脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

プレイバックKSL後期第11節

2009年06月29日 | 脚で語る地域リーグ
 暑さの増す気候の中、デイゲームを中心に行われているアマチュアのカテゴリー。基本的に同会場で午前・午後と分けて2試合が行われる関西リーグの激闘も後期第11節を終えて残り4試合というところまで来た。

 Div1では、首位・バンディオンセ加古川に挑んだ3位・AS.ラランジャ京都が3-1と勝利をもぎ取り、2位に順位を上げた。3位・三洋電機洲本と勝点19ポイントで並び、首位の加古川を追走している。今節、阪南大クラブに苦杯を喫したアイン食品は4位に順位を下げたが、勝点18ポイントのアイン食品までが全国地域リーグ決勝大会進出の1枠を争うことになるだろう。
 しかし、前期はピリッとしなかった阪南大クラブは1分けを挟んで3連勝と復調著しい。毎シーズン後期に強いと言われるダークホースが落ち着きを取り戻してきた。次節は首位・バンディオンセ加古川との対峙を控えるだけにこの試合の行方は注目が集まるはずだ。
 また、Div1に昇格してから苦戦の続いていた滋賀FCはFC京都BAMB相手に6-2と圧勝するなど光明の見える戦いぶりを見せたようだ。来季以降の布石として、今季の残り試合をどれだけの戦いぶりで終われるかは重要なポイントだろう。

 Div2では相変わらずルネス学園甲賀が信じられないほどの攻撃力を見せている。今節もディアブロッサ高田を5-2で下し、ここまで10試合で47得点という数字。ただ、失点も多いのだが、まさに“取られたら倍取り返す”といったスタイルで首位の座を堅持している。勝点1ポイント差で彼らを猛追する奈良クラブとは次々節で直接対決。まさに天下分け目の戦いになりそうだ。
 今季からDiv2に戦いの場を移すことになった神戸FC1970も今節FC堺に勝利して順位を5位に上げた。最下位のJSTは京都紫光クラブとの激戦の末にまたも初勝利ならず。厳しい戦いが続いている。まだミドルゾーンから下位は勝点差も切迫しているだけにまだまだどうなるかは分からないところではある。

 ここでネックになってくるのは、新型インフルエンザの影響で後期第8節が10月に延期になっているという点。各Divの優勝争いや昇降格への熾烈なデッドヒートが丸々2ヵ月間ぷっつりブレイクを挟んでしまうということになる。おそらくどちらのDivも団子状態が予想されるだけに、この点においては各チーム悲喜こもごもといったところだろうか。

雨中のハイトランジションを制す

2009年06月28日 | 脚で語るガンバ大阪
 G大阪、横浜FMを下して公式戦6試合ぶりの勝利。遠藤と橋本の代表コンビが貴重な2得点を叩き出し、5月10日の柏戦以来の勝利を手繰り寄せた。

 久しぶりの“リアルタイム”スカパー観戦。画面の向こうに見えたのはこちらと打って変わってドシャ降りの横浜。調子の上げてきている横浜FMを相手に、先日のACLの敗戦を引きずらないことは重要。ルーカスがベンチスタートで久々にレアンドロとチョジェジンが2トップを組む陣容となった。

 試合は非常にトランジションが速く、高レベルの試合になった。松田と小椋を軸に中盤の素早いプレスを仕掛けてくる横浜FMを相手に試合の流れをなかなか掴めなかったG大阪。21分にはゴール前で中澤のクリアボールを拾われ、松田に先制点を決められる展開になった。

