グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

土は記憶する。

2013-06-08 23:38:54 | Weblog
土は記憶する。


たとえばあなたが、稲を作るとします。おなじ面積の田を3枚ほど
で稲を栽培する。3枚つづきの田んぼなら、さほどでもないのです
が、3枚の田んぼが別々の場所ににあるとするなら、どうしても生
育差がでてしまいます。同じようにたい肥をまき、同じように肥料
を施肥し、同じように耕しても、差は出ます。同じ日にまいた、同
じ品種の種を、同じやり方で育苗・管理し、同じ日に田植えしたと
しても、やはり生育差は出てしまいます。3枚の田んぼに引き込む
水の温度やその水の含む栄養素をが同じだったとしても、どうして
も、生育差がでてしまいます。

その生育差の原因は・・田の土にあります。

土は覚えてしているのです。かつてその田のある場所にあった「もの」
を記憶している。例えば、それはかつてその場所に存在した別の田畑
であったり、果樹園や桑園であったり、道であったり、宅地であった
りするのです。

耕地整理という言葉をご存知ですか。

たとえば、『小さくて曲がりくねった道沿いにある、たくさんの小さ
な田のあぜをはずして、大きくて四角い田に作り変える』ことをいい
ます。また現代に残っている棚田のような地形のものを、『ある場所
では掘り下げ、ある場所では盛り土をすることによって、水平に作り
直す』場合もあります。

これが耕地整理。

『こちらにあった宅地をあちらへ移して、田んぼと宅地の場所を交換』
した場合もあるでしょうし、『田んぼと果樹園や桑園の場所を交換し
た』耕地整理も当然ある。そうした耕地整理してできあがったのが現
代の『広く水平な大きな田んぼ』というわけです。そんな時期のイネの
植えられている田んぼを遠めに見ると、かつての道の跡や住宅のあった
場所、田の畔の部分などが確認されることもあって、なかなかに興味深
いものなんですよ。そんな場所が耕地整理や道路工事中に掘り返される
と、過去の遺構あとがそのままになってでてくることとなります。埋め
られていたり、削られていたりしてはいますが・・土は何十年、時には
数百年といった過去の地形や構造物を記憶しているわけです。

・・・考えてみれば、それはけして不思議ではないのかもしれません。

なんといっても、土は 生物と無生物のもの からできているのですから。


◎ 数年から10年程度の間、作物を無肥料でそだったりすることなどは、
  肥えている土であれば、そう珍しいことではない場合もあります。
  逆に、1作や1年で肥料が無く なってしまうと考えることのほうが 
  現場の常識からいえば おかしい です。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜








イネには「三黄」がある。

2013-06-08 14:49:32 | Weblog
イネには「三黄」がある。


6日08日現在、3月下旬に植えつけられた南九州の早期コシヒカリは、
イネの穂がでる15―25日前くらいの時期にあたります〔2回目の三黄
時期ですね〕。ということで、今回は、そんなイネの三黄についての回と
なります。よろしかったら。

 ↓

イネ作りにまつわる昔からの言葉で、 「イネには三黄がある」 と
いう言葉があります。これは、

 イネを栽培するあいだにおいて
 3度、葉の色を薄く〔栄養を落とす〕したほうが良い時期がある


という意味です。また

 この3つの生育時に、葉の色が濃すぎている〔栄養が効きすぎ〕と、
 その後の生育がうまくいかなくなってくる


という イネ栽培の様子をあらわしている言葉 にもなります。

つまりイネの三黄色とは・・・

いつもいつも肥料を効かせておけば良いという考えや、肥料はやらなく
ていいという考え
とは対極にある、 昔から伝えられてきたイネつくりの
考え方となります。

実際の栽培においては・・・

元肥/植え付け前の肥料をいっきにドカンとやる方法では、いつまでたっ
ても肝心なときに葉の色が抜けず、低温とか日照不足などの異常気象が
襲ってきたときに思わぬ障害〔病害虫〕に侵されやすいこととなりがち
となります。

反対に肥料が足らなくては、日照りの年では、絶対的な収穫量が不足し
たり、収穫時期がそろわなくなる場合が多くなりがちになります。

その対策として、『イネの三黄』の時期を頭において、作業管理を行う
わけですね。

具体的には、田んぼの水管理を考えたり、 田の中に酸素を入れたり、
あるいは生育を調整するためにカリの多い肥料を与えたり、リンサン
とマグネシウムの割合の多い肥料を与えたりといった管理となります。

そして、その葉の色を落とす時期ですが、具体的に落とす時期となる
のは、

 ● 田植えの時期
 ● 穂がでる25日前くらいの栄養生長期から生殖生長期への転換期  
   そして
 ● 穂が出た後の収穫期

の3回となります。

このように変化する気象や作物の成長に伴う生理にあわせて、あるとき
は適応する栽培管理を行う
、そして またあるときは足らない成分をい
れ多すぎる成分を抜いたりする
・・・・これが作物栽培と収穫の原則で
あり、それこそが『栽培』なのだと思わずにはおられません。

もちろん肥料を控える時期と効かす時期があるのは、イネだけとは限り
ません。ほかのいろいろな作物にも、共通することなんですよ。
以上、作物には肥料を控える時期と効かす時期があるというお話を、
『イネの三黄』をご紹介することでご説明してみました。


◎ 農業に興味があるのなら・・・・鉢でも、プランターでもよいですから、
  まずは自作してみる。それを記録に取る。そうやって詳しくなってきた
  つぎは田畑に出かけて、作物をみる。
  そんな積み重ねが、おおきなちからとなっていきますよ。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染