あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

積み重ね

2012-06-14 22:56:34 | Weblog
本日は基部再建がありましたが、上行も5cmと太いので、23度の循環停止+脳分離循環下に上行大動脈も置換することとなりました。
当然ながら自分で行うのは初めてのことであり、こんなどこぞとしれない若輩者で、周りにいくつも病院がある中、この地に来たばかりの私に命を預けてくれた患者さんの勇気と指導の先生、病院のスタッフに感謝であります。
本日も指導の先生の言うがまま、操り人形のようでしたが、確立された方法と確実な吻合を指導していただき、外科的な出血は全くなく、遮断3時間、手術は5時間きっかりで終了となりました。出血もなく3時間後には人工呼吸器も離脱できて、ありがたいことであります。

自分でやってみて思ったのは、基部再建というのは出血さえしなければ決して難しい手術ではないかなと。
たまたまうまくいったから、いうのではなく、手技としては弁置換+人工血管置換+末梢血管といった感じで、場所が場所ですし、吻合箇所が多いので、大変ではありますが、これまでの手術の積み重ねで、一つ一つを確実にいつも通りやれば、出血もなく普通の手術と何ら変わりなく終わるのではないかと思います。
ただ、指導者がすばらしいのは言うまでもありません、私一人ではもう少し時間がかかっていたでしょう。

今日は上行も変えましたので、脳分離がありプラスアルファでしたので、余計な時間がかかりましたが、これはこれで勉強にはなりました。

脳分離の方法に始まり、出血しない基部の吻合、コロナリーボタン吻合のコツ、出血しない人工血管-人工血管吻合の方法など、要するには出血しない確実な吻合ということにつきます。指導の先生もおっしゃっていましたが、終板になるとどうしても集中力が切れてきて、いい加減な吻合になるから要注意とのこと、最後まで基本に忠実に、吻合に集中することが大事とのことでした。やはり数多くやっている先生は、ご自分でも苦しまれたのでしょうが、洗練された方法を持っています。

来週は弁形成とOPCABの2つとなります。この調子で頑張りたいところであります。

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2 コメント

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Unknown (skt)
2012-06-15 17:21:58
23℃まで冷やしてBentall+上行置換で5時間というのはとても早いと思うのですが、先生のお話しを伺っているとまだまだ早くなる余地がありそうですね。

凄いの一言に尽きます。
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Unknown (あぽいち)
2012-06-16 05:13:28

うーん、やはり一番は指導の先生の戦術・戦略が完成されているが故のことであります。ほんとに素晴らしい指導医に出会うことができ、先月から私の人生を大きく変えています。
今回は止血時間はなかったので、たぶんこれ以上、速くするとなるとすれば、ウイニングでカテコラミン使うとか、コンポジットグラフトを誰かが作ってくれれば、その分は短くなるかなと。それと、閉胸は一般外科の若い先生にお願いすることが多いので、その分少しロスになるかも。あとは私の慣れの問題、もう何例か経験すれば、少しは判断に迷うことはなくなるかなと。

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