脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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3年越しの悲願、Y.S.C.C.JFL昇格を掴む -相模原vsY.S.C.C.-

2011年12月04日 | 脚で語る地域リーグ
 続く第2試合では、関東勢同士の対戦。こちらもここまで再三火花を散らしてきたチーム同士、JFA優遇枠のS.C.相模原と関東王者Y.S.C.C.が対戦。試合はY.S.C.C.が先行する展開で2-1と逃げ切った。これでY.S.C.C.の2位以内が当確。来季のJFL昇格を決めた。対する相模原は最高でも3位に滑り込むしかない背水の陣となった。

 

 

 天気が崩れ、第1試合の前半に見られた晴れ間が嘘のような曇天で、雨が降り出してくる天候。しかし、昨季3度も相まみえたライバル同士の因縁の対決が最も両者明暗の分かれた形で迎えることになろうとは。Y.S.C.C.にとっては昨季の地域決勝大会のひたちなか1次ラウンドで敗戦を喫したこのカード。その時は相模原の劇的な敗戦でY.S.C.C.が決勝ラウンドに進むことになったが、決勝ラウンドではY.S.C.C.は4位に沈んだ。万感の思いが交錯するこの巡り合わせ、2009年のアルウィン、2010年のひたちなか、市原、そしてこの長居第2とY.S.C.C.を見てきた者としても感慨深い。前日相模原は藤枝に敗戦。ここで負けると後がなくなる。Y.S.C.C.は前日圧勝スタートでこの試合で90分勝利を掴めば昇格を当確させる。緊迫の90分間が始まった。

 「平日のY.S.C.C.はもう卒業」という言葉がY.S.C.C.サポーターの方から出た1日目。まさにこれまで仕事との兼ね合いでメンバーをなかなか揃えられなかったことがY.S.C.C.のウィークポイントだった。路線としてのアマチュアクラブならではの悩みではあるが、それでもこの決勝ラウンドに3年連続で挑めていることには感服する。ただ、今季は一部の主力がシーズン前にチームを去り、中盤の顔ぶれは一新。それでも現有のベストで最高のゲームを初日から見せていた。この日は1日目に電光石火の先制点を決めた青田がベンチに下がり、中盤に森田が出場する。中盤に厚みを持たせて相模原を少しでもポゼッションで上回りたいという思惑だっただろう。
 相模原は、1日目のメンバーから富井が外れ、吉岡が先発。得点力のある吉岡の起用がどう影響するか。1日目に気になったのは絶対的なエース・齋藤にほとんど良い形でボールが入らなかった点。守備で能力の高い藤枝に完全にブロックされた1日目だったが、この試合ではどうか。点の奪い合いという展開も頭をかすめたが、Y.S.C.C.の前日のハイペースサッカーがどこまで遂行されるか。この試合も相模原は受け身に回るのか。見どころの多い試合となった。

 
 相模原・村野を囲むY.S.C.C.の守備。

 
 Y.S.C.C.は最終ラインで服部の存在感が際立っていた。
 
 試合は案の定Y.S.C.C.が前日同様の連動性で相模原を凌駕していく立ち上がり。それでも藤枝戦に比べれば、まだ前がかりになる彼らを尻目に相手エリア内まではボールを持って行ける相模原。7分には森谷がボレーシュートで牽制すると、10分にはY.S.C.C.のミスを拾った森谷が自身で突破してシュートまで持ち込む場面が見られた。
 しかし、前日に圧倒的なムービングサッカーを見せたY.S.C.C.の勢いは健在。15分には吉田のクロスに辻が頭から飛び込んでゴールを狙うと、21分には、相手のゴールキックを拾ってから簡単に繋いで相模原守備陣の裏に抜け出た吉田が、決められなかったものの絶好のシュートチャンス(この左足シュートが決まっていればかなり楽だった)を作るなど随所に好連携を見せる。特にこの吉田のシュートの場面は常に逆サイドを狙っているというプレーの連続性の延長だった。最後に吉田にパスを通したのは小澤だったと思うが見事なダイレクトパスだった。

 
 
 この吉田のシュートは惜しかった。

 
 
