脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

直径33cmのボールを追いかけて

2010年01月31日 | 脚で語る奈良クラブ
 国内サッカーの様々なカテゴリーではシーズンオフの現在、電動車椅子サッカーではシーズン真っ盛り。この日は、奈良県心身障害者福祉センターにて奈良クラブビクトリーロードと大阪のファインフレンズとの試合が行われた。

 

 奈良クラブビクトリーロードの活動開始時期は1994年。当時関西では2番目のチームとして起ち上がった。その後2002年、2003年と日本選手権を連覇。2007年にはチームを率いる重松監督と3名の選手が日本代表として第1回のFIPFAワールドカップで世界第4位の戦績を収めている。
 現在、電動車椅子サッカー関西ブロック協会に加盟するのは10チーム。2部制でジョージ・シャドー杯(JS杯)というリーグ戦を戦っている。1部のJS1は、現在4チームでの戦いが繰り広げられており、現在2試合を終えて奈良クラブビクトリーロードは2連敗と苦戦中。何とか今季初勝利を挙げるべくホームでもある場所でファインフレンズを迎えることとなった。

 
 試合前にはきちんと両チーム整列。緊張感が漂う。
 もちろん、しっかりレフェリーも。

 試合は20分ハーフ。1チームの出場人数は4名(以下)。このリーグでは電動車椅子の速度が6kmと定められている。この競技で目を引くのは2-on-1(2対1)ルールだ。これは、ボールを保持している攻撃側の選手1人に対して、相手チームの選手が2人以上、半径3メートル以内のエリアに入ると反則となるというもの。つまり基本的には攻守で1対1の場面が目立つことになり、このルールがまた電動車椅子サッカーの独特の面白さを作り出しているのだ。
 試合が始まると、電動車椅子同士が激しくぶつかる衝撃音が体育館中にこだまする。奈良クラブビクトリーロードはこの日、日本代表経験もある田中、林が欠場。監督の息子でもある司令塔・重松を中心に試合の主導権を探る。

 
 試合は両チームの司令塔がスキルフルな攻防で火花を散らす。
 奈良の重松の前には常に相手の7番が執拗なマークを見せる。

 驚くべきは選手たちのそのボールコントロールと駆け引きの妙である。電動車椅子サッカーでは従来のサッカーと違って走力の差がなく、カウンターはほとんど通用しない。しかし、スペースを使った巧みなボールコントロールと選手たちのポジショニングで試合は動いていく。前述した2-on-1ルールも考慮しなければならない。白熱のゲームは、ファインフレンズの攻勢で0-0のまま前半を終えた。

 
 
 CKは貴重なチャンス。
 巧みな車椅子のコントロールからボールを配球。
 相手ゴール前の守りは予想以上に固い。

 後半に入って重松、小阪らが起点となり、前かがりになる時間が少し見られるようになった奈良クラブビクトリーロードだったが、ファインフレンズはダイレクトプレーを機能させ、その隙を突く。後半10分に右サイドからシュートを決めると、後半17分には相手の司令塔・7番のクロスを両チームで唯一の女性選手がダイレクトシュート。これが追加点となってファインフレンズが2-0と勝利を収めた。特にこの2点目のシュートは圧巻。抜群のコンビネーションとコントロールだった。

 
 試合が終わると一転和やかな雰囲気に。
 敵味方関係なくこの後に練習を兼ねたゲームを行う。

 
 選手たちの感想は「しょっぱい試合でした」。
 これで入替戦へと回る奈良は試合後しっかりミーティング。
 なんとかJS2降格を避けたい。

 残念ながら今季のJS1では3連敗となってしまった奈良クラブビクトリーロード。かつての名門が不振に喘いでいる様子だ。しかし、この試合では連携面や基本テクニックで明らかにファインフレンズの方が上回っていた印象。奈良はやはりベストメンバーでなかったのが痛かったのかもしれない。

 試合後に監督に勧められて、電動車椅子サッカーを体験させてもらう。コントロールレバーが実に敏感で容易に車椅子のコントロールができない。ボールに触れるのも一苦労だ。世界レベルでは、車輪とフットガードの間にボールを挟み込んで自在にドリブルをする選手もいるという。同じサッカーでも全くの別世界。納得させられる競技としての面白さがそこにはあった。

