脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

金沢、初年度の航海を9位でフィニッシュ -SAGAWA VS 金沢-

2010年11月28日 | 脚で語るJFL
 JFLは遂に最終節の後期第17節を迎えて、今季の全日程を終了。佐川守山陸上競技場では、今季JFL初参戦となった9位・ツエーゲン金沢が2位・SAGAWA SHIGA FCに挑み、試合を先行されながらも2-2で引き分けて最初のJFLを一桁順位の9位で終えた。また、SAGAWA SHIGAは鳥取の優勝に次ぐ2位で全日程をフィニッシュ。チームから27得点で御給が自身2度目の得点王を獲得することとなった。この結果、18位の流通経済大FCが関東リーグへ降格、そして17位のアルテ高崎が地域決勝決勝ラウンド3位のチームとの入替戦に回ることが確実となった。

 

 昨年の高知・春野での1次ラウンド、そしてアルウィンでの決勝ラウンド、その末の津幡、刈谷での入替戦を戦い抜けてJFLの舞台へと昇格した金沢。あれから1年が経とうとしている現在、春野、そしてアルウィンと6試合を見届けた者としては、未だに今季の金沢をお目にかかる機会が無かったことが個人的に今年の心残りだった。数少ない関西でのアウェイ戦を補足したと思いきや、既にシーズン最終戦。加えて、一番のお目当てでもあった元日本代表FW久保は出場停止と残念だったが、そこには立派にJFLで戦っている金沢の選手たちとサポーターの姿があった。
 ここまで5連勝と絶好調の金沢。この試合で勝利すれば、他会場の結果によっては大きく順位のステップアップも狙えるところ。前期のSAGAWAとの試合は開幕早々に2-2という内容ということだけに、ここは何としてでも6連勝で終わりたい。チームを応援しようと遠く金沢から守山に駆けつけたサポーターの皆さんがメインスタンドの半分を大挙して手拍子と声を送る。明らかにチームの認知度と人気が高まっていることを示しているように思えた。

 試合は、前半からSAGAWAが先制点を果敢に狙いに来る。どこからでもチャンスメイクできる層の厚いタレント陣は金沢にとって脅威。特に奈良輪と濱田が組む右サイドと旗手と大沢が組む左サイド、どちらからでも繰り出されるサイド突破に金沢は前半劣勢を強いられた。そして12分には左サイドの大沢の豪快なサイドチェンジを右サイドで受けた奈良輪がそのままエリア右手から強烈なシュートを叩き込んでSAGAWAが先制点を奪い取る。

 
 SAGAWAは12分にこの大沢のサイドチェンジから…

 
 
 攻め上がっていた奈良輪がズドンと先制シュートをお見舞い。
 DFでルーキーながら今季3得点目。

 先制したSAGAWAの攻勢は緩まない。16分には旗手のFKから中村が絶妙のヘディングシュート。しかしわずかに決まらない。金沢はまずはこのSAAGWAの攻撃をしっかりブロックして、MF曽我部を中心に相手のDFラインの裏が手薄になるのを狙っていた。25分に、その曽我部が絶妙のスルーパスを出すと、古部が走り込んでシュートを決める。劣勢の中でもしっかり自分たちのチャンスをモノにする力を感じさせた場面だった。

 
 
 
 
 
 
 前がかりになったSAGAWAの最終ラインを曽我部と古部が狙っていた。
 渾身の同点弾で金沢、反撃開始。

 しかし、その金沢が昇りつめたJFLの厳しい戦いで、この4シーズン中2度も王者に輝いているSAGAWAはやはり一枚上手だった。全く失点のダメージを感じさせず、引き続き金沢ゴールを脅かす。27分には御給のヘッドをゴールラインギリギリで金沢の斉藤雄がクリアするなど、何とか金沢も集中した守りを披露し続ける。30分、SAGAWAは得点ランキングで一歩リードする御給が右サイドからの奈良輪のクロスに頭で合わせて追加点を奪ったのだった。

 
 やはり、この男「御給匠」を止めないと勝利は無い。
 金沢は諸江が密着マーク。

 
 しかしながら、いとも簡単に御給が頭で決める。
 今季の得点王を決定づける27得点目。

 41分に曽我部の直接FKがわずかにゴールのバーに当たって同点のチャンスを逸した金沢。1点のビハインドを背負って折り返した後半、林に代えてベテランの木村を投入。盛り返しにかかる。すると、徐々に試合は金沢ペースへ。山道と山根の守備的MFコンビがボールをハーフライン付近で奪えるようになってきた金沢は長谷部のドリブルを起点にシュートの機会が増えていく。58分には長谷部のクロス斎藤陽が頭で合わせてシュートするもSAGAWAのGK森田がかろうじてセーブ。その5分後には左サイドから攻め上がった長谷部が持ち込んでシュートを狙うものの、わずかにゴールポストに当たって決まらない。あとわずかで試合を振り出しに戻せるほどに金沢は好守が噛み合って、SAGAWAを凌ぎつつあった。

 
 攻守の起点になっていた金沢・MF長谷部。
 効果的なドリブルで相手もファウルで止めざるを得なかった。
  
 
 山道が中盤でしっかりと守備タスクを実践。
 ロングボール以外では最終ラインを楽にさせたのでは。

 
 攻撃時には得意のロングスローも見せる込山。
 昨季通しての諸江とのコンビは健在。

 サポーターの絶えることのない応援チャントを背に果敢に攻め続けた金沢。遂に流れを掴んで同点に持ち込む。80分に曽我部の右CKから斎藤陽が頭で合わせてゴールネットを揺らした。

 
 
 
 
 これが5連勝中の金沢の粘り強さか。
 思いを乗せたシュートはゴールへ。斎藤陽、歓喜の咆哮。

 一気に金沢へムードは傾いた。6連勝でJFL初年度を終えればそれは及第点以上。あと1点が奪えそうな流れだった。82分にGK大橋がSAGAWA中村のシュートをファインセーブで防いで最後尾からもチームを鼓舞。ラスト10分はスリリングな展開となった。
 85分には曽我部のFKからゴール前の混戦を込山が押し込んだと思いきや、ノーゴールの判定。最後まで走り切った両チーム、結局試合は2-2の引き分けに終わった。