 前半こそ横浜FMのペースだったが、後半に入ると頭からチョジェジンに代えてルーカスを投入したG大阪がペースを握る。組み立てからボールに絡めるルーカスが入ったことは、高い位置でG大阪のボールポゼッションを生み出した。
 53分に下平が左クロスから折り返すと、相手がクリアしたところに遠藤が落ち着いて同点ゴールを決める。あまりの落ち着きぶりに余裕すら感じられた。追撃の狼煙は追加点を呼び込むのに時間がかからなかった。
 54分には、レアンドロのシュートが相手DFに当たってコースが変わる。これをゴールラインを割らすまいとしたGK飯倉のキャッチミスに橋本が反応。逆転弾となるシュートを決めた。前半の劣勢がこの2得点でうまく打破できたG大阪。敵将が試合後振り返ったように、1点のビハインドを背負い前に出てくる横浜FMを上手くいなし続けた。

 久々の勝利もさることながら、幾つかの収穫が確かにあった。
 まずは、やはり攻撃にスピードと鋭さをもたらす二川の存在感をつくづく実感。この試合の16分の局面(チョジェジンが迎えたGKと1対1のチャンス)に見られたようにボールを持った次の瞬間には唸るところにパスを出してくれる彼の存在は間違いなく今後も前線のレアンドロとチョジェジンを活かしてくれるはず。この試合は脚を傷めて山崎と途中交代したが、二川が残りの試合をフル稼働してくれれば、前述の2人のゴール数は増えるだろう。
 そして、安田理との左サイドバックの先発争いで徐々に差をつけている下平がこの試合で良い動きをしていた。同点弾を呼び込むきっかけも彼の折り返しだったが、他にもチョジェジンにピンポイントの折り返しを送るなど攻撃面で活躍。小宮山と並んで強力な横浜FMのサイドバック、対面した田中への対処も難なくこなせていた。線の細い選手だけに守備面には不安が残るが、全般的に均衡がとれてきた気がする。
 何よりも代表コンビの遠藤、橋本が試合を決定づけたのは、ここ最近元気の無かったG大阪にとって盛り上がる試合の決め方だった。攻撃に良く絡んでいた橋本の動きの良さを非常に印象に残る試合でもあった。

 ACLが終わっても過酷な日程は続く。水曜日には先日辛酸を舐めさせられた川崎との再戦。しばらく勝利に見放されている等々力でもこの日のような試合ができれば、まだまだ前進は可能だ。

五色での借りを返す5発 -VS三菱重工神戸-

2009年06月27日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは第11節を迎え、Div2の2位・奈良クラブは5位・三菱重工神戸と対戦。ここ数試合絶好調の攻撃陣がこの日も爆発し、5-0と快勝した。同日行われた試合で首位・ルネス学園甲賀は勝利したため、勝点差1ポイントこそ埋まらなかったが、13節の直接対決に向けてチームの勢いは万全といえる。

 

 思い起こせば、GWにアスパ五色で戦った際に今季のリーグ戦唯一の敗戦を喫した奈良クラブ。相手はこの三菱重工神戸だった。前半こそチャンスを決められず、0-0の展開だったが、後半も相手にほとんどペースを与えない快勝劇だった。着々と復帰を果たすレギュラークラスの負傷者が良い動きを見せる。従来試合に出ていた選手たちも負けじと試合でアピールする。決して選手層は厚くないが、ポジティブにプレーレベルが上積みされているようで、その結果がゴールに現れているようだ。

