グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

農業事故の多発の遠因は。

2012-05-30 18:21:42 | Weblog
農業事故の多発の遠因は。 

過去30年にわたって、農作業中の死亡者を毎年400人前後も出し続
けている日本の農業界。そんな事故のなかで特筆すべきは、トラクター
とともに転落する事故のケースが群を抜いて多いことです。
その原因として考えられるもとして、たとえば操作ミスがあります。また
最近では農業者の高齢化もあるでしょう。
しかし事故の遠因としてなにより危惧しなければならないのは、〔日本
の地形
を無視した形の〕農地の大規模化にもあるのではないのかと、私
は思わずにはいられないのです。
そんな話しの再録ですが、ご参考までによろしかった。

 ↓

『連休になると思い出す、ある農作業中の死亡事故。』

田植えの時期となる5月になると、思い出すニュースがあります。
それは2007年5月24日のニュース・・・

23日午前10時50分ごろ、山形県酒田市北俣の農道で、田植え
機を運転していた 東京都足立区本木、浪曲師・玉川福太郎(本名・
佐藤忠士)さん(61)が田んぼに落ち、 田植え機の下敷きになって、
低酸素脳症のため、同日午後10時18分、死亡した。
県警酒田署の調べでは、福太郎さんは同市北俣にある妻の実家へ農作
業の手伝いに 来ていたという。


というものです。

農作業がお好きだったという玉川福太郎さんのご冥福を祈りつつ、
考えるのは、日本農業における農業事故多発の現実です。
そう、過去30年来、農作業中の死亡者が毎年400人前後もでてい
る日本の農業界
・・・これはつまり「悲惨な死亡事故が日本のどこか
で毎日起きている
」ということにほかならないのですから。

わたくしの現場の経験から考えられる、事故が減らないもっとも大き
い理由・・・それは、なんといってもまず日本が山国であることです。

傾斜のきつい農耕地における農業機械をつかった農作業では、事故は
起こるべくしておきるもの・・・それは多くの農業死亡事故が、
農業機械とともに転落した場合の圧死である
ことから容易に推察でき
るのです〔この傾向は農業機械が大きくなるほど増加します〕。

現在の出版界には、農業の大型化だけを進めれば万事オーケーという
景気の良い話だけを主張する動きがあるようです。しかし、まずは足
元の身近な現場の問題を〔たとえば農作業事故〕着実に改善していく
ことこそが大事なのではないのかとわたしには思えてなりません。
そのような産業としての基礎固めをおこなうことこそが、日本の農業
に新規就農者を呼び込み発展させていくために必要なことだと思うの
です。

農作業事故を減らす、そのためには・・・まず日本では農業事故が多
いという事実の認識、そして自ら行う事故防止努力が大切です。

新規就農を予定されているみなさまは、自分が就農しようとしている
農業の業種に適応した機械の操作に対する訓練を、できれば就農前に

充分に積まれてください。
すでに就農されている皆様には、 農作業の『馴れ』と『疲れ』は
避けるべきもの、体調管理には万全を期されてくださいね。
そして農業法人に就職された方には、「ヒヤリ・ハット」と、「指差
し確認」の 実行を お忘れなきよう。

農業者の場合は、そのほとんどが経営主。事故は自己責任になりがち
なのですから。


◎ そんな農業の危険性を指摘せずに語られる農業論って
  農業の現実にそぐわないよな って思うんです。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜




中西部ばかりが米国の農業モデルではない。

2012-05-30 14:24:58 | Weblog
中西部ばかりが米国の農業モデルではない。

農場の大規模化を実行するには、作物の単一化をはかり、農業経営
の集団化を行う必要
があります。

そういった農業の現実のモデルとなっているのはおそらくは、米国
の平原地帯で行われている麦や大豆の見渡す限りの大面積の圃場に
おいて、大型農業機械を使って行う農業
なのでしょう〔オーストラリアは水
の供給に難があるということで
〕。

しかし、そのモデルである米国だって、あのイメージの農業が 出
来る土地が、農地のすべてではありません。大面積での大型農業機
械を使った農業は、実は米国の平原地帯の農地の60%程度
で行わ
れている農業にしかすぎないという現実があります。

ちなみに米国の残りの農地では、具体的には次のような農業が展開
されているんです。

 ● 米国東北地方   酪農、ブロイラー、果実・野菜
 ● 五大湖地方    主要酪農地帯
 ● アパラチア地方  たばこ、落花生、肉牛生産、酪農
 ● 南東地方  牛肉、ブロイラー、落花生、野菜、果実
 ● デルタ地方   ブロイラー、大豆、綿花、米、さとうきび
 ● 山岳地帯   牛及び羊の酪農、小麦、干草、てんさい、
            ジャガイモ、野菜、果実


