AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

三叉神経第Ⅰ枝・Ⅱ枝関連の顔面骨孔への刺針

2024-08-04 | 頭顔面症状

ブログ:三叉神経第Ⅲ枝関連の顔面骨孔への刺針

https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/e89102ce9c94e2ecc5f9728dd5b6ab7f

 

A.三叉神経第Ⅰ枝

1.三叉神経第1枝の神経走行と骨孔

三叉神経第1枝(=眼神経)の主要枝は眼窩裂孔を通って眼窩に入り、前頭神経として走行し、主要枝は眼窩上切痕(=魚腰穴)から眼窩上神経として前頭部~登頂にかけての皮膚に分布する。また前頭神経は、滑車上神経の分岐し、攅竹穴あたりから前頭正中の皮膚も分布する。



                        

2.攅竹(膀)

取穴:眉毛内端。眼窩上切痕から滑車上神経が現れる部。
深刺時の解剖:内眼角(睛明)から眼窩内刺針として深刺すると、針先は上眼窩裂に至る。上眼窩裂は、眼球運動をつかさどる3つの脳神経(動眼・滑車・滑車・外転神経)が出る孔である。
 そのすぐ上には視神孔がある。視神経孔は視神経管が通り、視神経は視覚をつかさどる。
臨床関連:針痛に過敏すぎる患者に対し、代田文誌は本来の治療に先立ち、攅竹に単刺し、針に対する過敏反応の軽減をはかったという(追試しても目立った効果はないようだが)。攅竹刺針の適応は第一に眼精疲労で、皮膚をつまんで刺絡する部でもある。刺絡した刺痛により交感神経緊張して瞳孔散大するので、眼がスッキリするのだろう。
   
3.魚腰(奇)
位置:正中から2.5~3㎝外方眉毛中央。眼窩上切孔(または眼窩上孔)のある処で、眼窩上神経が出る。
刺針: 魚腰が眼窩上神経ブロック点にほぼ一致する。 眼窩上切孔から直角に1~2㎝刺入する。

眼窩上神経ブロック体験例:
かつて私が洗面所で転倒して額を強打してたはずみに上眼瞼破裂創となった。つまり片側の上まぶたがぱっくりと口を開いた。病院内の事故だったので、あわてて外科に駆け込み、上眼瞼を縫合してもらった。その際に経験したのが眼窩上神経ブロックで、局麻剤の刺痛はあったが縫合時は無痛だった。

 

 4.挟鼻(新)


 取穴:鼻翼の上方の陥凹部で鼻骨の外縁中央にとる。
鼻毛様体神経の分枝の一つを前篩骨神経とよび、鼻腔粘膜をつかさどる。ワサビを食べ過ぎると鼻にツーンとくるのは、ワサビの揮発成分が鼻毛様体神経を刺激した結果である。
しかしワサビを舌奥の舌咽神経支配部分に入れると、あまり辛さは感じず、鼻にツーンともこない。


 刺針:挟鼻穴を毫針や鍉針で十秒ほど刺激し続けると、鼻粘膜刺激により鼻粘膜が交感神経優位となり、鼻甲介の海綿体の充血を改善できるので、鼻が開通する。挟鼻を刺激しつつ、強く数回鼻から息を吸わせてみると開通が自覚できる。鍉針は、針先をライターなどで50℃程度にあぶった状態で押圧した方が反応が出やすい(岡本雅典氏)。
夾鼻よりも攅竹刺入点として鼻方向に水平刺する方法もあるが、挟鼻の方が技術はやさしい。
    
   
  

B.三叉神経第Ⅱ枝

1.三叉神経第2枝の神経走行と骨孔
   
正円孔を通り、主要枝は眼窩下縁から眼窩下孔(=四白穴)を通過して顔面表層に現れ、頬上部、鼻翼、上唇を支配する。上顎神経の分枝は歯槽孔を通過して上歯槽神経となり上歯槽を知覚支配する。  

        
  


2.眼窩下神経ブロック点 =四白(胃)

位置:眼窩下孔(=四白)は瞳孔線上で、眼窩下縁の直下1㎝の陥凹部にとる。
刺針:眼窩上孔を刺入点とし、外眼角方向に向けて3㎝ほど刺入すると針は下眼窩裂へ達する。すなわち三叉神経第Ⅱ枝である上顎神経は、下眼窩裂を通り、眼窩下神経となり、眼窩下孔(=四白)から顔面表層に現れる。
応用:下眼窩と眼球がつくる陥凹で、外眼角から内眼角に向かう線の外側1//4に球後穴がある。球後は中国では内眼病で用いられる。

3.球後(新) 刺針注意!    

位置:外眼角と内眼角との間の、外方から1/4 の垂直線上で「承泣」の高さ。
解剖:「球後」は眼球の裏側という意味。球後から直刺深刺すると下眼窩裂に達する。針尖を上内方に少し向け、眼球裏に達するほどの深刺をすると、毛様体神経刺激になるが、毛体神経刺激の臨床的意味は不明であるが、眼球裏には毛様体神経節、長・短・鼻毛様体神経などがあるので、眼に対する副交感神経刺激になるだろう。

 

4.客主人(=上関)(胆)斜刺
 
位置:頬骨弓中央の上縁。
刺針:客主人から下方に向けて3㎝以上斜刺すると、針先は上顎神経が上歯槽膿神経に分岐する処の近くに至る。針響は上歯に至る。この部は側頭筋筋膜部でもあり、側頭筋緊張により放散性の上歯痛をきたす場合の治療点となる。
           
 

ブログ :上歯痛の治療  ver.2.0
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