 
 右SBで久々の初先発を果たした中村。
 豊富な経験からの落ち着きぶりは健在。
 52分には強烈なシュートでゴールを射貫いた。

 
 序盤戦こそ目立たなかったが、徐々にチームに順応する檜山。
 チームを勢いづける3点目を奪い2試合連続の得点でアピール。

 
 2アシストと本領発揮、チームのバンディエラ・矢部。
 ボールを取られず、一瞬で前線にチャンスメイク。

 
 後半開始から出場の和阪が相手と競り合う。
 3節以来、約2ヵ月ぶりの復帰で後半の攻勢に貢献。

 
 こちらも5節以来、途中出場で復帰戦となった石田。
 負傷の影響を見せずに1得点と結果を残すあたりはさすが。

 
 誰が出ても点の奪えるFW陣。
 今後のレギュラー争いは熾烈になりそうだ。

 
 終了間際には畑中も自身の負傷復帰を祝うゴールで5点目。
 これからの上位との対戦時には欠かせない選手だ。

 
 J経験者でもある中村と石田の活躍はチームにとって大きなプラス。
 ちなみにこの2人は中高も先輩・後輩の関係。

 リーグ戦ここ3試合で6得点の松野正を欠きながら、5人違ったスコアラーを生み出した試合は、引き続きチームの充実ぶりを感じさせてくれた。しかし、ここからは4位・FC堺、首位・ルネス学園甲賀、3位・京都紫光クラブと上位陣との戦いが続く。前期はこの3チームに対する戦績は1勝2分。Div2トップの座を狙うのならば、真価を問われるのはここから。慢心せずにチャレンジャーの姿勢で戦っていきたい。

万博、失意の夜 -ACL VS川崎-

2009年06月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 今季のAFCチャンピオンズリーグはラウンド16に突入。日本勢同士の対戦となった万博では前年度チャンピオンのG大阪が川崎を迎えて激突。前半をリードしながら、後半に立て続けの失点を許したG大阪はまさかの逆転負けを喫した。

 “この試合だけは絶対に負けられない”そんな雰囲気が試合前からスタジアムを包んでいた。G大阪はレアンドロもついに帰還し、久々にベストメンバーを組める状況で連覇を狙うACLのこの大一番。昨年の優勝を思い出せば、誰もが熱を帯びるのは当然だった。

 立ち上がりから拮抗した試合は好ゲームの予感。19分の山口の惜しいヘディングシュートを皮切りにG大阪が徐々にチャンスを作る。26分には裏に抜け出した遠藤がシュートするもわずかにゴールの左。そしてその直後に橋本のスルーパスを右サイドで受けたレアンドロがそのまま持ち込んで先制点を挙げる。ここまでゴールに飢えていた万博を歓喜と熱狂が包む。待ちに待った久々のゴールは頼れるエースの復帰弾だった。

 
 27分、レアンドロが先制ゴールを決める。

 しかし、33分に川崎・中村がエリア手前から技ありのシュートを決めて同点にされる。GK藤ヶ谷がわずかに届かない絶妙なシュートコース。やはり川崎は一筋縄に勝たせてくれない。嫌な時間に追いつかれてしまったが、それをすぐに忘れさせてくれたのもレアンドロだった。
 39分に右サイドでボールを受けた加地が悠々とクロスを上げると、ファーサイドににフリーで走り込んだレアンドロの頭にピタリと合った。しばらく実戦から遠ざかっていたとは思えないこの大会10得点目で、再びリードを奪って後半へ折り返すことになった。

 
 川崎の同点弾は絶妙なコースを辿った中村のシュート。

 
 好クロスでレアンドロの2点目を演出したのは加地。

 久々のリードする試合展開にハーフタイムを挟んでサポーターの意気は揚がった。ところが、いざ後半に入ると試合を決定づける3点目が遠い。それどころか川崎にもチャンスを与える場面も見えてきた。中盤では熾烈さを増す攻防が復帰間もないメンバーを多く有するG大阪の運動量を徐々に削りつつあった。
 ルーカスがごとごとく決定機をフイにしていると、76分に川崎はオフサイドギリギリの位置でボールを受けたレナチーニョにゴールをこじ開けられる。そして85分には明神のパスミスを相手にかっさらわれ、中村のスルーパスを受けた黒津に逆転ゴールを許してしまった。

 
 左SBに戻った安田理だったが、クロスの質と守備面で脆さを見せた。

 
 逆転ゴールを決めた黒津が歓喜の渦巻き起こるゴール裏に駆け寄る。

 G大阪にとっては最悪の展開。前年度の覇者は試合運びの面で全く“覇者”らしからぬ有様だった。試合終了と同時に失望感がスタジアムを覆い、万博ではリーグも含めて3連敗という有様にブーイングが巻き起こった。

