脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

王者、失墜のシーズン -アミティエvs三洋洲本-

2011年06月27日 | 脚で語る地域リーグ
 後期日程が始まった関西リーグ。第8節の2日目、Div1は今季から昇格した4位・アミティエSCが昨季のリーグ王者で6位と低迷する三洋電機洲本と対戦。太陽が丘運動公園陸上競技場で行われた試合は、終始アミティエが圧倒する展開で4-0と勝利した。三洋洲本はこれでリーグワースト2位の13失点。2勝2分5敗で、勝点はわずかに8ポイント。対して勝利したアミティエは勝点を11ポイントとし、同勝点で並ぶアイン食品を得失点差で抜いて3位に浮上した。

 

 天候は前日に比べると、雲が多く、日差しはきつくない。風が十分に吹いていて暑いがまだマシなものだった。メインスタンドにはアミティエの応援に駆けつけた関係者が予想以上に多くいて、チームの勢いを感じさせる。それよりも本当に今季の三洋洲本の不調ぶりは我が目を疑うばかり。2年前のKSLを10勝1分3敗で、そして昨季を10勝2分2敗で連覇を果たしてきたチームが、今季は未だ2勝という状況。前節のアイン戦(2-1)でようやくその2勝目を挙げたばかりで、この試合を観ると改めてそのチームの変貌ぶりに驚いた。昨季はこのブログにもバンバン登場してJFL入替戦まで挑戦した関西王者が見る影もない。

 アミティエは3トップの陣形で前線で黒木、守屋、下中がトリオを組む。昨季のDiv2の得点王でもあり、アシスト王でもある守屋が広いエリアを動いてリズムを作り、中盤の1列背後から篠原がパスを中心に試合を組み立てる。チームの絶対的エースは下中で、今季チーム総得点10点のうち6得点を下中が取っている。もちろん彼らの攻撃力は昨季のKSLカップ(0-3)、そして今季の対戦(3-2)と奈良クラブも痛いほど思い知らされているわけで、おそらく後期、奈良と加古川の2強をしつこく追走することすればこのチームなのは間違いなさそうだ。
 対する三洋洲本は、先発に2季連続MVPの成瀬、そして2季連続得点王の梅川、2季連続地域決勝に進出したチームを最後尾で引っ張った頼れる守護神・浅野が総じてベンチ。代わってゴールを守るのは松浦、中盤は村上、沈に中尾、稲垣で構成されており、前線でコンビを組むのは廣瀬と徳井だった。

 試合は、前半からアミティエが攻勢に出る。16分にゴール前で黒木が振り向きざまに惜しいシュートで三洋洲本ゴールを脅かすと、18分に篠原がペナルティエリア右手30度ほどの角度からシュートを決めて先制点をゲット。27分には、篠原のドリブル突破からパスを受けた下中がシュートで決定機を作る。劣勢を強いられ、中盤でボールロストの多い三洋洲本はマイボールで相手エリアまでなかなかボールを持っていけず、何度かセットプレーでチャンスを掴むがモノにはできない。決定機を作り続けたアミティエは、31分には守屋がわずかにゴール左に逸れるシュート放つと、前半終了間際にはカウンターからフリーでGKと1対1の場面を作った下中が追加点となるシュートを決めて2-0で前半を折り返した。
 スコアこそ2-0だが、決定機の数でいえばもっと大差がついてもおかしくない試合展開。相手にボールをいいように奪われる三洋洲本には覇気が感じられなかった。

 
 16分、アミティエ・黒木のシュートはサイドネット。

 
 
 先制点の場面。篠原がしっかりゴールを射抜いた。

 
 
 31分にはアミティエ・守屋がこのシュート。
 三洋洲本は肝を冷やす。

 
 前半終了間際に下中が今季7得点目となるチーム2点目。

 ハーフタイム、三洋洲本ベンチのテントでは入念なミーティングが行われていたが、後半が始まると、アミティエが前半以上に立ち上がりから猛攻。46分に相手のDFラインの裏に抜け出た下中がGKと1対1に。ここは三洋洲本・GK松浦がシュートをブロックして難を逃れるが、48分にはアミティエ・長島がゴールマウスめがけてシュート。これもGK松浦がかろうじてセーブするなど、追加点は時間の問題に思えた。
 すると、51分にゴール前のルーズボールを右からヘッドで折り返したところを下中がこの日2点目となるヘディングシュートを決めると、その1分後には篠原のアーリークロスに後半から出場の山本が頭で合わせて立て続けに4点目を奪った。三洋洲本の集中力が整う前に一気に加点したアミティエ。完全に勝負は決まってしまった。

 
 アミティエゴール前まで攻め込むが決め手に欠ける三洋洲本。

 その後両チーム共に得点が生まれる機会はなかったが、三洋洲本は途中交代で梅川を出場させるものの、75分に友定の右クロスにぴったりのタイミングで沈がヘッドで合わせるがわずかにゴールならずという場面以外ほとんど良い形が作れなかった。「成す術なし」といった感じで勝敗は分かれてしまった。

