脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

何度も同じ相手に負けられない -愛媛VS熊本-

2010年09月28日 | 脚で語るJリーグ
 岡山から一気に瀬戸大橋を通過して高松道、松山道を経て松山へ。同じくJ2第28節、ニンジニアスタジアムで行われる12位・愛媛VS6位・熊本を観戦。ここまで熊本に対する通算戦績で1勝2分3敗、天皇杯を含めた今季の2度の対戦でも連敗している愛媛がホームの意地を見せて2-0と快勝。貴重な3ポイントを宿敵・熊本から奪取した。

 

 オレンジに包まれたホームゴール裏(ニンジニアではメインから向かって右手)には、「同じ相手に何度も負けてたまるか!」という気合いの入った即席横断幕が掲げられていた。愛媛は15節から23節まで9試合勝利に見放されていたが、24節から札幌、岡山、そして四国ダービーのライバル・徳島を相手に3連勝。前節の栃木戦は競り負けたものの調子は上向きのようだ。その勢いで分の悪い熊本を撃破したい。そんな雰囲気は試合前から伝わってきた。

 
 熊本にはもう負けていられない!
 熱く試合前から盛り上がる愛媛ゴール裏。

 
 日曜のナイトゲームながらも熊本サポーターも集結。
 対愛媛3タテを狙う。

 試合は互いに一歩も譲らぬ攻防を前半から展開。熊本がサイドの宇留野、平木を軸に果敢に愛媛陣内に攻め込むと、愛媛は岡山戦から1年10カ月ぶりにカムバックしたGK川北に率いられて守備陣が集中。前線のジョジマールにボールを集めて好機を窺う。前半終了間際には愛媛・MF赤井が直接FKで熊本ゴールを狙うが、GK南のファインセーブに阻まれて前半をスコアレスで折り返した。

 
 熊本は3試合ぶりにカレンを先発起用。
 まだ今季は1得点のみ。ファビオとの連携でゴールを狙う。

 
 かつて京都のJ1昇格に貢献した愛媛・DF三上。
 その経験値をここに還元して3季目。

 
 熊本はファビオにボールを集める。
 ここを小原を中心に愛媛守備陣がケア。

 
 宇留野のドリブル突破は愛媛にとって脅威。
 最近の試合では得点も決めている。

 
 前半終了間際に愛媛はこのチャンス。
 赤井のFKは南のビッグセーブに阻まれた。

 後半に入ると愛媛にスイッチが入る。この熊本戦を四国ダービーのような位置付けで選手たちが認識していたのか、もう負けたくないという気迫を愛媛のプレーから感じる。47分に熊本DFが見せたGKからボールを受けてからの緩慢なボールキープに背後から愛媛・FWジョジマールが猛烈なプレス。ボールを奪い取ると左サイドを駆け上がって折り返した。これをエリア内でフリーになっていた大木が左足で直接ゴールに流し込む。地元を愛する34歳の今季初得点でニンジニアスタジアムのボルテージは上がった。

 
 後半早々に大木の得点で愛媛が先制。
 意外なことに今季初得点。

 
 中盤では田森の献身的なプレスが光った愛媛。
 広島ユース出身、昨季から愛媛に加入した選手。

 
 後半の愛媛の攻撃をサイドから牽引したDF関根。
 運動量豊富な攻撃参加で何度もクロスを見せる。

 
 ジョジマールは歩いている場面が少ない。
 常に攻守にピッチを縦横無尽。頼れるエース。

 
 
 
 67分には関根のシュートがGKに阻まれたところに杉浦が反応。
 巧みなワントラップからDF3人を置き去りにしてシュートを決める。

 この追加点の場面はジョジマールがエリア前で粘ってボールキープしたことで熊本守備陣が完全に釣り出され、右サイドで関根がフリーで豪快にシュートを打つ余裕があった。熊本・GK南はとっさのパンチングで難を逃れるもそのボールの先には杉浦がいた。愛媛は後半のほとんどを熊本陣内で展開。試合を決定づける素晴らしい2点目だった。

 
 熊本はベテラン藤田を投入するも反撃には繋がらない。

 
 数少ない自陣のピンチにもジョジマールが渾身の守備を見せる。
 この神出鬼没ぶりにはビックリ。

 
 主将・赤井は愛媛一筋7シーズン目。
 川北と並んでチームの象徴ともいえる選手。

 
 
 86分にはジョジマールに代わって福田が登場。
 少ない出場時間にも関わらず気迫漲る全開のプレー。
 
 
 ここで勝利すれば一歩中位陣を抜け出せた熊本。
 浦和から加入の堤の奮闘も虚しく…

 
 バルバリッチ監督は何度もピッチに向かって指示を飛ばす。
 選手時代はユーゴ五輪代表としてオシム監督の下でプレーした。

 試合は後半の2得点で熊本を沈黙させた愛媛の完勝。運動量が落ちていく熊本を尻目に見事なパスワークを見せた。これでホーム・ニンスタでは3連勝、続く水戸、岐阜に連勝すれば1ケタ順位も近い。ホームスタジアムの改修問題など今後のクラブの飛躍が問われるJ参戦5年目のシーズン。愛媛のラスト10試合に注目したい。
 対する熊本は4位・千葉、5位・東京Vを追走する意味では痛い1敗。得意の相手に勝負強さを発揮できなかった。次節は福岡との九州勢対決。3連敗だけは避けたいところだ。

 
 数字的にはJ1昇格への可能性もある熊本は痛恨の1敗。
 ここから快進撃はあるのだろうか。

 
 宿敵に勝ってホーム3連勝。
 詰めかけたサポーターは満足の試合だっただろう。

J1へのリトライへ一点の曇りなし -岡山VS甲府-

2010年09月27日 | 脚で語るJリーグ
 26日はJ2第26節が各地で開催され、岡山・Kankoスタジアムでは17位・岡山が2位・甲府を迎え撃った。試合はJ1昇格を狙う甲府が後半4得点のゴールラッシュで圧倒。0-4で甲府の勝利に終わった。

