まとめサイトなんかを見ていると、次のような意見が多い。
芸能界なんて上に気に入られてなんぼ
こんな意見がまかり通るようになったことがAKB48の力が落ちてる証左なのではないか、と思う。
芸能界のパワーバランスなんぞ知るか!!
自分たちがいいと思ったことをやるだけだ!!
という粗雑で野武士的な意識こそが、ゼロサムゲームどころかマイナスサムの様相を呈する既存の芸能界の秩序から抜け出す要諦であった。
新しい領域を切り拓いてプラスサムの世界を構築することこそ、独自の顧客基盤を持つことこそがAKB48の強さである、というのは何度も繰り返してきたことだ。
それが国民的アイドルになる過程で骨抜きになってしまったことがAKB48の凋落のはじまりだ。
結局、収支構造をマスメディアを介したビジネスモデルに転換することでしか、巨体を維持できなかったということだろうか。
他にも考えられることとしては、パトロンたちから距離を置くためにも、一般的にみて健全な収支構造に転換する必要があったということもあるのではないか。
ゼロサム、マイナスサムの世界では「分配」が最も大きな関心事になるため、利害関係の調整に大きなコストを割かねばならなくなる。
一度この輪の中に入ってしまうと、つまらない秩序や力関係に利益を収奪されるばかりか、身動きがとれなくなり、自分たちの強みすら失ってしまう。
まさに牙も骨も抜かれてしまうのだ。
実は、成熟した世界というのは、ゼロサム、マイナスサムを賢く生き抜ける世界かもしれない。
もし、それが正しいなら、成長や創造だけが素晴らしいわけではない、という意見もよくわかる。
実際、そういうことを主張する思想家というか文筆家も多い。
とりわけ超少子高齢化社会が到来する日本においては現実味のある話だ。
しかし、こうも思う。
まるで平家のようだ、と。
経済力と武力を背景に武家出身として初めて日本の権力構造のトップに登り詰めたが、自らその構造の中で滅んだ。
既存の構造を拡張して新しい構造を創り上げるということの難しさを今に伝える歴史上の出来事だ。
今のAKB48を取り巻く様相を見ていても、CMだドラマだ冠番組だと顧客がマスメディア重視の既存構造の声を上げ続けている。
芸能界の秩序に、世間からの風当たり、そして顧客からの圧力が加わって今AKB48は四面楚歌状態であろう。
戦略転換しない限り、基底状態に向かって流され、縮小均衡するのが目に見えてる。
いや、不見識な私の勘違いである可能性が大だ。
ただ、ひょっとしたらAKB48は鎌倉幕府なのではなく、福原京くらいなのかもしれない、とも思う。
実は、鎌倉幕府となる破壊的イノベーションは、AKB48の向こうからやってくるのかもしれない。
そう思えば、まだまだ面白そうなことは起きそうだ。