 
 三洋洲本は梅川(左)を投入する。
 しかし、ややペースこそ握るものの得点にまでは至らない。

 誰もが優勝候補と考えていたであろう三洋洲本。これで2勝2分4敗と2季連続のリーグ王者がまさに失墜のシーズンともいえる現状だ。得点はリーグワースト2位の7得点で、失点も最下位・阪南大クラブに次ぐワースト2位の13失点。2009年度2010年度の戦績を見ればかなり異常事態ともいえる。チームの新陳代謝を意識してなのか、それともケガなのか、昨季までの主力選手がベンチだったり、欠場していたりと揃っていないことが原因。先週末にはTOJITSU滋賀FCとの全社関西予選に臨むための順位決定戦にも敗れた。チームの刷新にしろ、今季は非常に厳しい戦いを強いられそうだ。

 奈良クラブが次節対戦するアミティエは、確実に勢いがある。全体的に学生チームと呼んでも遜色ないほどに若く、良く走る。チーム練習は奈良クラブと同じく午前中が基本で、この夏場にも強そう。前期には加古川にも勝っており、後期は奈良、加古川の2強を追走してくるだろう。特に前期の対戦時に得点を決められているFW下中は体幹が強くフィジカルにも長けた要注意選手で、今後も得点王レースをリードしていきそうな気配。思えば、このアミティエ戦は前期も苦戦しており、日野のPKストップなどの活躍が無ければ相当危なかった。前線の3枚はおろか、中盤の篠原までしっかり捕まえないと危うい。勝機は後半の運動量がキーになりそう。試合巧者としての差も見せておきたいところだ。

 
 非常にエネルギッシュなこのチームをどう攻略する?

更に負けられない夏 -vsラランジャ京都-

2011年06月26日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは後期日程がスタート。首位を走る奈良クラブはリーグ戦では1ヶ月ぶりとなる県内でのホームゲームをAS.ラランジャ京都と対戦。開始早々に守備陣を崩されて失点を食らうものの、後半一気に逆転。辻村隆、牧の得点で2-1と勝利した。3試合連続無失点記録こそ止まったが、リーグ戦連勝記録は「4」に加速。今節では2位・バンディオンセ加古川は最下位・阪南大クラブに快勝。そして3位・アイン食品は5位・TOJITSU滋賀FCに引き分け、4位・アミティエSCが6位・三洋電機洲本に圧勝して3位に浮上した。

 

 まだ暑いとはいえ、どこか爽やかな暑さだった今月4日の淡路佐野での加古川戦に比べると、一気に暑さが増し、日差しも厳しく35度は超えていようかいう天気となった土曜日。皮肉にも五條上野公園多目的グラウンドの背景に見える吉野の山々と空に流れる雲のコントラストが映えに映えていた。
 陽炎の見えるグラウンドに選手が並ぶ。奈良クラブは、先発メンバーに辻村隆と李が復帰。特に辻村隆は先々週の天皇杯県予選社会人代表決定戦でも途中出場で得点を決めており、調子は良さげ。そしてベンチには新加入のGK星野が入り、選手層の面で安定したスタートとなった。

 ところが、開始早々の2分にL京都に守備陣を崩されると、左からの折り返しを決められて失点。リーグ戦では4試合ぶりに食らう先制点、再開初戦としては悪い入り方となってしまった。逆にどういうプランで試合運びができるか気になったが、この試合では相手の高いライン設定にFW陣がオフサイドを連発。なかなかシュートを打たせてもらえない。
 しかし、相手の得点機を日野を中心とした守りで凌ぐと、0-1で前半を終了する。

 

 ピッチ上はおそらく40度を超える熱気だろう。運動量勝負というのは言うまでもないが、やはりここまでチームの勝利を手繰り寄せてきたのはベテラン勢の献身的かつ先を読んだプレー。この試合も後半の10分を過ぎてから矢部がピッチに入ると、ワイドにボールが動くようになり、前半以上にスペースが生まれるようになった。三本菅、李もボールに噛みつくように奪いに行く。特に李は今季は前線に顔を出す場面も多く、決定機にも良く絡む。そして、相手の足が止まり始めた頃に辻村隆、牧のシュートで2点を加えて逆転に成功した。

 試合後、牧がこんなことを話してくれた。「夏場の人工芝のグラウンドはゴムチップが熱を吸収、拡散してパフォーマンスが落ちる」とのこと。どうもやはり、選手たちにとって天然芝と人工芝ではパフォーマンスに大きな影響を及ぼすようだ。特にこの試合はきつかったはず。夜間の練習がメインのL京都の選手たちは後半みるみるその暑さに運動量を落としていった。今季から奈良は人工芝グラウンドで充実したトレーニングができているが、だからこそ選手たちには敏感に感じられるのかもしれない。ただ、逆を言えば、実はこの先人工芝の会場は13節・TOJITSU滋賀戦の1試合のみ。「天然芝ならパフォーマンスは間違いなく上がる」という牧の言葉に期待したい。もちろんあとい数試合、この無敗ペースを続けば確実に優勝は近づく。その言葉に間違いなく優勝できる確信を持って選手たちもやってくれていることを感じた。

 チームは夏の連戦に挑まなければならない。リーグは17日(日)の11節・アイン食品戦まで毎週続く。それが終われば全社関西予選、そして天皇杯奈良県予選が間髪入れずに始まってくる。いくらリーグで無敗を続けていても、この両大会は一度でも負けると、優勝という目標を失う大会。更に負けられない夏のプレッシャーも暑さと同時に加速していく。

