脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

激戦必至!日本のチャンピオンズリーグ

2007年10月31日 | 脚で語る地域リーグ


 11月23日より幕を開ける熱い戦い。そう、全国地域リーグ決勝大会が各地域を勝ち抜いた14チームの参加チームによって始まる。今年は1次ラウンドが広島、愛知、松本と3箇所で行われ、30日より熊谷スポーツ文化公園陸上競技場において1日2試合の予定で3日間の決勝ラウンドが行われる。その決勝ラウンドを勝ち抜いた上位2チームが来季のJFL自動昇格の権利を勝ち取り、3位チームはJFL入れ替え戦の権利を獲得することとなる。
 先日28日に決着が着いたKyuリーグこと九州リーグの結果を待って、29日にその組み合わせが決まったが、その前に大激戦となったKyuリーグについて少し書きたいと思う。

 第21節と最終節が10月27日、28日の連日にて開催となったKyuリーグは、残り2試合を残して首位のホンダロックと2位ニューウェーブ北九州、1試合を残す3位V・ファーレン長崎が勝ち点1差で優勝の可能性を残していた。長崎は自力優勝の可能性は無くなっていたため、事実上ホンダロックとニューウェーブ北九州の一騎打ちであったのだが、27日の21節ではホンダロックが新日鐵大分に3-1と快勝、北九州も熊本教員団に4-0と圧勝するなど、どちらの譲らない展開となり、翌日の最終節に委ねられることとなった。ここで首位ホンダロックが対峙するのは3位の長崎。優勝の可能性は無くなった長崎であったが、ドラマを起こすには充分な組み合わせであった。
 長崎とホンダロックのゲームは14時キックオフ。既に同じ会場の第1試合で海邦銀行SCを4-0で下していた北九州はこのゲームの結果待ちであった。先制したのはホンダロック。前半35分にMF前田がPKを決め、1-0と試合をリードする。しかし、よほどのプレッシャーがあったのか、前半から8本のCKを長崎に与えてしまうなど明らかにプレッシャーはホンダロックにあった。拮抗した試合はラスト10分になってホンダロックが守り抜けば優勝という展開。そこに劇的なドラマが待っていた。
 81分に後半から首藤に代わり交代出場していたブルーノ・カルバリョが主将原田のクロスにヘディングで合わせ劇的な同点弾を叩き込む。そしてその2分後、ホンダロックはゴール前で痛恨のファウル。長崎が逆転に繋がるPKを奪取。これを今季のアシスト王にも輝いた司令塔佐野祐哉が落ち着いて決め、長崎がホンダロックを土壇場で逆転するのであった。このまま試合は終了し、劇的な逆転優勝をニューウェーブ北九州が決めることとなる。結果、1位ニューウェーブ北九州、2位ホンダロックという形でこの2チームが決勝大会に進むこととなった。

 これで全国社会人選手権を制したFC Mi-OびわこKusatsuも含めた14チームがその決勝大会に駒を進めることが決まったわけだが、11/23~11/25までの第1ラウンド、11/30~12/2までの決勝ラウンドと短期決戦だけにどのチームも油断は禁物だ。
 特に大本命は中国リーグを圧倒的な強さで勝ち抜いたファジアーノ岡山。この大会では広島で戦うAグループで対戦相手はグルージャ盛岡、ホンダロックとなったが、宮城と宮崎から遙々来る両チームに比べて、隣県から参戦する岡山はコンディションも整えやすい。おそらく圧倒的な強さで決勝ラウンドまで駆け上がるだろう。
 Bグループでは、先日社会人選手権で決勝まで勝ち進んだ矢崎バレンテとニューウェーブ北九州が同じグループに。選手構成やクラブの質自体では群を抜いている北九州だけにここも彼らが必然的に大本命になるだろう。東北2位のNECトーキンは厳しい試合を強いられそうだ。
 前年の決勝大会進出チーム3チームとFC町田ゼルビアで構成されるのが、Cグループ。最も「死のグループ」といっても過言ではない。どこが勝ち上がるのか非常に予想の難しいグループだが、今季東海リーグを制した静岡FCとバンディオンセ神戸の一騎打ちの構図も予想される。
 J下部組織として徳島アマチュアが入ったDグループは、松本山雅とFC Mi-Oを中心に展開されるだろう。元Jリーガーの主将庄司孝が引っ張るセントラル中国は苦しい戦いになるはずだ。

 決勝ラウンドに進めるのは各グループの1位のみ。おまけに決勝ラウンドでは入れ替え戦に臨める3位までがJFLの切符を掴むチャンスがあるだけに、3位と4位では大きな違いだ。昨年はレギュレーションの関係もあり、岡山と長崎が涙を呑んだ。決勝ラウンドまで進んでの最下位は許されない。
 個人的には今季関西の枠は1つだけと心配なところだったが、FC Mi-Oが全国社会人枠でリベンジしてくれた。バンディオンセ神戸と共に旋風を巻き起こしてもらいたいものだ。

