脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

バトンはザッケローニへ託される -日本VSグアテマラ-

2010年09月08日 | 脚で語る日本代表
 キリンチャレンジカップ2010第2戦、日本とグアテマラの親善試合が長居で行われ、森本の2得点で日本が2-1と勝利した。原監督代行の繋ぎ采配はこれで終了。10月の試合からイタリアより新たに就任するザッケローニ新監督に日本代表の舵取りが委ねられる。

 

 W杯後の2試合目は関西での試合となった日本代表。今季途中までC大阪でコンビを組んでいた香川(ドルトムント)と乾(C大阪)の2人をはじめ、橋本(G大阪・大阪出身)、本田(CSKA・大阪出身)、楢崎(名古屋・奈良出身)、駒野(磐田・和歌山出身)と関西にゆかりのある5名が先発メンバーに名を連ねたこともあり会場の盛り上がりを助長した。先発にはDFラインが刷新。中澤、栗原の負傷もあって代わりに岩政(鹿島)、槙野(広島)が抜擢された。

 
 4日の横浜に続き盛り上がるスタジアム。
 関西で久々に日本代表の試合を皆が心待ちにしていた。

 
 地元・大阪開催で先発の座を掴んだ橋本。
 失点時のミスはあったが、コーチングを切らさず勝利に貢献。

 
 中盤で先発した乾。
 香川とのコンビがスタジアムの注目を浴びた。

 12分に左サイドを駆け上がった長友のクロスを森本が頭で決めて先制。20分には右サイドの香川の折り返しを森本が左足で触ってゴールへ流し込む。海外組の躍動で前半中盤までの日本のサッカーは盛り上がりを呼んだ。

 
 長友(チェゼーナ)がこのドリブル突破からクロスを放り込む。

 
 
 それを森本(カターニャ)がヘッドで決めて日本先制。

 
 森本を囲う歓喜の輪かと思いきや・・・

 
 どうも、槙野の様子がおかしい・・・

 
 
 
 と、思ったら長友とこのパフォーマンス。
 温めていたネタのようだ。

 
 20分には香川のこの折り返しを・・・

 
 再び森本が決めて追加点。

 
 香川は何度もコールを受けての大阪凱旋。
 ブンデスリーガの貫録で1アシスト。

 
 細貝(浦和)は横浜開催との2試合をフル出場。
 ザッケローニへ存分に存在感をアピール。

 
 岩政もフル出場で時期DFリーダーとして猛アピール。
 今後のコンスタントな試合出場が楽しみ。

 
 槙野も後半は左サイドバックに入るなどマルチロールを披露。
 今後はゴール時のパフォーマンスにも期待!?

 
 後半から出場した中村(川崎)。
 落ち着かない日本の中盤をピシャリと締めてくれる。

 また、この試合では一部報道で「代表引退」が報じられたようにGK楢崎にとって代表最後の試合になってしまったようだ。96年の初選出以降、代表に定着。98年のフランスW杯から堂々の4大会連続出場メンバー入り。その絶大な安定感とリーダーシップは川島をはじめ次の守護神にもしっかり継承してもらいたいところ。奈良県出身のプレイヤーとしては偉大すぎるこの記録と代表での活躍の数々は本当に誇りに思える。

 
 楢崎にとって最後となろう国際試合。
 1失点はあったが、残り時間は危なげない守りぶり。

 
 ありがとう!日本を代表する守護神・楢崎正剛。
 長い間、日本代表での戦い、お疲れさまでした。

 さて、とりあえず凱旋興行ともいうべき親善試合は終わった。10月最初のテストマッチとなるアルゼンチン戦(10/8@埼玉)からいよいよザッケローニ新監督がお目見え。その指揮が託される。イタリアで多くの実績を残してきたその手腕はもちろん、メンバー選考も大いに気になるところ。この2試合のメンバーがどれだけ残るのか、また新たにどんなメンバーが選出されるのか楽しみは尽きない。

 

 
 やはり中心となるのは本田、森本、香川の3人か。

 
 本田にはストイックな姿勢で代表を牽引していってほしい。

 