FW陣リファインなるか -G大阪vs横浜FM-

2011年06月20日 | 脚で語るガンバ大阪
 ACL敗退後、負けが込んでいるG大阪。J1第16節は万博で横浜FMを迎えての一戦。試合は遠藤のFK、そして山口のヘッドというセットプレーからの2点でG大阪が逃げ切り、4試合ぶりの勝利を挙げるものの、カタールへの移籍が決まったアドリアーノは出場せず、欧州移籍が確実視されている宇佐美を下げるなど、明らかに今後のチーム状況を考えた采配が見られたこの試合。久々に勝利ながらも、やはりどこか今後の行方を気にしてしまう試合となった。

 

 
 横浜FMは今季好調だが、前節、首位の柏に敗戦。
 連敗は避けたい。

 G大阪は周知の通り、アドリアーノがカタールへ移籍合意、既にこの試合に彼の姿は無かった。加えてイ・グノが腰痛のために欠場を強いられ、宇佐美と平井が2トップを組む。そしてこの試合から山口と下平が復帰。中盤では二川がトップ下を務め、明神が1人でボランチを務める。なんと万博での横浜FM戦はリーグ優勝を果たした2005年以来勝利がないという不名誉な記録も。今季またもエース外国人ストライカーを引き抜かれてしまい、早くもターニングポイントの感が否めないG大阪にとっては難しい試合になる予感だった。
 対する横浜FMはアウェイで勝ち切れなかった仙台戦を引きずったかその次の柏戦を落とし、前節C大阪に辛勝。若干18歳ながら背番号10を背負う小野とコンビを組む大黒は久々の万博となった。

 
 
 試合は横浜FMが立ち上がり4分、谷口の右サイドからのシュート、6分に小野のクロスに走り込んだ大黒のヘッドと果敢に攻撃を仕掛ける。8分には横浜FMが大黒のパスを受けた小野がグラウンダーで中央の狩野に合わせるも藤ヶ谷がセーブという決定的な場面が。前がかりに枚数をかけて攻める横浜FMにG大阪は受け身の序盤だった。

 
 
 
 8分、狩野が小野の折り返しにシュート。
 かろうじて藤ヶ谷が止めるヒヤリとする場面。

 しかし、先制点は思いがけない早さでG大阪にやってきた。9分相手陣内の左サイドエリア手前で宇佐美が横浜FM・小林に倒されてFKのチャンスを得る。角度的に直接狙うというよりも中央へセンタリングを入れるかという場所だったが、遠藤はこれを直接ゴールへ。相手GKの頭上で落ちるボールは釣られたGK飯倉を嘲笑うかの様に決まった。驚いたが、この1点はG大阪の試合運びをかなり楽にさせた。

 
 横浜FMは小野裕二が脅威。恐るべし18歳

 
 武井が中央へボールを放り込む。

 この後、なかなか相手を崩す場面は作れなかったが、G大阪はセットプレーが機能した。26分に遠藤の左CKを山口がニアで完璧に合わせてチーム2点目をゲット。久々の“ホットライン”開通で試合のスコアを2-0とした。

 
 
 
 
 久々の遠藤→山口のホットライン。
 これが決まれば試合は楽だ。

 34分には、G大阪のゴール前で横浜FMのFKのチャンス。狩野がこのFKをバーに当てる際どいシュート。35分には同じく狩野が地を這うようなミドルシュートを放ってくるなどあわやという場面はあったが、武井、明神を中心にエリア前でしっかり守って前半は横浜FMに得点を許さず2-0で折り返した。

 
 大黒はあまり見せ場を作れず。45分で交代。

 ところが、前半終了間際に明神が負傷退場(どうもVTRを観ていると39分頃にパスを出した際に肉離れしたと思われる)。代わりに急遽横谷がピッチへ送られるが、これが後半に入って少なからず影響した。当初は佐々木がユニフォーム姿になってスタンバイしていたが、土壇場で横谷の投入。佐々木を入れて中盤の陣形を変えようとしたのか、純粋なセントラルMFの横谷を試用したかったのか。横谷投入後は武井、遠藤と並ぶような形になった。

 
 10年以上に渡り、G大阪の屋台骨である二川。
 今季、再び輝きを見せている。

 後半に入って、横浜FMがキム・クナンを大黒に代わって投入。この後半途中から193cmのキム・クナンを入れてくるパターンは開幕戦以外の全試合で横浜FMが使っている十八番中の十八番。前節のC大阪戦ではこれで虎の子1点を奪い1-0と勝利している。なにしろポストプレーの上手いこの選手の登場で、谷口や兵藤らの攻撃参加が促進される。53分には横浜FMが狩野に代えて渡邊をピッチへ。小野をトップ下の位置に下げて攻撃のテンポを変えてきた。

 雨足が強くなってきた後半、G大阪も良い形で相手がボールが奪えているがチャンスは作れない。60分には宇佐美を下げて川西を起用。個人的にも奈良市出身の川西には活躍を期待しているが、これはやはり「宇佐美移籍後のプラン?」と感じさせる采配で、観戦者もいろいろな憶測を飛ばしただろう。ところが、気合いが空回りしたか、その川西は少ないタッチでボールを離す消極的なプレー。横浜FMの栗原、中澤のコンビに完全に封じられる。

 
 
 
 川西が後半の早い時間から登場。
 しかし、栗原と中澤を攻略できず不完全燃焼。

 76分、左サイドでタメを効かせたプレーの後、下平が速いボールで中央へ入れると、これを平井が合わせるが惜しくも決められず。すっきり3点目が取れなければ徐々に嫌な展開へ。87分に横浜FM・栗原は放り込んだボールをG大阪・中澤がかぶってしまい、小野が拾うとゴールラインギリギリで折り返して、キム・クナンが合わせて決めた。G大阪はリーグ戦9試合連続の失点。未だ「ゼロ」に抑えることができず、この日はなんとか横浜FMをかわして久々の勝利となったものの、終了間際の89分には渡邊のクロスを小野がフリーで頭で合わせたシュートを藤ヶ谷がかろうじてセーブする場面があったように、スッキリしない辛勝劇だった。