 
 ロスタイムに中澤が渾身の折り返しを見せるがファウルを取られる。

 
 負傷から復帰の遠藤も攻撃面で奮闘したが、勝利を導けず。

 延長戦をも見越した要らぬ心配をしたのか、西野監督が交代カードを切るのが遅すぎた感は否めない。81分にようやくチョジェジンが、そしてワンチャンスを期待してか佐々木、播戸をロスタイム直前に投入するなど、大事な一戦で後手後手になってしまった。このメンバーを信じ切ったのだろうか、前半が良かっただけにゲーム修正を図れなかったことがとにかく悔やまれる。

 とにかく、勝敗は別にすれば、両者の執念が中盤の攻防に激しく見られた面白い試合だった。ピッチ上での川崎のストイックさは本当によく伝わってきた。彼らにとってはこれまで再三涙を呑んだ相手だっただけに喜びはひとしおのはず。是非、初タイトルとしてのアジア制覇を目指して欲しい。

 
 10年越しの鬼門・万博を遂に攻略した川崎。
 悲願のアジア制覇に向けて一歩前進。
 G大阪の分もドバイを目指して頑張って欲しい。

中村俊輔、戦いの場をスペインへ

2009年06月23日 | 脚で語る欧州・海外
 日本代表の中心プレイヤーで、スコットランドプレミアリーグ・セルティックの中村俊輔が来季からリーガ・エスパニョーラ・エスパニョールへの移籍することが22日に確実になった。

 

 古巣の横浜FMが獲得を断念したことで、今回の移籍が決まった結果となったが、中村俊に関しては、やはりまだ海外の高いレベルでできるならプレーして欲しいというファンの声は多かったはずだ。個人的にもスペインでプレーする中村俊の勇姿は今から非常に楽しみであるし、何らかの結果をスペインでも残してくれると思う。今回セルティックを退団するストラカン監督もかねてから中村俊がスペインで順応できること示唆していたのだから(マーティン・グレイグ著「中村俊輔」スコットランドからの喝采より)。

 エスパニョールはスペインのバルセロナに本拠地を置く。創立は1900年と同じ街のライバル・FCバルセロナには1年及ばないが、スペインでは老舗クラブだ。今季は監督がシーズン中に2度交代し、成績も浮沈の激しいシーズンだった。12試合勝ちが無いと思いきや、終盤には勝利を重ねて残留争いから脱出し、10位でフィニッシュに至った。長年チームの軸になっているデ・ラペーニャ、タムードの両ベテランにはプレミア移籍の噂が囁かれているが、個人的には現有戦力と中村俊の融合は興味深い。来季は確実にリーガのTV観戦がこれまで以上に増えそうな気がする。これまでスペインで成功した日本人選手はいないとも言えるだけに、是非、中村俊にはその才能を新天地でいかんなく見せつけて欲しいものである。

 
 
 この鮮やかなFKをスペインでも存分に披露して欲しい。

 フランス・リーグアンのレンヌに移籍した稲本も同様、日本人のトッププレイヤーが世界の第一線で長くプレーできるのはやはり嬉しい。今から中村俊の活躍が楽しみでしょうがない。

スローリスタート

2009年06月22日 | 脚で語るガンバ大阪
 20日に再開したJ1。G大阪はホームで新潟を迎えるも0-2で敗戦。シュート24本を放つも無得点での完敗で、順位は7位に後退。首位・鹿島との勝点差はついに12ポイントまで開いてしまった。

 負傷明けの加地が開幕戦以来の先発、高木と倉田も今季リーグ初先発、後半には遂に二川も復帰するなど、山口、遠藤の欠場を忘れさせるほどのトピックスがあったが、いざ試合になれば彼らの存在の大きさは如実に表れてしまった。ボールを支配しても得点を奪えず、逆に新潟がボールをテンポ良く回すと守備がかなりバタついた。特に31分の矢野に先制点を奪われた場面は左右に揺さぶられて、完全に崩された印象を受ける。
 後半に入って二川が投入されたが、加地も含めてまだ試合勘が戻っていない様子だった。良い形でFWにボールが集まらないのは、やはり開幕当初からの課題なのかもしれない。疲れが見えてきた82分にマルシオ・リシャルデスのスーパーな一発。これには守備陣も何もできなかった。

