脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

2011.5.24.ダービー -G大阪vsC大阪-

2011年05月28日 | 脚で語るガンバ大阪
 AFCチャンピオンズリーグは、一発勝負のラウンド16に突入。なんと今季はここでG大阪とC大阪の大阪ダービーが実現。意地と意地がぶつかる試合は、終了間際に高橋の得点でC大阪が1-0でG大阪を下し、ベスト8に進出。翌日に行われた試合では名古屋、鹿島の日本勢も揃って破れ、C大阪が日本勢で唯一ベスト8に勝ち進んだ形となった。

 

 日本のクラブがアジアのベスト8を懸けて直接戦うということは鹿島、名古屋を含めた日本勢4チームがラウンド16に進んでいることを考えれば珍しくはないが、ここで大阪の2チームがマッチアップするという希有なケースになった今季のAFCチャンピオンズリーグ。試合会場はG大阪のホーム・万博。2008年にアジア王者に輝いているG大阪にとっては、絶対に負けられない大阪ダービーとなった。

 平日にも関わらず、16,463人の観客が集まった万博記念競技場。G大阪は負傷の山口に代わって、新潟戦で途中出場でJリーグデビューを飾った内田が初先発。頭部を負傷した二川は幸いにも5針を縫うだけに留まり、絆創膏を額に貼って先発出場を果たす。武井が2試合連続で左サイドバックに入り、その他は同様の陣容でこの一戦に臨んだ。対するC大阪は守備の要である茂庭が出場停止。しかしながらそれ以外はほぼ今季おなじみのメンバー。開幕戦は2-1でG大阪が勝利を奪っている。

 C大阪ペースで始まった前半の序盤。乾、キム・ボギョンのシュートやピンパォンに合わせようとするマルチネスのクロスなど、前半早々からC大阪は得点を狙ってきた。対するG大阪も宇佐美のドリブル突破から徐々に反撃。エリア内でシュートコースを切られながらも果敢にシュートを狙い、そして彼のクロスに二川がケガの影響を感じさせないヘッドで決定機を演出するなど、チャンスを作る。しかし、アドリアーノがほとんど良い形でボールをもらえず孤立するなど、相手のブロックを破れないまま前半をスコアレスで折り返した。

 
 倉田のドリブルを初先発の内田が追う。

 
 イ・グノがボールを繋ぐ。前半はうまく機能せず。

 0-0で迎えた後半、C大阪はいち早くカードを切る。倉田、乾を下げて、中後と小松を投入。これでパスの起点とその当てどころができ、C大阪はリズムを掴んだ。上背がありながら明らかに足元でのプレーも上手い小松のプレーに、G大阪は容易に崩される場面も出てくる。序盤は小松、ピンパォンの連携にかなり手を焼いているように見えた。なんとかマイボールを取り返しても、53分のような速攻カウンターの場面では宇佐美のシュートコースが切られてまともに打たせてもらえない。チャンスが到来したかと思えば、すぐにピンチも訪れる。

 
 加地が清武の行く手を阻む。

 55分にはロングパスに抜け出したキム・ボギョンにGK藤ヶ谷が対応。しかし、不用意な飛び出しをさらりとかわされて折り返されると、ピンパォンがシュート。これはかろうじて加地のブロックに助けられたが、この辺りから明らかに攻守の歯車は狂い出した。C大阪のプレスも高い位置で効いており、ずるずるG大阪のラインは後退。なかなか高い位置でボールが回せない。
 63分には、マルチネスのロングパスを受けた小松が右から持ち込んでシュート。これは藤ヶ谷がかろうじてセーブ。武井が対応に苦しそうだったが、この直後の67分にG大阪は佐々木を投入してもう一度攻撃に転じようとする。

 
 正確なロングパスは脅威、C大阪・マルチネス。

 
 アドリアーノはなかなか良い形でボールがもらえず孤立。

 
 佐々木を投入してもう一勝負。

 しかし、藤ヶ谷はこの時間から不安定だった。68分には内田が対応しきれないと思ったか、ピンパォンの突破を必要以上の飛び出しでファウル。あとわずかでエリアだったことを考えると、ここでPKを取られてもおかしくなかった。72分には佐々木からのライナー性の好クロスをアドリアーノがミートし切れず、決定的なチャンスを逃してしまい、焦りが徐々にG大阪には募っていった。

 
 86分にはアドリアーノがこのチャンスを決められない。

 武井が本職でないポジションで悪戦苦闘しているところを突いてきたか、後半の中盤を過ぎるとC大阪は高橋の攻撃参加が目立つようになる。ただでさえ、ピンパォン、小松、清武、キム・ボギョンが織り成す攻撃を何とかしのぎ続けるG大阪だったが、遂に守備はミスによって決壊した。
 88分、清武のクロスをキャッチした藤ヶ谷がすかさずエリア手前にいた二川にスローイングでパス。二川は2タッチで遠藤にはたくものの、遠藤のワントラップ目が大きくなったところをかっさらわれそうになる。中澤がヘッドでクリアしようとするが、拾ったのはC大阪。右に展開されたボールは走り込んだ高橋によってニアに射抜かれた。

 対応に行った武井は高橋との間を詰めることができず、シュートを含めてコースを切れなかった。しかし、それ以上にニアががら空きの藤ヶ谷のポジショニングも拙かった。ここが見えていた高橋のシュート精度はお見事。ほぼ成す術なしといった場面だった。
 終了直前にアドリアーノの強引なドリブル突破からの折り返しを宇佐美が決めきれず、万事休す。試合終了のホイッスルで試合は決した。

 

 

 ここまでの大阪ダービーをデータで見ると、G大阪の18勝1分8敗と通算対戦成績は圧倒的にG大阪だが、そのほとんどはリーグ戦での結果。1発勝負の試合になると、C大阪が過去の天皇杯2試合で2試合共勝っているというデータがあった。最も直近では、2005年の長居での天皇杯準々決勝(2-3でG大阪が敗戦)が記憶に新しいところだが、6年ぶりとなる1発勝負、この決着は偶然かはたまた必然か。とりわけG大阪にとっては、その経験が大きな自負でもあるアジア王者となった2008年の翌年から3年連続でラウンド16での敗戦。二つの意味で“最も負けたくない試合”を勝つことができなかった。驚くほど静まり返った万博の北半分の静寂ぶりがこの敗戦のショックの大きさを感じさせた。

 
 この悔しさはリーグを含めた残りタイトルの奪取に繋がるか。
 

ようやく最初の一歩 -vsTOJITSU滋賀-

2011年05月27日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグを戦う奈良クラブ。22日に第6節、チームスタート4年目にしてようやく県下最大級の鴻ノ池陸上競技場でTOJTSU滋賀FCを迎えてホームゲームを行った。1,034人の入場者を集めた試合は2-0で奈良クラブが勝利。将来のJリーグ入りを目指して突き進むチームにとっては、県内の人たちにアピールできる大きな機会となった。

 

 結果的にキックオフ時間が20分近く押してしまうほどの大雨が午前中から降り続けた当日。そんな中でも県内の人気グルメ店舗が軒を並べて「奈良クラブ祭り」と題してホームゲームを盛り上げた。なんとか雨は小降りになり、結果的には晴れ間も差し込むほどの天気の回復ぶりを見せた当日の天候。どの店舗も行列ができるほどの人気ぶりで完売となったようだ。

