東京の坂巡りの必携本です。
たくさんの坂を23区ごとに分け、コース別にガイドするもので、写真や地図が豊富で読み物として読むのもおもしろいですが、それだけでないユニークさがあります。それは、各コースのはじめの坂から最後の坂に至るまでこのガイドのとおりに歩くと、すべての坂をたどることができることです。坂上を進み、2本目を左折すると、〇〇坂の下りである、といった具体的な案内が随所に見られます。
坂には必ずしも案内板や標柱などがあるとは限らず、またあっても見つけるまでに時間がかかることもあり、坂の同定が大変ですが、そのような困難を解消してくれます。もし、この本がないと、特に案内板や標柱のない坂の場合、探すのがかなり大変となり、相当に予習をしないと現地で迷うことになると思われます。必携本というゆえんです。
案内地図もユニークです。かなりデフォルメされており、坂から坂へと巡るのに充分なものですが、各坂の相対位置がわかるだけですので、これにしたがって歩いていると、ときどき、自分がいま、どの辺を歩いているのか、わからなくなるときがあります。これが、また、おもしろいのです。まさに彷徨い(さまよい)歩く気分となります。
わたしは、帰宅してから、かならず車用に購入した大きな市街地図でその日たどったコースを確認します。これが坂巡りの後の楽しみの一つですが、かなりの区域を歩いたと思っても、けっこう狭い範囲をぐるぐると回っているコースもあって、その意外性もなかなかよいのです。
この本は、坂巡りの入門書といってよく、各コースを歩いて坂の位置を確かめてから、次に、独自のコースを開拓して歩くことがさらなる楽しみとなると思っています。