 新潟との集中力の差が勝敗を分けたこの試合。ACLラウンド16・川崎戦を控えた直前ということを考えれば非常に不安な出来だった。負傷明けの加地や二川を起用し、負傷の遠藤と出場停止の山口を欠いたとはいえ、無得点ではリーグはおろかこれから厳しい戦いを迎えるACLやナビスコ杯も心許ない。

 このスローリスタートの挽回は予想以上に難しいはず。川崎とACLを戦った後のリーグ戦の相手は今節浦和を破った横浜FM。そしてまた川崎とのリーグ戦をミッドウィークに控える。早くも正念場を迎えているG大阪、今週の2連戦でスタジアムから溜め息が漏れてこないことを祈るばかりだ。

琉球魂、アウェイを思わせぬ -佐川印刷VSFC琉球-

2009年06月21日 | 脚で語るJFL
 JFLは前期第16節を迎え、5位・佐川印刷SCが太陽が丘に16位・FC琉球を迎え対戦。前半早々に山下のPKで先制した琉球は、27分にも杉山が追加点を挙げ試合をリード。前半終了間際に佐川印刷に1点を返されたが、後半の劣勢を何とか乗り切って今季5勝目を挙げた。

 曇天の太陽が丘は非常にジメジメした天候だったが、いざスタンドに到着すると、予想以上に観客が多い。沖縄から駆けつけたであろうサポーター10名強に加え、現地の高校生まで多く観戦に来ていた。そのスタンドにはFC琉球のスーパーバイザーを務めるスポーツライター・金子達仁氏の姿も。京都にも関わらずどことなく琉球のホームの雰囲気すら漂っていた。

 
 ここまで5連勝と絶好調の佐川印刷。
 FW塩沢を中心にリーグ3位の得点力が好調の要因。

 
 開幕6連敗でスタートダッシュに失敗したFC琉球。
 16位と順位は厳しい位置だが、サポーターの声援に応えたい。

 
 開始わずか1分過ぎ。佐川印刷GK大石がエリア内で相手を倒す。
 これにはすかさずPKの判定。琉球が大きなチャンスを得る。

 
 このPKをFW山下が豪快に蹴り込み、琉球が先制する。
 この先制点がチームの魂に火を点けた。

 
 佐川印刷・FW平井を囲い込む琉球の守備。
 琉球は集中した守りで佐川印刷のゴールを1点に抑えた。

 
 良い形でボールをもらえずゲームを作れなかったMF中井。
 琉球の主将・国仲は素早いチェックで勝利に貢献。

 
 福岡や仙台、柏、栃木などを渡り歩いた山下。
 頼れるベテランとして琉球の攻撃の中心に君臨。

 
 山形や京都でも活躍したDF鷲田の存在も大きい。
 この日は体を張った守備で最終ラインを統率した。

 
 指揮を執っていたのは強化担当の白井。
 かつて清水や湘南で長らくプレー。
 「マイアミの奇跡」時の五輪代表メンバーだ。懐かしい。

 
 2-1とリードして迎えた後半、佐川印刷の猛攻を凌ぎ続ける。
 GK新崎を中心に中央を崩されず、琉球は良く集中していた。

 80分を過ぎた頃、スタンドに多く陣取っていた高校生たちを中心に観客がざわめき立つ。その答えはすぐに分かった。声援の矛先は、琉球が3人目のカードとして投入したDFソンミンチョルだった。地元京都出身の選手で京都朝鮮高級学校在籍時に全国選手権に出場。朝鮮大学校時には関東大学選抜だけでなく、北朝鮮U-23代表にも選ばれた選手。今季からFC琉球に加入していた彼は、スタンドに駆けつけていた京都朝鮮高級学校の子供たちにとってヒーローだったのだ。ホームのような盛り上がりを受けて琉球は勝利を目前にさらなる粘りを見せる。