 
 フードコートにはたくさんのお客さんが。
 
 試合内容はヒヤヒヤな場面が多かったものの、地力の差、特に決定力で差が結果を分けた。攻め込まれながらも最後に自分たちの形で試合を持って行くのは今季の常套手段。相変わらずシュート数、決定機では相手に上回られたが、2試合連続の完封勝利となった。
 谷山が前節の退場で出場停止、入れ替わる様に警告累積の出場停止から復帰した眞野が先発で橋垣戸とCBでコンビを組む。それ以外は開幕からの固定メンバー。特にここまで揃って得点を挙げることがなかった2トップの牧と檜山が共に得点を生み出してくれてのは大きかった。牧の後半立ち上がりの得点は完全に試合のリズムを奈良に傾けたと思う。後半から入った矢部のパス捌きでチームにダイナミズムも生まれた。

 
 橋垣戸が先発出場してから失点は減少。

 
 堅守・TOJITSU滋賀を前半は撃ち破れず。

 
 牧は今季3得点。ここぞという時に強い。

 結果的には勝利したとはいえ、内容はスリリング。初めて奈良クラブの試合を観に来た方が多いことを考えると、非常に面白い試合になったはずだ。試合に関してはまだまだ課題は多い。しかし、最も重要なことは、この試合のような雰囲気のホームゲームを繰り返さなければいけないということ。今季リーグ戦、その他公式戦と奈良県内で試合できる機会は少ない。残念ながら県下最大級の設備とキャパシティを誇る鴻ノ池での試合はこれが最初で最後になりそうだけに、リーグ戦、その他天皇杯予選等で機会がある県内での試合に同様のアピールが必要だ。この日も天候さえ良ければ、もう少しの観客動員が見込めたかもしれない。目標の3,000人には及ばぬも1,000人を超える動員ができたことは大きな自信とクラブのアピールになったはずだ。確実に認知度は上がっている。

 
 メインスタンドには多くの観客が詰めかけた。

 
 後半、矢部の投入でテンポアップ。

 確実に奈良県のサッカー界、関西のサッカー界に新風を巻き起こした1,000人動員。これはようやく訪れた最初の一歩に過ぎない。大事なのはこの後の継続だ。もちろん、結果も重要。続く加古川戦の勝利で無敗で後期日程へ折り返したい。全てを懸けてやり続ける。

 
 チームをまとめる吉田監督。
 内に熱さを秘め、現場ではクールに試合を采配する。

“脇の甘さ”は健在 -G大阪vs新潟-

2011年05月26日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1は第12節、G大阪はACLのため2試合未消化ながら4勝1敗の9位。万博で対するのはその一つ上にいる新潟。試合はアドリアーノの試合終了間際の得点でG大阪が2-1で逃げ切った。

 

 G大阪は下平が負傷で離脱後、懸念されている左サイドバックにはなんと武井が務めることになった。対する新潟はブルーノ・ロペスが出場停止から復帰。G大阪は11日のACLグループリーグ最終節を白星で飾り、リーグでも前節・福岡戦に3-2と逆転勝利を収めた。3日後に迫っているACLのラウンド16に備えて。勝って繋げたいところだった。

 先制点は8分、G大阪がアドリアーノのシュートで試合を動かす。最終ラインの加地からボールを受けた遠藤が中央からイ・グノへロングパス。イ・グノがそのままドリブルで左からエリア内へ切れ込んで折り返すと、アドリアーノが左足で体勢を崩しながら決めた。

 
 
 リーグ戦のホームゲームでは3試合連続。
 アドリアーノの先制点。

 先制点のすぐ後、10分には宇佐美が左サイドからドリブルで際どいシュートを狙うが、これはわずかに新潟GK東口のセーブに遭う。序盤から流れは完全にG大阪だった。
 しかし、この直後にアクシデントが。CKのこぼれ球を競り合ったG大阪・二川と新潟・ブルーノ・ロペスが激しく衝突。頭部を切って流血が止まらない二川がプレー続行を不可能と判断され、佐々木が投入された。

 
 まさかのアクシデント。二川がおびただしい流血。

 
 その直後のG大阪の直接FK。
 遠藤のキックは東口の正面に。

 二川のポジションをそのまま引き継いだ佐々木を加え、さらにたたみかけたいG大阪だったが、新潟もミシェウを軸に、この試合で今季初先発の大島にボールを集めようとする。その新潟にほとんどセカンドボールを与えないG大阪。前半は新潟にシュートを1本を打たさずに1-0で折り返した。

 
 この日も明神のハードワークは健在。

 
 加地は攻撃でなく守備で持ち味を披露。

 後半が始まり、10分しないうちに新潟は中盤の小林に代わって小暮、62分に川又と若手を次々と起用。徐々にショートカウンターをメインに反撃を仕掛けていく。
 70分にはG大阪も宇佐美の突破からの折り返しをあとわずかというところでアドリアーノに合わせられず、追加点が奪えない歯がゆい時間帯が続く。
 すると、追加点が奪えない流れは守備面に影響。77分には勢いを盛り返していた新潟がミシェウの得点で同点に。G大阪は中澤のヘディングミスをそのまま詰めていたミシェウにかっさわれた。
 
 
 遠藤とミシェウがマッチアップ。

 
 左サイドバックに入った武井。
 守備だけでなく果敢に攻め上がって得意のミドルも披露。

 この後、G大阪は負傷した山口に代わって、2年目でユース出身の内田を途中起用。ここでチーム屈指の経験を誇る山口の離脱は痛かったが、今季は金正也が開幕スタメンを掴んでいたこともあり、ルーキーを中心に機会があれば積極的に守備面の新陳代謝を意識していることが分かった。
 本音を言えば、西野監督はこの同点に追いつかれたところで佐々木を使いたかったところだが、二川に前半あのアクシデントがあったことで多少プランは狂っただろう。しかし、1-1で迎えた試合終了間際の88分、カウンターで地力の差を見せたのはG大阪だった。交代出場の内田がブルーノ・ロペスからボールを奪うと、一度中澤に繋いだ後で自身で一気に遠藤までパス。新潟が守備陣形に切り替える前に左サイドでフリーになっていた武井がこの遠藤からボールを受け取ると、一気にそのままドリブル。イ・グノと前線で溜めを作ってラインを押し上げた。ここでまた手数をかけてしまうのかと思いきや、中央でボールを受けた宇佐美が強烈なシュートを見舞うと、思わず新潟GK東口が弾いてしまう。眼前にこぼれたそのボールをアドリアーノが押し込んでG大阪が土壇場で勝ち越した。

 
 キック力がハンパない東口。
 しかし、最後はセーブのこぼれ球を押し込まれた。

 
 佐々木も二川の代役を前半早々から務めた。
 十分、その代わりとしてアピール。

 
 アドリアーノが決勝弾。ゴール裏へまっしぐら。

 試合は2-1で決した。G大阪としてはもう少し楽に勝負を決めたかった試合だっただろう。今季はまだここまでリーグ戦5試合で無失点試合はゼロ。ACLの6試合においても最後の天津戦しか無失点に抑えた試合はない。この「脇の甘さ」はどうしても気にかかる。“取られたら取り返す”を地でいくG大阪だが、失点を抑えることはこの日もできずにACLラウンド16を迎えることになった。とりあえず歓喜に沸く万博が、この3日後に劇的なドラマの舞台になるとはこの試合を現地で観ていた誰もが予想しなかっただろう。

