脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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HOYOの飛躍、JFLをほぼ当確へ -相模原vsHOYO-

2011年12月06日 | 脚で語る地域リーグ
 今季の全国地域リーグ決勝大会も最後の対戦カードに。残る椅子は1つ。入替戦と目されていたこの3位の座は、この日のJFLの展開で(来季のJ2参入を当確させた松本山雅と町田と、ジェフ・リザーブズの解散もあって16位・ソニー仙台の残留がほぼ決定)入替戦なしでのほぼ自動昇格となった。そしてこの3位の座を懸けたS.C.相模原とHOYO AC ELAN 大分の試合は2-1でHOYOが勝利。HOYOがこの3位として来季のJFL昇格をほぼ決定づけた。対する相模原は決勝ラウンド3連敗で4位に終わった。

 
 いよいよ今季の地域決勝大会もこの試合が最後。
 相模原かHOYOか。昨年のひたちなか以来のカード。

 
 相模原は、八田、井上、富井、吉岡が同時に先発に名を連ねた。
 90分勝利しかJFLへの道はない。

 
 HOYOは90分敗戦を回避すればOK。
 この試合でGKは船津ではなく野寺を起用。

 1次ラウンド3連勝の相模原がもう全く後がない状況にまで追い込まれた3日目。相模原としてはもう90分勝利でようやく3位に滑り込めるという背水の陣であり、HOYOにとっては90分で負けなければ絶対優位というかなり大きなアドバンテージの違いがあった。ちなみに地域決勝大会でのこの対戦カードは昨年のひたちなかでの1次ラウンド以来。その時には相模原が2-2からPK戦6-5でHOYOを辛くも振り切った。1年を経ての再戦となったわけだ。

 試合は、相模原が攻勢と行きたいところだったが、HOYOはまず守備をきっちり固めて動じない。8分に森谷のミドルシュートをHOYO・GK野寺がセーブ。18分にも相模原は、金澤の右サイドからの絶好の折り返しを齋藤があと一歩決めることができなかった。チャンスは作るが、ゴールが遠い相模原。そんな彼らに追い打ちをかける展開が訪れる。
 21分、相模原守備陣の裏へ右サイドからエリアに侵入した中嶋を相模原・DF井上が後ろから押す形で倒してしまい、これにはもちろんPKの判定。HOYOはこのPKを倒された中嶋自らが決めて貴重な先制点を挙げる。

 
 相模原にとっては慎重にいきたかった場面だったが…

 
 
 
 中嶋がPKを決めてHOYOが先制に成功する。

 すると、ここから相模原はエクスキューズな施策に。この先制点の場面でどこか痛めたのか井上を下げてここまで2試合先発起用されていた中川を急遽ピッチへ。続く35分には富井を諦めて、代わりに村野を投入する。前半40分も経たぬうちに2枚のカードを切ってしまう異常事態に何かしらの動揺を隠せない。しかし、1点を追うために前へ前へボールを進める相模原の焦燥感はひしひしと伝わってきた。この試合では佐野が前線で齋藤と組むような形で、森谷がそれをサイドハーフの位置でサポートする布陣だったが、この佐野が完全にHOYO守備陣にマークされていた。結果的に点取り屋の齋藤の効果的にボールは入らない。1日目から森谷のゴールへの執念は見られたが、チーム全体で相手の守備網を崩すといった場面はなかなか見られなかった。この試合の33分には前がかりになったところを奪われて一気にゴール前へロングボールを繋がれてピンチになる場面もあった。GK山本の好守でここを乗り切り、前半を1点のビハインドで相模原は折り返す。

 
 HOYO・佐藤を自陣で追い込む相模原・森谷。

 
 守備に徹する時間が多かったが、切り替え役はこの田上。
 HOYOのコンダクターとして存在感を発揮。

 
 とにかく積極的に前へボールを送る相模原。
 工藤が最後尾で闘志を前面に出したプレー。

 後半に入って、その相模原のトライは結実する。60分に途中出場の村野がCKから相手のクリアボールに頭で合わせて同点に。相模原の意地がここから見られる。そんな展開になるかとも一瞬思った。しかし、このゲームは結果的にはHOYOのゲームだった。そう思わせたのは5分後、65分にHOYO・MF原が途中出場の直後に目の覚めるようなミドルシュートをエリア手前から決める。佐藤が相模原のエリア内で粘ってボールキープし、フリーの原に上手くリターンパスを送った。

 
 HOYOの2点目の起点をそのボールキープから生み出した佐藤。
 シュートこそなかったが値千金のアシスト。

 
 1次ラウンドに比べると、その快足ぶりが影を潜めた金澤。

 
 村野がヘッドでゴールを決めて勢いに乗るかと思いきや…

 無理をせずに自陣で11人が守るHOYOに対して、攻め込んでいくしかない相模原。2点目を奪われた直後には八田に代えて天野を送り込みサイドを活性化させる。72分には村野が惜しいシュートを見せるが得点には至らない。75分にはセットプレーからゴール前の混戦で齋藤がシュートを試みるが、エリアに一体何人が密集しているんだというようなHOYOの壁の前にそのシュートを弾かれる。この直後にHOYOは自陣からボールを持った堀が一気にドリブルで駆け上がり、強烈なシュート。相模原はかろうじてGK山本がこれをセーブするが、油断すればこのような針の穴を通すような堀のドリブルシュートが襲ってくる。まさにハイリスクだが、全員攻撃でHOYOの守備を崩さなければならなかった。

 
 HOYOは前線にこの堀がいる限り常に脅威。
 カウンターでスナイパーの如くゴールを狙う。

 
 落ち着いた守備を見せたGK野寺。
 2日目まではベンチを温めたが、この試合ではアピール。

 結局最後まで相模原は再度同点に追いつくことができずタイムアップ。この瞬間、HOYOの最低でも入替戦、ほぼJFL昇格が決定となった。大分県リーグから九州リーグに昇格2年目でのスピード昇格。堅い守備で勝利に徹したサッカーを見せた。

 
 タイムアップの瞬間。
 両者、死力を尽くした戦いに膝を落とす。

 
 3位に滑り込んだHOYO。
 JFLの結果からも来季の昇格はほぼ当確。

 
 選手を労う相模原・望月監督。
 1次ラウンド3連勝のチームが3連敗…
 本当にこの大会は恐ろしい。

 HOYOは1日目を0-4で落としながら、残り2日を2連勝。元来守備には定評があったチームで得点力も非凡なだけあって、昇格してもおかしくない実力だった。結論からいうとY.S.C.C.の1日目のサッカーが強すぎたということか。しかしながら、大分を拠点にJリーグ経験者を多数有し活動するHOYO、現在ではすっかりサッカーどころ(Jクラブ5、JFLクラブ2)の九州に新たな全国リーグのチームが誕生したということになる。HOYOの選手、スタッフ、関係者の皆様おめでとうございます。HOYO AC ELANの「ELAN」とはポルトガル語で「飛躍」という意味とか。来季からの飛躍に要注目のチームだ。
 対する相模原は、優遇措置としての2年連続の挑戦は結果を出せずに終わった。厳しい現実。同じBグループを戦った当事者としてもこの衝撃は隠せない。それだけ地域決勝大会という大会がどれだけ過酷で恐ろしい大会かということを実感できたといえる。来季も間違いなく相模原はこの舞台に勝ち上がってくるだろう。JFL昇格を争い、今季以上の戦いを奈良クラブと演じる機会があればと切に思うばかりだ。


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