 真のアマチュア最高峰、チャンピオンズリーグが間もなく始まる。筆者も決勝ラウンドは熊谷まで観戦に行く予定だ。日本屈指の熱い戦いを見届けなければいけない。
 

 

予定通りの監督交代劇

2007年10月30日 | 脚で語る欧州・海外


 実に筋書き通りの監督交代劇であった。
 
 25日のUEFA杯グループリーグ第1節でヘタフェに敗れたトッテナムのマルティン
・ヨル監督がトップチームのコーチを務めるクリス・ヒューストンと共に翌日解任された。
 それもそのはず、一昨年、昨年とトッテナムをUEFA杯出場圏内に導きながら、今季はプレミア11節を終えて1勝4分6敗とチームはとにかく勝てていない。まさに負のスパイラルに陥っていた。今季は様々なチームからラブコールが絶えないベルバトフを中心に主力の流出を最小限に留めながらも、ウェールズの若き至宝ガレス・ベイルやイングランドの将来のエース候補であるダレン・ベントを獲得するなど、数年先まで見据えた実直な補強をこなし、チャンピオンズリーグ出場圏内の4位以内が現実的な目標となっていた。

 その後任として、セビージャを辞任したファンデ・ラモス氏が27日にすかさず監督就任を決定。この監督交代は今季開幕時からすでに滑り出しが良くなかったトッテナムの状況を察して、早くから噂されていたものだ。
 タイミングとしては悪くないだろう。セビージャも今季はリーガで現在4勝4敗と昨季中盤からの勢いを持続できず、勝てていないと言っていい。ヨル監督が去ったトッテナムの後任はデベロップコーチのクライブ・アレン氏が暫定的に指揮を執ると予想されていたが、その噂もファンデ・ラモスという名監督の来英に1日で吹き飛んでしまった。

 UEFA杯2連覇、UEFAスーパーカップ、スペイン国王杯、スーペル・コパとこの2年間で5つものタイトルを獲得してきたファンデ・ラモス監督が絶不調極まりないスパーズをどう立て直すのかが非常に注目されるが、指揮官のモチベーションは「このスパーズのファンにはUEFA杯の対戦時から感動していた。このクラブの監督であるということは本当に誇り高い」と実に意欲満々の様子。ケガで離脱中の主将レドリー・キングの復帰が今後の新生スパーズの鍵を握りそうなのだが。

 しかし、よくセビージャもファンデ・ラモス監督の辞任を容認したものである。今となっては世界中のクラブから熱視線を送られる欧州屈指の人材工場へと発展を遂げたセビージャ。そのガードの堅さは実に有名で、今季を迎えるにあたっては、UEFA杯連覇の原動力となった主力もほとんど流出していない。チェルシーと相思相愛になっていたダニエル・アウベスの移籍をシーズン開幕ギリギリになっても結局は容認しなかったほどである。
 とにかくそのセビージャの後任には下部組織の監督を務め、選手時代も含め20年以上をセビージャに捧げているマヌエル・ヒメネス氏が就任する。ファンデ・ラモスの築いた王国をどこまで引っ張って行くことができるか。意外とチャンピオンズリーグの決勝トーナメントまで勝ち上がれればと個人的には期待してしまう。そうなればセビージャの選択も正しかったことになるのだが。

 あまりに筋書き通りの監督交代劇。両チームの今後に幸あれ。

アウェイツアーに渡し舟を出す川崎の脅威

2007年10月29日 | 脚で語るJリーグ


 いや、しかしJ's GOALを見て笑ってしまった。
 0-7というスコアもさることながら、試合前から「多摩川クラシコ」と名付けられたFC東京VS川崎の試合は、なんと多摩川を丸子の渡しを再現して、アウェイ舟ツアーが出ていたのである。
 文字通り、多摩川を船で上って味の素スタジアムを目指すというものだが、江戸時代に栄えた渡し船に見立てて総勢50名ほどが、幟を立てた小さな船に分乗して意気揚々と向かったようだ。到着する東京側の河岸にはFC東京のサポーターが待ち構え、「川崎だけには負けねぇ!」や「イルカは泳げ!」などとセンスに富んだゲーフラでお出迎えというオチ付き。何ともゲームを盛り上げる双方の心意気がユーモラスに表れるエピソードである。

 しかしながら、川崎の今シーズンの営業活動は実にユーモア溢れた活動内容である。前述の「多摩川クラシコ」もFC東京との協力体制の下で徐々にその呼び名が浸透してきているようだが、来月3日のナビスコ杯決勝では国立を水色に染めるために「水色バイバイン計画」たるものを実施中だ。
 何も川崎の広報活動を手伝う気は更々無いのだが、ドラえもんの道具から名付けたこの計画は定期的に選手自身がクラブのHPやJ's GOALに登場し、ファンの来場を呼び掛けるという企画も行われており、家族や知り合いを中心に何人呼んだか選手自身が決意表明を述べて、サポーターの賛同と来場をアピールしている。川崎のHPでも武田社長自らが、一昨年に目の前で胴上げをされたガンバに負けてなるものかと自身の言葉で自ら呼びかけを行っている熱の入れようだ。この気概は恐るべしである。
 8月に等々力で行われたガンバ戦は「アタック25日」と名付けられたイベントが開催されていた。水色のパネルで等々力のスタンドを埋めるという企画だったが、ネーミングといい、イメージキャラクターに児玉清のモノマネで有名な博多華丸氏を起用したりと抜け目ない。今夏、他にもクラブハウスではガンプラ(ガンダムのプラモデル)とコラボレートしたイベントも行われており、多種多様の企画が目に付かない時期は無いほどだ。