 

 岡山がJFL時代の08年以来、2年ぶりとなった今回のKankoスタジアム来訪。当時から運営面では規格外の充実ぶりを誇っていた岡山のその後のホームゲームの様子を肌で感じたかったのも一つだが、その相手が今季J1昇格へ向けて絶好調の甲府ともあって、非常に楽しみな対戦カードだった。清々しい秋晴れの晴天下で試合は行われる。

 
 ホームゲームを盛り上げるべく岡山サポーターも気合十分。
 相手が甲府ともあって気合が漲っていた。

 
 遠方にも関わらず多くの甲府サポーターも来場。
 リーグでは2位の座を堅守中。J1へまっしぐらだ。

 試合はやはり好調の甲府がリズムを掴む展開。吉田、内山の両サイドだけでなく、マラニョン、パウリーニョというアタッカーを揃えた甲府がチャンスを作り出していく。しかし、岡山も冷静に守備で対処。時には右MFの妹尾を起点とした素早いカウンターも披露する。

 
 岡山の攻撃の軸はMF妹尾の果敢な攻め上がり。
 甲府の守備を切り裂いて再三岡山のチャンスを演出。

 
 視野の広いプレーで岡山の中盤を取り仕切るキム。
 神戸、愛媛、水戸を経て今季新加入。

 岡山もゴール前では拙攻が目立ったものの守備で善戦し、甲府を抑え込む。前半は0-0で折り返した両者。しかし、後半に入ると甲府の攻撃陣が爆発した。

 
 
 49分に藤田が自身の突破で得たFKをマラニョンがヘッド。
 見事な連携での先制点。これには岡山の選手も渋い表情。

 
 
 60分にはマラニョンのパスを受けた藤田が華麗にキムをかわし…
 ワンバウンドから左足で見事に追加点を決める。

 2点のリードを得た甲府は前半以上にパスワークで岡山を圧倒。DFダニエルが負傷で退場を余儀なくされるものの、代わりに投入された柳川が完璧に代役を務める。

 
 68分にはパウリーニョがマラニョンのスルーパスを受けて得点。
 サポーターのもとへ一直線。

 
 一矢報いたい岡山も三木、白谷と攻撃的カードを投入。
 しかし、甲府のプレスに大苦戦。

 
 岡山のゴールを守るのは8月にFC東京から加わった廣永。
 しかしながら、痛恨の4失点で見せ場はなし。

 
 浦和から今季加入した主将の近藤。
 後藤と最終ラインを統率するが甲府の猛攻を凌ぎ切れず。

 
 現在得点王のハーフナーは得点を挙げられず。
 キム・シンヨンとの交代時はかなり悔しそうだった。

 86分には岡山のエリア手前で、DF後藤のボール処理ミスをマラニョンがかっさらいそのまま4点目となる得点を決めて、甲府がスコア通りの内容で圧勝。選手層の厚さと攻撃陣の充実ぶりが柏と並びリーグトップタイの55得点(28試合)という数字に現れている通り、少し他を寄せ付けない印象を与えた。現時点で3位・福岡との勝ち点差は7ポイント。ここまで8試合連続で負け知らずということもあり、先月の柏と福岡との直接対決に勝てはしなかったものの、今後は下位チームとの対戦ばかり。そろそろJ1復帰が現実味を帯びてきたようだ。
 対する岡山は攻撃陣が少し寂しい印象。ここまで15得点(26試合)はリーグワースト。強烈な得点力でチームをけん引していくエースが生まれれば、守備陣は近藤、後藤、野田らをはじめJ1経験者も多いだけにかなりチームは生まれ変わるのではないだろうか。サポーターを含めてスタジアムの一体感は良い雰囲気。国対筋には「FAGI SQUARE」なるオフィシャルグッズショップもオープンし、更なるサポーターの後押しもチームを強くしていきそうだ。

 
 甲府は充実した戦績でJ1への道は明るい様子。
 ホーム小瀬での観客動員もJ1屈指だ。
 
 
 岡山もまだまだこれから。
 MDPでも専用練習場の確保への呼びかけが目に止まった。
 今後、サポーターの力も加えて壁を乗り越えていけるはず。

堅守磐田の逃げ切り -京都VS磐田-

2010年09月26日 | 脚で語るJリーグ
 J1は第24節を迎えて残り11試合。11日の22節・神戸戦で5カ月ぶりの勝利を収めたものの、まだ降格圏内を抜け出せない17位・京都は西京極に11位・磐田を迎えた。磐田はここ5試合で4勝1敗と好調。この試合でも開始3分でFW前田が3試合連続得点を決めて0-1でそのまま逃げ切った。京都はホーム2連勝ならず、この日山形に引き分けた最下位・湘南に勝点で並ばれることとなった。

 

 京都は、前節退場処分を受けたカク・テヒの代役に増嶋が出場。左サイドには久々に中谷が復帰。一方の好調・磐田は中盤に那須、上田を据えて、左右のサイドハーフにはには船谷、西、そして守備は新加入の古賀とイ・ガンジンが取り仕切る。

