脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

取られたら取り返せ ~14節 VS札幌~

2008年06月30日 | 脚で語るガンバ大阪
 6年ぶりとなった札幌との対峙。そのブランクは数字上で語られる札幌への苦手意識を払拭するには十分だったのだろう。あの頃のチームとは成熟度が違う。“取られたら取り返す”そんなG大阪の真骨頂を見せてくれた試合だった。4-2というスコアは、今季まだホーム万博で2得点以上を叩き出せていなかったことを考えると満足できる結果と言って良いだろう。

 

 蒸し風呂のような湿度の中で、最高の出だしを切ったG大阪。前半4分にハーフライン付近から遠藤が冷静にルックアップ、札幌の最終ラインと中盤のラインの間で、プレーできる隙のあった二川にしっかり狙いを定めたパス。札幌のファーストアプローチをかわした二川とルーカスがパス交換で相手DFをあしらうと、最後は橋本が潰れながらもバレーへダイレクトでラストパス。バレーは、札幌DF西嶋のスライディングをものともせずに悠々と先制点を決めて見せた。
 いち早く爆発が期待されていた主砲のゴールももちろんのこと、やはり遠藤の正確無比な展開力に唸らされた先制点の場面。バイタルエリアの隙間を逃さないハイリスクなパスは、二川とルーカスが近い位置でプレーできたことでその後の突破が容易に行えた。札幌DF柴田の早い寄せにとっさのダイレクトパスでバレーへ送った橋本の判断もお見事。追求されたオリジナルなパスサッカーを完遂するG大阪にしかできない芸当で、試合を優位にする先制点を奪ったのだ。ゴールまでのプロセスが遠藤の脳裏にはイメージできていたのだろう。鮮やかな展開からの得点だった。

 札幌は、左SBの西嶋が負傷から復帰、CBには川崎から補強した箕輪、前線にはブラジル人ストライカーのアンデルソンが初見参となったが、二列目の西や藤田から効果的なボールが出ずにイライラを募らせるダヴィの姿が見受けられた。中央からの突破はほぼ皆無ながら新加入のアンデルソンとエースのダヴィを生かすサッカーを試みる。序盤は、中盤で高めのプレスがついついG大阪がボールを持ちすぎた場面で効果を発揮していた。
 23分に札幌はクライトンの右CKからエアポケットに西嶋が飛び込み、ハーフボレーで同点ゴールを生み出す。このチャンスを生み出したのも直前のプレーで芳賀が体を張ったインターセプトでダヴィへの突破にボールを繋げたという経緯があった。

 この同点弾に焦らなかったG大阪。明神の献身的なリスクコンダクト、遠藤と二川のパスワークとSBもしっかり巻き込んだ中盤をワイドに使っての攻撃はしっかり機能している。特に前節から顕著なのは橋本。バレーをフォローするという意味合いも込めて右SHでプレーしているのだが、この攻撃意識がG大阪にリズムをもたらしている。36分のバレーの得点シーンはその典型的シーンだった。遠藤からルーカス、安田理と小気味良く中央からパスを繋いで札幌守備陣を切り裂くが、最後にシュートモーションに入ったのはこの橋本。そのおこぼれをバレーはあやかったわけだが、この場面では完全に橋本とバレーの2トップの図式になっていた。これまでに無い面白い攻撃の形が出来つつある。このわずか2分後には快速カウンターから二川がハーフライン付近で一人かわしてバレーにスルーパスを通すなど、G大阪の攻撃は完全にリズムに乗った。

 後半、膠着状態が続いたが、無理をしないパス回しで徐々に札幌のスタミナを奪っていったG大阪。“まず守備から”というハーフタイムの西野監督の指示は、3点目のシーンで形になる。67分のルーカスの得点は、それこそ直前の遠藤の相手DF3人を総釣りにしたアシストが光ったが、ここに繋がる起点となったのは札幌の前線へのパスを好ポジショニングでインターセプトした中澤だったのだ。守備からフィニッシュまでが見事に決まった理想的な流れだった。
 その後セットプレーの展開から1点を返されたが、84分には遠藤のFKから山口が見事に頭で合わせて4点目を奪う。今季初となる万博でのゴールラッシュにスタジアムは沸いた。これで首位浦和、2位名古屋に肉薄の勝ち点差1。得失点差で後塵を喫してはいるが、これから期待を抱かせる内容に水曜の金沢でのナビスコ杯も楽しみになってきた。

 しかし、課題が全く無いという訳ではない。今日はキックにキャッチングに藤ヶ谷のミスが目に余った。初めての古巣との対決に動揺したのか否かはさておき、肝心な守護神があのザマでは、先行きが不安になるのは確か。この試合だけと信じたいが。

 
(自力歩行できないにも関わらず始球式を行う暴挙に出た浪速のカリスマ)

 ナビスコ杯も加わり、容赦なく続くリーグも7月は5試合。どれだけ今日のような試合運びで勝ち点を積み重ねて行けるか。夏場に強いG大阪の真骨頂がもっともっと見たい。

今週も奈良は雨に泣く

2008年06月29日 | 脚で語る奈良のサッカー
 本日予定されていた奈良県社会人サッカー1部リーグの日程が、雨天によるグラウンド使用不可のため先週に引き続きの中止・順延となった。