 元来、ホームタウンの川崎を中心に非常に精力的にサッカースクールや地元のイベントに参加してそのPR活動を続けている川崎。昨季は優勝争いに絡む躍進を見せ、今季はACLでも大健闘を見せた。着実にクラブの人気は上昇し、チームの総合力にそれが直結していることを窺わせる。特に子供たちを中心に誰もがスタジアムに足を運ぶことができるであろう。PRの手法が実にサッカーとかけ離れていて、それでいてクラブの存在を強烈に印象付ける何とも素晴らしいアイデアだ。
 日本一強烈で熱狂的なサポーターを有する浦和は、その魂を強烈に刺激する広告を打ったりする。昨季終盤の「ALL FOR TOGETHER!!」などが代表的な例であるが、それとは対照的にお年寄りや家族連れ、子供だけでも川崎の遊び心に溢れた企画内容は受け入られ易いだろう。これからもどんな企画が飛び出してくるか要注目である。

「休日出勤の要請をキッパリと断る勇気」
「あの人の分のチケットを立て替える気概」
これがナビスコ決勝の国立を埋め尽くそうとする川崎のスローガンだ。今日の多摩川クラシコの7-0という大勝もさることながら、8月の「アタック25日」ではガンバも1-4と完敗を喫した。実に強敵であることは間違いない。

またしても訪れる逆境

2007年10月28日 | 脚で語るJリーグ


 しかし、ここ数年つくづくG大阪にとってこの時期には大きな逆境が訪れる。昨日の清水戦の完敗により今季の逆転優勝はより難しいものとなった。

 台風の影響で吹き付ける風と雨足が次第に強まる中、筆者もサポーターのバスツアーで日本平へ。試合前の最悪のコンディションは奇跡的にキックオフ目前に回復し、意気揚々と乗り込んだ少数の我々もあとはこれからガンバが魅せてくれる攻撃的なサッカーに酔いしれるだけだった。
 我々もリーグ優勝を勝ち取るためには、浦和が調子を崩すのを待ち続けるという他力本願の状況ではあったが、この10月は柏に逆転勝ち、カシマでのナビスコ決勝進出の決定、リーグ前節の甲府戦はホーム万博で5発の大花火を打ち上げた後だけに、多少の安心感があっただろう。マグノアウベスの完全復帰としばし戦列を離れていたバレーもスタメン出場、相手は6年間負けていなかった清水だけにその安心感が無かったといえばまったく嘘になる。

 清水は前節の甲府戦を長谷川監督が視察に来ていただけによくガンバを研究していた。ボールを支配しながらも決定的なチャンスには持ち込めない。それどころか青山を中心に気合のディフェンスを見せる清水はガンバよりテンポの速い出足で、前線へのボールをカットしていく。12分に中央の藤本から市川へ展開し、右サイドを上がった市川の放り込んだクロスにフェルナンジーニョと矢島が飛び込む。ボールはこぼれたが、矢島が速い反応を見せ、清水が先制ゴールを奪う。
 この1失点の段階では、さほどのダメージではなかった。しかし、清水は引き続きガンバにボールを回させ、自陣で徹底的にチェックをかけていくという戦い方を完遂していく。2トップに効果的なくさびが入らないことで、マグノが少し引いた位置でボールを受けるようになっていくが、これも結果的には清水サイドの術中にはまったのかもしれない。徹底的にバレーをマークした青山と、焦らずに送らせてクロスとシュートのコースを限定し続けた清水の守りは予想以上に強固であった。

 1点のビハインドで迎えた後半にベンチは家長と安田と投入し、さらにアグレッシブに攻撃姿勢を貫く構えを見せる。前半は攻撃面でほとんど機能しなかった橋本の左サイドは安田が果敢に突破を見せ、前半から飛ばしていた二川と共に活性化の一途を見せるが、決め手となるプレーは欠いたまま。立ち上がり51分には藤本のスルーパスに反応したフェルナンジーニョに易々と決められ0-2とされる。
 前がかりになるガンバに比例して清水は効率的に得点を奪う。62分にはCKからチョジェジンが3点目を奪い、3点のリードを握った。この後、ガンバは播戸を投入してビハインド奪回に精一杯の力を尽くすも86分に山口がCKから頭で1点を奪うに終わり、1-3という形で試合はタイムアップの笛を待つこととなる。

