「この国のかたち」的こころ

敬愛する司馬遼太郎さんと小沢昭一さんに少しでも近づきたくて、書きなぐってます。

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…15

2005年11月26日 01時51分01秒 | 結婚観
 この稿は20数年前に僕が体験した一つの出来事を多少の客観性と、多少の言葉数が増えた今の僕をつかってなるべく正確に、正直に再現しようとしてます。
 その言葉を見つけるために、僕は僕に起こった出来事についてある種のインスピレーションが交差し時に出てくる言葉を使おうと思ってます。そのため更新がまちまちになることをお許し頂きたいと思います。





 性交渉の拒否と一言でいっても、女性の側に立ってみれば、色々な理由があるのだと思います。

 ①相手があなただからという理由である場合。

 ②今日はそういう気分ではないという場合。

 ③こんな場所じゃという場合

 ④まだそういう関係ではないという場合

 他にもこんな時間とか色々あるのでしょうが

 どの場合も「嫌!」の一言で終わってしまいます。

 「嫌」も「いやあ~」だったり「イヤ!!」とか「や!」だったりしますけどね。

 どちらにしても男からすればよく分からないわけで、とまどうのです。

 しかもその時の状況と言えば半ばホテルの部屋で、二人きりでほぼヌードに近い状態で、キスしたりしてましたから、この状態で拒否はないでしょう!という気持ちが先行しても、世の男性諸君からは賛同の意を頂けるのではないかと思います。

 で、僕の場合どうだったのかというと、彼女は結婚するまでヤダということでした。
 そしてそれが例えあなたと結婚することになったとしてもなのだそうです。

 僕は彼女の口から「結婚」という言葉が急に出てきたので驚きました。

 そして彼女がまだ男性を知らないということを確認しました。

 おそらくそうだという感じはしていたのですが、彼女の言葉でそれを知ることになりました。


 そして彼女が26才になろうという時期でした。

 今であれば、いや、おそらくその時も、その年で処女性を保っていたと言うことについて僕はもう少し深く察するべきでした。
 しかし、その時の僕は突き上がってくる自分の衝動をコントロールすることに必死でした。

 僕は彼女の腕を掴んだまま、しばらく下を向いていました。
 そして暴れる心が落ち着くのをじっと待っていました。

 彼女は僕を傷つけたと感じたのでしょうか、「ゴメンね」と言いながら僕の頭をなでていました。

 どれくらいそうしていたでしょうか。

 僕は作りでない笑顔を彼女に向けようとしました。

 そして「わかった。君がそうありたいなら、僕もそうあることに協力するよ」と言ってしまいました。

 本気でそう思ったのです。そういう恋愛であってもいいと思いました。

 そこに幸せを求めたとしても全く悪いことではありません。

 ただ、僕の心の中にそれがいつまで守れるかについての自信はなかったことを白状します。

 彼女はそのままベッドの中に入ってきました。

 僕達は乾いた体を寄せ合いました。

 冷え切っていた二人の体が重なるとほのかな暖かみが伝わってきます。

 彼女は「人ってあったかいんだね。」と言いました。

 「体をあわせるって気持ちいいんだね。」とも言いました。

 その感想は実に正直で、全く僕にたいして疑いのないもので、安心しきった言葉だと感じたものですから、僕は彼女のことを心の底から、かわいいと思いました。

 そしてこの人を守ってあげなければという気持ちが自然と湧き上がってきました。

 

