AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

歯のくいしばりに対して顎二腹筋後腹への運動針が有効な例(57才、女性)

2022-08-31 | 歯科症状

1.主訴:ふと気づくと、無意識に歯をいしばっているのを自覚する

2.現病歴:20年来、歯のくいしばり症状がある。歯科受診したが、マウスピースを作っただけだった。整骨院や整体院に行くもまったく効果なかった。

3.所見
①開口は正常に可能→外側翼突筋の伸張性は正常。
②下顎を前に突き出す動作(下顎頭の前方滑走)が不足→外側翼突筋下頭の過緊張を疑う。
③下顎を前に突き出した姿勢で、顎の左右ずらしは正常→内側翼突筋の緊張度は正常
④本例の顎二腹筋後腹の圧痛(+)→下顎頭を後方に引く作用筋緊張

4.病態分析
①直接原因は、顎二腹筋後腹の過緊張過により下顎後方引きつけ力の増強による。
②外側翼突筋下頭の緊張も強い。外側翼突筋には下顎頭を前方滑走させる作用があって、顎二腹筋後腹と外側翼突筋下頭の協調運動により下顎が前に出しての開口動作を容易にしている。このことから外側翼突筋下頭も下顎後方への引きつけに関係しているのだろうか。

③動物は、敵と戦う際に噛みつくため、歯を強く食いしばる。その原始的本能がヒトに残っていると、緊張や不安を感じる時に歯をくいしばるのであろう。

5.針灸治療

1)外側翼突筋下頭刺針(下関直刺)
 下関から外側翼突筋へ直刺1~2㎝直刺。直刺では外側翼突筋下頭中に入る。刺したまま痛くない範囲で患者に開口運動、下顎の横づらし運動を10回ほど行わせる。
 ※外側翼突筋上頭への刺針は、顎関節症Ⅲ型時(開口時に関節音、開口不十分)に使用する。

2)顎二腹筋後腹への刺針
仰臥位で上背部にマクラを入れ、頸を過伸展肢位にする。これは顎二腹筋を伸張させた状態にするものである。この状態で顎二腹筋後腹(天容~舌骨部あたり)圧痛硬結に刺針。

6.初回治療直後効果:下顎のつき出し程度が改善。下関部の圧痛軽減


7.解説
歯ぎしりや歯の食いしばりは、マウスピース治療を除き、歯そのものに対する治療で治すのは困難とされている。歯ぎしりは、就寝している際に無自覚的に生ずる強い歯の食いしばりで、その強さによりギシギシと音をたてるほどである。この力のために歯にダメージを与えることはあってマウスピースを推奨するのだが、一方ではストレス発散の一手段だとする見方もあって、たまの歯ぎしりは放置しておいてよいとする見解もある。
歯のくいしばりは、ただし歯ぎしりに比べて、噛む力は弱く、噛む時間も短いが、 顎関節症の一部と捉えることもできるので治療の対象となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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