 こんな馬鹿げたことはない。朝一番で名古屋を発ったが、早朝6時頃、向こうで土砂降りだった雨は、8時頃に奈良に着くとすっかり上がっていて安心していたというのに。その中止が通達されたのが午前9時過ぎ。大方1つのグラウンドで1日に3試合がこなされるため、第1試合開始の約1時間前といったところか。今日は奈良クラブの試合は第2試合に予定されていたため、先週のように現地で初めて知らされるということはなくてまだ良かった。まだ代替の日程は決まっていない。先週の順延分や全社関西大会を考えると、少し日程が詰まってきたことは否めない。

 しかし、その時間に今日の会場である葛城市近辺が土砂降りだったのか。中止の要因には、どうやら今日の会場がメイングラウンド(第一健民運動場)で予定されていたらしく、隣接する球場(というよりも同じグラウンド内で球場と芝生のグラウンドが共生する)や土の陸上トラックが、選手のアップ等の場所に使われるために広範囲に渡って整地が必要になるということだと推測できた。それに加えて、もちろん天然芝のグラウンドの状況を考慮しての不許可だったろう。

 これが、同じ奈良県内でも私有のグラウンドを持つ大学は置いておいて、2種や3種のサッカーは平気で泥にまみれながら試合をやっていることだろう。そうだ、今日のような曇天下、その辺りのグラウンドでサッカーをしている子供たちが概ねそれに該当する。
 本来、サッカーは雨天で中止になるスポーツではない。そこは野球に比べると遥かにこのスポーツの持つ優位性であり、よほどの雷雨や強風を伴わない限りは平気で行われる。雨が止んでいるなら、多少はグラウンドの水溜りもサッカーを愛するプレイヤーたちには苦にならない。
 しかし、奈良のサッカー環境はそれを許さない。特にこの1種の社会人のカテゴリーにおいては極めて厳しいのが実情だ。ただ、ここは県協会や社会人連盟でなく、あくまでグラウンドの管理者(市町村など)の裁定によるものであり、主催者サイドが催行の意思表示を示そうが最終的にはこの分厚い壁にぶち当たる。悲しいかな、この点で地域と連携が取れれば、雨天時の使用はおろか、1年間の日程を組む際にもグラウンドの割り当てを好環境の場所でアサインすることも可能になるだろう。

 お隣の和歌山では、先週アルテリーヴォ和歌山が雨中、土のグラウンドでドロドロになりながら、全社関西の切符を掴んだ。まだ奈良よりもグラウンドの使用条件に関しては、懐が広い様子。
 そうだ、こんなナンセンスなことでは、いつまで経っても他府県には勝てないだろう。

ちょっと名古屋へ ~14節 名古屋VS鹿島~

2008年06月28日 | 脚で語るJリーグ
 本当にサッカーは残酷な結果を時にもたらすものだ。本日行われたJ1第14節名古屋VS鹿島。シュート数17本対9本、CKは名古屋が8本、鹿島がたった1本という数字が示すように、試合は終始名古屋のペース。実際に名古屋はこれ以上のチャンスを作ったにも関わらず、不甲斐なく4失点を喫し、再開初戦からホーム瑞穂で屈辱のブーイングにまみれることとなった。筆者、その試合をフラッと観戦に訪れた。

 奈良は大和八木から近鉄特急で2時間弱。東海道新幹線の車窓にいささか飽きたこともあって、少し時間をかけながらも、アーバンライナーからの車窓を楽しむことにした。ipodでジブリの名曲の数々を聴きながら、奈良~三重へと移り変わる何とも美しい山の風景を堪能する。しかし、牧歌的な伊勢路~四日市の風景を過ぎて、名古屋に到着すると土曜日ともあってか、名駅界隈は人でごった返していた。少し時間があるので、名駅西口のビックカメラに立ち寄ると、思わぬ来客が。

 

 ガチャピンとムックではないか。生で初めて見たぞ。2人を囲む人ごみが彼らの未だ衰えぬ人気を物語る。それはさておき、足早に地下鉄桜通線に乗り込み、瑞穂運動場西へ向かう。
 雨がパラパラと降っているが、特に傘の必要はない。途中スタジアム手前のセルフ式うどん処「ころみ屋」で腹ごしらえ。今年普通であれば、足を運ぶ機会の無かった瑞穂陸上競技場に到着する。ここは個人的には好きなスタジアムだ。スタンド以外の通路は狭いにも程があるが、全体的にとても見易く、キャパもある。その昔からメインスタンドは上段に屋根を支える支柱が数多くあって、そこからサッカーを観るのは拷問に近いという難点もあるが、今回はカテゴリー1ということで、前から3列目ほどで観戦した。この日登録外の名古屋の選手たちが中国・四川大地震の救済募金を全員で行っていた。ただでさえ狭い瑞穂のメインスタンドの下で、柵に窮屈な囲まれ方をしながら募金の声がけを行う選手たちには好感が持てた。

 