 
 選手入場時に京都サポーターは一斉にゲーフラを掲げる。
 そこには「勝」の文字が。

 
 磐田サポーターも好調のチームを後押しすべく大勢京都へ。

 
 3分、前田がゴール前で押し込んで3試合連続得点。
 幸先良く磐田が試合の主導権を握る。

 
 京都の頼みの綱はやはりディエゴ。
 重戦車のようなドリブルで再三チームを牽引する。

 
 ゴール前のドゥトラにハイボールを入れる京都。
 しかし、磐田のブレない守備の前に大苦戦。

 
 渡邉のサイドアタックからのクロスは効果的。
 あとはその精度とフィニッシャーの存在か。

 
 磐田はカウンター時にパクチュホが鋭い突破を見せた。
 かなり前への意識は高く、G大阪戦の2得点を思い出させる。

 
 好調・磐田を最後尾から叱咤して牽引する川口。
 ベテランらしく終始落ち着いたプレー。

 
 決定的な得点場面だったジウシーニョのシュート。
 惜しくも右に逸れてしまい、磐田は追加点の機会をフイに。

 
 完全に京都の攻撃を封じたイ・ガンジン。
 競り合いには無類の強さを誇っていた。

 
 素早いプレスと確実な守備が効いていた磐田。
 京都の拙攻にも助けられ、チャンスを作らせない。

 
 攻守の切り替え時に存在感が目立った上田。
 3連勝のきっかけは湘南戦の彼の得点から。

 
 駒野は献身的なアップダウンで守備でも貢献。
 時折、ロングパスで一気に前線まで展開する場面も。

 
 今季からチームキャプテンを務める那須。
 上田とのコンビで安定感を披露。

 
 途中出場でチャンスを演出した山本康。
 フィジカルに強いプレーでサイドから切り込む。

 
 京都のGKとして定位置を確保したか守田。
 しかしながら、この日は開始直後の1失点に泣いた。

 
 イ・ガンジンとのコンビは鉄壁。
 50番を付けた古賀の加入は磐田には大きい。

 
 得点を決めた前田はこれでリーグ通算96得点、歴代8位。
 大台は間近、個人的には時期日本代表でもプレーを見たい。

 全体的に見せ場が少なく、シュート数は京都が7本に対して磐田が4本という結果。逃げ切った磐田の堅守がひたすら目立った試合だった。京都はじわじわと忍び寄る「降格」の危機を何としてでも避けたいところだが、残り10試合でどこまで勝点を積み重ねられるか。この日の試合を見ている限りでは打開策は少ない。
 対して、ぐいぐいと復調著しい磐田は8月からの5勝全てが1点差を制するという勝負強さを発揮している。序盤の不調を脱して、新たなチーム編成が着実に固まってきたことを証明した。次節からの横浜FM、広島、浦和と勝点差でまだ逆転可能な相手との対戦が続く。10月の4試合は磐田にとって勝負どころとなりそうだ。

地域1部の厳しさ -VSアイン食品-

2010年09月19日 | 脚で語る奈良クラブ
 あと2試合を残すところとなった関西リーグ。Div1、Dvi2共に最終順位争いが過熱している。Div1では長居で2試合が行われたが、首位の三洋電機洲本が5位・ラランジャ京都に1-4と大敗。前節からの連敗で優勝を自力で決められなかった。その後に行われた2位・アイン食品と3位・奈良クラブの対戦は前半を終えて2-0としていた奈良クラブが2-4とまさかの逆転負け。ここで奈良クラブが勝利すれば、三洋洲本の優勝も決まった訳だが、全ては最終節に持ち越されることとなった。最終節で三洋洲本が勝利すれば、アインの戦績に関係なく優勝が決定。しかし、三洋洲本が負けてアインが勝利すればアインの逆転優勝となる。

 

 前期日程でも同じく長居での対戦だったこのカード。その際は不運な判定のPKで先制され、終了間際に嶋のシュートで追いつくという展開だった。08年の全社関西大会で、当時奈良県リーグだった奈良クラブがアインに勝利したことを思い起こせば、相性は決して悪くない。しかしながら、そういった数字上のデータで安心するには早すぎたようだ。
 奈良クラブは、畑中が仕事のために、そしてCBの橋垣戸光が負傷のために欠場。前節に続いて若手の金城、そしてFWとして今季コンスタントに結果を残している嶋がサイドハーフの位置に据えられる。橋垣戸光、畑中、大塚を欠くベスト布陣が敷けないものの、前半に奈良クラブが発揮したサッカーは今季ベストともいえる内容だった。

 
 小柄ながらケガ知らずの金城が2試合連続のスタメン。
 再三のドリブル突破で攻撃を作る。

 キックオフ早々の3分に見事なダイレクトパスの連続で相手DFを翻弄すると、最後は右サイドから走りこんだ嶋が右足を一閃。先制点をねじ込んだ。ここまでアイン戦は3試合3得点という相性の良さ。彼の推進力がチームを導き、アイン守備陣の裏を突くスピードある攻撃で前半は再三の決定機を演出する。30分には滑り込みながらシュートを放つも惜しくも相手DFに触られてゴールならずという場面もあった。42分には今季絶対的なエースの座を射止めた檜山が追加点となるシュートを決めてリードを広げる。この試合運びで残り45分を戦えれば完璧だった。

 
 嶋は今季5得点目。
 サイドハーフとしても生きる速さは大きな武器。

 
 檜山は7得点目を記録。
 必ず結果を出してくれる信頼感溢れるエースに成長。

 ところが、後半の奈良クラブの失速ぶりは顕著だった。57分にアインに1点を返されると、守備が決壊。全くプレスが効かなくなって中盤でもミスを連発。その6分後には同点に追いつかれ、66分にはGK村松の処理ミスをかっさらわれ、シュートを決められていよいよ逆転される。またも追加点を狙いに前がかりになった際のカウンター対処で甘さを露呈することになってしまった。こちらが追いつくための1点を追いかけるという急転直下の展開を強いられるが、ゴールは前半以上に遠く、76分には勝負を決定づけられる4点目を献上することになった。

