 遠藤-山口のホットラインで先制したG大阪。
 だが、このリードを守ることが肝心。

 33分、磐田が自陣からのFKを一気にG大阪のペナルティエリア手前までフィードすると、前田がこれを競り合いながらも胸で落とし、ボールを受けた山本康のパスを後ろから走り込んだ金園がシュート。ボールはバーを直撃し、あわやという場面だったが、フィードの場面から金園が山口を上手く釣り出しており、その後の彼を全く捕まえられていない場面だった。早くも追いつかれる予兆が見えた場面だった。
 この前半終盤は完全に磐田のペース。すると、37分には磐田陣内での加地と武井のパス交換を奪われて、一気に左サイドでフリーになっていた山田にロングパスを出されると、これを山田が落ち着いて中央へ。GK藤ヶ谷が飛び出すかなと思えた場面だったが、これを金園が易々と走り込んで押し込んだ。G大阪はまたもや無失点ならず。明らかに磐田を調子づかせて前半45分を1-1で終えることになった。

 
 磐田の山田は明大から今季加入のルーキー。
 それにしても伸び伸びとしたプレーで1得点1アシスト。

 
 
 
 金園のこの同点弾。
 10日前には金鳥でのC大阪戦でも得点。
 さすがに大阪には強い!?

 シュートでは磐田を上回っているG大阪だったが、明らかに相手にペースを献上する嫌な展開。それを断ち切るべく早々に平井を諦めて後半開始から川西を投入する。49分に早速左足でミドルシュートの見せ場を作ってくれた。55分、藤ヶ谷のキックに競り合ったところを磐田にボールを取られるが、遠藤の素早いプレッシャーで相手選手が軽率なパスミス。これが一気にイ・グノの下に渡り、相手ラインをそのままでスピードでぶっちぎると、左足でゴール右隅に流し込んだ。古巣との試合ともあって喜びは控えめだったが、アドリアーノ、宇佐美を欠いた今、確実に計算できるFWは彼しかいないことを窺わせた。

 
 
 
 
 イ・グノは相手のミスからきっちり決める。
 彼の活躍が攻撃の拠りどころ。

 ただ、このまま終われない悩ましいG大阪。G大阪が2-1とした後に、磐田は山本康に代えてジウシーニョを入れてくると、完全に流れは磐田に傾く。70分にはそのジウシーニョから右サイドの駒野へとサイドチェンジで揺さぶられると、その駒野から横パスを受けた山田にペナルティアークからミドルシュートを叩き込まれて2-2の同点に追いつかれるのであった。

 
 
 武井のこのプレーに川口が激高する場面も。

 試合はこのまま最後まで磐田のリズムに支配されたまま2-2の引き分けで終了。85分には山田の強烈なシュートがこれまたバーを叩いており、3-2と逆転されていてもおかしくはなかった。後味としては磐田に価値の見出せる試合内容だっただろう。とにかく山田と金園という2人のルーキーを全く捕まえられなかった。2点を返された後に時間は十分あったものの、G大阪はここを絶対的に引き離せるチームではなくなってしまっている。順位こそ5位ながら、38得点33失点という異様な戦績が今季のG大阪の異常ぶりを物語っているだろう。リーグトップの総得点とリーグワースト2位タイの総失点が同居しているのだ。これら絶対的な得点力をフォローしきれない守備面の衰えぶりに加えて、この日はバックスタンドの空席も気になった。この日の入場者数は11,364人。明らかに宇佐美が移籍した影響もあるのか、入場者数は下降気味の予感。それでも今季は万博で未だ無敗と崩れてはいない。夏場には強いG大阪、ここからいかに建て直せるか。もうこの「お決まり」の展開から卒業したい。

