AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

ついに見つけた。ベッドカバー滑り止め下敷き

2016-10-27 | 雑件

診療用ベッドには、専用ベッドカバーを使うというのが常識だろう。しかし冬場はベッドカバーだけでは冷えるので、ベッドカバーの上に大判バスタオルをかぶせることも必要となるだろう。さらにベッドカバーは自分で洗濯できず、クリーニング専門店に依頼するので、意外に費用がかかる。そういう事情もあって、当院では以前から専用ベッドカバーを使っていない。ベッドの上に、直接大判のバスタオルを敷いている。

この時問題となるのは、高齢患者に多いのだが、体位変更の際に浮かすことなく、引きずるようにして腰殿を移動する時、バスタオルがずれることである。これを防ぐため、編み目状のゴムマットを使っていたが、市販品ではどれも小さいので、バスタオルのズレを防ぎきれなかった。

しかし、ついにちょうどよい品を発見できた。北欧家具ショップIKEAでみつけた「STOPP」という滑り止め下敷299円(消費税込)である。長さ200㎝、幅67.5㎝、ポリエチレン製。しっとりとした質感で、網戸と同じような大きさの網目がある。電気敷き毛布と併用することもできる。30℃以下の温度で洗濯できる。ハサミで簡単にカットできるので、診療用ベットにはジャストサイズだろう。なおネット通販でも購入可能ということである。当院のベッドは2台とも180㎝長なので、少々カットして使ってみることにした。

 


膝半月板亜脱臼の治療 Ver.1.4

2016-10-18 | 膝痛

1.急性半月板損傷
 
1)原因

   
膝半月板の疾患といえば、急性半月板損傷が有名だろう。本症は、スポーツ中に膝をひねる、高いところから飛び降りる、膝を深く強く曲げるなどで、地面にふんばっている状態で、下肢をねじったり回旋動作を行った場合に半月板に亀裂が入ったものである。

半月板の亀裂が半月板の外周1/3より外側であれば血行があるので自然治癒することも見込まれるが、それより内部は血行がないので、自然治癒機能が働かないとされている。  
 

2)症状

    
受傷時、膝に突然の激痛が生じて、動作の中断を余儀なくされる。重篤感がある。

重症では2~3時間後には膝関節腫脹し、膝関節の嵌頓 locking ロッキング(膝に何かがはさまったかのような感覚で、膝を伸ばすことも曲げることも困難になる)が出現する。この時は、歩行不能はもちろん立位にもなれない。関節血腫が生ることもある。なお関節血腫の有無は、膝関節液穿刺で関節液が血性か否かする。
    
軽症例では、catching キャッチング(膝の曲げ伸ばしの際、ある角度で引っかかって痛む感じがする。ただし膝の可動性は保たれている)が起こる。キャッチングは軽いロッキング状態といえる。

    
半月板には知覚はないので、半月板に亀裂があっても痛みの直接理由にならないが、膝関節の屈曲伸展や内旋外旋時には、半月板のスムーズな動きが阻害されるので、半月板周囲の関節包知覚・筋膜が刺激されて痛み、立位になることや、健側を浮かせて患足のみに体重をかけることができなくなる。

 

3)治療

       
早期に手術が必要なのは、痛みに加えて半月板のひっかかりで膝が動かない(すなわち歩行はもちろん立位にもなれない)などの症状がある場合、または痛みが長く続き、くり返し水が溜まるなどの症状があって、スポーツ活動、日常生活、職業上大きな支障がある場合である。

しかしながら若年者の半月板を摘出することは、将来的に膝関節変形を助長させることになる。
それ以外は、安静にして様子をみることになるが、その後に処置は整形外科医によって見解が分かれる。


2.半月板亜脱臼

 
筆者は半月板損傷といえば、これまで上記のような発症動機が明瞭な急性外傷のことを想定していた。針灸臨床とは関わり合いが乏しく、仮に来院したとしても、針灸でどうにかなるものでもないと思っていた。そうした中、私自身が半月板損傷を患うことになった。 