ベスト16を経て再出発 -日本VSパラグアイ-

2010年09月05日 | 脚で語る日本代表
 南アフリカW杯でのベスト16という結果を得て、大会後初の国際Aマッチとなったキリンチャレンジカップ2010。4日にはW杯で最後に戦ったパラグアイとの親善試合が日産スタジアムで行われ、65,157人の大観衆が見守る中で1-0と勝利。これからザッケローニ新監督を迎える新生日本代表が14年ブラジル大会へのリスタートを華々しく切った。

 

 原技術委員長が一時的に監督代行を務める日本は、新たにメンバーに選出された栗原(横浜FM)、細貝(浦和)がそれぞれCB、ボランチの位置に起用され、川島(リールセ)、長友(チェゼーナ)、内田(シャルケ)、香川(ドルトムント)、本田(CSKAモスクワ)、松井(トム・トムスク)、森本(カターニャ)といった海外組が7名揃って先発出場し、スタジアムを盛り上げた。

 
 スタメン紹介時に本田が紹介されると大歓声。
 大観衆によってW杯の興奮が喚起された。

 
 
 日本、パラグアイ共に多くのサポーターが詰めかけた。
 総勢65,157人。今年の東アジア選手権の時が嘘のよう。

 プレッシャーのない久々の親善試合。ここまでアジア最終予選などで苦しい圧力を感じていた日本代表の試合からすれば、この日の日産スタジアムは新鮮な雰囲気だった。観衆の誰もがテレビの向こうのW杯で躍動した選手たちのワンプレーに興奮を隠せない。前半から松井が再三そのテクニックで観衆を沸かし、本田が、森本がパラグアイゴールに迫る。ゴールこそ早くに生まれなかったが、彼らのプレーに歓声は途切れなかった。

 
 前半からテクニックでスタジアムを沸かせた松井。
 この日のプレーはザックにどう映ったのか。

 
 正守護神に定着した川島もはつらつとしたプレー。
 反応の鋭いセーブで何度も沸かせる。

 8分に松井が長距離をドリブルで疾走し、本田とのコンビネーションから最後は香川が倒されて絶好の位置でFKのチャンスを得る。わずかに相手GKに阻まれたが、W杯で見せたあの強烈な弾道を誰もが想起したはずだ。今後の代表チームをこの3人が牽引していくことを予感させた場面だった。15分には本田のクロスを松井がヘッドで合わせるが相手DFに当たってゴールならず。日本の得点に対する期待は徐々に高まる。

 
 
 デンマーク戦を思い出させた本田の直接FK。

 
 中村憲は堅実なプレーで細貝と中盤の底を担当。

 パラグアイもサンタクルスの右サイドからのクロスやポストプレーを軸に日本ゴールを狙うが、決定的な場面はなかなか作れない。前半の中盤は幾度もチャンスを作ったが、GK川島を中心に日本守備陣はカマーチョやバリオスらに仕事をさせない。

 
 セルビア戦以来の招集、出場となった栗原。
 ミスはあったが中澤のリードにも恵まれた。

 
 期待のかかる次期エース森本もこの日は仕事ができず。
 できれば最後までプレーを見たかった選手。

 
 サンタクルスをマークする細貝。
 今後のザックジャパンでは中盤の守備要員として重宝されそう。

 後半に入って、前半以上に中村憲、本田、香川とパラグアイゴールに迫る場面が増える。徐々に両チームが選手の交代を施してくるタイミングで先制点は生まれた。64分、中央の中村憲がゴール前に走り込んだ香川にパス。これを冷静にトラップした香川がシュートを決める。移籍したドイツでも順調にその才能を見せつける香川。南アフリカでは出番が無かったこともあり、それを払拭するかのような素晴らしい先制点だった。
 
 
 本田がパラグアイ陣内まで攻め込んでシュートを狙う。

 
 先制点は香川のシュート。
 新生日本代表を担う風格と実力を兼ね備えている。

 
 俊足から再三サイドをアップダウンした長友。
 なんと頼りになるサイドバックなんだろう。

 この後もパラグアイの得点を許さず、1-0で試合を終えた日本代表。岡崎に藤本、橋本や岩政、槙野、駒野といった選手もきっちり起用してテスト。7日に大阪・長居で行われるグアテマラ戦、そしてザッケローニ監督にバトンを引き継ぐべく、選手たちもアピールに身を注いだ試合となった。

 
 本田に代わって途中出場となった橋本。
 リーグでの連続得点を意識してか、前へ飛び出していく場面も。

 
 駒野の登場時にはこの日一番の歓声が巻き起こった。

 
 ザッケローニまでの繋ぎを担う原監督代行。
 FC東京を退いてから久々となる現場での指揮となった。

 
 

