東大阪でそろばん教室を運営しているの先生のブログ 関西珠算瓢箪山教場・石切教場

子供たちから教えられたこと、感じたことを想いのままに綴ります。

頭のいい人には先生になってほしくない

2015-04-19 09:51:30 | 学習・塾に関する中身
 と私は思っています。私が塾講師のバイトを始めたのが今から17年前。その時は1クラス6名までの少人数指導をウリにしていた学習塾にお世話になりました。隣の教室で淡々と授業をする先輩講師がいました。京大に在学中のその先輩講師は、よく言えば「効率よく」悪く言えば「ドライに」指導されていました。そのときに聞こえてきたのが「こんなことも分からんの」という言葉でした。
 私だって、教育大学で修士免許を取り、1年とはいえ学校現場で教えた経験のある教師のはしくれでした。心の中では「それは言っちゃあいかんやろ!」と思いながらも、直接は口に出さずにもやもやした気持ちになりました。

 私が教師を目指すにあたって、大恩人に4人出会いました。まず、そろばんの師匠です。今も現役で指導されています。この先生に出会っていなければ、今の私はありません。
 次に中学2年生の担任の先生です。いじめにあって心折れそうなわたしを救ってくれました。毎日声をかけ、お話を聞いてくれて…。今は某高校の校長先生をされています。
 最後に大学の指導教官です。この先生には「文を論理的に書くこと」を徹底的に仕込まれました。

 そして、この3人の先生以外にも、人生の節目節目にたくさんの恩師に出会いました。そして私が「恩師」と感じる先生は皆、勉強以外の部分をとても大事にした方々でした。ただ「学ばせる」だけではなく、その裏にあることを見越した指導をされ、そして「学びたくなる」ように持って行ってくださったように思います。
 「わからない」ときは「わかるまで教える」のではなく「分かるまで学びたいと思わせ」たり、「この先生に聞けば分かるまで教えてくれるだろうと思わせ」たりしてくださった気がします。

 さて、大恩人の4人目は高校時代数学を教えていただいた先生です。今までで一番印象に残っている授業が、式の展開の授業で「先生なんで3行目の式から4行目の式になるのかが分かりません」と聞いたところ、5秒ほど考えた後で、「なるほど!」と大きな声でひとり呟いた後、すべての式を一度消して、式の展開を書き直しました。「森本、これで分かるか?」。「はい、わかりました」。普通のやりとりですが、この後の一言が私を決定的に教師へと向かわせました。
 「いままで、この公式の正解率が良くないと思ってたんや。なんでわからないのかが、今の質問のおかげでわかった。ありがとう!」。教育実習で自分の母校に帰ったとき、数学の先生はまだその高校におられたので、上記の授業を覚えているかお聞きしました。その返事は「覚えてるよ。っていうか、森本君のおかげで、授業がやりやすくなったんや。どう説明したらみんな分かるかなとずっとおもってたんやけど、数学の先生からしたら当たり前のことでも、生徒にとっては当たり前ではないということ。このことにもう一度気づかせてもらったんや。森本君も教師になるなら『なんでこんなんわからんねん』と生徒に対して思ったらいかんぞ。『どう説明したら分かるやろ?』と思うことを忘れたらいかんぞ」というものでした。

 この大恩人であり、大恩師でもある数学の先生の言葉が浮かんできたんですね。塾講師の時に。自分の目の前の生徒には、途中の式をきちんと書いたり、手元や顔をみながら不安そうな顔をしているときは、もう一度説明しなおしたりしていました。
 そして、その後、隣の講師の授業を受けていた女生徒からこんな依頼が塾に来たそうです。「森本先生、隣で授業している女子生徒が、あなたに個別授業をしてほしいと依頼があったんやけど、受けてもらえますか?」と。私は「とりあえずお会いしてお話聞きます」とお返事しました。
 さて数日後、面談した結果女子生徒の希望がわかりました。「いつも隣の教室からは笑い声が聞こえる」「質問がすごくしやすそう」「隣の後輩が、勉強が面白くなってきたと言っている」「私は布施高校に行きたいけど、今の成績では絶対に届かない」
 その当時私が受け持っていたのは中2、その女子生徒は中3しかも10月頃のことでした。特に数学がひどく、夏休みの模擬試験の偏差値は41.これは厳しいと思いましたが、親御さんにも正直に伝えました。
「勉強を苦痛に感じないように教えるのは希望の進路を考えると厳しい。しかし、勉強を苦行にしないで指導する自信はある。そして頑張ってついてきてもらっても、布施高校の受験レベルに届くように指導する自信はないが、いまよりも成績を上げる自信は間違いなくある」と。
 その女子生徒は私の目を見て「お願いします」と言いました。それからは根競べです。中1の中身まで戻って徹底的にやり直しました。宿題の量も半端ではありませんでしたが、彼女は黙々とこなしました。冬休みは毎日10時間以上勉強してくれたんです。
 おかげで、学年末試験は5教科で400点オーバー(私に変わる直前の定期考査は確か300点なかったと思います)。そして冬休みの模擬試験の数学の偏差値は51まであがりました。
 内申が若干不足していましたが、彼女は布施高校を受けました。頑なに曲げないので「なぜ?」と聞くと「大好きな先輩がいるから!」なるほど!。恋の力はすごいですね。結果はみごとに合格!。合格報告に気てくれたときは一緒に泣きました。

 さらに5月頃、教室を訪ねてきてくれたときには、横に男子生徒がいます。「告白してOKもらいました!」。ですと。そして少しお話したんですが、「先生に授業してもらってよかったと思います。今でもわからないままにすることは気持ち悪いです。わかるまで教えてもらったり、質問したりすることは悪いことではないとわかって良かったと思います。」

 私がそろばんでも塾指導でも、いつも心においていること。それは「そんなこともわからんのか!と言った時は先生を辞める時」ということです。頭のよすぎる人にはこの気持ちわからないと思います。だからこそ、そこそこ頭が悪くて、人生のどこかで一念発起して勉強した人。こういう人にこそ教師になってほしいと思います。
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