最近、被曝に関し、2つの事件(事象)が話題になった。ひとつは官邸屋上に墜ちた無人飛行機ドローンで検出された放射性物質の被曝量が毎時1μSだったこと。もう一つは東京池袋の公園の地表で最大毎時480μSの被曝量が観測されたこと。後者は地中に埋められたものから発せられており、現在その放射性物質について分析が行われている。
しかし、二つの事件のうち、ドローンの方は、政治の中枢を狙われるという部分が注目されるだけで、その被曝量のことはさして問題にはならない。池袋の公園に関して一時的にその数字は注目されたが、急速にニュース性は薄れてすでに過去の話になりつある。
おそらく、これが原発事故直後であれば、この480μSという数字は衝撃であり、テレビのワイドショーでも連日大騒ぎしていることだろう。それだけ、被曝への恐怖というものが風化して世間は冷静さを取り戻しているのだろう。
毎時480μSという数字は確かに一般的いえば想像を絶する甚大なものだ。しかし、これはあくまでも地表での数字だし、それも最大であるのに過ぎない。放射性物資がいつ頃地中に埋められたのかわからないが、これまで被曝して子供たちの健康に影響を与えたという話は聞かない。実際この公園での被曝量は想像するほど大きくはないのかもしれない。
広島、長崎の原爆による被爆では100mS以上を超えるとがんの発生率が0.5%高まるとされている。しかし、これは短期間での数字といわれている。現在被曝で問題にされる100mSは生涯での数字だから、広島長崎の被爆と比較するのは一般的にh無意味のように思う。
それを承知で仮に広島の被爆が1週間程度の間と想定してみる。(実際はもっと短期間の可能性が高い)大雑把に200時間とすると100mμS÷200=0.5mμS(500μS)ということになる。すなわち池袋の公園の地表で1週間寝そべってやっとこの100mμSに近い数値を記録し、健康への影響が出始めるということになる。しかし、そんな状況はいくら最近のホームレスでも考えられない。実際は広島長崎で100mμSを超えた被爆者でもなんら健康に影響なく長寿を全うしている人は少なくない。したがって、人間の被爆、被曝に対する抵抗力は想像以上に大きいといえるのではないか。
旧聞に属するが、以前東京世田谷の民家で極めて高い放射線量が検出されたことがあった。具体的にはその住民は大人も子供も年間30mμSもの被曝を30年間にわたって受けていたことがわかった。しかし、それで何らかの健康障害が起きたという話を聞かない。だから福島の避難区域で帰還の基準を年間20mμS以下としているのは極めて妥当なことだと考えられる。まして、どこかの見当違いの学者が年間1mμSを盛んに吹聴していのは笑止千万といえる。世界には年間10m程度に被曝を受けても問題なく生活している場所が存在している。
だからドローンの1μSがどうした、ということになる。これを飛ばした容疑者が反原発の立場から原発再稼働反対を訴えるために福島の土を搭載したというような話をしている。こんな健康に全くといってよいほど影響のない線量で被曝の恐怖を煽ったところでとても説得力がない。世間で今はそんな数字のマジックにだまされない。