 さて、その名古屋だが、再開初戦となるこの試合は、既に水曜に大分戦を終えている鹿島が相手にも関わらず、MF中村を警告累積で、そしてMFマギヌンを道交法違反による謹慎処分で欠く。中盤の要人を2人を欠く名古屋、セントラルMFに吉村と山口、そして右に小川、左に深井という中盤の布陣で挑む。おまけに中断期間にたっぷりと堪能したオフの影響が気になるところだった。
 対する鹿島は、試合勘という面では何ら問題は無い。きついが水曜の大分戦から中2日。DF内田もW杯予選で、黄色い声援と共に多忙ぶりは今やチーム一だ。登録上の関係で復帰した中田の出場はまだだが、今日は大分戦に続き、伊野波を先発に起用してきた。

  

 試合は、開始わずか4分に鹿島FWマルキーニョスが相手クリアのこぼれ玉をそのままシュート。これが勢い良くゴールに突き刺さりあっという間に鹿島が先手を奪う。対する名古屋は徐々に選手が温まってきたのか、8分に曽ヶ端のクリアミスを拾った場面から波状攻撃を仕掛ける。中盤は吉村と山口がリスクコンダクターとして機能し、攻撃は左右で巧みにポジションチェンジをしながらチャンスメイクする深井と小川がキーマンであった。前線のヨンセンと玉田にもくさびが上手く入り、小気味良くボールを繋ぐ名古屋は攻撃面で前半から鹿島を圧倒した。
 しかし、23分に右サイドで小川が折り返したボールを深井からヨンセンと繋ぎゴールをこじ開けたシーンがオフサイドで取り消されると、名古屋の歯車は狂いだす。28分には鹿島が小笠原のワールドクラスのロングシュートでいとも容易く追加点を奪った。この場内が思わず静寂と鳥肌に包まれたスーパーゴールに、この日対峙した2チームの本質が見えた気がした。
 37分に名古屋は自らが倒されて得たPKを玉田が大きくクロスバーの上に外してしまった。43分にはバヤリッツァのヘディングシュートを曽ヶ端が間一髪のファインセーブで切り抜ける。この前半45分を見る限り、名古屋の勝ち目は無かった。終始攻め立てていたにも関わらずだ。

 
<PKを外してしまった玉田。後半は下がった位置から好プレーを見せたのだが・・・>

 後半も名古屋は一方的に攻め立てた。まるでリードは名古屋にあるかの如くだった。55分に深井に代えて杉本が投入されると、玉田が左のウイング気味の位置で存在感を発揮し出す。58分の小川の右サイドからのFKは惜しくもヨンセンの頭に合わない。手ぐすね引いた指揮官はヨンセンに代えて巻を投入。ここからも名古屋の時間が続くが、そのシュートはことごとく枠を捉えず、捉えても曽ヶ端が立ちはだかった。
 鹿島は後半はほとんど防戦一方だったが、非常にクオリティが高かったのが青木と小笠原のコンビ。ボール奪取脳能力に長け、展開力を兼ね備えたこの2人に名古屋は振り回される場面が度々あった。鹿島のチャンスはこの2人が基点となっていた。しかし、それは毎度のこと、今日はやはりマルキーニョスの決定力など“個々の能力”で勝利を掴んだという印象は強い。79分には、後半頭から投入されていたダニーロが左サイドのPA外から強烈なミドルシュートを決め3-0とする。ロスタイムには内田が50mほど右サイドを怒涛の突破。ゴール前でイージーにマイナスのグラウンダー気味のクロスを入れると、フリーのマルキーニョスはそれに合わせるのみ。あれよあれよという間に4点をもぎ取った鹿島が悠々と勝利を手にしたのだった。

 
<圧巻のアシストを決めた内田。黄色い声援もチーム一だ。>

 内容と結果を考えれば、名古屋は90分間何をしていたのかさっぱり分からない。80分あたりからミスも目立ち始めたが、運動量も無いどころか、終始ポゼッションの優位性は譲らなかった。どれだけ指揮官がカリスマ性を持った人間に代わろうと、結局は個人の能力、そして決定力の面で鹿島との格の差をまじまじと見せつけられたのだ。これでは11連休などをとっている場合ではないとも思うのだが。
 守備面では中央を増川と吉田が務めたが、対人や空中戦には滅法強いこの2人もビルドアップの起点にはほとんどなっていない。前半は運動量豊富に攻撃面への切り替えを吉村が担っていた。そのあたりをまかせっきりにしたツケがセントラルMF2枚の余計な負担をかけ、スペースの空いてしまったバイタルエリアからミドルを叩き込まれるという悪循環を導いたのかもしれない。実際鹿島のゴールシーンの全てがほぼノープレッシャーだ。
 それに比べて光ったのは杉本を投入してから少し下がった位置でプレーした玉田の動きと左右にプレーエリアを問わない小川の存在。前線を最初からヨンセンと杉本の2トップ、そして玉田を左MFで起用しても面白かったように思う。ここをどう上手く起用していくか。回させられていたなら話は別だが、中2日という強行軍を差し引いても鹿島を相手にこれだけポゼッションを展開できたのだから、全く光明が見えないわけではない。さて、この日テクニカルエリアに飛んできたボールをダイレクトで美しく蹴り返した名古屋のカリスマ指揮官、マギヌン不在のまま、ここをどう建て直してくるのだろうか。

 

