グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

5月になると思い出す、ある農業事故。

2017-04-30 00:53:28 | Weblog
5月になると思い出す、ある農業事故。G 



田植えの時期となる5月になると、思い出すニュースがあります。
それは2007年5月24日のニュース・・・

23日午前10時50分ごろ、山形県酒田市北俣の農道で、田植え
機を運転していた 東京都足立区本木、浪曲師・玉川福太郎(本名・
佐藤忠士)さん(61)が田んぼに落ち、 田植え機の下敷きになって、
低酸素脳症のため、同日午後10時18分、死亡した。
県警酒田署の調べでは、福太郎さんは同市北俣にある妻の実家へ農作
業の手伝いに 来ていたという。


というものです。

農作業がお好きだったという玉川福太郎さんのご冥福を祈りつつ、
考えるのは、日本農業における農業事故多発の現実です。
そう、過去30年来、農作業中の死亡者が毎年400人前後もでてい
る日本の農業界
・・・これはつまり「悲惨な死亡事故が日本のどこか
で毎日起きている
」ということにほかならないのですから。

わたくしの現場の経験から考えられる、事故が減らないもっとも大き
い理由・・・それは、なんといってもまず日本が山国であることです。

傾斜のきつい農耕地における農業機械をつかった農作業では、事故は
起こるべくしておきるもの・・・それは多くの農業死亡事故が、
農業機械とともに転落した場合の圧死である
ことから容易に推察でき
るのです〔この傾向は農業機械が大きくなるほど増加します〕。

現在の出版界には、農業の大型化だけを進めれば万事オーケーという
景気の良い話だけを主張する動き
があるようです。しかし、まずは足
元の身近な現場の問題を〔たとえば農作業事故〕着実に改善していく
ことこそが大事なのではないのかとわたしには思えてなりません。
そのような産業としての基礎固めをおこなうことこそが、日本の農業
に新規就農者を呼び込み発展させていくために必要なことだと思うの
です。

農作業事故を減らす、そのためには・・・まず日本では農業事故が多
いという事実の認識、そして自ら行う事故防止努力が大切です。

新規就農を予定されているみなさまは、自分が就農しようとしている
農業の業種に適応した機械の操作に対する訓練を、できれば就農前に

充分に積まれてください。
すでに就農されている皆様には、 農作業の『馴れ』と『疲れ』は
避けるべきもの、体調管理には万全を期されてくださいね。
そして農業法人に就職された方には、「ヒヤリ・ハット」と、「指差
し確認」の 実行を お忘れなきよう。

農業者の場合は、そのほとんどが経営主。事故は自己責任になりがち
なのですから。


◎ 農業に、馴れと疲れは 禁物です。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜




田植えして一ヶ月くらいに良く受ける質問は。

2017-04-25 14:23:32 | Weblog
田植えして一ヶ月くらいに良く受ける質問は。G

南九州の早期栽培における平均的な田植えから、ほぼひと月。
活着したイネの生育はいかがなものでしょうか。
今回は、田んぼで生長しはじめた そんな時期のイネに関し
て、多く寄せられる質問に関するおはなしです。よろしかっ
たらご参考に。。

 ↓

そんな生育に関する質問ですが、たとえば・・・

  葉に条〔すじ〕状の食害ができる
  株ごとなくなる
  あぜぎわの葉に斑点状の枯れた点ができる
  分けつ〔イネの株がますこと〕がうまくいかない
  下葉が黄色くなっているが、これは病気ではないのか

といったところが代表的な質問の内容となります。
あなたのイネの生育で、あてはまる点はありませんか?

さて、その質問の答えですが、

 ■ 葉に条状の食害ができるのはイネミズゾウムシの被害
 ■ 株ごとなくなるのは、ジャンボタニシによる食害

と考えて良いかと思いますので、薬剤散布などの対策をほどこせば
よいということになります。

そして のこりの質問である
 
  あぜぎわの葉に斑点状の枯れた点ができる
  分けつ〔イネの株がますこと〕がうまくいかない
  下葉が黄色くなっているが、これは病気ではないのか

ですが、これらは、まずまちがいなく土中の酸素不足が原因の生育
不良
です〔とくに田植直前になって 生の有機物をいれた田んぼや、
前作の葉もの野菜や牧草を鋤きこんだ田でおこりやすい
〕。

田にはいって、歩いてみるとわかりますよ。

そんな田に入って歩くとでてくるものは、 ・・・・そう、
土中の有機物が微生物によって分解される過程ででてくる メタンや
硫化水素など
 の気体が、湧き出ているのです。

つまり水面下の土の中では

  田の土の中の生の有機物が分解し、ガスが発生している
  土中のチッソが有機物の分解に使われている

という状況に陥っている。

この状態では、イネの根が酸素を吸えませんし、生育に必要なチッソ
分も土中で不足する
。結果として、根の生育がうまくいかないために、
その影響がイネ全体の生育に及んでいると考えられるわけです。

