現代医学的鍼灸治療

針灸師と鍼灸ファンの医師に、現代医学的知見に基づいた鍼灸治療の方法を説明する。
(背景写真は、国立市「大学通り」です)

当ブログにようこそ

3017-10-07 | 現代医学的針灸の公開にあたって

                 「現代医学的鍼灸治療」に、ようこそ

 ご関心のある方は、長年にわたり、諸先生がたの治療文献をたよりに勉強してきましたが、針灸臨床を始めて28年(平成18年現在)が過ぎた現在、自分なりの針灸治療も確立しつつあるように思った。単なる知識の受け売りにとどまらず、自分なりの見解をつけ加える内容にしたいと考えている。記す意味は、これまで世話になった諸先輩への御礼、および真摯に針灸を研究している先生がたのご参考に供することにあります。なお本ブログは、平成18年3月10日から配信開始しています。

当ブログに対して、ご意見・ご感想を頂戴することは大いに歓迎するところです。しかし今後匿名で私に回答を強いる質問等につきましては、今後返信しないことにしました。(平成30年2月15日)

 

 

 


 

 

 

コメント (8)

鍼灸講習会<鍼灸奮起の会>発足のお知らせ Ver.2.0

2018-11-17 | 雑件

現代鍼灸講習会<鍼灸奮起の会>  新規開催
講師 似田 敦 
元東京衛生学園講師・あんご針灸院院長

6回シリーズで来院することの多い関節と脊柱疾患をとりあげて実技指導します。第1回~第4回の勉強会は、平成30年4月15日に鍼灸学会tokyoで行った<私の鍼技法と現代鍼灸治療 背腰殿痛・膝関節痛を例に>の改良版ですが、この時はマンツーマンでの実技指導まで手が廻りませんでした。今回は実技指導を受けるチャンスです。また第5回頸腕痛、第6回肩関節痛の講習会は、初めて行うものです。私が普段の臨床で普通に使っている実戦的な内容に限定して実技指導します。

※講習会は、テーマを設けて行いますから、1回1回の独立性があります。全回通して出席できなくとも大丈夫です。
講習会2回目以降の参加申込み締め切り日は、それぞれ講習会実施の1週間前の日曜日になります。

(立位での内・外膝眼刺針 「鍼灸tokyo 講習会に於いて)

 


日時:毎月 第1と第3日曜日、午後6時15分~8時15分
(第1
回は6時30分~8時30分でしたが、15分繰り上げました)

会場:国立市中1丁目集会場

参加資格:鍼灸師、および鍼灸学生

講習料:1回4000円(学生1回3000円)当日支払い

        毎回、カラー版オリジナルテキストを配布します。

募集人数:毎回8
~12人位(参加者少数の場合、あんご鍼灸院内で実施)

申込〆切日:開催予定日の1週間前。


応募方法

<あんご鍼灸院>まで電話またはメールで御連絡ください。その際、①ご氏名、②住所、③郵便番号、④電話、⑤メールアドレスをお知らせ下さい

メールアドレスは次の通り

nitadakai825@jcom.zaq.ne.jp

  〒186-0004 東京都国立市中1-11-26   電話 042(576)4418
 

※残枠の人数は、平成30年11月17日現在です。

<第一期>

第1回 10月7日 背腰痛の針灸治療 (
終了) 
①撮診の技術
②側腹位での背部一行刺針
③立位での背部一行刺針
④力鍼穴からの大腰筋刺針と腰方形筋刺針
⑤瘀血性腰痛に対する上仙細絡からの刺絡


第2回 10月21日  殿下肢痛の針灸治療① (終了) 
①梨状筋刺針(坐骨神経ブロック点刺針) 
②横座り位での中殿筋と小殿筋刺鍼 
③股関節マニプレーション
④仙腸関節刺針(側臥位にて)

第3回 11月4日 殿下肢症状の針灸治療② (終了) 
①内閉鎖筋刺針
②仙腸関節運動針(立位にて)

③陰部神経刺針
④八髎穴の選択と刺入技術
⑤仙結節靱帯刺針

第4回 11月18日 膝痛の針灸治療 (受付終了)
①大腿四頭筋緊張に対する仰臥位膝屈曲位での大腿直筋停止部(鶴頂)刺針
②膝関節包過敏に対する立位膝伸展位での膝蓋骨周囲(内外膝眼)
③鵞足炎に対する鵞足浅刺
④膝窩筋腱炎に対する膝立位での膝窩筋(委中)刺針
⑤立位膝伸展位での膝蓋骨周囲刺針

第5回 12月2日 頸痛の治療   (受付終了)
①天柱・上天柱の刺針の体位と技法
②頸部一行刺針の体位と技法
③扶突からの前斜角筋の触知と傍神経刺
④小胸筋症候群に対する上中府穴刺針
⑤坐位での肩中兪深刺(腕神経叢刺激+星状神経節刺激)

  
 第6回 12月16日 肩関節痛の治療  (受付終了) 
①棘上筋腱炎に対する肩井から棘上筋腱に達する斜刺
②棘上筋腱炎に対する肩髃から棘上筋腱への水平刺と刺針体位
③肩甲胸郭関節可動筋に対する大円筋(肩貞)刺針と肩甲下筋(膏肓)刺針
④棘下筋TPs放散痛に対する天宗刺針と刺針体位
⑤凍結肩に対する伝統的整骨手技
⑥凍結肩に対するリズミックスタビリゼーション手技

 

 <第二期>  内容は第一期と同じです。

第1回 平成31年1月20日 背腰痛の針灸治療 (受付終了)

第2回 平成31年2月3日  殿下肢痛の針灸治療① 残枠3

第3回 平成31年2月17日 殿下肢痛の針灸治療② 残枠4

第4回 平成31年3月3日 膝痛の針灸治療 残枠2名


第5回 平成31年3月17日 頸痛の治療  (受付終了)
 
第6回 平成31年4月7日 肩関節痛の治療  残枠1名


<第三期>


第1回 平成31年4月21日 背腰痛の針灸治療 残枠3名

これをもって一旦<奮起の会>針灸実技講習会は終了させていただきます。

平成31年6月頃になったら、これまでと別症状の<上肢症状の針灸実技>と<下肢症状の針灸実技>(それぞれ2回づつ計4回)を2週に1度のペースで実施する用意があります。

御要望が多ければ、第一期(胸腰殿部痛、膝痛、頸痛、肩痛)の針灸実技を、翌年10月頃になったら繰り返して実施するつもりです。

 

 


 

コメント

肩中兪刺針の針響 Ver.1.2

2018-11-15 | 頸腕症状

1.肩中兪刺針は腕神経雄に影響を与える
(鈴木由紀子:腕神経叢の圧迫に肩中兪「疾患別百科 頚肩腕痛」、医道の日本社、2001.3.25)

取穴:座位。大椎穴(C7T1棘突起間に大椎をとり、その外側2寸。

  ※定喘:大椎の外方1㎝、治喘:大椎の直側(外方0.5㎝)   

刺針:2寸4番針にて直刺4㎝。(椎体の外側を深刺する)


考察:
肩中兪の直刺深刺は解剖学的は腕神経叢に直接命中するのではなく、僧帽筋→肩甲挙筋→中後斜角筋→前斜角筋と貫く。腕神経叢は、前斜角筋と中斜角筋に挟まれた形で存在するので、肩中兪の針は間接的に腕神経叢に影響を与える。


.新針法の肩中兪刺針の針響
(長尾正人「弾発指から上肢の神経痛・五十肩まで」医道の日本、平成11年12月号より)
 
刺針法やや上方からの深刺→肩関節部へ針響(肩甲上神経刺激)                  

ほぼ中央からの深刺→上肢へ針響(橈骨・正中・尺骨神経刺激)            
やや下方からの深刺→肩甲間部のコリに効果(胸神経後枝刺激か?)           