 ボールは直径33cm。かなり大きい。しかしながらそのボールを追いかけてゴールを目指すという点ではサッカーはサッカー。指導者や選手たちの熱意に圧倒され、底冷えのする体育館での足の冷えを忘れてしまうひと時だった。
 

堅実にスタート

2010年01月24日 | 脚で語る奈良クラブ
 奈良クラブが2010年シーズンをスタートさせた。この日は大和高原ボスコヴィラで始動初日のトレーニングを実施。

 
 大きな補強となったFW牧の加入は前線の起点として期待大。
 FWの先発争いはこれで激戦区となった。

 
 AC長野パルセイロより加入のMF大塚。
 高い位置でのプレーが得意という。
 誰よりも遅くまで自身の体を追い込むストイックなプレイヤー。

 
 昨季のリーグMVPを獲得した橋垣戸。
 今季も守備の軸には変わりはない。Div1での大暴れに期待。

 
 昨季、チーム最大のサプライズ・畑中。
 2年目の今季はリーダーシップを発揮して欲しいところ。

 
 高校時代の盟友・大塚の加入に石田も燃えている。
 激戦区のFW陣で昨季以上の活躍を期待したい。

 
 今季はシーズン通してのプレーができそうな矢部。
 プレイヤーとして完全燃焼を果たしたい。

 まだ開幕まで3カ月近くあるものの、今後は練習試合等を重ねてチームを作っていく奈良クラブ。最近耳にする各有力チームの動向とは裏腹に、後任監督の行方や練習場などの環境面、運営面を含めて依然課題は多い。ここで重要なのは身の丈に合った進み方。地域との連携や企画など、まずはできることを増やして、少しずつ力を積み上げていかなくてはならない。堅実にアグレッシブに2010年を戦っていって欲しい。

奈良、2010年シーズンを控えて

2010年01月23日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグDiv1に戦いの場を移す奈良クラブ。2010年シーズンの始動日を明日に控え、クラブからのリリースも活気を取り戻した感がある。今週は、特に全国の各地域リーグでも藤枝MYFCが静岡FCとの合併を公表して今季からの東海1部リーグ参戦を示唆するなど動きが出てきている。今季、そういった全国各地の有力チームと相まみえる可能性もある奈良クラブは今季、どういったシーズンを過ごすだろうか。

 任意団体の枠を抜け出せていない現状で、戦力の上積みは必要最低限といった様子だ。それでも、北信越リーグのAC長野パルセイロから加入する大塚、そして、FC京都BAMBから加入する牧の2名はこれ以上ない補強。特に牧はかつてC大阪でもプレーし、JFL時代からFC京都BAMBの前線を背負ったプレイヤー。おそらくシーズンを通して前線の軸になるのは間違いない。彼ほど毎シーズンコンスタントに結果を出してきた経験とその実績は今のチームにとって非常に貴重だ。また、大塚も11月のTMからチームに合流しており、石田が奈良育英高校時代に同級生というだけあって、連携面では期待が持てる。個人的にもこれまで観る機会がほとんど無かった選手でプレースタイルを熟知していないこともあり、これからが非常に楽しみだ。
 対して、昨年加入してくれた選手で、特にルーキーだった吉田と的場の退団は非常に残念だった。吉田は開幕戦から出番を掴み、要所要所で得点を叩き出すなどチームの勝利に貢献してくれた。高校選手権でも2年生時に全国の舞台で得点を決めるなど、その才能は誰もが認めるところ。新天地で引き続きサッカーを続けて欲しい。

 とにもかくにも、練習場も定まらず、環境面で非常に厳しい戦いを強いられる奈良クラブに戦いの場を移してくれた2名の選手には感謝の言葉しか出ない。奈良には長野や京都・下鳥羽のような立派な環境はないが、チームの士気や意識を盛り立てていって欲しい。三洋電機洲本、ラランジャ京都、アイン食品、バンディオンセ加古川など関西の雄がひしめくDiv1は想像以上に厳しい戦いの場になるだろう。昨季Div2で3分2敗を喫している点を考えると、そう簡単に勝たせてはもらえないはずだ。それでも高い目標を持って走り切って欲しい。目標は全社出場、天皇杯出場、そして地域決勝大会への出場と設定したいところだ。

