グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

厳寒期の施設栽培作物のメンテナンスには。

2013-12-30 22:00:30 | Weblog
厳寒期の施設栽培作物のメンテナンスには。

ハウストマト栽培に限らず、ハウスキュウリ栽培やハウスピーマン
栽培の農家の皆さまから、〔日照時間が少なく・気温や地温が最も
下がりはじめる
〕 年末の時期にあたって よく質問を受けるのは

 出荷の始まる年明けから良い品がたくさんとれる方法は?

という、出荷がとまるこの時期のメンテナンスに関する質問です。それは
とりもなおさず

 うちのハウスの作物には、いま どんな肥料を施すのが良いのか

ということになります。

その答えですが・・・これはもちろん千差万別。質問者さんのハウ
スの、現在の樹の状態により対応がちがって
まいります。その樹の
状態ですが、一般的には

 ↓

 ● 樹にたくさんの果実がついている
 ● 樹についた果実の大きくなるスピードが遅い
 ● 樹の先端部分の先端で花が咲き、芯が細ってきている
 ● 葉の色がうすい

といた場合は、チッソの割合の多く入った肥料を施す。またそれと
は反対に

 ● 花は咲くのだが、花がとまらない〔実にならない〕
 ● 樹の勢いが強く、先端部分が伸び、花が樹の中段で咲く
 ● 葉が大きく、葉色が濃い〔葉の表面が波うつ状態もあり〕

といった場合は、リンサンやマグネシウムの多くはいった肥料や場
合によっては、さらに カリのはいった肥料を加えて施す。


 ↑

というのが、樹の状態をみたうえでの〔これまでも元肥のやり方で
お伝えしてきたとうりの〕セオリーどうりの対策となります。

しかし、なによりこの厳寒期の営農対策として気をつけねばならな
いのは

 すぐに結果をださねばならない

ということ。

なにせ、この厳寒期の果実の値段は高いのがあたりまえ。極論する
ならば、農家さんは「品が薄くなって果実の値段が高くなる この
厳寒の時期
にあわせて施設栽培をおこなっている」 のですから。
せっかくの追肥であるならば、 すぐに効かねば意味がない わけです。

したがって この時期に施設栽培で使う肥料は、

 すぐに樹に吸収されるタイプの肥料を使う

という必要があります。

ということで、使用する肥料の種類としては、粒の形状であっても
水によく溶けるタイプの肥料や、液体の形状として市販されいる液
肥タイプの肥料を使用します。

さらにその肥料のやり方ですが、すぐに樹に効かすためには

 根から吸収させるよりも、葉から吸収させる

という 葉面に直接散布する方法 が、効果的です。

・・・そうですね、セオリーどうりの元肥を主食とするならば、今
回の〔樹のようすを診たうえでの〕緊急を要する施肥は、 ひとで
いうならば〔いわゆるファイトいっぱつ的な〕市販のドリンク剤の
ような効果を期待するもの といったら、わかりやすいですね。

その後の対策ですが、“効果のあったすぐに効くタイプの肥料”と
の連続使用と併せて、同じような成分をもった “粒状ではあるが、
吸収されやすいタイプ” の肥料を、圃場に施しておくのがお薦め
です。なんといっても液肥タイプの肥料は、

 すぐには効くが、効果は長続きしない

という性質がありますから。これもまた、主食とドリンク剤の関係
で考えると わかりやすいですよね。

というわけで今回は、施設栽培の最大のかきいれどきである厳寒
における肥料の選び方と使用法
に関するおはなしでした。


◎ 一例ですが、樹の勢いが強すぎる場合に使用する液肥のアク
  セル2号と、同社の粒状肥料であるマグホスの成分は似てお
  ります〔しかもマグホスには溶けやすい細粒タイプもあり〕。
  使用法として、まずはアクセル2号を葉面散布。効果がみら
  れた場合には、さらなる葉面散布と合わせて、マグホスの細
  粒の圃場への散布をおこないます。
  