 清水の策がはまらなくてもガンバには負ける要因が幾つ散見された。
 まずは加地と橋本の両SBが機能しなかったこと。前半からボールを回しながらも徹底的に中央にアプローチをかけられたことからサイドに展開を余儀なくされるが、ここで両SBは清水のプレッシャーに苦しめられるどころか自ら多くのチャンスをフイにした。試合前までスタメン出場の危ぶまれていた加地は、まだ足の状態が思わしくないのかパスにトラップにらしくないミスを連発。右サイドからリズムを壊す要因となった。橋本は積極的に攻め上がるも、最後のクロスに信頼を欠いた。それ以前にやはり橋本は相手のアプローチが迫った状況での右足コントロールが、彼の左SBの適正を疑問視させる。ワンテンポ遅れることで清水に守りやすい状況を作らせてしまった。
 そして、顕著に目立った遠藤のミスキック。何しろセットプレーがほとんど脅威となっていない。CK時に無人のファーサイドに蹴り放たれるキックへの疑問は、帰路のバス車内でも数人のサポーターから問題提起されていた。
 最後に致命傷だったのは前線のコンビネーションだろう。前日から通常練習に合流したバレーは体が重く、青山に封殺された。徹底的に前線へのボールを狙われていたことで、マグノが下がり目の位置からボールを受けようとするも、その状況からフィニッシャーが仕事をする図式が見られなかった。ハイボールからのヘディングシュートばかりが空を切り、足元でボールを受けた際のシュートコースは既に清水の壁に塞がれていたのである。後半から投入された家長もこの状況を打開するには至らず、逆に手数をかけてしまい随所に攻撃の停滞を招いてしまった。

 首位浦和が止まるまで勝ち続けなければならない状況で、この敗戦は痛烈だった。それだけではない。今日の30節残り試合で浦和は名古屋と対峙するも、負けはしなかったが、引き分けることでさらにガンバとの勝ち点差を上積みさせることに成功した。負けない浦和を追いかける中で負けてしまったガンバ。来週にはナビスコ決勝の大一番が控えている。相手の川崎は鄭のハットトリックなどで今節対戦したFC東京を7-0と粉砕、ノリにノッている。

 負けられない試合は続く。しかし容赦なく続くこの逆境に我々は背を向けることはできない。リーグはまだチャンスが潰えた訳ではない。これを乗り越えれば奇跡と共にこれ以上ない強さを手中にすることができるのだが。

 負けないことの重要性は、奇しくも浦和の背中に大きく書かれていた・・・
 

 

ACLの頂を目指す浦和をどう捉えるか

2007年10月26日 | 脚で語るJリーグ


 ACL準決勝第2戦でPK戦において城南一和を下し、遂に日本勢としては初のACL決勝進出を果たした浦和。これで12月に行われるクラブワールドカップ出場を自力で手繰り寄せることにも大きく前進した。
 ウィークデイにも関わらず5万人以上の観衆が詰めかけた埼玉スタジアム。その誰もが浦和の歴史的な決勝進出の瞬間を目撃することになったのだが、まさかPK戦までもつれ込むとは。日本と韓国を誇る両チームの対決は絵に描いたような大接戦となり、浦和ファンにとってはこのゲームのために払った入場料も安いものだっただろう。

 さて、こちら関西では、リーグで首位を突っ走る浦和を猛追するG大阪のフォロワーたちがそれぞれの思いで浦和のゲームをビジョンの向こうに見届けていた。
 実に興味深いのはその十人十色の解釈。皆が複雑な思いを胸に浦和の勇躍をその目に焼き付けていたのだが、筆者のようにACLにはお構いなしで、J2を観戦している物好きは置いておいて、やはりその大半がアンチ浦和の思いを口にしながらも日本サッカーシーンをG大阪との2強で牽引する好敵手に賛辞を贈る者が多かった。悔しいかな、あの熱狂的なサポーターの姿は間違いなく世界に誇れるし、決してチャンピオンらしいサッカーとは言い難いが、何よりも"負けない"浦和のスタイルは結果を残し続けている。サポーターの垣根を越えて、浦和は日本を代表するチームとして全てのサッカーファンからの熱い眼差しを受けているといってもいい。

 浦和を安易に"日本代表"と呼ぶには語弊があるかもしれないが、私はそうは思わない。この大会の意義と戦いぶりを見れば、ユニフォームの色は違えど、彼らは日本代表と呼ぶべき勇ましさすら覚える。何よりも個人的に思うのは、ナショナルチームではなく、クラブチームとして国際試合で結果を出していることは大きな評価に値するし、そこに辿り着くまでの結果を積み重ねた浦和の功績は大きい。年間通しての練習時間や調整時間が限られる"寄せ集め"の代表チームと比べても熟成度がクラブチームは遥かに違う。
 このクラブ至上主義とも言える在り方をその戦いぶりで示す浦和に我々は学ぶべきところは多いはずだ。何しろ国内クラブの成長とその切磋琢磨は日本サッカーの成長曲線に大きく反映される。浦和に追いつけ追い越せでこれから他クラブが上を目指すための具体像がはっきりしたのは確かだ。

