杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ロンドン、人生はじめます

2019年03月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年4月21日公開 イギリス 102分

ロンドン郊外の美しいヒースが広がるハムステッドの住宅街。高級マンションで暮らすアメリカ人の未亡人エミリー(ダイアン・キートン)は、悠々自適の一人暮らしとはいかず、夫亡きあと発覚した浮気や借金のこと、減っていく貯金のこと、老朽化したマンションの修繕費用のこと、上辺ばかりのご近所づきあいなどお金や生活の様々な問題に直面していた。屋根裏部屋からヒースを眺めていたある日、髭もじゃの男が暴漢に襲われるのを目撃するエミリー。翌日、森の中を訪れた彼女は、手作りの小屋で17年間暮らしているというドナルド(ブレンダン・グリーソン)と出会う。ドナルドの家が不動産の開発業者の標的となり、不法占拠していた彼は立ち退きを迫られているだけでなく嫌がらせを受けていた。そんな事情もあり警戒し拒絶するドナルドにエミリーも始めこそ拒否感を抱く。だが、庭でのディナー、気ままな読書、森でのピクニック…と余計なモノを持たず手作りの暮らしで満足する彼の温かい人柄に触れエミリーは惹かれていく。(公式HPより)


ハムステッドはロンドン中心部にあって、広い公園とお洒落なショップが建ち並ぶ緑の多い高級住宅なんだそう。この公園「ハムステッド・ヒース」はロンドン最大の公園で、手つかずの原生林が残る風光明媚な場所としても知られ、古くから作家や詩人が暮らした場所としても有名で、今も俳優やミュージシャンが多数住んでいるんだそうな。映画『ノッティングヒルの恋人』のロケ地の一つとしても有名だそうですね。そんな超高級地にあるハムステッド・ヒースで暮らしていたホームレスの男性が周囲に助けられその場所の所有権を手にし、一夜にして資産家になったという実話を基に映画化された作品です。

エミリーは夫の死後に彼の浮気と借金を知ります。アメリカ人の彼女にとって、夫と暮らした高級マンションは住人たちとの中身のないうわべだけの付き合いも含めて自分らしく生きられない場所のようです。双眼鏡で目にした事件を通報したことからドナルドを知った彼女は、自然に囲まれ、自分で作った小さな家で自由気ままに暮らすドナルドに次第に惹かれていきます。彼の不愛想で頑固な顔の下に隠れている温かで率直な人柄が、これまでエミリーが接してきた人たちよりも好ましく感じたんでしょうね。

ドナルドの対称として登場するのが、自称親友のフィオナ(レスリー・マンビル)がお節介で紹介してくれた会計士のジェームズ(ジェイソン・ワトキンス) いかにもな物腰やきどった態度についつい失笑してしまうけれど、でも彼自身は決して悪い人間ではないのよね。 

エミリーにとって高級レストランでのジェームズとの食事より、ドナルドの家の庭でのディナーや釣りやピクニックの方が自分らしくいられる時間だというのは頷けます。

立ち退きを迫られているドナルドの力になるべく立ち上がるエミリー。それまで夫の添え物だった彼女が、自ら行動を起こし始めるのね。

実はこの立ち退き騒動にフィオナの夫が関わっていて、あれこれ問題も起こる中、ドナルドがある一定年数以上前から暮らしていたことを立証することができて、彼は裁判に勝利することとなります。

立ち退かなくても済むことになったドナルドはこの森の中の家でずっと住み続けることを希望しますが、この土地に拘る理由(昔好きだった女性を忘れられない)を知るエミリーは、新しい人生を始める良い機会だと、他に移ることを提案して喧嘩になり、二人は別れてしまうのですね。

エミリーは夫との思い出を断ち切るかのようにマンションを売って、郊外の自然豊かな家に移ります。彼女は自分自身の人生を始めたのです。 と思ったら、ドナルド再登場!彼は土地の権利を売って小さな船を買い、その上にあの「家」を積んでエミリーの元を訪れます。彼にとって大切なのは土地への執着ではなく、自分で一から建てたあの家と、そこで知り合ったエミリーだったというわけですね


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