 
 DFリーダーとしてその経験値を還元する三本菅。
 しかしながら、守備陣の連携はこの1部の土俵ではまだ厳しい。

 
 キープ力と相手へのチェックで存在感を発揮した李。
 二列目からシュートも狙うがゴールならず。

 まさに厳しい現実、これで2位すら完全に遠ざかった。最終節のラランジャ京都戦で勝利しても、阪南大クラブの結果次第で最終順位が決まるという展開。まだ今季は2敗目で、これは三洋洲本とアインに並ぶ数字だが6試合の引き分けがその足を引っ張る。リードを広げる、または逃げ切るといったDiv1での「試合巧者」になるにはまだ時間はかかりそうだ。特に練習環境がままならない中で、トップメンバーとサブメンバーの実力差が埋められていない。サブメンバーの経験値が低く、なかなかそちらを底上げする練習試合も行えていないのが苦しいところ。しかし、この壁を乗り越えていかないとチームは強くならない。それ以上のカテゴリーは目指せない。その意味でも来季へ繋がる強烈なしっぺ返し。これを糧に来季はもう一歩上を目指したいと思う試合巧者アインの教示だった。

 
 今季出場機会が減った若手選手をどう即戦力にしていけるか。
 今後の大きな課題がこの数試合で滲み出た。

 
 県リーグ時代からチームを支えた松野がこの試合を最後に退団。
 奈良県1部リーグのAtleticoへ移籍する。
 昨季のチーム得点王、得点に拘るプレーで得点を量産。
 ありがとう、本当にお疲れ様でした。

1部での戦いの総決算を -VSバンディオンセ加古川-

2010年09月13日 | 脚で語る奈良クラブ
 夏の終わりを感じさせない残暑、いや、猛暑真っ盛りの中でしばし中断していた関西リーグの戦いが再開。奈良クラブは地元奈良は橿原公苑陸上競技場で6位・バンディオンセ加古川と対戦。厳しい戦いを強いられ、今季6分け目となる2-2の同点で試合を終えた。

 

 夏に全社関西、国体近畿予選、天皇杯と戦いを終えたチームはまさに満身創痍。三本菅の出場停止に加えて負傷者が多く、ベストメンバーからは程遠い布陣を強いられる奈良クラブ。サイドバックに浜岡、岸本、そして中盤では久々に金城がサイドハーフで先発を務め、ボランチには和阪が矢部とコンビを組む。
 対する加古川は、この夏に大きな大会を戦っておらずほぼベストの布陣。前期の対戦時には不在だった小山がメンバーに名を連ねる。いずれにせよ簡単に勝てる相手ではなかったのは確かだ。

 立ち上がりからペースを握った奈良クラブは、檜山がチーム単独最多となる今季6得点目を先制点として決め、試合をリードする。しかしながら、自ら再三作った決定機をフイにし続けると、パスワークでミスを連発。加えてそこから加古川のカウンターに対応できず徐々に試合のリズムは相手に流れていった。

 
 畑中は今季4得点目で依然好調さをアピール。
 悔いが残るのは先週の天皇杯に出られなかった点か。

 前半のうちにリードは崩され、加古川が2-1で折り返す展開。62分に石田のシュートを相手GKが弾いたところを畑中が決めて2-2とするが、それ以降はスピードが持ち味の嶋を投入するなど打開策を狙うがリズムを取り戻せず、最後までゴールが遠い試合だった。

 前期には明石で2-0と完勝できた相手に完全に試合のペースを握られた。やはりメンバーが落ちるとコンビネーションが著しく低下してパスが繋がらない点が苦しいところ。それどころかベテラン選手にもトラップミスやファウルスローなどのミスが散見され、自分たちでピンチを招いてしまった。ひとたびボールを奪われると、前がかりになったラインが対応できない。後半はまさに紙一重で相手の得点をポストやバーに弾いてもらった場面もあり、多少のツキもあって黒星こそ免れた。

 
 冷静なトラップ、広い視野、、、
 牧の存在はチームの攻撃面で欠かせないファクター。

 1部に昇格して1年目。リーグのレベル自体は上がり、勝ち切れない試合が続く。チームはこの試合で引き分けが6試合目、負けたのは後期の三洋洲本戦だけだということを考えると、なんとももったいない。あと一歩で試合を決定づける力がまだチームには足りていないことがこの夏の幾多の試合を通しても分かる。次節は2位・アイン食品との一戦。この直接対決を制すれば相手よりも確実に上の順位で最終節に臨める。前期のアイン食品戦は非常に良い内容ながら、PKで追いつかれた。後期の対戦はどこまで彼らを追い込めるか、挑戦者としてぶつかって欲しいところだ。

 
 大卒ルーキーとは思えないCB眞野のプレーぶり。
 将来のクラブを背負って欲しい選手。

 
 移籍1年目の岸本も今節はフル出場で奮闘。
 層の薄いサイドバックで欠かせない存在。

 全社の展開次第では関西リーグの2位にまで地域決勝出場のチャンスがあることを考えれば、決して残り試合を消化試合にはできない。上位陣から星を奪い取らなければ1部での戦いは総括し難いものになる。混戦の2位レースを制するためにもまだ正念場は続く。

バトンはザッケローニへ託される -日本VSグアテマラ-

2010年09月08日 | 脚で語る日本代表
 キリンチャレンジカップ2010第2戦、日本とグアテマラの親善試合が長居で行われ、森本の2得点で日本が2-1と勝利した。原監督代行の繋ぎ采配はこれで終了。10月の試合からイタリアより新たに就任するザッケローニ新監督に日本代表の舵取りが委ねられる。

 

 W杯後の2試合目は関西での試合となった日本代表。今季途中までC大阪でコンビを組んでいた香川(ドルトムント)と乾(C大阪)の2人をはじめ、橋本(G大阪・大阪出身)、本田(CSKA・大阪出身)、楢崎(名古屋・奈良出身)、駒野(磐田・和歌山出身)と関西にゆかりのある5名が先発メンバーに名を連ねたこともあり会場の盛り上がりを助長した。先発にはDFラインが刷新。中澤、栗原の負傷もあって代わりに岩政(鹿島)、槙野(広島)が抜擢された。

