脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

新たな1ページの可能性

2010年10月31日 | 脚で語る高校サッカー
 現在、各都道府県では今年度の全国高校選手権を目指す予選が行われている。奈良県もその例外でなく大詰めを迎えているが、決勝を11月3日に控えた31日の準決勝で波乱が起きている。

 本命ともいえる奈良育英が準決勝で敗退したのだ。

 ベスト4に残ったのは奈良育英、香芝、五條、一条という顔ぶれ。昨年の県代表を一条に0-5と完敗して譲ることになった奈良育英は、ここまで郡山を10-1、そしてこの数年で県内屈指の強豪校と成長しつつある法隆寺国際を6-0と続けて退けてベスト4まで辿り着いていた。対する香芝は、大和広陵、大淀とかつての名門に連勝してその奈良育英に挑むことになったのだ。香芝は今季の県U-18リーグでは一条に続く2位(生駒、法隆寺国際も共に)と健闘している。しかし、この数年奈良県大会は奈良育英と一条の2強態勢。今年も決勝戦はこの2校がぶつかるのではと思っていた。

 ところがだ。奈良育英が0-0のままPK戦で敗れたというではないか。ここまで2試合で16得点を荒稼ぎしている奈良育英の攻撃陣を零封した香芝が決勝進出を果たしたのだ。さすがにこの予想外の展開を知ると、雨のために会場である橿原公苑まで二の足を踏んでしまったことを後悔してしまった。五條と一条の試合は一条が2-0と勝利して順当に決勝進出を果たしている。
 前述したように一条が8年前(平成14年度第80回大会)に初めて奈良県代表を掴んで以来、奈良育英と一条の2強状態が続いている。少しこれまでの奈良県代表の年次ごとの優勝校を整理しておくと下記の通り。

第51回 昭和47年度 女子大附属
第52回 昭和48年度 女子大附属
第53回 昭和49年度 畝傍
第54回 昭和50年度 奈良育英
第55回 昭和51年度 天理
第56回 昭和52年度 北大和(現:奈良北)
第57回 昭和53年度 大淀
第58回 昭和54年度 大淀
第59回 昭和55年度 大淀
第60回 昭和56年度 天理
第61回 昭和57年度 奈良育英
第62回 昭和58年度 大淀
第63回 昭和59年度 大淀
第64回 昭和60年度 大淀
第65回 昭和61年度 天理
第66回 昭和62年度 奈良育英
第67回 昭和63年度 上牧(現:西和清陵)
第68回 平成元年度 上牧(現:西和清陵)
第69回 平成2年度  奈良育英
第70回 平成3年度  大淀
第71回 平成4年度  奈良育英
第72回 平成5年度  広陵(現:大和広陵)
第73回 平成6年度  奈良育英
第74回 平成7年度  耳成(現:畝傍)
第75回 平成8年度  奈良育英
第76回 平成9年度  奈良育英
第77回 平成10年度 奈良育英
第78回 平成11年度 奈良育英
第79回 平成12年度 耳成(現:畝傍)
第80回 平成13年度 奈良育英
第81回 平成14年度 一条
第82回 平成15年度 奈良育英
第83回 平成16年度 奈良育英
第84回 平成17年度 一条
第85回 平成18年度 一条
第86回 平成19年度 奈良育英
第87回 平成20年度 一条
第88回 平成21年度 一条

 これを見ると、この10年間で耳成(現在は畝傍と統合)以外で奈良育英と一条の牙城を崩しているチームは皆無。一条はまさにこの10年でみるみる力をつけてきた。それ以外になると、平成5年度第72回の広陵(現:大和広陵)まで遡らなければならない。もし、香芝が優勝して全国出場を決めることになれば、これは十分に新たな1ページを奈良県高校サッカーに刻むと言えるだろう。

香芝と一条の2校は全国への切符を懸けて11月3日に橿原公苑陸上競技場で決勝戦を戦う。果たして今年、全国の切符を掴むのはどちらになるのだろうか。

ターニングポイント

2010年10月30日 | 脚で語る奈良クラブ
 KSLカップは予選リーグの2節に突入。奈良クラブは、先週と同じくびわこ成蹊スポーツ大グラウンドにて来季からDiv1への昇格を果たすアミティエSCと対戦。0-3と敗れて2連敗となり、予選リーグ敗退となってしまった。

 

 久々にベンチにまともな人員が揃わない厳しい状況。先週のBIWAKO S.C HIRA戦で負傷した畑中の欠場だけでなく、前線に欠かせない牧、大塚、そして主将の梶村も欠場という逆風。しかしながら、カップのタイトルを狙うのならばもう負けることはできない。予想に反して、前半は李と和阪、金城を軸にした中盤でよくボールが動き、前線の後山や嶋を起点にアミティエのペナルティエリアまで攻め込む場面が多々見られた。

 
 ボランチに入った李がボールを散らす。
 随所に軽い場面はあったが、彼の負傷交代は痛かった。

 あとわずかという場面でゴールが遠い奈良クラブ。先制できないと苦しくなるのは今に始まった話ではない。嶋のクロスから後山がヘッドで相手ゴールを肉薄するなど、果敢に攻め立てたが詰めが甘くスコアレスで前半を折り返す。加えて、40分には李がピッチ上で負傷。そのまま歩行も厳しい状況となり、矢部との交代を余儀なくされた。ここまで左右にボールを散らせていた李の交代は痛かったが、そこは矢部でカバーできるという点でまだ十分戦えると思っていた。

