現代医学的鍼灸治療

針灸師と鍼灸ファンの医師に、現代医学的知見に基づいた鍼灸治療の方法を説明する。
(背景写真は、国立市「大学通り」です)

「条口から承山への透刺」その適応

2011-04-28 | 肩関節痛

1.五十肩に対する条口から承山への透刺の方法 
かなり以前から、中国では五十肩に対して健側の条口から承山に透刺(2穴を貫く)する方法が発見された。略して条山穴ともよぶ。実際に2穴を貫くには6寸針が必要である。強刺激が好まれないわが国では透刺せず、条口から承山方向に深刺する方法をとること多い。


肩関節痛患者に対し、仰臥位または椅座位にさせて、4~10番相当の針を用い、健側の条口(足三里から下5寸、前脛骨筋中)から深刺する。そして針を上下に動かしながら、肩関節部の自動外転運動を行わせると、肩関節周囲への施術だけでは改善できなかった肩可動域制限も、半数程度の患者では可動域増大すことを経験する。なお元々は健側刺激となっているが、患側治療でも大差ない効果となる。しかし持続効果は短いのが欠点である。

2.奏功条件
なぜ条山穴は、肩関節痛に効果があるかに解答することは困難だが、どういうタイプの肩痛に適応となるかを、台湾の中医師である陳潮宗氏は提示している。

陳医師は、発症後1ヶ月以上を経過した者で、外転角100°未満、外旋45°未満、内旋45°未満であった14例の五十肩患者  に条口-承山透刺を行った。その結果、肩甲上腕関節の外転可動域は、ほとんど改善しない(平  均1.7°)が、肩甲胸郭関節の上方回旋可動域が改善(平均6.7°)したと発表した。(條口透承山穴治療五十肩、中国中医臨床医学雑誌 1993.12)
陳医師の治療成績が、あまり芳しくないのは、凍結肩状態にある患者を選んだためたろうが、結果的にこの結果が本研究の信憑性を増している。結局、条山穴透刺は、肩甲上腕関節の動きではなく、肩甲胸郭関節の動きに効果がるようた。

3.肩甲上腕リズム
上腕を90°外転状態では、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節外転(=上方回旋)の動きは2:1の比率になることをコッドマンが発見し、これをコッドマンは肩甲上腕リズムとよんた。上腕が90°外転位の時、肩甲上腕関節は60°外転し、肩甲胸郭関節は30°外転する。

もし凍結肩などで肩甲上腕関節の可動性が低下すれば、上腕外転動作では、その代償として肩甲胸郭関節の上方回旋角は大きくせざるを得ない。

肩甲骨の上方回旋を行う主動作筋は下左図の赤矢印で示すものだが、五十肩で問題となるのは、収縮した筋が伸張せず、主動作筋の動きを妨げている状態であるから、むしろ白矢印で示した筋である、肩甲挙筋・菱形筋・僧帽筋中部線維が伸張できないことが障害になっている。これらはどれも肩甲骨内縁を起始とする筋であり、これら部位への運動針が、条山穴刺針での治効と同じようなものである可能性がある。

  

またこれらの筋は、運動神経支配はどれも肩甲背神経で、肩甲背神経は腕神経叢の分枝であるから、腕神経叢刺針もやはり条山穴刺針と同じような効果であるといえるかもしれない。 

 

 

 

 

 

コメント   この記事についてブログを書く
« 「麦粒腫に対する二間の灸」雑感 | トップ | 特効穴の効き具合の印象(1... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