 まさにスタジアムは新生日本代表のリスタートを見守るお祭りといった雰囲気。観客席はどこか牧歌的な雰囲気に包まれており、W杯予選時の殺伐とした空気は全く無かった。W杯ベスト16という束の間の快進撃で、皆の中の日本代表へのイメージは上塗りされたようだ。しかもしっかり勝利しての新たな船出。新たな船長による舵取りで日本代表が今後どう変貌を遂げていくのか楽しみになってきた。

いよいよ初戦

2010年06月13日 | 脚で語る日本代表
 2010年のハイライトとなるワールドカップ南アフリカ大会が開幕した。我らが日本代表は、明日14日にグループステージ初戦のカメルーン戦を迎える。先月24日に行われた韓国戦(@埼玉)の写真で振り返りながら、日本代表の健闘を祈願したい。

 
 直前合宿中の強化試合でも良い動きを見せた長谷部。
 グループステージを通して日本の屋台骨になりそう。

 
 イングランド戦の川島の活躍はこの男の闘志に火を付けたはず。
 楢崎をはじめGK陣の活躍は必須。期待したい。

 
 本大会に向けてコンディションは上向きの大久保。
 彼の血気盛んな姿勢がプラスの形で働いてほしい。

 
 やはり、今大会に臨むチームの顔は本田。
 できるならゴールを決めて更にその名を世界に轟かせてもらいたい。

 
 コートジボアール戦で負傷した今野も試合には間に合いそうか。
 守備のスペシャリスト。こんなプレーを本番でも見せて欲しい。

 
 阿部はアンカーで定着の予感。
 忙しい3試合になりそうだ。

 
 大会後に欧州移籍も囁かれる長友。
 得意の攻撃参加から確実にチャンスを作ってくれるはず。

 
 足の状態が気がかりな中村俊。
 不要論を一蹴する活躍をやはり期待したいのだが・・・

 
 本田と共に個人的に期待したい森本。
 この大会までに出番が少なすぎたのは気がかり。

 
 大会前国内最終戦には多くのサポーターが駆けつけた。
 現地で、そして日本で共に変わらぬ声援を彼らに送りたい。

 あっという間だった。「ベスト4」という非常に困難であろう目標が重圧になったのか、ここまで決して順調とはいえない道のりだった。もう後戻りはできない。ただただ、日本代表の4年に1度の大舞台での躍進を願うしかない。本当に頑張って欲しい。そして、次に繋がる戦いを見せて欲しい。
 

募る不安、広がる失望 -日本VSセルビア‐

2010年04月08日 | 脚で語る日本代表
 W杯南アフリカ大会を6月に控えた日本代表。本大会メンバー選考前最後の試合となったセルビア戦が長居スタジアムで行われたが、日本は0-3と惨敗。国内組ばかりでバックアップメンバー主体のセルビアから1点を奪うこともできなかった。

 

 80分あたりからスタジアムを後にしようと席を立つ観客が後を絶たなかった。予想以上の完敗。この日はCBの位置に出場停止で闘莉王を欠き、新たにメンバー召集を受けた栗原と中澤でコンビを組んだ最終ライン。右には負傷の内田ではなく徳永、左に長友を起用。ボランチは稲本と阿部、中村俊と遠藤、岡崎という中盤に興梠の1トップという布陣で日本は挑んだ。しかし、DFラインはことごとく裏を狙われ、前線は決定力を欠く。興ざめのスタンドからも早々にブーイングが飛び交う試合ぶり。厳しい現実を見せつけられた印象だ。

 
 右SBに入った徳永だったが、周囲との連携はいまひとつか。
 ラインコントロールで連携不足が目立った。

 
 
