あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

重たい

2012-08-28 05:46:04 | Weblog
お盆も明けまして、先週よりまた手術再開となりました。
お一人目はleriche でAo-bi-femoralでしたがDMもひどく、ソケイ部の傷がトラぶったらやだなと、欲張ったことを考え、お腹の中で、無理やり大腿動脈引っ張って吻合して、腹の中だけで終了にしましたが、腸管のプレパレーションが悪かったこともあって、視野出しに苦労して、手術210分に及んでしまい、なかなか苦労しました。
やはり、大きな切開となるときは、オムニトラクトが必要ですね。二人でやるには限界かな。
もともと透析真近で、心機能も悪く、術後は腎不全、心不全となり、お腹はむくんでぱんぱん、透析何度か回して、しのいで、1週間たってようやくおしっこ出てきて、食事も開始となりました。
ひやひやです。

2例目はAVR後の上行慢性解離8cmで、開けたとたんに瘤が割れて、大惨事となりました。大腿動静脈は出してあったので、すぐにヘパリン入れてクイックドローでフル脱血まで持って行けましたが、やってしまいました。28度まで持って行ってから、瘤の亀裂を縫って修復、そこからは予定通り20度まで持って行って、基部まで割れていたので、前回の機械弁は残して基部再建、末梢側も腕頭ぎりぎりでしたので、脳分離併用循環停止で一分枝管吻合となりました。コロナリーボタンは癒着が激しく、とても遊びはないかったので、左右とも9mmの人工血管でインターポーズして再建です。
遮断3時間、人工心肺5時間で、そこからがたいへんでした。
おそらく最初の破裂で凝固因子がなくなったのか、血の海で電気メスは使えず、手術を行ったこともあり、再手術でもあり、いたるところから出血となり、まったく止まらず、永遠5時間止血となり、一昔前の大血管手術のようなことになり、循環も不安定なので、とりあえず、IABPぶっこんで、循環動態の心配だけは排除して、ひたすら止血、止血、止血、幸いなことに吻合部からの出血はなく、静脈性の出血であったので、IABPで心機能も回復して、静脈うっ血もとれて、いわゆる止まる時間帯というやつがやってきてくれました。
これで吻合部が出てたら帰れなかったかもしれません。
久々に10時間の手術となり、かなり肉体的にも精神的にも消耗、、、、、普通に行っても一筋縄ではいかないと思っていたが、破裂させてしまったのは余計でした。
手術室スタッフ初め、最後まで付き合って麻酔についてくれた外科の先生に感謝、感謝です。
最初っから20度まで冷やしてから開胸すべきだったのか、、、、、いろいろと反省です。
また、こんど指導医の先生と検証してみます。
術後はすぐにCHDFで強制的に時間500mlで除水開始して、一日で-5000mlのドライサイトへ、翌日にはなんとか眼は覚めたものの、左の麻痺とけいれん、、、4日目となる昨日、IABPが抜けて頭のCT取ってみたら、右の後ろに梗塞があり、すぐに脳外科専門病院へ画像を持っていき見てもらったところ、まだ、浮腫みが強いので、回復の望みありとのこと、麻痺側の痛み刺激も出てきて、もしかしたらもしかするかもしれず。とりあえず、全身状態を良いほうへ持って行って、合併症を起こさないようにするしかありません。

今週のしょっぱなは普通のAVRです。
お盆にMICSの機械で練習していたので、正中開胸ではありますが、持針器やセッシ、ノットプッシャーなどを使ってみました。
これがまた、意外なことに、正中切開の手術でも、逆にMICSの機械のほうが、細くて視野の邪魔にならないし、糸結びも俺のぶっとい指を入れることがないので、ストラットや動脈壁に神経使わなくていいので、逆にいいです。これから全部、これにしようと思います。
この方は特に問題なく、術後一時間で抜管で、ようやく普通の手術やった感じで、なんかすっきり。