グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

『本当は危ない有機野菜』 エコというだけで補助金では。。

2010-06-22 01:42:40 | Weblog

政府が直接的または間接的に公益上必要がある場合に、民間に対して交
付する金銭的な給付を補助金といいます。社会的な意義のある仕事だけ
れど収益性がすくない事業を手がける民間業者にとっては実に有意義な
制度だといえますよね。
ただし、この補助金制度には気をつけねばならない場合がある・・・。

それは「その時々の社会経済情勢に応じて、諸々の補助金が安易に創設
されるケースも多いこと」、そして「一度創設された補助金は廃止する
ことが難しく、長期化、既得権化するなどの問題が生じやすいこと」な
どです。

補助金の原資は国民からの税金であるのですから、補助金が公正かつ効
率的に使用されるように努めなければないことは補助金を支払う者の責
務であることはあたりまえのことです。しかし、時によって、とくに安
易に創設されすぎた〔と思われる〕補助金の場合には いろいろな問題
がおきやすいという弊害もある・・・そんな例のひとつとして『エコ』
に関する補助金の問題があります。

典型的な例が、アグリガイアシステム問題です。

「一度創設された補助金は廃止することが難しく、長期化、既得権化す
るなどの問題が生じやすいこと」を防ぐためにも、この問題はもっと広
く議論をつくしたほうが良い、そして定期的な見直しの仕組みをつくる
ことが大事なのではないかと思うのです。そのような思いから、この
ブログでとりあげた次第です。↓



アグリガイアシステム問題に関して報道されているニュースには、つぎ
のようになります。

多額の県助成を受けて期限切れコンビニ弁当などの飼料化事業を進め
 ていたアグリガイアシステム(八街市)が 30日、経営難により事
 業を停止し、系列の廃棄物収集業者も含めた全従業員計約200人が
 解雇された。
 突然投げ出された従業員の今後、事業再開の成否、公金16億円の行
 く末…。多くの課題を抱えたまま幕を 下ろした有
 機リサイクル事業は、なぜわずか2年で行き詰まってしまったのか。


千葉県に本拠を置く廃棄物収集運搬業「北辰産業」は、東京地方裁
 判所に民事再生法の適用を申請し倒産しました。1984年に設立の同社
 は、自治体や病院等の排出業者から出される廃棄物を受託し、再生処
 理工場や中間処理工場へ運搬する一般廃棄物・産業廃棄物の収集運搬
 業者。また、グループ会社である「アグリガイアシステム」ととも
 に、コンビニエンスストア等から廃棄される食品廃棄物を農業肥料な
 どにリサイクルする「食品リサイクル事業」での収集運搬業務を行い、
 徐々に同社の主力事業に発展。
 しかし、アグリガイアシステムが7月7日に民事再生法の適用を申請し
 倒産したことから、同社の事業も立ち行かなくなり、単独での事業継
 続は難しいとの判断から今回の措置になった模様。帝国データバンク
 によると、負債額は約41億円。




この問題についてのいろいろな疑問点について このブログでお話した
いことを、1年前の第171回国会・農林水産委員会において、当時野
党であった民主党の姫井由美子さんがとても上手に質問
されています。
ここではその姫井さんのご質問を掲載させていただくことで、アグリガ
イア問題についての本質を理解していただけたらと思います。