 
 GK大橋もファインセーブを披露。
 金沢の追い上げに拍車をかけたが…

 
 2アシストの金沢・MF曽我部。
 チャンスはいつも彼から作り出されており、印象的だった。

 正直、このJFLへ上がるまでの金沢の道のりは苦しいものだった。初年度のJFL34試合を戦い終えた金沢にとっては、いささか遥か昔の話に思えるが、北信越リーグで結果が出せずに全社(準優勝)枠経由での地域決勝出場。春野での三洋洲本とのPK戦までもつれた激闘。そしてアルウィンでのPK戦・2試合勝利でなんとか掴んだ入替戦への切符。個人的には苦戦するだろうと思っていたが、予想外の健闘ぶりで、この試合でも堂々たる戦いぶりを披露。確実に昨季の苦戦の連続が今のチームの糧になっていることを実感した。初年度ながら一桁順位でのフィニッシュは大きな成果だろう。
 対して、SAGWAも今季は3試合を観戦したが、本当に毎年実力のある新卒選手を補強するなと感心させられる。特にこの試合躍動していた奈良輪、そして昨季の関西リーグDiv2で得点王に輝いた濱田など定位置を確保している若手の活躍は印象的。そして御給の帰還。不思議と外に出ると活躍できず、SAGAWAでは「キング」のように活躍できる彼の存在が際立っていた。優勝ならずとも、町田に競り勝って2位という順位は、序盤の13試合無敗ということを考えれば至極当然かもしれない。

 
 1年ぶりに見たツエーゲン金沢。
 順調にサポーターも増えている様子で、今後も注目。
 

ひたちなか、劇的な幕切れ -相模原 VS 山口-

2010年11月24日 | 脚で語る地域リーグ
 ひたちなか3日目の第2試合は、ここまでの戦績で勝点はトップ、グループ突破の最有力と見られていたS.C.相模原と連敗を喫して2日目に1次ラウンド敗退が決まってしまったレノファ山口との対戦。早々に2点を先行した相模原が試合をそのまま決めてしまうかと思われたが…
 Aグループ最大のドラマはこの試合で起こった。

 
 
 両チーム共に多くのサポーターが声援を送る。
 スタンドでも選手を後押しする戦いが始まっていた。
 
 JFA優遇枠とはいえ、この大会に出場する相模原の強さは全社の戦いぶりからしてもある程度見えていた。キックオフ1分、正確には1分経っていない時点で相模原は山口から先制点を奪い取った。右サイドの金澤からのクロスを森谷が頭で決める。続いて、7分には富井のスルーパスに抜け出した森谷が山口DFを振り切ってGKとの1対1を落ち着いて決めた。開始7分間で2点をリードした相模原。この後はひたすらマイボールをロストせずに繋ぎに徹する。山口の運動量を落としにかかったのか、無理なロングパスを控えて前がかりにならずに試合を進めた。機を見て確実なチャンスに決定的な3点目を狙っていたのだろう。そのパス回しの前に山口の選手たちはほとんどボールを奪えない。まるで“鳥カゴの中の鳥”のようだった。なんと前半の山口のシュートは「0」本だった。

 
 
 
 開始1分経たぬうちに森谷が頭で決めて相模原先制。

 
 
 
 
 7分には再び森谷が決める。
 これで勝負の大勢は決まったかに思えた…

 後半に入って、その鳥はカゴの綻びを見つけ出す。相模原に疲れとミスが目立つようになってきたこともあってか、山口は徐々にリズムを掴めるようになっていった。主将・福原を中心に前半以上のプレスで相模原のボールを奪いにかかった。

 
 前半、相模原はDF工藤を中心に山口を封じ続ける。

 
 “あきらめない”という言葉がにじみ出る。
 福原を中心に山口は前を向き続けた。
 
 試合を決める追加点を焦り出す相模原を尻目に、68分に山口は右サイドを駆け上がった碇野のクロスから柏原がヘディングシュートを決める。山口はなんとこれが68分間で初めてのシュートだった。前半からスペースさえあれば、攻め上がっていた碇野の献身的な攻撃参加がここで効いた。76分にはFW吉田を投入して、更にもう1点を狙いにかかる山口。1点を返して、勢いが出た。選手たちが見違えるように動くようになっていた。試合の流れは完全に山口だった。相模原にとっては1日目のHOYOに2点のリードを追いつかれた光景が浮かび上がる。

 78分、また碇野のクロスからだった。相模原はこのクロスボールに金澤と鷲田が対応したが、重なってしまいクリアボールが中途半端な方向へ。味方である工藤に当たって跳ね返ったボールはなんと山口MF田村の元へ。とっさに反応したのだろう。田村のヘディングシュートはゴールに吸い込まれた。

 
 
 
 
 田村が決めた山口の同点場面。
 奇跡的に彼の頭にボールは飛んできた。

 2-2の同点になって、相模原の動揺は明らかだった。それまで決定機を全くといって良いほど許していなかったチームが瞬時に崩壊したのだ。83分に秋葉とジエゴ・カンポスを同時投入して一瞬のチャンスを狙う。だが、山口の集中力はぶれなかった。

 一旦山口に傾いた流れは傾くことはない。不思議なほどこれまで決定機が全く無かった山口に得点の予感を感じてしまう。ラスト10分は本当にそんな展開だった。
 そして87分、山口は中盤にできたスペースに左サイドバックの安田がドリブルで持ち込む。田村へ送るとすぐに田村はエリア内へロビングボールを蹴り込む。マーカーの相模原MF坂井を越えてそのボールは柏原の頭にぴったりと合った。次の瞬間、メインスタンドはこの3日間一番の独特な雰囲気を放った。1点を返したあたりから一層チャントのペースが増していた山口のサポーターは狂喜、涙している人もいた気がする。そして、山口の勝利を確信したかのように「レノファ山口」コールを送るY.S.C.C.のサポーター、対極的に逆サイドでは、「まだ終わっていない」という逸る気持ちを抑えるかのように声量が増す相模原サポーターの姿があった。

 
 
 逆転弾のきっかけはこの安田のドリブルから…

 
 
 
 
 田村の浮き球のパスに柏原が再び頭で決めた。
 レノファ山口、逆転。

 試合は3-2と山口の勝利で終了。これでY.S.C.C.のグループ1位突破が決定。12月5日より市原で3日間行われる決勝ラウンドに進出する。S.C.相模原はワイルドカードにすら手が届かず来季のJFL昇格のチャンスは潰えた。

 

 本当に前半だけを観ていれば、非常に歴然とした差があった試合で、相模原で決まりだなと途中で帰った人もおられるかもしれない。それだけ山口の逆転劇は凄まじいものだった。それが証拠に公式記録を確認すると、山口の放ったシュートはゴールネットを揺らした3本のみ。結果的に2チーム共、来季JFL昇格のチャンスは消えたが、この試合は後々語り草となり、2チームが上を目指していく上でかけがえのない経験になるだろう。