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…14

2005年11月03日 00時01分11秒 | 結婚観
 風邪をひいている自覚がありましたから、一緒に食事をしてもそんなに呑む気はしませんでした。

 今日キスしちゃったら、彼女に風邪ひかしちゃうなあ。という感覚だけがぼやーっと記憶の中にありました。

 ただ僕はいつもの通り元気でした。というよりイニシアチブを僕がとって盛り上げていました。途中までは…。

 僕はナロンエースと2,500円のユンケル黄帝液とベンザブロックで体がどうかなりそうなところにお酒を入れたものだから、少しのお酒でかなりおかしくなっていました。

 で、更に間が悪いことに、その日彼女は、やけに上機嫌でした。いつもになくノリが良いのです。

 後で聞いてみると、僕のノリに無理が見えたので、自分が頑張らなきゃと思ったそうです。

 僕は彼女の顔を見ることができたので、帰ろうかなと思ったのです。

 熱はまだ38度近くあったはずです。

 彼女は僕が何か精神的に凹んでいると勘違いして、一生懸命元気付けようとします。

 お互いに初めてのまともな恋愛でしたから、25才にもなってまともに相手のことを気遣えずに、トンチンカンなお節介をお互いにしてた時期でした。


 「女は寝なきゃだめだ。」という人がいます。確かにそういう部分もあるのかもしれないと思っています。

 でも寝るだけで分かるのものもまた一部でしかないと考えています、今はね。

 そして寝る男は寝た女の数で男を挙げるといいますが、女性は寝た男の数で女性としての格が上がるのでしょうか。

 世間一般は違いますよね。

 確実に女性としての格が下がってしまいます。

 単に男尊女卑の問題に係わらず、もっと根元的な問題が内蔵されているような気がしてなりません。

 ただ現実的な生の人間として、それが体を介するというリスクはありながら、多くの人間と心の袖が触れあうことは、女性としてでなく、人間として豊かな人間理解とコミュニケーション能力を持つことになると思います。

 ただそのときの僕の状況は悲惨でした。

 僕がお酒以上に赤い顔をし、目が市場に上げられたマグロのような目をしていたので、さすがにおかしいと思ったのでしょう。

 「今日、何か変よ。」と聞きます。

 僕は「ちょっと頭が痛いんだ。」というと彼女の手が僕の額に触れました。

 僕は目をつぶってその感覚に耐えました。

 母と誰ともちがう、また僕の知っているあらゆる女性の手とも違ったものが僕の額にありました。

 彼女は自分の手をどけて、額をくっつけてきたのです。

 そして怒ったように「凄く熱いじゃないの、熱あるんじゃないの、何で帰らなかったの?死んじゃうよ。」と叫ぶような声でいいました。

 僕は大丈夫だからといって席を立とうとしたのですが、目が回ってきて上手く立てませんでした。

 さすがの僕も今日はまずいなと思ったので、

 「ゴメン!今日は帰ります。明日にはなおると思うから心配しないで。」といいました。

 心配そうな顔で彼女が「大丈夫、ホントに帰ること出来る?」と聞くので「う~ん、そしたらホテルに泊まるから良いよ。」というと
 「心配だからついてく!」と勝手に宣言してます。

 僕はホテルと言ってもこの間のところぐらいしか知りませんから、「この間のホテルだよ。」というとそれでも良いとついてきます。

 仕方がないのでまた僕達は同じ部屋に入りました。

 部屋に入り、ベッドに転がると、天井がグルグル回る感じがします。

 僕の体は熱いのですが、僕自身は寒気を感じるという奇妙な感覚でいました。


 僕が汗でべとべとになった体をシャワーで流している間、彼女は途中のコンビニに行き、シャワーから上がった僕をベッドに寝かせ買ってきた氷とハンカチ(おしぼりかもしれない)で頭を冷やしてくれます。

 そんなときの彼女はとても甲斐甲斐しく、また随分と威張っています。というより明らかに自分の助けが必要と感じたときには、とても頑張る人だということ、つまり豊かな母性をもった人であるという子を知り、新鮮な驚きと共にまた一つ僕の心に何事かを感じの悪くない痛みを伴って何事かの想いを刻み込みました。

 きすしていい?

 僕が彼女に聞くと

 僕が多分一生忘れられない微笑みで応えてくれました。

 僕は彼女の腕をとって引き寄せキスをしました。

 そしてそのまま彼女を抱こうとしました。






 でも彼女はうってかわって僕を拒絶してきました。 

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…13

2005年10月28日 21時58分03秒 | 結婚観
 その日、僕は朝から風邪気味でした。
 
 かといって鼻水が出たりクシャミをしたりするわけではなかったのです。

 全身が鉛のように重く、頭がズキズキ痛むといった風でした。

 これは熱が出るな…。


 経験上、僕はそう予感しました。


 でも仕事を休むわけにはいきません。

 僕は当時仕事を休むという頭がありませんでした。

 上司に皮肉を言われるのが嫌だったのは確かですが、自分がいない職場はあり得ないと思っていました。

 午後になって体が熱っぽくなってきたのは分かったのですが、体温計で熱を測ることはしませんでした。

 熱があるのを数字で示されると、気力で支えてる部分が崩れるような気がしていました。

 そして今日は1週間ぶりの彼女とのデートでした。

 負けるわけにはいかない!