 とにかく、冷たい雨の中、声を出し続けたサポーターから浴びせられた更に冷たいブーイングは再開初戦から名古屋に厳しい現実を叩きつけた。

もう一つのEURO2008

2008年06月27日 | 脚で語る欧州・海外
 EURO2008本大会もいよいよ大詰め。遂にファイナリストが出揃った。ドイツとスペイン。個人的にも大会開幕前から優勝候補の筆頭として揺るぎなかったスペインの勝利を信じたいところだが、そんなことよりも今大会、別視点で個人的にEUROを楽しんでいる面もある。

 

 “やはり来たか”と思わせたのが、準決勝のドイツVSトルコの試合中にファンが乱入したところ。後半40分過ぎ、トルコのセミフが同点ゴールを決めた直後だった。日本で放映されていたWOWOWではクローゼが負傷し、顔を押さえてうずくまっている場面しかクローズアップされなかった。実況の久保田光彦氏は、警備員のタックルの様子まで完璧な実況を見せてくれたが、ここで乱入していたのが欧州一のお騒がせ乱入男のJimmy Jumpだったのだ。“まさか、もしかしてJimmy Jumpが来たか!”なんて個人的に想像していたが、後に本人のHPを見てみるとやはりその通り。しかも今回は中国のチベット抑圧に対するデモTシャツを着用していた様子。確か前回の2004年大会では、決勝戦で乱入してポルトガルのフィーゴに挑発行為をやってのけた。彼が根っからのカタルーニャっ子ということを考えれば彼の動機は当時を思い起こせば容易に想像が付く。
 それが今大会では、ドイツVSトルコだった。もちろんいつも通りの袋叩きで瞬時に場外へ。甚だ迷惑ながら、忘れた頃にやって来る彼の奇行っぷりが何とも面白いではないか。

 

 それはさておき、その他にもEUROは別視点で楽しめた。それはNIKEとadidasのプライドを掛けた対決だ。なんと今大会の決勝トーナメント進出8カ国中5カ国のユニフォームサプライヤーがNIKEという結果に。adidasは2カ国(ドイツ、スペイン)そしてPUMAは1カ国(イタリア)と、完全にここまでNIKEが大会を席巻したといっても良い。3ラインアップに及ぶEURO限定モデルのフットギアが大会に参加するスターたちの足下を彩り、勝ち進む各国の戦士たちの左胸にはスウッシュマークが光る。しかしながら、そのスウッシュマークが決勝戦で見られることはなくなった。決勝には、見事にadidasの2チームが勝ち上がるという皮肉の事態である。相変わらずスウッシュマークに世界大会のタイトルは縁が遠い。
 思えば、NIKEは2002年の日韓W杯でブラジルがトロフィーを掲げてから、長らく世界の舞台からはご無沙汰している。EUROではそのタイトルに全く無縁だ。これだけ欧州列強各国のユニフォームをサプライしながら。

 世界での強さをやはりアピールしたadidas。頂上対決はもうまもなくだ。結局最後はスウッシュマークでなく、スリーストライプが勝利を手にする。その構図から世界はまだ変わっていないのかもしれない。

伏兵の旋風

2008年06月26日 | 脚で語るJリーグ
 欧州では、EUROに皆が夢中だ。その中で大躍進を遂げた“ミラクルターキー”ことトルコの奮闘が昨夜潰えることとなった。2-3と土壇場でドイツに勝ち越し弾を奪われたものの、今大会のトルコはここまで最早主役級の活躍だ。クロアチアとの準々決勝など最高にドラマがあった。アカデミー賞なら最優秀助演男優賞に堂々とノミネートするといったところか。名将ヒディンク率いるロシアも今夜スペインと戦うため、まだ“伏兵の旋風”は収まらない可能性はある。

 日本でも“伏兵の旋風”が巻き起こっている。そう、ザスパ草津だ。昨日のJ2第22節C大阪戦も2-1で勝利し、これで引き分けを挟んで5連勝。4月18日の鳥栖戦(ベアスタ)から15試合でわずか2度しか黒星を記録していない。2005年は最下位、2006年は12位(13チーム中)、昨年は11位(13チーム中)で、J2ワーストとなる71失点を記録したほどである。その草津が今季は既に9勝6分6敗(22節終了時)と、これまでのJ2で戦った3年間で一度も記録しなかった10勝目に王手をかけ、順位も現時点で6位という奮闘ぶりを見せているのだ。

 最早、“連勝記念Tシャツ”が出た頃の騒ぎはどこへやら。このままどこまで“負けない草津”が見られるのかが非常に楽しみになってきたが、やはり、コンスタントに得点を奪えていることが今季の草津の強みではないだろうか。エースの高田は今季絶好調、コンビを組む若手FWの後藤も勝負強いキャラクターで、ここまで5得点。そして中盤にはかつてのアシスト王島田が今季帰ってきた。初の連勝を導いた2得点が記憶に新しい主将松下が牽引するその中盤は、今季は前述の島田に加え、パサータイプの熊林が徳島から移籍加入。“王様”島田がアシスト以外にもオールラウンドに動けるようになったため、攻撃の厚みは増した。
 一方で、改善が急務だった守備陣は、U-20W杯でも韓国代表の一員として活躍したペ・スンジンが横浜FCから加入し、元韓国代表チェ・ソンヨンも右SBを主戦場として戦っている。この2人のクレバーな韓国人選手の力で、今季はまだ23失点。これはJ2では5番目に少ない失点数だから、全てにおいて如実に補強の成果が出ているわけだ。