 
 4日の横浜に続き盛り上がるスタジアム。
 関西で久々に日本代表の試合を皆が心待ちにしていた。

 
 地元・大阪開催で先発の座を掴んだ橋本。
 失点時のミスはあったが、コーチングを切らさず勝利に貢献。

 
 中盤で先発した乾。
 香川とのコンビがスタジアムの注目を浴びた。

 12分に左サイドを駆け上がった長友のクロスを森本が頭で決めて先制。20分には右サイドの香川の折り返しを森本が左足で触ってゴールへ流し込む。海外組の躍動で前半中盤までの日本のサッカーは盛り上がりを呼んだ。

 
 長友(チェゼーナ)がこのドリブル突破からクロスを放り込む。

 
 
 それを森本(カターニャ)がヘッドで決めて日本先制。

 
 森本を囲う歓喜の輪かと思いきや・・・

 
 どうも、槙野の様子がおかしい・・・

 
 
 
 と、思ったら長友とこのパフォーマンス。
 温めていたネタのようだ。

 
 20分には香川のこの折り返しを・・・

 
 再び森本が決めて追加点。

 
 香川は何度もコールを受けての大阪凱旋。
 ブンデスリーガの貫録で1アシスト。

 
 細貝(浦和)は横浜開催との2試合をフル出場。
 ザッケローニへ存分に存在感をアピール。

 
 岩政もフル出場で時期DFリーダーとして猛アピール。
 今後のコンスタントな試合出場が楽しみ。

 
 槙野も後半は左サイドバックに入るなどマルチロールを披露。
 今後はゴール時のパフォーマンスにも期待!?

 
 後半から出場した中村(川崎)。
 落ち着かない日本の中盤をピシャリと締めてくれる。

 また、この試合では一部報道で「代表引退」が報じられたようにGK楢崎にとって代表最後の試合になってしまったようだ。96年の初選出以降、代表に定着。98年のフランスW杯から堂々の4大会連続出場メンバー入り。その絶大な安定感とリーダーシップは川島をはじめ次の守護神にもしっかり継承してもらいたいところ。奈良県出身のプレイヤーとしては偉大すぎるこの記録と代表での活躍の数々は本当に誇りに思える。

 
 楢崎にとって最後となろう国際試合。
 1失点はあったが、残り時間は危なげない守りぶり。

 
 ありがとう!日本を代表する守護神・楢崎正剛。
 長い間、日本代表での戦い、お疲れさまでした。

 さて、とりあえず凱旋興行ともいうべき親善試合は終わった。10月最初のテストマッチとなるアルゼンチン戦(10/8@埼玉)からいよいよザッケローニ新監督がお目見え。その指揮が託される。イタリアで多くの実績を残してきたその手腕はもちろん、メンバー選考も大いに気になるところ。この2試合のメンバーがどれだけ残るのか、また新たにどんなメンバーが選出されるのか楽しみは尽きない。

 

 
 やはり中心となるのは本田、森本、香川の3人か。

 
 本田にはストイックな姿勢で代表を牽引していってほしい。

 

京都を背負った意地の衝突 -佐川印刷VS京都-

2010年09月06日 | 脚で語る天皇杯
 今季の天皇杯は1回戦から中1日でJリーグ勢が登場する2回戦に突入。各地でJクラブに挑むアマチュアクラブの戦いが繰り広げられたが、西京極もその例外ではない。J1京都と1回戦で奈良クラブを破ったJFL佐川印刷(以下=印刷)との試合が行われ、延長戦の末に3-2で京都が何とか勝利した。京都は5月30日以来の公式戦初勝利。そして秋田新監督就任後、初めての公式戦勝利となった。

 

 京都は通常と変わらぬベストメンバーを起用。中盤の底にヂエゴを起用し、左サイドバックに中村太、柳沢とディエゴに前線を託す。印刷は奈良クラブと戦った1回戦のメンバー11人を全て刷新。かつて京都に在籍した大槻を軸に、中野、櫛田、吉木という中盤のレギュラー選手、そしてエースの平井と塩沢が前線でコンビを組んだ。
 試合は予想外の立ち上がりを迎える。3分に印刷MF吉木が思い切りの良いシュートでチームに活力を与えると、9分に塩沢がヘッドで京都ゴールを揺らす。今大会の2回戦、ジャイアントキリングが起こるならまずはこの対戦カードではないかと思っていたが、予想以上に楽に印刷は京都から先制点を奪った。

 
 
 9分に塩沢が先制点となるヘディングシュート。
 打点の高い1発で撃ち合いの口火を切った。

 
 印刷の攻撃面でリズムをもたらしていたMF吉木。
 物怖じしない姿勢は11人に共通。

 この先制点でリズムに乗った印刷は、精度の高いパスワークと機を見たカウンターで京都を翻弄する場面を幾度も作る。16分にはパスを繋いで京都の守備網を完全に崩して中野がシュートを打つ場面も。徐々に京都には焦りが感じられてきた。しかしながら、勝てていないとはいえ京都もJ1の意地、2つも格下の相手に負けるわけにはいかない。渡邉の攻め上がりやドゥトラの突破によって印刷ゴールにじりじり忍び寄る。印刷は瀧原、高橋を中心に身を挺してそれを阻み続けた。京都は中盤に起用したヂエゴが周囲とフィットせず27分に角田と早々の交代。まずは1点を目指して早めのベンチワークを見せた。

 
 負傷がちながら得点力はチーム№1の塩沢。
 前半を目一杯プレー。

 
 京都は中山が中心になって攻勢に転じる。
 ここで負ければその1敗の重さは大きい。

 
 ドゥトラの突破を印刷がブロック。
 集中した守備網を形成する印刷。

 31分、京都は右サイドからFKのチャンスを得ると、これをディエゴが水本の頭に合わせて同点とする。この辺りから京都が格上らしいリズムを取り戻すが、印刷は守りでも粘りを発揮。GK大石の活躍と京都の決定力不足に助長され1-1のまま前半を終了。後半も両チームは決定機を決められず、拮抗した展開で90分を終えることとなった。