宇佐美貴史、Gamba in den letzten Tanz -G大阪vs神戸-

2011年07月14日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1の延期分、第4節が水曜に行われ、万博ではG大阪が神戸と対戦。G大阪が「らしい」派手な撃ち合いとなった試合を3-2で制し6試合無敗。引き分けを挟んでの5連勝で3位に順位を上げた。試合は今季よりバイエルン・ミュンヘンへ移籍する宇佐美貴史のG大阪最後のプレーともあって、平日にも関わらず15,000人を超える観衆が熱狂。その中で1得点1アシストと魅せてくれた宇佐美。ささやかなセレモニーを終え、ドイツへ旅立つ。宇佐美、万博での最後のラストダンスを写真中心にどうぞ。

 
 
 G大阪でいよいよ最後のプレーとなる宇佐美。
 試合前からリラックスした雰囲気ながら表情は感慨深い!?

 
 この試合では、腰痛でベンチの遠藤に代わって横谷が出場。
 好守にまずまずの活躍。

 
 神戸はホジェリーニョを中心に序盤からテンポ良く攻め立てる。

 
 遠藤がいない中盤では二川が攻撃のタクトを担う。

 
 神戸が前半はペースを握るものの、0-0のままで時間は過ぎる。

 
 前半終了間際、二川のシュートでG大阪が先制。
 イ・グノのシュートのこぼれ球がクリアミスを誘いごっつぁん。

 
 前半を終えて、ロッカールームへ戻る宇佐美の表情。
 ミスもあってか、全く納得がいかない表情。

 
 後半、宇佐美がボールを持ってリズムを作るG大阪。

 
 最終ラインから山口もボールを持って攻め上がる。

 
 
 
 
 
 
 
 G大阪の追加点は63分。イ・グノが抜け出してシュート・・・
 かと思いきや、逆サイドから走り込んだ宇佐美へ得点をアシスト。

 
 
 
 79分には今度は宇佐美の右サイドの突破から・・・
 折り返してイ・グノのゴールをアシスト。

 
 未だ開幕からの失点試合はストップできず。
 武井は安定した守備で体を張った。

 
 後半、もう1本あった決定的な宇佐美の場面。
 シュートは惜しくもゴールのわずか右へ・・・

 
 前節得点を決めたキム・スンヨンはこの日も交代出場。
 見せ場を作ったのはこの牛歩で向かうCK!?(笑)

 
 79分には遠藤もピッチへ。
 宇佐美の最後の試合に華を添えた。

 
 なんとか3-2と接戦をものにしたG大阪。
 宇佐美を交えてのワニナレナニワ。

 
 この日のヒーローに群がる報道陣の数はいつも以上。
 宇佐美のヒーローインタビューが始まる。

 
 そして、改めて最後の送別セレモニーへ。

 
 自らの口でガンバへの感謝。そしてドイツでの活躍を誓う。

 
 
 入籍したばかりの奥さんと両親が花束を持って登場。

 
 チームメイトによって宇佐美が宙に舞う。
 ガンバでの通算記録は公式戦46試合出場11得点。
 あっという間の2シーズンと少しだった。

 
 「ドイツで輝け!またいつか大阪で・・・」

 
 物思いに耽っているであろう西野監督の表情。
 試合後、J2草津よりラフィーニャの期限付き移籍が発表された。
 この後のチームプランはどうする?

 
 慣れ親しんだスタジアムを1周する彼の目には涙が・・・

 
 ゴール裏からは宇佐美のチャントが延々と歌われる。

 
 突然現れたこの日のために用意されたというハシゴ(笑)

 
 
 ガンバの至宝は最後までサポーターに愛される。

 
 ピッチサイドの特設席に座っていた子供たちにもハイタッチ。

 
 これが終わりじゃない。
 彼の物語は今から始まる。頑張れ、宇佐美貴史。

 