 バカみたいに気合いが入っていました。

 頭痛薬(ナロンエース)を2時間おきに飲んで耐えました。

 上司は僕の体の状態を察するような人ではありませんでしたから、僕が不機嫌そうに仕事をしてると思って、僕を叱りました。

 それでも僕は謝って耐えて仕事をこなしました。

 その日飲んだ頭痛薬は合計6錠になりました。

 頭がホワンとしてきまして、少し目が回るような気分でしたが、何とか仕事を終えました。

 退社して薬局へ行き、風邪薬を買って飲み、栄養剤としてユンケル黄帝液を飲みました。

 仕事で疲れて飲むのは1,000円前後のものでしたが、その日は奮発して2,500円のものを買って飲みました。

 凄いですよ!2,500円のって

 飲んだ瞬間に全身から汗が出て、力とか炎みたいなものがしたからわき上がってくる感じになりました。

 よっしゃ!

 と気合いを入れ直して待ち合わせの場所に行きました。

 

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…12

2005年10月18日 23時09分15秒 | 結婚観
 僕は朝6時に起きて車で駅から歩いて3分程度のところに駐車場を借り、7時の電車に乗って7時40分頃会社に着いてました。

 他の人達はまだ来ていません。

 僕が一番遠いところから来てたんですが、一番若造だったので事務所の2階の掃除当番をさせられていました。

 とにかく定着率の悪い会社で、1年で10数人の人が入社してくるのに一ヶ月も持たずに辞めていき、1年後には僕ともう一人の人しか残っていませんでした。

 ですから僕は一年後に主任、2年後に課長になっていました。

 まあ幹部も30才そこそこの人達がやっている若い会社でしたから、色々至らなかったり、会社起業の精神をもっている幹部職員と、そうでない安定と保障を求めてくる人達の間に強烈な温度差があったのは事実ですから、結果として安定性に欠けていたのは仕方がないことかもしれません。
 
 そういう中で僕は仕事をしていたので、結構屈辱的な経験も多々ありました。でもそういうのって一般民間企業では当たり前のことですから、しょうがないのかなと思うようにしてました。

 また人間には器量というものがそれぞれあって自分自身の人間的な修行が足りないためにこういう人が自分のまわりにいる羽目になるのだと思いました。
 もっと後には、どんな人にも良いところは必ずあって、そういう良いところを引き出してあげるようにお付き合い出来るようにならなければ、社会人として不平不満だけが先行し、自分の成長に繋がらないし、どんな人とも良い繋がり方が必ずあって、それを見つけることが出来るようになることが、この職場での僕の課題なんだと思うようにしました。

 まるで仏道修行者のようでしたね。

 怒っている人の怒りの感情は別にして、自分に伝えたいメッセージとは何かを考えて、受け取る訓練をしました。

 わき上がってくる、自分の感情を胸の上の部分でグッと抑えて、心を平衡状態にして自分の心から感情を押しだし、相手の言うところの真実だけをつかみ取ろうとする。

 精神的にタフでなかった(小心者で泣き虫)僕にはかなりきつい修行でしたが、「この人はここのところを乞う直すと良いよ」と伝えてくれている。と言葉を組み立て直して、「ハイ!分かりました。これこれこういうことですね。ごめんなさい」というとたいていの人はそれ以上激情しません。

 感情が激化するのは、相手がそれに乗るからで、その相乗効果が引き返せない事態を招きます。

 

 でも疲れます。

 それが夕方の8時45分まで毎日続くのです。

 9時頃の電車にのり、自分の街の駅について駐車場まで歩き、運転して帰ると10時直前になっています。

 肉体的というより精神的に疲れてしまって、食欲が湧きませんでした。そして、「やせた」というよりも「やつれて」細くなっていきました。

 彼女と付き合うようになってからは更に遅くなります。

 休日のデートは昼から会えますが、夜のデートは9時に待ち合わせになります。

 そこからご飯食べたりするだけで、もう終電近くになってしまいました。

 あるとき、時刻表がかわり終電の時間を逃してしまったことがあります。

 僕はしょうがないので近くのビジネスホテルに飛び込みました。

 心配した彼女が一緒についてきます。

 僕はそれだけでドキドキしました。

 でもキスをしたくらいでそんな場所に行けるわけがありませんから、その日はホテルの予約をして(部屋があったので)その後彼女の家まで送っていって帰りました。
 この経験を通して分かったのは彼女はホテルに行くことについてまるで無警戒のようだということです。というより知らないと言った方が良いかもしれません。