 若草山の山焼きも終わった。2010年の奈良クラブがいよいよ走り出す。

東高西低

2010年01月15日 | 脚で語る地域リーグ
 国内サッカーシーンも新たなシーズンの開幕を控えてカテゴリー問わず各クラブの動きが慌ただしくなってきた。その中でも個人的に驚いたのは、今季より神奈川県1部リーグに所属するS.C.相模原のJリーグ準加盟申請だった。

 S.C.相模原といえば、神奈川県相模原市を本拠地に2008年より活動を始めたチーム。元日本代表の望月重良を代表に、昨年からは同じく元日本代表の名良橋晃や元五輪代表の秋葉忠宏らを指導陣に迎え、ジュニアユースなど下部組織も整え走り出している。一昨年、昨年と全国クラブチーム選手権大会を連覇したことは記憶に新しい。既に運営法人は株式会社スポーツクラブ相模原として整備され、県リーグレベルでは突出したスポンサーを獲得している様子。オフィシャルサイトから見られる企業バナーの数はもはや県リーグレベルのチームとは到底思えないほどだ。ホームスタジアムも相模原麻溝公園競技場が現状でも1万人を超えるキャパを誇り、2012年まで改修が進んでいるという。改修後は1万5千人が収容可能になるようだ。
 神奈川には既に横浜FM、横浜FC、川崎、湘南といったJリーグクラブが肩を並べるが、それに続く5チーム目として名乗りを上げたということになる。また、すぐ近隣には来季のJリーグ参入を狙う町田ゼルビアもあり、まさに激戦区からの決意表明となった。

 相模原市の人口は71万2千人強(2009年12月1日現在)。4月からは県内で3番目の政令指定都市になるということもあり、街を上げての取り組みも今後注目されるところだ。

 しかしながら、こういったニュースが入ると、相変わらずこちらの地域リーグ勢の厳しさには言葉を失うばかりである。昨季こそ地域決勝での三洋電機洲本とラランジャ京都の戦いぶりには熱くさせられたが、その一方で、関西屈指の政令指定都市である堺を本拠地に活動を始めたばかりのFC堺がチーム名を今季からテクノネット大阪に変更して、アマチュアチームとしての再始動を余儀なくされており、教育研究社時代からの名門・FC京都BAMBも今季よりアミティエスポーツクラブとの合併が決まり、アミティエスポーツクラブFC京都として再始動することになった。これまで応援していた関係者の方のことを考えると素直には歓迎しがたい状況でもある。そんな関西リーグを引っ張っていくべく今季より1部に戦いの場を移す奈良クラブも練習場の確保に困難するなど、環境面で今季も苦戦が強いられそうだ。

 そんな中、明日は今季の関西リーグ自動昇格チームを決める関西府県リーグ決勝大会決勝戦が行われる。対戦カードは関学クラブ(兵庫)と海南FC(和歌山)となっている。そういえば、和歌山はアルテリーヴォ和歌山が今季より県1部リーグに戦いの場を移すが、地域リーグレベルでは、全国でも珍しく参加チームが無い状況。紀北蹴球団以来の和歌山から関西リーグ参戦なるか。是非とも海南FCの健闘と今季より関西リーグの盛り立て役として期待したところだ。もちろん、これが来季の昇格を目指すアルテリーヴォ和歌山の刺激にもなるはず。冷え込む話題が続くこちらのカテゴリーにも明るい話題が欲しいところだ。

サッカーギア酔夢譚2010<1> ‐その他編‐

2010年01月12日 | 脚で語るサッカーギア
 全国高校サッカー選手権は山梨学院大附(山梨)が初出場で初優勝を果たすという快挙で幕を下ろした。そんな彼らも身に纏っていたユニフォームをサプライするasicsをはじめ、その他の最新サッカーギアに注目。

 

