上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

中国で上映停止の映画「晴雅集」(陰陽師:とこしえの夢)~第二部「瀧夜曲」(泷夜曲)の公開はいつか

2021年02月15日 | エンタメの日記
Netflixで2月5日から中国映画「陰陽師:とこしえの夢」(原題:晴雅集)が配信されています。
夢枕獏の小説「陰陽師」を原作とした中国映画です。晴明をマーク・チャオ、博雅をダン・ルンが演じ、監督・脚本は郭敬明(グオ・ジンミン)です。

原題「晴雅集」 日本語タイトル「陰陽師:とこしえの夢」 英語タイトル「YIN YANG Master」
監督、脚本:郭敬明(グオ・ジンミン) 中国公開日:2020年12月25日 撮影完了:2020年4月
出演:マーク・チャオ(趙又廷)、ダン・ルン(鄧論)、王子文 原作:夢枕獏  音楽:川井憲次
中国興行収入:公開11日間で約4.5億元(約70億円) ※2021年1月5日から中国上映停止
  

「晴雅集」は中国で2020年12月25日に劇場公開されました。クリスマス後の正月3連休に合わせた公開で、同時期にめぼしい作品がなかったこともあり、予想されていたよりも好調な興行収入を上げていました。
ところが、公開から10日余り経った2021年1月5日から上映停止となりました。それ以降、中国ではどの映画館、どの配信プラットフォームでも「晴雅集」を観ることができなくなり、2月15日現在も観ることはできません。

制作サイドは上映停止になった理由を明確には発表していませんが、監督・脚本の郭敬明(グオ・ジンミン)の過去の盗作行為に対する抗議が影響しているとみられています。

郭敬明(グオ・ジンミン)は1983年生まれ、小説家として若い頃から世に知られています。
男性ですが小柄で愛らしい顔立ちが印象的で、昔から多くのメディアに積極的に顔を出しています。また、時代を先取りするビジネスセンスと実行力のある人物で、早くから小説レーベルを立ち上げるなど、実業家の側面も持っています。代表作「小時代」(TINY TIMES)の映画化など、ブランディングに長けており、ビジネスの手腕が認められています。一方で、複数の作品の端々に盗作疑惑があり、2006年には盗作を理由とする賠償命令の判決を受けています。

元々テレビや雑誌等のメディアに頻繁に出ている郭敬明ですが、2020年10月から俳優養成バラエティ番組「演員请就位2」(「アクターご着席を2」)にメンターとして出演することになりました。



この番組が放送され、さらに「晴雅集」の劇場公開も間近というときに、テレビ・映画業界の関係者111名が連名で郭敬明に対する抗議文を発布しました。内容としては、「盗作の痕跡のみられる郭敬明がメンターとしてバラエティ番組に出演するのはおかしい」というものです。

時系列的にいうと、

2020年10月2日 俳優養成バラエティ番組「演員请就位2」(「アクターご着席を2」)配信開始。郭敬明が若手タレントの演技指導、演出をするメンターとして出演。
12月21日 111名のテレビ・映画業界関係者が連名で郭敬明と于正(中国の有名な脚本家・プロデューサー)に対する抗議文を出す。その後、抗議文に連名する関係者が156名まで増える。
12月25日 郭敬明監督・脚本作品「晴雅集」(陰陽師:とこしえの夢)が中国で劇場公開される。
12月31日 郭敬明が過去の盗作事件について謝罪文を自身のWeiboに掲載する。
2021年1月5日 映画「晴雅集」中国で一斉上映停止。
2021年2月5日 映画「晴雅集」(陰陽師:とこしえの夢、YIN-YANG Master)Netflixで日本など海外向けに配信。

中国では2月15日現在に至るまで、どの劇場・プラットフォームでも「晴雅集」(陰陽師:とこしえの夢)を観ることはできません。
実のところ、中国の一般大衆にとっては「晴雅集」が観れなくなったとしても、他に代わりに観る作品は沢山あります。
しかし、出演俳優や制作スタッフにとっては、作品を観てもらえないということは非常に辛いことで大きなダメージを受けます。
特に主演のダン・ルン(鄧論)はこの作品が映画初主演だったのに、僅か11日で上映停止になってしまいました。

実は、「晴雅集」は二部作として作られており、第二部の「瀧夜曲」(泷夜曲)の撮影もすでに完了しています。キャストは「晴雅集」と同じでマーク・チャオとダン・ルンが主演です。

「晴雅集」(「陰陽師:とこしえの夢」第二部「瀧夜曲」
  

第二部の「瀧夜曲」(泷夜曲)は無事に公開することができるのかが注目されています。最近予告編が流れており、2021年中に中国で劇場公開されるのではという説もあります。