 そして悪いことに僕も無知でした。

 部屋に戻って鍵を閉めて10分ぐらいすると、複数の部屋から、女性のあえぎ声が聞こえてきました。

 最初、僕は有料テレビの音かと思いましたが、有料テレビで、壁を蹴ったり、水の流れる実感を伴った音はしませんよね。

 僕はなかなか眠れませんでした。

 「フロント」と書かれているところには壁にくりぬいた穴のようなものがあり、そこがフロントでした。おじさんが608号室です。というし、ビルの外観も普通の白だし、部屋の写真も変じゃないから、ビジネスホテルだと思いこんでいました。でも各部屋の写真があったり部屋の名前が「地中海」だったりするところに気がつかなくちゃいけなかったのでしょうか。

 いわゆるラブホテルのイメージは、極彩色でネオンギラギラのキャッスルで、内装もベッドが丸く、回転して、天井が鏡張りで、布団が赤くて、風呂場が部屋から透けて見えてて、ベッドの頭のところにスイッチ類がいっぱいついているといったものですが、そこは全然違いました。

 ただ客層がソレ目的できてただけで、壁が若干薄かったようなので、声の大きい人が響いてしまったようなのだと思いこもうとしました。

 そして彼女をこんなところに連れてきたら大変なことになるなと思いました。

 でも僕は次のデートの時もそこのホテルに宿泊し、しかも彼女もその部屋に入ることになるのです。

 

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…11

2005年10月05日 22時38分02秒 | 結婚観
 その日、彼女はいつもと少し違っていました。

 「今日はちょっと飲んじゃおうかな。」と彼女が言いました。

 ぼくはそれだけでかなりドキドキしてしまいました。

 なんか分からないけど、彼女の心の状態が少し不安定になっていることが分かりました。
 しかし僕にはその理由が分かりません。

 僕はまさしく恐る恐る聞いたのです。

 「なんかあったの?」

 いままでのケースですと会社の上司に(僕も上司の端くれですが)何事かひどい言葉を言われたときなのです。
 でも彼女は上司を悪し様に言うような人ではありません。

 言われて、それがいけないことだと分かっているのに、上手く出来ない自分に腹を立てているケースがほとんどでした。

 「私ね、ホントに自分のことが嫌になってしまうことがあるの、どうして普通の人みたいにしっかり出来ないんだろう。」と哀しげにうつむいて言うことがあります。

 でもその日は違っていました。

 彼女は彼女のお兄さんに会ってきたのです。

 彼女には2つ上のお兄さんがいます。

 偏差値の高い大学をでていると聞いていました。

 そして、兄は家と、正確には彼女のお父さんと絶縁状態にあることを話してくれました。

 どういういきさつなのか、そしてお父さんとお兄さんの間にどんな経緯があったのか、彼女は話してくれませんでした。
 
 ただ、どちらもかなり頑固な性格で、一歩も譲る気配がないようなのです。

 そして彼等の仲を決定的にしたのは、お兄さんが、年上でバツイチで子供が一人いる女性と結婚したいとお父さんに向かって宣言したことにあるようなのです。

 猛然と反対する父親を説得するのを諦めたお兄さんはそれきり家に寄りつかなくなったそうです。

 ”学歴や家柄じゃなく人をみてほしい”今にして思えばお兄さんはそういいたかったのかもしれません。

 国家官僚の家柄というのが果たしてどんなものか、僕には想像もつかなかったのですが、僕にはお父さんの考えも分かるような気がしていました。

 年上はまだしも、バツイチで、子連れは嫌だなあと、その当時は思っていました。

 恋情のなんたるかを全く知らない、教育的常識の範疇を抜け出せないでいる僕がいました。

 彼女は、外で会うたびに父との和解を促していたようです。
 ただ、和解と言っても、実際には兄の方から歩み寄ることですし、それは何らかの形でお兄さんがお父さんにたいして謝罪する形をとるのですから、お兄さんにとってもできる相談ではなかったと思います。
 彼女もまた、僕と同じように結婚相手については、社会的に兄に相応しい人であるかについては疑問を持っていたようでした。