 
 この試合内容を西野監督はどう消化するか。
 結果に直結するのは3日後のC大阪戦。

 
 いつでも冷静さを失わない遠藤。
 その脳裏にはいかなるイメージが・・・

無敗継続、そして奈良へ -vs三洋洲本-

2011年05月18日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは先週末に第5節が開催。4勝1分で首位の奈良クラブはこの2季のリーグ王者・三洋電機洲本と対戦。前半こそ拮抗した展開で、後半に入って退場者を出すものの、李、吉田の2得点で2-0と快勝。5勝1分と無敗継続のまま、次節、奈良市鴻ノ池陸上競技場でのホームゲームを迎えることになった。

 

 会心の試合だった。前半からポゼッションを分け合いながらも、後半の終盤に相手の集中力が切れたところを見逃さなかった。0-0で迎えた66分にDF谷山が得点機会阻止のスライディングで一発退場。10人での戦いを強いられたが、そこからの推進力が凄まじかった。80分に李が辻村隆の折り返しを落ち着いて中央からシュートを決めると、その1分後には左サイドから攻め上がった吉田が豪快にシュートを決める。前節・アイン戦、そしてこの三洋洲本戦を「1勝1分」で乗り越えれば、今季のリーグはかなりやれるのではないかという試金石だった2連戦。見事にその思惑通りの勝ち方で乗り越えた。昨季のこの時期に公式戦初対戦(@ボスコヴィラ)で、0-3と何もできなかったことを思い出すと、昨季JFL入替戦まで進んだ関西王者にここまでの試合ができたのは大きな自信。これで前期5位以内が確定。全国社会人選手権(通称:全社)関西予選への出場権を獲得した。

 
 
 李が先制点を奪い取る。今季は絶好調。

 
 吉田が移籍加入後、初得点。試合を決めた1発。

 本当に今季いつも通りのサッカーをした結果が導いた快勝劇だったと思うが、奈良はこの山場の2連戦に守備の要・橋垣戸がコンディション万全で先発フル出場を果たしてくれたのが大きい。この試合も眞野が警告累積で出場停止だったが、橋垣戸、谷山をセンターに据えた4バックで安定した守備を披露してくれた。攻撃面では李、三本菅の効果的な散らしを軸に辻村兄弟が息の合ったプレーを見せてくれた。残念ながらFW陣に得点こそなかったものの、檜山、牧にも十分チャンスはあった試合だった。

 
 檜山はここまで1得点。次節以降に期待。

 
 もはや代えの効かない選手、辻村隆。
 2アシストで一気にアシストランクトップに。

 一方の三洋洲本は、昨季の地域決勝決勝ラウンド、そして入替戦第1戦を見届けた者としては、メンバーが変わっており少々スケールダウンした印象。おそらく負傷なのだろうが、今季一度もGK浅野が出場しておらず、またリーグMVPの司令塔・成瀬も姿がなかった。森川もベンチ要員のまま90分間出番はなかった。2季連続1部の得点王に輝くエース・梅川も沈黙。一昨年は3敗、昨年に至ってはわずか2敗でリーグを制しているチームが早くも3敗目となった。

 
 疲れることを知らない無尽蔵のスタミナ。
 兄である辻村剛のゴールラッシュにも期待したい。

 そして、奈良クラブが次節臨むのはTOJITSU滋賀FCとの第6節。公式戦初対戦の相手であるが、奈良より1季早く県リーグから関西リーグに昇格した先輩チームだ。昨季はDiv2での戦いとなったが、今季からDiv1に再昇格。ここまで1勝2分2敗となかなか結果に結びついていないようだが、サポーターも含め、大混戦のDiv2を制して上がってきた一体感は侮れない。特に前線の岩田は3年連続で所属ディビジョンのベストイレブンに名を連ねており、3年前には得点王も獲得している。気を緩めれば確実にやられる相手だ。
 しかし、奈良にとっても鴻ノ池という県下最大級の陸上競技場で初めて試合ができる記念すべき機会。まさに相手に不足なし。当日は「奈良クラブ祭り」と題して、クラブ主導で多彩なイベントも企画されている。是非、お時間のある方で、奈良クラブに関心のある方は会場まで。

 
 初となる鴻ノ池開催試合。
 Jを目指す上で本拠地となる場所だけに開催を継続できれば。

臍を噛むのは今夜のみ -VS アイン食品-

2011年05月07日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグはGWの中断を挟み、第4節を迎え、ここまで開幕3連勝の奈良クラブがアイン食品と対戦。拮抗した試合は終盤に4得点が乱れ飛ぶ劇的な展開に。アディショナルタイムに奈良は牧が得点を奪ったものの、その直後に同点弾を決められ2-2で痛み分けに終わった。

 

 ここまで先発メンバーが固定だった奈良は、ここにきて橋垣戸が先発に名を連ね、谷山、眞野との3バックを敢行。左右のサイドバックを務めていた吉田と黒田を一列前へ上げ、攻撃の厚みを持たせた。守備のリスクも同時に上がるが、これは非常にハマれば面白いなと思った。3連勝中の奈良にとってはアインは昨季の前期対戦時こそ引き分けたが、後期対戦時は2-0とリードしていた試合を2-4までひっくり返された。ここまで関西リーグでは1勝もできていない相手であり、関西を制するには彼らを乗り越えなければ話にならない。牧が負傷明けでベンチスタートとなったが、ほとんど陣容にダメージはなかった。
 対するアインはこれまで何度も書いてきたように、おそらくその陣容だけでもリーグ屈指の補強を敢行。既存戦力との融合がうまくいけば洲本以上の強敵だ。撃ち合いにも滅法強いイメージがある。そんなアインを攻略できるかどうかは今季の重要な指標になるだろう。

 
 
 
 空中戦に強い橋垣戸(上)と谷山(中)とコンタクトに強い眞野(下)。

 前半から相手に押し込まれる流れが続いた。しかし、橋垣戸を中心とした守備陣が機能し、決定機を作らせない。序盤からエンジンがロースタートなのはこの数試合いつものこと。かといって序盤から飛ばしてもG大阪とのTMでも前半フルスロットルで攻めて、後半一気に運動量が落ちたように得策ではない。今年一番の暑さではないかという厳しい日差しと気温のことを考えれば、理想のペース配分で前半を戦えた。スコアは0-0と先制点は前半のうちに欲しいと思ったものの、まずは手堅く無失点で乗り切ったことは大きかった。

 
 李がチャンスを作る。
 まさに今季はチームの司令塔としてフル回転。

 
 エース・檜山は決定機を決めきれず。消化不良。

 後半に入って、明らかにアインの運動量が落ちてきた。0-0で折り返していたこともあり、ここで前半に浪費しなかった運動量を一気に攻勢に繋げることができた。橋垣戸、三本菅のセンターラインでボールを奪い、李、辻村兄弟で一気にボールを前線に運ぶ。技術面も含めて、後半は相手を一歩しのぐ攻撃を展開できた。

 
 吉田は得意の攻め上がりが少し影を潜めたか。

 しかし、1点は遠かった。エリア内までボールは持ち込めるが、アインの守備ラインのブロックを崩せない。シュートは枠内を捉えてもほとんどがGKの捕捉範囲。サイドからのクロスもあまり効果を得られなかった。消耗戦は1点を争う展開になるかと予想された。