 
 激しいボールの奪い合い。
 前半は強さを見せていた球際の駆け引きも後半は…

 前半の好内容は後半に入って一転。守備陣の連携が崩壊すると、立ち上がり10分でアミティエに2点を献上。前半45分の攻勢ムードが一気に劣勢へ。むしろ奈良クラブの出方を窺っていたアミティエにまんまとやられたと印象で、奈良クラブの覇気はどんどん停滞していく。点を奪われてからセルフコントロールができない弱点がもろに現れてしまった。

 
 中盤では和阪が奮闘。
 プレスキックでもチームを牽引しようとするが…

 徐々にファウルでしか相手を止められなくなってくる苦しい展開に。このムードを一変できる策もベンチには無く、試合終了間際にも1点を献上して0-3の完敗となった。

 
 先週は欠場した嶋に期待はかかったが…
 そのスピードによる突破だけが頼みだった。

 このKSLカップはチームのターニングポイントになりそうだ。確かに前半と後半でチームのムードが大きく下落し、まるで別チーム。来季の昇格は決めているとはいえDiv2の相手に非常に情けない展開を強いられてしまった。もしかしたら、Div1に昇格した1年目の今季はリーグ4位に天皇杯本大会出場という戦績は十分及第点を与えられることで、むしろ出来すぎだったのかもしれないという思いも頭を過る。考えてみれば当然か。専任の監督は不在、チームの事務スタッフにも専任者はいない。そしてサッカーゴールの無い土のグラウンドが週2~3回の練習拠点という現状を考えれば、チーム結成2年半ひたすら全力疾走していた奈良クラブは2010年、大きな大きな壁にぶつかる時が来たのだ。「このままでは勝てない」というこれまで以上にリアルな印象がこのカップ戦2連敗の試合から伝わってきた。ハード面の大きな不足を「個」の力で乗り越えてきたチームは限界を迎えているのかもしれない。

 
 来季は同じ土俵で戦うアミティエ。
 そしてTOJITSU滋賀FCも加わる非常に厳しいカテゴリーに。

 来季はこのアミティエSCに今季のDiv2王者・TOJITSU滋賀FCを加え、過酷な戦いの場になる関西リーグDiv1。奈良クラブが今季コンスタントに勝点を稼げた2チームは降格する。この熾烈なカテゴリーで勝っていくために、そしてもう一歩戦いのレベルを上げるためにも、選手、スタッフ、ソシオ会員全員で今一度できることをしていかなければいけないのではないだろうか。急務なのは、サッカーゴールを常備し、コンスタントにチームが使用できる練習グラウンドの確保になるだろう。

 
 この試合では出場時間はわずかだった日置。
 彼のような若手選手も積極的に使っていって欲しいところ。

勝利できれば全て良し -京都VSG大阪-

2010年10月24日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1は第27節を迎え、西京極総合運動公園陸上競技場ではJ1残留を目指す17位・京都と逆転優勝を狙う3位・G大阪が対戦。前半こそ京都の奮闘でスコアレスで折り返す展開となったものの、後半は途中出場の佐々木と得点ランキング2位の平井が今季14得点目となるゴールで加点。京都の反撃を1点に抑えて逃げ切った。

 

 9月11日の神戸戦で勝利して以降、また厳しい戦いを強いられている京都。前節からボランチを染谷と安藤の2人が起用されており、その清水戦では終了間際に追いついて何とか1-1と追いついた。しかし、そこに立ちはだかるのが現在8月からの12試合でわずか2敗しかしていないG大阪。首位・名古屋とのポイント差は26試合終了時点で8ポイント。2位・鹿島と猛追する構図になっているが、この試合で星を落とすことはほぼ優勝前線からの完全な脱落を意味する。ルーカスこそ負傷で欠くものの2試合で3得点と復調気味のFW平井と今季完全にレギュラーに定着しつつある宇佐美の2人で試合を決めたいところ。

 
 西京極のアウェイスタンドは完全にG大阪サポーターで埋まる。
 ホームを圧倒するこの力を背に落とせない試合。

 試合は予想以上に京都が積極的な攻撃を仕掛ける。ルーズボールをしっかり拾う京都がディエゴ、ドゥトラ、渡邉、中山らを軸にサイドから攻め立てた。G大阪には元気がなく、遠藤や前線の平井、イ・グノがほとんどボールに触れない時間が続く。3分のドゥトラのボレーシュートはわずかに枠外に難を逃れたが、6分にはそのドゥトラとの連携からディエゴが放った強烈なシュートをGK藤ヶ谷が何とかセーブする。

 
 試合開始3分、京都FWドゥトラがこのシュート。
 中山の折り返しをボレーでG大阪ゴールに迫った。

 
 すっかり欠かせない存在になってきたDF高木。
 カバーリングとフィードで最後尾からチームに貢献。

 
 前半から攻勢の京都を安田理が体を張って阻む。
 ナイスクリアも含めて大忙しとなった前半だった。

 前半にG大阪はシュート2本と京都に抑え込まれた。加地と安田理が守備に追い込まれ、ほとんど前線に顔を出せない。宇佐美のドリブル突破からチャンスを見出したいG大阪だったが、まさかの完全沈黙で前半を折り返すことに。

