脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

決勝トーナメントへ大きく前進

2011年10月31日 | 脚で語る奈良クラブ
 29日にKSLカップのグループリーグは第2節を迎え、奈良クラブはDiv2の京都紫光クラブと対戦。前半からペースを掌握した奈良クラブが4-1と勝利し、グループリーグ突破へ大きく前進。関学クラブがAS.ラランジャ京都に勝利したため、グループリーグの突破は最終節の結果次第となったが、初のグループリーグ突破へ大きな勝利となった(2009年KSLカップにて最初からトーナメントという形式は経験)。

 

 京都紫光クラブとは奈良クラブがDiv2で戦っていた2009年シーズン以来2年ぶりの戦い。そういえば最後に戦ったのも太陽が丘でのKSLカップだった(4-0で奈良クラブが勝利)。今季の京都紫光はDiv2で勝点1ポイント差で昇格をあと一歩まで引き寄せながらも涙を呑んでいる。しかしながら、その得点力はリーグ2位につけるほどで十分脅威なもの。前節の関学クラブのようにまずは守りからというわけにはいかないだろうということは予測できた。
 前節から守備陣を入れ替えての一戦。GKには日野ではなく公式戦では2試合目となる星野を起用。前節退場処分を受けた谷山の代役に黒田が久々に右サイドバックに入った。そしてCBには橋垣戸に代わって三本菅が1列下がる形で入り、守備的MFに矢部が先発復帰した。特に最近好調ぶりをアピールしている蜂須賀はこの日も先発。その逆サイドのMFとして辻村剛が出場停止明けで顔を揃える。

 前半から奈良クラブがボールを支配。積極的に攻め続けた。試合の入り方は前節に比べるとかなり良かった。しかしながら先制点までは遠く、あと一歩というチャンスは数知れず。逆に前がかりになった際に京都紫光のカウンターをモロに受ける場面もあり、ヒヤリとさせられる決定機が前半だけで2度ほどあった。前線でボールを持つと京都紫光の種子田は特に危険な存在で、京都紫光のアタッカー陣の良質ぶりを垣間見た。
 先制点は、辻村剛だった。積極的に左サイドで吉田とのコンビから相手を崩しにかかっており、先制点の場面も牧と重なるような形でアタッキングゾーンに入っていった。そして追加点を檜山がお得意の右足で相手GKの頭上を越えるループシュートで奪う。前半終了直後には三本菅のアシストから矢部が見事なボレーシュートを突き刺してリードを3点にして後半へ折り返した。

 しかし、前半から幾度も枠内シュートで脅かされるという場面がなかったこともあって、GK星野が結果的にボールを触る機会があまりなかった。試合の大半で奈良クラブのポゼッションだったこともあり、少し守備が怠慢になる場面は見られたのはチームとして未熟なところか。後半の立ち上がりにはまさにそんな状況下で失点を食らってしまう。ここは少し頂けなかった。
 その直後に蜂須賀が左足で見事なミドルシュートを決めて4点目を決めてリードを再び3点差に。選手も入れ替えながら後半45分間を乗り切った。

 「快勝」といえるかもしれない内容だったが、地域決勝大会のことを考えればもっとシビアに、まだまだ追い込めるような気はした。むしろそうでないとあの過酷な3日間は乗り切れない。決めなければならないところで決定機逸を繰り返す場面を見る度にそう思うのだ。地域決勝大会ではその1点が本当に試合を大きく左右する。そういう意味では前半のうちからもっと得点を重ねることはできたし、守備面でも特に試合の序盤は集中は必要だということを再確認させられた試合だったと思う。
 とにかく、これで2連勝。決勝トーナメント進出に大きく前進した。次の試合は同じDiv1のラランジャ京都。更に意識した戦いでしっかり3連勝で決勝トーナメントへ進んでくれることを期待している。

貴重な実戦期間

2011年10月28日 | 脚で語る奈良クラブ
 奈良クラブはKSLカップの戦いに突入。11月の地域決勝大会を前に是非ともこの大会をじっくり戦ってチームを仕上げたいところだ。22日には関学クラブ(Div2)とのグループリーグ初戦に2-0と勝利。退場で前半のうちに10人という人数的不利を強いられながらもDiv1王者の意地を見せた。

 

 この関学クラブ戦は、守備をきっちり施してきた相手に、序盤こそ試合の入り方に苦しみ、チャンスを与える展開になった。36分にはDF谷山が2枚目の警告で退場処分。よもやの10人態勢に陥る。しかし、そういう意味では地域決勝大会を見込んだ貴重なシミュレーションとなったのかもしれない。41分に中盤にポジションを下げることになった檜山が左サイドから折り返したところに蜂須賀が決めて先制点を奪う。10人になってから先制したが、その後の45分間をもう1点取りにいくのか、それとも守り切るのかという点において難しい試合となった。そこを吉田監督は選手たちによく考えさせてプレーさせていたと感じた。
 後半に入って出場した岡元や嶋などのバックアップ陣も好プレーを披露し、運動量で相手に差を見せて終始攻勢を貫く。追加点はスピードを活かして相手の最終ラインを陥れた嶋が牧のラストパスを持ちこんで冷静に決めた。82分には大塚が昨年の天皇杯1回戦佐川印刷戦以来の公式戦復帰を果たし、積極的なプレーを見せるなど、今後のチームのことを考えると大きな収穫も見られた。地域決勝大会同等のレベルというわけにはいなかないかもしれないが、このカップ戦で目一杯結果を出せれば、11月12日の準決勝まで駒を進めて地域決勝大会に臨むことができる。常に11月18日からの連戦を意識した緊張感のある試合に拘ってカップ奪取を目指して欲しい。

 明日、29日は同じくDiv2の京都紫光クラブとの一戦。2年ぶりの対戦となるが相性だけを見せれば負けなし。しかし、あと一歩で昇格を逃したというだけあるDiv2で2番目に多い得点力には、守備陣の注意が必要かもしれない。この試合に勝利すればグループリーグ突破は決まる。もちろん内容にこだわった結果の勝利を見届けたいものだ。この地域決勝大会までの3週間は非常に貴重な実戦期間だ。

本命不在?を突破する

2011年10月20日 | 脚で語る地域リーグ
 第47回全国社会人サッカー選手権大会がその5日間の日程を終えた。3位決定戦ではShizuoka.藤枝MYFCが愛媛FCしまなみを2-1で振り切って勝利し、3位の座を射止め、関東勢同士の対戦となった決勝戦では東京都1部リーグの東京23FCが関東2部リーグでJリーグ準加盟のS.C.相模原を1-0で破って初優勝を果たした。都道府県リーグ勢の優勝は、96年の教育研究社(京都府1部)以来15年ぶり。Jリーグから数えて4部だった当時に比べると、現在はJ1から数えて6部。かつ5試合全てを無失点で乗り切るというまさに前代未聞の快挙となった。ちなみに無失点で優勝というと昨年の優勝チームであるカマタマーレ讃岐(現・JFL)が記憶に新しい。