 
 山口のサポーターは連敗してもチームを応援・鼓舞し続けた。
 最後に勝利をサポーターに届けて選手たちも安堵の表情。

本命Y.S.C.C.執念の逆転劇 -HOYO VS Y.S.C.C.-

2010年11月23日 | 脚で語る地域リーグ
 全国3会場で行われている全国地域リーグ決勝大会はいよいよ1次ラウンドが最終日を迎えた。各グループの1位チームと2位同士の最上位チームが2週間後に市原で行われる決勝ラウンドへ駒を進める。ひたちなかでの第1試合は、両者共に他力本願ながら、1位突破の可能性を残す2チーム、HOYOとY.S.C.C.が対戦。HOYOが試合を先行しながらも、昨季決勝ラウンドまで進んだY.S.C.C.がその底力を発揮。3-2で逆転勝利を果たして、第2試合へとその命運を委ねることになった。

 

 朝から雨が降るひたちなか。風があって気温も低く、コンディションは3日間の中で最も厳しい1日だった。HOYOは昨日先発だった渡邊を温存、対するY.S.C.C.は守備の要である鈴木、ボランチの土屋、サイドハーフの小笹が先発メンバーにカムバック。しかしながら、チームの得点源である辻をベンチ要員にしてキックオフとなった。

 試合はいきなり動いた。HOYOが開始わずか2分で先制する。右サイドを抜け出した原のクロスを古賀がダイビングヘッドで決めた。この試合を90分勝利で乗り切れば、1位突破は見えてくる。チームのムードは上昇したに違いない。しかし、この大会と対峙するY.S.C.C.は甘くはなかった。
 21分に中村の右CKにDF寺田が頭で合わせて同点に追いつく。徐々にパスが回り出したY.S.C.C.が反撃の狼煙を上げた。

 
 
 
 まずはHOYOが古賀のヘッドで先制点をもぎ取る。
 開始2分、決勝ラウンドへ向けて先手を奪った。

 
 Y.S.C.C.は土屋が守備的MFの位置にカムバック。
 全体に安定感が出たこともあり、ここから反撃。

 
 追いついたY.S.C.C.は更に追加点を狙う。
 次第に試合のペースは彼らのものに…

 HOYOには1人突出したキープレイヤーがいる。FW堀健人だ。彼がボールに触ると必ず何か起こる気がしてならない。1日目の2得点とここまでの彼のプレーはそれほどのイメージを抱かせてくれるのに十分だった。案の定、このチーム屈指のクラッキは、30分に生口の直接FKがゴール前にこぼれたところを詰めて押し込んだ。HOYOが再び試合を先行する。

 
 
 HOYOの代えがきかないエース・堀。
 これで3試合で3得点とチームを牽引。
 
 2-1とHOYOリードで折り返した後半、Y.S.C.C.は10分でベンチが動いた。FWの青田に代えてエースの辻、そして小笹に代えて10番を背負う石川を投入。1点を追いかけるだけではなく、逆転することを明確にピッチへメッセージとして送った。この采配は試合をすぐに動かすことになる。
 58分、右の笹野からボールを受けた土屋が更にエリア左に詰めていた辻にパス。辻は相手DFをかわしてシュート。見事にこれが決まってY.S.C.C.が同点に追いつく。鮮やかなパスワークもさることながら、フィニッシャー辻の本領発揮ともいえる場面。投入後、2タッチほどでゴールネットを揺らす。関東リーグ得点ランキング3位の実力はこの大会でも如実に現れていた。

 
 HOYOはサイドバックの長谷川が攻守に活躍。

 
 主将・鈴木が最後尾にいるだけでチームが引き締まる。
 精神的にもチームの柱ではないだろうか。

 しかし、このまま試合はすんなりといかない。Y.S.C.C.は66分にDF渡邊がこの日2枚目の警告で退場処分に。すると、直後にHOYOはDF三浦を生口に代えて投入し、守備的な戦いを目指すようになった。Y.S.C.C.も鈴鹿の投入でバランスを図り、均衡を保とうとした。この時、両者の脳裏には“PK戦もやむなし”という考えがよぎったのかもしれない。

 
 Y.S.C.C.の石川とHOYOの田中がマッチアップ。

 
 “最も危険な男”堀健人をY.S.C.C.も警戒。

 ひたちなかで起きた最初のドラマはこの試合、82分に起きた。同点弾を決めた辻が逆転弾となるチーム3点目を決める。1日目、2日目と上昇傾向にあったHOYO、対して下降傾向にあったY.S.C.C.。この流れを壊した1発。チームを支える全ての人たちへの思いがこみ上げたのか、歓喜に沸くメインスタンド、チームベンチへと走る辻の両手は、ハートのマークを模していた。

 
 
 
 
 スタンドが沸き上がった辻の逆転ゴール。
 ハートのマークで喜びをスタンドへ。

 結果、3-2でY.S.C.C.が逆転勝利。第2試合の相模原が90分負けすれば、1位突破、また相模原が勝利した場合でも、勝点6ポイントでワイルドカード(2位最上位)での決勝ラウンド進出が可能性として浮上した。
 対するHOYOは1次ラウンド敗退となってしまったが、この大会に臨むに相応しい実力を持ったチームだった。昨季まで大分県リーグのチームだったことがにわかに信じ難い。来季以降、九州リーグ覇者として、きっとまたこの大会にリベンジしてくるだろう。この大会にて初見だったが、非常に良いチームに出会った気がした。

 
 試合後にチーム全員でスタンドへ挨拶するY.S.C.C.のメンバー。
 これで相模原の結果を待つことに。

 
 敗退ながらHOYOは素晴らしい戦いぶりを披露。
 手応えがあってこその悔し涙。

三度目の正直 -相模原 VS Y.S.C.C.-

2010年11月22日 | 脚で語る地域リーグ
 ひたちなかの第2試合は、1日目に共に勝利を収めたJFA優遇枠のS.C.相模原と関東リーグ王者のY.S.C.C.の一戦。何を隠そうこの両者、カテゴリーは違えど、同じ神奈川県内のチーム。天皇杯予選も含めて、今季2戦2勝と対戦成績ではY.S.C.C.がリード。そして、遂にJFL昇格を懸けたこのステージで両者の直接対決が実現した。

 