 
 DF増嶋が加地とマッチアップ。
 CBながら攻撃参加。

 
 華麗なワンタッチプレーで周囲にボールを捌く。
 柳沢は気迫に満ちたプレーで京都を引っ張る。

 
 橋本はボールキープの際にもなかなか前を向けない。
 インパクトを残せず、なんと前半で交代することに。

 
 攻め込みながら1点が遠い京都。
 先制点を取れないことは大きく後半の行方に響いた。

 完全に抑え込まれているG大阪、西野監督は後半に武井、橋本に代えて佐々木、明神の2人を投入。すると、早速46分に安田理のドリブルから放り込んだクロスに宇佐美が頭で合わせて京都ゴールを強襲、50分にはイ・グノのパスを受けた遠藤が惜しいミドルでゴールを狙うなど徐々にリズムが生まれてくる。後半のG大阪の著しい復調には後半から入った明神の存在が大きかった。持ち前の運動量でフリーになってボールを受けることが多く、また彼自身もフリーでボールを左右前方に散らしていく。守備時には前半京都に譲り渡す場面が多かったセカンドボールを彼が拾うことでマイボールに繋げることができた。

 
 ディエゴを後半から出番となった明神がマーク。
 後半の流れを一転させる要因に。

 
 G大阪のスーパーサブ・佐々木。
 後半から登場するなり、ドリブルでリズムを作る。

 
 こうなれば、前半存在感の無かったイ・グノも元気に。
 時折ドリブルで速攻の起点になった。

 前半と見違えて自分たちのチャンスを量産するG大阪は、66分に相手ボールをカットしたイ・グノからボールを受けた遠藤がセンターサークル付近から一気にエリア手前の佐々木にスルーパス。これに直接走り込んだ佐々木が直接シュートを決めて待望の先制点を奪う。完璧な遠藤のパスがピッチを縦断。前半には全く見られなかった光景だった。

 
 66分、この遠藤の狙い澄ましたパスから…

 
 
 
 
 佐々木が走り込んで先制点となるシュートを決める。
 看板を飛び越えてサポーターの前で歓喜。

 この先制点で勢いづいたG大阪は、69分にも見事な連携で追加点をゲット。相手のロングパスをカットした明神から遠藤、イ・グノへ繋ぐと、エリア右から中央の宇佐美へ折り返す。これを宇佐美がコントロールしてシュートを放つと、京都GK守田が一度は弾くが、このこぼれ球に平井が詰めた。今季14得点目と得点王争いに大きな1点となった平井だったが、何よりもエリア内の狭いスペースで見事にワンタッチでシュートへと持ち込んだ宇佐美の能力が光ったシーンだった。

 
 69分、ほぼ宇佐美の得点という場面。
 平井が詰めて貴重な追加点。

 
 本当に18歳とは思えない宇佐美のプレー。
 ドリブルの姿勢とシュートへの振り抜きが速い。

 G大阪が先制した後、京都は西野、中村太、中村充と積極的に選手を入れ替え、79分に安藤が1点を返して一矢を報いる。その後もあと1点を追いかけるが、リードを得たG大阪は崩れない。

 
 京都も安藤(左)が1点を返して反撃態勢といきたかったが…

 
 
 81分には佐々木のスルーパスを受けたフリーの平井が…
 GKとの1対1を決められない…

 結局、2-1で逃げ切ったG大阪が内容が悪いながらも、後半だけでその強さを見せつけた試合となった。昨日神戸に勝った名古屋との差は依然8ポイント。2位・鹿島とは同ポイントで得失点差の激しい争いが続く。しかしながら首位の名古屋も調子を落とす気配は無さそう。既に鹿島、名古屋との直接対決が終わったG大阪としては逆転優勝には厳しいながらも現在の調子を維持するほかない。明神の帰還、平井の復調、イ・グノの本領発揮は大きなプラス材料。山形戦のような取りこぼしは避けたいところだが、調子が上向きになったところでポロっと星を落としてしまうのがG大阪の悪癖。果たしてあと7試合を経た今季の終わりにはどうなっているのだろうか。

苦境からのカップ戦スタート

2010年10月23日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグ勢16チームが4グループに分かれて決勝トーナメント進出、そして優勝を争うKSLカップが開幕。グループDにてBIWAKO S.C HIRA(Div1)、ルネス学園甲賀(Div1)、アミティエSC(Div2)と戦う奈良クラブは初戦をBIWAKO S.C HIRAと対戦。リーグ最終節から3週間ぶりの公式戦となったが、良いところなく0-2で完敗。リーグ戦前期第2節三洋電機洲本戦(@ボスコヴィラ)以来の無得点試合でいきなり厳しいスタートを強いられることとなった。

 