51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染



雪の重みは園芸ハウスをつぶす・・・気象庁予報に注意を。

2013-12-28 23:05:27 | Weblog
雪の重みは園芸ハウスをつぶす・・・気象庁予報に注意を。

日本付近は29日にかけて冬型の気圧配置が続き、上空には寒気が流れ
込むため、西日本から北日本にかけての日本海側の地方や山沿いを中心
に雪が降り続き、大雪となることが予報されています。
該当する地域のみなさまにおかれましては、今後とも地元気象台が発表
する警報・注意報や気象情報には留意されてくださいね。大雪に関する
気象庁の 大雪に関する全般気象情報・第5号は こちら 。

そしてこのような警報が発令されたとき・・・農業において最も気をつけね
ばならないこと、それは雪の重みは園芸ハウスをつぶすという事実です。

そう、作物を栽培するばかりでなく、ときには育苗やちょっとした作業
場に重宝する便利なビニールハウス、また新規就農生活のスタートにう
ってつけの経営を約束するはずのビニールハウスは降雪に弱いのです。


この現状を多くの方に理解して頂くために、被害状況のご紹介は こちら  
のページとなります。そして、転ばぬ先の杖・・ともいうべき、雪災害
の備えとなる共済制度についてのページは こちら となります。

よろしかったら ご参考に。


◎ 年々厳しくなってくる観のある自然環境・・・そんな自然の脅威
  に対処するためには“備え”が必要であるということですね。。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染



数年前までは、おめでたいことだったのだけれど。

2013-12-27 18:08:27 | Weblog
数年前までは、おめでたいことだったのだけれど。

世の中の吉か凶かは、状況で変わるものなのだなと実感することが、
おおくなってきました。
 
たとえば クマ 。クマの大群の映像です。

 クマ.jpg

これは、ルーマニア版の厄払い

クマの毛皮をまとい、歌って踊りながら家々を回るという、ルーマニア
の伝統的な新年行事

日本でいえば、獅子舞の獅子がいっぱい・・・とったところで、じつにおめ
でたい写真だなと、おととしには思ったのです。

けれど数年前からの人里におけるクマの出没や、それに伴う物的・人的
被害がおこったいま、わたくしはこの写真を見て怖いとかんじずにはおら
れません。

そして、いっぽうこちらは、おめでたい鳥〔亀は万年、ツルは千年〕で
あるツル、その ナベヅルの大群 です。

 images.jpg

こちらも、 おめでたさ満載 ともいえる写真だったはずなのですが・・・
日本各地で強毒性の鳥インフルエンザウイルスが野鳥から検出され
ることがめずらしいことではなくなった今、この写真をみて身構えない
農業関係者はおそらくいない
はずです。

わずかに数年、はっきりいえば60ケ月もたっていないはずなのに、この
心の変わりようって、いったいなんなのでしょうね。わがことながら、
驚いてしまいます。

いじょう、 かは状況で決まる というお話でした。。


◎ 厳冬となった本年。各都道府県の、とくに養鶏関係者は
  渡り鳥の数や、〔ウイルスを含んでいるかもしれない
  フンに神経を尖らせています。
  そして・・・ヒトの健康にも直結するFAОのお話は こちら です。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜



農産物。売れると踏んだら 増産×増産。

2013-12-26 15:28:07 | Weblog
農産物。売れると踏んだら 増産×増産。

6月の記事ですが、よろしかったら。

 ↓

農業における産地間競争の話 の続編です。

右肩上がりに売上げが伸びていく商品があれば、官学民の協力のもと
に 産地の総力を挙げた生産量を伸ばすための努力が重ねられます。

たとえば、宮崎県の地鶏のケースがあります。

2000年度には43000羽程度だったはずの生産量は、03年度
に136000羽、2006年に250000羽、そして2012年
度にはも460000羽出荷されるという実績が残されました。10
年ちょっとで10倍以上の生産が実現された
ことになります。

それだけではすみません。

これから 2015年度にかけての生産計画ですが、宮崎県によると
今後は 70万羽!の出荷を達成することを目標として、着々と〔
産を達成するための
〕準備がすすめられているといいます。

・・・こうなると黙って見過ごすわけにはいかないのが、宮崎以外の
九州各県です。

まずは大分県が「おおいた冠地どり」、長崎県が「つしま地どり」、
鹿児島県が「さつま地鶏」、そして福岡県が「はかた地どり」という
ふうに、まずは各県独自の“地鶏”の品種を開発して、宮崎県を猛追
しようとしています〔ちなみに12年度の出荷量の順位は宮崎43万
羽、福岡40万羽、鹿児島13万羽の順
〕。

なかでも力が入っているのは福岡県。福岡県畜産課の発表によれば、
5年後の2018年までには、はかた地どりの生産量を60万羽に
増産する
」という計画が公表されています。

・・・こうなると産地間競争というよりも産地間生産戦争とでも表現
したほうがよさそうな状況でしょう?