 1日目の試合を観る限りでは、山口を相手に3-0と快勝したY.S.C.C.の方が総合的に熟成度が高く、良いサッカーを見せていた。しかし、この試合では昨日の試合で好連携を見せていた前線のカルテットの姿が無い。なんと昨日と7名も先発メンバーを入れ替えてきたのだ。山口戦で先制点を奪ったFW福井(彼は昨日負傷交代。負傷欠場が十分考えられる)、2点目を決めた小笹はベンチにも入らず。10番を背負うMF石川はベンチスタート。辻だけがピッチに立っていた。それだけでなく、主将で守備の要となる鈴木、中盤の底で体を張っていた土屋もメンバーに入っていなかった(結果的に試合後に数人の姿を見たが、なぜ試合に出ていなかったのかは定かではない)。ここは社会人サッカーのカテゴリー。平日ということもあり、仕事の影響は十分に考えられる。しかし、対する相模原は昨日負傷した井上に代わり、鷲田がセンターバックに、そして奥山をサブにして鈴木隼を起用してきただけでほぼ現状のベスト布陣。Y.S.C.C.が苦戦するのは必至だったといえよう。

 
 メンバーが大幅に変わったY.S.C.C.。
 最終日への温存か、仕事の影響か…

 
 相模原は、かつてJクラブを転々とした鷲田が先発。
 まだまだ最低でもJFLではやれそうだ。

 しかし、この考えは杞憂だったのかと思うほど、前半からY.S.C.C.がハイペースで攻撃を仕掛ける。開始3分にDF服部がシュートしたところを相模原GK佐藤がファインセーブで逃れると、直後にはFW松田が左からシュート。23分には辻の折り返しを平間がシュートするがわずかに右に外れていく。もしかすると、これは計算的にメンバーを変えたのでは?と勘繰ってしまうほどY.S.C.C.は快調だった。
 対する相模原は、26分にようやく最初のチャンスを迎えた。FW森谷が落としたところにMF鈴木健がミドルを狙う。防戦を強いられる相模原にはなかなかチャンスが巡ってこない序盤から中盤だった。

 
 Y.S.C.C.は昨日出場機会の無かったMF中村が奮起。
 スペースの空いた相模原陣内へ果敢に攻め込んだ。

 
 群を抜いた存在感であるFW辻が徹底マークに遭う。
 先手を取られたくない相模原は集中していた。

 
 水野はこの試合でも先発フル出場。
 なんと鈴木啓太(浦和)は従兄にあたるらしい。

 状況は一瞬で変わった。Y.S.C.C.の攻勢をかわし続けていた相模原は、31分に自陣で相手のミスから水野がボールを奪うと、一気に前線へロングパス。これに走り込んだFW齋藤が相手DFのマークをかわしてゴールへ突進。GKとの1対1を冷静に流し込んだ。

 
 先制点のきっかけはこの水野のロングパス。

 
 
 
 
 
 まさに“ゴールハンター”齋藤将基。
 チャンスを逃さない決定力は突出している。

 矢継ぎ早に相模原は追加点を奪取。これもまた相手のミスからボールを奪うと、坂井がドリブルして森谷へ。森谷は頭で豪快に決め、これまでの劣勢が嘘のように、瞬時に2点のリードを得たのだった。

 
 瞬時に森谷が加点した相模原。
 一瞬の爆発力は凄まじい。
 
 こうなると、続けて追加点を…という訳にはいかない相模原。それもそのはず、昨日はHOYOに2点のリードを振り出しに戻されてPK戦へ。実質勝点を1ポイント損失してしまった。その辛酸を舐めたこともあってか、この試合での相模原の徹底した守備実践はその90分勝利への執念を感じさせるものだった。その証が公式記録にも見られる後半のシュート1本という数字。これは終了間際の金澤の3点目を決めたシュート1本のみ。総合力で相模原が熟成していることを感じさせた。

 
 相模原はリードしてから必至の守備。
 GK佐藤を中心に守り続ける。

 後半もY.S.C.C.は攻め続けるが、相模原の深い守備の前に最後まで沈黙。最後まで良い形で相手エリア付近でボールを回せなかった。特に辻だけしか安定したチャンスメイカーがいなかったように思える。ベンチの石川、そして昨日途中出場で良い動きを見せていた青田は出番なし。この試合でカードを1枚しか切らなかった点も非常に不可思議な点ではあったが、何よりもスタートから昨日のメンバーが並ばなかったことが悔やまれるだろう。結果的に終了間際の90+4分に相模原・金澤が加点して3-0で試合は終わった。

 
 ジエゴ・カンポスはわずか7分で交代される羽目に。
 さすがに交代直後は監督に叱咤されて、しょんぼりしていた。

 “三度目の正直”をこの大事な舞台で達成し、Y.S.C.C.を倒した相模原。しかし、1次ラウンドを1位突破できる可能性のあるチームはこれで山口以外の3チームに。勝点5ポイントの相模原から1ポイント差順で、HOYO、Y.S.C.C.という順番となった。

 運命の最終日、1次ラウンドを突破するのはどのチームになるだろうか。 

レノファ、痛恨の敗戦 -HOYO VS 山口-

2010年11月22日 | 脚で語る地域リーグ
 第34回全国地域リーグ決勝大会は2日目に突入。Aグループのひたちなか市総合運動公園陸上競技場では、第1試合に九州リーグ王者のHOYO Atletico ELANと中国リーグ王者のレノファ山口が対戦。昨日、90分負けを喫した山口は、1次ラウンド突破のために何としてでも勝利したいところだったが、終了間際にHOYOに決勝点を許し、0-1で敗戦。これで山口は1次ラウンド敗退が決定。JFL昇格のチャンス獲得は来季以降へと持ち越された。対するHOYOは貴重な90分勝利。第2試合の結果によって、1次ラウンド突破も狙える結果に。昨季まで大分県リーグに位置したチームが全国の舞台で旋風を巻き起こしている。

 

 昨日、共に敗戦を喫した両チームだが、その意味合いは違う。HOYOはPK戦負けということもあり、勝点1ポイントを獲得しており、対して山口は0ポイント。一昨年のこの大会で決勝ラウンドまで進出した彼らがこの試合でなりふり構わず点を取りに来るのは当然のこと。試合開始から山口は果敢にHOYOゴールを目指した。14分にはゴール前で鈴木が落としたボールを福原がシュート。15分には戸高がエリア手前からミドルを狙う。