 83分に自陣エリア左手前付近から相手のFKを頭で合わされて被弾。ここに来ての先制点献上は痛かった。まるでここまでの押せ押せムードに一気に水を差されたといった感じだ。
 ところが、奈良に同点弾の機会はやってくる。87分、辻村隆の左CKを三本菅が頭でぴったり合わせてゴールへ叩き込む。会心の一撃にスタンドは沸いた。

 
 三本菅の同点の場面。
 実はこの直前にも強烈なヘディングシュートをお見舞いしていた。

 そして、後半も終了間際のアディショナルタイムに入ったかという時間、辻村剛のドリブルからのスルーパスを途中交代の牧がゴールに流し込み逆転。負傷から帰還した牧の今季2点目に、沸き立つチームとスタンド。ほぼ試合はこれで決まったかに見えた。
 ところがあと数十秒、ほんの1分強ほどの時間を奈良は乗り切れなかった。直後にカウンター攻撃からアイン・千代原にシュートを決められる。逃げ切り失敗。その得点の直後に試合終了の笛が響いた。

 
 牧が得点を決めて、この歓喜で試合は終われるかと思ったが…

 強い日差しの中で、1点差を争う試合。開幕からの4試合中最も内容は良かったのではないだろうか。終盤の執念の撃ち合いにはしびれるものがあった。なぜ、牧の得点後に逃げ切れなかったのかと考えると、まさにスルリと手の中からこぼれ落ちたという表現が相応しい。なんとも悔しい試合となったが、次節の三洋洲本戦に良いイメージで臨むためには良い試合になったのは間違いない。選手たちも手ごたえを掴んでいるはず。臍を噛むのは今晩だけにした方が良さそうだ。切り替えて前に進もう。

 
 次節は昨季の王者、三洋洲本と対戦。
 12日、アスパ五色サブグラウンドで12:00キックオフ。

5試合ぶりの完封勝利 -関西大 VS 大産大-

2011年05月06日 | 脚で語る大学サッカー
 関西学生リーグは先月29日からこのGW3試合目、前期日程の第6節を迎え、高槻市萩谷総合運動公園サッカー場では、4勝1敗で首位を走る関西大が大産大と対戦。今季2度目の無失点試合で関西大が3-0と快勝した。

 
 

 4勝1敗で首位の関西大。されど、ここまでの無失点試合は開幕戦の大体大戦(1-0)のみ。それ以降は4節びわこ大戦以外で勝利を収めているものの、先制された後の逆転勝利という内容がなんと3試合もあるのだ。前節の姫獨大戦ではラスト5分まで0-1で敗戦濃厚というスリリングな展開を強いられた。ここまで5試合、決して満足のいく戦いができていないというのはチームの誰もが思っていることだろう。この5月は現在上位を争う立命大、桃山大との直接対決も迫っている。この大産大戦でしっかり勝利を収めて繋げたいところだ。
 そんな関西大は、先発メンバーに主将・櫻内(4年)が負傷から復帰。左サイドバックにはここまで5試合先発を務めてきた都並(2年)ではなく、G大阪ユース出身の吉川(2年)が入った。前節、サイドで良い動きを見せた中島(2年)もそのまま右サイドハーフで2試合連続の先発。1トップのポジションには3試合連続で原口(1年)が入った。

 
 主将・櫻内がカムバック。磐田に入団が内定している4年生。

 一方の大産大は、前節、関学大を4-1と破って今季初勝利。前線も含め、特に江口(2年)、太田(3年)といった2列目の選手たちが得点を叩き出し、その潜在能力の高さを窺わせた。この試合では、前節交代出場だった初芝橋本高出身の1年生西岡が先発でエース・鍔田(4年)と2トップを組み、連勝を狙った。

 
 大産大・主将の佐道(4年)。
 プログラムの紹介欄には「保安官ジュニア」との愛称が。

 
 注目選手は大産大・MF江口。小柄ながら技術は高い。

 試合は関西大がパスワークで序盤から大産大を圧倒する。開始3分に左サイドからの海田(2年)の折り返しを和田(1年)がシュート。早いうちに先制点が欲しい関西大は一気に大産大ゴールに迫った。8分にはエリア内で原口がポスト役となり、落としたところを海田がシュートを決めて関西大が先制した。

 
 関西大・DF小椋(2年・右)と競り合う大産大・FW西岡(左)。
 チャンスは作った。

 関学大戦でも劇的な逆転弾を決めた海田、この先制点で今季2得点目となったが、その10分後、相手選手との交錯で負傷(どうも顔面を押さえていた様子)。残念ながら安藤(3年)と交代することになる。選手層の厚い関西大、全くこのアクシデントが試合に響くことはなかった。安藤は右MFの中島とポジションチェンジし、サイドから再三大産大守備陣をドリブルで脅かした。
 41分には原口が突破してシュートを放ち、これを相手GKが弾いたところを和田が詰めて関西大が2点目を追加する。和田は今季初得点。1年生選手としては第2節・京園大戦で原口が決めた得点に次ぐ得点となった。

 
 
 
 
 
 
 関西大・和田による2点目の場面。
 1年生コンビで奪った得点。

 前半終了間際には、徐々に関西大からボールを奪えるようになった大産大が攻め込む場面が見られた。39分にはこの日先発出場を掴んだ西岡(1年)がドリブルで突破。寺岡をかわしながら、シュートを放つも関西大GK金谷(2年)がストップ。45分には前節1得点の江口(2年)が巧みなループシュート。これも金谷がかろうじてセーブし、関西大は前半を無失点で乗り切った。

 
 GK金谷の仕事がまだ多いというのが気になるところ…

 後半に入ると、この日のきつい日差しと気温の高さもあって、ややペースは落ちたが、それでも関西大のリズムに変わりはなかった。後半開始からセンターバックを小椋(2年)から藤原(2年)に変更。寺岡とのコンビで高い守備ラインによって大産大の前線への落としどころを積んでいった。初先発の吉川も積極的に攻撃参加。60分には司令塔・岡崎(3年)がミドルシュートを放って大産大を牽制する。

 
 非常に暑いコンディションの中で岡崎はよく動いていた。

 苦しい戦いを強いられる大産大は、西岡に代えて前節1得点の川西(3年)、そして中山(2年)とFWの選手を2人投入して1点を追いかける。70分には、早速その川西のシュートがポストに弾かれ、そのこぼれ球を鍔田がシュートするもバーの上。これ以上ない決定機を逃してしまった。前節はこのリズムを作った川西が先発出場だった。この試合でも先発から起用すれば少し展開は違ったかもしれない。

 
 前節ゴールを決めた大産大・FW鍔田もこの試合では苦しんだ。

 関西大は、原口が2節以来の得点を欲している様子で、貪欲にエリア内で勝負しようとする姿が目立った。81分に岡崎のスルーパスに角度のないところからシュートを狙うが、わずかに右に逸れる。
 84分には、エリア右手前からの岡崎のFKに田中(3年)が頭で合わせる。一度はGKに弾かれるものの、そのボールをクリアしようとした相手DFのクリアボールが寺岡に当たりネットを揺らした。形はどうあれ、この3点目で試合は決し、最後の最後まで攻め立てた関西大が3-0で勝利を収めた。

 
 
 寺岡がダメ押しの3点目を決める。

 
 原口は得点が欲しかったところ。何度も勝負する場面も。

 
 後半終盤には関西大・FW瀬里(4年)が今季初出場。

 関西大は、櫻内が復帰した右サイドが攻守両面で安定。まだ少しヒヤッとする場面は作られながらも開幕戦以来の完封勝利を飾った。次節はこの2年間勝利を挙げられていない立命大(5/8@皇子山)、そして次々節には桃山大(5/14@J-GREEN堺S1)との戦いと、現在上位を争う2校との戦いが続く。どちらもリーグ優勝のためには負けられない。