 彼を初めて見たのは4年前の高槻市立スポーツセンターで行われていたプリンスリーグだった。神戸科技高戦だったと記憶している。当時まだ中学3年生だった彼は、飛び級でユースの主力選手として活躍していた。チームの誰よりも若いというのに、CKやプレスキックを任されており、現在と同様の柔らかいタッチでのドリブルをよく覚えている。たった4年前の話だ。そんな彼がG大阪のトップチームでの2シーズンと少しの期間を経て、次に戦いの場を移すのはドイツの世界的名門、バイエルン・ミュンヘン。ブンデスリーガ22回、UEFAチャンピオンズリーグ(チャンピオンズカップ時代含む)を4度制している説明不要のメガクラブだ。未だに信じられないが、若干19歳でこのクラブに身を投じる彼のキャリアはまだこれから。まだ戦いも始まってはいない。完全移籍のオプション付きとはいえ、まずは期限付き移籍。完全移籍を勝ち取るインパクトを残したい。そのふてぶてしさを備えた個性とスーパーなドリブルとシュートでドイツを、そして世界をとことん魅了して欲しい。

FW陣リファインなるか -G大阪vs横浜FM-

2011年06月20日 | 脚で語るガンバ大阪
 ACL敗退後、負けが込んでいるG大阪。J1第16節は万博で横浜FMを迎えての一戦。試合は遠藤のFK、そして山口のヘッドというセットプレーからの2点でG大阪が逃げ切り、4試合ぶりの勝利を挙げるものの、カタールへの移籍が決まったアドリアーノは出場せず、欧州移籍が確実視されている宇佐美を下げるなど、明らかに今後のチーム状況を考えた采配が見られたこの試合。久々に勝利ながらも、やはりどこか今後の行方を気にしてしまう試合となった。

 

 
 横浜FMは今季好調だが、前節、首位の柏に敗戦。
 連敗は避けたい。

 G大阪は周知の通り、アドリアーノがカタールへ移籍合意、既にこの試合に彼の姿は無かった。加えてイ・グノが腰痛のために欠場を強いられ、宇佐美と平井が2トップを組む。そしてこの試合から山口と下平が復帰。中盤では二川がトップ下を務め、明神が1人でボランチを務める。なんと万博での横浜FM戦はリーグ優勝を果たした2005年以来勝利がないという不名誉な記録も。今季またもエース外国人ストライカーを引き抜かれてしまい、早くもターニングポイントの感が否めないG大阪にとっては難しい試合になる予感だった。
 対する横浜FMはアウェイで勝ち切れなかった仙台戦を引きずったかその次の柏戦を落とし、前節C大阪に辛勝。若干18歳ながら背番号10を背負う小野とコンビを組む大黒は久々の万博となった。

 
 
 試合は横浜FMが立ち上がり4分、谷口の右サイドからのシュート、6分に小野のクロスに走り込んだ大黒のヘッドと果敢に攻撃を仕掛ける。8分には横浜FMが大黒のパスを受けた小野がグラウンダーで中央の狩野に合わせるも藤ヶ谷がセーブという決定的な場面が。前がかりに枚数をかけて攻める横浜FMにG大阪は受け身の序盤だった。

 
 
 
 8分、狩野が小野の折り返しにシュート。
 かろうじて藤ヶ谷が止めるヒヤリとする場面。

 しかし、先制点は思いがけない早さでG大阪にやってきた。9分相手陣内の左サイドエリア手前で宇佐美が横浜FM・小林に倒されてFKのチャンスを得る。角度的に直接狙うというよりも中央へセンタリングを入れるかという場所だったが、遠藤はこれを直接ゴールへ。相手GKの頭上で落ちるボールは釣られたGK飯倉を嘲笑うかの様に決まった。驚いたが、この1点はG大阪の試合運びをかなり楽にさせた。

 
 横浜FMは小野裕二が脅威。恐るべし18歳

 
 武井が中央へボールを放り込む。

 この後、なかなか相手を崩す場面は作れなかったが、G大阪はセットプレーが機能した。26分に遠藤の左CKを山口がニアで完璧に合わせてチーム2点目をゲット。久々の“ホットライン”開通で試合のスコアを2-0とした。