 
 山口は田村(左)や戸高(右)が中盤でボールを繋ぐ。
 HOYOの高い守備意識の前にゴールへ迫るのは至難。

 
 最終ラインで気を吐いたプレーを見せた伊藤。
 かつて安田理や平井らとG大阪のトップ昇格したユース組。

 
 HOYOはゲームキャプテンの生口が積極的にボールに絡む。
 小柄だが技術は確か。

 20分過ぎからHOYOも徐々にリズムが出てくる。チャンスの起点は昨日も2得点と大活躍だったFW堀。21分には鮮やかなスルーパスで、昨日2アシストの渡邊のシュートをお膳立て。24分には相手のクリアのこぼれ球をMF中島がシュートするものの惜しくもサイドネット。前半、わずかながらに掴む攻撃のチャンスには昨日の2得点を演出した堀と渡邊の連携が効いている様子だった。
 しかしながら、1点を目指して山口はHOYOを交わしながら攻め続ける。26分には中川のパスに左から走り込んだ田村がクロス気味のシュートを放つがわずかにバーの上。33分に放った鈴木のボレーシュートは相手GKにセーブされ、42分には碇野、44分には中川が決定的な場面を決められない。結局、山口は前半のうちに先手を取れず、スコアレスで後半へ折り返す。

 
 山口のチャンスをHOYOの守護神・野寺が阻む。

 
 右サイドバックとして攻撃参加でチャンスを作る碇野。

 
 前がかりになる山口の前線にはDF田中の壁が。
 空中戦に強く、体を張ったインターセプトも冴えた。

 山口はサポーターが決死の応援。平日にも関わらずひたちなかに残留した20名程のサポーターがハーフタイム中も絶えず応援チャントを歌い続けたのだった。この光景はこの大会に懸けるチームとサポーターの思いを投影していた。しかし、後半に入ると、前半我慢の時間を強いられたHOYOが盛り返す。山口は前半と打って変って劣勢を強いられた。

 
 田中だけではなく、清永の存在もHOYOには大きかった。
 センターバックとして最後尾でチームを統率。

 
 献身的なプレスに機を見たドリブル突破。
 HOYOは本田から攻守の切り替えが始まる。

 立て続けに決定機を量産するHOYO。62分に堀の直接FKが相手GKにかろうじて防がれると、その3分後には堀自身が突破してシュート。これも相手GKに防がれたが、HOYOの攻勢はいつ先制点を奪ってもおかしくないものだった。

 
 HOYOは65分に堀が定機的な場面を迎える。
 相手を背後に背負いながらでも易々とドリブルで突破する。

 
 我慢の時間帯…
 前線にボールを運ぶべく福原がロングパス。

 
 少しのミスも許されない緊迫したムードがピッチに張り詰める。
 まさにナイスゲーム。

 攻勢に転じながらも山口GK西川の活躍もあって1点が遠いHOYO。効果的に交代選手で新陳代謝を図りながら、ボールを回し続ける。次第に切り替えが速くなってきた試合。72分にHOYOが華麗にダイレクトパスで山口守備陣を突破、最後は中島がわずかにシュートを左に外してしまったが、この場面で既に山口の集中が切れかかっていたようにも思えた。そして、85分、原がドリブルで相手陣内へ持ち込むと、右サイドに走り込んだ古賀へパス。古賀は相手DF2人に囲まれてコースが切られたかと思ったが、素早くシュートを放った。これがHOYOの決勝点となる。この試合、最初で最後のゴールだった。

 
 
 
 
 
 原のパスを受けた古賀が右45度の角度から決める。
 喉から手が出るほど欲しかった得点はHOYOヘ。

 結局、この古賀の得点が決勝点となってHOYOが90分勝利。ポイントを4に増やした。第2試合の結果、そして最終日の結果次第では1次ラウンド突破も見えてきた。
 対する山口は2試合連続無得点でまさかの1次ラウンド敗退が決定。前半の勢いが後半へ続かず、後手に回ってしまったといえる。ハーフタイムを返上で歌い続けたサポーターの願いは叶わなかった。

 
 残酷ながらもこれが“地域決勝”の怖さ。
 石垣島の借りを今季返すことはできなかった。

 山口はあとわずかゴールに届かなかった。そして、結果を引き寄せられなかった。しかし、2日間声援を送り続けたサポーターの応援は圧巻されるものがあり、忘れ難い光景だった。まだ最終日がある。きっと最終日もサポーターは彼らに声援を送り続けるだろう。彼らが走り続ける限り。

関東覇者強し -山口 VS Y.S.C.C.-

2010年11月21日 | 脚で語る地域リーグ
 ひたちなか1日目の第2試合は、中国リーグを制したレノファ山口FCと関東リーグを制したY.S.C.C.(横浜スポーツ&カルチャークラブ)の対戦。終始試合をリードしたY.S.C.C.が3-0で勝利し、昨季決勝ラウンド進出の強さを改めて誇示した。

 

 この大会への出場5度目となる山口は、50名ほどのサポーターがひたちなかへ応援に駆けつけた。試合前から「絶対昇格」とコールを送る。一方のY.S.C.C.も子供たちを中心に50名を超えるかという大応援団がエールを送った。

 試合は序盤からY.S.C.C.が果敢に仕掛ける展開。福井、辻と昨季から不動の強力2トップに、サイドMFの石川、小笹がこれに波状的に絡む。20分までにこの2トップは5本のシュートを放って山口ゴールに迫った。対する山口もゴールへと向かうが、良い形でボックスにボールが収束しない。19分には田村のCKからDF伊藤がヘディングシュートを放つがゴールならず。Y.S.C.C.の主将・鈴木を中心とした守備を崩せない。

 
 MF福原を軸に先制点が欲しい山口。
 しかし、最後の局面でボールが繋がらない。

 
 昨季のアルウィンでもインパクトを残したFW辻。
 この試合、シュートを1人で5本放って気を吐いた。

 37分、カウンター気味に鮮やかな展開で先制点を奪ったのはY.S.C.C.だった。右MFの小笹が辻に繋ぐと更に逆サイドは張っていた福井へ。福井が右足でシュートを決める。

 
 
 
 
 
 気合いの咆哮で喜びを爆発させるFW福井。
 JFL昇格を目指し、昨季の悔しさを晴らす第一歩。

 1-0とY.S.C.C.リードで折り返した試合は後半へ。ここからしばらく試合は拮抗する。ビハインドを被っている山口としては何としてでも1点を返したいところだったが、シュートまで辿り着けない。リードしたY.S.C.C.はしっかり中盤から守備を固めていった。