 
 度重なる守備に疲れも見えていた琉球だったが、
 ボールを相手陣内で奪えば怒濤のキープでロスタイムを迎える。

 
 佐川印刷の連勝をストップさせ、今季5勝目を挙げたFC琉球。
 沖縄からだけでなく京都から駆けつけたファンの声援が飛び交う。
 その先には地元に錦を飾ったソンミンチョルの姿があった。

 16位に低迷しているのが不思議なぐらいのファイトある試合運びを見せてくれたFC琉球。遙々沖縄の地から駆けつけて声を枯らすサポーターには頭が下がる思いだが、そこに地元出身の選手に対する愛のある声援が大きな力になった。アウェイをも味方につけた感もある琉球はこれでアウェイ4連勝。これから上昇する起爆剤になるであろう勝利だった。
 一方、連勝がストップしてしまった佐川印刷も負けはしたが、新加入の塩沢や櫛田らを中心に選手層が上手く入れ替わってきている印象だ。今季復調気味のSAGAWA SHIGAをはじめ、横河武蔵野、ジェフリザーブズ、アルテ高崎などが好調な今季のJFL。Jリーグ参入を目指すチームにはまたしても強敵となる“門番”が現れたともいえるだろう。

3連勝で2位浮上 -VS JST-

2009年06月20日 | 脚で語る奈良クラブ
 早いもので関西リーグは今節で10節(消化試合9試合)。共に関西リーグの舞台に上がったJSTと今季3度目の対峙となった奈良クラブ。危なげない試合運びで3-0と勝利し、この日第1試合で行われた首位・京都紫光クラブVS2位・ルネス学園甲賀の結果(2-4)、得失点差で京都紫光を上回り、2位に浮上した。

 天気が不安定な奈良の山間部。車であと数分も走れば和歌山という県境のグラウンドはジリジリする日射しが照りつけたが、キックオフにもなると風が吹き込み雲が厚く空を覆う。絶好のコンディション下で奈良クラブは序盤からペースを握った。

 
 前節4得点のFW松野正が今節も2得点。
 金城のクロスに2本とも頭で合わせた。

 
 試合を追って成長が見えるFW後山。
 この日も前線の起点となってチャンスを作り出す。

 
 矢部が1本のパスで決定機を作り出す。
 負傷から復帰して、コンディションはほぼトップギアに。

 
 後半に1得点のFW檜山も押しの強いドリブルで再三攻め込んだ。

 
 最後尾では守護神・村松が奮起。
 チームに7試合ぶりの完封勝利をもたらす。

 
 負傷のため途中出場となった畑中だが、惜しいシュートを連発。
 トップコンディションでの復帰が非常に楽しみだ。

 
 日頃練習拠点を共にするYF奈良クラブの子供たちが駆けつけた。
 彼らの声援はこれ以上ないエネルギー。
 子供たちにとって“矢部次郎”の人気は絶大だ。

 
 県内でのリーグ戦開催はこれが最後。
 ハイタッチで勝利の歓びを分かち合う。
 やはり、1試合でも多くの県内での試合が必要だ。

 Div2はこれで上位陣の順位が入れ替わった。首位はこの日も圧倒的な得点力を見せつけたルネス学園甲賀。それを勝点1ポイント差で追う奈良クラブが2位。同勝点で3位につける京都紫光クラブという状況。延期分も含めると残り試合は“5”。より熾烈な昇格争いが繰り広げられる予感。この激戦を何としても制していきたいところだ。

奈良県、事実上の最下位

2009年06月18日 | 脚で語る奈良のサッカー
 今週号のサッカーダイジェストが実に興味深い特集を敢行していた。その名も「日本列島全47都道府県 サッカーどころランキング」。総務省が発表している都道府県別人口データを参照し、Jリーガーと日本代表の輩出人数、JFAへの選手・チーム登録数、全国大会での実績など、あらゆるジャンルにおいてその現状をポイント化し、格付けしている。
 