 大会後に11月より開幕するJFL昇格への前哨戦、全国地域リーグ決勝大会の組み合わせ抽選が行われ、各グループの顔ぶれとそれぞれの会場が決定した。それぞれの組み合わせは以下の通り。
 【Aグループ】会場:福井・福井テクノポートスタジアム
 ・JAPANサッカーカレッジ(北信越/新潟)
 ・NPO横浜スポーツ&カルチャークラブ(関東/神奈川)
 ・バンディオンセ加古川(関西2/兵庫)
 ・Shizuoka.藤枝MYFC(東海/静岡)

 【Bグループ】会場:兵庫・淡路島アスパ五色
 ・クラブフィールズノルブリッツ北海道(北海道)
 ・奈良クラブ(関西/奈良)
 ・福島ユナイテッドFC(東北/福島)
 ・SC相模原(優遇措置/神奈川)

 【Cグループ】会場:高知・高知県立春野運動公園球技場
 ・デッツォーラ島根(中国/島根)
 ・HOYO AC ELAN OITA(九州/大分)
 ・黒潮フットボールクラブ(四国/高知)
 ・東京23フットボールクラブ(社会人大会/東京)

 日本サッカー協会/第35回全国地域リーグ決勝大会大会概要

 奈良クラブに話を絞れば、北海道リーグ王者、東北リーグ王者、そしてJリーグ準加盟を果たしているチームとの同居。なかなかタフなグループに入ったといえるだろう。どのチームが来ても申し分ないが、間違いなく「楽勝」とは形容できない。限りなく苦戦を強いられる組み合わせだ。しかし、先日の関東遠征で0-6と惨敗を喫した相模原をはじめ、ほとんど対戦実績のないチームばかり。相模原のテストマッチも3日目で臨んだことを考えれば、もう一度同条件下で真剣勝負を仕切り直したいところだ。間違いなく初戦から重要な戦いになる。チャンスは十分にある。相手に不足はない。挑戦者の意識を持って大会に挑まなければならないだろう。

 他のグループに目を向けると、全社枠のスライドによる地域補充枠で出場を掴んだ加古川が北信越リーグ王者・JSCと関東リーグ王者・Y.S.C.C.と全社3位で東海王者の藤枝MYFCと同居することになり、こちらも厳しい組み分けとなった。
 Cグループでは、しまなみの辞退によって出場を果たすことになった黒潮FCが全社優勝の東京23、九州王者のHOYO、中国王者の島根とどれほど戦えるか。その点では全社でビッグサプライズをもたらした東京23には一気に注目が集まるだろう。

 抽選が発表されると、いよいよという感じが漂ってくる地域決勝。「本命不在」と謳われるが、その中でいかに生き残れるか。「本命」である必要はない。何が起こるか未知の大会。この「本命不在」をいかに突破するかだ。

伏兵・東京23、ファイナリストへ -Shizuoka.藤枝MYFCvs東京23FC-

2011年10月19日 | 脚で語る地域リーグ
 第47回全国社会人サッカー選手権大会の準決勝第2試合は、東海リーグを制したShizuoka.藤枝MYFCと、なんと東京都1部リーグというカテゴリーで戦うチームながらこの準決勝まで勝ち上がり、地域リーグ決勝大会の出場権まで得ることになった東京23FC。試合は東京23FCが前半に先制した1点を守り切り1-0で勝利。なんと都道府県リーグ勢ながら決勝戦進出を果たした。

 

 Shizuoka.藤枝は、前日に優勝候補のY.S.C.C.を1-0で撃破。1回戦でアイン食品を相手に延長戦に持ち込まれ、2回戦も1点差で何とか勝利するなど決して楽な戦いではなかったようだ。前日のY.S.C.C.戦の出来は観戦していた方の話によると上出来だったようで、その勢いそのままに準決勝に臨むかと思われた。しかし、この日は守備陣の奈良林、内田、加えて中盤の西山と主力が仕事の関係で欠場していたようで、ベストメンバーが叶わなかった。それでも元徳島、松本山雅の石田祐、また鹿島のアレックスの双子の兄であるアランのコンビは強力。カテゴリーとしては2つ下のチームとの対戦だけに地力ではShizuoka.藤枝が勝ると予想されて当然のカードだっただろう。
 これに対して、ここまで快進撃を見せる東京23は、初戦のFCマキシマ戦、続くFC刈谷戦、前日の三菱長崎戦を全て無失点で切り抜けここまで来るという見事な勝ち進み方。監督を務めるのはFC東京やFC刈谷で活躍したアマラオであり、選手の中にもJリーグ、JFL経験者は多い。来季にはもちろん関東2部リーグへの昇格を目指すチームだけにこの大会で上位に入ることは大きな自信に繋がるはず。さすがに注目度が高い準決勝カードとなった。

 試合が始まると、先にチャンスを掴んだのは東京23。左サイドをフリーで抜け出した三澤がGKとの1対1を作りながらもシュートを決められない。しかし、いきなり決定的な場面を作り出した東京23の攻撃にメインスタンドは盛り上がった。

 
 
 
 前半の序盤、いきなりのチャンス。
 しかし、ここを東京23・三澤が決められない。

 かと思えば、やはりShizuoka.藤枝も黙ってはいない。司令塔・納谷を中心に素早いパス回しでボールを持ちこむと、16分、17分と連続して橋本が決定的なシュート。どちらも決まってもおかしくない場面だったが、なんとか東京23は凌ぎ切った。

 
 Shizuoka.藤枝は橋本が前半のチャンスを決められず。

 じわじわとShizuoka.藤枝陣内へ仕掛けていく東京23。第1試合の相模原同様、こちらもかなりのタフネスを披露してくれる。諦めずに仕掛けるそのアタックの連続に先制点のチャンスは転がってきた。25分、猪股の左CKからファーサイドで中山がヘッドで合わせて先制。まさか、いや、必然の先制点が東京23に生まれた。

 
 
 
 この打点の高さ。中山の頭で東京23が先制。
 本当に都道府県リーグとは思えないクオリティ。

 35分には、前半の序盤と同じような場面を東京23・三澤が左サイドで迎える。完全にフリーでGKと1対1になったが、こちらもシュートは右に大きく外れてしまう。この日の三澤はツキに見放されていたが、追加点が奪えない東京23は守備面で凄まじい集中力を披露。常にエリア付近に6人ほどで守ってしまうという堅守ぶりでShizuoka.藤枝の攻撃を阻み続け、1-0とリードして前半を終えた。

 
 Shizuoka.藤枝のアランを2人がかりで封じる東京23の選手たち。

 
 Shizuoka.藤枝の大ベテラン・石井。
 Jでは通算297試合出場という選手。

 
 FC東京と違う東京のチームで新たな船出となったアマラオ監督。
 序盤にはチャンス逸の連続に苦虫を噛み潰した表情を見せた。

 後半に入って、両チーム共に疲労の色が濃くなってくるが、それでも一歩早くボールに触っていたのは東京23の方だった。セカンドボールをしっかりホールドできなくなったShizuoka.藤枝をいなし続ける。69分には山本恭が強烈なミドルでShizuoka.藤枝ゴールを強襲。これはShizuoka.藤枝・GK豊瀬がかろうじてセーブするが、最後まで東京23はスタンドを沸かせ続けた。