※上2者は、腕神経叢刺激だろうか。括弧内の神経は筆者推定。  


3.肩中兪刺針の私的見解(似田)

 
坐位で2寸4番針にてやや脊柱側に向けて10°の角度で直刺4㎝。椎体の外側を擦るように 入。深刺すると斜角筋・腕神経叢刺激になり、星状神経節にも影響を与えるのだろう。したがって頸椎神経根症、前斜角筋症候群に適応があるのは勿論、頸部交感神経節刺激という点から、バレリュー症候群、気管支喘息、などにも適応がある。

肩中兪から斜角筋に刺針し、さらに少々深さを増すようにすると肩甲間部に響くようだ。

 

 

長尾氏は、肩中兪から下方に深刺すると 肩甲間部のコリに効果あると記しているが、これを肩甲間部に響きが得られるというように解釈し、その針響の起こる理由を考えてみた。胸神経後枝を刺激するとも考えたが、あまりに深刺になるので無理があった。
 
しかし前斜角筋のトリガーポイントを考えると、この疑問は氷解したようだ。斜角筋トリガー活性時、放散痛は肩甲間部にも出現するということだ。さらには甲間部以外にも、上肢に響いたり、肩関節部にも響くようだ。針の方向によって意図的に針響方向を変えるのは難しいが、被験者の痛み閾値が低下している部分(すなわち患部)に響くということだろう。


先に紹介した鈴木由紀子氏の考察は、当時はまだトリガーポイントという考え方が普及する以前の頃のもので、やむを得ない。

 5.代田文誌の治喘刺針の針響報告
(「針灸臨床ノート」第4集、医道の日本社刊、昭和50年6月30日)

肩中兪についての上記文章を書き終えた後、同じようなことを代田文誌先生が書き残していたことを想い出した。治喘の穴」とのタイトルで、「快速針刺激法」にでている治喘穴についてであった。治喘穴との名称は、これまでわが国では知られていなかった。文誌が、これまで治喘穴を大杼一行として用いていたものだった。「快速針刺激法」の記載は次の通り。

取穴:C7棘突起とTh1棘突起間に大椎をとり、その2~3分傍ら。骨縁。
主治:喘息、咳嗽、脊柱両側の痛み、後頭部の痛み。
針法:直刺1~1.5寸
針感:しびれて腫れぼったい感じが、下方に伝わり、背部または腰部に達する。

文誌自身の体験:昭和46年12月初旬に流感となった。葛根湯を飲んだり、身柱や風門に灸したがよくならず、やや慢性して咽痛や咳が出はじめ、夜中に咳がでて呼吸困難を感じるほどになり、布団の上に座っていなければならぬほどになった。
そこで自分で治喘と思えるところに針を打ってみたら、やや楽になったので、息子の文彦(代田文彦先生)に「快速針刺激法」の通り、治喘の針をしてもらった。
針尖を脊柱に沿って下方に向け、約1寸5分ほど刺入してもらった。すると脊柱に並行して下方に5寸jほどひびいていったが、針を抜いて更に直刺1寸ほどしてもらったら、針のひびきは、頸の方から咽の方に達した。すると間もなく咽が楽になり、咳が鎮まってきて、体を横にして眠ることができた。(以下略)

似田の見解:感冒は通常、発病後5日前後までは進行期(=副交感神経優位状態)であり、その後に回復期(=交感神経優位状態)に変化して発病7~10日程度で治癒する。副交感神経優位の症状とは、鼻水・発熱・だるさ・食欲不振などで、交感神経優位症状とは硬い黄色の鼻水出現であるが、この交感神経優位段階では元気を回復しており、日常生活ができるまでになっている。
しかし患者の中には7~10日どころか、数週間もカゼをひいている、カゼが抜けないという者がいる。これは、なかなか交感神経優位状態に移行できない者なのだろうと筆者は考えている。この時のカゼの治療は、交感神経を優位にするような施術を行う。具体的には「身体に活をいれる治療」で、座位にての強刺激の施灸がよい。

治喘から深刺しても斜角筋に達しないが、この部の筋(長短回旋筋など)状態が過敏状態となっていたので斜角筋に影響を与え、併せて交感神経優位に導いたとものと解釈した。

 

 

コメント

肩の外転制限を伴う上腕外側痛に対して棘下筋ストレッチさせての天宗と肩貞下方の刺針が有効な例 Ver.1.2

2018-11-12 | 肩関節痛

主訴:上腕外転時の痛みを伴う運動制限

本ブログは、2012年10月9日報告の「五十肩で上腕外側痛を生じる理由と治療法」(以下アドレス参照)の内容を、さらに工夫した治療内容となっている。

#mce_temp_url#

現病歴

2ヶ月ほど前、細い上り坂を犬を連れて散歩していた。すると正面から大きな犬を連れた人が来たので、あわてて犬を抱っこし、その際に転倒して階段を何段か滑り落ちた。その直後から左頸部痛、両臀痛、両膝痛を生じたが、現在最も辛いのは左腕を上げようとすると外転120度で上腕外側が痛くて上がらないという。ヨガインストラクターをしているので、この状態では指導できないとのこと。
理学テスト
他動的は肩関節のROM正常。アームドロップテスト正常。ペインフルアークなし。
病態把握:肩関節外転運動に関する筋膜症。圧痛をみると三角筋に顕著な圧痛はないが、肩甲骨の天宗に強い圧痛あることから、棘下筋の筋膜症と診断。(棘下筋のトリガーポイント刺激は、上腕外側に放散痛をもたらすことを知っていると治療に大いに役立つ。)




治療
患側上の側臥位にて、2寸4番針にて天宗刺針し、痛みを伴う角度まで上腕外転の他動運動を数回行わせた。これで効果不十分だったので、座位にして再び天宗刺針を行い、上腕外転の他動運動を行わせると、さらに症状軽減した。外転は170度程度までに改善した。
 このような治療を1週間に1~2回行わせたが、患者がいうには、現状ではネコの伸びのポーズのヨガができないという。いつもならこのポーズでは、自分は胸が床につくのに、と言った。そこでベッド上でそのポーズをさせ、その状態で天宗刺針をして軽く雀啄して抜針してみたが、直後からネコのポーズが軽々できるようになった。


勉強になったこと

ある姿勢にして痛みが出るのであれば、その状態にして症状部の圧痛点を探り、刺針すると効果が増大することはもはや常識だろう。すなわち過緊張状態にある筋をストレッチさせて圧痛点刺針を行うのがよい治療効果を生む秘訣である。今回はネコの背伸びのポーズというもののあることを知り、これが棘上筋を強力にストレッチさせる方法であることを知った。

本稿を発表して9ヶ月後、これまでネコの背伸びのポーズは棘上筋をストレッチするものと思っていたが、大円筋のストレッチかもしれないとう変化した。棘上筋刺針は肩甲骨棘下窩ほぼ中央の天宗を刺激するが、大円筋は肩甲骨外側縁から上腕骨小結節稜を結ぶので治療点は肩甲骨外側縁の肩貞やや下方になる。

 

 

  

 

 

追記

昔、あるお殿様が、弓を引こうとした際、右肩に痛み出現して十分な力が出せなかった。そこで何人かの有名な針医に治療してもらったが、結局効き目がなかったという。そうしたある時、別の針医がやってきた。その針医は、殿様に実際に弓を引かせて肩に痛みを出現させ、その部位に刺針したところ、弓が引けるようになった。殿様は大変喜び、褒美をとらせたという。痛い動作を出現させ、その姿勢で出現した圧痛点に刺針することの重要性を示した逸話であった。 

コメント (2)

書籍「閃く経絡」(医道の日本社刊)を前にして

2018-10-10 | 古典概念の現代医学的解釈

ヶ月以上ブログを更新できていな状況にある。その訳として<鍼灸奮起の会>の準備もあるが、今話題の「閃く經絡」を読み始めたからである。

2ヶ月ほど前、驚いたことに韓国の李珉東先生から「閃く經絡」(日本語訳)が届いた。勿論大いに感謝したのだが、読み解くのに時間を要している。どういう感想をもったのかを、李珉東先生に報告できていないことに苦痛を感じている。今回はとりあえず「閃く經絡」の初見の印象を記すことで、ず李先生への返信に代えたい。


古典とは違って文章自体は平易なのだが、内容が難しい。難しいというより各分野の科学知識を理解していることを読者に要求する。当面、発生学(三胚葉、形成中心)、ファッシア、フラクタル理論などの知識が必要となる。(本書後半は未読なのでさらなる知識が必要となるだろう)
 
一般的な読者は、知らない概念を、パソコンで基礎概念を調べながら、ゆっくりと繰り返し読み進めることになる。 

ところで他の読者はどのような感想をもっているのか気になったので、パソコンで読者コメントをチェックしてみると、コメントを書いている者は少なく、その内容もマト外れなものが少なくなかった。本書を、スゴイ、革新的だ、眼からウロコなどと表現してはいても、どうスゴイのか書いていない。まともな読者であれば、読み解くのに時間がかかっているのだろう。

