グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

暴風雨の中の青い人影・・・・レスキューじじいの思い出。

2013-06-22 15:31:09 | Weblog
暴風雨の中の青い人影・・・・レスキューじじいの思い出。

あなたのお住まいの地方では、台風4号の被害はありません
でしたか?
この話は、そんな台風の増水時に体験した出来事なんですよ。
農家の田畑の見回りの自粛要請」が、農水省からはじめて
だされた今、ある意味逆行するような話ではありますが、ご
参考までによろしかったら。

 ↓


あれは数年前の台風時・・・生まれてはじめて避難を考えた
時のことだった。

強まる横殴りの雨の、台風のまっただなか、様子をみるため
にすこしだけ開けた雨戸の隙間から、外の様子をみたときの
こと。

「んっ?」

人がいたっ・・・青いパーカを着た人物。
そしてその人物の足元は、すでにクルブシの上までにも水が
あがっていた。

「えっ。こんなに水がでていたんだっ。」

この家に住んでずいぶんになるが、この地区で、これほどの
水がでるのは初めての体験である。奇異におもえるはずの暴
風雨の中の青い人影よりも、窓下の迫りくる水の存在に私は
恐怖を覚えた。

避難したほうがいいと、とっさに判断し、雨戸を閉め、
「4駆の軽トラで避難しないと、水かさが心配だな」と考え
つつ、軽トラのキイを探す。

そんなときだ、叩きつける雨音・風音に混じって、金属音
が聞こえたのは。

「キイー、キキキギ゛ィー」

聞き覚え尾のある音・・・そう、排水溝を、排水溝に詰まっ
たゴミを金属のクマデでかきとるときに出る音だった。

「キイー、キキキギ゛ィー」

音が気になって、雨具を身にまとって外へ飛び出す。
そこでみたものは

金属のクマデを持って溝の排水作業をする青い人影だった!

手馴れた様子で作業する痩せ型の人影。姿勢はいい。
しかし・・・近寄って見たその青いパーカのフードのなかに
は、ご老人の顔があった。

暴風雨のなか、こちらに気付いたご老人は、なにも語らず、
ただうなづくのみ。確信に満ちたうなづきだった。

命令されたわけでもないのに、あわてて、こちらも
家に引き返し、クマデを手にした わたくし・・・。
嵐のなか、排水溝に詰まったゴミを金属のクマデでかきとる
二人。ゴミで埋まっていた水路で行き場をなくしていた水は

意外なほどのスピードで、その水位を低くしていった。

その間、約2時間。

ご老人は、水がひきはじめたのを確認し、一緒に作業しはじ
めてから1時間後にもう一つ先の、別の排水路に移られてい
った。『手馴れたものだ』と、その後ろ姿に、私は舌を巻いた。

いつのまにか台風の風雨は、峠を越していた。

数年たって、台風のニュースを聞くたびに、おもうのだ。
あのご老人はいったい誰だったのかと。

公民館活動をしている手前、ここの公民館の方ではない。
せまい町内。一度もお見かけしたことがない、お顔だったのだ。

あのご老人はいったい誰だったのだろう。


◎ 農家の絶対数が減少していくなかで、“水路の掃除を誰がやるのか
  ということは、これからの 日本社会の課題↓のひとつ となっていく
  ことでしよう。
   
51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」