 
 黒子役としてサイドからチャンスを作るMF石川。
 長身ながら足下の技術は高い。

 
 最後尾にはDF鈴木という柱がそびえ立つY.S.C.C.。
 山口はここを突破できない。

 1点のリードでは何が起きてもおかしくないことは1試合目を見ても明らか。しかし、山口を完全に抑えたY.S.C.C.は山口の運動量低下を狙って、追加点を狙ってきた。65分に小笹が決定的なチャンスを逸すると、70分には辻のパスを受けたDF寺田がエリア内へ切り込んでシュート。79分には石川が頭で落としたところに辻がシュートするなど、後半の20分を過ぎてからY.S.C.C.が再び攻勢に。すると、80分に小笹が65分の汚名返上ともいえるシュートを決めて2点差に。試合終了間際のアディショナルタイムには交代出場の小澤、青田というコンビから3点目を加えて試合を終えた。

 
 機を見てシュートも狙うMF土屋。
 最後まで攻め続けたY.S.C.C.の攻守の核。

 
 
 
 80分、辻のアシストから小笹がゴール。
 スペースを見つけるのが上手い選手だ。

 好調な滑り出しで改めてその強さを見せつけたY.S.C.C.。昨季は決勝ラウンド進出を果たしながらも、結果的には唯一JFLの切符を手にすることができなかった。1年を経て、今季の関東リーグでは2位・さいたまSCに10ポイント差をつけて優勝を果たした。更に完成度を増したチームでこの大会に臨んでいることが良く分かる試合だった。明日は相模原との神奈川勢対決。ここまでの直接対決では2戦2勝と相性は抜群の様子。このグループの行方を占う好試合になりそうだ。ひとう不安点を挙げるならば、先制点を挙げたFW福井が足を痛めており、交代後もひきずっている様子が痛々しかった。また、平日のということで多少のメンバー編成に影響が出るのかという点も見逃せない。
 対して厳しいスタートになった山口。現実的には唯一初日を終えて勝点を得られなかったということになるが、その意味では明日は必勝。攻撃陣に元気が無いのが気がかりながら、しっかり90分でHOYOから勝利を得たいところだ。

勝点1ポイントの重み -HOYO VS 相模原-

2010年11月21日 | 脚で語る地域リーグ
 第34回全国地域リーグ決勝大会が全国3会場にて開幕。Aグループのひたちなか会場では、第1試合で九州リーグの今季の王者であるHOYO Atletico ELANと神奈川県リーグからJFA優遇枠で一気にJFLへステップアップを目指すS.C.相模原が対戦。いきなり見応えのある乱打戦を見せてくれた両チーム。試合は2-2のまま、90分間で決着がつかず、PK戦へ突入すると、相模原が6-5でなんとかHOYOを振り切った。

 

 快晴のひたちなか市総合運動公園陸上競技場。10月の全社を遥かに超えるサポーターが集まり、JFL昇格を一気に狙う相模原陣営は気合い十分。HOYOも負けじと数人のサポーターが遥々ひたちなかまで駆けつけた。しかしながら、どうそれ意外の観客の多さとその盛り上がりを助長する要素がありそうだった。それもそのはず、ひたちなかと目と鼻の先、水戸市を本拠地とする水戸ホーリーホックにかつて所属していた選手(相模原 DF金澤、HOYO FW堀)がこの両チームの選手にいたのである。そのスタンドの声援は試合の展開に火を着けたのではないだろうか。試合はそう言わんばかりの白熱の展開を迎えた。

 
 相模原MFの水野は柏でプレーする水野晃樹の兄。
 サイドからチャンスを作った。

 
 HOYOの左サイドバック長谷川。
 Jでもプレー経験のあるそのプレーでチームを牽引。

 前半から相模原が堅実に繋いでHOYOを地力でリードする試合展開。しかし、押されるHOYOも徐々に盛り返していく。MF本田、MF堤の守備的MF2枚を中心にしっかり相模原のパスに対してチェックを仕掛ける。27分に相模原はDF井上が接触プレーで負傷交代を余儀なくされ、アップも程々に鈴木隼を投入する相模原だった。

 
 
 35分、途中出場の相模原MF鈴木隼がシュート。
 これは惜しくもバーの上に外れる。

 試合が動いたのは前半終了間際の45+1分、相模原が先制点を挙げる。富井のクロスを相手GKが弾いたところに坂井が詰めており、巧くコントロールしてゴールに流し込む。前半のうちに欲しかった先制点を得て相模原優位で前半を折り返した。

 
 
 
 落ち着いて先制点を決めた相模原MF坂井。
 相手GKのミスを逃さなかった。

 後半に入ると、試合が落ち着く前にFW齋藤が追加点を挙げて相模原がリードを広げる。この試合、駆けつけた水戸サポーターの熱視線を受ける金澤が、まずはその齋藤の得点をお膳立てするアシストで仕事をしてみせた。

 
 
 
 後半開始直後、相模原のエース齋藤が追加点。
 完全に相模原が試合の展開を掴んだに見えたが。

 リードされたHOYOだったが、ここでしっかりとチームが動いた。62分に生口に代わって渡邊、そして68分には堤に代えて岩本を投入。サイドから渡邊がチャンスを作るようになると、70分にその渡邊のクロスからFW堀が1点を返すことに成功。スタンドから大きな声援が巻き起こる。ここまで相模原の守備の前にほとんど前線を封じられていたHOYOが一気に活力を帯びた瞬間だった。

 
 
 
 ほとんどシュートを打てていなかったHOYO。
 気迫の1点はこちらもチームのエースである堀。

 しかし、スコアはまだ2-1で相模原がリード。一気に相模原が試合を決しようと、猛烈な攻勢を仕掛けた。ジエゴ・カンポスを途中投入した相模原は71分、72分と立て続けに決定機を作り出す。その度にHOYOの味方になったのはゴールバーとポスト。相模原のリードが広がってもおかしくない試合展開だったが、運をも味方につけてなんとかHOYOは我慢の時間帯を凌いだ。

 83分には古賀に代えてかつて名古屋で活躍した鴨川を投入するHOYO。対して相模原もクローザーとして終了間際に今季チームの監督(今大会では望月重良代表が監督を兼任)を務めていた秋葉がピッチへ送り込まれる。しかし、試合が動いたのは自陣エリア左サイドでのこのベテランのボール処理ミスからだった。アディショナルタイムに入ってすぐ、人数をかけて攻め込むHOYOの選手たちから秋葉がボールをカットするものの、それを拾ったのはHOYOの1点目を演出したレフトサイダーの渡邊。渡邊はボールを拾うと、少しドリブルを仕掛けてエリア内へ折り返した。そこに待っていたのは再び堀。彼が頭で決めてHOYOが劇的な同点劇を演じたのだった。

 
 
 
 2点目は頭で決めたHOYOのエース堀。
 これで試合を振り出しに。

 90分で決着がつかずに即座に試合はPK戦へ。スタンドには金澤VS堀のマッチアップを観に来た水戸サポーターがHOYOへ大きな声援を送る光景。6人目まで突入したPK戦では、HOYOの本田が外したのに対して、相模原は全員が決めて6-5で勝利を手にした。