読破することが難しい本として、例えば石川太刀雄著「内臓体壁反射」がある。私が復刻版を購入して30年経つが、まだ時々読み返して新たな発見がある。代田文彦医師は、「この本は世に出したのが早すぎた」といっていた。当時の人々には理解を越えていた内容だったというのがその理由。

本書は発生学と經絡に関係について論じているが、確か石井陶白氏(鍼灸師)も同じようなことを書いていた。しかし難解だったこともあって賛同者は少なかった。しかし時代は終戦後で、駐留軍により鍼灸を禁止させられそうになる危機があった。石井氏の研究が、鍼灸継続に向けての役割を担うという価値をもつようになったので、御輿にかつがれる存在になった。
まあ結果的に石川太刀雄らの努力が実を結んで進駐軍に鍼灸継続の承諾を得ることとなったのだが、鍼灸師の多くははそれに一安心してか、石井氏の研究に興味を示さなくなった。

そのことを思うと、書籍「閃く經絡」は、良いタイミングで出版されたと思う。本書が重要性を多くの読者は理解できるまでに成長したからである。
 
本年中に、本書を読み解き、ブログとしてまとめてみたいと思っている

コメント

後頸深部筋の解剖と鍼灸治療点

2018-09-09 | 頸腕症状

.後頭下筋を除く後頸部筋の筋構造
   
背部にある筋のうち、脊髄神経後枝に支配される筋群を固有背筋とよぶ。したがって脳神経に支配される僧帽筋や、腕神経叢に支配される広背筋、肋間神経に支配される上・下後鋸筋は脊髄神経前枝の支配のため、固有背筋に含めない。

後頸部の筋について個別にまとめるが、後頭下筋群については、すでに本ブログでも書いているので省略する。

<ブログ:本稿での後頸部の経穴位置と刺激目標>

https://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=813c479992742718841d4e2777582ff0&p=1&disp=50

 

 2.長・短回旋筋

片側の回旋筋が緊張すると、同側の脊柱が同側に回旋する。または回旋し過ぎないよう、ブレーキをかけている。本筋はC3以下の頸椎・胸椎・腰椎に存在するが、胸椎部で発達しており、                     胸椎部の異常が多い。

 「上体をひねる時に痛む」という
訴えになることが多く、臨床でも多くみられるものである。
痛む部位は、脊髄後枝に従うので回旋筋をトリガーとして斜め45°外下方に痛みが放散する。結果的に、患者の訴える痛みは、腰の外下方になることが多い。

 

 上図:一般に短い筋ほど深部にある。  比較的長い筋は、これを覆うように起始停止がある。

 

 

3.頭半棘筋・頸半棘筋・胸半棘筋
   
頭半棘筋は頭板状筋の深層にある。筋走行は、椎体横突起と5つ以上上位の棘突起を結ぶ筋だが、頭半棘筋は棘突起に停止せず、後頭骨後頭隆起に停止する。

   
頭半棘筋は太く発達しており、頭の重量を支持し、後頭下筋は動作によって変化する頭位を延髄に伝達し、姿勢制御に関係している。
これに対して後頭下筋群は、体動によって変化する
頭位の変化を中枢に伝達することで姿勢変化に対応している。
   
頸椎を意のままに動かすには頸部の筋力だけでは足りず、胸椎部の筋も必要となるので、頸半棘筋・胸半棘筋は、頸椎を動かす(とくに屈伸方向)作用のためにあるといえるだろう。寝違い様の痛みの場合、頸半棘筋や胸半棘筋に刺針したまま、頸部の自動運動を行わせると、次第にADL拡大してくることを、しばしば経験するのも、これを裏付ける。

   
電車の長椅子に座ってうたた寝している際、頭半棘筋が緩むほど眠りが深くなれば、座っていられず、長椅子に倒れるようにして寝込むことになる。

頭半棘筋は、後頭隆起部の上天柱とC1~C5棘突起外方、約1~2㎝の部にトリガーができ、後頸部と前頭部あたりに放散痛をもたらす。頭半棘筋と頸棘筋の筋腹は、基本的に椎体の幅から外側にはみ出さない。

実際の臨床では回旋筋と半棘筋は背部一行深刺すれば同時刺激になる。

 

 

 


 


4.頭・頸板状筋
        
頭板状筋の機能は、頭蓋骨の伸展もあるが、主作用は左右回旋である。他の頸部固有背筋が、頸椎横突起から外方に飛び出さないのに対して、頭板状筋はC3~Th3あたりの棘突起を起始として、風池~完骨の後頭骨から側頭骨乳様突起に停止する。したがって、停止部に対する主治療点は、風池・完骨などである。

風池刺針は、頭板状筋→頭半棘筋→大後頭筋と入ってゆく。
   
鍼治療は、ストレッチした状態で刺針するのがよい。右の風池に圧痛があったら、顔を左に回旋させて右頭板状筋を伸ばした状態で刺針すると治療効果があがる。
頭板状筋の起始、頸板状筋の起始に対する治療は、下部頸椎~上部胸椎の長短回旋筋や頸半棘筋に対する、背部一行深刺と同じ方法でよい。

後頸の深部筋では頭・頸回旋筋だけが横突起の外方よりも飛びだして走行する。
                                                                        
                                                                        
                                                                        
                                                                        
        

5.脊髄神経後枝の反応

以下に椎間関節刺激の放散痛の図を載せた。椎間関節は脊髄神経後枝の支配という点で、固有背筋と同じでなので、筋緊張による後枝支配でもやはり同様の放散痛を生むと私は考えている。
具体的には症状部を見出し、そこから斜め45°内上方の背部一行上の圧痛点に深刺することが、関連する固有背筋の痛みを改善すると考えている。


6.総括と刺針体位

                                                                       
                                                                        
1)後頸部の刺針において、上記では多裂筋は対象外である。

2)後頭骨-C2椎体の高さでは、頭・頸半棘筋と頭・頸板状筋、それに後頭下筋が治療対象になる。     

3)後頭下筋では主に、上天柱深刺により、頭半棘筋→大後頭直筋を刺激する。大後頭直筋は純運動性なので痛むことはないが、コリを伝える。また大後頭神経を緊張させ、そ
れが三叉神経第1枝と連絡するので、眼精疲労を引き起こすことがある。また後述の理由でめまい症状と関係がある。         

4)頭半棘筋は、頭頸の重量を静的に支える筋力の強い筋である。本筋の脆弱では、椅子に座ってうたた寝することができない。これに対して、後頭下筋群は、頭部の動的平衡感覚に関係。
頭半棘筋はC1~胸椎全域の背部一行深部にあるが、後頸部痛を起こしやすい。症状部に応じた頸部一行線深刺が必要になる。

  

 

 

5)頭板状筋・頸板状筋

他の頸部深部筋と異なり、頸椎回旋の効率がよい構造をしている。刺激もこれまでの一行線刺激ではなく、横突起よりも外側での刺激が効果的である。代表穴は風池。頸椎を回旋させての刺針が治療効果を増大させる。正中に近いところや短い筋は、放散痛が広い範囲に及びにくいが、頭板状筋や頸板状筋は、椎間関節症の放散痛エリアかのような反応を呈するらしいと私は思っている(ケルグレムが深部筋に食塩水注射をした時の反応がそうだった)ので、次のトリガーと放散痛部位の図を参考にしている。 すなわち障害筋の斜め45°外下方に症状が広がるようだ。

  

                                              
                                                                        

6.頸部解剖断面図
          

 

 

                                                            
                                                                        

コメント

本稿での後頸部の経穴位置と刺激目標

2018-09-07 | 経穴の臨床的な意味

1.序 

経穴の位置は、その古典的解釈や世界標準化などにより微妙に位置が変わることがあり、教科書もたびたび修正されてきた。その一方で施術者個人の刺激意図により、教科書とは異なった治療点を使用することも、これまた多い。

当然のことだが、学校協会編「經絡経穴学」に定めた経穴位置が今日の基準になっているので、本稿でもこれに準じているが、解剖学的観点から教科書にない治療ポイントも使っている。この新たな位置について、経穴名を別に定めた。具体的には「上天柱」「下玉枕」がこれに相当する。
種々の内容を書いていく上で、その最も基本となる経穴位置が不鮮明であると話にならない。まずは本稿での経穴の正確な位置を提示しておく。

 