 
 
 
 
 久々の遠藤→山口のホットライン。
 これが決まれば試合は楽だ。

 34分には、G大阪のゴール前で横浜FMのFKのチャンス。狩野がこのFKをバーに当てる際どいシュート。35分には同じく狩野が地を這うようなミドルシュートを放ってくるなどあわやという場面はあったが、武井、明神を中心にエリア前でしっかり守って前半は横浜FMに得点を許さず2-0で折り返した。

 
 大黒はあまり見せ場を作れず。45分で交代。

 ところが、前半終了間際に明神が負傷退場(どうもVTRを観ていると39分頃にパスを出した際に肉離れしたと思われる)。代わりに急遽横谷がピッチへ送られるが、これが後半に入って少なからず影響した。当初は佐々木がユニフォーム姿になってスタンバイしていたが、土壇場で横谷の投入。佐々木を入れて中盤の陣形を変えようとしたのか、純粋なセントラルMFの横谷を試用したかったのか。横谷投入後は武井、遠藤と並ぶような形になった。

 
 10年以上に渡り、G大阪の屋台骨である二川。
 今季、再び輝きを見せている。

 後半に入って、横浜FMがキム・クナンを大黒に代わって投入。この後半途中から193cmのキム・クナンを入れてくるパターンは開幕戦以外の全試合で横浜FMが使っている十八番中の十八番。前節のC大阪戦ではこれで虎の子1点を奪い1-0と勝利している。なにしろポストプレーの上手いこの選手の登場で、谷口や兵藤らの攻撃参加が促進される。53分には横浜FMが狩野に代えて渡邊をピッチへ。小野をトップ下の位置に下げて攻撃のテンポを変えてきた。

 雨足が強くなってきた後半、G大阪も良い形で相手がボールが奪えているがチャンスは作れない。60分には宇佐美を下げて川西を起用。個人的にも奈良市出身の川西には活躍を期待しているが、これはやはり「宇佐美移籍後のプラン?」と感じさせる采配で、観戦者もいろいろな憶測を飛ばしただろう。ところが、気合いが空回りしたか、その川西は少ないタッチでボールを離す消極的なプレー。横浜FMの栗原、中澤のコンビに完全に封じられる。

 
 
 
 川西が後半の早い時間から登場。
 しかし、栗原と中澤を攻略できず不完全燃焼。

 76分、左サイドでタメを効かせたプレーの後、下平が速いボールで中央へ入れると、これを平井が合わせるが惜しくも決められず。すっきり3点目が取れなければ徐々に嫌な展開へ。87分に横浜FM・栗原は放り込んだボールをG大阪・中澤がかぶってしまい、小野が拾うとゴールラインギリギリで折り返して、キム・クナンが合わせて決めた。G大阪はリーグ戦9試合連続の失点。未だ「ゼロ」に抑えることができず、この日はなんとか横浜FMをかわして久々の勝利となったものの、終了間際の89分には渡邊のクロスを小野がフリーで頭で合わせたシュートを藤ヶ谷がかろうじてセーブする場面があったように、スッキリしない辛勝劇だった。

 
 下平の折り返しを平井が合わせるが・・・
 これは決めたかった。

 効率良くセットプレーで加点したが、アドリアーノの得点力が凄まじかったこともあり、宇佐美まで下がってしまった後は攻撃陣に不安が残る内容だった。追加点が遠い故にラスト5分間で「分からなくなる」試合展開になってしまう。イ・グノが戻ってきたとして、2トップの一角は確定だろう。平井か川西か。宇佐美まで夏に移籍することを考えれば、この試合の出来ではアピールと呼ぶにはまだまだ物足りないはずだ。