1)半月板損傷の自験例(62才、男性)


①主訴:右膝関節痛(体重をかけた際、右膝の中心あたりに、痛みを感じる)

②現病歴

平成28年5月5日6㎞丘陵をハイキングした。その2日後から、右膝に、これまで経験したことのない筋肉痛とは異なる痛みが持続的に約1ヶ月続いた。

平成28年5月31日午前2時頃、寝室に行くため、自宅の階段をゆっくりと上っている時、右膝が突然ギクッとして激痛が走った。これ以降、痛みのため患肢に体重がかけられず、歩行困難となった。右膝関節は痛みのため完全伸展できないロッキング状態。しかし数時間後の明け方、ベッドで横になっている時、コキッとした感覚とともに、ロッキング消失で完全伸展できるようになった。


③治療

 
5月31日午前、近くのT病院整形訪問。歩行時にも痛み出現するため跛行状態。病院備え付けの車椅子に乗って移動。
膝関節屈曲90°以上で内旋・外旋すると痛み出現。屈曲伸展の関節可動域に異常はない。右膝関節部に強い圧痛は発見できない。局所の発赤・熱感もない。Xp写真正常。関節液穿刺で関節液は正常。サラサラで血液も混じっていない。
 
医師の予想診断:半月板が少しズレたのだろうと思えるが、それを証明できる理学検査以外の客観的所見はない。
要するに今は痛みだけの問題だから、関節包に対し局麻液注入のみ。その処置の直後、痛みは半分以上軽減。杖なしで立位可能となった。ドクターの話では、痛みはすぐに元のように戻るだろうとのことだった。
   
その処置から1日以上経っても痛みは軽減した状態が続き、むしろ前日治療直後より楽になった感じである。階段の上り下りも、どうにか杖なしで可能となった。一ヶ月後には
症状は9減少した状態。階段の上り下りは、捻らないように注意しつつだが普通のスピードでできるまでになった。  
 

④その後の経過

6月10日
1ヶ月間の安静で膝痛再発しなかったので、日帰り観光した。結構急斜面があって、階段を下りる時、ギクッといったような感じがあった。その後、階段を下りる時に右膝奥が痛む感じがした。その後1週間経過するも症状不変。

6月25日
安静時には痛みないが、右膝のヒネリ動作で痛みが走る。痛み部位は、右膝 内側、膝蓋骨内方で内側広筋停止部あたりになった。この辺りの圧痛点に円皮針を貼るも、あまり効果を感じられない。灸治療も無効。


6月28日
近くのHクリニックにて、ヒアルロン酸注射実施。右膝内膝眼部に、ききなりブスッと深刺され、非常に痛かった。注射後数時間すると、以前のハードな膝痛からソフトな膝痛に 変化した感じ。しかしその翌日くらいから、完全伸展位にする時や完全伸展位から曲げる時に痛みを感じる(キャッチング)ようになった。

7月5日
2回目のヒアルロン酸注射実施。やはり注射は痛い。ドクターから週1で5回する予定といわれたが、ヒアルロン酸注射は、潤滑油を注入するのと同じで、根治療法にはなり得ないので、自己判断で治療中断。


7月20日
右膝のキャッチング陰性となった。自宅内で階段を上る時、右膝症状もあまりない。右四頭筋筋力が少し復活していることを感じる。しかし階段を下る時、健側足から踏み出して下り、患側からの踏み出しは不安感がある。膝完全伸展位で寝ると、翌朝具合が悪いようだ。


8月10日
右膝の痛みはあまり感じなくなった。階段を上る時にも痛みはないが、若干不安定感あるか? 階段を下りる時一段一段ゆっくりと下りるが、左膝を先に下ろさないと不安。一階→三階まで続けて上ると、膝裏に腫脹感を生じる。


9月2日 
3週間前位前から座位から立位への体位変換時や、立位で膝を少々捻る時に、ズキッとする痛みが 右膝内側に走るようになった。またこうした動作を繰り返すと、右膝内側に熱感を感じるようになった。ズキッと痛みが走る回数は、一日十数回といった状況。