 
 小柄ながら運動量を武器に活躍を見せた中野。
 早稲田出身のルーキーだ。

 
 31分に水本が渾身のヘッドで京都が1-1の同点に追いつく。

 
 大槻の存在感は印刷にとって絶大。
 常にチャンスは彼のボールキープから演出される。

 90分で決着のつかない試合は15分ハーフの延長戦へ突入。すると92分、右サイドからのクロスに交代出場のFW葛島がダイビングヘッドで勝ち越し弾となるチーム2点目を奪う。追いつめられた京都、逃げ切りたい印刷、延長戦はさらに白熱した様相を呈す。102分には前半から苛立ちを募らせていたディエゴが印刷ゴールに突進、同点となるシュートを決める。この時間帯、少し印刷は集中力が切れていたのか守備時のハードワークが影を潜めた。106分には再びFKのチャンスから角田が頭で決めて京都にリードを許してしまう。しかし、残り15分を切っていたものの、まだ印刷には何かを起こしてくれそうな感触があった。それほど全員が前を向いてプレーし続けていた。

 
 体を張って京都の攻撃を防いだDF瀧原。
 印刷は攻守における集中力が素晴らしかったが…

 
 終始当たっていた印刷のGK大石。
 彼の活躍は守備の時間を強いられるチームを勇気づける。

 
 延長突入と同時に会心のゴール。
 印刷はこれで少し気が緩んでしまったか…

 意地と意地がぶつかり合う京都勢同士の撃ち合いは、106分に京都MF安藤が2枚目の警告で退場、また終了間際にはベンチから京都のコーチが退席処分に処せられるなど波乱含みの展開。115分には京都ゴール前でGK水谷がこぼしたボールに平井が反応するが間一髪でクリアされてしまう。最後まで見逃せない攻防が続いたが、結局3-2で京都が逃げ切り、印刷の天皇杯は2回戦で幕を閉じることとなった。

 
 勝利への執念は双方ともに同じ。
 わずかな集中力の差が試合の展開を分けたのか…

 
 106分に角田が逆転ゴールを決める。

 
 115分、印刷の決定的な場面。
 これが決まっていれば…

 本当に息をつかせぬスリリングな試合だった。京都の不振も背景にはあるが、JFLで戦う印刷のサッカーのクオリティを証明する試合にもなった。試合後には京都の選手たちを労う拍手やエールもあったが、それ以上に印刷を喝采する声も多く聞かれた。同じ京都を本拠地に戦う両チーム。その在り方はプロとアマという対極的なものだが、改めて「京都に佐川印刷あり」ということを試合観戦者に深く印象付けただろう。ジャイアントキリングは起こせなかったが、彼らがJ1クラブを相手にこれだけの戦いを演じてくれたことは、1回戦で彼らに敗れた奈良クラブを応援する者としても感慨深く、刺激になった。サブ主体で臨まれたが、1回戦の結果は成るべくして成ったものだと納得できる。それほどのチームワークを印刷は持っていた。彼らを超えなければ天皇杯でJ1クラブは打ち負かせない。それどころか今後JFLへとステップアップすることもままならないだろう。噛み締めるものが多い好ゲームだった。

 
 試合終了と同時に倒れこむ印刷の選手たち。
 敵味方関係なく惜しみない拍手とエールが送られた。

 
 その数はほんのわずかだが、サポーターの声援があった。
 企業チームだが、京都を誇るチームには間違いない。

ベスト16を経て再出発 -日本VSパラグアイ-

2010年09月05日 | 脚で語る日本代表
 南アフリカW杯でのベスト16という結果を得て、大会後初の国際Aマッチとなったキリンチャレンジカップ2010。4日にはW杯で最後に戦ったパラグアイとの親善試合が日産スタジアムで行われ、65,157人の大観衆が見守る中で1-0と勝利。これからザッケローニ新監督を迎える新生日本代表が14年ブラジル大会へのリスタートを華々しく切った。

 

 原技術委員長が一時的に監督代行を務める日本は、新たにメンバーに選出された栗原(横浜FM)、細貝(浦和)がそれぞれCB、ボランチの位置に起用され、川島(リールセ)、長友(チェゼーナ)、内田(シャルケ)、香川(ドルトムント)、本田(CSKAモスクワ)、松井(トム・トムスク)、森本(カターニャ)といった海外組が7名揃って先発出場し、スタジアムを盛り上げた。

 
 スタメン紹介時に本田が紹介されると大歓声。
 大観衆によってW杯の興奮が喚起された。

 
 
 日本、パラグアイ共に多くのサポーターが詰めかけた。
 総勢65,157人。今年の東アジア選手権の時が嘘のよう。

 プレッシャーのない久々の親善試合。ここまでアジア最終予選などで苦しい圧力を感じていた日本代表の試合からすれば、この日の日産スタジアムは新鮮な雰囲気だった。観衆の誰もがテレビの向こうのW杯で躍動した選手たちのワンプレーに興奮を隠せない。前半から松井が再三そのテクニックで観衆を沸かし、本田が、森本がパラグアイゴールに迫る。ゴールこそ早くに生まれなかったが、彼らのプレーに歓声は途切れなかった。

 
 前半からテクニックでスタジアムを沸かせた松井。
 この日のプレーはザックにどう映ったのか。

 
 正守護神に定着した川島もはつらつとしたプレー。
 反応の鋭いセーブで何度も沸かせる。

 8分に松井が長距離をドリブルで疾走し、本田とのコンビネーションから最後は香川が倒されて絶好の位置でFKのチャンスを得る。わずかに相手GKに阻まれたが、W杯で見せたあの強烈な弾道を誰もが想起したはずだ。今後の代表チームをこの3人が牽引していくことを予感させた場面だった。15分には本田のクロスを松井がヘッドで合わせるが相手DFに当たってゴールならず。日本の得点に対する期待は徐々に高まる。