 「背が小さくてね、とても優しそうで、年齢よりもずっと若く見えるのよ。」
と言っていましたから、実際に会ったことがあるのだろうと思います。

 ただ、お兄さんは優しい人のようですから、お父さんのように「二度とそいつの話をするな。」と怒鳴りつけるようなことはせず、「Y子には迷惑かけちゃうな」と言ってくれるようでした。

 彼女はいつもより少し速いペースでグラスを空けながら、そんな話をしてくれました。

 帰り際、僕らは人通りの絶えた商店街を手を繋いで歩いていました。

 すると彼女が「お父さんも可哀相なのよ。」と突然泣き出しました。

 僕はどうしたらいいのか分かりませんでした。

 握った手を離して、彼女の肩に回すと彼女は彼女の頭が僕に寄りかかるように僕の肩にのりました。

 「ねえ、家族なのにどうして仲良くなれないのかしら、どうして分かり合えないのかしら、だって家族でしょ。二人とも大切な人なのに」と彼女が言いました。

 僕は、しばらく考えて「分かり合えないって、全てじゃないよね。僕は君の全部を知っている訳じゃない。でも君のことが好きだよ。分かり合えるところを積み重ねていけば、距離をおかなくちゃいけないところも、もっと近づけるところもあるはずさ。君の家族だって同じさ。お兄さんもお父さんも全部が全部認め合えないってのは絶対違うとおもうし、君がお兄さんや、お父さんのことを心配してることは、どっちも分かっていることでしょ。対立してるとこを後回しにして、わかり合えるところを積み重ねて行けば良いんじゃないの」というと

 「そんなに簡単にいく相手じゃないの、二人とも」といいました。

 僕は自分で結構良いこと言って内心「決まった!」と思ったりしてたものですから、この反応にはがっかりしました。

 でも涙に震えていた彼女の肩が、違う振動になっているのに気付きました。

 そして彼女はクスクス笑っていました。

 「ほーんっとに頑固なのよ、二人とも、やんなっちゃう」というとひとしきり笑ってました。

 そして、肩越しに僕を見て「あなたも私の大切な人だから」といいました。

 僕の中で何かがはじけたようなきがしました、僕は怒ったような顔をして、彼女を商店のシャッターに押しつけ、二人はぎこちないキスをしました。

 彼女の体が店のシャッターに当たったときかなり大きな音がしましたが、構っていられませんでした。

 その後、僕らはまた手を繋いで歩き出しました。

 「突然、ごめんね」というと

 それには応えず「気持ち悪い」と言いました。


 なんと非道いことをいう人だと一気に落とされた気がしました。

 「飲み過ぎでホントに吐きそう」と言いました。

 みるとかなり顔色が悪そうでした。

 「ごめんね、私、ここからタクシーで帰るから。」というと自分でサッとタクシーを捕まえて乗り込みました。

 タクシーの窓を開けた彼女が、別れ際僕の手をいつもより強く握って、「さっきはありがとう」と言いました。

 ぼくは、さっきってどっち?と聞きたかったのですが、「うん」としか言えず、「じゃあ、また明日」といって別れました。

 時計は12時を回っています。

 僕もタクシーに乗りたくなって、車をつかまえ、「これでいけるところまで行って」とタクシーの運転手に1万円渡して(距離から言えば深夜でも6千円の距離)
高速道路をかなりのスピードで走って家に帰ってきました。

 





 この稿書いてて恥ずかしい…。

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…10

2005年09月27日 23時21分57秒 | 結婚観
 つきあい始めてどのくらい経ったのでしょうか。彼女は少しずつ自分のことを話し出すようになりました。
 彼女のお父さんは国家公務員でした。最初聞いたときは「そおあか」と無知な僕は市役所の職員ぐらいの感覚でいました。

 でもよく話を聞いてみると、彼女のお父さんは、いわゆる旧帝大級の大学を出て、国家公務員の上級試験にパスし、官僚として働いている人でした。農林水産省管轄の地方事務所の所長として各地をまわり、その度に引っ越しをしていたようです。地元にもどるのも何年かぶりで、彼女は高校時代、香川の高校から、神戸のお嬢様大学で寮生活をしていたそうです。