 今季は鳥栖もそうだが、この草津の健闘ぶりは間違いなくJ2を面白くさせている。かつては、飛び級制度によって関東2部リーグから、地域決勝を制して一気にJFLまでその土俵を上げた草津。そのJFLでは初年度で3位という好成績だったものの、翌年からのJ2昇格後は苦難の連続だった。選手たちは温泉街でアルバイトを続け、クラブはスタジアムの使用料を巡って、草津市や群馬県を再三問題を起こした。その経験がクラブの運営基盤を強固にしたのは事実。PRの甲斐もあって、草津を支援するスポンサーは現在その多くが県外の企業だ。成績は一向に伸び悩んだが、それでもサポーターは応援し続けた。その忍耐の時期がようやく報われようとしている。

 2004年のJFL昇格時は、JFL再編ということもあって、本来入れ替え戦を戦わなければならなかった。しかしジヤトコFCの休部が彼らを自動昇格に導いた。2005年のスタジアム使用料問題の際には、公式試合安定開催基金の適用第1号として、Jリーグから5000万円の融資を受けた。この事件は、全国の地域クラブの運営の取り組み方をもう一度考えさせるきっかけとなったが、このようにサッカー界に多くの“借り”を抱えてきた草津が、その借りをきれいに返済するためには、今季の戦いぶりを持続させ、真に面白いチームとなって、観衆を魅了し続けることである。そして今季の草津にはそれが十分可能だと思っている。

 今年、敷島公園県営陸上競技場が、ネーミングライツで正田醤油スタジアム群馬と名前を変えた。個人的にこれほどアクの強いネーミングはないと思っている。そこを拠点とする草津にもアクの強さが生まれそうな今、このスタジアムに早く足を運びたいと思う今日この頃なのだ。

巡る想いと“リスタート”のG大阪 ~11節 VS京都~

2008年06月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 G大阪がACL出場のために延期開催となっていた11節京都戦が万博で行われた。これが再開初戦となる両チーム。試合は遠藤のゴールでG大阪が1-0と何とか勝利を収めた。

 G大阪は、浦和戦の一件を受けてこれまでゴール裏をリードしてきたBBが解散、水本がこの日対戦する京都へ電撃移籍するなど、選手、サポーター共に様々な想いが巡り巡る再開初戦となった。
 この日からコールリードは、BNAとガンビーノの主導によって行われることに。サポーターミーティングでは若干のコール変更の旨が伝えられたが、試合が始まれば特にいつもと変わりはない。そして試合前には金森社長が浦和戦の一件を顧みて、これからのスタジアム運営の決意表明を約5分間に渡って話すなど、クラブにとってはまさに成績と今後の運営面においても“リスタート”と呼べる雰囲気であった。

 

 肝心の試合は、“バレーの決定力不足にここまで足を引っ張られるのはもうごめんだ”というのが率直な感想。90分を通じて7本もの決定機をフイにしたバレーに対して、決勝点を正確にゴール右隅に決めた遠藤はこのシュート1本しか打っていない。しかも殊勲の7番は、この中断期間、W杯3次予選のためにほとんどチームに合流していないのだ。テクニックの差が出たというべきか。とにかくピッチの中で頭を抱えるバレー以上に頭を抱えているのはサポーターだ。
 バレーだけでなくルーカスにもツキが無かったが、22分のバレーのチャンスを始め、京都はGK水谷が当たっていたし、守備陣が良く奮闘していた。特にバレー対策として大久保、増嶋だけでなく、右SBの角田までもが中央のフォローに入る徹底ぶり。それにフォアリベロのシジクレイが最終ラインに溶け込むように助太刀するのだから、この壁は強固だ。おそらくバレーが前線でほぼ1トップの形で張り、ルーカスを中盤でプレーさせたのは、ここを打開するためのポゼッション確保を考えてのことだっただろう。
 案の定、中盤のポゼッションはG大阪に傾いた。京都は攻守の切り替え時にほとんどロングボールを蹴り込んできたが、前線の田原、柳沢、徳重にはほとんど脅威を感じることはなかった。だからこそ余計にバレーがことごとく決定機を外し続けたことは悔やまれる。随所で京都の最終ラインの裏を突破もできていた。本当ならばもっと点差は開いていたはずだ。あと少し抑えてシュートを打てば、威力は申し分ないのだが。

 