 NIKEやadidasとは一線を画す機能性に重視した丁寧な造りが国内メーカーの誇りと言わんばかりにasicsはDSライトの高機能モデル「ジェニオ」にセカンドモデルが登場。このDSライトシリーズは本当に軽量モデルで陰ながら愛用者は多いはず。そういえば、現在の広告塔でもある小野は清水に加入後はこれを着用してぷれーするのだろうか。不変のサイドラインがブラックのアッパーと抜群の相性。

 

 積極的にサッカーギアも各種ラインアップを充実させる国内メーカーの柱・mizunoはモレリアの25周年記念モデルが登場。現行のモレリア2がベースながらホワイトベースで特別感はあるものの、基本的にはモレリア2の新カラーという印象。

 
 何気に仕込まれた25周年記念エンブレムが限定モデルを強調。

 

 そんなmizunoも細部までギミックにこだわったニューモデル「WAVE イグニタス MD」をリリース。計算された配置を見せるバイオコントロールパネルによって無回転キックの質を大幅に上げるという機能を搭載。アッパーはカンガルーとマイクロファイバーで軽量化にこだわるmizunoらしさを貫く。

 
 インサイド側から見ると、どこのスパイクかもはや判別不能。
 アウトソールのスタッドも鋭さを増した気がする。

 
 こちらはKAMOオリジナルモデルの「セグンダ ジェラサァォン」。
 mizuno史上最も発音が難しい名称を纏ったシンプルなモデル。

 
 モレリアシリーズにもミドルクラスに「モレリア AF」が登場。
 短いシュータンは最新モデルの特徴。少し寂しい。

 

 そして、PUMAは長谷部のユニークなCMでお馴染み「パワーキャット」シリーズが遂にリリース。形状的にはデルムンドの系譜を受け継ぐモデルのようで、キッキングパワーロスを防ぐパワーシューティングテクノロジーやエクスターナルヒールカウンターが踵の安定性を向上させるなどシンプルながらも最新機能を搭載。

 
 PUMAといえばこの猫のトレードマーク。
 アッパーはやはりブラックの方が抜群にカッコいい。

 
 こちらは別カラーのホワイト×ロイヤル×ゴールド。
 何気にPUMAはホワイトとロイヤルブルーの配色が好きなようだ。

 

 注目はKAMOで13足のみの限定販売がされている「v1.10K.W.」。シリアルナンバー入りの世界302足限定モデルで「K.W.」とはなんぞやと思ったら、なんとKehinde Wileyのデザインというから驚き。ヨーロッパアート風の背景とアフリカ系アメリカ人の写実的な絵がミックスされた作品が世界的に定評のアートグラファーによる渾身のリミテッドモデル。そんな訳で着用選手はエトーやケイタといったアフリカ系の選手が多い。

 
 よっぽど個性を主張したいプレイヤーに捧げられたこのデザイン。
 PUMAのこういったプロダクトへのこだわりは素晴らしい。

 

 そして、UMBROは「アクセレイター SJ 2」の2010年カラーが満を持しての登場。ゴールドをあしらった遠藤着用モデルがW杯イヤーの今年はラインアップの主力。そういえば最近は昔に比べて子供たちも本当にUMBROを履いている子が多くなったと思う。

 
 ホワイト×ブラック×Fイエローの別カラー。
 Fカラーはこういうさり気ない配色が一番カッコいい。

 
 近年すっかり影の薄くなったDIADORAも健在。
 「LX K-PRO 2 MG14」は長いシュータンが渋いデザイン。

 
 こちらはDIADORAに珍しく前衛的なデザイン。
 「エストロ M MG14」。
 近年、国内でもDIADORA着用率はすっかり減少してしまった。

 
 ウェアで定評のあるkappa
 シューズでは「フローレ」というプロダクトを展開中。
 かつてのennereのスパイクを彷彿とさせるシンプルなデザイン。

 今年はW杯イヤーということもあって、各社これからニューカラーも飛び出してくるだろう。PUMAのような超限定プロダクトに今後も期待。

サッカーギア酔夢譚2010<1> ‐adidas編‐

2010年01月11日 | 脚で語るサッカーギア
 先日紹介したNIKEの対抗馬であり、ライバルのadidasも2010年早々から新ラインアップが賑わっている。まずは、昨年末よりプレデターシリーズの最新モデルをリリースされたのでそちらから。