2.天柱・上天柱

教科書ではC1C2椎体間の外方1.3に取っているが、何を刺激しようとしているのか治療の狙いが不明瞭である。本稿では、この天柱を使わず、教科書天柱の上1寸の部位を「上天柱」と命名し、臨床に使用している。上天柱は後頭骨-C1椎体間で、頭半棘筋→大後頭直筋と刺入できるが、大後頭直筋刺激用として用いることが多く、従って深刺になる。適応症は、後頭部鈍痛、眼精疲労などである。



3.風池

風池は、乳様突起下と瘂門(C1C2棘突起間で、左右天柱の間)を結んだ中央を取穴するというのが教科書である。これは後頭骨-C1間にとることを意味するので、上天柱と同じ高さになる。古くから風池は対側眼球に向けて刺すように指導されるが、そうすると頭板状筋→頭半棘筋→大後頭直筋刺激にな、治効は上天柱と大差ないものになる。伏臥位で、風池からベッド面に対して直刺すると、後頭三角の間隙に入る。この深部には椎骨動脈があるという解剖学的意義はあるが、治療としての意義は不明である。


4.玉枕と下玉枕

外後頭隆起の直上に「脳戸」をとり、その外方1.3寸に「玉枕」をとる。僧帽筋の停止が外後頭隆起なので、脳戸や玉枕は僧帽筋停止外縁刺激になる。また大後頭神経は、玉枕穴から浅層に出てくる。ワレーの圧痛点に一致している。
脳戸の下方で、後頭髪際から入る1寸に「風府」をとる。風府の外方1.3寸に「下玉枕」をとることにした。下玉枕は、頭半棘筋の停止部なので、臨床上刺激価値が大きい。

 

 

 

 

 

 

 

コメント

『名家灸選』の腰痛の灸デモ(萩原芳夫先生)Ver.1.1

2018-09-02 | 灸療法

毎年春秋に開催されている現代鍼灸科学研究会は平成30年春、ゲストとして萩原芳夫先生をおよびした。萩原先生は、かつて日産玉川病院第2期鍼灸研修生で、研修後に地元埼玉県で灸専門治療院として長らくご活躍されていたが、ついに昨年閉院されるに至った。

何しろ、この治療院は、『名家灸選』に基いた灸専門院であって他に類がなかった。是非ともこの方法を学習したいという意見が当研究会内部で持ち上がり、招待する運びとなった。
まずは、鍼灸院でおそらく最も多いと思える<「腰痛」に対する名家灸選の治療>というテーマで一時間強の講義と実技を行っていただいた。

1.名家灸選と名家灸選釈義

『名家灸選』は文化2年(1805年)要するに江戸時代後期に越後守和気惟享が第1巻を著し、続いて2年後に同志の平井庸信が続2巻を編著した。日本の民間に流布されている秘法、あるいは名灸と称賛されているものの中で、実際に効果のあるものを収集・編集したものである。

なお昭和の時代に灸治療家として名を馳せた深谷伊三郎には多くの著作があるが、同氏最後の著書で最高の書とされる『名家灸選釈義』は、『名家灸選』を現代文に訳し、現代医療と照合し実際の効果を検証したものであったが、今回の萩原先生の講義は『名家灸選釈義』とは、直接的には関連がない。 

萩原先生が提示されたのは次の内容だった。


2.名家灸選にみる腰痛の治療「帯下、腰痛および脱肛を治する奇愈(試効)

現代文訳:稗(ひえ)のクキを使って、右の中指頭から手関節掌握横紋中央の掌後横紋までの長さをはかり、この寸法を尾骨頭下端から、背骨に上に移し取り、その寸法の終りの処に印をつける。またその点から同身寸1寸(手の中指を軽く折り曲げた時にできる、DIP関節とPIP関節の横紋の橈側側面の寸法)上がる処にさらに印をつける。合わせて2穴で、この2穴の左右に開くこと1寸ずつ。合わせて6穴に灸すること各7壮。

 

 

 

 

 

 

 

3.萩原先生の治療デモ

1)ヒモを使っての取穴
原著ではヒエのクキを使うが、現在では入手困難なので、ホームセンターで直径2㎜の紙ヒモを購入し、それを洗濯ノリをつけて乾燥させたものを使用した。始めて目にするものだったが、黄土色をしていることもあり、一見すると細めの線香のような外見だった。線香にしてはきわめて真直ぐで、さらに軽いこと、皮膚に触れても冷たく感じないこと、安価なので、必要に応じてハサミで簡単に切ることができるのが特徴。

ヒモ状にひねったモグサ入れ

 

椅坐位で、肘をベッドにつけ状態を前傾姿勢にする。名家灸選の記載に従って、4点灸点を取穴。取穴には細めのフェルトペンを使用。前傾姿勢にするのは、脊柱の棘突起や棘突起間を触知しやすくするためとのこと。

  

 2)艾炷をたて次々点火

紫雲膏薬をツボに薄く塗り、艾炷を6個立て、線香の火で次々に点火(同時に何ヶ所も熱くなる)。艾炷は中納豆粒(米粒大と小豆大の中間)くらい。初めて灸する者は1カ所15壮くらい、経験者は30~50壮行う。何ヶ所か灸していると、場所によっては熱さを感じにくい場所があり、このような時には、そのツボだけ余分に壮数を重ねる。
事前にモグサ(普通の透熱灸用)をコヨリ状に細く長くひねっておく。太さは、直径3㎜、4㎜、5㎜ほどの3種類で、臨機応変に太さを選ぶ。長さは20㎝ほど。1本のモグサのヒモで30個前後の艾炷をつくれる。

 

 

3)腰下肢痛を訴える患者に対しては、上記の腰仙部への灸治療にプラスして下肢症状部にも施灸したのだが、次第に下肢症状部には灸することはなくなった。


4)普通の鍼灸院にかかるつもりで、萩原鍼灸治療院にかかる患者はあまりいない。ほとんどは患者からの紹介なので、覚悟して灸治療されに来院したとのこと。まれに熱いので灸治療中止することはあるが、基本的には当方に考え通りの壮数を行うことができる。



4.現代鍼灸からみた名家灸選

いろいろな症状に対する灸治療について書かれているのは、「名家灸選」にしろ他の古典書にしろ大きな違いは見られない。ただし項目によっては、記載通りの灸治療を自分が行ってみたところ、効果あった(試効)という記載がところどころにみられる。江戸時代の灸治療を知ることができ、興味深いものであった。
とはいえ、当然ながら現代的な病態分析、治療効果に対する分析はみられない訳で、記載されている行間を読み取ることで、どうして古人はそのように考えたのか、その真理なり誤謬なりを追究する姿勢が必要となるだろう。

 

  勉強会後の恒例の懇親会

 

☆中国の柴暁明先生が、本ブログを中国語に翻訳して下さいました。我很感謝

 https://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzU0Nzg5MjkzNQ==&mid=2247483867&idx=1&sn=47b6902b159fea328ac501ef062020c6&chksm=fb463a73cc31b365d0c76b2d2d8eeeaaa6d58bea74228f34d603f6d928fc7b5ce3a5c75d98a4&token=394854727&lang=zh_CN#rd

 

 

 

 

 

 

 


 

コメント

道教によって影響をうけた古代中国の生命観 Ver.1.4

2018-09-02 | 雑件

1.序

『黄帝内経』が編纂されたのは漢の時代(BC202~AD220)だとされている。当時、道教は儒教とならんで、中国人の精神構造の基盤となった。
中国の古代医学も道教の影響を強く受けていたと考えられる。道教を学習することは中国の針灸古典の背景を知る上でも興味深いことである。

私は鍼灸学校卒業してすぐの頃、道教の古典的名著であるアンリ・マスペロ著川勝義雄訳『道教』東洋文庫、平凡社刊 昭和53年(1950年原著出版) を購入して読んでみた。この著作は「道教とは何か」に対する一つの確固たる回答であり、欧米の学会に大きな刺激を与えたという。しかしそれでも35年前の私にとっては難解すぎた。それを今になって読み返してみたが、今回は意外にも興味深く読むことができた。というのも、東洋医学に対してある程度の知識や経験をもったので、本書を自分の考えと対峙しながら、読めたのが原因だろう。道教の興味深かった点を、筆者の解釈を加えて紹介する。