 
 HOYO6人目の本田が痛恨の失敗。
 試合では中盤の底で良いプレーを見せていたのだが。

 
 何とかPK勝利で勝点2ポイントを掴んだ相模原。
 ラスト数分で逃した1ポイントが明日以降どう響くか。

 これで相模原は勝点2ポイント、敗色濃厚だったHOYOは1ポイントを得ることに。このPK戦の勝敗で分かれた勝点1ポイントが2日目以降にどう影響するだろうか。しかしながら、2点を追い上げたHOYOの実力はこの大会に出るチームとして立派に証明されただろう。昨季まで県リーグのチームだったとは思えない。このグループのキーとなりそうだ。

死闘の3日間第1ラウンド開幕

2010年11月20日 | 脚で語る地域リーグ
 いよいよ今季もこの季節がやってきた。アマチュア全国リーグJFLを目指して、各地域リーグの王者、そして全社(全国社会人選手権)において出場権利を勝ち取った計12チームが明日からの全国地域リーグ決勝大会に臨む。これまでの16チームから一気に12チームに削減され、この大会に集うのはどれも強豪チームばかり。例年以上に非常に混戦の予想される大会になりそうだ。

 今年で34回を迎える全国地域リーグ決勝大会。1次ラウンドは茨城・ひたちなか、静岡・藤枝、高知・春野の全国3会場で行われる。それぞれのグループリーグの顔ぶれ及び組み合わせは下記の通り。大会独自のルールなどはこちらの素晴らしいプレビューを参考に。

<Aグループ>(茨城・ひたちなか)
・HOYO Atletico ELAN (九州1位)
・S.C.相模原 (JFA優遇枠)
・レノファ山口FC (中国1位)
・Y.S.C.C. (関東1位)

11/21(日)
HOYO Atletico ELAN - S.C.相模原 (10:45)
レノファ山口FC - Y.S.C.C. (13:30)

11/22(月)
HOYO Atletico ELAN - レノファ山口FC (10:45)
S.C.相模原 - Y.S.C.C. (13:30)

11/23(火)
HOYO Atletico ELAN - Y.S.C.C. (10:45)
S.C.相模原 - レノファ山口FC (13:30)

 Aグループは10月に山口で行われた全社で旋風を巻き起こしたS.C.相模原を中心に熱戦が繰り広げられそう。ここに同地域ながら、直接対決で相模原に負けていないY.S.C.C.と一昨年のこの大会でセンセーショナルな戦いを披露したレノファ山口が対抗馬として立ちはだかる。九州リーグ昇格1年目で優勝をかっさらったHOYOも侮れない。

<Bグループ>(静岡・藤枝)
・shizuoka.藤枝MYFC (東海1位)
・グルージャ盛岡 (東北1位)
・三洋電機洲本 (関西1位)
・札大GP (北海道1位)

11/21(日)
shizuoka.藤枝MYFC - グルージャ盛岡 (10:45)
三洋電機洲本 - 札大GP (13:30)

11/22(月)
shizuoka.藤枝MYFC - 三洋電機洲本 (10:45)
グルージャ盛岡 - 札大GP (13:30)

11/23(火)
shizuoka.藤枝MYFC - 札大GP (10:45)
グルージャ盛岡 - 三洋電機洲本 (13:30)

 Bグループも東海王者のshizuoka.藤枝MYFCと東北王者のグルージャ盛岡が凌ぎを削る展開になりそう。関西王者として参戦する三洋電機洲本はなかなか優勝を決められなかったリーグ終盤の不調ぶりが尾を引いていないか心配。昨季のツエーゲン金沢(現:JFL)と演じたような激戦を今季も演じて大いに盛り上げてもらいたいところだ。学生主体の札大GPは厳しい組み分けか。

<Cグループ>(高知・春野)
・福島ユナイテッドFC (全社枠)
・カマタマーレ讃岐 (四国1位)
・AC長野パルセイロ (北信越1位)
・さいたまSC (関東2位)

11/21(日)
福島ユナイテッドFC - カマタマーレ讃岐 (10:45)
AC長野パルセイロ - さいたまSC (13:30)

11/22(月)
福島ユナイテッドFC - AC長野パルセイロ (10:45)
カマタマーレ讃岐 - さいたまSC (13:30)

11/23(火)
福島ユナイテッドFC - さいたまSC (10:45)
カマタマーレ讃岐 - AC長野パルセイロ (13:30)

 将来のJリーグ入りを目指す各地域リーグ屈指の強豪が顔を揃えた死のグループとなったC。全社を無失点で優勝したカマタマーレ讃岐とこの大会を知り尽くしているAC長野パルセイロとのデッドヒートになりそう。しかし、この2チームに加えて全社で準決勝まで勝ち進んでいる福島ユナイテッドFCも本命から外し難い魅惑の顔ぶれ。関東リーグ2位のさいたまSCは思いがけない形で繰り上げ出場を掴んだが、是非決勝ラウンドを目指すつもりで、このグループを掻き回して欲しいところ。

 大会は各グループ1位の3チームと全グループの2位チーム中の最上位の1チーム、計4チームが12/3(金)から始まる3日間の決勝ラウンドでJFL昇格を懸けて改めて戦うことになる。

フルスロットルの30分 -G大阪VS柏-

2010年11月18日 | 脚で語るガンバ大阪
 第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会はJリーグ勢のみでの4回戦に突入。万博では前回まで連覇中の王者・G大阪が延長戦まで柏ともつれ込みながら4-1で勝利。ベスト8進出を果たした。

 

 気温は10度を切るナイター試合。観客は寂しいながらも試合は延長に入ってからG大阪お得意の大味な展開が待っていた。101分のレアンドロの退場もあって柏の運動量が落ちたこともあって、スコアレスで折り返した前半が嘘のような延長戦での3得点奪取だった。

 
 古巣との久々の対戦となった明神。
 この試合でもピッチを縦横無尽、コンディションの良さを感じる。

 
 ベテラン・北嶋を中心に来季のJ1昇格を決めたばかりの柏。
 破竹の快進撃を見せるJ2の勢いそのままに王者に挑む。

 2日前のリーグ・広島戦のメンバーからMF橋本、FW宇佐美に代わって、MF二川、FW平井が先発に名を連ねたG大阪。前半から決定力に欠けた展開で、試合のペースを握るもののゴールは遠い。14分、イグノの左からの折り返しを遠藤がシュートするが、わずかにゴール左へ。26分には二川、42分には明神が加地の折り返しにシュートを見舞うがわずかにゴールには届かない。前半は非常に閉塞感の漂う45分間となった。