 このKSLカップでは、リーグ戦で2勝ずつを挙げており、対戦成績では負け知らずの2チームと同グループに属した。そのことは少なくとも予選リーグを突破する上では幸運な要素だったはずだった。しかし、この試合を見る限りではそれは早計だった。前半の13分にあっさりDFラインを突破されると、先制点を献上。その6分後にはエリア内で対応したDFが振り切られて追加点を与えてしまった。

 
 負傷交代するまでサイドを切り裂く突破を見せていた畑中。
 彼を欠いての残り時間はやはり厳しいものがあった。

 いつもなら「撃ち合い上等」という攻撃力の奮起に頼れば、まだ試合の計算はつくところだが、2点を先行したHIRAはしっかり守りに入った。すると、これを崩し切れない。それどころか30分には攻撃の核である畑中が負傷でピッチ外へ。結局そのまま交代となってしまうアクシデントも重なり、最後の最後までゴールが遠い試合となってしまった。

 
 安定感が定評の牧も前線で孤立。
 全体的に最後の局面でミスが多く決定機が生み出せなかった。

 結局0-2と1点も追い上げられないまま試合終了。4チームの上位2チームが決勝トーナメント進出という中で、来季のDiv2降格が決まっている相手に敗れてしまった。同会場で行われた第2試合ではアミティエSCがルネス学園甲賀と対戦してなんと8-1の圧勝。大卒ルーキーの選手を中心に充実した戦力を誇る新興勢力が昇格を決めた勢いそのままに勝利を収めている。次節はここと対戦しなければいけないのは最悪のタイミングだ。ここで勝利しなければHIRAとルネスの試合結果によっては予選リーグ敗退が濃厚になってしまう。最悪でも引き分け、いや、絶対に勝利しか眼中に置けない状況だ。そのためにもしっかりと守備の修正が必要。まずは「守る」ことから入っていった方が良いのかもしれない。相手を侮れるほど強くはない。

 しかし、関西リーグ昇格以降順調だった奈良クラブの戦いぶりも2年目のここにきて厳しさが垣間見える。もちろん練習環境等のハード面で問題を列挙すればキリが無いが、他のチームの追い上げが著しい。来季同じDiv1の昇格するTOJITSU滋賀、そしてこのアミティエと真剣勝負をした場合、どれだけ戦えるのだろうか。おそらくそれほど差はないどころか、今日のような試合内容なら勝たせてもらえないはず。それが次節の試合ではっきりするだろう。それを考えれば今日の敗戦スタートで何ともスリリングな次の試合までの1週間になってしまった。

 
 チーム得点王の檜山の爆発に期待。
 とにかく「ゴール」にこだわって欲しい。

飛び級は無用、これが相模原 -トヨタ蹴球団VS相模原-

2010年10月19日 | 脚で語る地域リーグ
 おのだサッカー交流公園サッカー場の第2試合は、注目を集めるS.C.相模原(神奈川県1部)がトヨタ蹴球団(東海2部)と対戦。J準加盟を承認された神奈川県リーグのチームながらその実力をいかんなく発揮。3-0でトヨタを圧倒してベスト4に進出を果たした。

 

 序盤こそトヨタが若さを生かして攻勢に出たが、シュートを2本ほど放つと徐々に相模原のペースに。経験を積んだ元Jリーガーも多数揃える相模原はパスワークで揺さぶりをかけてトヨタのスタミナを奪っていった。

 
 中盤で時に鋭いドリブルを見せるMF吉岡。
 22分には見事なスルーパスで齋藤の先制点をお膳立て。

 
 トヨタも若干18歳のMF田村直を起点に積極的に攻めようとする。

 
 トヨタの司令塔・鈴木と相模原のDF金澤が競り合う。
 鈴木は惜しいFKが1本あったがバーに嫌われた。

 トヨタを凌駕する相模原のペース。22分には吉岡のスルーパスにFW齋藤が先制ゴール。3試合連続となるエースの得点で勢いを増した相模原は後半の開始早々にも森谷のパスに抜け出した齋藤がシュートを決める。1対1は確実に決める経験豊富な点取り屋の大会通算4得点目でほぼ勝負は決した。

 
 この大会初の先発出場となったFW森谷。
 このプレーで鮮やかに齋藤の得点場面を作った。

 
 
 
 「俺は決めるだけ」と言わんばかりの得点力。
 マーティンこと齋藤将基、このカテゴリーでは規格外。

 終了間際のアディショナルタイムには坂井が見事なシュートを決めてダメ押しの3点目。相模原が攻守ともに安定した快勝劇でベスト4を決めることとなった。

 
 坂井はかつて横浜FCでプレー。
 終了間際に名刺代わりの鮮やかな1発。

 
 勝利へのクローザーは俺だ。
 秋葉監督自身が64分に登場。坂井の得点も呼び込んだ。

 
 
 S.C.相模原恐るべし。
 ベスト4進出でその力を十分アピール。

 平日にも関わらず、この試合を応援して見守ったサポーターの数は相模原が最も多かった。サッカー場のフェンスを彼らの応援横断幕が埋め尽くした。それはもちろん彼らがJリーグ参入することへの期待の現れだろう。それに呼応するように、ここまで3試合で10得点0失点とその力を余すところなく発揮している。既に優遇措置で地域決勝への切符は取得済みだったが、改めて実力でこの全社枠扱いをもぎ取れる位置まで勝ち進んできた。準決勝の相手は福島ユナイテッドFC。この3日間で対峙してきたどのチームより手強い。どんな戦いぶりを見せるのだろうか。もはや優勝を狙っているであろうことは言うまでもなさそうだ。