したがってこんな場合の対策は、

  田の表面を空気に触れさす
  土中のガスを逃がす

ことが有効となります。その方法ですが、

 ■ 田の水を抜いて、田の表面を出す
 ■ 除草を兼ねてタズリさまを使用する

といった対策が効果的となります。イネの生育がどうも思わしくないと、
思われている方は、ぜひ、お試し
下さい。

そうそう、そして タズリさま。土中に空気も入れ、そのうえ除草もで
きる現代版のタズリさまは たとえば こちら です。


◎ ガスを抜くことが功を奏して、イネの生育が回復したとき。そのと
  きに思う・・・「農家は田にはいってたんぼ、いや、なんぼ/笑」。

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2017-04-18 18:50:46 | Weblog
田植え後のイネの調子が出ないときは。

南九州の早期栽培における平均的な田植えの終了後、20日から30日
ほど経過いたしました。その後のイネの生育はいかがでしょうか。

本年も田植え後に霜が降るといったような極端な寒さがいくどか到来し
たうえに、その後の天候も やや日射量が不足気味で推移しているよう
です。そんな気象の影響を受け、なかには「生育が悪く、田植えしたま
ま」というようなイネの状態の田も散見されます。
そのような田の状態の場合は[とくに晴天の日の]昼間に浅水にする
ことも対策のひとつです。浅水にすると、水温を上がることでイネの生
育が促進されますので、心当たりの田を持つ方は、ぜひお試しを。

参考資料として、田植え後からイネ刈り期までの標準的なイネの育ち方
については こちら 。

 ↓

『イネは 水管理でつくる。』

今回は、3月末前後に田植えされる南九州・宮崎の沿岸部の早期コシ
ヒカリ作を例にとって、イナ作における水管理をご紹介しましょう。


まずは田植前の3月中旬には、植えしろを完成させて水を貯め、水温
を上げておく
ことからイネの水管理は始まります。


ののの イネ作の始まり.jpg



無事に田植えを終わらせた後は、霜対策と風対策のために、やや深水
として苗を守り、



苗が活着したら、分けつ〔イネの株をふやすこと〕を確保するために
晴れた日中は浅水にして、水温をあげることに努めます。



水温があがって分けつがとれはじめていることを確認したら、一度田
の水をすべてを落水して、土中のガス抜きをします。



その後は浅水とし、ひとつのイネのイナ株の本数が26本前後になっ
た5月下旬の時点で1週間程度水を抜く 中干しにかかります〔中干
しは、体づくりの段階の生長から、実をつくる生長に転換させるため
におこないますよ
〕。


ののの イネの転換点.jpg



中干し後の 穂ができる時期の水管理は、水を入れたり・出したりす
る間断かん水をおこないます。



イネの穂が育つ時期にあたる6月10日から6月末にかけては、水を
切らさないように、田に水をいれた状態を保ちます。



そして6月25日前後に、めでたく出穂となります。



出穂がすんだ7月は、暑さがきびしい時期にもあたりますので、あま
りに気温が高いときには、水をかけ流しにして気温の上昇を防ぎます


ののの 次世代への希望.jpg



イネ刈り前の最終的な落水は、〔水持ちが良い・わるいといった〕田の
状況でちがってきますが、コンバインの作業がしやすい乾く田であれ
ば、極力 落水を遅らせます。



例年であれは、7月末にイネ刈り です。


といったわけで今回は、生育初期には主として田を保温する手段とし
て、そして 生育後期には 主として田を冷却する手段として用いら
れる水田の“水”についての、おはなしでした。


◎ まあしかし、イネっていう作物は 素晴らしいですよね。3月
  下旬にうえられた3キロほどの稲のタネが 7月の末には
  〔うまく管理すれば〕600キロ以上のおコメになるというわけ
  ですから。

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美味しいおコメを収穫するために。

2017-04-15 22:07:22 | Weblog
美味しいおコメを収穫するために。

4月中旬になって早期水稲の田植えがおおかた終了した南九州における、
これからの生育管理のはなしとなります。

 ↓

田んぼの栄養状態は 一枚一枚ちがいます。

肥えている田・やせている田・日当たりの良い田・水はけのよい田・粘土
質の土の田・野菜あとの田、大きい田・せまい棚田も、すべては 田んぼ
とよばれます。

そんな田んぼを

新規就農された方・おばあちゃん・ベテラン農家・農業公社・有機農家や、
サラリーマン・兼業農家のおかあさんたちなどなど、いろいろな方がつく
られる。日照りの年や、台風の多い年や、天候が順調な年、そして不順な
年にも つくられる。

そういう意味では、同じ田で同じ人が作るからとはいっても、田んぼでの
イネつくりって、じつに千差万別の世界なんです。

しかし、そんな多種多様な田んぼ と 多種多様な作り手、そしていろい
ろな気象のなかにあっても、作られるイネは正直です。だれがどう作ろう
と、育てられるイネの姿には土の栄養状態がはっきりとでる

