さわやかな秋空に誘われて秋篠寺へ行ってきました。
お目当ては伎芸天立像。
係がいなければ路線バスが通れないほどの、狭い古い町並みの一隅。
そこに秋篠寺の東門はあった。
門を入ればたちまちそこは森の中、両側の美しい苔を見て進めば入口がある。
周辺は森に囲まれ、凛としたたずまいの本堂。
空には白い綿雲が一つ、時折さわぐヒヨドリの声がよくひびく。
若い女性二人は休憩所で語らい、一人旅らしき人がちらほら。
薄暗い本堂に入って、少し目を慣らしてから伎芸天の前に立つと、
少し首を傾けた伏し目がちの立像は、
仰ぎ見る者にやさしく語りかけてくださった。「よく来たね」。
もちろん声が聞こえたわけではない。だが、私には聞こえたのだ。
この感動にもう少し浸っていたくなり、
お堂の中の木の椅子に腰掛けてしばらく休ませていただく。
他に十二神将、日光・月光菩薩像が並び、
気がつけば、相棒はご本尊の薬師如来像に釘付けのよう。
秋篠寺は小さいお寺だ。観光寺院の華やかさはない。
しかし、訪ねる人を裏切らない温かさと、
ゆとりの心を失った人々に、ゆとりを取り戻す「時」を与えて下さる・・・
そんなお寺だ。