 これまで述べた個人的な見解は、あくまでフットボールジャーナリズムに則ったものである。それは確かにG大阪びいきの筆者としても浦和の後塵を喫するのは悔しくて仕方がない。しかし、そんな客観的な視点で今回の浦和の活躍ぶりを見守るのは日本サッカーの未来を思えば大切なこと。その傍らで、絶対に浦和を応援する気にはなれないという方もいらっしゃってもまた然るべきである。
 そんなサッカーファンが相互に意見交換やぶつかり合いを繰り返しながら、クラブと共に成長するのであろう。浦和の前人未到の勝利が日本サッカーをネクストレベルに導いているのは確かなことだと確信している。

J2観戦記⑥ ~京都VS愛媛FC~

2007年10月25日 | 脚で語るJリーグ


 後半のピッチに真っ先に出てきたのは斉藤大介だった。2点のリードを終了間際に同点へと追いつかれた45節のC大阪戦、その翌節の徳島戦から2試合続けてのベンチスタートとなった彼にはこれまでチームを引っ張り続けた中心選手としての自負があったのだろう。この日は前半37分に戦術上の変更で秋田と代わり出場していた。残り6試合となり、1試合1試合が負けられない。皆が相手は格下などとは思っていなかったに違いない。今節は仙台が休みとあって、この試合に勝てば単独で3位に躍り出るからだ。

 試合はアウェイ愛媛が先制する展開となった。加藤久監督が就任してからの京都は4-1-2-3という新フォーメーションを重用し、秋田、森岡のベテランコンビをCBに据え、中盤の底には石井、その前に2枚の守備的MFが陣取る形だ。前節の徳島戦ではこのポジションに中山が起用されたが、この試合は角田と倉貫というコンビで、徳重が帰ってきた前線はパウリーニョとアンドレという得点率の高い3人がトリオを組む。
 愛媛に早い時間に先制されたことが、逆に京都に落着きをもたらした。高いライン位置を誇るベテランコンビのCBは両SBの平島と中谷のオーバーラップを促す。前線はアンドレとパウリーニョが高い位置でのフォアチェックを終始遂行、愛媛のボールの出どころを抑えにかかった。24分にゴール前で得たFKを徳重が止めたボールにパウリーニョが強烈に振り抜いて同点弾を奪う。その後も両サイドからの展開を軸に愛媛ゴールへと迫った。
 37分に京都は動く。前線へと効果的な上がりを見せていた秋田を下げ、斉藤を投入し、角田をCBに下げた。これによって斉藤と倉貫のコンビがさらに中盤のバランスを良くし、ボールをさらに回せるようになる。

 チーム初の外国人選手ジョジマールの今季8得点目のゴールで先制した愛媛だったが、前回見た時とチームは飛躍的に成長していたように感じた。中盤から前線にかけてボールが繋がるようになっている。途中加入の宮原とここ最近ジョジマールとコンビを組む内村の3人が見せる連携は時に京都を脅威に陥れた。大山と江後の両翼はよく攻撃に絡み、効果的なクロスを再三放り込むシーンも見られたが、後半に入るに従って運動量が落ちた。ベテランGK川北が好セーブを連発するも、京都と対照的にズルズル最終ラインが下がり目になったことが後半の京都をさらに加速させることとなった。

 後半開始からアンドレに見切りをつけ、田原を投入したのは好采配であった。平島と中谷が効果的な攻め上がりを見せていた京都にはワンチャンスを沈めるストライカーの存在が不可欠であった。59分、徐々に集中力を欠く愛媛DF陣を切り裂くかのように平島のクロスからその田原が芸術的なオーバーヘッドを沈めて京都が逆転に成功する。時にジョジマールめがけてのカウンターで同点弾を導き出したい愛媛ではあったが、絶対的なチャンスで京都に上回られる展開に。逆転を許した直後に江後に代わってテクニックに優れた藤井を投入するも打開策には至らなかった。
 76分にとどめの1発をまたも田原が決めて京都に軍配は上がる。愛媛の攻勢を許した時間帯はあったが、終始危なげない展開で単独3位の座を手繰り寄せた。

 京都は勝ち切れなかった42節~45節の4試合が不思議である。逆に言えば加藤監督就任後、実にうまく軌道修正をできているのではないだろうか。不変の存在であるパウリーニョと徳重という存在に加え、アンドレと田原を使い分けることができるのは京都の強みだ。この前線の4人で50点を超えるゴールを生み出している。東京Vがフッキに依存していることを踏まえれば、歯車が噛みあった際のその安定度は上位陣の中でも抜群だろう。
 課題は守備だろうか。この試合でも再三愛媛に突破のチャンスを与えた。ジョジマールが裏に抜け出すシーンが何度か見られたが、高いラインを保つ傍らでスピードのある選手にきちんとチェックできるDFは少ない。底に陣取る石井が最終ラインまでよくカバーリングできていたが、前がかりになった時に食らうカウンターだけには気を付けたいところだ。