などなど。そして州としては、たとえば

 ● ワシントン州・オレゴン州   小麦、果実、じゃがいも
 ● カリフォルニア州   酪農、野菜、果実、綿花


といったところ・・・。

このように米国においても、それぞれの地方では、土地それぞれの風
土に合った作物が植えられたり、家畜が飼われたりしています。つま
適地適作の農業が展開されているわけです。

そんななかでですよ、 ただでさえ耕地面積が少なく山国である日本
の国土で展開される日本の農業が、あえて平原地帯の米国の大型農業
を目指さねばならないという理由は、いったいどこにあるのだという
のでしょう。

百歩譲って、どうしても米国の農業を目指さなければならないとする
ならば、平原地帯ではなく、たとえば米国の山岳地帯の農業をお手本
にするのが現実的はないのか
と、わたしはそうおもわずにはおられな
いのです。 

日本の地形からみたら、そう考えるのがまともでしょう?
 → 前回分は こちら 。


◎ NHKさん。“米国中西部以外での農業”も見たいんですよね、
  いち視聴者としては。
  
51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜


大型機械を使った農業は日本向きなのだろうか。

2012-05-30 12:09:16 | Weblog
大型機械を使った農業は日本向きなのだろうか。

ずらっと並んだ大型コンバインが見渡す限りの黄金色に染まった小麦、
あるいは見渡す限りの熟れた大豆を収穫する風景
を、テレビなどでご
覧になったことはありませんか。農業問題を取り扱った番組で流され
ることの多いお馴染みの光景ともいえます。

この映像イメージは、主として米国の平原地帯での農業の姿です。い
わゆる大平原での、大型機械を使った単一作物を栽培する農業におけ
る収穫風景ですね。
そしてこの画面で想像されるこういった農業のイメージが、いまや多
くの日本人の頭の中で想像される理想の農業にあたるのでは
ないでし
ょうか。

しかし実際のところは、こういった農業を、そのまま日本にあては
めるわけにはまいりません。なんといっても地形の問題があるからです。

日本は、その国土に占める平野の面積といえばわずかに約25%、残
りの70%近くが山間部という地形
です。そう、日本は島国であると
同時に、なんといっても山国
であるために農地面積が少ないとい特徴
があるのです。ただでさえ少ない平野では、人口増加や都市化にとも
なう開発が行われ、結果として、日本の国土のうちの農地面積は国土
面積38万平方キロメートルのうちのわずか13・5%にしかなりません。
米国の39・4%やオーストラリアの59・3%とは、比べるべくもなさそ
うです。

では広大すぎる米国やオーストラリアではなく、山国であるスイスや、
スイスほどではないにしても山がありそうなドイツやフランスを含む
EUと比較
ではどうでしょう。

EU全体の農地面積の割合は、日本と同じく30%程度ではないかと
思ってしまいそうになりますが、じつはEU全体の国土面積に占める
耕地の割合は65・5%
もあります。
では同じ島国である英国はどうでしょう。しかしです。英国にいたっ
ては、国土面積に占める耕地の割合は69・6%もある。こちらも日本
よりもはるかに広いのです。
具体的に耕地面積を比較してみると、ドイツは日本の3・6倍の17
01万ヘクタール、フランスは6・3倍の2943万ヘクタール、前
述の島国にであるはずのイギリスでは、3・6倍の1696万へクタ
ールにもなります。

・・・・。

ここまで各国と比較して日本の農業のおかれている地形の特殊事情を
ご説明しました。
そのうえで思うのですが・・・このような地形の日本では、大型機械
農業を柱とした〔一般的に強い農業だと考えられている〕農業政策を推
し進めるのは現実的に無理がある
・・・と、そう思われてならないの
です。不定期に つづく。 前回分は こちら


◎ とくにNHKさんの討論番組でありがちな・・・・米国農業といえば
  繰り返し流される“米国中西部での農業”。あれって洗脳っていっても
  いいんじゃないかと思うんですよね/苦笑。 意図があったり?

