「この国のかたち」的こころ

敬愛する司馬遼太郎さんと小沢昭一さんに少しでも近づきたくて、書きなぐってます。

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…3

2005年08月29日 22時51分10秒 | 結婚観
 世の中には社交辞令というものがあります。

 機嫌を損ねてはいけない相手にたいして、その場の和を保とうとする心から出る、軽めの嘘です。

 相手もそれが嘘であることを薄々知っています、が、嘘でも、そういう会話が出来ただけでもしないよりは親しさが増したような気分になるものです。

 彼女を誘ったとき、臆病な僕は、具体的な話に持ち込むことが出来ませんでした。

 ただ、一緒に行くことだけを約束して、その場を離れてしまいました。

 僕はそのことをすぐに後悔しました。

 僕のその時の心持ちから言えば、そして自分の今までの経験から言えば、社交辞令のおそれがなかったとは言えません。

 それに臆した僕は、千載一遇のチャンスを逃したように感じたのです。

 すぐに戻って先ほどの話の続きをしようかと思いました。また、今更、用もないのに彼女の前に出る不自然さを感じました。

 僕は二つの間で、立ち止まってしまいました。

 そしてそうこうしているうちに彼女の退勤時間になってしまいました。


 ぼくは不自然を承知で彼女の前に立ちました。

 そして周りに他の誰もいないことを確かめてから、「きゅ、急だけど、今度の土曜日はどうですか?」といきなり言うと、

 彼女は、しばらくビックリした様子でしたが、「空いてますよ。」と言ってくれました。

 僕は無我夢中で「じゃ、じゃあ駅ビルのレコード屋さんで待っていてくれる?」

 というと「何時にする?」と聞くので「あっ!そうか何時か決めないと駄目だよね。」といって少し笑いました。

 そうすると向こうも笑って「いつも会社あがるの8時半ぐらいでしょ。それからすぐ来れる?」と言いました。

 僕は「すぐ行く!すぐ行きます。」と慌てていったので、彼女は可笑しそうに口を少し隠して、「じゃあ、待ってます。」と言って部屋を出て行きました。

 まだ、携帯なんか無い時代のことです。