イネは正直者なのです。

その栄養状態による診断と対策ですが、イネの姿をみたときにやせた栄養
状態のときはとり立てて心配いりません。

栄養が足りないときには、生育に合わせてすこしづつ肥料をやっていきさ
えすればよいのですから。むしろ心配しなければならないのは、イネが肥
満してきたとき。そう、田んぼの土が肥えすぎている場合なのです。

よくありがちな]田んぼが肥える原因となるのは、たとえば

 ■ 裏作にキャベツやハクサイなどが作られている田んぼ
 ■ 家畜ふん尿に由来するたい肥が必要以上にいれられた田んぼ
 ■ 田に作っていた牧草などをすきこんだ直後に田植えしたとき
 ■ 田に作られていた作物が安値から生産調整され、すきこまれたとき
 ■ 田植え直前に生の有機物〔ワラ・米ヌカなど〕を大量に入れたとき

などといったケースがありますが、こういった場合に注意が必要になるの
です。

なぜ注意が必要になるのかですが・・・イネが、田んぼ全体の養分が過剰
となった田や、チッソやカリなどの一部の養分だけが異常に蓄積している
田んぼに植えつけられると、

 ■ 稲がイモチ病などの病害にかかりやすくなる
 ■ イネの背丈がずんずん高くなり、収穫前に倒れてしまいがちになる
 ■ 穂が成熟する前に倒れると、穂が熟れない
 ■ 収穫の時期が遅れる
 ■ 未熟な栄養分がおおければ多いほど、食味も悪くなってしまう

といった不都合が、稲の生育しているうちに起こりやすくなるからなのです。

そういった不都合を解消し、おいしいお米をたくさん同時に収穫するために、
いれる肥料の種類を調整したり、田植えするイネの絶対[本]数を減らした
り、生育中の水の管理を徹底したり、イネに当たる日光の量を増やすといっ
た、イネの生育のお手伝いをしていく[栽培する]わけですが・・・育って
いくイネの姿には、そういった努力の効果もきちんきちんと反映されていく
のですから、

 イネというのはほんとに正直者だなぁ

と、つくづく思わされるんですよね、イネつくりの現場に携わっていると。

ということで今回は、田の土の状態や作り手の努力は、育てられるイネの姿
に反映される[イネは正直もの]。だから美味しいおコメをたくさん同時に
収穫するためには、まずは それぞれの水田に合わせた土づくりをし、田植
えした後は 育つイネをよくよく観察して適せん対応していこう
というおは
なしでした。 →  参考として・実際のハウスにおける土壌改良例


◎ イネには節があります。その節の長さなどからでも、その時のイネ
  の生育状態がわかったりもします。そういった意味では、昨年や一
  作年といった過去のイナ株は、貴重な生育の記録資料となりえます。
  たとえていえば、イナ株はある種のタイムレコーダー。ともいえそ
  うです。

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マダニ被害を防ぐためにも農作業時の服装はしっかりと。

2017-04-12 18:48:13 | Weblog
のマダニ被害を防ぐためにも農作業時の服装はしっかりと。

いつになく遅かったサクラも満開になった南九州地方。いまだ天気は不安
定とはいえ、9日には25度以上を記録するほどに温度が上昇してきました。
そんななか心配されるのは、春先のマダニ被害。とくに畜産農家の畜舎に
タヌキやアナグマの出没しはじめたような地域や、タケノコやシイタケを
栽培しているウラ山などにシカやイノシシが増えてきた地域では要注意で
す。転ばぬ先の杖・・しっかりと防除してまいりましょう。

 ↓

『マダニ被害を防ぐためにも農作業時の服装はしっかりと。』

県内で シカやイノシシ・サルなどによる鳥獣被害 が 広がっています。
最近では単に農地への侵入などはおさまらず、畜舎などへの侵入による
家畜飼料の食被害が発生している地区さえあるとの報告もあるようです。

そのような野生動物の侵入が一般的となった地区において、充分に注意
しておかねばならないこと があります。それが

 「重症熱性血小板減少症候群/SFTS」 

対策です。

ご存知のように、この マダニが媒介するSFTS は、発熱や下痢などの
症状が続き、有効な治療法のないまま最悪の場合は死亡することもある
怖い病気です。野生動物を目撃したり、姿が見えなくても被害を確認した
りした場合は、〔農作業時はもちろんのこととして]裏山にいく場合などで
あっても[マダニ被害に逢わないに]肌を露出しないような服装をすること
をこころがけましょう。 → 関連記事は こちら 。

そんなマダニ被害から身を守る服装例ですが、

ののののののののののののののの農作業時の服装.png

   首にはタオルなどをまき、首筋をださない
   シャツのそで口は 手袋の中に入れる
   シャツの裾は ズボンの中に入れる
   ズボンの裾は 長靴の中に入れる

といったようなものになりますよ[図をご参考に]。

ここ 宮崎県が全国でもっともSFTSにかかった患者数が多い県である
という現実を みなで共有してまいりましょう。


◎健全な農家経営に必要なもの、それはまずはなんといっても
  経営者の健康です。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染