 
 
 デンマーク戦を思い出させた本田の直接FK。

 
 中村憲は堅実なプレーで細貝と中盤の底を担当。

 パラグアイもサンタクルスの右サイドからのクロスやポストプレーを軸に日本ゴールを狙うが、決定的な場面はなかなか作れない。前半の中盤は幾度もチャンスを作ったが、GK川島を中心に日本守備陣はカマーチョやバリオスらに仕事をさせない。

 
 セルビア戦以来の招集、出場となった栗原。
 ミスはあったが中澤のリードにも恵まれた。

 
 期待のかかる次期エース森本もこの日は仕事ができず。
 できれば最後までプレーを見たかった選手。

 
 サンタクルスをマークする細貝。
 今後のザックジャパンでは中盤の守備要員として重宝されそう。

 後半に入って、前半以上に中村憲、本田、香川とパラグアイゴールに迫る場面が増える。徐々に両チームが選手の交代を施してくるタイミングで先制点は生まれた。64分、中央の中村憲がゴール前に走り込んだ香川にパス。これを冷静にトラップした香川がシュートを決める。移籍したドイツでも順調にその才能を見せつける香川。南アフリカでは出番が無かったこともあり、それを払拭するかのような素晴らしい先制点だった。
 
 
 本田がパラグアイ陣内まで攻め込んでシュートを狙う。

 
 先制点は香川のシュート。
 新生日本代表を担う風格と実力を兼ね備えている。

 
 俊足から再三サイドをアップダウンした長友。
 なんと頼りになるサイドバックなんだろう。

 この後もパラグアイの得点を許さず、1-0で試合を終えた日本代表。岡崎に藤本、橋本や岩政、槙野、駒野といった選手もきっちり起用してテスト。7日に大阪・長居で行われるグアテマラ戦、そしてザッケローニ監督にバトンを引き継ぐべく、選手たちもアピールに身を注いだ試合となった。

 
 本田に代わって途中出場となった橋本。
 リーグでの連続得点を意識してか、前へ飛び出していく場面も。

 
 駒野の登場時にはこの日一番の歓声が巻き起こった。

 
 ザッケローニまでの繋ぎを担う原監督代行。
 FC東京を退いてから久々となる現場での指揮となった。

 
 

 まさにスタジアムは新生日本代表のリスタートを見守るお祭りといった雰囲気。観客席はどこか牧歌的な雰囲気に包まれており、W杯予選時の殺伐とした空気は全く無かった。W杯ベスト16という束の間の快進撃で、皆の中の日本代表へのイメージは上塗りされたようだ。しかもしっかり勝利しての新たな船出。新たな船長による舵取りで日本代表が今後どう変貌を遂げていくのか楽しみになってきた。

JFLとの差 -VS佐川印刷SC-

2010年09月04日 | 脚で語る奈良クラブ
 第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会が3日開幕。全国の各都道府県を勝ち抜いた代表チームが1回戦に臨んだ。奈良県代表の奈良クラブ(関西1部)は京都府代表である佐川印刷SC(JFL)と対戦。1-3と敗戦を喫して、2度目のチャレンジとなった今年の天皇杯は1回戦で姿を消すことになった。

 

 会場の西京極、この日はナイターでの試合となった。日頃から真昼の試合が多い奈良クラブ、佐川印刷両チームにとってまだ楽なコンディションとなったこの試合。奈良クラブは負傷で戦列を離れていたDF橋垣戸光がCBに復帰。ここまでその穴を埋めていた三本菅を前方のボランチに上げて、矢部をトップ下に配置。出場停止の畑中に代えて日頃はトップを務める檜山を右サイドハーフに据えてFWは牧の1トップという布陣で臨んだ。
 対する佐川印刷(以下=印刷)はスタメン11人中、濱屋、伊池、志摩、内村、中筋の5人がルーキーの選手というサブメンバー主体の陣容。大槻、平井、櫛田、中野といった主力選手は温存の様子で、明らかにこの試合に勝って2日後の京都戦に万全の態勢で挑もうという印象であった。

 試合は序盤の運動量で抜きん出た佐川印刷が4分に足立の先制点で試合をリードする。相手の出方を窺いたい時間帯でのこの失点は正直痛かった。やはり崩しにかかった際の印刷のスピードは驚異で、個々の相手を捕まえられず、スペースを悠々と明け渡してしまう場面が多く見られた。ボールを奪った際にカウンターを仕掛けたいところだが、どうも全体的な押し上げが機能しない。そのために相手ゴールに迫った位置でのシュートがなかなか打てなかった。

 

 21分に印刷は先制点を挙げた足立のアシストから中筋が追加点を挙げる。奈良クラブとしてもビハインドを1点に留めたいところだったが、これ以降はGK松石やDFラインの奮闘もあって0-2のまま前半を終える。牧のポストプレーから檜山を中心に再三切り込んだが、シュート数はほぼ互角ながらそのスピードと精度の差は明確だった。

 
 決定力で格上の風格を見せた佐川印刷。
 JFLの壁を見せつけられる。
 
 後半は相手の運動量がやや落ちたこともあって、奈良クラブはそれなりに組み立てることができた。75分には印刷MF高向が2枚目の警告で退場処分。相手が1人少なくなったタイミングで俊足FWの嶋を投入して一気に盛り返したいところだったが、あと一歩でゴールに及ばない。石原、李のシュートで得点かという場面が2度見られたが、オフサイドやファウルでそれが認められない惜しい場面があった。終了間際にはダメ押しの3点目を決められるが、その直後に檜山が意地の1点を返して試合終了。奈良クラブの2度目の天皇杯挑戦は終わった。

 