 まだ、京都のイレブンに安堵は訪れない。札幌、仙台との対戦も残り5試合には含まれている。取りこぼしは許されない。来年J1で戦いたいのであれば、この勝利で笑顔を見せるのはあまりに油断が過ぎるといっても過言ではない。

奈良のフットボリスタ ~奈良にプロクラブを~⑦

2007年10月24日 | 脚で語る奈良のサッカー


 21日に行われた奈良県1部リーグの結果により、FC橿原を2-0で下したポルベニルカシハラの優勝が決まった。前回吉野に観戦に行ってから、仕事の都合もあり観戦機会が無いままにポルベニルの優勝が決まってしまった訳だが、戦いぶりを見ていると総合力で抜きん出ていたのは確かで、納得できる結果ではある。11試合を消化して4つのドロー試合が効いてしまった2位都南クラブとは勝ち点差3という結果になった。
 これで楽しみになってきたのは11/4に奈良産業大学グラウンドで行われるポルベニルVS都南クラブの一戦。リーグの1位と2位チームが対峙するとあって、実に楽しみになってきた。いつの間にか自分が持っている日程表と実際に行われているゲーム日程が9/23付で変わっているが、そんなこともご愛嬌。是非最終戦を見届けたいと今から心待ちにしている。
<※訂正※ 28日開催の最終戦でJSTが2位に。そのため1位と2位の対戦カードはポルベニルカシハラVSJSTという対戦カードになった。>

 ところで、県内では年始の国立を目指して、高校サッカー選手権奈良大会が順調にその日程を消化している。21日に決勝トーナメントの1回戦が終わり、28日に行われる準々決勝の対戦カードが決定した。
① 一条VS登美ヶ丘 (御所市民運動公園)
② 高取国際VS帝塚山 (御所市民運動公園)
③ 奈良北VS奈良育英 (橿原運動公園多目的G)
④ 五條VS大和広陵 (橿原運動公園多目的G)
上記の4試合が行われる。近年その実力を県内で争っている奈良育英と一条の2校も難なくここまで試合を進めているが、決勝トーナメント1回戦のスコアだけ見れば、一条11-0奈良、奈良育英9-1西大和とこの2校の安定ぶりは安泰である。準々決勝で奈良育英と対峙する奈良北は1回戦の平城戦をスコアレスドローからのPK勝ちという結果で終わっているだけに勝利を収めるのは実に至難であろう。しかもこの一条と奈良育英の2強は順調に勝ち上がれば決勝で対戦となる。共にインターハイ県予選優勝と新人戦優勝と結果を出しているこの2校のファイナルとなるのはほぼ間違いなそうだ。
 ここに対抗馬で推すならば、五條と大和広陵あたりか。五條は新人戦で奈良育英に勝利していることもあり、インターハイ県予選4位の大和広陵と当たるこの対戦カードも決して面白くないわけではない。是非ともこの2強に割って入って欲しいものだ。
 11/11に決勝が橿原公苑陸上競技場で行われる。全国を目指した戦いはこれからが大詰めだ。奈良県代表校が年始に全国の舞台で勇躍する姿をそろそろ見たいものである。

横浜FCに欠如するクラブとしてのプロ意識

2007年10月23日 | 脚で語るJリーグ


 J1史上最速で来季のJ2降格が決まってしまった横浜FC。降格が決まった神戸戦の翌日にサテライトのゲームを観戦するジュリオレアル監督は何と頭を丸く剃り上げていた。「日本の古いしきたり」を重んじたという監督は8月に途中就任してから勝ち星に恵まれることは無かった。史上最速での降格、その責任は指揮官が一番感じているであろうことを思わせるエピソードである。しかしながら、フロントや強化部を含め、クラブ全体としての責任は完全にあやふやにされてしまっている。

 今季、横浜FCが降格の最有力候補であるのは誰の目から見ても明らかだった。浦和との開幕戦で好ゲームを演じ、翌2節では横浜ダービーに勝利し2戦目で初勝利を得たが、それ以降は全く振るわず。5/26のアウェイ大分戦で勝利してから、引き分けを挟んで14連敗。約5ヶ月近くも勝利から見放され、J1史上最弱にして最速の降格劇を演じることになる。昨年は堅守をチームカラーにJ2優勝を成し遂げ、堂々の昇格を遂げたがまさにそのチーム力はフロックに過ぎなかった訳だ。

 横浜FCの今季のレールの外れようは非常に目に付く。最悪の循環といってもいい。まず、昨季のJ2で開幕戦のわずか1試合で更迭された足立監督のことを思えば、今季は泥沼の7連敗に突っ込む8月まで高木監督に指揮権を委ねたことは首を傾けざるを得ない。また戦術的にも手法が異なる外国人監督にその後を任せるのも理解に苦しむところだ。まだチームをよく知る内輪のコーチ陣で白羽の矢を立てた方が得策であったかもしれない。
 なりふり構わぬ補強も全く功を奏していない。奥や久保が序盤戦以外でピッチに立つことがほとんど無かったことを思えば、どういうビジョンでこの初のJ1という舞台を戦いきるつもりだったのか。オ・ボムソクやマルコス・パウロといった8月より途中加入した助っ人ばかりがクローズアップされるもチームとして結果は全く出ていないのだから、この補強策もフタを開ければ失敗といえるだろう。元来J1で戦い抜くには厳しい陣容だった。監督、コーチ陣、フロントを含めた皆が未熟すぎたのである。

