東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

森内名人防衛(第70期将棋名人戦)

2012年06月14日 | 将棋

第70期将棋名人戦7番勝負第6局で森内俊之名人が挑戦者羽生善治二冠(王位・棋聖)に勝ち、通算4勝2敗となり、名人位を防衛した。

今期の名人戦は、第五局まで先手が勝ち、先手必勝パターンが続き、この第六局で先手(羽生)が勝つと、第七局目の振り駒で結局名人が決まるのか、などと思っていたが、後手の森内が勝ち、これで防衛を決めた。後手で勝って防衛を決めたのだから、気分的には快勝であったと想われる。

今期の名人戦の勝敗と戦型は次のとおり。

1 先手 森内○(相矢倉)
2 先手 羽生○(角換わり)
3 先手 森内○(急戦矢倉)
4 先手 羽生○(相矢倉)
5 先手 森内○(横歩取り)
6 後手 森内○(角換わり)

今期は、先手の5勝1敗(前期は先手の5勝2敗)。
過去の対戦成績は森内52勝64敗(勝率0.448)で、先手が51勝21敗(勝率0.708)。羽生先手で25勝9敗、森内先手で26勝12敗。

この20年間の名人戦7番勝負の結果は次のとおり(将棋連盟HP)。

51 1993 米長邦雄 4-0 中原 誠
52 1994 羽生善治 4-2 米長邦雄
53 1995 羽生善治 4-1 森下 卓
54 1996 羽生善治 4-1 森内俊之
55 1997 谷川浩司 4-2 羽生善治
56 1998 佐藤康光 4-3 谷川浩司
57 1999 佐藤康光 4-3 谷川浩司
58 2000 丸山忠久 4-3 佐藤康光
59 2001 丸山忠久 4-3 谷川浩司
60 2002 森内俊之 4-0 丸山忠久
61 2003 羽生善治 4-0 森内俊之
62 2004 森内俊之 4-2 羽生善治
63 2005 森内俊之 4-3 羽生善治
64 2006 森内俊之 4-2 谷川浩司
65 2007 森内俊之 4-3 郷田真隆
66 2008 羽生善治 4-2 森内俊之
67 2009 羽生善治 4-3 郷田真隆
68 2010 羽生善治 4-0 三浦弘行
69 2011 森内俊之 4-3 羽生善治
70 2012 森内俊之 4-2 羽生善治

名人戦で二人はこれまで7回対戦しており、今回で、森内の4勝3敗。森内が勝ち越した。

上の表からわかるように、第60期将棋名人戦(2002)で森内が当時の丸山名人から奪取して以来、森内(7期)・羽生(4期)の二人で名人を独占している。トータルの名人獲得は、二人とも同じで、7期。

20年前、中原・米長戦で米長が悲願の名人になったが、翌年、羽生に奪取されてから、名人は、羽生、佐藤(康)、丸山、森内という、いわゆる羽生世代が独占している(ただし、谷川が1期獲得)。

こうしてみると、森内は、羽生世代の中でも大器晩成型であることがわかる。

その森内は、将棋は先手必勝の信念があり、いつか、タイトル戦のテレビ解説で登場したとき、先手・後手のことを聞かれると、先手が断然いいです、とうっとりとしたような表情で語っていたことを思い出す。

森内・羽生戦は、特に先手の勝率がよく、上記のように7割を超えている。

先手・後手のごくわずかな微差をごく少しずつ広げていき、途中、誤らずに勝ちにつなげるのであろうか。極小微差をわずかずつ拡大する技術を身につけたのであろうか。そんなイメージがあるが、へぼ将棋ファンからみると、実に不思議な世界である。

将来、もし、将棋の先手必勝パターン(たとえば先手▲7六歩からはじめると、どんな変化でも先手が勝つ)が確立されると(あり得るかどうかは別として)、先手▲7六歩で、後手投了ということになる。それはまったく味家のない世界に違いないが、そういったつまらない妄想に陥ってしまう。

渡辺明二冠(竜王・王座)が自身のブログで、今期名人戦第4局の後、次のコメントを書いていた。

『名人戦第4局は▲羽生二冠が勝って2-2のタイ。ここまで先手番4連勝。その有利さを説明するのは難しいのですが、先手の時は「一度間違えてもまだ大変」という実感はあります。すなわち「ミスの数が同じなら先手勝ち」ということは言えるかもしれません。判定ドローならチャンピオン防衛、みたいな。加えて「トップ同士+持時間9時間」という条件だとミスが最小限に抑えられるから、より先手が勝ち易い、ということなのでしょうか。同じ2日制でも8時間の竜王戦、王位戦、王将戦でここまで先手有利と取り上げれられることは少ないので8と9の1時間の違いが大きいのかもしれません。』

先手有利に関し、これがトッププロの平均的な見方なのであろうと思った。持ち時間の長い将棋では、ミスが最小限になるというのは、やはり、先手必勝的なイメージをトッププロは持っているようである。どちらかといえば先手の方がよい程度のことかもしれないが、要するに、「最善手」を指し続ければ、先手が勝つということであろう。

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