しかしこれが農業界。

ひとつの商品が売れると踏んだら、そして自分のいる地方でもその商
品の生産がより有利に展開することが可能であると判断できたら、
産に増産が重ねられていくことが常な世界
であるのです。

といったわけで今回は、

  各県独自の品種の設定
  各県における、その品種の増産強化 

という手段を使って、地どりの生産をめぐって九州の各県の間で展開
されている産地間競争の一例をお伝えしてみました。

・・・農業関係者のひとりとしてはですね、「九州の地どりの生産量が
増えていったとしても、地どりの販売価格がいままでのように安定し
つづけてていく」ことを願わずにはおられません。


◎ はんたいに消費量が減少することで、結果的に採算割れを起こす
  状況が続いていくようになれば、弱い産地から生産量が減少して
  いくことになります。「売れないとなったら、いずれは減産」という
  のも、またひとつの農業のすがたなのです。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染



農産物の産地間競争を勝ち抜くには〔再〕。

2013-12-24 16:25:07 | Weblog
農産物の産地間競争を勝ち抜くには〔再〕。

前回の関係で6月分再録ですが、よろしかったら。
 ↓

右肩上がりに売り上げが伸び、それに伴う利益が増える・・・消費者
のニーズにかなった農産物ブランドの立ち上げに成功した農業経営者
にとって、これほど気持ちのよいことはありません。
こうなると周囲の協力もあって、生産量を伸ばすべく事業の規模拡大
に邁進することになるのですが、ここで気をつけておかねばならない
ことがあります。

それは ほかの農業者の参入の増加、ひいては新らしい産地の参入です。

農業者の数の増加は、農産物の生産量の増加を意味します。市場が拡
大し続けるうちはそれでもよいのですが、しかしいったん市場の拡大
が止まると状況が変わってきます。農産物のシェア争いが生じはじめ、
シェア争いは、その農産物の価格の低下を招き始める
のです。

この生産量の急増とそれに伴う価格の低下という重要な局面において、
各産地の農業経営者のとる方針にはいくつかの選択肢がでてくること
になります。

その選択肢は、たとえば

  生産規模を拡大し、さらなる生産量の増大をめざす
  生産規模は増やさず、単位面積当りの収量を上げる努力をする
  生産規模をむしろ絞って、高品質の農産物の生産を狙う
  新たに農産物の加工部門を新設する
  生産を徐々に減らし、新しい未知の農産物の生産に挑戦する

といったところが挙げられることでょう。

生産物の量をとるか、質を取るか、あるいは生産や加工の分野で新ジ
ャンルの商品を開発するのかといったところですね。

どの試みが成功するのか、それはまったくの未知数です。成功の鍵
は、ひとや産地によってさまざま。その産地の立地場所による消費
面における優位性が功を奏するかもしれません。その産地の気象条
件が功を奏するかもしれません。あるいは仕立て方や施肥法・そし
て水の管理といった農業技術が功を奏するかもしれないのです。

これから政府の肝いりで、全国一斉に六次産業化がおしすすめられ
いくというのですから・・・・〔ただでさえ六次産業化の試みは飽和状態
であると私はかんがえおります
〕、
その産地間競争は、これまでどの産地が経験しきた産地間競争より
も、知恵と頭と情報を使うものになっていくことになるのはまちが
いのないことでありそうですね。

ということで次回は、そんな産地間競争の実際例のご紹介など。


◎ 『足かせとなるのは日本の農家のネガティブ意識。いま、そこ
  を変えなければチャンスを逃す
』などといった景気のよすぎる
  話だけを信じるのはいいですが、かけた梯子をはずされないように
  くれぐれも ご用心・ご用心。

 51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染