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜




日本には、いろいろな農家と農業があります。

2012-05-30 10:22:49 | Weblog
日本には、いろいろな農家と農業があります。

野菜や果樹などの労働集約型の農家は、土地をあまり必要としません。
むしろ労働力の限界から、農地を利用しきるためだけの目的で、水稲な
どを作付けしなければならない苦労まであります〔荒らすとまわりの農
業者からのクレームがきたりするんですね〕。もっている土地が余って
しまう場面もあるわけです。
ですから、このあまっている水稲を作付けする水田について、土地利用
型農業を目指す農業者に貸し出したり作業委託を頼む場面があります。

反対に土地利用型単独農家では大規模な土地がなければ生計を立てられ
ません。
たとえば1haほどの農地では農業所得は生じず、5ha以上でなんとか、
10ha以上の農地があって初めて農業所得が500万円程度になる。

そこで 労働集約型の農家が、土地利用型単独農家に土地を貸す場面が
でてくる
 わけです。これでどちらとも経営がうまくまわる。

いっぽう、労働集約型の農家というほどでもなく、土地利用型単独農家
でもない農家
もいます。たとえば水稲の時期にはイネを作り、
水稲が終わるとキャベツや野菜などの葉物野菜や小面積のハウス栽培で
野菜をつくったり。これでも経営がなりたつ。

また、1haほどの土地を持ち、〔自分のウチが食べる分+α 程度の〕野菜
や米の作付けだけをする程度の兼業農家もいます。また年金収入で暮ら
している後継者のいない農家もいます。これもまた農家であるわけです。

ほかにも畜産を中心におこなう畜産農家もありますし、加工事業が経営
の柱となっている企業家然とした農家さんもいます。たくさんの耕作
放棄地ばかりを管理する不動産屋さんのような農家さんすらあります。

このように、ひとつの集落にはいろいろな農家と農業があるわけです。

しかしくくりでいえば、全部が『農家』でありますし、おこなっているのは
『農業』
であるわけです。

というわけで、まずは 『日本にはいろいろな農家があるという現実と、
そのいろいろな農家が経営する農業がある』というお話しでした。


◎ 語る方と聞く方とに、このような↑ 日本農業の実情の共通認識が
  あったうえではじめて、農業の問題が語れる
と思うのです。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染




「ギラン・バレー症候群」についてのこんなはなし。

2012-05-27 02:56:12 | Weblog
「ギラン・バレー症候群」についてのこんなはなし。

安岡力也さんの訃報によって注目されることになった「ギラン・バレー症
候群」。そんな「ギラン・バレー症候群」について、その発症原因につい
てのはなしです。4月分の再掲載ですが、よろしかったら。安岡力也さんの
ご冥福をお祈りしつつ・・・。

 ↓

手先や足先が急に動かなくなります。数日のうちに動かない部分が
 段々と、体の中央部に向かって進行していきます。私の場合はその
  まま呼吸筋まで麻痺し自分で呼吸できなくなってしまいました。
 もちろん顔面が麻痺して、見たり、しゃべったり、食べたりするこ
 とができなくなるのです。私の場合はさいわい1ヶ月ぐらいで完治
 しましたが、1年以上たってもなかなか回復せず、場合によっては
 足や手に運動障害が残る人もいます


これは罹患した患者の体験談ですが・・・。こういった症状を引き起こす
病気が ギラン・バレー症候群 なのです。

日本での発症は、年間約2000人前後といわれている免疫系の病気であ
るこのギラン・バレー症候群は、かかる原因も、病状も、そして回復にか
かる期間も個人によってまちまちであるという点が特徴
でもある病気です。
そして、このギラン・バレー症候群の症状をヒトに引き起こさせる原因で
はないかといわれているものに カンピロバクター食中毒 があります。

その原因とされる理由ですが、カンピロバクターとギラン・バレー症候群
の因果関係に関する研究報告については、つぎのようなものがあります。

■ 1982年・英国  
 45歳の男性がカンピロバクターによる下痢症状がみられてから
 15日後にギラン・バレー症候群をひきおこす

■ 新潟大学
 1990年にカンピロバクター感染後のギラン・バレー症候群患
 者2名を報告。1991年に同7名を報告

■ 都立衛生研究所
 抗体検査結果から、ギラン・バレー症候群患者52名中31名の
 カンピロバクターの陽性反応が確認

■ その後の米国の研究統計
 ギラン・バレー症候群患者の10~30パーセントがカンピロバ
 クター既感染者であり、その数は425~1275名と発表された


と、いったもの。

このようにカンピロバクターとギラン・バレー症候群の間の因果関係に
関する検証は、ここ30年でようやく解明されつつあるといったところ
なのです。

さて、そのような結果を踏まえていえることですが・・・

ギラン・バレー症候群を発症したくないのなら、まずはレバーや肉類を
“生”の状態での摂食を避けることが、とりあえずはいちばんの予防法
になるということでしょうね。 厚生省の関連ページは こちら 。


◎ 今回の「ギラン・バレー症候群」をはじめとして、生レバー規制問題
 の主因となった病原性大腸菌。さらには鳥インフルエンザや新型イン
 フルエンザの問題もそうですが・・・工業的な大型畜産のあり方には
 人類が負うべきリスクが多すぎるような気がしてなりません。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