『民主党の姫井由美子です。
 私が先般、三月四日、当委員会で千葉県佐倉市のアグリガイアシステ
 ムの飼料化センターの質問をしたことを覚えておいででしょうか。そ
 の飼料化センターに大変な事態が生じましたので、少し時間のお許し
 をいただきまして、その部分、二点だけお伺いしたいというふうに思
 います。
 六月六日、土曜日です。テレビ東京で放送されました週刊ニュース新
 書におきまして、この飼料化センターと堆肥化センターが今月中に操
 業を停止し、全従業員二百五十人に解雇予告通知を出しているという
 ふうに報道されました。そして、前日、前々日の千葉日報等の報道で
 も、このアグリガイアシステムのパートを含む百五十人と、そして元
 々の、同じ社長ですね、産廃を回収していた北辰産業の約百人、この
 経営悪化のために今月で停止をするというふうに言われました。
 大手コンビニチェーンのセブンイレブンなどから出るお弁当など食品
 残渣をリサイクルし、堆肥や家畜の飼料を製造、販売しており、私も
 当時言いました、三年間ですけれども、建物の建設費三十数億円のう
 ちの半分、十五億八千万円、これは約十六億円と書いておりますけれ
 ども、交付金という形で農林水産省から千葉県を通じてアグリガイア
 システムに下りております。それがたったの二年間で操業停止という
 ことです。
 これにつきまして、原因が飼料や堆肥が売れなかったということなの
 でしょうか。私はその飼料の適正化というものを当時訴えておりまし
 た。そしてこれは、この交付金をもらう段階では計画を出してもらっ
 ているはずですよね。
 この計画がどんな計画だったんでしょうか。そして、どれぐらいのお
 弁当を廃棄として搬入し、どれくらいそれが飼料、肥料が売れる計画
 だったのでしょうか。計画のチェック、そして本当にその肥料や飼料
 が売れていたのかということ等含めて、この経営が行き詰まったとい
 う情報
をいつごろ得たのでしょうか、伺いたいと思います。』


『この経営破綻の、困難な情報は昨年から分かっていたというふうに伺
 っておりますけれども、この情報の入手の仕方ですよね、農水省は関
 東農政局に行って、関東農政局が千葉県に行って、千葉県がアグリガ
 イアシステムに聴き取り調査をする。
 私は前回の質問で、こういったエコフィードなる飼料化リサイクルセ
 ンターはやはりどういう飼料が適正か、そして、その回収が元々家畜
 のため、豚のための飼料化センターではなくて、大手コンビニチェー
 ンのエコのパフォーマンスに使われる、元々お弁当を廃棄しているか
 らそれを回収して何とかしてほしい、そこからの発想自体、私は間違
 いではなかったというふうに思うんですね。ですから、この飼料リサ
 イクルにつきましては、農林水産省が私は主導権、リーダーシップを
 取ってほしい、そのために調査をしてほしい
というふうに申し入れた
 かと思います。
 今後も、こういった形ですべて千葉県に任せるつもりでしょうか。と
 いいますのは、使い道の決まっている交付金、私はこれほど使い勝手
 が悪いものはないというふうに思います。補助金というものは、農林
 水産省が直に審査をし、そして口出しもします。しかし、地方分権と
 いう名の下に、交付金という名にして千葉県に選択の自由を与えた代
 わりに責任も千葉県に押し付けているわけです。
 私は、今回は、千葉県に責任転嫁をした補助金という見方をしてもい
 いのではないかというふうに思える事例ではないかと思います。是非、
 今後どういうふうに指導していくつもりかというものも大臣にお伺い
 したいと思います。』

以上です。

この姫井さんのご質問の、問題の本質を捉えている点と、先見性には、
現場にいるものの一人として、ただただ感心するばかりです。

しかるにです。

公金をつぎ込んだ事業がいまのところ破綻しているにもかかわらず、
超党派の国会議員の先生方が中心になって、有機栽培に関する補助事
業をさらに推進しようという動きがあるといいます。これはさすがに
いかがなものか。
これまでどおりに有機農業を推進するというのならなら、せめて前回
提案したJAS法違反の対策を、そしてこのアグリガイアの問題を
国会の場で取り上げ、解決してから行うのが筋ではないか
とおもうの
です。
問題を解決されないままの見切り発車は、さらなる税金の無駄遣いに
つながる危険性があるのではないでしょうか。 