進化の3年目、忍耐の2年目 -佐川印刷 VS 松本山雅-

2011年05月04日 | 脚で語るJFL
 JFLは東日本大震災の影響で開幕が約1か月遅れ、4月23日より開幕。残念ながらソニー仙台は震災の影響を鑑みて前期日程は参加が見送られている。順延分が後期日程終了後に回されたため、前期第7節から始まった日程はこの週で前期第9節。太陽が丘陸上競技場ではここまで1勝1分と順調な発進を果たした佐川印刷が松本山雅を迎えて対戦。拮抗した試合は1-1の引き分けに終わった。

 

 開幕戦であった前期第7節こそ金沢にスコアレスドローだった佐川印刷だったが、続く8節では秋田に3-2と勝利。中森監督の体制になってから徐々に若返りを図っているチームは、それ以前からの5年間で毎年確実に順位を上げている(06年15位→07年12位→08年11位→09年9位→10年6位)。今季もJ2富山から姜、桜井を獲得。着実にJFL経験者や大卒ルーキーで補強。更なるステップアップを目指している様子。昨季の松本山雅との戦績は1勝1敗と五分と苦手意識は全くない。松本山雅サポーターにホーム・太陽が丘を埋め尽くされたが、これがプリントダイナマイトに火をつけるはず。先発には富山から移籍加入した姜、桜井が2人とも顔を揃え、大卒ルーキーの佐伯と日野も先発に名を連ねた。

 

 アウェイで太陽が丘に乗り込むのは、昨季の佐川印刷戦(アウェイ)以来となる松本山雅。もちろん、今季の目玉補強は横浜FMから獲得したDF松田直樹であり、ユニフォームも一新。更なるサポーターの後押しでJ参入を今季こそ決めたいところ。しかし、開幕戦の秋田戦(@アルウィン)では僅差で敗戦。信州ダービーとなった前節は、今季よりJFL昇格を果たした長野を相手に2-1と競り勝っている。チームと大勢のサポーターが一丸となって連勝を狙いに京都へ来たのは確かだろう。今季はライバル・町田から木島良を獲得したことで、木島徹との木島兄弟の2トップが完成。松田だけでなく豊富な経験値を持つ選手を先発に据えてブラッシュアップしている。

 
 

 試合は両者とも前半から好守の切り替えが早い展開。佐川印刷は、右サイドの佐伯、平井を起点に松本山雅陣内に攻め込む。それに対して、松田、飯田の両CBと須藤というセンターラインでボールを奪い、木島良のスピードあるドリブルでカウンターを狙う松本山雅という構図。押し込まれているようで、それが自分たちのリズムともいえるリアクション型のサッカーは松本山雅の真骨頂。いかに佐川印刷の攻撃をいなすかが注目ポイントだった。

 
 新たな松本山雅の象徴となれるか、松田直樹。

 
 佐川印刷は素早く縦にボールを運び組み立てる。

 先制点は16分、松本山雅だった。佐川印刷のFKをキャッチしたGK白井が一気にフィードすると、これを木島良が一気に持ち込み折り返す。これを木島徹が受けてシュートを決めた。開始6でGKにセーブされたものの鋭いシュートを放っていた木島徹。まずは理想的な時間帯に先制することに成功した。

 
 

 ところが、佐川印刷はあっさり同点に追いつく。20分に桜井からのパスを受けた平井が松本山雅守備陣の間を抜けて、最後はGKと交錯しながらもループ気味にゴールへ沈める。あまりにも松本山雅のリードは持たなかった。

 
 

 25分、佐川印刷は佐伯の右からの折り返しを桜井がシュートもここは松本山雅・DF多々良のブロックに阻まれる。36分には松本山雅が鐡戸の強烈なシュートを放つが、ここもGK大石が立ちはだかった。44分には左からのクロスに攻め上がった松田が惜しいシュート。すると、前半終了間際には佐川印刷・大槻が狙い澄ましたシュートがバーを弾くなど両チームあと一歩でお互いを突き放す1点が遠い。

 
 
 鐡戸のシュートを佐川印刷・大石がナイスセーブ。

 

 

 後半を迎えるにあたって、松本山雅は既に警告を受けていた木島徹を下げ、FW塩沢を投入。これはあまりに意外な采配だった。確かに試合後の吉澤監督のコメントにもあったように疲労の色は見えていたが、兄である木島良との連携も良く、局面を打ち破れるとは思っていた。それ以上に塩沢に期待をかけたということだったのだろう。後半の立ち上がりこそ木島良の突破とシュートから決定機を作ったが、徐々に佐川印刷がペースを建て直す。

 
 今季町田から加入した木島良は突破力抜群だったが…

 64分に佐川印刷は姜に代わって高向、松本山雅は北村に代えて木村と、明らかに両チーム追加点を意識した交代を仕掛ける。69分には佐川印刷がCKから桜井が惜しいヘディングシュート。72分にも桜井がヘディングシュートで松本山雅ゴールを強襲したが、ここはGK白井がなんとかセーブしてしのぎ切る。

 
 今後、ストライカーとして印刷を牽引しそうなFW桜井。

 76分には、攻撃の核となっていた松本山雅・木島良が2枚目の警告で退場処分に。4分前に警告をもらったばかりなのにも関わらず、軽率な行為だった。再三サイドライン際をドリブルで崩していただけに、1-1という局面で彼を欠いたことは松本山雅にとっても痛かったに違いない。完全に終盤の流れは佐川印刷にあった。

 
 木島良が退場処分。これで15分を10人で戦う羽目に。

 試合終了直前には佐川印刷が怒濤の猛攻撃。90分に平井が“外す方が難しいのでは?”という惜しいシュートを外してしまう。ここからアディショナルタイム、佐川印刷は合計3度の決定機を決められず。スリリングな攻防に観客席は沸きに沸いたが、消耗戦ともいえる激しい試合は1-1のまま幕を閉じた。

 
 
 平井のシュート、これは決めておきたかった…

 
 最後のチャンス、しかし桜井のヘッドは無情にもバーの上へ。

 試合内容としては佐川印刷に軍配が上がる試合だった。終了直前の決定機がどれか1本でも決まっていれば完全に勝てた試合。相変わらずの縦に速いサッカーで、一気にゴールを目指す姿勢は今季も魅力に溢れており、各チームが苦戦を強いられそうだ。特に前線に起用されている富山から加入の桜井は長身で前線の起点になりそう。また、右サイドバックの佐伯も機を見たフィードとクロスで好機を作っていた。中森体制の3年目、更に飛躍のシーズンになる予感を十分感じさせてくれたのではないだろうか。

 
 ドリブルで持ち味を見せた2年目のFW中島。

 一方、1勝1分1敗とスタートダッシュに失敗した松本山雅。前節、ホーム・アルウィンで宿敵・長野に競り勝ち、勢いに乗れるかと思ったが、この試合では勝点をようやく拾えたというようなドロー劇。元来、相手に持ち込まれてこそチームとしての持ち味を発揮できると思うのだが、木島良の退場後は防戦一方でそれどころではなくなってしまった。その中で目を見張る活躍だったのはGKの白井裕人。再三佐川印刷の決定機をそのファインセーブで切り抜け、勝点1ポイントを死守したといえる活躍。また、キックのフィードも良く、この試合だけを見れば、松田よりもこの白井が松本山雅にとって今季最大の補強になったのではと思わせる大活躍だった。ただ、キーマンとなる選手で警告を受けている選手が多く、今後メンバーが崩れる可能性もある。週末の長崎戦に木島良が出場できないのは痛いところだ。