2.著者
アンリ・マスペロ Henri MASPERO とは

フランス人中国学研究者アンリ・マスペロ(1883-1945)は、研究途中で「道教」について、自分がほとんど何も理解していないことを改めて知った。その上で、道教は儒教とならんで中国人の精神構造を知る上での鍵であるという事実に突き当たった。マスペロは当時の道教の歴史と文献を学問的に探ろうとした最初の人であった。マスペロが生前に発表された原稿は少なかったが、死後書斎を整理してみて、道教については膨大な未発表原稿が発見された。
これらの原稿は、マスペロの妻と友人が整理して本書として誕生した。本著は、西洋の者が道教を知る上で最もスタンダードなものとされている。
なおマスペロは1944年ドイツに拉致され、その翌年獄中で非業の死をとげた。マスペロは日本語学習の必要性を理解し、我が国にも2年間滞在したことがある。


3.不死への修業


道教では死んでしまえば霊魂も消えてなくなると考えていたので、生き続ける身体の保持の方法が興味の対象となった。その方法は単なる延命ではなく、生きている期間内に不死の身体に取り替えることだった。

身体を不死にする方法は、養形と養神に区分され、それぞれに対して様々な実践的なプログラムが用意されていたが、どれも厳しい修行を必要とした。  
 
養形:物質的な身体の老衰と死の原因の除去。 →食餌法や呼吸術

 
養神:身体内部にいる種々の超越的存在(悪さをする精霊、霊魂など)ににらみをきかせ、自分勝手に悪さをさせない。 →精神集中や瞑想


4.呼吸法 


臍下丹田の「丹」には赤いという意味があり、「田」は生産する場所という意味がある。すなわち丹田は、生き続けている間、生命の炎が燃えている場所と考えていた。
この丹田では精を養う場所だった。火が燃え続けるには空気が必要だが、普通の呼吸法では空気は肺にまでしか入らない。丹田の炎を大きく燃やし続けるには腹まで空気を入れるべきであると考えるようになった。その方法とは次の2通りある。 

1)胎息(息を飲み込んで消化管に至らしむ)


呼吸器官は胸までしかないが、消化管は食道を通って腹全体に配置されている。息を吸うのでなく、息を飲み込むようにすることで胃腸に空気が入るから、臍下3寸(=関元に相当)にある丹田の炎を大きく燃やすことで精を養う能力を増やすことができる。臍下丹田にある精が、そこに入ってきた空気と結合して神(=正常な意識。この神というのは霊魂とな別物)が生ずる。

 
腹にまで空気を入れる呼吸法を胎息とよぶ。これは母の胎内における胎児の呼吸の方法だからである。

臍下丹田に入った気は、その後に髄管によって脳に導かれ、脳から再び胸に降りていく。3つの丹田(後述)をこのように回り終えたら、口から吐き出される。あるいは単に気を巡らせるのではなく、気を身体の中で意のままに動きまさせる。病気の時は、疾患のある場所を治すため、そこへ気を導く。

2)閉気(息を閉じ込める)

凡人は、吸った空気はすぐに吐いてしまうから、空気の中に含まれている滋養を充分に吸収できない。気を深部にまで巡らすには、長時間息を止めておく(閉気)ことが必要である。閉息して、気のもつ滋養を吸収できる時間をできるだけ長くする。


5.食餌法


1)三つの丹田の働きを妨げる三虫


身体を、上部(頭と腕)、中部(胸)、下部(腹と脚)に三分割できる。各部には上丹田・中丹田・下丹田とよばれるそれぞれの司令部がある。丹とは紅と同様な意味で、炎に通じている。生命の炎が燃え続けているためには、気(空気)は不可欠である。

上丹田:脳中にあり、泥丸(ニーワン)宮という。これはサンスクリット語のニルバーナ=涅槃に由来している。上丹田は知性をつかさどる。なお涅槃(ねはん)とは煩悩から超越した境地のこと。転じて聖者の死を涅槃というようになった。上丹田に行く気が不足すれば知性を失う。

中丹田:心臓のそばには絳宮(こうきゅう)がある。絳(こう)とは深紅の意味がある。
血液循環の元締めだからであろう。心拍数の増減させること、すなわち感情の起伏に関与している。

下丹田:臍の下3寸の処(関元の部位)にある。下丹田は精を養っている部で、精に気が注入されて初めて神(正常な精神)ができる。精力(精神や肉体の活動する力)をつくる源でもある。

 


2)辟穀(へきこく)-三虫退治のために 

三つの丹田にはそれぞれの守護神がいて、悪い精霊や悪気から丹田を守っている。しかし守護神のそばには有害な三虫あるいは三尸(=屍)がいて丹田を攻撃して老衰や病気の原因をつくる。道士(道教の修業者)は、できるだけ早く三虫を取り除かねばならない。穀物を食べると、必然的にカス(大便の材料)が出て、カスは濁気を醸成する。この濁気が三虫を滋養し、疾病を起こす。三虫を取り除くには、穀物を絶たねばならない。これを辟穀(へきこく)とよぶ。辟穀は道士修業の基本である。穀物の代りに松実・きのこ・薬草などを食して体内の気を清澄に保つ。
                                   

2)霊薬としての丹薬


①丹薬の製造


辟穀しただけでは、三虫を絶滅しきれず、丹薬の服用も欠かせすことができない。丹薬は丹砂(=辰砂)ともいい、自然界では硫化水銀として存在している。純粋な丹砂は、朱色だが、普通は不純物を含むので暗褐色である。丹砂を炉400~600 ℃ に加熱して出た蒸気を冷やすことで水銀を取り出す。

水銀蒸気は目にみえず、瞬時に蒸発してなくなる。この段階では見えないものを集めなくてはならないので、2000年前の中国人が水銀精製法を発明したことは驚きである。熱を加える作業をした職人は、おそらく霊薬中毒(=水銀中毒)で発病しただろう。

水銀がなぜ霊薬だと思ったのかは定かではないが、水銀は金属でありながら重い液体であり、さらに常温でも気化(重さがなくなる)して次第に消滅することなどの特性があることなどが考えられる。

古代ヨーロッパの錬金術師が、鉛などの卑金属を金に変える際の触媒となると考えた霊薬は辰砂のことで、辰砂は西洋では「賢者の石」ともよばれる。賢者の石との名称は、童話「ハリー・ポッターと賢者の石」ですっかり有名になった。

 

 

 

 

 


②丹薬の効能

丹薬は永遠の命や美容などで効果があると信じられていた。丹薬が永遠の命を実現できるものとする考え方は、遺体を辰砂溶液に浸しておくと、いつまでも腐敗しないという実例がヒントになっているのだろう。ちなみに昭和天皇の遺体も布にくるまれた後、辰砂液につけられ、真っ赤だったという証言もある。天皇のような高貴な身分の人は、死去から遺体を埋めるまでに相当な期間を要するので、腐敗を防ぐ手立てが必要になったという。

秦の始皇帝は永遠の命を求め、水銀入りの薬や食べ物を摂取していたことによって逆に命を落とした。他にも多数の権力者が水銀中毒で死亡した。当時から、丹薬服用の危険性は知られていた。しかし至高の価値を得るためには、命を預けた賭けが必要で、また人格によって毒にも薬にもなるという人格が試される試験でもあった。
なお稲荷神社の鳥居や神社の社殿などの塗料して古来から用いられた朱の原材料も、水銀=丹である。丹は木材の防腐剤として使われてきた。朱色は生命の躍動を現すとともに、古来災厄を防ぐ色としても重視されきた。

※現代での有機水銀中毒事例としては水俣病が知られている。

 

3.錬金術と錬丹術

古代から西洋では錬金術として金の抽出が行われていた。これは金鉱石を砕いて水銀を加えて加熱し、水銀蒸気を蒸発させて純粋な金をつくるものだった。卑金属から貴金属をつくる研究も行われたが、これらは失敗した。しかし近代化学の基礎を築いたという点で評価されている。


錬金術と錬丹術における霊薬の製法には、共通点があるので、錬金術を研究することは練丹術の研究にもつながった。しかし
中国では錬金術よりも錬丹術が重要視された。すなわち黄金よりも永遠の生命に価値が置かれた。山奥の洞窟に住み続ける古代中国の仙人は、練丹術を修得しているとされた。仙人はたまに町にでかけることもあるということで、何とか彼らに出会って、その秘法を教えてもらうのも一つの方法とされた。そうした仙人の住む深山の世界は、水墨画において幽玄を感じ取れるものとして描かれている。 

 

 

 

 