 

 満を持して登場の最新モデル「プレデターX TRX」は見た目から分かるように原点回帰のデザイン。これを見て94年、95年に出た「プレデター1」と「2」を思い出すプレイヤーも多いのではないだろうか。シンプルでスタイリッシュに仕上がっており、近年のプレデターシリーズでも屈指の出来だろう。今回のモデルはadidas独自の技術で仕上げられた牛革・TAURUSレザーを使用とのこと。かつてのカーフレザーを彷彿とさせる高級感を実現している。

 
 新型プレデターラバーがしっかりキックをホールド。
 NIKEに負けじとシリーズ恒例のギミックが効いている。

 
 インサイド側はなんとなくプレデターパルスを彷彿とさせる。
 シュータンがアッパー部分と一体化したのはトピックス。

 
 こちらはホワイト×ブラウン×イエローの配色。
 ランニングシューズのアディゼロManaと同じ配色で登場。

 
 今だにリリースされるベッカム専用カラー。
 ミラン復帰を見越したカラーリングはお約束?

 

 これに負けじと「アディピュア」シリーズもサードモデルが登場。アッパー前足部にはウルトラソフトカンガルーレザーが使用されているとのこと。もはや使用素材も超セレブの域に。このモデルに代表されようにすっかりadidasはシュータンから卒業。「2」と比べるとかなりデザインも洗練された印象だ。

 
 こちらは鉄板カラーのブラック×ホワイト。
 フラッグシップモデルが定番のブラックというのはコパムンの系譜。

 

 前述の2モデルに比べると地味な存在ながらロングセラーモデルの「パティーク」シリーズも健在。日本人の足のサイズにジャストフィットを目指したadidasラインアップの中軸を担うモデル。2000年代前半の頃のモデルと比べても愚直なまでに素直な直線のスリーストライプとその下にヒール方向へ向かって斜めに横切るデザインがコパムンディアルを彷彿とさせる。

 
 「パティーク」には欠かせないアウトソール日の丸モデル。

 
 メッシは今季はホワイトでスタートのこと。F50 i TUNITも健在。
 しかしながらこれを履いているプレイヤーもあまり見かけない。

 2010SSラインアップはすっきりしたデザインで臨んできたadidasの各主力モデル。奇抜なデザインと配色が売りのNIKEと比較しても無難に足元を飾りたいプレイヤー向けといった感じだ。そういえば、日本代表のユニフォームもシンプルなデザインに。「よだれかけ」や揶揄されたあのモデルもW杯イヤーの今年はだんだんと見慣れていくのかも。そう、adidasにとっても今年は儲ける年なのだ。

戦いに敗れても君は美しい

2010年01月10日 | 脚で語る高校サッカー
 第88回全国高校サッカー選手権は準決勝を迎え、関西勢で唯一勝ち残っている関西大第一(大阪)は青森山田(青森)と対戦。0-2とリードされながらも、89分とロスタイムに2点を返して同点に追いつく粘りを見せるが、PK戦の末に2-3で敗戦。決勝進出はならなかった。

 大会屈指と語り継がれるであろう劇的な同点劇だった。0-2で迎えた89分、久保綾がゴール前のこぼれ球を上手く体を反転しながらシュート。これが見事にゴールに吸い込まれて1点を返すと、その直後には交代出場の井村が鮮やかなシュートを決めて同点に追いついた。

 関西大第一のここまでの快進撃は全国的にもサプライズだった。個人的にも今大会は母校の近大附の出場を楽しみにしていた。2年前は埼玉スタジアムで奈良育英と前橋育英の1回戦第1試合を観た後、タクシーに飛び乗って、駒場で近大附と星陵の第2試合を観戦したものだった。それが昨年の大阪府大会・決勝では金光大阪と関西大第一という組み合わせ。大阪桐蔭や大阪朝鮮でもないダークホースの決勝進出に多少の驚きはあったが、彼らが全国の切符を掴んだことは更なる驚きでもあった。そして、本大会ではあれよあれよとベスト4進出。北陽が優勝を果たして以来、32年ぶりの快挙にただただ驚くばかりだった。