 しかし、悲観的なことばかりではない。全体的に先週末の練習でも叩き込まれていた攻守の切り替え時の早さは及第点と言えるし、特に橋本、明神、二川の3人によって、高い位置で狭いプレーエリアをダイレクトパスで崩すようなシーンも見られ、前線への好配球を見せた橋本の攻撃意識は心強いものがあった。京都右SBの角田が中央でバレーをケアするシーンが多かったため、左SBで先発した下平も生き生きとプレー。39分には角田とのマッチアップを制してバレーへ絶好のクロス、40分には二川とのコンビネーションからルーカスへドンピシャのクロスを配球するなど、持ち味をいかんなく発揮した。
 先制点の場面も、その1つ前のプレーで橋本がルーカスに相手ライン裏へのロングボールを供給している。これで見事に大久保、増嶋、角田が釣られてできたスペースにフリーで二川が入ることができた。橋本のロングボールを水谷がクリア、これを遠藤がフリー、繋いだ二川もフリーでは京都も為す術がない。京都MF佐藤のアプローチが届かなかったが、結局、その後ボールを受けたルーカスは飄々とターンしながら左から走り込む遠藤に。彼の左足から放たれたコントロールショットが勝利を呼び込む貴重な得点となった。

 最小得点差ではあったが、明暗を分けた53分の得点シーンのように、中盤の構成力と個人能力の差が出たのが勝負の分かれ目で、双方ともに極力高い位置で攻撃を作ろうとはしていた。粘り強く、そして組織的な京都の守備は特筆すべきものがあったと個人的には思う。今季のシジクレイの起用法などはその最たる例だが、これで中盤がもっと良くなれば前線も良い選手が揃っているので、成績に反映されると思うのだが。

 とにもかくにも、これで5位に浮上。首位浦和との勝ち点差は「4」。中断前の不振を振り払う“リスタート”としては悪くない。

J1からJFLまで真っ逆さまも夢ではない

2008年06月24日 | 脚で語るJリーグ
 “Jリーグは24日の理事会で、将来的に2部(J2)のクラブ数を最大で22とする案を承認した。7月10日の日本サッカー協会理事会で正式に決まる。

 J2のクラブ数は段階的に増やされる方針で、18以上になったシーズンからは、1部(J1)J2入れ替え戦を廃止し、J1下位3チームとJ2上位3チームを自動的に入れ替える。22クラブとなったシーズンからは、J2にも初めて降格制度を導入。Jリーグ加盟条件を満たす日本フットボールリーグ(JFL)3位までのチームとJ2下位チームを自動的に入れ替える。

 1999年に10クラブで発足したJ2は今季で15クラブにまで拡大。J2入りの成績面の条件は、準加盟クラブがJFL4位以内に入ることとなっており、早ければ2010年にも22クラブとなる可能性がある。” (6月24日 スポーツ報知より)

 ということで、いよいよ下位カテゴリーにも群雄割拠の時代が訪れる。J2のチームが増えることも、降格制度が取り入れられることも、良い意味での“競争”をもたらしてくれるだろう。そしてここで注目したいのは、何よりJ1の自動降格ではないか。
 
 これまで毎シーズンJ1で活躍していたクラブが不振を極め、わずか2年でJFLまで真っ逆さま。なんてことも最悪起こるかもしれない。これまでシーズン末期の入れ替え戦は数々のドラマを生んできたが、これで更にリーグ戦自体がより一層盛り上がることになるはず。一瞬の油断すら許されない戦いが毎年のように下位チームにはのしかかってくるのだ。

 J1から最短でわずか2年でJFLまで降格の可能性が出てくる容赦ないこの制度は、プロクラブとしての収入面を考えれば確実に死活問題。現時点でほとんどJFLの放映というのは行われていないため(チームによっては地域ごとの取り組みはある)、現行制度で進めば放映権はゼロになってしまうと考えて良い。注目度は一気に下がり、体たらくな降格続きのクラブからはスタジアムに駆けつけるファンは姿を消す。そして実力選手の移籍は、各チーム間でこれまで以上に活発に行われることになるだろう。「ここまで痛い目を見ることはない」などと今から高を括っていると、非常に危険だ。そしてこれは現在の大抵のJクラブに言えるのではないだろうか。

 ここでおそらく大事になってくるのが、全てのクラブの目標が「J1への昇格、J1での優勝」でなくとも良いという時代をいよいよ迎えるということだろう。これまで背伸びしながら経営を切り盛りしていたクラブは一気に淘汰され、クラブとして真の競争力を纏ったクラブだけがJ1の上位争いを切磋琢磨する時代になりそうだ。中小クラブとビッグクラブの格差はこれまで以上に如実に現れてくる。つまり今まで以上に“身の丈経営”、“身の丈目標”が重要になり、特に資本集めに苦難を極めている地域クラブはその最たる例となるだろう。「うちのクラブはJ2中位定着、そして育成した選手をJ1クラブに高額で売却する」といったイタリアのプロビンチャ感覚のクラブ方針がベターになってくるクラブも生まれるはずだ。

 本当に面白い時代になってくる。これでまだ産声を上げたばかりの多くの地域クラブが、JFLを現実的な目標にして、条件面を満たしさえすれば、Jリーグという高みが一気に現実味を帯びてくるのだ。この上位下位カテゴリーの入れ替えが盛んになればなるほど、地域にJ基準を満たしたクラブが増えるということになる。その反面、これまで以上にクラブの現実を受け止めた経営方針と目標が大事になってくるし、失敗は許されない。