 15分にいとも容易くラインの裏に走りこんだムルジャが先制点。
 DFラインの連携の甘さを突かれる。

 
 1トップで勝負した興梠もシュートは打てず。
 結局前半のみの出場でピッチを去ることに。

 
 その長身で日本の攻撃を完全にシャットアウト。
 GKブルキッチは日本の観客すらも魅了した。

 
 コンディションの落ち込みは明らかな遠藤。
 80分間のプレーも、やはりミスが目立って本来の出来ではない。

 
 Jリーグでは絶好調の岡崎もこの日は無得点。
 このメンバーでは最もゴールの臭いがする選手だが・・・

 
 ミロビッチ、ロミッチ、スタンコビッチ
 この3選手はフル出場で大きく今後のアピール。

 
 かつての恩師にチャンスを与えられた栗原だったが・・・
 2失点に絡んでしまい、期待には応えられず。

 
 15分のムルジャの先制点をお膳立てしたペトロビッチ。
 主将としてチームをまとめる。

 
 ボランチでチャンスを得た阿部。
 本大会ではCBのバックアッパーとして計算されそう。

 
 前半の中盤からアンカーとして守備に追われた稲本。
 彼のボール奪取能力も3失点の前には大きく霞む。

 
 82分には3点リードされた段階で槙野が投入される。
 不可思議な采配で大学生の永井に出番は訪れず。
 CB要員を少しでもテストしたかったのだろうか。

 
 中村俊も日本のビハインドを覆す活躍はできず。
 「初心」に帰るというコメントを試合後に残した。

 
 前半終了時からスタジアムにはブーイングが。
 試合後の選手たちを見送る観客の声は厳しいものが多かった。

 本大会まであとわずか。後がなくなってきた日本代表。もう挽回する時間はほとんどない。日本ファンの不安と失望はこのタイミングでピークに達している。

残された時間 ‐アジアカップ予選VSバーレーン‐

2010年03月04日 | 脚で語る日本代表
 W杯本大会に臨む2010年のスタートを東アジア選手権・3位という成績で終えた日本代表。その準備への不安へ批判が大いに高まりを見せる中、3日にバーレーン代表とアジアカップ予選で対戦。結果2-0と勝利を収め、チームの立て直しを多少なりともアピールできた試合となった。

 

 横浜FMへの移籍が決まり国内組となった中村俊の他、海外組である長谷部(ヴォルフスブルク)、松井(グルノーブル)、本田(CSKAモスクワ)を加えて臨んだ一戦。今年に入ってから得点が見られない岡崎を1トップに据え、近い位置で本田がサポートに回るという布陣となった。
 36分に岡崎が久々の得点を決めてリードすると、後半終了間際には本田が追加点となるヘッドを決めて試合を終えた。全体的に見れば、松井や本田、中村らの存在感が際立った試合だったが、守備面ではあわやという場面も見られ、ボールの奪われ方などに課題を残す試合になったともいえよう。

 
 いつの間にやら「ライバル」となったバーレーン。
 ここがライバルではベスト4という目標は果たせるわけがない。

 
 キックオフのホイッスルを待つ岡崎と本田。
 本田はCL初出場を果たし、古巣ホームへ堂々の凱旋。

 
 今季からはここが主戦場となる闘莉王も攻守に奮起。
 相手陣内まで攻め込むプレースタイルは今年も不変。

 
 岡崎はこのチャンスを逃すものの36分に先制点を決める。
 松井のクロスに得意のヘッドで見事にネットを揺らした。

 
 アピールの時間がない海外組にとっては重要な一戦。
 松井は随所に好プレーと気迫を見せ、チャンスにも絡んだ。

 
 古巣・横浜FMに帰還し国内組としてW杯に臨む中村俊。
 このパスで岡崎の先制点を導く松井のクロスをお膳立て。

 
 攻守の要として危なげないプレーを見せた長谷部。
 しかし、激戦区のポジションだけにもっとアピールしたい。

 
 本番前の国際Aマッチデーはこれが最後。
 残す4試合のテストマッチでどれだけ強化を果たせるか。
 ベスト4という目標が日本代表に重くのしかかる。

 勝つには勝った。しかしながら、この日はチケット完売ということであったが、おそらく見込んでいた招待客が訪れなかったせいなのか、キックオフの時刻になってもメインスタンドは空席が目立ち、素直に喜べない一面も現場には現れていた。そういう意味でも本田の得点で会場が盛り上がり、無失点で勝利できたのは喜ぶべきかもしれない。
 ただ、これで東アジア選手権の低調な戦績がチャラになったわけではない。残された時間は明らかに少ない。残り4試合でどれだけチームの強化を図ることができるのだろうか。