 周りはお嬢様だらけで、夕方になると校門には高級外車に乗った彼氏が迎えにくるような環境だったそうです。

 彼女はリンゴが自分で剥けません。

 その彼女が寮で全自動洗濯機の使い方が分からずに困っていた寮の友人を助けてあげたことを誇らしげに話していました。

 僕には全く想像のつかない世界でした。

 ただドラマの世界で「爺!」と呼ぶと「お呼びになりましたか、若!」と執事が答えるのに憧れていました。

 現実にはない世界だと思っていましたが、そこにはあるようです。

 彼女自身はとても清楚な感じで、ブランドに身を固めるような人ではなかったので、余計に想像しにくい世界だったと思います。

 もし彼女がブランド品をひけらかすようなタイプの女性だったら僕も退いていあたかと思います。

 ただ、ブランド品でないからと言って、決して安いものでないことは、見た目で分かりました。
 
 僕の当時のサラリーではとても手の出る領域ではありません。

 服もバックもクツも買ってあげるだけの甲斐性はありませんでした。


 僕はその代わりと言ってはなんですが、僕はいつもリボンを買ってあげました。

 彼女はいつも髪型をポニーテイルにしていました。

 そして髪の毛を後ろで束ねるのにリボンを使っていました。

 会社の帰り、駅のショッピングセンターで毎日のようにリボン生地を眺めては彼女が気に入ってくれそうなものを探していました。

 そして彼女にプレゼントし、次の日会社に彼女がそのリボンを使ってくれたりそたら、それを見るだけで1日幸せな気持ちになりました。

 彼女に僕のブックマークを付けたような気分とでも言いましょうか。

 すこしだけ僕の占有欲を満たしてくれた部分であったことを白状します。

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…9

2005年09月23日 21時39分21秒 | 結婚観
 それから僕たちは毎回握手をして別れるようになりました。
 スキンシップがどれだけ心の距離を縮めるかについては今更言うまでもないのですが彼女との距離感も随分と縮まったように思いました。

 僕たちはデートの時も手を繋ぐようになりました。

 自分の気持ちが手を通して伝わることに驚きと困惑と嬉しさの混じった心で受け止めたのを覚えています。


 「行こうか。」と言って彼女を見たときに、「うん」と言った彼女の手が、彼女自身が何か他のものを見ているのに、手だけで自然と僕の手を探して繋ごうとしていたときで、僕は彼女にとって自然な存在になっていると思えてとても嬉しかったのを覚えています。

 こんな風に僕の恋は少しずつ進んでいきました。

 彼女は常におっかなびっくりでした。

 実際的な恋の行動に関しては奥手過ぎるほどで、僕がいつも彼女の一歩先を歩いていて、たじろぐ彼女をなだめたりすかしたりしながら、進んで行くといった状況でした。
 
 一歩先で案内するはずの僕の方も、当時はかなりの奥手で何をどうしたら良いやら分からないフェミニストでどうしようもなく優柔不断なところがありましたから、どうにも速度の上がりようもない二人でした。

 そのころ彼女と同じ時期に入社した女の子が彼女に相談を持ちかけたらしく、彼女が僕にそのこと相談にきました。

 というより僕に怒りをぶつけてきたと言った方が正しいかも知れません。

 その女の子はTさんといって、僕の彼女Yさんとは好対照の女の子でした。その子も顔立ちの整った子でした。
 出身は山間地でしたが、高校卒業とともに街中に出てきたようです。

 TさんはYさんに比べると恋多き女性でした。

 Tさんの悩みは元彼と偶然会ってHしてしまい、そっちの方が良くなってしまい今の彼と別れたいんだけど、うまく行く方法がないかというもので、とてもYさんの手に負える問題ではないのです。