 これまでJFLチームに適用されてきた「Jリーグ準会員制度」を今後、この制度の導入の中でどうしていくかが個人的には注目している。
 それにしても、これでようやくクラブ間の競争力が豊かで、今まで以上に熱のこもったレベルの高い試合が各カテゴリーで見られる時代になりそうだ。勝ち点団子状態から、運を手繰り寄せたクラブにポロッと棚ぼた的優勝が転がり込む時代に“おさらば”できそうである。

光の差す方へ ~元鳥栖“三銃士”が奈良で復活~

2008年06月23日 | 脚で語る奈良クラブ
 本日、奈良クラブは新加入選手の追加登録完了を発表、先日ここでも紹介した河合選手をはじめ3選手の入団が決まった。

MF河合学 (←ディアブロッサ高田FCガロットス)
DF中村祥朗 (←元アイン食品)
J1リーグ17試合出場0得点、J2リーグ74試合出場1得点
DF土井陽介 (←奈良育英高)

 なんといっても注目は中村選手。ご存じの方も多いと思うが、かつて鹿島では中田浩二、小笠原満男、曽ヶ端準、本山雅志らと同期入団で、在籍した1998年~2001年まででリーグ戦も含めた公式戦20試合出場1得点という戦績を残しており、アジアカップウィナーズカップやゼロックススーパーカップでも出場経験を持っている。その後に在籍した大分(当時はJ2)、広島でも出場経験を持ち、鳥栖では2年間の在籍で公式戦76試合出場1得点という記録を残している。その後昨年まで関西1部リーグのアイン食品でプレーしていたが、今年は退団していた。
 なんと心強い選手の加入が決まったのだろう。本職の左SBでの起用が濃厚だが、鳥栖時代には3バックの左も務めた。ただでさえ選手層の薄い奈良クラブにこれだけの経験者が加入してくれることは、精神的にも大きい。そのケタ違いの経験が様々な面でチームにプラスになると思うし、何より在籍選手のモチベーションが上がることも間違いないと思う。これで矢部(2000年途中~2004年)、東(2001年~2002年)、中村(2003年~2004年)とかつてサガン鳥栖の主力として活躍した“三銃士”が顔を揃えることとなった。

 河合選手は、昨日のエントリーでも触れたように県内の強豪を渡り歩いた中盤の選手。10番を付けていたガロットスでもレギュラーとして活躍。練習も積極的に参加しており、今後、矢部や東を含めた奈良育英トリオが中盤の核として形成されそうだ。
 土井選手は、今春奈良育英高を卒業したばかり。高校選手権にも登録メンバーとして名を連ねており、昨年大晦日に行われた前橋育英高戦ではベンチにも入った。DF以外にも前線もできるユーティリティさと上背が持ち味で、今後は、様々なポジションでその適応力を見せてくれそうだ。

 とにもかくにも、こういった新加入戦力が、徐々にチームに加わってくれるのは非常に嬉しいこと、全社関西大会を目前に控え、少しでも練習と実戦で連携を深めていくことが大事になってくる。
 和歌山では、アルテリーヴォ和歌山が昨日、全社関西の出場権を得た。あちらも昨年G大阪でプレーした玉置慎也を獲得し、チーム力は充実の一途を遂げている。ノックアウトの戦いではあるが、“再戦”の可能性は全くゼロではない。

 光の差す方へ邁進は止まらない。さあ、ますます奈良クラブの今後が楽しみになってきた。

※昨日の順延分、奈良クラブVS大和クラブの全国クラブ選手権奈良大会2回戦は、7月6日に奈良大都祁グラウンドでの開催が濃厚。キックオフ時間は後日改めてアップ致します。

雨に泣かされる奈良県サッカー

2008年06月22日 | 脚で語る奈良クラブ
 今日予定されていた全国クラブ選手権奈良大会2回戦。場所は吉野町総合グラウンド。奈良クラブVS大和クラブを含めた2回戦全4試合が予定されていたが、前日からの雨でグラウンドの使用許可が下りず、結局全試合順延に。午前10時からキックオフ予定の奈良クラブの第1試合に備えて選手、サポーターが乗り込んだにも関わらず、約1時間前の無情な決定に急遽引き返さざるを得なくなった。代替開催日は7月6日(日)の予定で、現在まだ試合会場は決まっていない。

 午前9時前には小雨の天候だったにも関わらず、土であろうが、芝であろうが奈良のグラウンド管理はどこも厳正だ。地元の吉野町が運営する吉野運動公園管理事務所は最後までゴーサインを出すことは無かった。土のグラウンドが前日からの雨でかなり緩くなっている上に、4試合も行うことを考えれば、かなり整地の手間もかかるとの判断か。グラウンドを見る限りでは、特に目立った水溜まりも無く、試合開催は可能に思われるが、そこは関係ない。聞けば試合を行う前に雨が降り続けていれば、中止になる可能性は非常に大きいという。試合中に降ってくれば、それは予定通りにそのまま使用が認められるという、何とも納得し難い理屈がそこには存在するようだ。これでは県内の1種サッカーの行く先は明るくない気がする。

 