 とにかく決まってしまった来季のJ2降格は受け入れるべき事実なのであるが、どうもこのチームは首脳陣に責任感が見当たらない残念極まりないチームである。来季も首脳陣は奥寺会長、坂本社長以下同じ陣容で臨むことを社長自らが21日に表明しているが、それでも「うちはみんな優秀」とまで発言できるこの坂本社長の思惑は常軌を逸している。のらりくらりと目の前の現状を見過ごしてきた責任をクラブは認めようとしない。

 監督と選手はピッチで常に全力勝負する。それが前提でのプロスポーツだ。それで1年間戦って勝てなかったのだから仕方がない。しかし窓ガラスの向こうで戦況を見つめるフロント陣営はまだアマチュアで、自分たちの失敗を全て監督と選手に擦り付けようとしている。もし、それが違うというならば今季の監督と選手たちは全員残留して来季のJ2を1年で勝ち上がるべきである。12月のトライアウトに横浜FCの選手たちがたくさん顔を揃えないことを願うばかりだ。

 プロは結果を厳しく問われる。結果を出してナンボの世界。そのためには死に物狂いで関係者は戦うのだ。経費削減と称して、降格の瞬間に立ち会わなかった坂本社長はじめ横浜FCのフロント陣営が犯したのファンに対する罪は大きい。果たして1年でそれが浄化されるとも思わないが。

嗚呼、素晴らしきかなアマチュアサッカー

2007年10月22日 | 脚で語るJFL


 JFL後期第11節は、数少ない黒星を前期に喫したYKK APを相手に首位の佐川急便SCが3-0と快勝し、遂に佐川急便SCが優勝に王手をかけることとなった。
 2位のロッソ熊本はHonda FCとの対戦で引き分け、順位を下げることはない位置を引き続きキープしたが、3位のアローズ北陸が流経大に快勝したため、その勝ち点差は6に縮まる。勝ち点と順位共に団子状態が続く中位チームでは、FC岐阜が今季途中加入の相川の活躍もあり、ジェフリザーブズに気迫の勝利を収め5位に浮上。J参入の最低ノルマである4位以内を目前にする。3位のアローズ北陸との勝ち点差もわずか2。この勢いをキープすればまだまだ狙える位置にいるだけにここからは毎節が正念場となる。

 しかし、残り6節を残して早々と優勝に王手をかけた佐川急便の強さは凄まじい。東京と大阪が合併しての1年目、"アマチュア最強チーム"の称号は文句なしでこのチームがかっさらうことになろう。熊本の高橋と高いレベルで得点王争いを演じるエース御給を中心に徹底的にフィニッシュを狙い続ける早いパスワークのサッカーが魅力的であるが、このチームにおける主役は前線に近いところでチャンスに絡む中村元の存在が大きい。小柄ながら安定したボールタッチと球離れの早いそのパスセンスは、相手チームからすれば非常に厄介な存在。今後も間違いなくこの選手がキーマンになろうが、果たしてキング・オブ・アマチュアのこのチームから何人がJの舞台に引き抜かれるのだろうかということも頭に浮かべれば面白い。11月に天皇杯で戦う横浜FM相手に是非とも大きなジャイアントキリングを期待する。

 そして20日には関西リーグカップの予選リーグが開幕。全国社会人サッカー選手権を制したFC Mi-Oびわこは共にJを狙うバンディオンセ神戸と並んで好発進。5-0と格下のグラスポ柏原を破った。
 Jを目指す関西のクラブとして、11月に全国地域リーグ決勝大会に参加するこの2チームには是非来季のJFL参入を掴み取ってもらいたい。

 個人的な話、7日ぶりに仕事の出張で滞在した横浜から関西に久々の帰還。現地では多忙につき、みなとみらいエリアのマリノスタウンや東戸塚トレセンなど密かに狙っていた目的地には行けずじまい。せめて日産スタジアムにて行われた横浜FMと清水の一戦だけでも観戦できれば良かったのだが・・・
 何より、今季初めて万博に行くことができなかった。そんな日に限ってこんな大差で勝つことに関しては何も言うことはあるまい。VTRを観れば相手の甲府は散々な出来。

 とにかく万博多目的で行われた関西リーグカップ予選も含めて3試合もサッカーを観れた日を逃してしまったストレスは思いのほか大きいようだ。
 
 

鳥栖に捧げる賛歌

2007年10月21日 | 脚で語るJリーグ


 よくスカパー!にてJ2のゲームを観ていると、観戦頻度の高いチームがあることに気付く。
そのチームの名はサガン鳥栖。下位チームや中位チームのゲームを観るのが面白いという単純な動機付けはない。純粋にこの2チームの創設からの波乱万丈なヒストリーになぜか個人的にドラマを感じるのである。