 彼女は何も答えられなかったそうです。

 それよりもTさんの非道徳的行為に激怒していました。

 「信じられない!」を連発していました。

 その後Tさんがどうなったか知りません。

 相談を振られても僕だってそんな非常識なことは相談に乗りようがありません。

 僕も彼女に賛意を示し「人間としてやっちゃいけないことだよね。」とか言ってました。

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…8

2005年09月20日 23時34分37秒 | 結婚観
 その日彼女はいつになくご機嫌でした。

 僕らはいやに明るい今風の居酒屋で食事をしていました。

 そこの居酒屋のメニューは焼酎をカクテル風にアレンジして呑ませる店でした。
 いわゆる「つまみ」と称するものもサラダだとか、オリジナルな料理が並んでいました。

 僕は当時からオヤジ風で、その手の店だと落ち着かなくてあまり行かなかったものですから、生野菜スティックなんぞ食べたことがなかったのです。

 僕は食べ物に関する好き嫌いはなかったつもりでしたが、新奇の食べ物には腰が引けるタイプでした。

 彼女はメニューの中にアスパラを見つけました。

 「おいしいよね」
 という彼女に僕は「あんなの気持ち悪いよ」と言いました。

 そういうと彼女は俄然張り切りだして

 「えー、おいしいし、栄養あるのよ、ホントに食べたことあるの?」

 と僕を攻めにかかったのです。

 「缶詰に入っていて白くてフニャフニャした奴でしょ。歯ごたえ想像しただけでも食べる気がしないよ。」

 というと

 「グリーンアスパラなら良いんでしょ?」と言います。

 僕はグリーンアスパラの存在を知りませんでした。

 僕がそのことを言うと、信じられないといった目をして

「ホントに?」とまじまじと見つめます。
 
 そしてさも可笑しそうに笑い出したのです。

 「じゃあ、私が教えてあげる。ホントにおいしいんだから。」

 と急にお姉さん口調になって言いました。

 僕たちはグリーンアスパラとホワイトアスパラをオーダーしました。

 おしゃれなガラス容器に入ったグリーンアスパラを僕は恐る恐る目をつぶって食べました。

 その間、彼女がずっと僕を見ているのを意識していました。

 「どお?」

 彼女が聞きます。

 僕は口に拡がるアスパラの青臭さとマヨネーズの味を喉の奥にしまい込むようにして

 「うん!悪くない。」と言いました。


 「でしょ!おいしいでしょ!」と嬉しそうにしています。

 本音を言えば、おいしいと言ったところの気分ではなかったのですが、必死に養生を悟られないようにして、モグモグといつもよりも長く噛んでいました。

 「じゃあ、ホワイトアスパラも食べてみる?」

 というと僕は「もう今日は勘弁して下さい。」と降参しました。

 彼女は勝ち誇ったように、

 「私がaniki(仮名)さんの好き嫌いを直してあげる。」と宣言してしまったのです。

 僕は「尻尾巻いて逃げっちまおうかな」と逃げる振りをすると

 「ダメ!逃がさない!」と僕の腕を掴んで放しません。

 僕は「僕もYさんの好き嫌いを直してあげる」と反撃しました。

 実際彼女の方が僕よりずっと好き嫌いが多いのです。

 でもそのことよりも彼女が僕の腕を掴んで放さない状況の方に僕は舞い上がっていました。

 その日の別れ際、僕はいつもと少しだけ違う行動に出ました。

 それは僕が彼女に握手を求めたことです。

 「今日はどうもありがとう。僕の食べず嫌いを減らしてくれて。」

 というと、お酒のせいかほんのりと頬を上気させた彼女が「この次はホワイトアスパラよ。」といって手を握ってくれました。

 女の人の手を握るのはその時が初めてではありません。

 でも彼女の手は小さく繊細で僕に新鮮な感動を与えてくれました。

 「華奢(きゃしゃ)」という言葉があります。

 これは人全体で受ける印象を表す言葉だと思うのですが、僕は握った彼女の手からそれを鮮烈に感じ取っていました。


 このこと以後、この言葉が僕の女性評価の一つの基準になってしまったくらいに印象深い出来事でした。

 好きな人との握手ってどのくらいの時間が許されるのでしょうか。


 僕は可能な限りいつまでも握っていたいと思いました。

 しかし、政治家が選挙や政治家同士の会談で行われる握手に嫌悪感を抱いていましたから、離すタイミングを測りかねていました。

 「こんどはホワイトアスパラだからね」という彼女に対し、僕は「僕もYさんの弱点を探り出してやる!」と言いながら少し強く握り返しました。


 「そうそう簡単にみつかるもんですか!」

 「いや、すでに目星はついている。」

 「え~!なにい?、やめてよ変なもの食べさせるの。」

 「ははは、大丈夫。そんなことしないから、じゃあ今日はありがとう」と僕の方から手を離しました。

 その間何秒ぐらいあったのでしょうか。

 僕には随分長く幸せな時間だったのです。永遠に時が止まればいいと思いました。

 今の人達から見れば随分低いレベルでバカに大げさなセリフを吐くなと思う人もいるでしょうがその時の僕の本音に間違いはないのです。



えらく長い文章になりました。


 おまえののろけなど聞きたくないと言われる方もいるかも知れないですけど
そういう方は読まないほうがいいです。

 て、最後に書いても意味ないか…。
  
  