 
 孤軍奮闘のGK白井。トライアウトの末加入したという。

 
 判定に戸惑いを隠せない松田。
 確かにJとJFLでは同じようにはいかない。

 サポーターの数と熱気、素晴らしいホームスタジアム。あとは結果を残していくのみ。町田が開幕ダッシュに成功している中、2年目のジンクスとも言うべきか、序盤の戦いでは松本山雅は少し忍耐を強いられている。

 

これが“持っている男”の仕事 -関西大 VS 姫獨大-

2011年05月03日 | 脚で語る大学サッカー
 1日に神戸ユニバー記念競技場で行われた関西学生リーグ。第2試合では、関西大と姫獨大(姫路獨協大)が対戦。先制して試合を優位に進めた姫獨大だったが、関西大はラスト5分間で寺岡(2年)が2得点の奇跡的な活躍を見せて2-1と土壇場で逆転勝利を果たした。

 
 
 試合前には選手たちによって書かれたメッセージが。

 関西大は、2日前に行われた前節・びわこ大戦で無得点の完敗(0-2)。ボールは支配したものの、守備の集中を欠いたところをびわこ大のカウンター攻撃の餌食となった。攻撃陣でも原口(1年)が先発を務めたが、ほとんど仕事をさせてもらえず。連敗は避けたいところ。この試合では前節に出場していなかった寺岡が先発に復帰。主将の櫻内(4年)こそ負傷でメンバー外となったが、代役を前節と同じく内田(1年)が務める。FWの先発は再び原口が務め、中島(2年)が先発で右MFに入った。

 

 対する姫獨大はここまで1勝3敗。第3節で昨季王者の阪南大を破る(2-1)金星を挙げたが、前節・関学大戦は1点差の惜敗(2-3)で惜しくも勝点を得られず。しかし、勝利を果たした阪南大戦を見る限りでもその構成力はなかなかのもの。アルビレックス新潟シンガポールでもプレーをしていたFW河野(4年)を中心にもう一度金星を狙う。

 

 試合は予想通り序盤から関西大がボールを回して支配する。立ち上がりこそなかなかシュートまで持ち込める場面がなかったが、17分にDF小椋(2年)がシュート。19分にはこの試合先発のチャンスを掴んだMF中島が良い攻め上がりを見せて中央へクロス。これをファーサイドでMF海田(2年)がダイレクトボレーでシュートを放つなど、徐々にフィニッシュへの導線が見えてきた。
 対する姫獨大は、29分に河野のシュートが関西大GK金谷(2年)のファンブルを誘う。詰めることはできなかったが、ゴール前には時折ボールを持ち込むことはできていた。しかし、陣容は圧倒的に関西大には及ばない。相手のミスをいかに突くかが姫獨大の必勝ポイントだった。

 
 この試合でも和田(1年)が巧みなボール捌きで試合を演出。

 
 19分、関西大・海田がダイレクトボレーで魅せる。

 
 関西大・岡崎に姫獨大・五百川が激しくアプローチ。

 36分、河野がエリア内までボールを持ち込むと、関西大はDF小椋がチェックにいくも、これをかわして更に河野は突進。カバーに入った内田ともつれてボールがこぼれたところを右から走り込んだ姫獨大・FW廣利(2年)がすかさず押し込んだ。関西大守備陣のミスを逃さず、見事な先制点だった。

 
 
 
 
 
 河野が見事に関西大の守備の連係ミスを引き出した。
 廣利が詰めてきて先制弾をゲット。

 リードを奪われた関西大、なんとか1-1に持ち込んでから前半を終わりたかっただろう。圧倒してボールを回していながら負けることほど無様なことはない。それは“回させられている”だけ。前半終了間際に岡崎(3年)を起点に怒涛の攻撃を見せる。43分には彼のCKから寺岡のヘッド、45分には岡崎、海田と繋いで最後は中島がシュートを放つ。終了間際の最後のプレー、岡崎のCKに田中(3年)が飛び込むがこれも決まらない。どうもスッキリしないまま関西大は前半を終えることになった。

 
 河野が前線でうまく関西大DFを引きつけて二列目のチャンスを増やす。

 
 関西大はGK金谷が前半から好守を連発。

 1点のリードを得て、後半勢いをつけたのは姫獨大だった。関西大の運動量低下を見逃さず、MF伊藤(3年)を中心に関西大のボールを奪って仕掛けた。50分には廣利のFK、52分には五百川の角度のないところからのシュートで関西大ゴールを脅かし続ける。
 関西大は、53分に岡崎が中島の折り返しにしっかり合わせてシュートを放つが、姫獨大・GK佐藤(2年)の好セーブに得点ならず。この流れの悪さを断ち切るために、55分、原口、内田の両1年生を下げて奥田(2年)、安藤(3年)と攻撃的な選手を投入。まずは目指すべき1点を取りに向かった。

 
 姫獨大は前半以上に関西大ボールへのチェックを激しく行う。

 
 関西大は奥田(右)を投入してアクセルを踏み込む。

 姫獨大はボールを繋ごうとする関西大のボールの出どころをしっかりとチェックして奪い続けた。69分には廣利のスルーパスに伊藤が走り込んで決定機を作り出す。74分には廣利の折り返しに武井(2年)、伊藤が立て続けにシュート。しかし、関西大はGK金谷がこれをことごとくセーブ。まさに神がかる金谷のセーブに応えたい関西大であった。

 この流れでいけば、追加点を姫獨大が奪い、前節のびわこ大に喫した敗戦パターンを繰り返すのではとも思えるほど、動きが悪くなる関西大。櫻内は負傷で欠場、この状況でピッチ上のイレブンを叱咤して引っ張っていける選手は誰なのかを再考すべき展開ともいえた。そして、まさにスーパーな選手がいなければ試合をひっくり返すのは不可能に近い雰囲気だった。

 ところが、この局面をひっくり返す「持っている」男は関西大にいた。DF寺岡真弘だ。彼は試合の残り時間が5分を切った86分にゴール前の混戦からハイボールをヘッドで叩き込み、チームを1-1の同点に導いた。チームメイトの祝福を振り払わんかというばかりの咆哮で自陣へ戻る彼の姿は、大学2年生とは思えない逞しさがあった。
 そして、姫獨大の決定機(これは非常に危なかった…)をGK金谷がファインセーブでしのいで次に繋げると、引き分け濃厚かと思われたアディショナルタイム1分、岡崎の左CKをまたしても寺岡が頭で合わせてゴールに沈める。歓喜の寺岡とチームメイトはベンチ前で大団円。3節の関学大戦以上の劇的な逆転勝利で関西大が姫獨大を振り切った。それに要した時間はわずか5分ほどであった。

 
 
 
 寺岡が試合を土壇場で振り出しに戻すこの得点。

 
 関西大・GK金谷は最後の1分までファインセーブを連発。

 
 
 
 