悔しさ伝わらぬ終戦

2010年02月14日 | 脚で語る日本代表
 東アジア選手権が閉幕した。日本代表の戦績は女子が大会連覇となる優勝、男子が今日の韓国戦に完敗し1勝1分1敗で3位に終わった。

 久々の日韓戦はこれまでの中国戦や香港戦と違い、歴史的意味合いの強さも手伝ってか、何かしらの期待感に包まれていた。韓国が前の試合で中国に完敗するというサプライズも少なからず日本にとっては明るい話題に繋がっていたことは否めない。2010年低調な滑り出しだった日本代表の挽回のチャンスをこの韓国戦に見出したかった。しかしながら、いざ戦いの幕が切られると1-3という完敗に終わってしまう。言い表せない虚無感がテレビを通して伝わってきた。現地まで観戦に行かれた皆さんの悔しさもそのまま伝わってくるかのようだった。そう、ただただ一言「悔しい」結果になった。

 韓国は日本を良く研究していたのではと思う。遠藤の先制点となったPKの場面こそ相手の闘莉王に対するファウルに起因される場面だったが、リスクを覚悟でハードマークを敢行していた感はあった。対して攻撃面では縦への突破に脅威を感じさせた。1-1とされたまではまだ望みを捨てなかったものの、逆転された後に闘莉王の退場によって勝負は決したのかもしれない。最後尾に回った稲本が良くボールに触って状況を打開しようとしていたのが印象的だったが、やはり途中出場の岩政が安定感を欠いていたように、ああいった場合の最終ラインの構成にも問題点を晒すことになったのではないだろうか。

 Twitterを手にとりながら試合を観ていると、全国の現地・テレビを問わず観戦者の声がリアルタイムにタイムライン上に反映されてくる。当然ながら、この試合はポジティブな声が聞かれることはほとんど無かった。監督、選手を追及する声など様々である。個人的には日本代表チームから「悔しさ」がそこまで伝わって来なかったという気がしてならない。特に岡田監督の淡々としたインタビューは、「悔しさ」が言葉にも現れず、気持ちとしても伝わってこない残念な光景だった。万策尽きたという疲弊感はそこにはなかった。それは選手たちからも同様。力の限り戦い抜いたという印象が伝わってこなかった。

 南アフリカW杯の本番はもう4ヶ月後に迫っている。監督解任などの処置は期待していないし、必ずしもそれが正解だとは思わない。ただ、もっとファイトして欲しい。最後まで諦めず戦う姿勢を見せて欲しい。必死になってフィールドを走り回って欲しい。悔しさをどこにぶつけて良いものか、非常に苦しい後味の残った2010年最初の大会となってしまった。

基礎演習はもう終わりだ

2009年10月14日 | 脚で語る日本代表
 2010年の南アフリカW杯まで残り8カ月。アジアカップ予選の香港戦から始まった秋の3連戦を日本代表はトーゴ代表との試合に5-0と勝利することで締め括った。

 現在招集しているメンバーにおけるベストの布陣で臨んだトーゴ戦。相手のコンディション不足も明らかで、開始早々から得点を量産した日本が終始優位に試合を進めた。特に先週の香港戦でもハットトリックと大活躍だった岡崎はこの日もハットトリックを達成。相棒を務めた森本も初スタメンを飾り、きっちり1得点で結果を示した。

 かねてからの消極采配がその批判の矛先に挙げられる岡田監督だが、この3連戦では先日の欧州遠征とは違ったお世辞にも“強豪国”とはいえない相手にも助けられて、ほとんどの選手の力量を測ることができたのではないだろうか。特にカターニャでプレーする森本と日本で現在得点王争いにも食い込む活躍を見せる石川の2人は及第点かと思われる。

 森本は、先日のスコットランド戦でも終了間際に本田の得点をお膳立てするシュートを見せ、このトーゴ戦では相手CBの体の寄せにも全く怯むことなくゴールを陥れた。まだ守備面でのコンセンサスに戸惑いはあるかもしれないが、攻撃面に関してはその落ち着きぶりは頼もしい限りである。絶好調の岡崎とのコンビは今後も非常に期待が持てそうだ。
 石川はスコットランド戦で久々の代表初先発のチャンスを掴み、Jでの勢いをそのままに代表でのプレーにもフィードバック。トーゴ戦でも81分にフィールドに登場すると、85分には持ち前のスピードで左サイドを駆け上がり、本田の得点に繋がる折り返しを演出。そのスピードと的確な折り返しでターゲット(シュートを打ち損ねた大久保)に合わせたプレーに強烈な印象を残してくれた。