 また、この準々決勝の結果、カマタマーレ讃岐、S.C.相模原、福島ユナイテッドFC、AC長野パルセイロというベスト4のうち3チームが地域決勝進出の権利を持っているために、その権利を持っていなかった福島ユナイテッドFCの地域決勝進出が決定。合わせて追加で関東1部リーグで2位のさいたまSCに地域決勝進出の枠が与えられることになる。しかし、この大会の優勝を狙って引き続きベスト4の全チームにはファイトしてもらいたい。
 昨年に続く現地観戦3日間で非常に刺激的な7試合を観ることができた。そのレベルはどのチームもやはりこの大会に出場するだけのことはある。仮に奈良クラブが出場していたとして…どこまで勝ち進めただろうか。来年の全社は岐阜開催。必ずそこで戦っていることを夢想しながら、残りの2日間の結果をこちらで引き続き受け取りたい。

前橋、讃岐の壁崩せず -前橋VS讃岐-

2010年10月19日 | 脚で語る地域リーグ
 第46回全国社会人サッカー選手権大会は3日目の準々決勝に突入。会場の一つであるおのだサッカー交流公園サッカー場では、第1試合でtonan前橋とカマタマーレ讃岐の試合が行われ、2-0でカマタマーレ讃岐が勝利。19日に行われる準決勝への進出を決めた。

 

 前橋は1回戦、2回戦共に延長戦を戦い抜き、前日のデッツォーラ島根戦は辛くもPK戦を制しての勝利。2日で200分を戦い抜いた疲労が彼らを襲う。しかし、3日連続で試合の臨んでいるのは讃岐も同じ。しっかり守りから固める讃岐は前橋の攻撃を寄せつけず、焦ることなく自分たちのチャンスを狙い続けた。

 
 前橋はMFマルキーニョが先発出場。
 彼からのボール配給で前線は相手の裏を狙いたかったが…

 
 マルキーニョが負傷のアクシデント。
 代わりに22分に渋谷が投入される。

 
 
 身長差は24cmというマッチアップ。
 讃岐DF波夛野の前に前橋FW小川が仕事できず。

 
 讃岐は相原が左サイドバックで先発出場。
 堅実なプレーで勝利に貢献。

 両チームなかなか決定機を迎えることができずにスコアレスで前半を折り返すことになった。ほとんどシュートの打てない前橋。前線では小川がひたすら讃岐DF陣にブロックされて突破のチャンスを与えられない。疲れが散見される前橋の攻撃に讃岐の守備はほぼパーフェクトの出来を見せる。

 
 DF山本が攻撃参加。
 前橋は前半でシュート1本、後半は1本もシュートを打てなかった…

 
 FW小川の突破を讃岐DF神崎が阻む。
 屈強な讃岐の守備の前に前橋は苦しい時間帯が続いた。

 流れは次第に讃岐へ。51分綱田がフワリとクロスを入れると前線で張っていた岡本が頭で合わせて先制点を挙げる。良い時間帯に先制点を得た讃岐がほぼ打開策の見出せない前橋をあとはどう抑え込むかという展開になりつつあった。

 
 
 綱田の折り返しに岡本が頭で決めて讃岐が先制。

 
 前橋は最終ラインから主将・氏家がチームを叱咤し続ける。
 ロングフィードをとにかく入れて前線にボールを送ろうとした。

 
 中盤では山田が讃岐のカウンターに手を焼いた。

 75分には前橋の渋谷が退場処分になり、シュートの打てない前橋にとっては弱り目に祟り目。終了間際のアディショナルタイムには吉澤が3試合連続となるゴールを鮮やかなミドルで決めて試合を決めた。前橋は万事休す、ベスト4の道のりは途絶えることとなった。

 
 75分、渋谷が2枚目の警告で退場処分。
 ドリブラーを欠くことに。

 
 吉澤は3試合連続ゴールと好調。
 守備にも汗をかいてチームを引っ張った。

 前橋の疲労が著しく垣間見えた試合。讃岐にとってはスコア以上の完勝となった。この大会まだ失点を許していない守備陣の屈強さは目を光る。果たしてこの堅守をベースにこの大会を制することができるだろうか。四国リーグの雄が本当の意味で全国レベルかということを試されるのはこれからだ。
 

讃岐、スコア以上の完勝 -讃岐VSアイン-

2010年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 続いて乃木浜A会場では四国リーグを制したカマタマーレ讃岐が関西リーグ2位のアイン食品と対戦。既に地域決勝進出の権利を有する讃岐だが、しっかりと相手を完封して1-0の完勝。追加点こそ遠かったが吉澤が挙げた1点を守り切って準々決勝進出を果たした。

 

