AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

足底筋膜炎・モートン病・シンスプリント後内側型の鍼灸治療の共通点

2019-06-21 | 下肢症状

私は、現在<鍼灸奮起の会>の上肢・下肢症状の鍼灸治療の実技講習を行っている。その下準備のため、この数ヶ月間これまでの治療を見直し、整理している。診断名は違っても鍼灸治療法が同じになる場合がある。


1.下肢症状をもたらす足底筋膜炎、モートン病、シンスプリント(後内側型)は、鍼灸治療方法は類似性がある。

すなわち足関節の底背屈で痛み増悪す るものはヒラメ筋・腓腹筋の過緊張を緩める治療を行い、足指の屈伸で痛み増悪するものは 長・短母趾屈筋や長母趾屈筋を緩める治療になる。

足底筋膜炎の鍼灸治療
   https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/83c59673cb2f50c8faf765b63d8060ec

モートン病の鍼灸治療
 https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/bb2298bdb1658db50e457c2bf842da80

シンスプリント後内側型の鍼灸治療
 https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/cd953503b935651c5c89be3ac81565fa

 

 

2.ヒラメ筋・腓腹筋の刺針肢位の相違点

ヒラメ筋・腓腹筋は、ともに下腿後側にあるが、効果を生み出すにはその刺針肢位が異なってくる。以前にも指摘たが、再度この場で説明したい。

1)解剖
ヒラメ筋と腓腹筋は合してアキレス腱となり踵骨後部に起始する。ヒラメ筋停止は脛骨と腓骨に直接つながっている単関節筋で、その機能は足の底屈時である。腓腹筋は停止は膝関節を乗り越えて大腿骨下端なので、足関節・膝関節の二関節筋になる。      

2)下腿脾経の触診体位

仰臥位で足底を自分の膝関節内側に付着させるような肢位をさせ、下腿内側を触診すると、膝屈曲位なので腓腹筋は弛緩し、ヒラメ筋は緊張状態にある。脛骨内縁の脾経を触診する場合、このような姿勢にすると圧痛硬結を触知しやすい。なお私は地機はヒラメ筋停止部に取穴している。

地機の教科書位置内果の上8寸、脛骨内側縁の骨際。脛骨内側の上1/3の処。

 

3)下腿膀胱経の触診体位       

下腿後側の腓腹筋・ヒラメ筋ともに緊張させるには伏臥位で膝完全伸展にする。下腿膀胱経の触診と刺針はこの体位で行う。 

 

 


大腿外側痛の病態把握と針灸治療

2019-06-08 | 下肢症状

たまに大腿外側痛で来院する患者がいる。整形外科に行って治らなかったので針灸に来たという患者も少なくない。新米針灸師の中には、これをすべて大腿外側皮神経痛と診断する者もいる。確かに大腿外側皮神経痛のこともあるが、その頻度は少ない。多いのは小殿筋の放散痛、もしくはL5付近の後枝症候群である。それぞれ治療ポイントも異なってくる。
以下に3つの病態を示す。その鑑別は圧痛点の所在と、刺針後の治療効果(治療的診断)によるのが最も分かりやすい。

1.小殿筋放散痛の針灸治療
小殿筋の過緊張により、大腿外側痛を生ずることがある。中殿筋過緊張をもたらすのは、坐骨神経痛や股関節症であることが多い。側臥位にして小殿筋中の圧痛硬結点を見いだし、そこに2寸#4程度の置針をすれば症状緩和に効果ある。
なお小殿筋は中殿筋の下にあるが、中殿筋の放散痛であれば殿部の痛みとなり、下肢症状はあまり出現しない。

中・小殿筋は強大な筋であるから、側臥位で刺針しただけではなかなか症状は改善しづらい。横座り位にさせ、中・小殿筋を収縮状態にさせた体位にして、3寸#8の鍼で筋硬結に向けて深刺単すると、強い響きが得られて直後から改善することが多い。

 

2.L5付近後枝症候群

L5付近の椎間関節症やL5棘突起傍筋(棘筋や多裂筋)の筋筋膜症では、L5神経後枝が興奮する。側臥位にしてL5棘突起直側付近の圧痛点を見いだし、そこに2寸#4程度の置針をすれば改善できることが多い。

3.大腿外側皮神経痛
大腿外側皮神経は腰神経叢で、とくにL2L3神経から出て、鼠径靱帯外端の下を潜り、大腿外側皮膚に分布する知覚性の神経で、筋支配はない。
鼠径靱帯で神経絞扼障害を起こすことがある。上前腸骨棘内縁で、鼠径溝外端の圧痛点(維道穴あたり)に刺針すると改善できることが多い。