9月5日 階段を上る筋力は以前より復活してきた。階段を下りるのは苦痛で右膝に不安定感がある。このようなズキッとした痛みはこの2~3日減少した感じである。本日で受傷後約4
ヶ月経過した。

10月11日 普通に膝関節に体重をかけて平地をあるいても痛みを感じない。しかし階段を上る時、右関節四頭筋の筋力不足を感じる。階段を下りる時、老人のように一段一段手すりをつかまりながらゆっくり歩かないと不安な状態。あとは四頭筋強化が重要となるだろう。


2.半月板損傷の一部としての半月板亜脱臼


1)筆者の膝痛診断名は何だったのか?

   
筆者の例では、大きな衝撃が膝に加わったものでないこと。そして半月板に本当に亀裂が入ったのだとすれば、ロッキングが瞬時に治るわけがないこと、の2点から半月板に亀裂が入ったものでないと考えた。
では何なのだろうかと、ネットで調べてみると、半月板亜脱臼(extrued meniscus)との病名を発見できた。この病名は整形外科医には承認されていないが、スポーツトレーナーやカイロプラクターを中心として認知されている。仙腸関節傷害の例でもわかるように、新しい考えというのは、いろいろな意味で時間がかかるものなのでやむを得ない。

2)半月板亜脱臼の治療法
     
①安静療法

     
筋筋膜痛のような数日の安静ではなく、半月板亜脱臼では、1~3ヶ月間、患部に負担をかけないよう可能な範囲で膝の安静を保つ必要があることを知った。(筆者の症例では、安静1ヶ月では再発してしまった)。

     
②サポーター・テーピング


歩行時に脱臼の助長を防止するため、内外半月板外周にサポーターや女性用パンストを強めに巻く。
半月板を圧迫する場所にパンストの腰の部分だけを棒状に巻いて、それをテープでテンションをかけながら目的の場所に張り、その後、膝を伸ばした時に圧迫が強くなるように二列に張ってみたもの。階段の登り降りで確かめたら、半月板はしっかり機能的な位置に制御され、痛み・違和感はないとのこと。


①膝関節外周をテープで巻く意味
下腿回旋にともなう膝半月板のズレ(外側へ出っ張ること)を制御しようとしている。

②膝蓋骨直下にパンストのクッションを当てる意味
膝伸展時には、生理的に半月板も前方に移動するが、半月板にズレがあると、より前方に移動し過ぎて脱臼の程度が悪化する。膝蓋骨直下にパンストのクッションを置く意味は、このズレを起きにくくさせることにある
と推測。

 

 










 

③マニプレーション
     
ネットでは、半月板亜脱臼に対するマニプレーションの方法も紹介されていた。
うまく行えば瞬時にロッキングがとれるということである。しかしこうした手技は失敗すると医療過誤につながる懸念がある。筆者も自己流でマネしてみたが、余計痛みが増したので、即刻中止した。実施するならば、きちんと技術を学んでからにすべきだろう。

 

 


箱灸2号機の自作

2016-10-17 | やや特殊な針灸技術

今からちょうど3年前に作製した箱灸初号機は、現在も現役で活躍している。寒くなると出番が増えるが、壊れば業務に支障をきたすことになる。同サイズの箱灸がもう一つ欲しくなり、また自作することにした。よい機会なので、製作過程を写真で解説した。

1.用意するもの

①木製箱:百均で売っているもの。縦110×横186×高さ80㎜

②ステンレスシンク排水口ごみ受け 直径133㎜
③台所用アルミテープ 7㎝幅
④画鋲(だるま画鋲)4個
⑤アクリルスプレー チョコレート色2缶
⑥その他木片、接着剤、木ねじ、紙ヤスリ
 
※上記はすべて百均のダイソーで購入。

 