 早速、奈良県の現状をチェックしてみることに・・・
 <ランキングは47都道府県中何位かを表す>

 1.Jリーガー輩出ランキング・・・22位(11人)
 2.日本代表輩出率ランキング・・・9位(2人)

 決して多くない数字であるが、県内の人口比で算出すると、Jリーガー輩出では全国でも中位にランクイン。そして現在もGK楢・都築の両選手が活躍している日本代表輩出率は9位という位置につける。GK王国として名高い奈良県、現役Jリーガーも奈良県出身者はGKが多い。

 3.JFA登録率ランキング
  チーム・・・41位(270チーム)
  選手・・・41位(8,735人)
  監督(指導者登録との重複は除く)・・・43位(117人)
  フットサル個人登録・・・35位(814人)
  審判員・・・40位(1,949人)
  審判インストラクター・・・15位(28人)
  指導者・・・46位(350人)
  キッズリーダー・・・4位(23人)
  総合・・・40位(265ポイント)

 各都道府県がJFAに登録している8項目を人口比率で比較したこのランキング。軒並みの40位台に沈む奈良県の現状が浮き彫りに。特に指導者の登録率は最下位手前で、いかに県内の指導者が少ないか良く分かる数字となった。しかし、キッズリーダーの登録率は高い。

 4.アマチュア大会成績ランキング
 <第1種(社会人)>
  全国社会人サッカー選手権・・・28位(5ポイント)
  国民体育大会(成年男子)・・・ランキング外
  全国クラブチームサッカー選手権・・・15位(10ポイント)
  全国自治体職員サッカー選手権・・・20位(5ポイント)
  全国教員サッカー選手権・・・ランキング外
 <第2種(高校世代)>
  インターハイ・・・ランキング外
  全国高校サッカー選手権大会・・・ランキング外
  日本クラブユースサッカー選手権(U-18)・・・ランキング外
  高円宮杯全日本ユース(U-18)サッカー選手権・・・ランキング外
  国民体育大会(少年の部)・・・ランキング外
  全国高等学校定時制通信制サッカー大会・・・ランキング外
 <第3種・4種(中学・小学生年代)>
  全国中学校サッカー大会・・・26位(5ポイント)
  クラブユースサッカー選手権・・・11位(20ポイント)
  JFAプレミアカップ・・・ランキング外
  高円宮杯全日本ユース(U-15)・・・ランキング外
  全日本少年サッカー大会・・・16位(10ポイント)

 過去5年間のアマチュア公式大会の成績を基に、1位からベスト16までをポイント化したこのデータ。ここで目立つのは、やはり高校世代の低迷。なんと誌面のランキングからことごとく圏外になっている。最近は奈良育英、一条など県内の高校が全国レベルの大会で際立った成績を収めていない。これが尾を引き、アマチュア総合ランキングでは65ポイントで42位という成績。関西勢では最下位という結果が出ている。
 ただ、社会人、小中学生年代ではまだ健闘しており、特に3種・4種では良い数字が出ている。ここから推測するに、やはり高校年代で良い環境、高いプレーレベルを求めて県外の高校や有力なクラブユースに人材が流出している事実は否めないようだ。

 5.スタジアム充実度ランキング・・・43位(2ポイント)

 3,000人以上15,000人未満収容のスタジアムを1施設につき1ポイント、15,000人収容のスタジアムを1施設につき5ポイントで換算しているこのランキング。県内最大の鴻ノ池陸上競技場が5,000人収容という認識で換算されているが、奈良市による公式収容人数は30,600人であり、ここは本来ならばもう少し上位にランクインできたはず。しかし、近年サッカー競技にて主力となっているのはもう一つの橿原公苑陸上競技場。どちらもメインスタンド以外が芝生席ということもあって、施設的にはランキングに相応しい位置づけかといえる。更にスタンド全体の改修を進め、積極的にサッカー競技で使えなければ厳しい。