 
 前半からポストプレーに徹したイグノ。
 動きは悪くなかったが、57分にルーカスと交代。

 
 柏の林は明治大時代に天皇杯で活躍(3試合出場5得点)
 19分には決定的なチャンスも。

 
 前半から柏はMF栗澤を軸にしたカウンターを展開。
 中盤のスペースを彼に再三ドリブルで持ち込まれた。

 スコアレスで折り返した後半、先制したのは柏だった。50分に左サイドからの藏川の折り返しをレアンドロと繋がれ茨田にシュートを決められる。前半から再三カウンターを仕掛けられていたにも関わらず、相手のミスで助かっていたG大阪だったが、ここでビハインドを負うこととなった。

 
 柏が50分に茨田のゴールで先制。
 ユース出身の19歳。

 
 1点を追いかける状況で宇佐美が57分に登場。
 果敢にボックス内で勝負を仕掛けた。

 
 同じくルーカスも57分から登場。
 緩急つけたボール捌きで前線に躍動感を与える。

 結果的に前述した広島戦との変更点である二川、平井の動きはミスも多くイマイチだったが、約1ヶ月前に万博で行われた3回戦・栃木戦同様、75分に投入された佐々木によってチームは大きく変化した。81分に同点弾を決めると、延長終了間際にはルーカスの4点目を右サイドからアシスト。運動量の落ち込む柏に対して、躍動した佐々木の存在は延長戦でのG大阪の戦いを大きく支えた。

 
 81分に同点ゴールを佐々木が決める。
 二川、遠藤のコンビネーションから相手の裏に飛び出した。

 
 攻撃よりも守備面での奮闘が光った安田理。

 
 昨季までG大阪でプレーしていたパクドンヒョク。
 積極的なプレスで古巣に牙を剥く。

 
 
 延長に入って3分、宇佐美が倒されてPKのチャンス。
 キッカーはもちろん遠藤、難なく決めて逆転。

 
 101分には、2枚目の警告でレアンドロが退場処分。
 1点を追う柏はかなり戦況が厳しくなる。

 
 
 カウンターから宇佐美がGKとの1対1を制す。
 得意のパターンで試合を決するには十分な一撃。

 
 終了間際にはルーカスが決めて4-1に。
 延長戦だけで3得点の巻き返しでG大阪が逆転勝利。

 栃木、柏とJ2勢に連続で苦戦しながらも、3連覇へジワジワ勝ち進むG大阪。これでベスト8進出となったが、次の相手はナビスコ王者・磐田を僅差で破った浦和(対戦は12/25)。この週末にその前哨戦ともいえるリーグでの試合を控えている。勝点差で首の皮一枚繋がっているリーグ、そして3連覇を狙う天皇杯とシーズン終盤になって、好敵手・浦和の壁を乗り越えなければいけない展開となった。

その男、ルーカスにつき -G大阪VS広島-

2010年11月15日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1も残すところ5試合。初優勝へ向かって独走する首位・名古屋とそれを追走する2位・鹿島、3位・G大阪までわずかに優勝の望みは残っている。30節の今節は下位陣では、最下位・湘南と17位・京都が共に敗れて来季のJ2降格が確定。まだ優勝にわずかな望みを残すG大阪はホーム万博で広島を迎えた。

 

 夏以降あまり負けの込んでいない好調な両チーム。直近10試合ではG大阪が6勝1分3敗、広島は5勝4分1敗。特に広島は11月3日のナビスコ杯決勝では磐田にこそ敗れたものの、得点を量産する李を中心にかなり好調。残り5試合負けられないG大阪にとっては厳しい試合となった。

 開始序盤こそ広島に押し込まれるが、10分に相手のミスパスを受けたイグノがそのままゴールへシュート。これが決まって幸先良くG大阪が先制する。しかし、その後は攻めきれず、むしろ広島の好機をことごとくGK藤ヶ谷の好守で切り抜ける危うい展開が続いた。

 
 
 10分にイグノが先制点を挙げる。
 相手のミスをきっちり逃さなかった。

 
 久々の万博凱旋となった広島FW山崎。
 レンタル移籍ながら広島では主軸になっている様子。

 
 その山崎と幾度となくマッチアップした中澤。
 守備の要としてしっかり最終ラインを統率。

 凡戦の感が否めない試合は、G大阪にとっては先制点以降なかなかチャンスを掴めない。後半に入ってすぐにイグノがヘッドで広島ゴールを強襲するものの、広島の守護神・西川がそこには立ちはだかる。そして、後半の開始時からG大阪には動きの芳しくなかった宇佐美に代えて、負傷から復帰後、久々に万博へのカムバックとなったルーカスの姿があった。彼が停滞気味の凡戦に物足さを感じていた観客に大きな歓声を与えることになる。

 
 前線では思うようにボールを受けられない宇佐美。
 相手の執拗なマークにも苦しんだ印象。

 
 相手ボールになった際に最初のチェックが速かった武井。
 明神らを十分カバーする存在に。

 
 広島はパフォーマンスでお馴染みの槙野がキーマン。
 後半には何度も強烈なシュートを見せた。

 61分、左サイドからのFKを得たG大阪は、このチャンスに遠藤のキックからルーカスが見事に頭に合わせて追加点を生み出す。最近、彼に関しては来季の去就を巡る噂が飛び交ったばかり。“退団濃厚”とも伝えられる彼のゴールに万博は沸く。思わず、彼が中心となってアジアを制した08年シーズンの情景を思い出してしまった。凡戦の中で光る彼の存在感は、この得点で改めて万博の観衆に刻みつけられただろう。

 
 
 
 追加点の遠い展開にあってルーカスの一撃は光った。
 苦しい試合で決めてくれるといえば、彼だ。

 
 無失点で90分を切り抜けたのは彼の活躍によるもの。
 再三のビッグセーブでチームの勝利に貢献。

 2-0とリードした後も再三広島にチャンスを作られるが、前半から続くGK藤ヶ谷のファインセーブもあってこれを切り抜ける。その結果、2-0で広島を下したG大阪が優勝前線に何とか留まる勝利。首位・名古屋と2位・鹿島を追走し続ける残り4試合となった。

 
 前半限りで交代となった宇佐美。
 正直、もう少し見たかったところ…

 
 在籍3年目のルーカス。
 今季、彼が得点を決めた試合は無敗。
 果たして来季の去就は…!?