 2点を先取されながらも試合内容は決して悪くなかった。先制点を許したPK献上が悔やまれる場面だが、ロスタイムの奇跡はそれを束の間忘れさせてくれた。結果的にPK3本を止めた青森山田・GK櫛引の好守を称えるべきだが、全く互角の戦いを見せた関西大第一の健闘は素晴らしかった。
 対する青森山田も勝利確実と思われた矢先の2失点で精神的にも厳しい試合だっただろう。決勝の相手は初出場の山梨学院大付。この試合の疲れを引きずらないことが重要になりそうだ。

 なんとも感動的な試合。個人的にも高校サッカーではなかなか見られない奇跡を垣間見た気がした。試合終了と同時にフィールドにうずくまった選手たちにとってもかけがえのない経験になったはずだ。紫紺のヒュンメルを纏った彼らは今後も記憶の中にずっと残るのだろう。

サッカーギア酔夢譚2010<1> ‐NIKE編‐

2010年01月09日 | 脚で語るサッカーギア
 もはやとどまるところを知らない昨今のサッカーギア。その新作のリリース頻度は驚異的な速さ。気が付けばいくつもの新作が店頭に並んでいるこの時期。さてさて久々にサッカースパイクの新作をチェック。まずはNIKEから。

 

 NIKEオールドファンには堪らないデザインのティエンポ94。国内ではサッカーショップKAMOのみでリリースされており、NIKEがグローバルにサッカー選手の足元を狙い出した94年頃を彷彿とさせるティエンポの原型デザインを復刻。この大きなシュータンと存在感抜群のスウッシュマークがなんとも懐かしく、最新テクノロジーを搭載したアウトソールも秀逸のデザイン。思わず94年W杯時のロマーリオはもちろん、日本国内でもこの初期ティエンポを愛用した前園などの選手を思い出す。確か国内では、かつて浦和でプレーしたルンメニゲが率先してこの初代ティエンポを履いていた記憶がある。よくぞNIKEはこのモデルを復刻したと思わず唸ってしまった。

 
 ヒール部分には大きなNIKEロゴが鎮座。
 まさに不朽のクールなデザイン。

 
 
 そして、現行ラインアップの主力であるトータル90シリーズもトータル90レーザー3のリリースによりサードモデルに突入。まさかのエメラルドグリーンの配色にNIKEの底知らずのデザインの奇抜さを感じさせる。きちんとサイドにトレードマークのスウッシュが存在感を示しているのが良い。良く目を凝らして見るとアウトソールには初代シリーズ(ズームトータル90)時代から不変の軽量ブレードHGアウトソールを装備。思わずレーザーがリリースされる以前のズームトータル90シリーズ(フィーゴや小野、大黒などが愛用)を思い出す。

 
 甲部にTPUインステップパッドなる秘密兵器を搭載。
 こういったギミックはadidasに負けないライバル心の現れか。

 

 CTR360マエストリにもホワイト×ロイヤル×シルバーの新作カラーが登場。これでファーストカラー(ブラック×レッド)はセールワゴンに追い出されていることだろう。シンプルなデザインながらもアッパーにKANGA-LITE(カンガライト)という人工表皮を使用し、天然レザーに負けない質感を披露。そのためにティエンポシリーズに比べると、価格は若干割高感が否めない。

 

 ロングセラーモデルのティエンポシリーズにもティエンポレジェンド3HGの新作カラー(ホワイト×ブラック×デルソル)がリリース。奇抜なデザインになびかない保守派にお薦めのデザインはエアレジェンドからのアッパーデザインを踏襲。

 

 こちらはティエンポレジェンド3のFGソールバージョン。アウトソールのスタッドが蛍光イエローで強調されている。やはりティエンポシリーズはアッパーが黒であるべきだと個人的には思う。

 

 同じくティエンポシリーズの中軸を務めるティエンポスーパーリゲラにもKAMO40周年モデルのオリジナル「K40」シリーズがリリースされている。アクの強いオールゴールドにカンガルーレザーのアッパーは、シンプルなデザインと短めのシュータンが特徴。パラメヒコのシュータン短めにこだわるユーザーにはヒットしそうだ。

