スポーツ解説者、張本勲氏の発言がネット上で非難囂々だ。12日のTBSテレビ「サンデーモーニング」でサッカーの三浦知良選手が最年長ゴールを更新したことを報じた。これにに対して張本氏がなんと三浦選手にずばり「引退勧告」を直言したからだ。
「カズファンには悪いけど、もうお辞めなさい」「スポーツマンとして、もう魅力もない」「野球で言えば(J2は)2軍だから、2軍で頑張ってもそんなに話題性もない」「若い選手に席を譲らないと。団体競技だから伸び盛りの若い選手が出られない。だから、もうお辞めなさい」「彼はあれほどの選手だから、(今後は)指導者としてね」「(現役に)しがみつく必要はない」
当然ながらカズあるいはサッカーを愛するファンから激しい非難がネットを中心にわき上がっている。
*「サッカーの『サ』の字も知らないアンタが言う資格はない、一生懸命頑張って結果残しているカズをけなすな」
*「張本よ三浦氏に陳謝すべき、 三浦氏は自分の信念でサッカーを行っている。張本はどの様な気持ちで言ったか判らんが、三浦氏は日本にサッカーを広めた英雄だ。
*張本勲氏はカズさんのゴールが海外でも大きな話題になったの知らないの? 大体、J2が二軍だなんてとんでもない勘違い。 今回の発言は、カズさんだけでなくJリーグでプレーする全ての選手に対する侮辱と言っても過言ではない。 若手に席を譲るべきなのは張本氏の方。
*張さんも三浦カズに辞め云うなら、中日の山本昌はどないする?…
自分自身、日頃この番組で張本氏が発言する内容にあまり同調できないところが多い。どこかスポーツを精神論で語る傾向が強いからだ。また今回についていえば、確かに張本氏は、J2をまるで野球の2軍のように扱っているのは大きな事実誤認だ。
しかし、それでもなぜか今回の張本氏の「暴言」に頷く自分がいる。意外と正論を吐いているのではないか、と。張本批判のなかに「中日の山本昌はどうする?」のがある。山本昌投手は三浦選手よりも1歳上の49歳。カズが48歳1月のゴールなのに対して山本は48歳4ヶ月の日本プロ野球勝利だ。わずか3ヶ月の違いだが、その意味は大分違いがあると思う。
サッカーと野球とも同じ団体競技ではあるが、野球の投手の勝利が当人の力量が大きいウエイトを占めているのに対して、サッカーのゴールはチームメートのサポートなどが大きく影響している。試合の状況にもよるが80%対10%ほどの開きがあるように思える。サッカーのゴールの際に味方の動きとともに相手チームのディフェンスやキーパーの防御の度合いが問題になる。仲間のアシストがどれだけ効果的かも重要だが、敵の対応が手薄ならば、簡単にゴールができる。
確かにマラドーナのように、自分たちのゴール付近から一人ボールを保持したまま敵の妨害をかわしながら相手方のゴールに攻め込んだことはあった。しかし、天才によって引き起こされた「奇跡」であって、普通のプロの試合ではあり得ない話である。一方、野球の投手の勝利は個人の力量が充実していれば十分可能だ。つまり野球の投手というのは団体戦とはいいながら、個スポーツの性格を十分兼ねているいえる。
個人スポーツならば、他人から年齢のことをとやかく言われても他の選手よりも成績が上であるとか、相手に勝つという結果であれば、選手生活を続ける資格はある。しかし、団体スポーツの場合は嘗ての名選手であって年齢的のわりに元気でもそれだけでは勤まらない。確かに三浦知良選手は2005年の秋にJ2の横浜FCに入団して目覚ましい活躍を見せて2年後チームをJ1に昇格させた。しかし、それもわずか1年で再びJ2に降格してその後チームは低迷している。
チームにとってはもちろんトップリーグのJ1に定着してサポーターの期待に応えることが至上命題のはずだ。カズの最年長ゴールもサポーターを喜ばせるだろうが、そちらだけが話題として先行するならば本末転倒といわざるを得ない。メディアが三浦選手のプレイだけを注目するようではチームの他の選手は正直と惑ってしまうのではないか。「カズさんがゴールするためにボールをうまく回す」ことに他の選手が気を使うとしたらチームとして最悪である。「試合に勝つ」という本来の目的が疎かにならないか。
三浦選手がいくら頑張っても往年の勢いでゴールに攻め込むのはもはや難しい。10年前の横浜FC入団当時の得点力は既になく48歳の年齢の衰えは如何ともしがたい。「自分の信念でサッカーを行っている」(ファンの声)のは普通はすばらしいことかもしれないが、それが空回りしてチームが低迷するとしたらその代償は侮りがたいといわざるを得ない。