 前日の1回戦では九州リーグのヴォルカ鹿児島を5-0と一蹴した讃岐。先日の四国リーグで優勝を果たした讃岐は地域決勝へのデモンストレーションも兼ねてこの大会を戦っているだろう。四国リーグだけではなかなか全国レベル相応のチームと対戦ができない。権利に関係なくこの大会ではベストを尽くしてくるというような試合だった。
 対してアインは、今季リーグで2位という戦績を収めたがやはり全国レベルは厳しいかと予想される中で讃岐との戦いは改めて自分たちの立ち位置を再確認できたのではないだろうか。試合前には社員による30名ほどの応援団がスタンドに駆けつけ、讃岐サポーターに負けじと個性的なセルフスタメン紹介やチャントを歌ってスタンドを盛り上げていた。

 
 23分に見事なミドルシュートでネットを揺らした吉澤。
 2試合連続得点でサポーターを沸かした。

 
 讃岐において効いていた飯塚の存在。
 町田から期限付きで加入している。

 讃岐が試合のペースを握るが、アインの攻撃を封じる上で効いていたのはDF波夛野の存在。前半からアインのハイボールを187cmの長身を生かしてことごとく阻んでいく。180cm以上の選手が最終ラインにいない讃岐にとって三菱水島から今季加入したハイタワーはかなりプラスになっていることが実感できた。

 
 まずは守りが固い讃岐の戦いぶり。
 DF波夛野がエアバトルを制圧。

 
 かつての関西リーグMVP神崎も健在。
 簡単に相手には負けない。

 MF鈴木を中心としたカウンターを軸に讃岐に迫りたいアインだったが、なかなかシュートチャンスを与えてもらえない。なんと前半はノーチャンス、シュート0本に終わってしまう。

 
 かつては松本山雅でもプレーしたアインMF鈴木。
 讃岐の堅守をこじ開けようと奮闘するが…

 
 ドリブルで攻め込むMF吉居。
 今季のリーグでは全試合出場、08年にはベストイレブンも。

 23分に吉澤がエリア手前でボールを受けると狙い澄ましたミドルシュート。これが右隅に決まって讃岐がリードを奪った。しかしながらその後は追加点が欲しいところだったにも関わらず拙攻が響いたか無得点。アインがほとんどシュートに持ち込めなかったこともあって苦しい展開ではなく、「省エネ」とも捉えられるかもしれない。もう少しレベルの高いチームと戦うとどうなるか注目。その意味では準々決勝で前橋と当たるのは適当かもしれない。

 
 前半のうちから途中出場で加わった朝比奈。
 何度か決定機があったが2試合連続得点とはいかず。

 
 機を見た攻撃参加をするDF下松は代えが効かない。
 余計な警告をもらったこともあり途中交代。

 
 讃岐は中島が中盤の底をケア。
 横河武蔵野から今季加入した守備的MF。

 アインが攻めあぐねる姿を見ていると、昨日福島Uの前に惨敗を喫した三洋洲本の姿も浮かぶ。なかなか全国大会で結果の残せない関西勢。この試合の裏では山口市会場でラランジャ京都がJFL昇格候補のパルセイロ長野に延長戦まで持ち込む健闘ぶりを見せたが惜敗。2回戦を終えて残っているのはこの日SC鳥取ドリームスに快勝した班阪南大クラブのみとなってしまった。準々決勝はその三洋洲本が0-6で敗れた福島U。かなり苦しい戦いを強いられそうだ。まだこの舞台で結果を出すことは奈良クラブにも厳しい壁だということだ。

 この試合を制した讃岐を含めて準々決勝に進出の8チームが決定。準々決勝の組み合わせは下記のとおりとなる。
 tonan前橋 - カマタマーレ讃岐
 トヨタ蹴球団 - S.C.相模原
 福島ユナイテッドFC - 阪南大クラブ
 新日鐵大分サッカー部 - AC長野パルセイロ

 地域決勝出場権を既に持っているのは讃岐と相模原、そして長野の3チーム。つまりこの3チームがベスト4に勝ち残れば、必然的に決勝戦は地域決勝出場権を持つチーム同士の対戦となり、全社枠の1つが関東リーグ2位のさいたまSCに地域決勝出場権として回されるということになりそうだ。あと3日。果たしてどんな展開になっていくのだろうか。 

100分間待ったなし -前橋VS松江-

2010年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 第46回全国社会人サッカー選手権大会は2日目を迎えて2回戦へ突入。下関市乃木浜総合公園多目的グラウンドA会場では11時キックオフにてtonan前橋(関東1部)とヴォラドール松江(中国)の試合が行われた。

 

 前半から優勢に試合を進める前橋が14分にCKから主将・氏家のヘッドで先制すると、28分には松江DF吉岡がFKから頭で合わせて同点弾を呼び込む展開。1-1になってからの試合はまさに待ったなしのハイトランジションゲーム。結局80分間では決着がつかず延長戦までもつれ込み、1点ずつを取り合った後PK戦へ突入した試合は5-4で前橋が制することとなった。