 佐川印刷の出場選手13名の平均年齢は24.6歳、対して奈良クラブの出場選手14名の平均年齢が27.9歳。3.3歳の平均年齢差があったが、経験を積んでいる選手が多いという点ではまだ運動量の差を補えるだけのものはあったと思える。試合結果だけ見ればシュート数も14対14と互角。しかし、決定機におけるプレーの精度にかなりの差があった。相手陣内へ攻め込むカウンター時の決定的なパスミス、シュートチャンス時のシュート精度など、「あそこで決めていれば・・・」という場面がこういった格上チーム相手の試合では浮き彫りになってくる。ほぼ毎日、充実した環境で練習を行っている印刷と、ゴールすらない土のグラウンドが週2回ないし3回の練習拠点である奈良クラブとの現状では埋められない溝である。

 関西リーグでの結果だけが全てではない。今季は全社出場も叶わなかった。国体予選でも勝てなかった。いや、その関西リーグでも学生クラブ以外から勝利を奪ったのは前期第6節の加古川戦だけ。上位陣との直接対決はことごとく勝ち切れずドローに終わっている。順調にクラブとしてのステップは踏んでいるが、ここからの飛躍が今後の課題だ。1回戦を突破し、新潟との対戦を果たした昨年は「経験」という意味では大きな機会だった。ただ、そのままではJ1クラブと対戦するだけでは「記念」で満足する大会で終わってしまう。本当に奈良県のサッカー、そして奈良クラブが上を目指して行くには、JFLだけでなく、そのJ1クラブにも勝てるチームにならなくてはいけない。そのためにも来年以降も天皇杯に出場し続け、格上チームに勝つためのチャレンジをしていくべきだ。「井の中の蛙」にならず、全国の壁を常に感じ続けることの重要性を今年の天皇杯は教えてくれた。

胸を借りるはプリントダイナマイト -決戦前夜-

2010年09月02日 | 脚で語る奈良クラブ
 明日、今季の天皇杯が開幕する。全国からこの本大会に臨むのはJ1、J2勢をはじめ88チーム。関西からは関西学院大(兵庫)、大阪体育大(大阪)の大学勢、MIOびわこ草津(滋賀)、佐川印刷SC(京都)のJFL勢、奈良クラブ(奈良)、アルテリーヴォ和歌山(和歌山)の地域リーグ以下のカテゴリー勢という分布がはっきりした6チームが1回戦に臨む。

 2年連続2度目の出場となる奈良クラブは、佐川印刷SCがその相手。おそらく今季対峙する相手の中では最強の相手だ。最も身近にJFLの試合が観られるチームであることもあり、このブログでも何度も佐川印刷の試合の様子をお届けしてきただけに、どれほどの差があるかは感覚的に掴める。ただ、奈良クラブがこの試合で得る経験は何物にも代え難いものになるだろう。

 

 

 現在、中断中のJFLで11位に位置する佐川印刷SC。序盤の7試合連続無敗の勢いが影を潜め、後期日程に折り返す前後の10試合ではわずか2勝しか挙げられていない。とはいえ18チーム中5位(後期第6節終了現在)の得点力は驚異。23試合で37得点というのはかなりの攻撃力。特に前期第5節にはMIOびわこ草津を相手に8-2という大勝を収めるなど、爆発すれば天井知らず。中盤の大槻、中井を軸に前線の塩沢、平井、大坪あたりの選手には要注意で、自分たちのリズムを掴んだ時間帯には屈指のパスワークを見せる印象が強い。また、ここ最近のシーズンではチームの若返りも顕著で、昨季ルーキーながら定位置を確保した櫛田をはじめ、今季ルーキーの及川、中野、志摩といった大卒新加入の選手たちも能力が高く、早速出番を掴んでいる選手が多いことが印象的だ。
 どこかウィークポイントにつけ込むならば、リーグワースト5に入る失点の多さ、つまり守備の弱さだろう。37得点37失点という数字が11位という順位の原因。撃ち合いの様相を呈する試合で勝ち切れないところが多いようだ。奈良クラブはここを狙っていくしかない。

 このプリントダイナマイトの胸を借りる奈良クラブ、もちろん1回戦突破は現実的な目標。昨年と同じくJ1勢へのチャレンジを果たしたい。相手の出方をうかがうのは得意中の得意。まずはじっくり序盤を耐えしのぐのが重要だ。セットプレー、カウンター、好機を得るためにはどんなプレーも重要になってくる。ミスの少ない牧と突破力に長けた大塚がキーマンになるだろう。あとは檜山や嶋がスペースを狙ってスピードで持っていって狙って欲しい。痛いのは県代表決定戦で退場処分を受けた畑中の出場停止。どんな時でもチャンスでは顔を出し、クロッサーとしてもフィニッシャーとしても能力の高い彼の不在は正直に苦しいところだ。金城や石田といった代役に期待したい。
 守備面では追い込まれる時間帯が多いだろうが、まずはパスの出所をしっかり押さえてほしい。中盤の大槻や中井に仕事をさせないことが重要。李と矢部のボランチコンビはハードワークを強いられることになりそう。最終ラインはおそらく守備の要・橋垣戸光がこの試合に照準を合わせて戦列復帰予定。空中戦に無類の強さを発揮できる彼の帰還は、三本菅を1列前で起用することも可能にするので、プレスの厚みにも期待できる。あとは最後尾でゴールを守る松石の神がかったセーブがチームに勢いを与えるはずだ。

 佐川印刷の胸を借りるつもりで奈良クラブには暴れて欲しい。社会人チームには逆風の要素が多い今大会だが、その逆風をものともしない戦いを見せて欲しい。この大会ではその1勝が大きなアピールになる。クラブを少しでも多くの人に知ってもらうこれ以上ない機会だ。残念ながら今年の1回戦は昨年のように県内開催ではないが、西京極で一戦必勝の大きな舞台が幕を開ける。