 

 目立ちたがり屋にはもってこいのマーキュリアルシリーズは2010SPRINGカラーもショッキングイエローで健在。このマーキュリアルスーパーフライの44,100円という価格にも動じなくなってきたか。しかしながら、個性が強調されすぎるこのモデル、なかなか履いているプレイヤーを見かけない。

 

 マーキュリアルシリーズの主力ながら、スーパーフライの限定感が消え失せ、すっかり弟分のようになってしまったマーキュリアルヴェイパー5。今年いよいよ6thモデルが投入されるのか。はたまたフルモデルチェンジでニューシリーズ突入か、その行く末が気になるところ。

 ここに取り上げたNIKEの各シリーズのフラッグシップモデルはティエンポシリーズを除けば、どれも20,000円オーバー。最新技術のせいか、いつの間にかサッカースパイクも本当に高くなったとつくづく思う。

大移動 ‐国内ストーブリーグ‐

2010年01月08日 | 脚で語るJリーグ
 束の間のシーズンオフを過ごす地域リーグ以上の国内サッカーカテゴリー。新シーズンの始動日程もチームによっては決まり始めており、続々とチーム間の選手移動が日ごとに熱を帯びてきている。

 まずは、やはり群を抜いて驚いたのは久保のツエーゲン金沢加入のニュース。来季からJFLに昇格する金沢に元日本代表のエースが加入することは、間違いなくこのカテゴリーでのトップトピックスであり、Jリーグ参入を目指す金沢が今季のJFLでの戦いに相当の意気込みで臨んでいる証だろう。この1年はJリーグを目指す金沢にとって戦績のみならず観客動員面などの営業面で勝負の1年になりそうだが、何よりまだJ2レベルでもプレーできるのではと思わせる久保、横浜FMのリーグ優勝に貢献した03年あたりの絶頂期からもう5~6年経つが、日本人離れしたシュートセンスが印象的な彼をJFLで見られるのは非常に楽しみだ。個人的にも昨季は入替戦こそ見届けられずも、高知から松本までその戦いぶりを見守った金沢だけに今季はより一層注目したいチームだ。
 そして、逆パターンとして地域リーグレベルでは、中国リーグのFC宇部ヤーマンから平石がJ2・福岡に練習生契約が決まったという。昨今なかなか見られない下のカテゴリーからの2階級特進。各Jクラブの予算的な厳しさという背景もあるだろうが、今後もこういったチャンスを掴む選手が地域リーグのカテゴリーから出てくることを切望したい。

 Jリーグに目を移すと、毎日のようにリリースされる移籍情報において、J1で積極補強が目立つのは名古屋とC大阪。名古屋は浦和から闘莉王をはじめ、大分から金崎、新潟から千代反田、東京Vから高木義、札幌からダニルソンといった補強を敢行。吉田のオランダ移籍も含めた戦力的な差し引きで充実している様子だ。昨季はACLや天皇杯などいずれも惜しいところでタイトルを逃しただけに、10年シーズンの名古屋の本気度がうかがえるストーブリーグとなっている。
 一方、久々のJ1復帰となったC大阪も大分から高橋、上本、清武という3人に加え、G大阪から播戸、家長(レンタル移籍先の大分より)、FC東京から茂庭、磐田から松井といった即戦力ばかりを積極補強。戦力的な差し引きではおそらくリーグトップの充実ぶりで、香川や乾ら既存の戦力と噛み合えば台風の目になる予感。その他、京都や神戸も如実に選手層を充実させる補強を敢行している。

 J2では、札幌の中山獲得で話題が沸騰した感があるが、その札幌や横浜FCが積極的に移籍組で補強を進めている感がある。予算的な苦戦を強いられるチームが多そうだが、今季からサテライトリーグが撤廃される関係もあり、若年代の選手は特に活躍の場を求めたいところだろう。まだまだこれから動きはありそうな国内ストーブリーグ、あっという間に10年シーズンのスタートがもうそこまで訪れている。