・・・まして、現在。

民主党が与党であるわけですから、今後『エコと唱えただけでの補助
金政策』というもの自体も、厳しく仕分け
られて当然だとおもうので
すけれど。


参考資料

有機農業、もっと知りたい方のために、第一回分 は、 こちら  。
有機農業の自給を達成したキューバの真実 は、 こちら  。
有機行政の改革を は、 こちら  。
そもそも輸入分が6割を占める食品残渣は安全なのか は、 こちら  。
 ↓
本当は危ない有機野菜 」「夢で終らせない農業起業

有機農業の推進を理念にあげる参議院議員・有機農業推進議員連盟
事務局長は、当然第171回国会・農林水産委員会には臨席されておら
れたのですよ、ね?


「本当は危ない有機野菜」 ゆーりんさんへのお便り。

2010-06-17 00:21:43 | Weblog

ゆーりんさんの書評における『有機農法の大半は未熟な堆肥を
使用していると、筆者が思い込んでいる
ことです。』という点に
ついて、ひとこといわせていただきたく。

この文章に象徴される書評を読ませていただいて、根本的に誤解
されているのではと思ったのは、この本が有機栽培の歴史を説明し
有機栽培の方法にもいろいろな方法があることも章立てして説明
しているにもかかわらず、ゆーりんさんが その事実をある意
味意識的に無視されて評論を進めておられることです。

 第7章 誰が日本人から食料と健康を奪ったのか
 第8章 いい有機栽培、悪い有機栽培
 第9章 安全な野菜の選び方・食べ方
 第10章 家庭で安全な野菜づくりに挑戦しよう


この本には、上記の章もあるのです。

その章立てからもわかるように、この本は有機栽培を攻撃するもの
ではありません。
この本の本質は、『有機農法の大半は未熟な堆肥を使用していると、
筆者が思い込んでいることです。』なのではなく、有機栽培に使用
されている有機の種類や量、施用回数の基準を作ろう
というところ
にあります。

それはこの本が多くの有機栽培者の皆さまから賛同をいただいてい
ることからもわかります。
それはとりもなおさず、『有機栽培には、その栽培法にいろいろな
ものがあるにもかかわらず、それぞれの栽培法についてきちんと評
価されてこなかったという現実』に対して不満をもたれている有機
栽培者が、たくさんおられる
という事実の証明でもあります。

今回は本の著者としてではなく、ゆーりんさんと同じ立場のブロ
ガーの一人
として書かせていただきました。

今回の参考資料といたしまして、いただいているブログ書評のなか
から、有機栽培者さまのブログや、学術系方面のブログをご紹介さ
せてください。
こういった見方も存在するということを、ゆーりんさんにご理解いた
だけたら幸いです。
その上で、本の著者の一人として、まずは本に興味を持っていただき
ブログに取り上げていただいたことについての、感謝とお礼をもうし
あげます。

参考資料 ↓

・m-easyさま  
日ごろ自分が抱えている世間の有機農業に対する不満がここに表現
されていたのでオススメです。

・田舎元気本舗さま 
至極まともなことが書かれているので驚いた。著者は有機農業その
ものを非難しているわけでなく、内容は未熟な堆肥や生の家畜糞を
大量に使用している有機農家とそれを野放しにしている有機JAS
法やリサイクル法、有機農業推進法に対しての警告であった。

・熊猫通信さま 
タイトルを見て、なんだとお?と思い、取り寄せたのですが、予想
していたような独断と偏見の書ではありませんでした。

・やさしいバイオテクノロジーさま
家畜の糞や堆肥が「安心・安全」だって、誰が言い始めたのでしょ
うか?
かといって、有機なら全部ダメ、といっているわけではありません。

・SHOちゃん徒然日記 
タダの鶏糞を田んぼに撒き、できた作物を有機農産物としてお店で
売っている農家があります。消費者は、有機=安全と思って買って
いるのでしょう。私は詐欺以上だと思います。

ちび子さま
昔ながらの焼き畑農法などがなくなり、リサイクルされた輸入食材
などからの汚染肥料による有機栽培の危険性を教えてくれている。

SAPIOさま 
「有機リサイクル農業」と呼び、本来の伝統的な有機農業とはっき
り区別して見るべきだと指摘する。

▼ 口蹄疫でも問題となっている
 家畜の埋設の法制化を事前に提案している本でもあるんですよ。
 ↓
本当は危ない有機野菜 」 「夢で終らせない農業起業



『本当はあぶない有機野菜』 有機行政の改革を!