 
 豪快なシュートでスタンドを沸かせた東京23・山本恭。
 まだ大卒2年目の選手だ。彼のような若い選手が多い。

 
 エリアまで勝負を仕掛けるFW池田。彼も1年目の選手だ。

 最後まで粘りの守備でShizuoka.藤枝を沈黙させた東京23が80分間を走り切り、勝利。もはやアップセットではない。驚きもない。まるでどこかの地域リーグの強豪チームのようだ。さすがに東京23ベンチはお祭りムードになった。

 
 かつてtonan前橋に所属していたマルキーニョが東京23でプレーしていた。

 
 地域決勝のことよりもまずはこの大会の優勝。
 東京23は昨季の関東社会人大会のリベンジに燃えている(はず)。

 これで東京23は明日の決勝戦を相模原と対戦することになった。実はこの2チーム、既に因縁の仲である。昨季の関東社会人サッカー大会、つまり関東リーグ昇格を懸けた都道府県リーグ勢の戦いで2回戦で相模原と対峙した東京23は1-6と惨敗を喫しているのだ。今大会は絶好のリベンジの舞台。ここでリベンジ達成などということになればインパクトは絶大だ。
 また、彼らはもちろんカテゴリーとしても上を目指すチームであるが、詳しい方と一緒に観戦させてもらった際に興味深い話をいくつか聞いた。まずは、彼らがきちんと運営体制に注力しており、仕事の斡旋がしっかりできていることが戦力的に充実しているポイントだという。その顔ぶれは、元JリーガーからJFL選手、そして比較的若い大卒1年目から2年目の選手が大半であり、仕事との両立をさせながらサッカーに打ち込んでいるという。もちろん社会人カテゴリーとしては当然の理論であるが、昨今、仕事をしっかり斡旋できないチームがJFLでもあるということを考えると、彼らがこれを結果も示しながら体現しているのはなんとも皮肉な話である。
 しかしながら、暗い部分もある。雇用面の充実という点で首都・東京の強みは発揮されているが、チーム名に表象されている「東京23区」での活動はなかなか難しいようだ。練習環境や試合会場の確保は23区内ではかなり困難らしく、区外での練習は当然ながら、将来JFLを目指す上では本拠地をどこに構えるかという問題にも直結している。改めて関東の施設・グラウンド確保の難しさを彼らのエピソードから深く実感したのだった。
 対するShizuoka.藤枝はここで敗れはしたものの、地域決勝の出場権は東海リーグを制覇したことで持っている。相模原と比べればまだ差はありそうだが、こちらも経験者が多く非常に厄介なチームになるだろう。この試合ではメンバーのやり繰りに難が出たようだが、きっちり地域決勝では調整してくるに違いないと思う。これまで未見のチームだったがゆえに、もう少し他の試合でのShizuoka.藤枝を見ておきたかったなとも思った。

 
 東京23だけでなく、このShizuoka.藤枝とも対戦の可能性はある。
 奈良クラブは対峙した際にきっちり勝てるだろうか。

 

相模原、見せつけるその実力差 -S.C.相模原vs愛媛FCしまなみ-

2011年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 第47回全国社会人サッカー選手権大会(通称:全社)が15日から岐阜県各会場で開催されており、32チームの社会人チームが参加して戦っている。4日目の準決勝は大垣市浅中公園総合グラウンド多目的広場で2試合が行われ、第1試合では関東2部リーグでJリーグ準加盟を果たしているS.C.相模原が四国リーグ王者の愛媛FCしまなみを3-0で下して決勝進出を果たした。

 

 快晴の大垣。名神高速を大垣ICまで走れば会場の浅中公園はすぐそこだ。名神高速の脇にこの準決勝の会場である総合グラウンド多目的広場と決勝及び3位決定戦が行われる陸上競技場がある。長良川球技メドウを彷彿とさせる少し傾斜のあるメインスタンド(柱が少々邪魔だったが…)の先にはコンディションの良さそうな天然芝のピッチが広がっていた。
 この準決勝に駒を進めたのは、まずS.C.相模原。既に説明不要のJFL以下のカテゴリーでは神奈川県リーグ時代の昨年にJリーグ準加盟を果たした規格外のチームだ。先週も関東遠征を行った奈良クラブに6-0とその格の違いを見せつけ、明らかに昨季と比べても大幅にブラッシュアップされた印象だ。特に中盤に鎮座する佐野の加入(J2・北九州からレンタル加入)は大きく、これまでの坂井に加えて大きなゲームメイカーが加わった。GKにもかつて磐田や愛媛で活躍した山本が加入しており、バックアップも含めてその層は厚い。初戦の六花亭マルセイズ戦から危なげなくここまで3連勝。昨季は準決勝で現在JFLの讃岐に零封で完敗を喫した。今季もJFAの優遇措置で地域リーグ決勝大会への切符は掴んでいるものの、実力を誇示するべくこの大会は本気で優勝を目指しているようだ。
 対する愛媛FCしまなみは四国リーグの王者。1回戦のトヨタ蹴球団戦から3戦連続で1点差を切り抜ける辛勝劇の連続で準決勝まで這い上がってきた。特に2回戦のサウルコス福井戦、そして前日の準々決勝・FC KAGOSHIMA戦は延長戦までもつれ込む厳しい試合。間違いなく選手たちの疲労は極限まで来てたと思うが、地域決勝への辞退が報道されており、そうれであれば、事実上この大会が今季最後の公式戦になるだけに優勝で2011年を締め括りたいところ。

 ところが試合は開始早々から相模原のペース。まるで4日目と感じさせない彼らのボール回しには溜息が出るほどで、中盤の佐野、水野、吉岡からどんどんロングボールがしまなみの最終ラインとGKの間を狙って放り込まれる。そこに森谷、齋藤の両FWが走り込んでチャンスを作るのだが、フィニッシュのシュート以外はミスが少なく、その高精度に彼らのタフネスはおろかその技術の高さを再確認させられた。

 
 疲れ知らずの相模原、坂井がボールキープ。

 
 右サイドからチャンスボールを入れ続けた水野。
 柏に在籍する水野晃樹の実兄。

 8分に齋藤がハーフラインからのパスに呼応して左サイドをドリブルで持ち込む。最後のシュートこそ右に外れたが、彼らの先制点は時間の問題だった。12分にその齋藤がシュートを決めてあっさり相模原が先制。14分には佐野からのロングパスを森谷がGKと1対1に持ち込むチャンスを作るが、ここは決められない。少し森谷、齋藤の両FWにこそシュートの場面で連戦の疲れは感じられたものの、チャンスを圧倒的に作る相模原の前にしまなみは防戦一方となった。