 
 下平の折り返しを平井が合わせるが・・・
 これは決めたかった。

 効率良くセットプレーで加点したが、アドリアーノの得点力が凄まじかったこともあり、宇佐美まで下がってしまった後は攻撃陣に不安が残る内容だった。追加点が遠い故にラスト5分間で「分からなくなる」試合展開になってしまう。イ・グノが戻ってきたとして、2トップの一角は確定だろう。平井か川西か。宇佐美まで夏に移籍することを考えれば、この試合の出来ではアピールと呼ぶにはまだまだ物足りないはずだ。

 
 1得点1アシストと役者ぶりを見せた遠藤。
 不安なのは連戦が続く夏場の彼のコンディション。
 

溜息の45分 -阪南大vs立命大-

2011年06月19日 | 脚で語る大学サッカー
 高槻市立スポーツセンターにて行われた関西学生1部リーグ前期第10節の第2試合。9節終了時点で9位とボトム3に沈む昨季の王者・阪南大が7位・立命大と対戦。試合は両者決定機を作り出すものの試合を決定づける一発に欠き、1-1の引き分けに終わった。

 

 完全にリーグではスタートダッシュに失敗した阪南大。関西選手権を制して総理大臣杯へ臨む勢いそのままに、リーグでも上位進出のきっかけを窺いたいところ。前節・桃山大戦では3-5と撃ち合いの末に敗戦。ここ3試合勝利に見放されている。チームからは全日本大学選抜のイタリア遠征メンバーとしてFW泉澤(2年)が、そしてDF二見(2年)の2人がチームを離れている状況。この日はチームの中心である井上(4年)を中心に是が非でも勝利を狙いたいところ。


 
 対する立命大もこの3試合は全くパッとしない状況。なんと3連敗中でその試合では全て無得点。序盤戦で得点を量産していたエースの坂本(3年)もリーグ戦では4試合得点に恵まれていない。絶不調と言ってもいいこの状況を打破するためにもこの阪南大戦は負けられない試合だった。

 試合は前半から両者激しくゴールを目指した。まずは11分に阪南大は村山(4年)のクロスに中村(4年)がヘッドでゴールを狙う。12分にも同じく村山のシュートがブロックされたこぼれ球を中村がヘッドで押し込もうとするがここは立命大・DF谷口(1年)がナイスクリアを見せて事なきを得る。立命大も負けてはいない。17分に雨森(4年)のクロスに坂本が頭で合わせて阪南大ゴールを狙った。

 
 
 阪南大の決定機を阻止したのは1年生のDF谷口。
 前節、途中出場でリーグ戦デビューのニューカマー。
 阪南大・中村はここを決めたかった。

 先制点は18分、立命大だった。エリア手前でボールを持った坂本がそのまま右足を振り抜くと、グラウンダー気味ながらボールはゴール右隅へ決まる。坂本の5試合ぶりの得点で立命大が試合を先行した。

 
 
 坂本の久々の得点でRitsが試合の先手を取る。

 28分には、中村と前線でコンビを組んだ井上がエリア内でシュートするも、これを立命大・DF藤原(3年)がブロック。しかし、徐々に阪南大に流れは傾いた。36分に村山が右サイドからのボールをゴールに近い位置で中央に折り返すと、マークをかわした中村がこれに合わせて阪南大が同点に追いつく。この調子で一気に逆転まで持ち込みたいところだった。41分には井上のクロスを村山がヘッドで合わせるも、ここは立命大・GK岸上(2年)がナイスキャッチを見せて応戦。井上中心に決定機を作り出していく阪南大だったが、あと一歩ゴールを割れず1-1のまま後半戦へ折り返す。

 
 
 
 何度もオフサイドにかかりながらチャンスを狙っていた阪南大・FW中村。
 村山との連携は上々。同点弾を演出。

 
 守備ラインでは屈強なDF永井(2年)がハイボールを弾き返す。
 阪南大の守備の要。頼れる選手。

 
 GK土師(3年)も果敢な飛び出しで立命大のチャンスを摘む。

 後半も激しさを増す試合。後半の序盤ますは立命大がペースを握った。48分にエリア左手前からのFKを加藤(4年)が強烈なキックで枠内へ。これは阪南大・GK土師のファインセーブに阻まれたが、藤田(4年)、加藤、そして村上(4年)、雨森といった中盤の選手の連携が噛み合い、得点の予感がどこかしてくる。しかしながら、阪南大の守備も集中しており、徐々に消耗戦の様相を呈してくる。56分にはDF飯尾(3年)のアーリークロスに中村はヘッドで合わせるなど、決して阪南大も押し込まれるとはいえノーチャンスではない。
 58分にヘディングの競り合いで立命大・DF藤原が鼻を負傷。出血と頭部への影響を考慮してか、ベンチの守備要員・武本(3年)と交代。守備のキーマンを欠いてしまう厳しい展開を立命大は余儀なくされた。

 
 阪南大・FW岩本(4年)と競り合う立命大・MF加藤。

 
 阪南大のキーマン・井上へのマークは厳しい。

 
 