 平間のFKがバーを叩く。Y.S.C.C.の全方位型攻撃恐るべし。

 前半は両者共にゴールまで及ばず、それでもレベルの高い試合になった45分。48分にY.S.C.C.は主将の服部がヘッドで惜しいシュートを見せる。対する相模原も吉岡が51分に絶好のシュートをGKにかろうじて阻まれるという一進一退の立ち上がり。そして後半に入って10分ほどで先制点の場面はY.S.C.C.に訪れた。相模原のスローインからのリスタートのボールを3人で囲んで奪うと、そのまま吉田が一気に左から走り込んだ辻へ。辻は相手DFが寄せる前に左足を振り抜く。彼らしい先制点。ベンチもスタンドも仕事人の活躍に沸く。

 
 
 相模原・吉岡のこのシュートはY.S.C.C.のGK小林がセーブ。

 
 
 
 そして待ちに待った辻のエースとしての矜持示すこの得点。

 先制点を献上して焦る相模原。しかし、流れが傾くことはない。65分にはY.S.C.C.が平間のグレートなミドルシュートで追加点。これには勝負が決まった感じすら窺えた。

 
 
 平間がミドルを決めて更にY.S.C.C.が突き放す。
 
 この後、相模原は村野、齋藤を諦めて、松本、富井を続けて投入。齋藤が無得点というのは苦しいところだが、国士舘大出身の松本の期待をこの決勝ラウンドではかなり感じる望月監督の采配。前線で孤軍奮闘する森谷の姿が印象的だったが、この日はゴールまでの拙攻が目立った。72分にはY.S.C.C.のミスからGKと1対1になった佐野が決められない。80分に奥山が1点を返して1点差に詰め寄り、その直後には森谷がシュートもゴールマウスをわずかに右。最後の最後まで追撃の1点が遠かった。

 
 
 
 
 この場面を決められない佐野…これには相模原サイドは溜息。

 
 
 
 この森谷の粘りのシュートもわずかにゴールを捉えられず。

 
 Y.S.C.C.辻は1本シュートをバーに当てている。
 本当に得点力の高い選手。プロからも熱視線はあるのでは!?

 先行逃げ切りのY.S.C.C.。5分のアディショナルタイムも乗り切ると、タイムアップの笛に広がる歓喜。3年越しの決勝ラウンド突破でようやくJFL昇格を決めた。思えば、2009年のアルウィン。3日目に金沢との対戦でようやくPK戦(12-11)で初勝利をもぎ取った彼らは、その結果で試合前に決まってしまった松本山雅の昇格歓喜ムード一色の中ひっそりとピッチを去っていった。あれほど報われない勝利の姿はなかった。でもあの時の経験が間違いなく今のY.S.C.C.を逞しくしたと思う。試合後に宙を舞う選手兼監督の鈴木、その嬉し涙を拭いながらのスタンドへ向けた挨拶にはグッとくるものがあった。この日はU-10の子供たちも遥々応援に駆けつけたようで、スタンドと選手たちが一体となって喜ぶ光景にその関係者の絆が見てとれた。本当にY.S.C.C.の選手、スタッフ、サポーター、関係者の皆様おめでとうございます。

 
 そしてタイムアップ。Y.S.C.C.のJFL昇格決定。

 
 なんと「待ってろ!JFL」と書かれた記念Tシャツに衣替え。

 
 
 
 
 
 松久コーチも胴上げ。
 
 
 昨季まで主将としてピッチで戦っていた鈴木監督兼選手。
 宙を舞った後、涙ながらにスタンドに挨拶。

 敗戦を喫した相模原はもう本当に後がなくなった。この時点で勝点はゼロ。敗退か入替戦(場合によっては自動昇格)の3位しか道はなくなった。最終戦はHOYO。昨季の1次ラウンドでの対戦時には相模原が辛くもPK戦6-5で勝利している。しかし、3位のためには90分勝利しかない。それ以外は敗退しか待っていない。これ以上ない背水の陣。勝負どころだ。

 
 追い込まれた相模原。
 もう勝つだけだ。それも90分での決着を。


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