 
 驚異的な得点力を誇る相模原・FW齋藤。
 この日も2得点と存在感は絶大。

 
 森谷が佐野のパスに反応して迎えた14分のチャンス。
 これは決定的だった。

 18分には右サイドの水野から絶好のアーリークロスが齋藤へ。齋藤はこれにボレーで合わせようとするが、あと数センチ合わずという場面。隙あればチャンスを作る相模原、27分には相手DFのミスを奪った齋藤が左サイドのゴールライン付近まで持ち込むと、中央へパスと思いきや自分でシュート。これが相手DFに当たりながらもゴールへ。執念も込められたかのような見事なゴールだった。

 
 
 GKと相手DFをぶち抜いた齋藤の2得点目。
 相模原はこれでさらに優位に。

 しまなみも相模原のボールを奪って即座にカウンターに繋げようとするが、工藤、奥山を軸に据える守備陣を突破できない。前半40分のハーフタイムを待たずして最初の交代を施す展開を強いられ、前半は2点のリードを与えて折り返すことになった。

 
 しまなみもキャプテンの山口を中心に好機を狙うが…

 後半に入っても相模原のペースは落ちず、55分に坂井がしまなみのエリア内まで持ち込むと、中央へ走り込んだ吉岡にパス。吉岡が強烈にこれを蹴り込み3点目を奪った。その後は、富井や村野、松本と徐々にバックアップの選手たちを投入する余裕の展開。しまなみは後半の中盤から相模原陣内へ度々ボールを運んだが、最後まで決定的な場面を作れず、試合は3-0で相模原が勝利を掴んだ。

 
 
 工藤(上)と奥山(下)のCBコンビは安定感を欠かずに無失点。

 
 途中から出てくるMF村野。
 視野が広く、彼のプレーも相手チームにとっては厄介だ。

 
 しまなみは同大出身の北森が途中から出場。
 しかしながら、状況を変えられず。

 昨季からの躍進、そして先週の奈良クラブとのテストマッチを見ていても、もはや当然というような相模原の全社決勝進出。少しこの出場チームの中でも頭一つ抜け出た実力のような気がする。特に中盤から前のミスの少ないアタッカー陣は誰もが強烈。そしてそのほとんどがJリーグ経験者だ。ポゼッションで完全に自分たちのペースにできる力がこのチームにはある。先に先制点を奪われたらなかなか持ち直すのは難しいだろう。さて、4日目とは思えない強靭なスタミナと衰えぬ実力を見せている相模原。明日の決勝戦ではいかに戦うか。
 そして、しまなみは悔しい零封負け。序盤からかなり全体的に動きが重かったように思う。しかし、ここまで3日間で3試合をこなしてきたのだからそれは当然。まだ彼らには3位決定戦が残っており、ここで愛媛への帰還を強いられるわけでない。まだ正式発表がされていないものの、選手のツイッターでの発言、そして高知新聞の報道などから11月から始まる地域決勝への出場が辞退する方向と見られている。彼らの最大のモチベーションは、この大会での1つでも上の順位だろう。

 
 3位決定戦でここまでの粘り強さを見せられるか、しまなみ。

三冠の夢潰える... -G大阪vs浦和-

2011年10月10日 | 脚で語るガンバ大阪
 Jリーグヤマザキナビスコカップは水曜に行われた準々決勝に続き、9日に準決勝2試合が行われ、埼玉スタジアムではG大阪と浦和が対戦。浦和が2-1でこの試合に競り勝ち決勝戦への切符を掴んだ。決勝戦は10月29日に名古屋に勝利した鹿島を相手に行われる。

 

 先週のリーグ戦で顔を合わせたばかりの2チーム。しかしながら、両者陣容は異なっており、G大阪に至っては遠藤、イ・グノを代表招集で欠く他、加地、明神を故障離脱で欠くという状況。それでも地力を発揮して水曜の磐田戦は逆転勝利してこの準決勝に駒を進めた。この日は、磐田戦で見事な逆転勝利へのアプローチを描いたアフォンソを先発で起用。中盤にも磐田戦に続いて佐々木を起用し、その穴を埋めようとした。
 対する浦和は、先週のG大阪の対戦時と違って、代表招集で原口を欠きながらも、エスクデロが前線で先発。加えて梅崎、鈴木、濱田が先発に名を揃えた。

 
 久々に足を運んだ埼玉スタジアム。
 しかしながら、ホームゴール裏以外は空席が目立った。

 試合が始まると、序盤から浦和のペース。エスクデロがキレのあるドリブルで自陣からボールを運びリズムを作る。開始6分に強烈なシュートを放つと、G大阪はこれをGK藤ヶ谷がかろうじてセーブ。立ち上がりからリーグの不調を吹き飛ばすほどの浦和の執念が伝わる攻勢だった。

 
 キレキレだった浦和・エスクデロ。
 2日の万博での試合では出番すらなかったのだが…

 
 中澤がデスポトビッチと競り合う。
 この雰囲気に一番燃える男は彼だったが…

 17分には浦和は梅崎がG大阪ゴールを強烈なシュートで強襲。これはバーの上だったが、エスクデロだけでなく先週は先発でなかったこの梅崎も真価を発揮するプレーぶりで浦和を牽引。21分には藤ヶ谷がエスクデロのシュートを弾いたところをこの梅崎が決めて浦和が先制に成功する。
 対するG大阪は驚くほど見せ場が作れない。よく水曜は磐田に勝てたなという沈黙ぶりで浦和の前にほとんどシュートまでという場面を作れない。挙句には38分に梅崎のシュートをエスクデロが触る形で追加点を決められる。前半だけでまさかの2失点。それどころかリーグ最多得点のチームがまさかのシュート0本で終わってしまう。そこで戦う2チームの姿は7日前のそれとは全く対照的な出来となっていた。

 
 マルシオ・リシャルデスは周囲を活かすプレー。
 相変わらず技巧派だ。

 
 この数試合、出色のパフォーマンスを見せていた二川。
 無念の途中交代…これには疑問。

 
 今季初の先発出場となったアフォンソだが、見せ場を作れず。

 0-2で後半へ折り返したG大阪は、後半の頭から高木に代えて大塚を投入。武井をボランチから右サイドバックへ移動させ、中盤をダイヤモンド型にしてリトライ。そのトップ下の位置に入った大塚が積極的にボールに絡んでリズムを引き寄せようとする。後半開始直後には中澤のヘッドが惜しくもゴール右隅へという場面が。しかし、点差は2点。1発勝負のこの試合をひっくり返すためには3点が必要。これが大きくのしかかる。57分にはエスクデロのシュートがG大阪ゴールを襲う。62分にもマルシオ・リシャルデスの折り返しに梅崎があわやゴールというシュートもポストに当たるという場面。後半も未だ浦和のペースで試合は進んだ。

