AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

築賓穴あれこれ

2011-10-03 | 経穴の意味

1.築賓の語源 
築賓穴の「賓」には、主人と並ぶ重要な客人という意味がある。主人と客人という関係で考えられるのは、相並ぶ2筋であるヒラメ筋と内側腓腹筋、もしくは内側腓腹筋と同筋のアキレス腱である。築賓の位置は、これらスジの間といった意味となると思われる。
地機穴が、地面(骨)を支えとした縦に引っ張った糸(ヒラメ筋)と考えうることを、本ブログで発表済だが、これに対して築賓は筋と筋、あるいは筋と腱の間といった捉え方である。

2.築賓の位置
教科書でいう築賓の位置は、足内果の高さと膝窩横紋端を13寸とした場合、足内果側から上5寸である。下腿内側を三等分した時、だいたい足内果側から上1/3の高さで、腓腹筋内側頭がアキレス腱に移行する部に相当し、かつ内側腓腹筋の内縁といった場所になるだろう。

  

 3.築賓の効能
沢田流には、下毒穴(解毒穴ではない)という概念があり、築賓もその一つである。築賓がなぜ下毒穴かとの説明はない。築賓は腎経に所属することから、腎において有害物を尿にとして排泄する作用を強化すると考えたのだろうか。下毒穴として有名なものは、他に肩髃がある。肩髃は大腸経に属するので、有害物を大便または汗(肺や大腸は皮膚を主るので)によって排泄する力の強化を考えたのかも知れない。

適応症としては、蕁麻疹があげられている。ただし私の臨床経験からは、築賓にせよ肩髃にせよ、下毒作用が確かにみられたとする例はお目にかかっていない。成書には、築賓が蕁麻疹の特効穴だとする記載がある。これが事実であれば、「下毒」する訳だから、対症療法に過ぎない抗ヒスタミン剤にとって代わるものとなる。これが本当の話ならば、その治療だけで食っていける針灸院になるだろう。針灸にはこの手の話が多くて困る。

築賓が内側腓腹筋とアキレス腱の境にあるとするが、地機がヒラメ筋の緊張の治療に用いるのに対し、築賓は内側腓腹筋の緊張の治療に用いる。築賓が内側-副筋とアキレス腱の筋腱接合部ということであれば、トリガーポイントが好発しやすい構造といえる。同様の意義をもつものに承山や飛陽がある。代表疾患には腓腹筋痙攣や腓腹筋の肉離れがある。

4.築賓施術の肢位
ヒラメ筋と腓腹筋を比較すると、ヒラメ筋の断面の方が太く発達しており、腓腹筋はヒラメ筋の上に載っている薄い筋にすぎない。日常的に働いているのはヒラメ筋で、腓腹筋は瞬発力を必要とする際、一時的に強い力を発揮するが、すぐに疲労してしまう。一般的に筋緊張を緩めるには、該当筋を緊張させた状態で刺針するか、刺針した後に筋を緊張させる必要がある。
具体的には膝伸展位にしての仰臥位で築賓に刺針した状態で、足関節の伸展運動の自動運動を行わせることになる。