 
 アディショナルタイムにこの逆転弾。寺岡真弘恐るべし。

 試合の内容はさておき、何という勝負強さだろうか。試合の大半は最終ラインの深い位置に身を置き、ビルドアップで後方からゲームを組み立てていた彼が、ここまでゴール前で決定的な仕事を連発してしまうとは思わなかった。ヴィッセル神戸U-18出身の2年生。昨季は1年生ながら、U-19日本代表、全日本大学選抜として各方面で活躍。国際大会での活躍も称えられ、関西学生サッカー特別賞を受賞した日本サッカー界のホープDF。2年生とは思えない出来上がった体躯的な強さと空中戦の強さは折り紙つき。確実に将来は日本代表に名を連ねる選手だと確信している。おそらく近いうちにどこか近隣のJクラブで特別指定選手にということもありそうだ。
 そんな寺岡擁する関西大だが、この試合を振り返ると内容は決して褒められたものではない。どうも繋ぎすぎる嫌いがあり、ボックス内で展開に詰まる場面が多々見られる。シンプルにいきたいところだが、なかなかそうはいかない。まるでどこかの青黒いJクラブの試合のようだ。岡崎、田中と関西屈指のセントラルMFがいるのだから、決定力に長けた前線の軸が定まれば一層攻撃力が増すと思うのだが、昨季のエース・金園(磐田へ入団)の穴埋めはもう少しかかるようだ。まだ、2年が主体のチーム。連携が図れて真価を発揮できるのは夏以降になりそうだ。
 一方の姫獨大は善戦した。1点差で負けた前節や今節の試合が示すように、まだまだ試合巧者というには及ばないようだ。しかし、河野、廣利、そして中盤の伊藤など攻撃面でまた見たくなる選手は多い。次節の同大戦は今季2勝目を狙いたい。

ミラクルOSU、今季初白星 -関学大 VS 大産大-

2011年05月02日 | 脚で語る大学サッカー
 関西学生リーグは先月29日の前期第4節からわずか中1日で第5節が開催。神戸ユニバー記念競技場では2試合が行われ、第1試合では、ここまで2勝2敗の関学大と開幕から未勝利4連敗中の大産大が対戦。試合は1-4と予想外のスコアで大産大が勝利。派手に今季の初勝利を飾った。

 

 前節、姫獨大に3-2と僅差で勝利を収め、連勝を狙う関学大は、関関戦の際にはベンチスタートだった昨季の優秀選手・梶川(4年)が先発に前節から戻っていた。前線に三ノ宮(3年)を置き、司令塔・阿部(4年)がその後ろからドリブルを仕掛けて形を作る強力な攻撃陣。前節は梶川が1得点1アシスト、阿部も1得点で調子は上向きのようだ。

 

 一方の大産大は、前節、阪南大に0-3と敗戦。今季初勝利の先を越されてしまった。なかなか自分たちのペースに持ち込めず苦しい戦いが続く彼らにとって、今節の関学大、次節の関西大とまさに踏ん張りどころともいえる日程が続く。毎試合何度か好セーブを披露するGK神園(3年)の奮闘に前線も応えたいところ。

 

 試合は小雨がぱらつく中キックオフ。前半から相手陣内へ果敢に攻め込んだのは関学大だった。5分には早速、エース・阿部がシュート。ドリブルで相手守備陣を切り裂く彼を中心に関学大の攻撃のバリエーションが光る。8分には右サイドバック高松(4年)の豪快なサイドチェンジから関(2年)がダイレクトでパスを送ると、走り込んできた桑野(4年)が中央へクロスを送る。決定機にこそ繋がらなかったが、サイドチェンジを織り交ぜた関学大の縦に攻撃は早い時間帯での先制点が生まれることを予想させた。
 ところが意外なことに先制したのは劣勢の大産大。25分にMF江口(2年)がエリア手前でパスを送ると、これがFW鍔田(4年)に通り、鍔田はすかさずシュートを決める。押し込まれていた大産大は、ここまでまだシュートも2本ぐらいだったはず。この思いがけないリードをいかに守っていくか、試合を見守る者は誰もがそう思っただろう。それは実に杞憂だった。

 
 
 
 
 先制点は意外にも大産大。エース・鍔田が決めた。

 手元の記録だけでも10本は放たれた関学大のシュート攻勢を大産大は非常に集中して良く守った。19分には関学大が阿部、梶川、三ノ宮と素早く繋いだボールに最後は中村(4年)がシュートするが、これを大産大GK神園がナイスセーブ。直後にも関学大・高松のアーリークロスを中村は頭で落としたところに阿部が合わせたが、これを大産大はDF佐道(4年)がブロックしてゴールを許さなかった。32分にも関学大・中村にDF満生(2年)、神園が抜かれて大ピンチを招くが、これを満生が決死の戻りでシュートをブロック。34分にも神園がナイスセーブを見せるなど、決定力の欠如にも助けられ、前半だけで幾多もの関学大のチャンスを大産大は潰していったのである。

 
 関学大・中村が突破した場面。最後は満生がブロック。

 
 激しい守備でチームを引っ張る主将・佐道
 彼の存在は大産大には欠かせない。
 
 後半に入ると、関学大の運動量が落ち、大産大のボールポゼッションが高まる。スピードあるドリブルでリズムを作る塩川(2年)、捌き役の江口が次第に関学大からボールを奪い出す。後半の早い時間に追加点は生まれた。54分に江口のFKが関学大DFの裏にこぼれたところをすかさず川西(3年)が決めて2点目。加えて、大産大はその直後に江口がエリア左付近から強烈なシュートを決めて一気にリードを3点に広げてしまう。沸き上がるスタンドの応援者。しかし、前半あれだけ押し込まれただけに、果たしてまだこの3点のリードを守れるのかという不安は過った。

 
 
 川西が大産大の2得点目を決める。

 
 その直後には江口のシュートが決まり一気に3-0に。

 関学大は、61分に阿部が強烈なFKをお見舞いするも、これもGK神園がセーブ。64分に平山(3年)、浦島(4年)を途中投入して前半の勢いを取り戻そうとする。しかし、流れは完全に大産大。66分に江口が強烈なシュートがバーに嫌われ、もう1点は時間の問題というように感じさせる。71分には関学大陣内ペナルティエリア内でクリアしたボールを太田(3年)が拾うと、そのままドリブルで突進。右足を振り抜いて4点目となるシュートを叩き込んだ。前節、無得点のチームとは思えない生き生きとした攻撃を見せた。

 
 太田がボールを運ぶ。大産大は後半覚醒した。

 
 
 大産大ダメ押しの4点目、太田がシュートをズドンと1発。

 終了間際に関学大の三ノ宮に1点を返されるが、シュートの雨あられを受けながら失点はその1失点のみ。大産大は今季初勝利を関学大から4得点奪うという内容でアップセットを演じた。

 大産大は、まず非常に守備が集中していた。主将の佐道をはじめ、非常に球際で粘り強くボールホルダーにプレッシャーをかけた。それでも突破を許した場面はあったが、ここでも神園が好セーブを重ねることで関学大のシュートを凌ぎ切る。得点が奪えず、焦って前がかりになる関学大の前線と守備陣の間のスペースで江口や太田、塩川らがボールを拾う機会が増え、鍔田に集中するマークの隙間を突けたことも大きかった。
 対する関学大は2勝3敗と負け越し。あれだけシュートを打っておきながら1得点という内容はお粗末すぎた。前半こそ序盤から左右に揺さぶりをかけて相手を圧倒するサッカーを見せたが、後半はシュートを放ち続けた阿部が孤軍奮闘するのみ。「上がれ!上がれ!」と加茂総監督もスタンドで声を荒げる光景も見られ、前半の連動性が思った以上に影を潜めた後半だった。