 
 中澤がシュートを決められず、この悔しがり様。

 
 後半から出場した大塚。
 ボールキープの面で力を発揮。得点も。

 
 佐々木の裏を狙う飛び出しもほとんどハマらず…

 この展開に指揮官も焦りを隠せなかったのか、70分に二川に代えて平井を投入する不可思議な采配を執ると、80分にはアフォンソに代えて川西を投入。ラフィーニャ、川西、平井の3トップへ。敗色濃厚となったアディショナルタイムにラフィーニャのキープからボールを受けた大塚がシュートを決めるが時すでに遅し。1-2で浦和の前に12試合ぶりに敗戦を喫することになった。

 
 ラフィーニャもなかなかシュートまで持ち込めない。

 
 
 平井、川西を入れるFW投入策も勝利には繋がらなかった。

 
 試合終了。G大阪の三冠の夢は潰えた…

 リーグ戦で驚愕の得点力を発揮するG大阪もさすがに主力4人を抜いての連勝は厳しかった。それ以上に浦和のこの試合にかける執念を随所に感じた試合で、特にエスクデロや梅崎など先週の万博の試合で控えに甘んじていた選手の奮起が凄まじかった。G大阪も交代策に決定打がなかったのは痛い。強いて言えば、大塚が堂々たるプレーで得点まで生み出したのは収穫だろう。
 決勝は、浦和と鹿島という対戦カードになった。しかしながら、浦和のホームゲームとしての埼玉スタジアムに3年ぶりに足を運んだが、入場者数が23,879人というのは本当に寂しいものがあった。2階席はほとんどが空席。かつてはこのカードに6万近い入場者が入っていたことを考えると、今季の浦和のリーグ戦績は観客動員に大きく影響していることを実感する光景だった。例年に比べ、少し早く決勝が行われるナビスコカップ。降格回避へこの大会の優勝で弾みをつけたい浦和にとっては大きな勝利だっただろう。

4年ぶりのカップウィナーへ、まずは1勝 -NC QF G大阪vs磐田-

2011年10月05日 | 脚で語るガンバ大阪
 ACL出場組が揃って準々決勝を戦ったナビスコ杯。万博では磐田を迎えてG大阪が挑戦。試合は佐々木、ラフィーニャの得点などでG大阪が快勝。9日(日)に行われる準決勝に駒を進めた。今日の結果、準決勝では浦和と対戦することが決まった。

 

 雨の中の試合となったナビスコ杯準々決勝。この試合には日本代表、韓国代表とそれぞれの招集で遠藤、イ・グノが欠場。前線には平井が久々の先発出場となった。骨折で戦線離脱の加地の代役には高木が右サイドバックを務め、また、驚いたことに試合前のアップ中に明神が負傷して急遽橋本が先発に名を連ねるという異常事態。「飛車角抜き」とはまさにこのことで、暗雲立ち込める試合前となった。
 対する磐田は、代表招集の駒野以外はほぼ現状のベストメンバーという布陣。いつの間にか負傷していた金園もベンチに控えてきた。

 
 加地の代役を務めたのは高木。
 やはり推進力という点では厳しいか。

 
 磐田は昨季のカップ王者。
 今季も万博ではG大阪相手にドロー。

 試合は、昨季のカップウィナー・磐田の前に「飛車角抜き」のG大阪が前半から苦戦する。遠藤、明神の不在が響き、中盤でボールをしっかり捌ける、溜めが効く選手がいない。復帰2戦目の橋本もまだ本調子という訳にはいかず、突然の先発出場になかなか浮き足立っていた印象だ。すると、隙を突かれたG大阪は、7分にCKからの展開から小林のクロスを那須にヘッドであっさりと決められてしまった。

 
 急遽先発出場を果たした橋本。
 序盤こそ苦戦していた様子も、結果的には無難にフル出場。

 
 イ・グノの代役として先発を果たした平井。
 しかし、59分にアフォンソと交代。

 3日前の浦和戦を思い起こせば、攻撃は著しい迫力不足。いつもならばラフィーニャを追い越してイ・グノがフォローに来る場面がよく見られるが、この試合ではラフィーニャもかなりボールを受けるまでに苦労していたようで、ボールを持ってもなかなか出しどころがない。武井がミドルを狙うなどするが、シュート自体が思うように打てない。それどころか先制されてから如実に磐田に押し込まれ、山崎を中心にサイドをえぐられる。攻撃面での停滞感が守備面に負担をきたす前半だった。それでも38分に、好調の二川が強烈なミドルシュートをエリア手前左手から打っていく。徐々にエリア手前でミドルシュートを狙えるようになっていたG大阪は、43分に佐々木が狙い澄ましたシュートをゴール左隅に決めてなんとか前半のうちに同点に追いついた。

 
 磐田の先制点を決めたのは那須。
 今季はG大阪相手に2得点。

 
 二川はこの試合でも輝きを放つ。
 ミドルはもちろんのこと、後半アフォンソへ見せたパスは圧巻。

 
 下平はFKを蹴りにいくなど積極性が目立った。

 それでも時折ベンチを見ると、指揮官は納得いかない様子で、被っているキャップを叩きつけたりする仕草も。なんとか前半のうちに試合を振り出しに戻したとはいえ、この攻撃面での停滞感を危惧したのか、59分に平井を諦めてアフォンソを投入する。すると、この采配が見事に当たった。
 アフォンソが入ってから前線で出しどころに困っていたラフィーニャが水を得た魚の如く調子を上げる。共にブラジルコンビで息の合ったプレーで磐田陣内を崩しにかかると、67分にはそのアフォンソからの見事なスルーパスが通って、ラフィーニャが逆転弾となるシュートを決めた。

 
 閉塞感を打ち破ったジョーカーはアフォンソ。
 常に飛び出しとラフィーニャを意識して勝利に貢献。

 
 67分に逆転ゴールを決めたラフィーニャがアフォンソとダンス。
 このコンビ、残り試合の切り札となるだろう。

 
 磐田のGK川口はベテランの風格。落ち着いている。

 明らかに磐田の運動量とマークの甘さが目立ってきた後半。76分には相手のオウンゴールもあって3点目を奪う理想の展開。前半の戦いとは打って変わっていつもG大阪の攻撃力が息を吹き返していた。磐田も金園を投入するなどシフトチェンジを試みたが失敗に終わる。

 
 76分、オウンゴールの場面で仲間に祝福される中澤。
 しかし、「俺じゃない!」と叫んでいたとか(笑)。

 
 中澤の熱さはチームに伝播する。頼もしい男。

 
 G大阪は佐々木(左)の活躍が目立った。

 結果、終わってみれば3-1の勝利でG大阪が準決勝進出決定。終盤には今季出場機会が無かった星原をピッチに送り込む余裕すら見せた。遠藤、イ・グノ、加地、明神までもが不在ながら、前半の軌道修正できたことは大きな収穫ではないだろうか。是非ともシーズンの残り試合でアフォンソ‐ラフィーニャのユニットをここぞという時に使って欲しいと思わせてくれる流れの引き寄せ方だった。この日は平日、雨という条件も重なり、入場者は4,112名と少なかったのは残念だが、これで週末は先日の再戦、敵地・埼玉スタジアムでの浦和戦という準決勝カードが決定。アウェイ席だけでこれぐらいの人数が駆けつけ、決勝進出へ向けた大きな声援を見せてくれるような熱戦を期待する。