郭敬明はこれまでにも様々な批判を浴びてきた人物ですが、「ビジネスの奇才」と称される人でもあります。
ある種の美意識を体現する力があり、そこが商業的な成功に繋がっています。第二部の「瀧夜曲」もどんな形であれ、その手腕によって公開にこぎつけるかもしれません。

一連の事件、つまり、盗作に関係する抗議文、謝罪、映画の上映停止という動きの背景には、中国「著作権法」の改正があります。2020年11月11日に改正案が通過し、2021年6月1日から改正「著作権法」が施行されます。これにより原作者の保護がより強化され、中国テレビ映画業界全体が原作著作権保護を重視する趨勢にあります。

一方で、映画「晴雅集」自体に問題はないのに、監督郭敬明の過去の行為に対する制裁で上映停止になるのは不合理なのでは?という声もあります。また、盗作問題があるのは郭敬明、于正だけではないので、問題のある人物は全員出てきて謝罪しなければ不公平なのでは?と言われるなど、大きな波紋を呼んでいます。

■111名のテレビ映画関係者による連名抗議「盗作者が人の模範となるべきではない!」琼瑶など作家、脚本家、編集者等がWeiboで発表。
【抗議文の摘訳】
「最近、一部の配信プラットフォーム、テレビ局のバラエティ番組で盗作の痕跡がみられる脚本家ya
や監督(于正、郭敬明)が番組のメンター、ゲストとして出演し、再生回数、視聴率を稼ぐために番組内外で意図的に話題を作っている。視聴率、再生回数を至上とするやり方は、関係者に大きな反感を抱かせており、我々中国テレビ・映画業に従事する者たちにとって、非常に残念で憤慨すべき事態である。・・・裁判の判決で「文賊」と認定された者たちが、資本主義のプラットフォームからもてはやされている。こんなことが続いてはならない。特に、郭敬明、于正は判決が下された後、謝罪を拒み、自身の違法行為に対しいかなる反省もしていない。このような「文賊」がテレビや配信プラットフォームでメンターとして崇められ、自らの「成功学」を売る立場になることは、社会的に極めて劣悪な影響を及ぼし、青少年にとって悪い見本となる。このような「劣悪な従業者」の宣伝合戦を直ちに停止し、番組を修正・調整することを呼びかける。」
※于正は「延禧攻略」(瓔珞(エイラク)~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃)のプロデューサーで多くの人気ドラマの脚本を手掛けています。

■郭敬明の12月31日の謝罪文。郭敬明公式Weiboで発表:https://weibo.com/guojingming
【謝罪コメントの摘訳】
2020年最後の日に、大変遅くなった謝罪をしたいと思います。
2006年、自身の小説「夢里花落知多少」は庄羽女史の小説「圏里圏外」の盗作であるとして、裁判所は下記の判決を下しました。
1.庄羽女史に20万元(約300万円)の賠償金を支払うこと。2.新聞「中国青年報」に謝罪文を掲載し公開謝罪すること、又は直接判決書の内容を新聞に掲載すること。
当時、弁護士からは謝罪文の掲載を勧められたのに、自身の内心と向き合うことができず、若く愚かだった私は虚栄心に抗えず謝罪から逃げ、新聞に判決文を掲載することを選んで法律上の処罰を履行しました。自らの反抗心により、自分の誤りを認めることができなかったのです。
その後、あらゆる場面で自分は盗作事件のことを語るのを避けてきました。なぜならそれは自分にとって癒えることのない傷で、再び皮を剝がすよな勇気はないからです。・・・あれから15年が経ちましたが、この過ちは自分にずっとついてまわり、若かった自分も40歳という人生の中間地点に入ろうとしてます。ネット上では自分への批判が常にあります。今日、自分は過去の過ちを認め、庄羽女史を傷つけ、自分を応援してくれる人々の信頼に背いたことについて謝罪します。
また、すべての人々、すべての創作者、そして中国の創作環境に対し、謝罪します。自分は非常によくない例を作ってしまいました。自分を戒め、盗作を拒絶し、創作が尊重されることを願います。
謝罪と同時に、小説「夢里花落知多少」から得られたすべての印税と収益を計算して、庄羽女史に賠償金として支払います。
もし庄羽女史が受取らないと言われる場合、この金額を公益慈善機構に渡し、公衆の監督下に置くようにします。
この15年間、自分はずっと、作品によって、努力によって成功を掴み、自身の奮闘によって人生を変えられることを証明しようと言い聞かせてきました。ですが、自分の過去から逃げて、若い日の過ちを認めないままでいるならば、私は永遠に立派な作者にはなれません。
改めて皆さまにお詫びします。申し訳ありませんでした。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2021年中国春節映画~東京が... | トップ | 中国版プデュ「創造営2021」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

エンタメの日記」カテゴリの最新記事