 48分の立命大・加藤のFKの場面。阪南大・GK土師がナイスセーブ。

 
 なんとか1-1の局面を変えたい立命大・MF藤田(4年)。
 関西で得点王を2度獲った兄の祥史(現横浜C)がいる。

 その後も立命大が優勢に決定機を作りながら試合を進めたが、徐々に疲れの見えてきた彼らに阪南大が牙を剥く。69分には中村のクロスを奥野(3年)が逆サイドで合わせるも、この決定的な場面を決めきれず、77分には村山の突破からの折り返しを井上がまさかのシュートミス。この2つの決定機をフイにしてしまい、阪南大は十分あった勝利の切符を取り損ねてしまう。両者ともに溜息を連発させる決定機逸の応酬で結局試合は1-1で終わることになってしまった。

 
 個人的に気になる阪南大のMF奥野。
 競り合いに強く、前線でも活躍してくれそうな選手。

 
 
 これは決定的だった77分の井上のシュート。
 一瞬、阪南大が試合を決めるかに思えたが・・・

 
 立命大は期待の新人・前岡(1年)を投入するが・・・
 残り5分間ではあまりに結果を出すには短かった。

 
 阪南大は守備では健闘したが、決定機を逃しすぎた。

 見応えはあったが、同時に勝者の白黒がはっきり付かないという試合の幕切れに会場もやり切れない雰囲気が。何しろ昨季の王者が今季2度目の連敗でしかも3連敗だ。10位・大産大との勝ち点差が5ポイントあるので、今節での10位転落の可能性はないが、後期に入っての巻き返しができるのだろうかという印象だ。まずはこのような1点を争う試合での決定力不足と先手を取られるという展開に気を付けたい。元来、陣容も含めてリーグ屈指のメンバーだけに、関西選手権を制した勝負強さがなかなか発揮できていないのは何とも歯痒いところ。前期最終戦となる来週の相手は首位の関西大。なかなか厳しい戦いになりそうだ。
 対する立命大もこれで連敗こそ止まったが、4試合連続未勝利。こちらも得点力不足は深刻だ。光明は先発で抜擢された1年生DF谷口の健闘と坂本の久々の得点が挙げられる。次戦の相手はこの阪南大相手に大量5得点を奪った桃山大。DF藤原が欠場となると、かなり厳しい戦いを強いられるかもしれない。

カイザー、前期首位ターン確定 -関西大vs同大-

2011年06月18日 | 脚で語る大学サッカー
 関西選手権を終えて先週から再開された関西学生リーグ。1部は前期日程はまもなく折り返し地点となる第10節。高槻市立スポーツセンターでは、首位を堅持する関西大とそれを勝ち点1ポイント差で追走する同大が直接対決。勝てば首位となる同大だったが、試合は終始危なげない展開で関西選手権の不調を跳ね除けた関西大が3-0で快勝した。

 

 関西大は関西選手権でまさかの4位に終わり、総理大臣杯出場を果たせず。しかも、総理大臣杯に出場する関西選手権の上位3チームは、阪南大、大体大、桃山大と大阪府勢で全てが占められており、例えどこか1チームが総理大臣杯で優勝して、天皇杯へ大学枠で出場できたとしても、関西大には大学勢が2枠ある天皇杯大阪府予選に回ることすら許されない。チームとして全国の舞台を狙っていただけに、これでタイトルは、リーグ優勝とインカレ連覇に絞られたことになった。
 対する同大は、昨年度王者として臨んだ関西選手権は準々決勝で桃山大に敗れたものの、リーグではすこぶる好調。第6節の姫獨大戦を皮切りに大産大、阪南大、立命大を撃破して4連勝。なんと開幕戦のびわこ大戦を落として以来負けなし。ここで関西大に勝利すれば間違いなくその強さは本物だ。雨の高槻市立スポーツセンターは1試合目から激戦が予想された。

 関西大は、ユニバーシアード代表強化を見越した全日本大学選抜のイタリア遠征にGK金谷(2年)、MF和田(1年)がメンバーとして渡欧。この2人を欠けた状況で、GKには志村(2年)、中盤には1年生でG大阪ユース出身の水野を抜擢。岡崎(3年)、田中(3年)のG大阪ユースの先輩と共に攻撃の組み立てを担った。
 対する同大は前節、エースの辻(4年)が2得点と好調をアピール。関西屈指のクレバーさで守備を統一する早坂(4年)を中心に、立命大を3-0と一蹴したメンバーを布陣を変えることなく関西大に挑んだ。

 
 大抜擢の水野。このまま一気にトップ定着を狙いたい。

 試合は序盤から同大が前線からのハードなプレッシャーで関西大にペースを握らせまいとする。しかし、関西大は岡崎、田中を起点にこのプレスをかわして徐々に試合を作っていった。

 
 最後尾には今季リーグでは初出場となる志村が鎮座。
 金谷の不在を補う。

 
 奥田(2年)が果敢にボールに食いつく。
 関西大は本当に彼を筆頭とした2年生の層が厚い。

 縦パスが良く入り、中島(2年)や奥田(2年)らサイドの選手が躍動する関西大は、20分にエリア手前でボールを持った片岡(2年)が多少強引ながらもドリブルからシュート。これがバーを直撃すると、跳ね返りを中島が胸トラップから落ち着いてゴールに沈め、関西大が先制する。

 
 この片岡のシュートから・・・

 
 