2.製作過程

1)本体づくり


①初号機の大きさが非常に良かった。初号機製作で利用した百均の箱は縦120×横183×高さ約100㎜の大きさで、、高さをカットして83㎜に加工して使用した。今回も同様のものを探したが見当たらず、それに近い縦110×横約230×高さ80㎜の箱を使うことにした。これは旧来のティッシュ箱と同じ大きさ(現在では薄型が主流)である。ただし長すぎるので、185㎜になるようノコギリでカットした。


②上面に四角く開口した。ここに「ステンレスゴミ受け」が入る穴である。箱の上面は薄く軟らかい材質なので、カッターで簡単にカットできた。なおこのステンレスゴミ受けは、どこの百均でも必ず売られているものである。



③底面開口部の長辺を谷型にカット。山の頂点が辺縁に比べて10㎜高くなるようにした。この谷型カットの意味は、身体体幹にのせた時、ぐらつかず安定するのに貢献している。底面の両端を薄い木片で覆ったが、これも熱が漏れないようにする工夫。





 

2)上フタづくり



初号機は、百均で18㎝木製落とし蓋が買えたので、それを利用できた。今回は丁度よいものがなかったので、普通の板片と持ち柄となる木の棒を加工し、初号機と同じ形になるよう加工した。

 

 

3)塗装

初号機の塗装は、当初はレンガ色も考えたが、百均の品揃えになかったので、次善の策としてアクリルスプレー「チョコレート色」を選んだ。3年経過した現在、箱灸内面はヤニだらけとなったが、表側には汚れが目立たず、チョコレート色にしたことが良い結果を生んだ。2号機も「チョコレート色」を選択した。今回は2度塗りしたが、これには百均スプレーで缶2缶を使い切った。

 


4)アルミテープ貼り

熱が強く加わる部分に、アルミテープを貼った。使ったのは、スーパーで売っている台所用アルミテープ7㎝幅である。初号機は蓋の裏面にアルミテープを貼ったが、熱とヤニ対策としてその上からさらにアルミホイールを巻き付けてクリップ留めをしたが、後日これは必要なかったことが判明した。アルミテープは熱に強く、ヤニよごれもアルコール綿で簡単に落とせたからである。熱が分散するのでベースとなる木が焦がされることはない。

 

 



上フタ裏面は、全面的にアルミテープで覆った。





※初号機と2号機はほぼ同じ構造だが、わずかに2号機の方が小さい。
上フタの持ち手の取り付け位置が少々異なる。2号機と比べると初号機はだいぶ古ぼけて見えたので、チョコレート色に再塗装し、アルミテープを貼り直した。



3.本機で使う温灸モグサとその点火法



1)最適なモグサと使用量


中国棒灸:箱灸用のモグサとして、いろいろ試したが、最も使い勝手がよく、ローコストだったのは、中国棒灸(正式には華陀牌「温灸純艾條」)だった。中国棒灸は1箱10本入りで600円くらい。1本の長さは21㎝で。これをカッター16等分(一個長13㎜程度)して使う。一度に燃やすのは、、この艾塊2~3個が適切だった。


通常の温灸用モグサ:急に燃え広がるので、温度を適切に保つのが難しい。煙が出すぎる。


炭化モグサ「温暖」:煙が出ない利点はあるが、一個片が小さいので熱量が足りない。


無煙灸条:炭化條のモグサということで、確かに煙は出ない。しかし見た目は単なる木炭そのものである。発熱量は十分だが、着火するのが非常に難しい。燃焼終了まで時間がかかりすぎる。まったく実用にならない。
買ったはいいいが、一度も使っていない。

 


2)点火方法  


一般に棒灸は点火しづらい。チャッカマンも時間がかかる。棒灸片一つを金属製のトングでつまみ、カセットトーチで点火するのがよい。点火したら箱灸の金網に入れる。棒灸片3個に点火したら、箱灸本体を患者の身体に載せる。 





※温度がなかなか上がらない場合、棒灸片の火が消えかかっていることにある。

温度が熱すぎる場合、上蓋を開け、熱を上部に逃がすようにする。それでもなお熱ければ、
箱灸と皮膚間にティッシュを入れる。