 
 14分に先制点、97分にはPKで追加点。
 氏家の存在は名実共にチームの核だった。

 
 前橋に氏家あれば松江にはこの男あり。
 MF樋口は松江の攻撃を牽引した。

 前橋が攻め込んだかと思えば次の場面では松江が前橋陣内へ攻め込む。そんな場面の連続だった一瞬も目を離せない非常に面白い展開。息をもつかせぬ攻防戦は前橋の執念が実った試合だった。そのチームの執念をピッチで体現していたのが、かつてのU-20日本代表選手としてワールドユース準優勝を果たした前橋の主将・氏家だっただろう。
 昨季、この大会で決勝を戦った松本山雅と金沢が地域決勝進出を掴んだ陰で、前橋は3位という好成績を残している。Jリーグ入りを公言していることもあり、今季関東リーグで優勝できなかった前橋にとってはJFLに挑戦する権利を是非ともこの大会で獲得したいのだろう。その証拠に2得点もさることながら、ボールキープの際に味方に対して「フォローに来いよ!」と激しく叱咤する彼の姿はチームの今大会にかける意気込みを十分表現してくれていた。

 
 今季FC琉球から加入したDF林田。
 サイドからチームの攻撃をサポート。

 
 
 
 FKから松江が同点に追いついた28分の場面。
 樋口から吉岡というホットラインが光った。

 氏家に導かれる前橋の推進力もそうだが、もうひとつ試合を面白くしてくれたのは松江の善戦を最後尾で盛り立てたGK伊藤の存在。前半からファインセーブを連発する彼は、前橋に100分間で19本打たれたシュートの枠内分を抜群の反応でことごとく弾き出す。彼の好守で前橋は3点ないし4点は損をしたはずだ。

 
 樋口と共に攻守の切り替え役だったMF松本。
 69分には強烈なミドルでゴールバー強襲。

 
 前橋のドリブラー渋谷が疾走。
 60分にはシュートがポスト直撃の不運も。

 
 氏家と共に前橋の中盤を支えるMF山田。
 果敢にシュートも狙っていった。

 後半は双方ともにスコアレス、1-1で迎えた延長戦だったが、前日も100分の延長戦を戦った前橋にとっては運動量の減退が明らかだった。しかし松江もDF錦織を退場処分で欠く苦しい展開。本当によくPK戦まで粘ったといえる。

 
 松江はサイドバックの錦織が76分に退場処分。
 カウンター時に効いていただけにこれは痛かった。

 
 前日のFC鹿児島戦で決勝点を決めたFW関根。
 この試合では決勝点ならずもPK戦の1人目を務めた。

 
 
 延長前半、前橋のこのチャンスをGK伊藤がセーブ。
 会場から歓声が沸き返った。

 
 接戦を盛り上げた松江GK伊藤。
 安定したセービング力で堂々としたプレー。

 
 PK戦を制した前橋がなんとか準々決勝進出を決める。

 
 敗れた松江、立てないGK伊藤の姿が印象的。
 しかし、この経験を活かして更に飛躍しそう。

 
 スタンドには前日1回戦を戦ったサテライトの選手も。
 準々決勝はいよいよ強敵・讃岐が相手だ。

 前日の島根の奮闘、そしてこの日の松江の戦いぶり。島根県の2チームは初見ながら非常に心に残る印象深いチームとなった。濃厚な100分間待ったなしの戦い。少しこの2チームがここでマッチアップしたのがもったいなかったとも思ってしまった。

本命の前に洲本散る -福島UVS三洋洲本-

2010年10月17日 | 脚で語る地域リーグ
 矢崎VS盛岡が延長後半を迎える頃に、隣のコートではその盛岡に東北リーグで苦汁を舐めさせられた福島ユナイテッドFC(以下=福島U)と関西リーグ王者・三洋電機洲本の試合がスタート。試合は福島Uが終始試合を圧倒。6-0の大差をつけて2回戦進出を決めた。

 

 福島Uは、この大会に臨んでいるJリーグ参入を目指した地域リーグカテゴリーのクラブの中で地域決勝に進む権利を持っていないチームの一つ。同じカテゴリーではヴォルカ鹿児島がカマタマーレ讃岐に不甲斐なく破れ(0-5)、上を目指すクラブの「敗者復活戦」「地域決勝進出権利奪還」ともいえるこの大会の醍醐味が薄れるのではという心配をよそに1回戦から徹底的に本気を垣間見せた。何としてでもこの全社で2位以内を確保し、地域決勝に出場するという思いが感じられた。

 
 前半から三洋洲本を圧倒する福島U。
 MFキム・コンチョンを中心にボールを回しまくる。

 
 昨季の関西リーグDiv1でMVPに輝いた成瀬。
 シュートすら打てない厳しい戦いを強いられる。

 前半のうちにキム・コンチョンのPKによる先制点と時崎の2得点で3-0とリードする福島U。リードに関わらず常にボールを回し続けて三洋洲本を疲弊に追い込んだ。

 
 J2岡山から期限付き移籍中のMF小野。
 安定感抜群で福島Uの中盤の底をケア。

 
 成瀬と共に司令塔を務める三洋洲本MF村上。
 30分には相手のGKと1対1のチャンスを決められず。

 
 こちらも岡山から期限付き加入の金光。
 手塚監督のコネクションが生きている。

 後半に入って、運動量の落ちてきた三洋洲本相手にまだ攻撃の手を緩めない福島U。46分には交代直後のDF森戸が豪快に右足でシュートを決めると、58分にはMF伊藤が金光の折り返しに合わせて5点目。69分にはMF久野がダメ押しの6点目を加えて圧倒的大差で試合を決めた。