 残念ながら初選出のDF岩下、GK山本の出番は巡ってこなかったが、この3連戦に選出されているメンバーがおそらく来年の本大会の軸になる選手。手薄だったCBのポジションも岩政(個人的には最も期待)をスコットランド戦で試用し、右サイドでも内田に代わって徳永を積極的に起用している。そろそろ岡田監督の選手選考も最終段階に達しており、既存メンバーに頼らない3連戦のローテーション起用は明らかに招集されている選手のモチベーションにも繋がったはずだ。

 オランダ、ガーナとの連戦だったオランダ遠征に比べると、日本のやりたいようにやれた10月の3連戦。失点はゼロ。ミスが無かったわけではないが、守備面の意思統一に苦慮は見られなかった印象である。むしろ前述の森本と石川の加わったこのメンバーでもう一度オランダとの対戦をしてみてほしいものだ。
 アジアカップ予選及び東アジア選手権を含めると、本大会まで残り10試合程度(来年4月の南アフリカ遠征での対戦国が未定)。もう基礎演習は終わりだ。仕上げの時期が近づいてきた日本代表からチームが活性化している印象と少し前進していることを感じた10月であった。

ガーナを相手に逆転勝利

2009年09月10日 | 脚で語る日本代表
 オランダ遠征にて強化試合をこなす日本代表は、ユトレヒトでガーナ代表と対戦。相手の強靭なフィジカルの前に劣勢な試合展開を強いられるも、1-3で迎えた78分から怒涛の3得点で4-3と逆転勝利。同じ南アフリカW杯出場国を相手に白星を挙げることができた。

 W杯の本大会まで9ヵ月。本当に結果が出て良かった。相手はチェルシーで定位置を築くエッシェンやインテルでプレーするムンタリを擁するガーナ。アフリカ予選は無失点という言わずと知れた強豪国だ。案の定前半から球際の強さを見せつけられた。特にショックだったのは後半開始直後のA・ギャンに許した2失点目。ガーナGKR・キングストンのロングキックをA・ギャンが中澤を振り切ってゴールをこじ開けた。中澤の油断もあっただろうが、それでも日本屈指のDFがいとも簡単に千切られた失点場面に「今日もダメか」という予感が頭を過った。53分に中村憲が1点を返すが、66分にはムンタリとアモアの2人によってあっさり3点目を奪われる。オランダ戦の完敗劇も記憶に新しいだけあって、ここで勝負を諦めたTV観戦者も多かったのではないだろうか。

 しかし、後半の途中から徐々にガーナの足が止まり出す。日本は62分に長谷部に代えて稲本を、3失点目の直後には前田と中村俊を下げて、玉田と本田を投入。特に中盤の底に稲本が入ってボールが落ち着き、前線では玉田が積極的なプレッシングでボールを追いかけた。ガーナのL・キングストンが足をつってピッチを後にしたあたりから、日本にペースが傾く予感はしていた。すると、78分には長友のパスを受けた玉田が得意の左足を一閃。1分後には稲本のピンポイントパスに頭で合わせた岡崎のゴールで3-3と追いつく。最後は83分に稲本がエッシェンを振り切ってシュートを決め逆転に成功。5分間で3得点のラッシュで勝利を呼び込んだ。

 皮肉にも司令塔である中村俊が退いた後の逆転劇。さすがにこの日は主役が違った。特に後半途中から入った稲本の存在は運動量の落ちていたガーナにとって非常に効いており、1得点1アシストがそれを物語る。同じレンヌでプレーするA・ギャンが2得点していたことに奮起したのか、欧州9年目の落ち着きはフィールドで際立っていた。まだまだ彼は錆ついてはいない。十分日本の主力だと思えた。
 そして、中村憲のプレーもガーナに対して効果的に働いたはずだ。得点こそ1得点に終わったが、15分に見せたGKと1対1の場面、57分の闘莉王の攻め上がり(見事なヒールパス!)からのシュートなど決定機に再三顔を出していた。彼の運動量が後半も落ちなかったことは日本にとってプラスになったといえる。