中国の柴暁明先生が、上記の私のブログを中国語に訳して下さいました。感謝致します。文面は次の通りです。

現代の中国でも、上流階級の者を中心に、道教の辟穀は流行っているようです。
何万元から何十万元でもかかって一週間の辟穀修業する方も結構多いそうです。
新聞記事を鵜呑みにして、浅い知識で勝手に今週辟穀しようと宣言する庶民たちは少なくないです。
このブログは、中国人にとって必要な基礎内容です。私は翻訳する前は、道教に対する認識も薄かったですが、このブログのお陰で、以前より深く認識できるようになりました。

 道教によって影響をうけた古代中国の生命観 Ver.1.3

 https://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzU0Nzg5MjkzNQ==&mid=2247483824&idx=1&sn=f063f536f5a61784f4d0358d20421572&chksm=fb463a18cc31b30e656ef7b3e859ad4f06fe432d219ec8df057fb5670dcd203c6a215d5c7486&token=394854727&lang=zh_CN#rd

コメント

「秘法一本鍼伝書」⑥<上肢内側痛の鍼>の現代鍼灸からの検討 

2018-08-21 | 肩関節痛

1.「秘法一本鍼伝書」上肢内側痛の鍼(肩貞)

1)取穴法
後腋窩紋頭の内上方約2寸を下からナデ上げると、内上方から外下方にむかって太い筋肉が指に触れることができる。この筋の下縁に指頭を突っ込むように強圧すると有感的に響く処がある。本穴はここに取る。いわゆる肩貞穴である。

2)用鍼
寸6ないし2寸の3番の銀鍼または鉄鍼を用いる。

3)患者の姿勢
正座して手を下垂させ、拳を握らしめ、閉目させて呼吸を静かにさす。

4)刺針の方向
鍼尖を穴の部から内上方に向かうように刺す。取穴の時に述べた筋層の下に鍼を刺すように心構えて刺入する。硬物につき当たったならば、瀉法を行う。

5)技法
患者をして吸息させる同時に、鍼を進退しつつ左右に動揺させながら刺入する。鍼の響きが小指側に響けば刺入をやめる。

6)深度
約1寸3分ないし2寸近く刺入。鍼尖、硬結物に当たり、小指側に響く程度でやめ、弾振する。

7)注意
針響強劇にして患者圧重倦怠感ありといえば直ちに退け、皮下まで鍼尖を抜き上げ、患者をして呼吸させて抜除する。補助法として鍼尖を缺盆穴に水平にあて、やや外方に向かうようにして刺入する。これまた小指側に響くように刺すべし。首の側面、肩背に響く場合は、鍼尖を転向させて上肢に響くようにすべし。

 

 

 2.現代鍼灸からの解説

1)後方四角腔の局所解剖

後腕と肩甲骨間にできる陥凹を、後方四角腔とよぶ。後方四角口腔は、上腕三頭筋外側頭・上腕三頭筋長頭・大円筋・小円筋が四辺を構成していて、腋窩神経が深層から浅層に出てくる部である。

 


後方四角腔に直刺すると腋窩神経を刺激できるが、腋窩神経には知覚神経成分がないので、響きを生じることはない。
内上方に向けて斜刺すると、小円筋に刺針できる。一本鍼伝書<上肢内側痛の鍼>は、小円筋に対する刺激になるだろう。しかし小円筋刺針は上肢外側に響くことはあっても、上肢内側に響きは得られにくい。

 

 しかしながら肩貞から、小円筋を貫通して、肩甲骨と肋骨間に入れるような深刺をすると、肩甲下筋を刺激できる。肩甲下筋トリガーポイント活性時、その放散痛は、上肢内側に放散する。なお、肩甲下筋は、肩甲下神経の運動支配である。

 

 

 

 肩貞穴から肩甲骨と肋骨間に入れるような深刺で上肢内側痛に効果があるのならば、膏肓など肩甲骨内縁の穴から、肩甲骨内と肋骨をくぐる深刺も効果あるに違いない。
ということで実際にやってみる。3寸鍼を使い、2寸以上深刺すると、ズキンというような響くポイントに命中し、その直後からつらい症状が改善することを何例も経験できた。

実際の臨床にあたっては、患側上の側臥位で、肩甲骨の可動性を改善することを目標として、肩貞または膏肓から深刺し、介助しながらゆっくりと上腕の外転運動を行わせるようにすると効果的になる。 

 


 ※肩甲上神経:棘上筋・棘下筋を運動支配。知覚神経支配なし。肩関節包上部と後部を知覚支配
 ※腋窩神経 :小円筋・三角筋を運動支配。上外側上腕皮神経として上腕外側を知覚支配。肩関節包下部を知覚支配

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント

「秘法一本鍼伝書」⑤<上肢外側痛の鍼>の現代鍼灸からの検討 ver.1.2

2018-08-21 | 肩関節痛

最近の当ブログでは「秘法一本鍼伝書」中の下肢痛の鍼を4パターンに分け、現代鍼灸の立場から解説した。同じような形式で、上肢痛は2パターン分けて説明する。

1.「秘法一本鍼伝書」上肢外側痛の鍼(肩髃)

1)取穴法

肩関節上際部で上腕を挙げて凹みが出るところがある。この凹みに前と後の2カ所あり、前の凹みが治療穴である。この凹みのところに指端をあてて一応手を下垂する。それから患者をして上肢を外転そして内転させると、指端に太い筋が現れたり隠れたりするのを感ずる。外転させた時に太い筋が指下にきたり、内転させるとその筋前方に転移して指下には只やや陥凹の感を得る。これが穴である。肩髃穴である。

2)用鍼
寸6ないし2寸の2番を用いる。毫鍼の銀鍼または鉄鍼でよい。

3)患者の姿勢
正座させて両手は穏やかに下垂させ、手は自然の位置に垂れ、力を入れぬようにさせる。


4)刺針の方向
上方より穴所から垂直に、つまり上腕骨の縦側に沿うように刺入する。


5)技法
鍼を進退(刺入し、入れまたは引く)するにあたり、や左右に揺するごとく刺入する。もしくはゆるい間歇法を行う(これを古法では白虎揺頭の法)という。

※白虎揺頭の法:「金筋賦」にみえる刺針手法の一つ。基本的には深層まで刺針し、得気したのち浅層まで引き上げ、虎が頭部をゆらすように振顫する手法。


6)深度
針響が橈側に響くのを度とする、響いたら抜針する、患者が刺針によって重圧感を感じなければ弾振する。重圧感覚を訴えたら鍼を直ちに抜除する。

7)注意
患者が鍼を抜除した後でも重圧感を訴えたら円鍼を用いる。または渋滞のところに散鍼する。もし針響が予期どおりない時は、いったん抜いて刺し直す。
総じて、上肢外側の痛み・神経痛・リウマチ・肘腕の関節炎には呼吸の瀉法を、麻痺・鈍麻・痒癢(かゆい、くすぐったい)には呼吸の補法を用いる。


 

2.現代鍼灸からの解説

1)肩髃穴の取穴

「上肢を90度外転させてできる肩甲上腕関節の上際にできた2つの陥凹のうち、前の方の陥凹」というのが広く知られている<肩髃>穴の取穴法である。後の陥凹が肩髎穴になる。しかしこのような表現は解剖学的に曖昧で、昔から疑問だった。ひとつの取穴法として、上腕骨大結節を術者の母指と示指でつまむようにすると、肩髃と肩髎を同時に取穴できるというものがあったので、自分では結節間溝(大・小結節間)部が肩髃、大結節後の陥凹が肩髎とすることにした。しかしながら十年ほど前、肩髃穴の前方に<肩前>という新穴があることを知った。肩前穴は、上腕骨小結節と大結節の間にある結節間溝を走行する上腕二頭筋長頭腱部になるから、必然的に<肩髃>は、大結節と肩甲骨肩峰端の間隙に取り、肩髎穴は上腕骨大結節の外方陥凹部と肩峰端との間隙であると考えるようになった。 臨床的意味合いは次の通り。

上腕二頭筋長頭腱刺激→肩前穴
棘上筋腱刺激→肩髃穴
棘上筋腱刺激→肩髎(あまり使わない)


 

 

 2)上外側上腕皮神経痛に対する肩髃から曲池方向への水平刺刺

肩関節上外側の痛みは、三角筋部に相当し、この皮膚知覚は上外側上腕皮神経知覚(腋窩神経の分枝)支配である。腋窩神経の本幹は小円筋・三角筋を運動支配し、腋窩神経はさらに肩関節包下方を知覚支配している。