 
 関西リーグ屈指のクラッキ・沈も大苦戦。
 思うように攻撃を作ることができない。

 
 前半2得点のFW時崎塁。
 彼の突破に三洋洲本はついていけず。

 
 左MFの稲垣の攻撃参加で好機を狙う三洋洲本。
 しかしほとんど相手エリアで仕事ができず。

 
 決定的な場面を完全にシャットアウトしたGK清野。
 抜群の安定感が印象に残った。

 まさか関西王者の三洋洲本がここまでやられるとは。ショックな点差とその試合内容だった。仮に「負け抜け」を三洋洲本が考えたとしても、ここまでの試合をしてしまうだろうか。ましてや昨季の地域決勝1次ラウンドで金沢とあれだけの戦いぶりを披露したチームだったのだが。今季のリーグ戦で後半戦に失速著しかった三洋洲本の不調ぶりがこの全国の舞台でも露呈されてしまった形だ。一体どうしたのだろうか。

 
 福島Uの守備の前にボールをなかなか持ち込めない。
 攻守にありとあらゆる差が見えた試合。

 
 DFながら後半登場してすぐに1得点。
 森戸は負傷の清水の穴を十分すぎるほどカバー。

 
 来週からKSLカップが始まる前に厳しい現実…
 地域決勝までの再調整は図れるか。

 「地決進出権利なし」の福島Uが十分すぎる実力を披露して2回戦のヴェルフェたかはら那須との試合に駒を進めた。果たしてこの実力は本物なのか。疲労と緊迫感漂う2回戦以降に注目だ。「権利あり」の強豪クラブがひしめき合う中で、「本命は俺たちだ」と言わんばかりの勢いを感じさせてくれた福島Uだった。

東北王者初戦で沈む -矢崎VS盛岡-

2010年10月17日 | 脚で語る地域リーグ
 相模原と島根の試合を終えた後、その会場では12時キックオフで、東北リーグ王者グルージャ盛岡と東海リーグの強豪チーム・矢崎バレンテFCの試合が行われた。

 

 福島ユナイテッドとの熾烈な東北リーグ王者争いを最終節で決着させ、4年連続東北王者として今季の地域決勝進出が決まっている盛岡。この大会で結果が出なくともJFL昇格を懸けたステージに進めることもあってか、「敗者復活戦」ともいえるこの大会にどれほどのモチベーションで臨んでいるのかは正直微妙なところ。そこに立ちはだかったのが矢崎。今季は東海1部リーグで不調のシーズンを過ごすものの、きっちりこの全社には出場を決めてきた。堂々の撃ち合いに発展した試合は2-2からのPK戦に突入。その結果矢崎がPK戦を5-4で制して1回戦突破を果たした。

 
 今季J2の徳島から加入した菅原康。
 東北リーグでは10得点。

 
 矢崎のエース井口は厳しいマークに遭う。
 得点こそ無かったが100分フル出場。

 前半から探り合いの展開だったが、徐々に盛岡がサイドからの攻撃を起点にチャンスを作り出す。防戦一方の展開になっていく矢崎だったが、DF前川、中村のCBコンビを中心に体を張った守備で盛岡のシュートコースを阻み前半を0-0で折り返した。前半を終えた段階で矢崎のシュート数2本に対して盛岡は既に10本。いかに盛岡のペースだったかを現わしている。

 
 前半から再三の決定機を作ったMF白澤。
 得意の突破で盛岡の2点目のきっかけに。

 
 矢崎を牽引するのは主将の渡邊。
 防戦の展開をよく建て直した。

 後半に入ると、すぐに試合は動く。今季の東北リーグでは得点ランク3位の25得点を叩きだしているMF上山がDF市村の浮き球パスにヘッドで合わせてゴールネットを揺らす。しかし、矢崎もその直後にDF前川がミドルシュートを決めて同点に追いついた。

 
 矢崎MF鈴木がドリブルで駆け上がる。

 
 盛岡は主将の松田がゲームコントロール。

 
 盛岡の守備の要・徳島から加入の大原。
 井口にはほとんど仕事をさせず。

 59分に盛岡はMF白澤の左サイドの突破からゴール前でチャンスを作り、相手のクリアに松田がループ気味にシュートを決めて再度矢崎を突き放す。ところがこれで終わらぬこの試合、72分に途中出場の矢崎MF萩田が盛岡の最終ラインの裏に飛び出すと、河井のパスをそのままワンタッチでゴールへ。またもや矢崎が同点に追いつく粘りを見せて試合は延長戦に突入した。

 
 途中出場の盛岡FW佐藤が果敢にゴールへ。
 しかしPK戦では悪夢を経験することに…

 
 先制点を決めた盛岡MF上山。
 終始その動きは目立っていた。

 延長前半を最後に会場を移動したため、この試合の行方は最後まで見届けられず。しかしながら、明日はここで勝利した矢崎が相模原を迎え撃つ。地域決勝の常連である矢崎がどれだけ相模原にこのカテゴリーの厳しさを見せることができるだろうか。
 また、初戦で沈んだ盛岡も本番は11月の地域決勝。ここでの敗退はそれほど影響は出ないだろう。果たして鶴は今季飛び立つことができるだろうか。