 
 1得点1アシストと役者ぶりを見せた遠藤。
 不安なのは連戦が続く夏場の彼のコンディション。
 

宇佐美貴史、美しき1発 -G大阪vs清水-

2011年06月13日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1第14節、G大阪は清水と対戦。ACLに敗戦を喫し、前節・川崎戦でも終了間際に逆転弾を奪われての敗戦。何とかここで盛り返したいところだったが、先制しながらも1-2と後半の序盤に逆転される展開。後半に宇佐美のスーパーなシュートで同点に追いついたが、そこから勝ち越しはならず。2-2の引き分けに終わった。この試合の模様を写真中心で。

 
 日本代表としてキリンカップも戦った遠藤。
 連戦の影響を考慮してベンチスタートに。

 
 清水もここまで8試合で2勝のみ。
 サポーターももちろん勝利が是が非でも欲しいところ。

 
 序盤からドリブルで持ち味を見せた清水・高木。
 今季、東京Vから新加入。高木豊氏の長男。

 
 長身の選手が多い清水。
 セットプレーは要注意だった。

 
 かつて高校選手権でブレイクした大前。
 今季は清水で再ブレイクしている。後半FKから直接得点。

 
 G大阪も内田がCBとしてこの日も先発出場。
 落ち着きのあるプレーで最終ラインを締める。

 
 
 
 15分、アドリアーノが今季8得点目となるゴールでG大阪先制。
 二川のCKから高い打点からのヘッドで決めた。

 
 元豪州代表の清水MFアレックス・ブロスケ。
 シドニーFC時代は豪州を代表するスター選手だった。

 
 韓国から帰国し、今季より清水に加入した高原。
 同点場面で強烈なシュートを放って見せ場を作った。

 
 
 清水の同点ゴールは47分の太田。
 高原のボレーのこぼれ球を平岡が頭で折り返して合わせた。

 
 
 50分には大前のFKが直接ゴールに。
 G大阪にとっては連携、そして集中力を欠いた場面・・・

 
 清水の守備ではボスナーが大きな壁として立ちはだかる。

 スーパーなG大阪の同点弾は57分、宇佐美のドリブルからのシュートだった。うまく枠内を捉えられるかという距離だったが、そんな心配はどこ吹く風。ステップ、振りの速さ、シュートコース共に圧巻。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 海外移籍が取り沙汰される宇佐美。
 このドリブルからのシュートは鳥肌が立った。

 
 メインスタンドに手を振り、人差し指を向ける宇佐美。
 その視線の先には・・・!?

 
 追いつかれた清水は64分に小野と小林を投入。
 早速、小野がバイシクルシュートで魅せてくれる。

 
 キム・スンヨンはサイドで再三クロスを試みる。
 しかし、その精度や連携はまだまだ・・・

 
 小林もかつては清水商で活躍した選手。
 日本では3年ぶりのプレーとなる。

 
 G大阪も3点目を目指して遠藤と平井を投入。
 
 
 アドリアーノがこのチャンスを決められない。

 
 平井とアドリアーノで組んだ2トップもゴールはわずかに遠い。

 
 宇佐美と共に輝きを放ったのは二川。
 やはり、頼りになるラストパサー。

 3点目を奪うことはできず、これで連敗こそは逃れたものの、今季初めての引き分け。後半開始直後の2失点が非常に効いたが、それ以上に「撃ち合い」に弱くなった点も否めない。ここまでの4勝は全て1点差という状況。まずは簡単に失点してしまう“悪癖”を何とか改善しないことには、欧州リーグ移籍が確実視されている宇佐美のみならず、アドリアーノにまで恒例の中東クラブからのオファーが届いている状況だけに、2人の離脱という最悪のパターンを考えると心許ない試合だった。この試合でも途中投入された平井、川西らの奮起はもちろん、チーム全体として次のステップへ進むことが重要だ。あと何試合、この場で観られるのか分からない宇佐美。彼のワールドクラスのシュートが決まった際の万博の歓喜はいつも以上のものに感じられた。それが勝利に繋がらなかったのは非常に残念だった。