すなわち三角筋の痛みであるかのように見えるものは、実は上外側上腕皮神経痛による。そのため筋膜に対する刺針よりも、皮膚に対する水平刺または皮膚の刺絡の方が効果的になる。皮膚の痛みは皮膚を撮むように触診すると過敏点を検出しやすく、発見した撮刺点を貫くような水平刺を行うとよい。
その典型が、肩髃から曲池方向に水平刺である。この一本鍼は、清脳開竅法(天津の石学敏により開発された脳血管障害の鍼灸治療法)での脳血管後遺症としての肩関節痛の治療とほぼ同じものである。

 

 

 

しかしながら私の臨床経験から、上述した治療を行っても、直後効果のみで終わることが非常に多かった。この領域の皮膚を刺絡してみても、効果あるのは治療当日のみで、翌日には元に戻るのが普通だった。
上腕外側痛を生ずる、もっと本質に迫った治療があるのではないかと考えるようになった。

 

2)棘下筋の放散痛に対する天宗刺針

トラベルのトリガーポイントの図を見ると、上腕外側痛は、棘下筋のトリガー活性化に由来することでも起こるようだ。天宗穴あたりの圧痛点に4番程度の鍼を置いておき、まずは側臥位で上腕外転の介助自動運動を実施。すると次第に外転可能な範囲が広がることが多い。同じことを坐位で実施(上腕外転運動は重力に逆らうのでより強刺激になる)。

時には棘下筋の伸張を強いるので、上腕外転に軽度障害も生ずることが多い。このような場合、圧痛ある天宗に4番針以上で刺針すると上腕外側痛と上腕外転制限に効果あるようだ。
陳久性で棘下筋の緊張が強く、肩関節外転のROMは正常だが、それでもスポーツ時の動きが悪いという患者に対しては、天宗刺針で効果不足の場合には、上腕を自動的に外転させた肢位(棘下筋の収縮状態)でこの刺針をすると効果が増大する。もっと強く棘下筋を伸張させるヨガの「ネコの背伸びのポーズ」をさせた状態で圧痛ある天宗に雀啄刺針をするとよい。

 




3)大円筋・小円筋の放散痛

上腕骨と肩甲骨外縁の陥凹(後腕のつけね=後方四角腔)には肩貞を取穴する。肩貞から肩甲骨外縁に沿うように(それでも肩甲骨上になる)刺針すると小円筋に刺針できる。小円筋の放散痛は三角筋部の後方から上腕外側に放散痛が得られることがある。 

 


肩貞から少々下方には大円筋があり、肩甲骨下方の外縁で肩貞の下方1~2寸下方から刺針すると、小円筋と同様に三角筋部後方に痛みが放散するほか、前腕の背面にまで放散痛の得られることもあるらしい。後方四角口腔に刺針してもスカスカとした粗な組織に刺入している手応えが得られるだけで、筋中に命中しないので、筋膜症に用いる価値は薄い。しかし大円筋・小円筋の起始部である肩甲骨部に刺針すると、上腕外側に響きの得られることがある。

 

 

 

以上の検討から、肩甲骨棘下腋窩にある筋刺激が、上腕外側症状をきたすことが多いと思われた。
もちろん腕神経叢過敏状態や斜角筋放散痛が上肢外側症状を生ずることがあるが、ここでは論じない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント

「秘法一本鍼伝書」④にない<下肢内側の病の鍼>の現代鍼灸からの検討

2018-08-14 | 腰下肢症状

柳谷素霊著「秘法一本鍼伝書」には、下肢内側の病の鍼の記載がないが、現代鍼灸での方法を説明することにした。下肢前側・外側・後側の痛みの鍼に比べて、内容はシンプルである。

1.大腿内側の病の現代鍼灸

1)大腿内転筋の解剖

大腿内側には次の5つの大腿内転筋群がある。すなわち恥骨筋・長内転筋・短内転筋・大内転筋・薄筋であり、いずれも閉鎖神経支配である。なお閉鎖神経とは、腰神経叢から起こり、骨盤の閉鎖孔を貫通して大腿内側の皮膚と大内転筋の運動を支配している。

 

 

 

2)閉鎖神経痛の治療

L4棘突起下外方4寸で腸骨稜上縁に力鍼(りきしん)穴をとる。ここからの腰椎突起方向への深刺で腰神経叢刺激になる。閉鎖神経(L2~L4)は腰神経叢から出る枝なので、理論的には深刺で、大腿内側に響かせることができる。健常者でこれを再現することは難しいのだが、閉鎖神経痛患者では、本神経が過敏になっているので、
理論的には可能である。


3)大腿内転筋の筋膜痛

5種類の大腿内転筋のうち、とくにどの内転筋が緊張しているかをまんべんなく押圧して調べる必要があるが、患側を下にした側腹位で、押圧すると圧痛が捕まえやすくなると思う。(少し強く押圧するだけで患者は非常に痛がるので注意)

①大腿内転筋で、最大の筋力をもつのは大内転筋である。
→陰包付近の圧痛を調べる

 

②長坐位で開脚し、上体の前屈を行うと、大腿内側恥骨寄りに太く隆起した筋緊張を感じる。これは長内転筋である。

 

この筋を緩めるには、局所である足五里や陰廉などに刺針したまま運動鍼を行うとよい。具体的にはパトリックテスト肢位で刺針し、股関節の内転外転運動を行うようにする。

 

4)坐骨神経痛の治療

下腿内側痛は、坐骨神経痛の部分症状であることが多く、坐骨神経ブロック点(=裏環跳穴)刺針が有効になることが多い。

コメント

「秘法一本鍼伝書」③<下肢外側の病の鍼>の現代鍼灸からの検討

2018-08-13 | 腰下肢症状

1.「秘法一本針伝書」下肢外側の病の鍼(環跳)

1)取穴法
患側を上にした側腹位で、なるべく腹壁に大腿をつけるようにする。上前腸骨棘の外下方で曲がり目に太い筋がある。この筋の後側にゴリゴリするところがある。ここを指で押さえると大腿の外側に響く処がある。これを環跳穴とする。

2)用鍼
3寸の2番ないし5番の銀鍼、あるいは2番ないし3番の鉄鍼をもちいる。

3)患者の姿勢
前記した体位にせしめて取穴。患側の膝頭を両手で抱き、腹壁につけるようにすればなおよい。

4)刺針方向
皮膚に対して直刺。

5)技法
刺入した鍼を静かに状芸に進退動揺させながら刺入する。

6)注意
全身に力を入れ息を吸いこみ、そのまま止めて息を腹に貯えるようにする。かつ口を閉じ、鍼の響きがあれば直ちに抜く。下肢後側が痛み場合と同じ。
補助法として、丘墟穴、外丘穴、中涜穴に刺針する。


2.現代鍼灸からの解説 
 
ブログ「大腿外側痛の針灸治療」参照。本ブログと内容が一部重複している。
 https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/03c8b1fc1f9c88bc3814afbb3daad2a8

環跳の位置は現代でも2通りある。素霊の下肢外側の病の鍼の「環跳」は下記①の方法による。

①側臥位で股関節と膝関節を屈曲。その時できる鼠径部横紋の外側、大転子の前上陥凹部にとる(学校協会テキスト)、
②側臥位、大転子最高点と仙骨裂孔を結ぶ線を三等分し大転子から1/3の陥凹部にとる(韓国の標準テキスト)。

 
素霊の環跳刺針では、では中殿筋が伸張されて筋トーヌスが高まっている状態で中殿筋中に刺針できるので、針響が生じやすくなる。
中殿筋は、基本的に股関節外転筋で、大腿骨頭を骨盤に引きつけて歩行を安定させる作用がある。

本筋の緊張では腸骨稜に沿う痛み他に大腿外側に放散痛を生じる。
また中殿筋の深部には小殿筋がある。その機能は中殿筋に準ずるが、小殿筋放散痛は大腿後側にとどまらず、膝関節を越えて下腿後側や外側まで生じるという特徴がある。
つまり症状が大腿外側までならば中殿筋を、膝を越えて下腿にまで及べば、さらに深刺して中殿筋の奥の小殿筋にまで刺入するとよい。

 

 

 

 

 

 

 


 

コメント

「秘法一本鍼伝書」②<下肢後側痛の鍼>の現代鍼灸からの検討

2018-08-10 | 腰下肢症状


1.「秘法一本鍼伝書」下肢後側痛の鍼(力鍼と裏環跳)