 5試合目にして今季初勝利を掴んだ大産大。次節の相手は関西大だ。もちろん関西屈指の陣容を備えるチーム。この試合もまずは守備で凌ぎ切らないことには自分たちのチャンスはなかなか掴めないだろう。しかし、この試合4得点の攻撃陣に明らかに光明は差している。

悩ましい「左」 -G大阪 VS 山形-

2011年05月01日 | 脚で語るガンバ大阪
 前節・広島戦(1-4)の大敗を経て、ホーム万博に帰還したG大阪。山形との対戦となった第8節は3-2と辛くも勝利。2-0から2-2に追いつかれる急転直下の失点劇からイ・グノの決勝点で劇的な勝利を手にした。

 

 10年ぶりに広島戦で敗戦となった前節の大敗から1週間、ACLのGL勝ち抜けにも重要な一戦となるメルボルン戦(アウェイ)をこのGW中に控えて、少しでも上昇気流に乗っておきたいG大阪。加地が先発に復帰し、宇佐美も先発へ。残念ながら前節、ルーキーながら初出場初得点を達成した川西が風邪のためにベンチ入りすらならない状況ではあったが、現状のベストな布陣はようやくここに来て揃うようになった。

 

 対する山形は、開幕戦の川崎戦(0-2)、前節のC大阪戦(0-0)と未だここまで無得点。今季から大久保という大型FWが加入し、これまでの長谷川と共に長身センターFWが2人揃うことになった。特筆すべき外国人選手も在籍していないが、昨季はホームでG大阪に逆転勝利を果たすなど、苦手意識はそれほど抱いていないはず。山形から2台の大型バスによるアウェイバスツアーで駆けつけたサポーターのためにも今季初勝利をという思いは強かったはずだ。

 

 

 8分、下平は相手のパスミスを直接シュート。わずかにゴール右に逸れたが、どこか早い段階で得点の匂いを感じる出だしではあった。しかし、船山、秋葉のセントラルMF2人が高い位置でボールを動かし、積極的にボールを縦へ進める山形のペースが目立つ。9分に山形・船山のシュートはGK藤ヶ谷のセーブで何とか逃れるが、その後も12分にも強烈なシュートを船山は狙ってくる。序盤から素早いプレスも怠らない山形の前にしばらくG大阪は防戦ペースだった。

 
 山形、大久保の長身を活かしたプレーは脅威。

 15分を過ぎると、スロースタートが最近では珍しくなくなったG大阪に次第にリズムが。22分、藤ヶ谷のゴールキックをDFを背負いながらイ・グノが二川に落とすと、アドリアーノへ渡ったボールは前のスペースを見つけて走り込むイ・グノのもとへ。華麗なステップで相手DF2人を手玉に取って中央へ折り返すと、ファーサイドでアドリアーノがミスキックになりながらもゴールへ。先制点は見事な連携とイ・グノの個人技から生まれた。

 
 
 
 イ・グノの突破から最後はアドリアーノが決めて1-0。

 ところが24分にアクシデントが。山形・FW大久保と競り合った下平がピッチへ倒れ込む。翌日判明したのは左大腿骨外顆微小骨折。しばらく動くこともできず、結局担架で運び出され、キム・スンヨンの投入という事態になった。

 
 起き上がれない下平。G大阪は左の重要なキーマンを欠くことに。

 ここで、キム・スンヨンの投入はひとまず功を奏す。37分に山口からのロングパスを二川が左サイドのキム・スンヨンに落とすと、キム・スンヨンは一気に前線のイ・グノへパス。イ・グノがDF2人を引き連れていたこともあり、後方でアドリアーノがフリーになっていたが、イ・グノは前を向きながらそのアドリアーノに見事にボールを落としてアドリアーノの2点目をお膳立て。右足でしっかりシュートを叩き込んだアドリアーノは開幕戦以来となるバック転パフォーマンスで喜びを表現した。

 

 2-0とリードしながら、後半へ折り返したG大阪だったが、後半は一転。既に前半の終盤からキム・スンヨンが入って足並みが揃っていない守備陣の綻びを山形に突かれ始めていた。ここで山形は長谷川、伊東、廣瀬と攻撃的な選手を立て続けに投入。明らかにこのウィークポイントを狙ってくる。そして、遂に69分に1点を返された。G大阪の左サイドからのスローインを山形・宮本に簡単に中央への折り返しを許してしまい、クリアミスも重なって最後はフリーでエリア内に走り込んだ佐藤のシュートを許してしまい2-1に。ここはキム・スンヨンとイ・グノの守備が軽かった。

 
 山形は船山が中盤で好プレー。

 
 最後まで効いていた秋葉。まさにダイナモ。

 74分には山形が宮本、船山のコンビネーションからサイドを突破。長谷川は山口に潰されながらも身を挺したポストプレーで走り込んだ宮本へボールを送ると、そのまま疾走した宮本はエリア内まで切れ込んでフィニッシュまで持ち込んだ。この場面でもハーフライン付近という高い位置までキム・スンヨンがアプローチに行ってしまい、カバーリングの山口が長谷川と交錯して潰れてしまったがために完全にG大阪の左サイドはがら空きになってしまった。

 
 
 
 試合を振り出しに戻した山形・宮本のこのシュート。

 残り15分というところで2-2と試合は同点に。全て失点は左サイドから食らっているだけに西野監督は悔やんだだろう。ただ、守備のリスクを考える前に「取られたら取り返せ」というスタンスがG大阪のスタンスとしては説明不要。そして、例のごとくG大阪は終盤に決勝点を奪い取る。最後に得点を生み出したのは、両チームを通しても最も経験値を積んだ2人の選手、加地と遠藤によるものだった。
 86分、山形陣内で相手選手からボールを奪った加地は、右サイドからアーリークロスをエリア内の遠藤へ。オフサイドギリギリでボールを胸トラップした遠藤は、相手DF3人囲まれながら、前を向く選択肢を捨て、フリーになっていたイ・グノへ落とす。おそらくイ・グノも遠藤がシュートを打つと思っていただろう。イ・グノは決して理想的なフォームでシュートを打てなかったものの、シュートは相手DFにも当たりながらコロコロとゴールへ吸い込まれていった。

 
 
 
 
 
 遠藤のこの落ち着きぶり。まさに神業・・・

 
 イ・グノは1得点2アシストで好調ぶりをアピール。

 勝ったものの、加地が復帰した代わりに今度は下平を失ったというような状況。この左サイドバックの枠は今後の重要なファクターになりそうだ。この試合では明らかに相手を深く追い込んでしまうキム・スンヨンの守備面での拙さは目立ってしまった。しかし、高い位置で攻撃参加した際のプレーにはイ・グノとの連携が活きるような場面もあり、得点には直結しやすい。彼ををこのまま使うか、それともルーキーの藤春をここに据えるか。前述のようにキム・スンヨンが得点に絡んだ事実もあり、ここは今後のG大阪の悩ましい問題になることは間違いない。個人的には藤春の起用も是非見たいところだが。次戦は重要なACL・メルボルン戦。果たして左には誰が起用されているのだろうか。

 
 次戦はキム・スンヨンが先発?

 
 加地は先発復帰で決勝点に繋がる仕事。
 J通算250試合出場を達成。