雲は完璧な姿だと思う。。

いつの日か、愛する誰かが「アイツはこんな事考えて生きていたのか、、」と見つけてもらえたら。そんな思いで書き記してます。

ウナギクライシス 8

2019-12-14 00:18:34 | 美味い...パワスポ寺社
そこに、ふらっと、ファーマーキャップをかぶった、動きのゆったりとした、
近所のおじいちゃんと思しき方がお店に入ってきました......

続きます。




「あら!いらっしゃい。久しぶりねぇ」

「いやいやいや、、、こんにちは。
ちょっと寄りたくなってねー、、、
いっぱいだけ、いいかねぇ」

「どうぞどうぞ。お元気そうで、いいねぇ。
なんにする?ビールかい?」

「うん。うん。一杯もらおうかな」



聞こえて来る会話からわかるのは、
どうも、おじいちゃんは近所に住んでいる常連さんらしく。
たまにこのお店にウナギを食べに来る......というより、
軽く一杯、ビールを飲みに来ることが多い方のようで。
それで、おばちゃんとも旧知の仲のようでした。
おじいちゃんは僕の斜め前の方にある広めの4人がけテーブルに、
店の奥側にいる僕の方を向くようにして座り、
おばちゃんから出されたジョッキのビールを、美味しそうに、
キャップをかぶったまま飲み始めました。
その後は二人で色々と世間話をしていましたが、
おばちゃんは僕の鰻も作っていたので、
カウンター裏のキッチンに入ったり出たりしながら
おじいちゃんと話していました。
少しすると、ビールだけを頼んでいたおじいちゃんに、
僕に出してくれたのと同じ、
うなぎの骨を揚げたお煎餅と、タレ肝焼きを出してあげていました。



「これ、どーぞ。おつまみに。美味しいから。ね。」

「ああぁぁ、、、いやー、、ありがとう、、、
嬉しいなぁ。つまみがあると、美味しいねぇ。
ありがとう。本当に。おいしいねぇ、、、すまないねぇ、、、」



それからちょっとして、僕の方には、
おばちゃんがじっくりと焼き上げてくれた美味しそうなウナ重が運ばれてきました。



おじいちゃんはニコニコとしながら、僕と、そのウナ重を見ています。
目が合いそうにもなったのですが、なんとなく、僕は目を逸らして、
テーブルの上のうな重を見つめ。
手を合わせ、感謝の言葉と「いただきます」を小さく呟き、食べ始めました。
付いていたお碗はどーも「呉汁(ごじる)」のようで。
いつ以来でしょうか、僕は久々に食べました。



全てが優しい味でした。
虚飾も濁りもなく。どこか温かく。
ウナギもタレも呉汁も、しっかりと味がついてるけど、
全てが自然で、真っ直ぐな味。
そんなウナ重をゆっくりと食べていると、
おじいちゃんはビールを早々に飲み終えたようで、
もう帰ることにしたようでした。



「ごちそうさんね。
美味しかったよぉ。ありがとね」

「あら?もう行くの?ゆっくりしていけばいいのに」

「いやいや、十分ゆっくりしたよ。美味しかった。
いくら?かなぁ、、860円くらいかなぁ、、、」



そう言って、おじいちゃんはテーブルの上に、
ポケットからバラバラと小銭を出して数えだしました。



「ああ、いいのよ。いいのよ。つまみは。
勝手に出したんだから。
ビール代だけで。600円で。いいのよ。

「いやいや、そういうわけにはいかんから。
860円で。これで。

「いいってば。大丈夫よ。
いいから。また来てくれればいいね。それで。」

「いやいや、美味しかったから。すまないしね。払わせてよ」

「いいから。ね。しまっときなさいな」



そんなやりとりが二人の間でしばらく続いていました。
何度も何度も、押し問答のように。
その時、僕は、昔、子供の頃に、
埼玉の片田舎の実家から時折行っていた「食堂」のことを思い出していました。
すっかり忘れていた、その食堂での風景を、
目前のおばちゃんとおじいちゃんとの会話が鮮明に思い出させてくれました。



「そういえば、、こんな会話、風景、、、、あったな。いつも。
あの食堂で、、、」



何と言ったら良いのでしょうか。
聞こえて来る二人の会話は全く嫌な感じがしません。
むしろ、聞いていて自然と口元がほころんで来るような。
笑みがコボレテしまうような。
そんな感じ。
郷愁感も温かみもあって。
相手への思いやりに溢れていて。
まさに、今食べているうな重さんの味であって。



気がつくと、



僕は、



ウナギをほうばりながら、



ホロリと、



涙がこぼれてしまいました。



何の涙か?