 
 
 跳ね返りを中島が上手くコントロールしてシュートを決める。

 同大も前半のうちに追いつきたかったが、サイドがしっかりとブロックされ、中央にボールを集めさせられる展開になかなか崩せない。辻がコンビを組む松田(4年)、そして二列目から矢野(2年)や東矢(4年)が仕掛けるが、ゴールは遠い。43分には松田とのコンビネーションで左サイドを突破した東矢がシュートするも、わずかにサイドネット。前半は関西大が1-0とリードして折り返すこととなった。

 
 同大で注目選手は奈良市立一条高出身の中城(2年)。
 早坂とコンビを組み最終ラインを統率する将来のリーダー候補。

 
 同大はGK安井(4年)も前半1対1の場面をストップするなど奮闘。

 後半に入ると、関西大が更に猛チャージ。49分に相手ラインの裏に抜け出した奥田がシュートを決めて後半早々に関西大が追加点。試合を完全に優位に運ぶ。

 
 
 
 奥田のシュートが決まって、ほぼ勝負は関西大に傾いた。

 57分には櫻内(4年)の折り返しを岡崎が決めて3点目。完全に同大のモチベーションを崩すに十分な追加点だった。この直後に関西大はその岡崎に代えて安藤(3年)、稲森(3年)、1年生の山田を投入するなど、メンバーの新陳代謝を図りながら、最後まで同大に隙を与えなかった。
 同大も75分に辻を諦めて杉山(3年)を投入するなど、最後までチャンスを作ろうとするもほとんど良い形で前線に入らない。75分に関西大・水野が退場処分となり、数的優位な状況に立ったものの最後まで沈黙することになってしまった。

 
 積極的に前を向いて攻撃のリズムを作った関西大・片岡。

 
 同大・三浦(4年)はサイドから時折鋭いシュートを見せた。

 
 同大の中心選手であるDF早坂。進路が注目。
 Hondaから鳥栖へと活躍の場を移した早坂良太の弟でもある。

 
 先日、特別指定選手として神戸入りが決まった関西大・寺岡(2年)。
 この試合でも安定した守備を披露。

 
 G大阪ユース出身の水野に続いて、山田も出場。
 1年生にも期待がかかる。

 この勝利で前期日程の首位ターンが決定した関西大。前期日程の最終戦は昨季の王者であり、今季の関西選手権王者・阪南大。しかし、現時点では9位とかなり不調に喘いでいる。第2試合で立命大と戦った阪南大の試合を関西大のメンバーはいかなる思いで見ていたのだろうか。どうにもこの“ねじれ構造”が良く表れている。
 

社会人代表枠獲得 -vsAtletico-

2011年06月17日 | 脚で語る奈良クラブ
 6月も中旬に入り、各都道府県では天皇杯出場を懸けた都道府県予選が始まっている。奈良県も例外ではなく、12日に社会人代表の2枠を決める代表決定戦が行われ、奈良クラブが3-1でAtletico(奈良県1部)を下して社会人代表としての奈良県予選進出を決めた。もう一方の枠はディアブロッサ高田(関西Div2)がアスペガスFC(奈良県1部)を延長戦の末に3-2と下して獲得している。

 

 本来ならば5月29日にボスコヴィラで行われる予定だったが、台風のために2週間の順延。奈良産業大学信貴山グラウンドに会場を移して行われたが、奇しくも2年前の天皇杯予選、同じ会場で行われた一条高戦を思い出す“格下に苦戦”といえる内容だったかもしれない。

 思えば、奈良クラブの今季の戦いはここまで基本的には苦戦の連続。リーグの前期日程はいずれの試合もシュート数で相手を上回った試合は皆無である。そこを「GK日野優」という屈強な守護神と、前線から中盤の選手たちの「高い決定力」で乗り越えて来ている。それを考えればこの試合も通常運転だったのかもしれないが、やはり2つもカテゴリーが下の相手であったことを考えれば、少し不満は残る。何より日頃見られないミスが多かった。自分たちのミスで相手ボールの機会を増やしてしまっていた。元京都紫光クラブの三重野、元奈良クラブの上西を中心にAtleticoがボールを持つ時間も前半は多かった。それでもなんとか三本菅の先制点で前半を1-0で折り返した。

 後半開始から李が出場。4日の加古川戦は出場停止だったため、鴻ノ池以来、実に2週間のインターバルを挟んでの出場。昨季まで奈良クラブでプレーしていた松野正(残念ながらこの日は県リーグでの退場で出場停止だった)は「ソンホが最初から出ていたらヤバかったかも」と試合後話していたが、その通り、かなりテンポが上がり、チーム全体にエンジンがかかってくる。檜山が後半開始直後に追加点を彼には珍しいヘッドで奪って2-0とするが、なかなかゲームのテンポアップに比例して得点は付いてこない。ほとんど10人ないし11人で守りに徹するAtleticoの分厚い壁をなかなか陥落できない。

 合わせて負傷離脱していた辻村隆も李と同じく3週間ぶりに出場。同じ時間に途中出場の浜岡のパスを受けてシュートを決め、久々となる得点で3点目を追加。しかし、このまま3-0で終われず、追加点を奪うどころか、完全に守備陣を左サイドから崩されて失点を喫してしまった。ここまでリーグでは3試合連続無失点だったチームだったが、少し油断が出てしまったようだ。

 