 

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…7

2005年09月18日 01時18分49秒 | 結婚観
 好きな彼女に触れてみたいという衝動もやはり性欲の一つの現れなのでしょうか。

 僕は彼女と手を繋ぎたいという衝動をもっていました。
 しかし、僕はそれを抑制していました。

 その程度のことをする勇気もないのかというお叱りを受けそうですが、これは僕の勇気の問題はもちろん、手を握った途端に彼女の僕に対する気持ちがガラス細工のようにはじけ飛んでしまうのではないかという危険性が存在していたという予感が僕を押しとどめるのです。

 女性というものは男性にとって永遠の謎です。


 彼女にしても僕の理解力では到底及ばない感情の動きをすることがありました。
 ごく些細なことで以上にヒステリックになってしまうことが度々ありました。

 僕としては感情というものはいつも線で繋がっていて、それが躁の状態と鬱の状態の間を緩やかなカーブを描きながら、延々と続いていくものだという前提がありました。

 ところが彼女の場合、他に女の人を知らなかったため、時として突然怒って口もきかない状態が続いたりするのです。

 僕はいつも理由が分からずにオロオロしました。

 ある時は喫茶店に入って食事を注文し、置いてあるマンガを読み出したら、急に不機嫌になり、「帰る!」と言い出したのです。

 僕には彼女の突然の怒りにとまどうばかりでした。

 とにかくマンガを返し、なだめてチョコパフェを追加注文し、大急ぎでもってくるよういいました。

 彼女は「そんなのいらない。」とすねてますが、一口だけでも食べてみてと懇願し、やっと食べてもらいました。

 作家太宰治が自らの体験を通じて掴んだ極意「女性は甘いものを食べさせると機嫌が直る」を実践したのですが、これは少し効果がありました。

 しばらくして落ち着くと何で怒っているのか聞いてみました。

 そうすると「二人で喫茶店に入ったのに、話をしないで、いきなりマンガを読み出したからだ」そうです。

 でも同じようなことは今までにもあったのです。それでその時は怒らなかったですし、僕がそのことを「今まではそんな風に怒らなかったよ。」というと「今までは我慢していたけど、今日は落ち着いて話したかったことがあったの。」といいました。
 
 しょうがないので僕が謝って改めて彼女の話したかったことを聞くと

「今日はもういいです。」というのです。

 そのうち僕は彼女が自分自身の感情をコントロールできないようになる日が、ある一定の周期でくることに気付きました。

 そうすると僕はその時期だけは特に気を付けるようになりました。

 そこを乗り切れば後はとても優しい人ですし、わがままを言うどころか、自己主張そのものが人として恥ずかしいと思っているのではないかと疑うくらいなので、僕はいつも彼女の笑顔に包まれていました。

 でも気を付けていてもいつも上手くいくとは限りません。

 僕も色んな手を使って彼女の機嫌を直そうとしました。

 ある時は30センチくらいある電池式で動くゴキブリの縫いぐるみみたいなおもちゃを買ってきました。
 そいつはハンマーがついていてそれで殴ると奇声を発して逃げ回るんで、追いかけながら叩き続けるのです。

 またある時は原因不明(理由が僕ではないことが分かっている)でひどく元気がなくて、尚かつ決して僕には話そうとしないとき、僕は凧揚げで有名な中田島砂丘の海岸に連れていき、海側に僕がたち、海と夕日を背景に大きな声で「フレー!フレー! Y子…。」とエールをきり、巡回中のパトカーが僕の大声を聞きつきて、駆けつけるという事件になったこともあります。

 20数年前に浜松駅の新幹線改札口に、どでかいバラの花束を両肩に担いで彼女を30分以上待っていたのは僕です。

 とにかく恥ずかしかろうが、何だろうが彼女のためには何でもやりました。

 「101回目のプロポーズ」では武田鉄矢がトラックの前に飛び出しましたが、僕もまけてはいません。

 僕は自分がおしゃれじゃないことは自覚がありましたから、どう頑張っても格好悪いのは知ってました。

 だけど彼女を想う気持ちを伝えるために、笑われようがバカにされようが、それで彼女がこっちを向いて笑ってくれればそれでいいと思っていました。