 クラブヒストリーとなると、鳥栖というチームを筆者が知ってからかれこれもう14年ほどになろうか。かつて浜松市に本拠地を置くPJMフューチャーズというチーム時代に藤枝ブルックス(現アビスパ福岡)とセットで鮮烈に記憶に残していた。当時はベルマーレ平塚(現湘南)、ジュビロ磐田、柏レイソルの3チームを中心にJ昇格を目指して"Jリーグ準会員"というキーワードの下に激しい昇格レースを繰り広げていた。開幕した初年度のJリーグの下に位置するカテゴリーはまだ旧体制のJFL1部(当時の呼称でJ1)で、PJMはその2部(当時の呼称でJ2)での準優勝を遂げ、94年より佐賀県鳥栖市に本拠地を移転し、Jリーグ準会員となった。
 実は当時のPJMの監督は現在スカパー!の解説者としてもお馴染みで、かつての磐田の黄金時代を築いた桑原隆氏でもある。これは古くからの鳥栖サポーターでないと意外と知られていないことかもしれない。そして幼い頃の筆者にとって、PJMという日本の小さなチームにあのディエゴ・マラドーナの実弟ウーゴがいたのは驚きであった。
 このPJMフューチャーズにはその後のJで活躍することとなる選手や個性的なタレントが多く在籍していた。後に横浜フリューゲルスや磐田、神戸など中心選手として数々のJクラブを渡り歩いた前田浩二や、後に福岡のJ昇格に尽力したエース簔口祐介、その後のJ昇格後の福岡のメンバーとなった中込正行、アルゼンチンW杯優勝メンバーとして世界の頂を経験したセルジオ・バチスタなど前述のウーゴ・マラドーナをはじめとしたメンバーが日本の3部に値するリーグでひっそりとプレーしていたのである。
 そのフューチャーズが1995年に"鳥栖"を名乗ってからは、元日本代表の松永成立や元カメルーン代表ステファン・タタウが加入し、Jを目指した快進撃が始まる。翌年に鳥栖スタジアムが完成してからは、当時のJFLでも屈指の平均入場者数1万人を超える白熱ぶりで、C大阪より加入したパナマの怪人バルデスの活躍もあり、Jの舞台は時間の問題かとも思われた。
 
 しかし、鳥栖の運命はここから音を立てて崩れていく。3年連続JFL4位に甘んじたチームは96年の末に親会社PJMジャパンのスポンサード撤退により、経営難に陥った運営法人がわずか1ヶ月余りで経営破綻。チームは解散の道を辿る。これは98年に消滅が決まった横浜フリューゲルスと同じケースであり、非常に若い世代のサッカーファンには知らない方もいるかもしれない。横浜Fの悲劇に全くこの鳥栖F解散の教訓が生かされなかったということを悔いるべきか。本当にこの出来事は日本サッカー界の歴史においてもっと認識されるべきトピックスであり、Jクラブの運営に関して日本の誰もが学ぶべき事件であった。結局クラブは全く違った運営法人による新チームにその将来を委ねることとなった。ここから現在の「サガン鳥栖」の誕生となる訳であるが、99年のJ2初年度以降も厳しい経営状態は続く。04年の累積赤字噴出とJリーグフォトによる暫定出資撤回騒動や社長の交代、それに伴う運営体質の見直し要請やJリーグからの除名危機など数多くの問題が山積みだった。

 「鳥栖フューチャーズ=サガン鳥栖」と個人的には常に脳裏に張り付いている。鳥栖Fは残念ながらJリーグへの切符を掴むことはできなかった。当時Jリーグ準会員でありながら、Jに昇格することなく終わったのは鳥栖Fだけである。もしあのままチームが消滅しなければ、今頃J1でプレーする鳥栖Fという強豪クラブを見ることができたのかもしれない。PJMジャパンという大口の後ろ盾を無くした鳥栖はその教訓からか、株主の小口化が特に顕著であり、株式会社サガンドリームス設立までの2000年代前半から特に経営の主導権を巡ってのトラブルが絶えない。株主からのスポンサードはかつてのそれとは程遠いもので、コンスタントに勝てるチームとはかけ離れた弱小チームになってしまった。チームはその中で長丁場のリーグ戦とクラブ存続の危機との戦いの連続を戦い抜いてきたのだ。山あり谷あり、立ちはだかる障害を乗り越えながら現在の鳥栖が存在する。

 もちろん、鳥栖だけでなく佐賀県中に鳥栖F時代からのサポーターはたくさんいるだろう。かつてその誰もが抱いたJ昇格という夢は現在確かにJ2を戦うサガン鳥栖に受け継がれている。2度の変更を経た今もそのクラブロゴマークには鳥栖Fのチームカラーであったピンク色が生き続けている。
 だからなのか、今もサガン鳥栖には鳥栖フューチャーズの残影が見えてならない。過去の紆余曲折があった歴史の重みを背負いながら、鳥栖はJ1に向かって戦い続ける。いつかJ1の舞台で戦う鳥栖を楽しみにしている。