よくわかりませんが、、、



ウナギがちょっと塩辛くなります。



一つだけ言えるのは、
僕は、世知辛い東京都心の生活の中で、
知らず知らずのうちに毒されていた様なことがあったということです。
忘れていたことがあったということです。
間違えそうになっていたことがあったということです。
そして、僕の頭には、何故か、
東京の電鉄会社が作った街の風景が浮かんでいました。
何かの象徴のように、
高く高く天にそびえ立つ、幾つもの高層ビルの姿。



「それはいかんから、払わせてよ」

「いいから。もう」

「そうかい。。じゃぁ、妹さんに、お菓子でも。これで、買ってやってよ。
この前もソコで会ってね。
いつも世話になってるから。これで妹さんに。ね」

「そんなの大丈夫だから。また来ればいいから。そん時にでも、ね」

「そうかい、、、」



最終的に、おじいちゃんはおばちゃんに説得されて、
600円だけ払うことになりました。
そして、お店を出る時。
席を立つと、斜め前に座りウナギを食べている僕の方を見て、
ずっとかぶっていたキャップをわざわざ取って、



「お客さん、どーも。私はこれで失礼しますね。どーも。ごゆっくり」



と、声をかけてくれました。
僕は、ウナギを口にほうばりながら、少し、慌てて、



「ぐぁ!?あがぁあがぁ、、、
ぐぉーも、ぐぉーも。おぐぃをつけてぇ、、(お気をつけてぇ、、)」



と、会釈をして。
お別れをしました。
そんなふうにおじいちゃんがお店を出て行った後、
おばちゃんがそばに来て、



「あのおじいちゃん、ああ見えて80超えてるのよ。元気でしょう?
本当に元気なのよ」

「ええ?そーなんですか。元気ですよねー、確かに」

「お客さん、どこからいらしてるの?お仕事?」

「あ、そーなんです。ええ。東京の方から。ええ。
ウナギに惹かれてちょっと寄っちゃってみました」

「そーー。東京。大変ねぇ。東京のウナギは高いんでしょ?
うちの二倍ぐらいだって、うちの子供も言ってたよ」

「そうなんですよ。高いっすねーー。危機的な状況っす。
クライシスっす」

「く?らいし?」

「あ!いやいや!何でもないっす、とにかく高くて、ゼータク品です。ええ」

「でも、うちのに比べるとおいしいでしょ。
東京のウナギは美味しいって、いつも子供が言ってるのよ」

「そうですかぁ、、、
僕はこのウナギもとんでもなく美味しいと思いますけど。まじで。
本当に美味しい。スゴイ。感激の味っす」

「いえいえ、東京は美味しいって聞いてますよ」



僕とおばちゃんはそんな会話をして。
そして、無事にウナギを食べ終わった僕は、
あらためてお勘定をお願いしました。



「ありがとうね。2600円ですね。すいませんね。。」



と、ここで、僕はさっきのおじいちゃんを見習って.......



「肝焼きとかいただいた分、3000円ちょうどで、どーっすかね。ええ。」

「何言ってるの。大丈夫ですよ。2600円で」



きっと、おばちゃんは負けることはないので、
僕はこう言いました。



「そうですかぁ、、でも本当に美味しかったです。
じゃあ、このお釣りの400円は、
そこの都農神社(つのじんじゃ)さんにお賽銭であげて来ようかと。ええ。
近くでしたよね?このすぐ先あたりで。ね?」

「ああ、それはいいねぇ。
神社は、ここ出て、左に行ってまっすぐ、2キロぐらいで着くから。
寄ってみてください。お賽銭はいいねぇ」

「リョーカイっす。でわ、この400円はキッチリと。納めてきやす」

「骨せんべい、持っていきなさいな。袋に入れてあげるから。
仕事の合間に食べるといいですよ」

「ええ!?いいんですか?本当に?ありがとうございます。嬉しいです。
じゃぁ、神社いってきます」

「気をつけてね。ありがとうございました。
またいらしてくださいね。。」



僕はお店を出て、仕事に向かう前に、ちょっとだけ、
現、日向国一宮、都農神社(つのじんじゃ)さんに寄って行くことにしました。
手にはしっかりと、400円を握り締めて。



神社は素敵なところでした。
大きな都会でも、おおらかな田舎でも、どんな場所でも、
全ての場所で、全てがバランスよくあれますように。
色々な価値がオカシク捻じ曲げられたりしませんように。
人と自然とが調和できますように。
ウナギがこれ以上高くなりませんように。
ちゃんと、日常の中に非日常がありますように。

とにかく、

僕は絶対に負けません。

そんなお願いと誓いとを神様にして。
僕はなんだか、この地がとても好きになりました。



☆過去のウナギクライシスはコチラ☆

ウナギクライシス
ウナギクライシス 2
ウナギクライシス 3
ウナギクライシス 4
ウナギクライシス 5
ウナギクライシス 6
ウナギクライシス 7


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