 選手は奈良市内のYANAGI FIELDに戻り、急遽練習を敢行。試合出場予定の全員の選手が集まったわけではないが、矢部選手のコーチングの下、新加入の河合学選手(ディアブロッサ高田FCガロットスより移籍)をはじめボール回しからフィジカルトレーニングに何人かの選手が汗を流した。やはり、試合が中止になった時も、こうやって体を動かせる拠点があるのは本当に有り難いことだ。
 河合選手は奈良育英高出身で、ガロットスでは10番を背負っていた中盤の選手。県内の強豪Atleticoにも在籍経験があり、県リーグの戦い方を知り尽くした心強い選手の加入は確実にチームの力になりそうだ。

 

 そして現在チームには、2人の練習生が加わっている。土井選手(←奈良育英高)と新沼選手(←一条高)の2人で、まだ今春高校を卒業したばかりの若い選手だ。是非チームの戦力になってもらえれば心強い。

 今日は遠路遙々、名古屋から応援に駆け付けて頂いた有志の方もおられたのに非常に残念な順延劇となってしまったが、これが奈良県サッカーの嘆かわしい現状。しかし、このおかげでまた毎週末に試合が続く連戦の過密日程は全社までノンストップとなった。その全社関西大会の組み合わせ抽選は7月3日に行われる。関西のフィールドでチームの実力が試される日は近い。

立ち止まっている暇はない ~6/21練習レポ~

2008年06月21日 | 脚で語るガンバ大阪
 梅雨の時期特有のジメジメした暑さがひどく肌にまとわりついた今日。午後からの雨を考慮してか、午前だけの1部練習に切り換えられたG大阪。再開初戦の京都戦を4日後に控え、“例の騒動”に囚われている暇もなく選手たちはトレーニングに励んでいる。この日はサーキットメニューから10対10のハーフコートの紅白戦など約150分間、猛暑の中できっちり選手たちは追い込まれた。

 

 <メニュー>
・ストレッチ
・サーキットメニュー
・軽くジョグ
・ドリブル練習
・リフティング
・ショートキック
・複数のボール使用にてパス回し(トップ、サテライト別々の場所にて)
・2タッチ制限パス回し(トップ・サテライト分かれて、ミネイロ・二川フリーマン)
・1タッチ制限パス回し
・10対10(GKも含む、二川がフリーマン、ミネイロは別メニュー)
・CB→SH→ボランチ→SB→FWへとクロスからのシュート練習
・クールダウン

 この日は、目を痛めた(?)GK松代が室内で調整、肝機能不全の播戸と代表で離脱中の遠藤、安田理以外の全選手が参加していた訳だが、何よりも最大のハイライトはハーフコートでのゲーム形式をじっくり行った点だろう。少ないタッチでのパス出しに重点が置かれ、特に攻守の切り替えの早さをかなり要求されるものだった。故に西野監督が好む“タフな”内容となったが、遠藤が五輪代表OA枠で招集されることを想定すれば、この素早く繋ぐ意識は必ず生命線になる。

<トップ ビブスなし>
GK藤ヶ谷
DF加地、中澤、山口、下平
MF(フリーマン二川)、橋本、明神、ルーカス(後半からトップへ)
FWバレー、山崎(後半=平井 左MFに)

<サテライト ビブスなし>
GK木村(後半=木下)
DF佐々木、福元、植田、安田晃
MF星原、倉田、武井、(フリーマン二川)
FW岡本、平井(後半=山崎)

 トップ組はバレーと平井、サテライト組は佐々木が得点シーンを見せてくれた。FW陣は割と好調のようだが、やはりバレーのイージーなシュート逸は未だに目立つ。やはり前線は彼の決定力次第か。ただ、後半に平井がトップ組で良いプレーしたことは大きな収穫。確実に指揮官の信頼を得ている様子が窺える。何しろ実戦が近いこともあり、自ずと選手たちのアピールも激化している。基本的に大人しいチームにおいて、特に大きな声を出して引っ張っていたのは中澤と福元だった。

 

 中澤は、水本の退団によって、今後エクスキューズの効かない主軸の存在へと成長すべきだ。それは本人が最も自覚しているはずだろうが、これまで“指揮官の信頼”にすがっていた面がどうしてもクローズアップされているので、守備面での安定感を得てそこを払拭したい。今季は高さを生かした得点力をいかんなく見せている。本職のCBとして、隙の無い存在になってもらいたい。

 

 今後確実にチャンスが増える福元。中澤を脅かすにはそう時間は要らないはず。全南戦でも終始安定したプレーを披露していただけに、中澤を食ってかかる存在になってG大阪で定位置を掴んでもらいたい。この2人の競争がどれだけチームの上昇気流を導けるか非常に面白いところだ。

 

 監督の意向からか、紅白戦は別メニューで疎外されてしまったミネイロ。水本の退団による契約延長が濃厚か。それにしても相変わらずの陽気で全くマイペース調整でも彼自身は問題無さそう。

 

 水本の退団に頭を悩める指揮官。しかし、おそらくそれほど取り留めていないはず。やはり彼の気にするところは攻撃面。遠藤不在時のことで頭が一杯のはずだ。そういう意味では良い動きでアピールする平井をどういう局面で使ってくれるか。とにかくリーグ戦にナビスコ杯と、正念場の夏の陣が幕を開ける。開幕当初のような低調ぶりではサポーターは納得しない。そこのプレッシャーがおそらく当面の最大の敵となる。
 立ち止まっている暇はない。