 おそらく現地在住なのか、スタンドにはたくさんの日本人の子供たちが詰めかけていた。さすがにオランダには歯が立たなかったものの、ガーナを相手に意地を見せた日本。滅多にない欧州の地での強化試合の舞台は、現地の子供たちにも刺激的な試合だったに違いない。ただ、今日のような試合が本大会で常に保証されている訳ではないが。

日本、オランダに完敗

2009年09月06日 | 脚で語る日本代表
 5日に行われた国際親善試合オランダVS日本は、3-0でオランダが完勝。開幕まで9ヶ月となった来年のW杯でベスト4を目標に掲げる日本にとっては厳しい前途を予感させる試合となった。

 前半戦はあっという間という印象だった。予想以上にハイペースでプレスをかける日本が再三中盤で上手くボールを奪取し、ペースを握る場面が多く見られた。シュート数ではオランダを上回り、彼らに思うようなボールポゼッションをさせずスナイデルあたりに苛立ちも見られた。しかし日本はそのオランダからゴールを奪うことはできない。肝心なゴール前でのミスやシュートの精度不足からゴールは遠かった。

 後半、日本は前半のハイペースのしっぺ返しを食らう。如実に運動量が減り、徐々にオランダに攻め込まれた。68分に後半から出場したエリアに強烈なシュートでゴールを肉薄されると、直後にCKからの展開からファンペルシにゴールを割られた。5分後にはエリア手前でボールを受けたスナイデルにDFの隙間を突かれてシュートを決められる。日本より少ないシュート数ながらそのフィニッシュの精度に世界との差を痛感した5分間だった。86分にはエリアのクロスからフンテラールに3点目を献上。疲労困憊の守備陣はオランダの攻撃に対応できなかった。

 90分間を通して勝負を決するサッカーの試合。“前半だけは良かった”という締め括りは何の意味も持たない。そういう意味では非常に残念な試合だった。期待された本田も後半開始から登場したが、結果的な仕事はできず。むしろこれだけのメンバーを帯同させている中で、交代がわずか2人だけだったのも果たしてそれで良かったのかという印象だ。左右のサイドバックも長友と内田で明暗が分かれ、前半から積極的に攻撃を仕掛けていった長友の姿と後半途中から運動量が激減した内田の姿は対照的だった。

 球際のフィジカルでは通用する場面が見られたかもしれない。しかし、動き回るだけではなく、崩さずにゴールを奪う決定力や90分を通したゲームコントロールは3点差という結果にしっかり反映されている。
 本番までの数少ない列強との対戦機会。これは本番を見据えた「強化試合」だ。次のガーナ戦で本番への明るい可能性を見出す試合ができるだろうか。「ベスト4」という大きな目標が日本の背中に重くのしかかる。

世界との距離、遠し・・・

2009年06月17日 | 脚で語る日本代表
 敵地メルボルンでアジア最終予選の最終戦・オーストラリア戦を戦った日本代表。1-2と逆転負けを喫し、グループ1位通過はおろか、オーストラリアに勝点差5ポイントを大きく差をつけられてしまった。

 日本の前に立ちはだかったのは、またしてもケイヒルだった。59分と76分、共にセットプレーから鮮やかに決められた。この最終予選で1失点もしなかった鉄壁の守備陣を崩したのも束の間だった。40分に闘莉王の先制点で試合をリードした時には、まさかこのケイヒルの顔が浮かんで来ようとは思いも寄らなかった。

 欧州組を中心に5選手が離脱し、ベストメンバーで戦えなかったことは言い訳にはならないはずだ。“グループ2位通過でのW杯出場”となったチームにこれからのしかかる“ベスト4”という目標の重さはどれだけチームを変えていけるのだろうか。

 とにかく悔しい気持ちで一杯だ。2月の横浜での対戦の際、スタジアム中のサポーターが皆、脱力感にひれ伏したあの光景を思い出した。2位でもW杯に出場できるレギュレーションがどこかに甘さをもたらしているように思えてならない。そして、AFCにオーストラリアが参入し、同じグループで争うことになったことでその甘さは如実に明らかになっている。

 1試合1試合に“世界との距離”を感じてしまう日本代表との試合。近づいているのか、遠ざかっているのか、オーストラリアとの戦いは今やその指針となって、また今夜その距離を痛感させてくれた。W杯本大会まで、アジア最終予選以上の厳しさを伴う試合ができるか。楽しみと不安の入り混じった準備期間が始まる。