1)取穴法 
伏臥にさせ、腸骨稜上縁を外方から脊柱の方に指でなでると腰斤と接する処に浅い陷凹を感ずる。この部はおよそ脊柱から四寸のところで、指に左は∟の反対の形に、右は∟形に脊柱の両側にある筋状硬結物に突き当たる所がある。此の部を強く按ずれば陷凹がある。これをA穴とする(昔は力鍼穴といった)。

また小野寺氏の十二指腸胃潰圧診点に該当するところ所謂裏環跳穴をB穴(裏環跳穴)
とする。脊柱から八寸位の処である。
※小野寺氏十二指腸胃潰圧診点:上前腸骨棘と上後腸骨棘の中点から下方3㎝の処
                                          

 

2)用鍼 
3寸の3~5番の銀鍼または2~3番の鉄鍼を用いる。

3)患者の姿勢 
患者をして伏臥せしめ、ザブトンを鎖骨部に敷き、これに軽く胸をつけしめ、上肢は緩く上方に曲げながら伸ばす。又は両拳を重ねてこれに前額をおく。両足は正しくのばし、全身いずれのところにも力を入れさせぬようにする。口を半開きにし、呼吸は口でするようにする。

4)刺鍼の方向 
A穴の刺入方向は脊柱と四五度くらい、皮膚と三十度ないし四十度くらいの角度で刺入。鍼尖が骨に当ったならば、それは真穴に当っていないので、刺鍼転向する。真穴に当れば足先まで響く。
B穴は鍼尖を内上方に向ける。これも骨に当るようでは深すぎると知るべし。皮膚との角度はA穴とほぼ同じ。

5)技法 
刺入した鍼を静かに進退動揺させながら刺入する。A穴では骨の上側、B穴では内側に向くようにする。鍼響が大腿後側に響くのが普通。

6)深度
二寸から三寸に硬い所から軟らかいところに達する。

7)注意 
鍼響があったら、手で合図するように患者に言っておく。応用は広く、坐骨神経痛、膝関節リウマチによる膝膕部の疼痛、冷湿による大腿後側強剛感、腓腸筋痙攣、脚気等。補助法として、殷門穴、浮?穴、委中穴、下委中穴、後中?穴には散鍼する。

 
2.現代鍼灸からの解説

1)A点(力鍼)

 

力鍼(りきしん)穴は、L4棘突起下外方4寸で腸骨稜上縁にある。腰方形筋上に位置する。なお腰方形筋は腸骨稜と腸腰靭帯に起始し、第12肋骨とL1~L4の椎体の肋骨突起に停止する。

力鍼穴から斜め内側に2~3寸深刺すると、腰方形筋をかすめて大腰筋に入れることができる。大腰筋刺針を行うには、普通は伏臥位にてL4、L5椎体棘突起の外方3寸(腸骨稜縁)からの内方に向けて深刺して大腰筋中に刺入するので、力鍼穴刺針そのものだといえるが、大腰筋刺針をするための患者体位は、患側上の側腹位で患側大腿を腹に近づけるよう、股関節と膝関節を屈曲させると、大腰筋が触知しやすくなる。大腰筋刺針では腰神経叢を刺激できるので、腰神経叢を構成する神経枝支配領域への鍼響を送ることができる。

 

腸腰筋トリガー活性化すれば、腰部・鼠径部~大腿前面に放散痛が出ることが知られている。腰神経叢から起こる閉鎖神経を刺激すれば、大腿内転筋群の緊張や大腿内側皮膚の知覚に刺激を与えることができるが、確実性に乏しい。なお力鍼刺針では仙骨神経叢を刺激できないので、下腿に至る針響は得られにくい。得られるとすれば仙骨神経叢に波及するほどの、腰神経叢の強い過敏性があるある場合であろう。  

 

 2)B点(裏環跳)

裏環跳とは、中国式環跳の位置でもあり、と同時に坐骨神経ブロック点の位置でもある。
大殿筋を通過して梨状筋を刺激し、梨状筋走行下の坐骨神経走行領域に広汎な針響を送ることができる。

 

 

座骨神経ブロック点刺針時の体位は、次のように梨状筋の緊張を伸張させた体位(シムズ肢位)で行うと針響が得られやすい。

 

 

 

コメント

「秘法一本針伝書」①<下肢前側の病の鍼>の現代鍼灸からの検討

2018-08-10 | 腰下肢症状

「秘法一本鍼伝書」は、柳谷素霊自身の臨床経験に裏打ちされた治療技法を集めたものである。古典派の大御所でありながら、古典理論に基づいていないという意味で、現代鍼灸派にとっても研究対象となると考えている。平易に書かれているが、奥深い内容をもっている。ある程度実力のある者は、自分のやり方と比較することで、勉強になる点を多々発見するだろう。これまで本ブロクでも部分的には取り上げてきたが、内容は不十分である。
このたび「秘法一本鍼伝書」の中から、<下肢後側痛の鍼><下肢外側の病の鍼><下肢前側の病の鍼>の3項目を取り上げ、3回シリーズとして現代鍼灸の立場から検討していくことにした。

※「秘法一本鍼伝書」は1959年に医道の日本社から出版されたが、長期間絶版状態になった。しかし2013年9月8日に(学)素霊学園から再版された。

1.「秘法一本鍼伝書」下肢前側の病の鍼(居髎)
(読みやすくするため、現代文のように若干文章を変えた)

1)取穴法
上前腸骨棘の最前側端に2本の腱様の硬結線状がある。外側のものは太く、内側のものは細い。その2筋の間を指頭で下圧するように押さえると陥没するところがある。これが本穴の居髎穴である。
※居髎は、教科書では上前腸骨棘と大転子を結んだ線上の中点にとる。大腿筋膜張筋中になる。

2)用鍼
3寸で2~5番の銀鍼、あるいは2~3番の鉄鍼

3)患者の姿勢
両足をのばして力を入れ、上体が動揺しないようにさせる。こうすれば前記した太い筋と
細い筋の間の陥没がますます深く顕著に指頭に感ずるものである。

4)刺針の方向
上前腸骨棘に鍼体を接触させながら、上方より下方に陥没の中央を目標に刺入する。すなわち腹壁に沿うようにして刺入する。

5)技法
鍼を静かに上下しつつ、進退動揺させながら刺入する。最初手に鍼尖のさわりが軽く感じるが、漸次硬物にあたるような感じがある。ニョロニョロするものに当たると鍼響があるものである。この鍼響が下肢前側に響くと効果ある。
細い筋との間の陥没がますます深く顕著に指頭に感じる。

6)深度
おおよそ2寸内外である。ただし皮膚に鍼尖を接したのみでも鍼の響きあるものもある。7)注意
もし響きがないときは鍼をゆるやかに上下させる。あるいは刺針転向法を行う。
なお膝中痛み、あるいは力のない時には鍼尖を膝蓋の中央に入れるようにして刺入する。補助鍼として、痛みには瀉法、力ない時には補法の鍼をする。


2.現代鍼灸からの解説

上前腸骨棘の最前側端には外側に大腿筋膜張筋腱、内側に縫工筋腱がある。
この腱間を潜るように深く押圧すると大腿直筋がある。押圧部あたりは大腿直筋のトリガーポイントに相当し、大腿前面~膝蓋骨に痛みを生ずることが調べられている。

 

 
刺針して大腿に響きを与えられない場合、所定の鍼を刺入したまま大腿直筋のTPを活性化させるために、患側大腿を少し挙上させて大腿直筋を緊張させた姿勢を保持してもらい、鍼の上下動の雀啄を行うと所定の響きを与えやすい。

上記の居髎刺針の深さは、2寸内外だが、「皮膚にと鍼尖を接したのみでも鍼の響きあるものもある」とも書かれている。これは縫工筋緊張により大腿外側皮神経が絞扼された結果だろう。

 

「膝中痛み、あるいは力のない時には鍼尖を膝蓋の中央に入れるようにして刺入する。補助鍼として、痛みには瀉法、力ない時には補法の鍼をする」との記載が文末にみられる。この技法と同様な意図(四頭筋緊張を緩める目的)で現在私が行っているのは、膝蓋骨直上の大腿直筋刺針で、鶴頂穴刺針になる。仰臥位膝屈曲位で、あらかじめ四頭筋を緊張させた状態で刺針するのがコツである。この技法は、すでに触れた。

コメント