2010-06-06 00:58:04 | Weblog


行政機関や民間企業などから報道機関向けに発表された声明や資料をプレス
リリースといいます。
そして以下の農林水産省のプレスリリースが、昨年後半におけるJAS法有
機栽培の違反に関しての、概要と経過と措置
をあらわしたものとなります。


特定非営利活動法人有機農業推進協会アニュー中日本 株式会社、アスカ
と、ついでに こちら  。

お気づきのように問題はJAS法有機栽培の違反に対する措置にあります。

重い違反の場合は資格取り消しとなります。けれど、多くのケースでは農林
水産省の指導措置に従った上でしばらくの間の営業停止処分の期間さえクリ
アすれば、違反をおこなった業者の営業は元通りに開始
されるのが常なのです。

そのような〔ある意味弱腰ともいってよい〕農水省に対応した形での当事者
『消費者さまへのおことわり』には、しょうじきいって慣れっこになって
しまいました。

たとえば ↓ このような『おことわり』です。

 NPO法人 ○×△ 理事長より 
 
 ホームページをご覧頂き、誠に有難うございます。
 さて、すでにご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、20●●年■月
 ▲日付けの官報および農林水産省のプレスリリースで、 有機JAS認定
 生産行程管理者(●●県■▲市)が不正な格付を行ったことが公表されま
 した。
 農林水産省は、同グループに対し、JAS認定取り消しが妥当であると
 いう判断を下し、■月▲日に聴聞会を開催するとしています。
 こうした重大な違反事例が、当会の認定者から出たことは誠に遺憾です。
 前記の有機JAS認定生産行程管理者(●●県■▲市)については、毎年
 のように検査を実施しておりましたが、不本意な自体を引き起こしてし
 まいました。この点、皆様には多大なるご心配をお掛けし、誠に申し訳
 ありませんでした。
 最後に、本件を一つの教訓として、当NPO法人は検査・判定システム
 のさらなる向上を目指すとともに、認定業者の管理能力を向上 させるた
 めの研修を充実させることによって、再び同様の事例が発生しないよう
 特段の努力をしてまいる所存ですので、 変わらぬご指導・ご鞭撻をよろ
 しくお願い申し上げます。
謹白


業者の「安心・安全」といううたい文句を信じて商品を購入したはずの消費者
の救済はなされぬままでの、このようなおことわりと その後のなにもなかっ
たかのような営業再開
・・・・あなたはこういった事態をどう受け取られます
でしょうか。

現行でのJAS法有機栽培がこれからも続いていくとするならば、JAS法
有機栽培の違反は、これからもずっとつづいていくことでしょう。

実にやるせない話ではありませんか。


以下は補足資料。

このような事例を知るにつけ、わたくしがおもわずにいられないもの、そ
れは、有機行政の改革の必要性です。『本当はあぶない有機野菜』におい
ても一部提案いたしておりましたが、ここに改めて改革の具体的な方法と
しての科学的な手法の導入案の一例を提案させていただきました。

 1.認証認定機関は、認定業務だけではなく、有機農場の土壌検査や有機
  農産物の成分・衛生検査といった科学的な調査も併せて行う。
 2.もちろんその前提として、公的な有機認証団体を設立する。
 3.公的な有機認証団体で各種検査に使用するのに必要な基準数値を設定
  する。


以上。です。



▼ ↓科学的な『有機栽基準』提案の話も。

本当は危ない有機野菜 」 「夢で終らせない農業起業