 
 4年ぶりのカップウィナーへあと2戦。
 浦和とのセミファイナルは盛り上がりそう。

J20年の矜持 -G大阪vs浦和-

2011年10月04日 | 脚で語るガンバ大阪
 首位を走るG大阪にそれを勝点1ポイント差で追う2位・名古屋と3位・柏、そして4位・横浜FMあたりまでの4強が優勝争いを繰り広げるJ1。第28節を迎えていよいよ佳境、万博ではG大阪の20周年記念試合を兼ねて14位・浦和との試合が行われ、1-0でG大阪が勝利した。これでG大阪は浦和戦公式戦11試合無敗(8勝3分)。加えて1993年のJリーグ開幕戦の初勝利から足掛け19年目にして300勝を達成。150勝の際も含めてそのいずれも浦和戦。記録の面でもその相性の良さを窺わせる20周年記念試合となった。

 

 試合前には20周年記念のイベントとしてG大阪歴代ベストイレブンの投票結果が発表されていた。西京極から阪急とモノレールを乗り継いで約50分ほどで駆けつけると、既にシジクレイのインタビューが行われており、結果の発表中。結果的に、GK藤ヶ谷 DF加地、シジクレイ、宮本、山口 MF橋本、明神、遠藤、二川 FWアラウージョ、エムボマという内容だった。やはり2005年のリーグ優勝時のメンバーが人気、実績ともに圧倒的な支持率。それを考えると、低迷期のG大阪を支えた稲本(現川崎)のアーセナル移籍がもう10年前の話だということにも気付く。リーグ優勝以来、新規のファンが増えたなという印象で、メインスタンドは特にその印象が著しい(アラウージョのビデオレターの際に反応が薄かったのは寂しかったが…)。しかしながら、当日のマッチデイプログラムには礒貝や本並、木場、實好に永島という懐かしい顔ぶれも登場していた。20年という歴史の重みをしみじみと感じる(ちなみにG大阪の全身である松下電器サッカー部は奈良県リーグからのスタート)。続いて、キックオフ前にはヘリコプターによる試合球の投下など非常に手の込んだ企画でスタジアムは盛り上がる。もっとも、スタジアムDJの仙石氏のカウントダウンとヘリコプターの呼吸が一切合わず、何度もヘリコプターが行っては帰って来てという流れには笑ってしまったが、何よりそのアクシデントに間髪入れず「やり直せ」コールの大合唱を始める浦和サポーターの秀逸なブーイングも含めて、2000年代のJリーグを牽引してきた両者がこういう形で対戦できるのは感慨深い。思えば、1993年5月16日のJリーグ開幕戦もこの対戦カード。個人的にJリーグを初観戦したのも1993年ニコスシリーズ第3節の浦和戦だった。という訳で非常にこの試合は楽しみでもあった。

 
 20周年記念ベストイレブン。
 エムボマのランクインは時代を感じる。

 
 シジクレイが試合前にインタビューに応える。
 試合キックオフ時にはキックインも。

 
 
 ヒヤヒヤしたヘリからの試合球投下。
 確かにスタジアムDJとの呼吸を合わせるだけでも大変(笑)

 肝心の試合の方は、前回対戦時には1-1の引き分けだったこともあって、両者ライバル意識も相まって激しい試合になったことは確かだ。G大阪はこの試合に合わせて下平が左サイドバックに復帰。そしてセンターバックにはこれまでの高木ではなく中澤が戻ってくるなど、前節・甲府戦の敗戦を意識したメンバーチェンジでほぼ現状のベストメンバーといえる内容。何よりも昨季からの負傷で長らく戦列を離れていた橋本のベンチ入りがトピックスだった。
 対する浦和は、なんとここまで直近8試合で1勝3分5敗という厳しい戦績。今季は序盤に3連敗を喫した後で14試合でわずか1敗と負けてはいなかったが、9試合の引き分けとほとんど勝利には至っていない。ここに来てまた直近6試合では未勝利と不調に喘いでおり、柱谷GMの解任などチームは揺れている真っ只中といえるだろう。何より試合前の時点で降格圏内の16位・甲府との勝点差がわずか2ポイントという状況だった。3試合連続無得点という状況を打開すべく、この試合ではエスクデロではなく途中加入のデスポトビッチが先発に名を連ねた。

 
 下平、中澤がカムバック。
 優勝争い真っ只中で連敗は許されない。

 これまでの系譜からしても、1点を争う試合になるだろうと予感したが、予想以上にこれまでの浦和戦と比べても力の差が歴然という内容。圧倒できるリードこそ作れなかったが、前半のうちに先制できたのはG大阪にとって大きかった。28分に驚愕のロングパスが遠藤から出され、これに走り込んだイ・グノが流し込んで先制点を奪う。

 
 
 
 圧巻の遠藤のパスからフィニッシュはイ・グノ。
 相変わらず決定力の高さを見せてくれる。

 
 山口と組んだのは中澤。
 やはり信頼感と安定感では高木にリード。

 前半からG大阪が浦和を圧倒。得点こそ1点に留まったものの、浦和にチャンスをほとんど作らせず後半へ。すると、浦和は野田に代えて山田暢を投入。64分には梅崎を小島に代えて投入してくるなど浦和も成せる術を使って攻勢に転じようとする。しかし、後半も依然変わらずG大阪のペースは変わらない。その攻勢にラフィーニャが再三チャンスをフイにする場面が相次ぎ、溜め息が漏れる。彼さえフィニッシュでミスが無ければもっと大差がついていたゲームだった。結果、1-0でG大阪が勝利をもぎ取る。これで浦和戦は11戦無敗ということになった(8勝3分)。

 
 浦和は、司令塔・柏木がドリブルで切り開こうとする。

 
 原口も自由に持たせれば怖い選手。
 しかし、その自由を与えられなかった。

 
 試合ごとに成長が感じられる武井。
 バックアップメンバーを返上する今季の活躍。

 
 
 ああ...ラフィーニャらしくないシュート場面のミスが相次ぐ。

 この試合、先制点の場面で度肝抜かれるロングパスを通した遠藤もさることながら、二川の存在感が凄まじかった。ボールを簡単に取られないキープ力、パスコースを瞬時に見出す視野の広さ、また、そこにパスを出せる技術と随所で二川らしさを披露。アディショナルタイムにベンチに下がるまで約90分間その存在感を見せつけてくれた。
 また、アディショナルタイム直前には負傷で長らく戦列を離れていた橋本が今季初出場。万感の拍手でピッチに送られる。入っていきなり左からの折り返しをダイレクトシュートという場面があったが、これはミートせず。優勝を狙うG大阪にとって心強い頭脳派が戻ってきた。

