あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

ステントグラフト感染

2009-08-02 19:57:31 | Weblog
今週は3日間当直があったので、なんだかあっという間に過ぎてしまいました。
予定手術は4件でしたが、緊急が2件入りまして、なかなか忙しかったです。
緊急は末梢血管とAAAでしたので、どちらも担当させていただきました。
末梢血管はFF+膝下のFPでした。最近はうちでも膝下の後けい骨あたりのバイパスも静脈使ってやるようになりました。
AAAはなんと、5年前に他院で挿入したステントグラフトの感染という症例でした。使われていたのは井上式で、migrationも起こしており、ネックは瘤内に落ち込んでました。多分、かなり珍しいのではないかと、調べてみましたが、ほとんど報告症例はありませんでした。
2ヶ月近く抗生剤投与されていたこともあり、瘤は炎症性の動脈瘤に似た感じでガチガチに癒着して壁が肥厚してましたので、露出するのが大変でした。瘤を開けたところ、ステントグラフトのネックは瘤内に落ち込んでまして、意味を成していませんでした。憎きステントグラフトを引っこ抜いてみましたが、内部は明らかな膿などは認めなかったので、リファンピシン漬けの人工血管で置換することにしましたが、血管が肥厚して炎症でガチガチで苦労しました。中枢は良かったのですが、末梢は両側とも総腸骨は炎症で吻合できず、inclusionで閉鎖して、外腸骨へつなぎました。最後に駄目押しで大網を人工血管に巻きつけてきました。
今のところ、元気に回復して、感染兆候もありませんが、もしこれで再度人工血管の感染を起こすようであれば、再び人工血管を除去して、今度は非解剖学的なバイパスを置くことになるでしょう。
これは、日本でも報告が無いと思うので、発表ものでしょう。
学会ねたが一つ増えました。
しかし、取り出してみた井上式のステントグラフトを見ましたが、これではmigrationも起こすだろうという構造でした、現在の市販化されている企業ステントに見られるようなバーブというれる、血管壁に引っ掛ける爪が無いので、ずれて当たり前という感じです。
時々、うちの病院でも、他院の先生がカテ室を借りて井上式を入れているが、いまだに、こんなステント入れてていいのでしょうか、明らかに長期成績は悪いと思うのですが、、、、これは口に出してはいけないことかもしれませんね。

来週は部長がアメリカに行っていないので、大変です。
トラブルの無いように私が責任もって目を光らせていなければいけません。
今のところ4件予定していますが、そのうち2件はAAAですので、気はいくらか楽です。あとはCABGとARです。
ARはいわゆるporcelain aortaというやつで上行大動脈は全周性に石灰化で、悩ましいです。送血部位もありませんので、足から送血して、28°ぐらいまで冷やして、循環停止でクランプする部位だけ5分ぐらいで石灰化外して、クランプ、循環再開というパターンになるかと思われる。
単純なARであれば担当させてもらえると楽しみにしていましたが、今回はちょっと私には無理そうです。
かわりにCABGの方で出番が来ることを祈ります。
AAAは2件とも末梢がガチガチの症例で、最悪の場合、外腸骨吻合となりそうな症例ですが、中枢は単純ですので、後輩にゆずろうかと思っています。
まー、とにかくトラブル無いように頑張ります。

明日、月曜日はボスの出張手術のかばん持ちで、M県まで行ってきます。
私もいちおうエセ麻酔科として給料をいただけますので、おいしいバイトといえばおいしいバイトであります。片道3時間なので、小旅行気分です。
そういえば、これを書いていて思い出したが、拡大鏡、病院に忘れてきてしまいました。明日、朝よっていかなければ、、、。

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