 結局、3-1で試合は勝利。さすがに午前練習にシフトして、プロの監督による統一されたトレーニングが導入されただけに、内容的にも簡単にここで負けるチームではなくなった。しかし、7月は全社関西予選、8月に天皇杯県予選と一発勝負の戦いは続く。2つカテゴリー下の相手にこの点差では、もう少し取れるところで得点をとっておかないと・・・という思いが巡ったのは正直なところだ。勝てば問題ないのが、内容にはもう少し拘っていきたい。

 目を見張ったのは、Atleticoの出来だった。奈良クラブが奈良県リーグ時代からポルベニルカシハラやJSTと肩を並べる強豪チームだったが、前述の三重野を中心に良いサッカーをしている。なにしろ奈良県リーグではここまで3試合で18得点をいう暴れっぷりで、この日は出場停止だったが、エースの松野(7得点)と三重野(4得点)の2人で11得点も叩き出しているのだ。確実に優勝候補といえるだろう。関西リーグのDiv2でもそこそこ戦える気がする。この日の試合でも「奈良クラブに一泡吹かせてやろう」という気概が伝わって来た。松野正によれば「奈良クラブ戦を一つのモチベーションにしてリーグもやってきた」とのこと。春先のTMの際には「奈良クラブの一番バテている時が俺たちのトップペースの状態ぐらい」と言って、なかなか練習ができないことを嘆いていたが、このペースで行けば、冬前には関西府県決勝大会に進んでいるだろう。それまでに何度か試合を覗きに行ければと思った。

 そして、奈良クラブは昨季まで徳島セカンドでプレーしていたGK星野が新たに加入。少しずつ選手層を厚くして、リーグ制覇に向けて25日(土)に再開される後期日程に向けて準備だ。

宇佐美貴史、美しき1発 -G大阪vs清水-

2011年06月13日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1第14節、G大阪は清水と対戦。ACLに敗戦を喫し、前節・川崎戦でも終了間際に逆転弾を奪われての敗戦。何とかここで盛り返したいところだったが、先制しながらも1-2と後半の序盤に逆転される展開。後半に宇佐美のスーパーなシュートで同点に追いついたが、そこから勝ち越しはならず。2-2の引き分けに終わった。この試合の模様を写真中心で。

 
 日本代表としてキリンカップも戦った遠藤。
 連戦の影響を考慮してベンチスタートに。

 
 清水もここまで8試合で2勝のみ。
 サポーターももちろん勝利が是が非でも欲しいところ。

 
 序盤からドリブルで持ち味を見せた清水・高木。
 今季、東京Vから新加入。高木豊氏の長男。

 
 長身の選手が多い清水。
 セットプレーは要注意だった。

 
 かつて高校選手権でブレイクした大前。
 今季は清水で再ブレイクしている。後半FKから直接得点。

 
 G大阪も内田がCBとしてこの日も先発出場。
 落ち着きのあるプレーで最終ラインを締める。

 
 
 
 15分、アドリアーノが今季8得点目となるゴールでG大阪先制。
 二川のCKから高い打点からのヘッドで決めた。

 
 元豪州代表の清水MFアレックス・ブロスケ。
 シドニーFC時代は豪州を代表するスター選手だった。

 
 韓国から帰国し、今季より清水に加入した高原。
 同点場面で強烈なシュートを放って見せ場を作った。

 
 
 清水の同点ゴールは47分の太田。
 高原のボレーのこぼれ球を平岡が頭で折り返して合わせた。

 
 
 50分には大前のFKが直接ゴールに。
 G大阪にとっては連携、そして集中力を欠いた場面・・・

 
 清水の守備ではボスナーが大きな壁として立ちはだかる。

 スーパーなG大阪の同点弾は57分、宇佐美のドリブルからのシュートだった。うまく枠内を捉えられるかという距離だったが、そんな心配はどこ吹く風。ステップ、振りの速さ、シュートコース共に圧巻。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 海外移籍が取り沙汰される宇佐美。
 このドリブルからのシュートは鳥肌が立った。

 
 メインスタンドに手を振り、人差し指を向ける宇佐美。
 その視線の先には・・・!?

 
 追いつかれた清水は64分に小野と小林を投入。
 早速、小野がバイシクルシュートで魅せてくれる。

 
 キム・スンヨンはサイドで再三クロスを試みる。
 しかし、その精度や連携はまだまだ・・・

 
 小林もかつては清水商で活躍した選手。
 日本では3年ぶりのプレーとなる。

 
 G大阪も3点目を目指して遠藤と平井を投入。
 
 
 アドリアーノがこのチャンスを決められない。

 
 平井とアドリアーノで組んだ2トップもゴールはわずかに遠い。

 
 宇佐美と共に輝きを放ったのは二川。
 やはり、頼りになるラストパサー。

 3点目を奪うことはできず、これで連敗こそは逃れたものの、今季初めての引き分け。後半開始直後の2失点が非常に効いたが、それ以上に「撃ち合い」に弱くなった点も否めない。ここまでの4勝は全て1点差という状況。まずは簡単に失点してしまう“悪癖”を何とか改善しないことには、欧州リーグ移籍が確実視されている宇佐美のみならず、アドリアーノにまで恒例の中東クラブからのオファーが届いている状況だけに、2人の離脱という最悪のパターンを考えると心許ない試合だった。この試合でも途中投入された平井、川西らの奮起はもちろん、チーム全体として次のステップへ進むことが重要だ。あと何試合、この場で観られるのか分からない宇佐美。彼のワールドクラスのシュートが決まった際の万博の歓喜はいつも以上のものに感じられた。それが勝利に繋がらなかったのは非常に残念だった。