 
 二川は今季も衰え知らず。
 30歳を迎えた今季、さらに円熟味を増すプレー。

 
 大きな拍手と声援で迎えられた橋本。
 20周年記念試合ということで采配も粋だ。

 ところが残り6試合というところでこの試合で足を痛めた加地が骨折と診断される事態に。この試合でようやく下平が左サイドバックに戻ってきたにも関わらず、再びサイドバックの人材不足に泣くことに。これは何気に痛い。果たして代役は誰が務めるだろうか...と考えを巡らせるところにG大阪の悩ましい一面がある。次節は3位につけG大阪を4ポイント差で追いかける名古屋とアウェイで対戦。ここに競り勝ち、柏とのデッドヒートを制することができるか。6年ぶりの優勝は確実に意識できるところまで迫っている。

 
 
 ラフィーニャが途中加入にも関わらず、この2人で20得点。
 この2人の決定力にかかっている。
 
 

初めてのゴール共演 -京都vs水戸-

2011年10月03日 | 脚で語るJリーグ
 J2の第30節、14位・京都がホーム西京極にて18位・水戸を迎え撃った一戦。ここまで7月10日の栃木戦よりホームでは負け知らずだった京都だったが、水戸の吉原、鈴木の2トップの得点によって0-2と完敗。京都は3試合ぶりの敗戦。対する水戸は10試合ぶりの勝利となった。

 

 13:00というキックオフ時間が示すように、暑さが影を潜めてようやく秋を感じさせる10月に突入。絶好の好天になった西京極だったが、ここで対峙する両者の順位は共に14位と18位という芳しくない状況。しかしながら、個人的には長期の負傷から復帰した元G大阪の吉原、そして今季より加入した元日本代表FWの鈴木隆という豪華絢爛な2トップがJ2で見られるとは思えなかった。水戸の試合を生観戦するのは3年ぶり。前回も同じくここ西京極だった。
 ホームの京都は前節、千葉を1-0と振り切った。明らかにこの順位にいるのはおかしいという陣容とサッカー。西京極に足を運ぶ度にその勝負強さを見せてくれるチームだが、アウェイでの戦績が振るわず、好調さを窺わせる中にも27節のFC東京戦では1-6と大敗するなど、決して一筋縄でいかないようだ。しかしその大敗後の草津戦より新布陣の3-5-2が機能し出したようで、宮吉と久保の2トップも好調の様子。この日は秋本の負傷の影響で最終ラインに入っていた安藤が出場停止だったが、内野、森下、酒井という3バックにチョン・ウヨンをアンカーに置いて伊藤、内藤、中山、駒井が並ぶ中盤。前線では宮吉と久保が組んだ。
 対する水戸は5連敗を含む9戦勝ちなしという厳しい状況。しかしそのほとんど敗戦が1点差という試合で、上昇のきっかけは掴めそうな予感。現にこの2試合は岡山、大分に引き分けており、内容はそこまで悪くなさそうだ。練習場が先日の台風の被害でメインの練習場であるホーリーピッチが水没し、那珂総合公園やツインフィールドを転々としながらトレーニングを続けているようで、苦しい戦績に輪をかけて逆境は続く。この日は鈴木隆が先発出場で吉原とコンビを組む。ここまでこの2人が先発で並ぶのはあまり無かったようなので、これには驚いた。ゲームキャプテンは一昨年まで関西大にいた西岡が務めている。

 前半から互いに見せ場を作る試合となった。14分には京都の最終ラインの隙間を縫うように吉原が中央へ入り込み、小澤からのパスをシュートまで持ち込む。ここは京都・GK水谷が防ぐが、吉原のスピードは十分目立っていた。対して京都も30分にチョン・ウヨンが強烈かつ正確なミドルシュート。水戸・GK本間がナイスセーブに遭うものの、直後のCKから京都はDF内野がポスト直撃の惜しいヘディングシュート。35分にはドリブルで中央へ入った伊藤から久保へのスルーパスから久保がシュートを放つが、ここもわずかにバーの上へとシュートが浮いた。水戸は43分にカウンターからの攻撃。ロメロフランクのドリブルからパスを受けた鈴木隆がシュート。わずかに左に逸れるが、水戸の吉原と鈴木隆のコンビは十分輝きを放っていた。

 
 京都の見せ場を作るためには駒井の存在は不可欠。

 
 久保は再三シュートを狙う。
 この3試合で3得点と絶好調だったが…

 
 前半から屈強な当たりの強さを見せていたロメロフランク。
 ドリブルで持ち込む場面も多く見られ、印象に残った。

 どちらも得点にあと一歩という前半を折り返して、後半に入ると水戸は先手を打ってくる。村田に代えて鶴野を投入して右サイドバックへ。そして右サイドバックを務めていた西岡がボランチへとポジションチェンジ。すると、後半開始早々の48分にロメロフランクから小池に繋ぎ、小池から再びロメロフランクに返すと、ロメロフランクがこれを強烈なシュート。これは京都・GK水谷のセーブでサイドラインに逃れたが、直後のスローインから水戸はボールを即座に入れると、京都の守備陣が整う前にロメロフランクから攻め上がった鶴野へ。鶴野の折り返したボールはファーでフリーになっていた吉原が頭で合わせるには十分すぎるボールだった。これを吉原がヘッドで決めて今季初得点。水戸が先制に成功する。

 
 
 待ちに待った吉原の今季初得点。
 喜びはゴール裏のサポーターと共に分かち合う。

 54分には、最終ラインから大きく蹴られたボールが前線の鈴木隆の下へ。鈴木隆は相手DFを背負いながら全速力で駆け込みシュートするもGK水谷の阻止に遭う。まるで2002年W杯ベルギー戦(@埼玉)の時の彼の得点時のデジャヴを思わせるその光景にアウェイ側は沸き立った。ここは得点に至らなかった水戸だが、この直後にGK本間のフィードをサイドライン際で拾った小池が一気にドリブルで突進。京都・DF内野を一気に抜き去ると、そのまま中央へ折り返して難なく鈴木隆が流し込んだ。見事な流れからの展開のみならず、シュートの直前で鈴木隆は相手DFと見事な駆け引き。全く相手を寄せ付けずフリーになっていた。

 
 
 
 まるでベルギー戦の彷彿とさせる場面。ここは決まらず。

 
 
 
 
 
 
 しかし、三度目の正直と言わんばかりにこの得点。
 鈴木隆行、今季3得点目で水戸が追加点。

 後半の序盤で一気に2得点を叩き出した水戸。前半からカウンターの度に前線で躍動する吉原、そしてあらゆる所に顔を出してボールをもらう鈴木隆の動きは際立っていた。決定機こそ京都に分があったが、0-0で折り返せたのは水戸にとっては大きかっただろう。京都の守備陣の手薄な場面を良く突いた。柱谷監督の先手を打つ采配も得点に繋がった。
 その後も2点のビハインドを追う京都がアタックをし続けるが、水戸の守護神・本間の好セーブも光り最後まで得点ならず。2-0と水戸が完封で乗り切り、開幕戦に続く京都戦の勝利となった。