 これらJリーガー輩出率、日本代表輩出率、協会登録数、アマチュア成績、スタジアム充実度をトータルポイントで算出した総合ランキングでは41位という結果が出ている。しかし、このランキングをよく見てみると、Jリーガーと日本代表輩出率を除けば、全ての項目で40位台というのは47都道府県で奈良県だけなのだ。まさに“事実上の最下位”というのが正しい認識だろう。非常に厳しい現実が数字として浮かび上がっている。

 最後に“ボクらの最強ベストイレブン”と題された各都道府県出身選手のベストイレブンが。
 メンバーは・・・
 GK楢正剛 (名古屋グランパス)
 DF中村祥朗 (奈良クラブ)
 DF北本久仁衛 (ヴィッセル神戸)
 DF西野努 (元浦和レッズ)
 DF柳本啓成 (元セレッソ大阪など)
 MF片山奨典 (横浜FC)
 MF矢部次郎 (奈良クラブ)
 MF内藤就行 (元鹿島アントラーズなど)
 MF西嶋弘之 (コンサドーレ札幌)
 FW前田俊介 (大分トリニータ)
 FW林丈統 (京都サンガ)
<SUB>
 GK都築龍太 (浦和レッズ)
 GK松代直樹 (ガンバ大阪)
 MF水越潤 (奈良クラブ)
 FW杉本倫治 (元セレッソ大阪など)

 というような陣容が掲載されている。未だJリーグでも所属クラブではレギュラークラスばかりというところが凄いが、これがいつまで続くのか今回の高校世代の数字を見ると懸念されるポイントだ。実績重視の陣容だが、個人的には元横浜FCの石田雅人(奈良クラブ)、元大分の吉田智尚(町田ゼルビア)、元G大阪の橋垣戸光一(奈良クラブ)、元鳥栖の東幸一(奈良クラブ)らを加えれば、十分現役選手だけでベストイレブンの構成が可能になる。

 非常に面白く、かつ厳しい現実を叩きつけられるこの企画。是非、サッカーダイジェストさんには毎年敢行して頂きたい企画である。

世界との距離、遠し・・・

2009年06月17日 | 脚で語る日本代表
 敵地メルボルンでアジア最終予選の最終戦・オーストラリア戦を戦った日本代表。1-2と逆転負けを喫し、グループ1位通過はおろか、オーストラリアに勝点差5ポイントを大きく差をつけられてしまった。

 日本の前に立ちはだかったのは、またしてもケイヒルだった。59分と76分、共にセットプレーから鮮やかに決められた。この最終予選で1失点もしなかった鉄壁の守備陣を崩したのも束の間だった。40分に闘莉王の先制点で試合をリードした時には、まさかこのケイヒルの顔が浮かんで来ようとは思いも寄らなかった。

 欧州組を中心に5選手が離脱し、ベストメンバーで戦えなかったことは言い訳にはならないはずだ。“グループ2位通過でのW杯出場”となったチームにこれからのしかかる“ベスト4”という目標の重さはどれだけチームを変えていけるのだろうか。

 とにかく悔しい気持ちで一杯だ。2月の横浜での対戦の際、スタジアム中のサポーターが皆、脱力感にひれ伏したあの光景を思い出した。2位でもW杯に出場できるレギュレーションがどこかに甘さをもたらしているように思えてならない。そして、AFCにオーストラリアが参入し、同じグループで争うことになったことでその甘さは如実に明らかになっている。

 1試合1試合に“世界との距離”を感じてしまう日本代表との試合。近づいているのか、遠ざかっているのか、オーストラリアとの戦いは今やその指針となって、また今夜その距離を痛感させてくれた。W杯本大会まで、アジア最終予選以上の厳しさを伴う試合ができるか。楽しみと不安の入り混じった準備期間が始まる。