首位ターン、無敗の7試合 -vsバンディオンセ加古川-

2011年06月05日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグはいよいよ前期日程の折り返しを迎え、14試合中の7試合が終わる。ここまで5勝1分と首位を走る奈良クラブは、淡路佐野運動公園でバンディオンセ加古川と対戦。勝点3ポイント差でピッタリ2位につける加古川を4-0と粉砕し、無敗のまま前期の7試合を終えることに成功した。

 

 奈良は、警告累積で李が出場停止、そしてリーグアシストランクでトップに立つ辻村隆が負傷でベンチスタートと、今季初めて中盤の主力を2枚欠く状況。代わりに矢部がボランチに、そして蜂須賀がサイドハーフに共に今季初先発で試合に挑んだ。
 一方の加古川も得点、アシストランクで上位につける池田(昨季までJFL秋田に所属)、J経験を持つ小山を軸に、この試合は全力で挑んでくることが予想された。負傷明けながらクラブのバンディエラである吉田が開幕戦以来ベンチにカムバック。2トップは若い寺本とルーキーの前田。チーム後援会が加古川市長のバックアップの下立ち上がった直後だけにモチベーションは高かったはずだ。

 
 蜂須賀が今季初先発。昨季は出番が少なかっただけに期待。
 いつの間にか県リーグ時代から在籍する古参選手に。

 
 中央に入った矢部。
 今季は途中出場でチームの流れを変えてきた。
 初先発で改めてベテランの持ち味を発揮。

 淡路佐野運動公園は完全に夏のコンディション。海際であるが故にジメジメした湿気がまとわりつく。先週の天皇杯予選が台風の影響で流れたことで、しばしの休養になったのは救いだったのかもしれない。前半はじっくり加古川の出だしを伺いながら無理に攻め込まない。左サイドハーフの池田にボールを集めてくるところを泳がせて、橋垣戸を中心に折り返しをしっかり中央でブロックすることに徹した。GK日野の守備範囲の広さもあって、ほとんどチャンスを事前に潰していく。牧と檜山の2トップに良い形でボールが入るまで少し時間を要したが、良い入り方だった。

 
 三本菅が良く動いてくれている。
 まさにその年齢とは裏腹に攻守両面で“チームのダイナモ”。

 先制点は、奈良。檜山の狙い澄ましたシュートで奪い取る。エリア手前でもつれたところ、加古川DFがセルフジャッジで動きを止めたところを逃さなかった。2試合連続の得点。序盤スロースタートだった昨季のチーム得点王である彼がしっかり点を取れることは大きい。今季は牧とのコンビが熟成されつつある。前半終了間際、アディショナルタイムに入ったところで左サイドを突破した吉田の折り返しをその牧が合わせて追加点。2-0と理想的な展開で前半を折り返した。

 
 檜山にコンスタントに得点が生まれてきたのは大きい。

 後半、加古川が開始時から動いてくる。岩切に代えてルーキーの鳥濱、そして前線の寺本を諦めて吉田を出してきた。負傷の状況は分からなかったが、昨季の対戦時(橿原)にもきっちり仕事をされている選手。チームのムード自体すら変えてくる選手だけに要注意だった。
 しかし、先に足が止まり出したのは加古川。後半すぐに辻村剛が豪快なシュートをゴールに沈めて3点目を奪うと、奈良としてはここまで十八番でもある後半になってどんどんエンジンがかかる例に漏れない流れ。パスが前半以上に繋がり出し、スペースにもどんどん飛び出せるようになった。間違いなく前半以上にたたみかけることができる展開だった。

 
 90分間、再三サイドを切り裂いた吉田。
 エリアへ切り込んでもらってのシュートももっと見たい。
 
 74分には辻村剛がドリブル突破。エリア内で加古川DFがたまらずファウルで止めると、これで獲得したPKを自身で決めて4-0。勝負は決した。しかしながら、まだまだ物足りないという形で5点目を狙う姿勢はまだチームから感じられたのは大きい。きっちり守備で集中して余裕をチーム内に引き込むと、一気にチャンスを作って点を奪う。だから終盤でもスタミナが切れない。「攻撃こそ最大の守備」という言葉があるが、さながら「守備こそ攻撃への道標」を体現するサッカー。相手を“いなす”ことに関しては1試合1試合本当に強かになっていることを感じさせてくれた。

 
 “疲れ知らず”の辻村剛がいよいよ覚醒。
 この試合の2得点で波に乗りたい。

 これで6勝1分という内容で前期7試合を終了。まさにシーズン前には三洋洲本、アイン、加古川との四つ巴を予想していただけに独走態勢に入れたのは「出来すぎ」ともいえる結果。しかし、まだ折り返し地点。ここからは天皇杯予選、全社関西予選と一発勝負の戦いも始まる。少しの油断とそれが呼び込む敗戦でチームのムードがいくらでも浮沈する。今こそしっかり気を引き締めてさらにステップアップして欲しいと思う。
 今節の結果、首位・奈良クラブを含め、加古川、アイン、アミティエの4チームが全社関西予選への出場が決定。残る1枠が三洋洲本とTOJITSU滋賀が同成績、直接対決でも引き分けという珍しい完全互角な状況。プレーオフかはたまたそれ以外の決定方法か、注目を集めそうだ。