 
 90分間集中した本間の好守も光った。

 
 ゲームキャプテンの西岡は後半からボランチへ。
 ミスが少なく、すっかりチームの主軸。

 
 ゲーム中も激しく指示を送る水戸・柱谷監督。
 何とかこの勝利を上昇のきっかけにしたいところ。

 今季初となる吉原と鈴木隆の先発からのゴール共演。2人が共に前半からピッチに立つと思っていなかったので、揃ってゴールまで見せてくれるとは感無量。こんなことはなかなか生観戦では成し得ないだろうという値打ちのある試合だった。まだまだ十分Jでは力を発揮できる2人と、ロメロフランクや再三見せ場を作った小池など実力のある選手がいるのは確かで、この京都戦だけ見れば、水戸は中位への巻き返しは可能だと思う。震災や台風の影響など逆境に耐えながら戦っているのはサポーターも同じく。チームを引っ張るベテランFWの2人に牽引も含めて、水戸の残り試合は少し気にしておきたい。
 対する京都は、ホームで約3ヶ月ぶりとなる敗戦。ここで勝点3ポイントが積み上げられれば、順位は上がったであろうだけに残念。試合後にはスタンドから厳しい声も飛んでいたが、次節、次々節とホームで徳島、札幌と上位陣を迎えるこれからが正念場。いつも後半に投入されるダンを筆頭に久保、宮吉ら以外のFW陣の奮起が求められる。

 
 
 鈴木隆行、吉原宏太の存在は水戸には大きい。

 
 かなり険しい表情が印象的だった京都・大木監督。
 上位陣との連戦が続く次節から踏ん張りどころ。

不本意な夏を経て -関西大vs京園大-

2011年10月02日 | 脚で語る大学サッカー
 後期第2節を迎えた関西学生リーグ1部。太陽が丘球技場Bの第2試合では首位・関西大と11位・京園大が対戦。4-0と関西大が貫禄の勝利で後期2連勝。対する京園大は前期から未だ13試合連続で未勝利となった。

 

 今季、最大の目標である天皇杯出場はおろか、そこに繋がる関西選手権で結果を出せず、総理大臣杯への出場も叶わなかった関西大。今季は関西選手権の上位3校が全て大阪の大学(阪南大、大体大、桃山大)で占められ、総理大臣杯を制した大体大が大学枠として天皇杯の出場権を、そして阪南大、桃山大が大阪府選手権に出場して阪南大が大阪府代表チームとして天皇杯出場を果たした。ここに絡めなかったこの2ヶ月強はインカレ王者であり、またこの数年、天皇杯でもJクラブを脅かす存在となっていた関西大にとっては非常に悔しい夏だったことだろう。これで狙うはリーグ制覇と冬のインカレ連覇に絞ることとなった。リーグでは現在首位を走っており、総合力は群を抜いているのは確か。この京園大戦は前半こそ攻めあぐねながらも、最終的に力の差を見せつけた試合だった。
 関西大は、後期第1節から木村(2年)、片岡(2年)が先発に名を連ねており、寺岡(2年)、和田(1年)と並んで神戸U-18組が4名も同時先発。また、金谷(2年)、田中(3年)、岡崎(3年)のG大阪ユース組を筆頭に、高校サッカー出身者は櫻内(4年)1人だけと、相変わらずのJクラブユース出身者オールスターズ。前期は京園大に先行される展開だったが、この日こそは圧勝でその豪華絢爛な力を誇示したいところ。
 一方の京園大も、今季は初の1部だったが、開幕当初の健闘ぶりとは裏腹に1部の壁を痛感する戦績で、ここまで12試合未勝利と非常に苦しめられている。下級生もメンバーには多いだけに、何とか後期の戦いで残留を達成して来季に繋げたいところだと思うが、前節は2位・桃山大に1-2と僅差で敗れており、2試合連続で手強い相手を迎えることになった。

 試合は、ライン設定を高めに保ち、中盤をコンパクトに抑えた京園大のゲームプランによって関西大が攻めあぐねる展開。片岡、木村らが前線でボールを呼び込むが、オフサイドを連発。なかなかロングフィードからの展開を作れない。都並(2年)、櫻内の両サイドバックが攻め上がってチャンスメイクするが、中央でターゲットが作れず、決定機をなかなか作れなかった。しかしながら、京園大も守備一辺倒でほとんど攻撃に時間を割けられない。ボール支配率はそのほとんどが関西大であり、危なげない試合運びながらも得点が奪えないジレンマに悩まされる。
 40分にその呪縛が解けた。ゴール前で奥田(2年)がGKと相手DFに詰め寄られてボールを逸したところを上がってきた櫻内が冷静に流し込む。相変わらずポジショニングにその長所を見せる頼れる主将の1発で関西大の沈黙は解けた。43分には、岡崎の右CKをファーで寺岡がヘッドで折り返すと、中央で田中が押し込んで追加点。関西大がその強さを見せ始めた。

 
 前期の終盤から出場機会を掴んでいた関西大・FW木村。
 後期2試合連続の先発出場。

 
 司令塔・岡崎はやはり抜群の存在感。
 右に左にサイドチェンジからそのキックの正確さが際立つ。

 
 奥田も先制点に絡む活躍。片岡、木村との前線トリオは面白い。

 後半に入ると、京園大も技巧派の村上(3年)を投入してくるなど逆襲のプランを模索するが、前半と同様に関西大がボール支配からペースを崩さない。68分に奥田に代えて安藤(3年)を入れて更にギアを入れると、71分には片岡が持ち込んで潰れたところを木村が決めて3点目を奪った。

 
 片岡は得点こそなかったものの、潰れ役として貢献。

 
 櫻内は冷静なプレーに終始。さすがJ内定選手。

 
 京園大も豊永(2年)を中心にボールを繋ごうとするが…

 83分にはCKから二度折り返されたボールをフリーで中央にて待ち構えた小椋(2年)がダイビングヘッドで決めて4点目。勝負あり。最後まで危なげない展開で関西大が勝利した。

 
 最後の4点目は小椋のヘッド。

 
 京園大はDF池田(3年)を中心に守備を建て直したい。

 スコア以上の力の差を見せつけた関西大。前節こそ終了間際に決勝点を奪う薄氷の勝利だったようだが、前期以上に勝負強さも増していればこのまま独走できそうな予感。まだ今後下位チームとの戦いが続くだけに、後期バージョンのチームを仕上げてインカレを見据えておきたい。勝負どころは上位陣同士の直接対決が続く11月。寒くなるにつれて不本意な夏をいかに過ごせたかが結果として体現されるはずだ。
 12チームで唯一未勝利である京園大もまずは1部初勝利を目指したい。姫獨大と勝点で並んでいるために、姫獨大の結果いかんでは最下位転落もあり得る。まだ残り9試合、チャンスを掴みたい。